ARCHITECTURE | matsuzaki
2010年1月9日

これは住宅建築の最近作である。宮本啓介氏に撮影していただいた写真をもとにして設計上の工夫などを書いていこうと思う。住宅建築は特にクライアントの要望がそのまま形になっているというところが多い。
どのように設計が進んでいったかを振り返ってみると、住み手の夢をどのように実現させていけばよいかという試行錯誤だったように思われる。案外はっきりとした要求があるクライアントだったのはよかった。
ただ、それがかなり特殊だったということはある。第一に、窓はいらない、ということ。第二に、家中を見渡せるようにしたい、ということ。第三に、とても寒がりである、ということ。ちょっと変わっている。
こういう極端な趣味(?)の人間にとって、世の中の住宅産業はまず満足な解決をしてくれる望みはないのだ。建築家がなんとかしないといけないのである。
01 窓のない家
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住宅の階段勾配は踏面150蹴上230というのが上限と定められている。これは角度にすると60度近い急な勾配である。クライアントの強い希望のひとつが階段を最大限緩やかにしてほしいということだった。
そこで、勾配を1/2とすることにした。階高が9尺(約2727)なので、蹴上を5寸(約151.5)×18段とし、踏面を倍の1尺(約303)とすることにした。階段にちょうど2坪のスペースを使うことになる。
これは個人住宅を設計する上でバカにならない空間である。そこで階段を中心に据えたプランという発想が生まれた。移動と視線と採光と通風と構造、すべての機能を階段に集約しなければならないと考えた。
あとで詳しく述べるが、この階段の設計には相当の工夫が盛り込まれている。これ以外にはない、というような緻密な計算の上に細部の寸法が決められた。
02 緩やかな階段

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2010年1月9日
ブラインド(見えないところ)をつくらないようにしたいというクライアントの要望は、たとえば不審者が密かに潜んでいたりするというような恐怖感を感じないようにしたい、ということが理由にはあるのだ。
窓はいらない、という要望も同じ様な理由による。建築家の提案は外部と内部を一体化したような、外観も内部空間も開放的な外光溢れる透明感を追い求める傾向にある。それが理想的なあり方だと思うからだ。
妻は岸田日出刀設計の開放的な家に生れ、カーテンをつけることを許さない建築家(祖母の兄に当る親戚だったわけだが)のこだわりに、建築家の設計した家というものの非現実性に違和感をおぼえたという。
そういう「建築家像」というものがぬぐい去り難くあるのも事実だ。建築家の家は雨漏りするという噂もそのひとつである。実際、それは事実でもあるのだ。
03 見渡せる家

2010年1月9日
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2010年1月9日

04 畳の部屋≠和室
日本人には畳敷きの部屋がやはり必要である。複数の来客用のベッドルームなどが取れない間取りでは、布団を敷ける和室がその代わりをする。しかし畳敷き=和の造作という固定観念は場合によっては不要だ。
このクライアントの場合もいわゆる「和風」というデザイン要素には抵抗がありながら畳の部屋が欲しいという要望もあって、まったく和室ではない畳の部屋をつくることとなった。そして出来た部屋がこれだ。
縁(へり)のない琉球畳を使うという選択肢も当然あったが、建築家設計の家の常套手段というイメージがある。擦り切れやすいという欠点や、そもそも粗末な材料の割に高価だというところも好きではない。
いわゆる不祝儀敷きといわれる縁を通した敷き方にして、そのほかにはまったく和室らしい造作を施していない。ただ機能的でいい質感の床材としての畳だ。
05 畳の部屋≠和室その2
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2010年1月9日

もちろん、伝統的な作法に則った和室というものも忘れてはいけないと思うけれどそれができないからといって畳という機能的な床材料まで一緒にあきらめてしまうことはないのである。襖や障子も同じである。
「和風」にこだわらなくても、上手に日本の伝統的な建築材料を使いこなす術はいくらでもあると思う。何れにしろ自然素材として断然魅力的な質感はずっと大事にしていきたいと思う。今後の設計上の課題だ。
古民家の再生をしていてよく言われたのが、畳敷きの部屋にはソファやテーブルなどの家具が置けなくて困るという話だ。老人は特に足腰が弱ってくると椅子の生活の方がうんと楽なようだ。畳のピンチである。
なにがなんでもフラットな床というより、小上がりのような腰掛けられる段差があるのも案外暮らし易いのかもしれない。バリアフリーもまだ研究が必要だ。

06 脱システムキッチン
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2010年1月9日
住宅設備機器というものが年々ハイスペックで高価なものになっていく。最先端の機能を満載した機器類のコストが、建築費全体に占める割合は増加の一途をたどっている。システムキッチンも例外ではない。
それは技術の進歩だと言えなくもないが、その一方でお粗末な建材の質感とのギャップなど、住宅としてのアンバランスが目立つ。住み手の満足を考えると、建築コストの配分も少し考え直す必要がありそうだ。
キッチンといえばシステムだと短絡する前に、その機能をよく考え、コストを抑えたつくりかたを考える余地は大いにある。流しと調理器具と調理台と収納、という台所仕事の基本性能を満たせばよいのである。
クライアントにはキッチンカウンターの必要な大きさをよく考えてもらい、細かい寸法まで好きなように要望を出してもらう。完全なオーダーメイドである。

2010年1月9日
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07 脱システムキッチンその2
カウンタートップはクライアントの要望を受けて、詳細図を起こし、工場で製作してもらう。ステンレス304の1.2mm厚の板を使う。構造用合板を裏打ちし、シンク部分は消音と防露のための断熱材を施す。
奥行きや巾などの寸法は自由に決めていい。高さも大工工事で体に合わせて設置できるし、コンセントも好きなところにレイアウトできる。水栓や調理器具やレンジフードは好きなメーカーから選んでもらった。
木材で作った照明ボックスの内側にバーを取付け、天板と併せて調理道具棚として使える。その他の収納は食器棚やワゴンで対応できるというので、造り付けのキャビネットなどはまったく必要なかったのだ。
クライアント好みのTOYOキッチン風のシステムと比べれば断然ローコストでできあがる。しかも既製品よりもはるかにハイグレードな内容にもできる。
窓はいらないが、家の中は見渡せるように、という要望を満たす構造としては、吹抜けをつくって採光を屋上から、という方法以外には思いつかない。大きな天窓をつくり二階の床に大きな穴を開けるしかない。
建築基準法では床面積の1/7以上の窓(隣地から十分な距離がなければならない)が必要であるとされるが、天窓は3倍にカウントできる。採光上は天窓が有効なのだ。法的に必要な採光窓は全て天窓とした。
そして一階の採光のために必要な分だけ床に開口を設ける。天窓からの垂直距離に応じて補正係数が掛けられるので、相当な面積が必要になる。吹抜けだらけのプランにしなければ採光が成立しないのである。
どのように吹抜けをつくるか、間取りの問題もさることながら、構造的な欠陥とならないようにするための計算も大変である。床がない構造は弱いのである。
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08 透明な床
2010年1月9日

















