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☆大切な大切な友
☆大好きなあの子のために
☆二人ぼっち
☆光とともに
☆どこまでも
☆駆ける
☆星
☆自由
☆夢
☆fifteen
あとがき
「あの子とは関わるな。」
そう親には言われてた。
「どうして。」
そう聞くと、
「あの子は私達とは違う。」
そう言われた。
私はチョウのフライ。
私には昔、友達がいた。
彼はいつも暗い所にいた。
みんなは彼を冷たい目で見た。
私達と何も変わらないのに。
私は彼に話しかけた。
毎日、毎日話しかけた。
彼の笑顔を見た。
楽しくて、楽しくて、
こんな時が永遠に続く、
そう思ってた。
仲間達は私を冷たい目で見た。
だけど、それでも良かった。
でも、彼は突然消えてしまった。
あの夏、私は彼を探し続けた。
そして、彼がいなくなった理由も
探し続けた。
今なら、その理由が少し分かる気がする。そして、
今、これだけは、はっきり分かる。
私は彼に恋していた。
彼と過ごしたあの夏。
彼がくれた宝物。
あの日の思い出は
永遠に私の心に生き続ける。
ぼくは
いつになったら、
使われるんだろう。
ぼくは、えんぴつだ。
あの子が小学一年生の時から、
ずーとあの子のふで箱の中にいた。
あの子は毎日、
ぼくたちを交代、交代に使った。
ぼくはあまり使われなかった。
でも、ちょっとずつ減っていった。
ちょっとずつ。
ちょっとずつ。
幸せだった。
あの子のそばにいられて、
役に立てる事が。
仲間はどんどん消えていった。
役目をまっとうしたんだ。
あの子は中学生になった。
あの子はふで箱を変えた。
ぼくは新しいふで箱に入れる事が、
楽しみでしかたなかった。
でも、ぼくは古いふで箱に
残された。
あの子はシャーペンを使うようになった。
あの子はきれいな字を書いていた。
安心した。
あの子の目にぼくは
もう映らないかもしれない。
でも、あの子はぼくを
こんなに、短くしてくれた。
ぼくは金魚のキンタだ。
前は水そうに一匹だった。
ある日、新入りがやってきた。
真っ赤な色の金魚だ。
そのこの名前はキンチャン。
初めて友達ができた。
毎日毎日、遊んだ。
かくれんぼに、追いかけっこ。
いろいろした。
楽しかった。
嬉しかった。
だけど、キンチャンは日に日に弱っていった。
かくれんぼも、追いかけっこも
できなくなった。
でも、キンチャンはいつも
笑ってた。
ある日、キンチャンが
「ありがとう。」って言った。
それから、キンチャンは
動かなくなった。
キンチャンはいなくなった。
また一匹になった。
でも、
ぼくはもう一人ぼっちじゃなかった。
キンチャンは、ぼくの中にいる。
そして、
いつもぼくに笑いかけている。
背中の光が消えていった。
水面に落ちた。
自然と怖くはなかった。
目を閉じると
夏の夜星に幾千の命の光が見えた。
そして、
過ぎ去った美しき日々の記憶が蘇った。
私は蛍のヒカリ。
私たちはいつも一生懸命だった。
せっせっせっせ
光をためて。
そして、夜になると
輝きながら
はばたき続けた。
私たちは知ってた。
蛍の命は短いことを。
だからこそ
一生懸命に生きることができた。
みんな、自分の命を燃やした。
最後の最後まで
そして
光が消えるとともに
命の炎も消えていった。
そして
私にもその時がやっていきた。
夏の夜の涼しい風が
そっと体をつつんだ。
時は満ちた。
最後に、生まれ変わったら、また
蛍になりたい、そう思った。
蝉の命は短いんだ。
太陽を見てから7日間で死んじゃう。
でも、ぼくは太陽になりたかった。
ぼくの名前はセミゴロウ。
夢は太陽になること。
だから、いつか太陽の所に行く。
ある日、ぼくは初めて飛んだ。
でも、太陽は遠かった。
いっぱい、いっぱい
羽をはばたかせたけど、
届かなかった。
くる日も、くる日も、
くる日も、くる日も、
そしてある日。
その日もまた飛んだ。だけど、
羽が上手く動かなかった。
そして、電柱にぶつかった。
羽から力が抜けた。
太陽がまぶしかった。
ぼくは、もうだめだと思った。
だけど、
体がふわっとした。
羽をはばたかせたら、
また飛べた。
どこまでも、どこまでも。
そして、
ぼくは太陽になった。
空が澄んでいた。
まばゆいほどに。
涙は出なかった。
だけど、この広い大地に
たった一匹
そんな気がした。
ぼくはシマウマのシマだ。
群のシマウマと母さんと大草原に暮らしてた。
ぼくたちシマウマは
敵に襲われたら、
何もかも忘れて、走り続ける。
それが掟だった。
でも母さんは掟を破った。
ぼくを逃がしてしまった。
その日は雨が降っていた。
ぼくは群の中で一匹になった。
生きていても仕方がない。
そう思った。
ある日の朝
温かい日の出の光に包まれた。
思い出した。
母さんの最後の言葉。
「走りなさい。」
その時、ぼくは初めて
泣いた。
空が澄んでいた。
そこに一羽の鷲が飛んでいた。
生きよう。
そう思った。
キキー。ドンッ。
目の前が真っ暗になったと思ったら、
次には、前より世界が鮮やかだった。
俺はきつねのゴンだ。
さっき事故にあった。
体がいつもより軽い。
たぶん死んだんだろう。
死んだら、たしか星になるんだ。
でも、俺はまだ星になるわけにはいかない。
会いたいやつがいる。
約束したんだ。
今夜一緒に星を数えるって。
俺は走って、走って、走った。
あいつのもとへ。
あいつはいつもの場所に座っていた。
俺はそっと駆け寄った。
「待たせたな。」
あいつはちょっと怒ったふりをして言った。
「おそい。」
そして俺は言う。
「ごめん。ごめん。」
いつもとおんなじ流れだ。
「星数えるか。」
「うん。」
二匹の目は星の輝きで瞬いた。
「一・二・三・四・五・六・七・八・九…」
星の数は果てしなかった。
そして、二匹の時間は永遠だった。
「二百九十八・二百九十九・三百。」
数え終わると、静かな時が流れた。
俺は言った。
「あのな。俺死んだんだ。」
驚いて逃げてしまうだろうと思った。
だけど、あいつは言った。
「初めから分かってたよ。」
あいつの頬を銀色の涙がつたった。
「じゃあな。」
一言、言って俺は星になった。
あいつは俺を見て、優しく言った。
「三百一。」
世界は少し狭くなった。
空は少し低くなった。
自由はいつしか消えていった。
俺はカラスのクロだ。
カラスって言ったら、
きっと悪いイメージしかないだろう。
ゴミをあさったり。
カァカァ鳴いたり。
「近代化」
こんな言葉を知ってるか。
あきっぽい人間が
作りだした世界のことだ。
物を作っては、捨て、
作っては、また捨てる。
この繰り返し。
こうして、俺らの世界は
「物」でうめ尽くされた。
そして、
空は幾つにも区切られた。
かつて
空がどこまでも続いてた頃。
木々がおいしげり、
夕日が赤く燃え上がっていた頃。
空は誰の「物」でもなかった。
ただその中を、鳥たちが
自由に駆け回っていた。
美しき日々よ。
自由よ。
俺はいつかおまえを見つけてみせる。
光と闇。
生きる世界が違う。
彼女が光の中を舞う姿を見る。
どうして僕は
そう思う。
僕は蛾のモス。
僕には昔、友達がいた。
彼女は、光の中を舞っていた。
その姿は、
太陽よりまぶしかった。
僕の夢だった。
彼女は突然、話しかけてきた。
毎日、毎日、来てくれた。
嬉しくて、
嬉しくて。
僕は自分が何だか忘れてた。
彼女の仲間は
彼女を冷たい目で見た。
原因はわかっていた。
僕だ。
彼女は僕に
沢山の幸せをくれた。
だから、
彼女を不幸にしたくなかった。
消えよう。
そう決めた。
あの夏、僕は夢を見た。
光と共に舞う夢。笑う夢。
彼女は僕を世界一幸せな
蛾にしてくれた。
僕は彼女の幸せを
いつまでも
いつまでも
願っている。
十五歳の誕生日。
ちょっと大人になった。
そんな気がした。
でも、ふり返ると、
小さい時、好きだった
家も
梅干しも
動物も
おじいちゃん、おばあちゃんも
干した後のふとんのにおいも
小さい時、嫌いだった
中華料理も
学校のトイレも
ごたごたした物も
電車の中も
車も
好きなものは好きなまま、嫌いなものも嫌いなまま
なんにも変ってない。
やっぱり私はまだ子供ってこと。
うぅん。そうじゃない。
人ってそうは変わらない。
そういうものだってこと。
今回の作品は私の身近にあって、愛情を感じるものを主人公として、彼らの生きた軌跡を描きました。小さかった頃、虫取り網を持って追いかけた蝶々や、お祭りで欲しい欲しいと駄々をこねた金魚、私の手の中で輝いていた蛍、鳴き声を真似したカラス。
ある時、自分が彼らの立場に立ってみた時、動物達も人間と同じように感情を持っているのではないか、いや、もっと繊細な感情を持っているのではないかと感じ、その時から彼らの視点に立って世界を見つめる事が多くなりました。そして、その中でどんな生き物も限りある命を必死で生き抜いている事を強く感じ、その姿は私に生きる勇気を与えてくれました。この本を読んでくださった皆さんも、これを機会に是非、今までの視点を少しずらして、世界を見ていただきたいと思います。
最後に、十五歳の未熟な私の作品を最後まで読んでいただきありがとうございました。
この本が、読んでくださった皆さんの身近にある小さな幸せや感動をみつけるきっかけになれば嬉しいです。まだまだ未熟者ですが、これから、今までよりも沢山のことに目を凝らし、耳を澄ませ、新しい発見と一緒に、自分の心で見た動物たちの姿を描いていこうと思います。今後も一人の書きてとして、成長していきたいと思っていますので、見守っていただければ幸せです。
二〇十二年 安田 礼
2012年9月25日 発行 初版
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