パイナップルと聞いて、何を思い浮かべますか?
昔、徳之島には缶詰工場があり原料のパイナップル畑が広がっていました。
しかし、輸入自由化により工場は閉鎖され徳之島からパイナップルは無くなりました。
そのとき徳之島のパイナップルを守った「川田伝さん」の物語をお話します。
鹿児島県の徳之島は、緑色のサトウキビ畑と赤い大地が広がります。
外周道路は約八十km、約二時間で観光地を見ながら一周することができます。
海は、青くきらきら輝きゆっくりと時間が流れる場所です。
七月に入ると光がまぶしく肌に刺さる日差しが痛く入道雲が激しいスコールを降らせます。
知人が「パイナップルが珍しくておいしいよ」と教えてくれました。
「パイナップルはどこで買えますか?」と天城町役場に電話すると生産者の川田伝さんの連絡先を教えてくれました。
川田さんの畑は、徳之島の北側で土が赤い天城町の山(さん)地区です。
川田さん夫婦が坂の畑で、黄色に色づいたパイナップルを鎌で切り収穫します。
通路は狭いので、鎌で切った実を畑の隅まで手に下げて運び出します。
それを一輪車に乗せて、選別と箱詰めのためにウッドデッキに運びます。
箱に四個づつ箱詰めをします。
ホッチキスで封をして、出荷準備ができました。
川田さんは、パイナップルを鎌でむき切った実を手渡してくれました。
黄金色にきらきら輝くパイナップルを「美味しいね、甘いね」と子どもが食べました。
その姿を川田さん夫婦は、ほほえみながら見ていました。
収穫が終わると古い株を抜き、重機で土を深く耕します。
植えてから収穫までに2年かかり、2回収穫後は植え替えます。
細いひもを張り、芯の部分がある葉を赤い大地に手作業で植えます。
暑さを避けて夕方から植え付けを開始しました。
トゲがある葉を束ねて持ち、刀のような棒で赤い土を掘り力強く押し込みます。
その後、風で倒れないように根もとを石で優しく押さえます。
植え付け後二年経つと芯の部分に小さな葉が密集してきます。
やがて芯の部分が真っ赤になります。
亀の甲羅のような実の部分が、鳥のくちばしのように割れて紫色のやわらかい花が次々に咲きます。
花が咲き終わると、日焼けを防ぐために新聞紙で巻きます。
収穫前に新聞紙を取り除き、黄色くなるまで完熟させます。
八月から九月の収穫を夏実、十一月から十二月の収穫を冬実と呼びます。
熟期が遅い実が冬実になり、その原因はわからないそうです。
除草剤に弱いため草は手作業で抜きます。
葉の先端が尖りフチもノコギリのようなトゲが密集しているため葉をよけながらの作業です。
作業着の腕の部分は服が破けます。
葉の下は涼しいため猛毒を持つハブが潜んでいる可能性があります。
徳之島のパイナップル栽培は、昭和30年前半に沖縄から苗を購入して始まりました。
昭和36年の新聞には、缶詰工場で働く人の写真と、お土産用の青果が高く缶詰用原料が集まらないことが書かれています。
しかし、輸入自由化で昭和40年代後半に工場が閉鎖されました。
雇用の場も無くなり島を離れる人もいました。
パイナップルが無くなるのも時間の問題でした。
しかし川田さんは、「苗が無くなれば、再び栽培できなくなる」と売り先の無いパイナップルを植えました。
収穫のとき郵便局の人に「島外に売らないか」と誘われました。
川田さんのパインは品質の高さから注文が多く入りました。
当時を振り返り「売れたことよりも、パインを作れることがうれしかった」
「70歳越えたから、あと2回収穫できるかな」と川田さんは言いました。
気のきいたことも言えないまま、私は一緒に畑を見つめました。
数年たち暑い夏を過ぎた頃から川田さんと畑で会えなくなりました。
畑は草に覆われて、収穫時期を過ぎたパイナップルが残されていました。
そのまま川田さんに再会することもなく徳之島を離れることになりました。
それから4年後の平成22年、担当していた南日本新聞で農業コラム「農ヒューマン農ライフ」で川田伝さんのパイナップルのことを書きました。
掲載された後、川田さんの知人が電話で「川田さんは、入院していて畑に行くことができないが、新聞を読んで元気が出て喜んでいました」と知らせてくれました。
パイナップルは、一箱四個入りで約二千五百円。一個六百円です。
「自分が本当に好きな物を作って地域を守り、みんなに喜んでもらう」川田伝さん夫婦のパイナップルは、徳之島の歴史です。
美しいパイナップル畑は、今はどうなっているのだろうか。
2011年10月12日 発行 初版
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