よく、いろんなところに行くね、と言われるけど、
それほど多くの国を訪れたことはない。
発見も楽しいけど、確認も楽しいから何度も同じ所に行く。
一番多く行っているのはパリだと思うけど、
イタリアも何度行ったか、もう憶えていない。
いつもドライバーをしてくれたマッツィーニおじさん。
マルペンサ空港でニコニコ顔のおじさんを見つけるとうれしかったのだが、
おじさんは数年前に亡くなってしまった。
毎回泊まっていたホテルのオーナー夫婦も引退して、
名前は同じだけど経営者が変わった。
朝食は、庭に来る鳥の声が聞こえる静かなダイニングで食べていたが、
模様替えされて大きなテレビが置かれているのが残念だ。
奥さんが可愛がっていたフェレットはいなくなったが、
片眼の野良ネコは以前と変わらずにホテルの庭をゆうゆうと歩いていた。









今回はチェルビニアというスキーリゾートで写真を撮ることになった。
スイスとの国境に近いイタリア側のアルプスで
山頂に近いところには国境線が引いてあった。
そのあたりの多くの山は4000メートル級、
つまり富士山よりも高い。
以前、コロラドのロッキー山脈でロケをしたときに
ただ歩いているだけで呼吸が苦しくなったことを思い出して、
できるだけ走ったりしゃべったりしないようにしていたんだけど、
運動不足丸出しの中年には苦しかった。








アルプスで泊まったホテルは、外観は伝統的な山小屋風なんだけど
オーナーの娘さんが建築をしている人で、
インテリアや庭の趣味が素敵だった。
トリノから来たイザベラというシェフが作る料理がこれまた素晴らしい。
すでにスキーシーズンは終わりに近かったけど、オフシーズンに
食事をするためだけに訪れてもいい、オーベルジュクラスの料理だった。
ここから料理の写真が激しく続くので、
お腹がすいている人は見ない方がいいかもしれない。













一般的に知られているシャープなマッターホルンの
シルエットはスイス側から見たもので、
イタリア側からだと違ったカタチに見える。
本当にアレがマッターホルンか?と何度も思った。





























ちょうどインテルとバルセロナがチャンピオンズリーグを
戦っていたので夕食後にホテルのリビングに集まって、
みんなでサッカーを観た。
俺たちのチームのボスは元プロサッカー選手、
たまたまそこにいた宿泊客はバッジオの友人だそうだ。
イタリアはスーパースターとしてじゃなく、
身近に本物のサッカーやサッカー選手を感じることができる。
そこにいたみんながインテルファンだったので、
インテルが勝って大騒ぎをした。





ホテルのオーナーは渋いおじいちゃん。
十五歳の犬と一日中、陽の当たる場所で新聞を読んでいる。
これぞアルプスライフ。俺たちにシャンパンを振る舞ってくれた。
帰るときゲストブックに「またここに来たい」と書いてきたので
いつか行くだろう。いい人と出会い「また会いましょう」と言うと
嘘をつくわけにはいかないからまた、同じ場所に行くことになる。
行く気もないのに口先だけの社交辞令で
「また来ます」などとは言わない方がいい。









アルプスからホームグラウンドに戻っていつものレストランへ。
お店の人が自慢そうに赤ちゃんを披露していた。
アルプスのイザベラの料理は最高に美味しかったが、
ここはここで何度も食べたことがある
安心できる味と知っている人々の顔がいい。




















何度もイタリアで仕事をしているのにタイミングが悪く
ミラノで観光をしたことがない、というスタッフのために
一日ミラノ観光をした。ドゥォーモ、モンテ・ナポレオーネ、
ブレラ、ヴィットリオ・エマヌエーレ、スフォルツェスコという、
浅草、銀座、原宿巡りみたいにベタベタの観光をする。
ジェラートを食べながら。こういうのは楽しくていいものだ。
ホテルは中心地で便利な場所なのにスカしてもいないし
値段も高くなく、居心地のいい部屋だった。
世界中のあらゆる場所でいいホテルやレストランを間違いなく
かぎつける敏腕プロデューサーがいると安心できるってもんです。














































クライアントの工房。
すべて手作り、手仕事で出来上がる製品。
働いている人はみなシャイで、あまり写真が撮れない。





最終的に、アルプスの写真が少ないことに気づく。
全然「オレプス」じゃない。ミラノでは、こちらに向かって来る人を
全員逃さない覚悟で撮っていた。
仕事じゃない写真を160ギガほど撮った。
仕事じゃないからこそなんだけどね。やっぱり街に人がたくさんいたり、
工場とか撮るのが好きだなあ。
アルプスはキレイで楽しかったんだけど、
雪山なんか撮ってると「下手にいい写真」が撮れそうな
気がしちゃってつまんない。登山家からしたら憧れの山だもんな。
アルプスはもっとクソジジイになってから遊びに行くとしよう。
2010年5月6日 発行 converted from former BCCKS
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