パリから成田に戻ったときの機長のアナウンス。
まず「私事ですが」といきなり話し始めたので
驚いたが、 孫でも生まれたんだろうなあくらいに
思って聞いていた。
「私はこの406便が最後のフライトで、
本日定年退職を迎えます」 と言うのだ。
実直そうなベテランパイロットの
いいアナウンスだった。
大変なこともあったが、
乗客に「ありがとう」と言われると
疲れが消えたものです、などと言う。
こういう話を聞くと俺は楽勝で泣くんだけど、
機内が明るいので必死でこらえる。
兵隊ヤクザみたいな顔して純粋な涙など見せられない。
「ありがとうと言われることはうれしいのですが、
今日そうやって声を掛けてくれることを
期待しているわけではありません」
と、英語で言った方がカタチになるジョークを
言ったのだが、 乗客は無反応。
あそこは406便の一体感のためにウケてほしかった。
一緒に行ったプロデューサーは、自分の搭乗券に
感謝の手紙を添えて JALに送っていた。
乗客から自分が操縦した最後の便名が入った
搭乗券をもらったらうれしいだろうなあ。
手紙がちゃんと機長の手に渡りますように。
ベルリンに行ってきた。
寒いときにはできるだけ
ヨーロッパ行きを避けるんだけど
今回は事情がある。
友人の短編映画がベルリン映画祭の
コンペティションにノミネートされたからだ。
本人には言わず、現地でいきなり驚かすという
安っぽいドッキリ方式だ。





マウアーパークというところの
地元密着型の蚤の市。業者が少なくて、
「これ、どうすんだ?」というしみじみした
ダメ具合のモノが多くて、とてもいい。
ここに住んでいれば欲しいだろうと思うモノが
たくさんあった。
日程が短い場合でも、できるだけ週末を挟むようにして
どこに行ってもフリマなどをパトロールしている。








ベルリンでは、映画祭以外にも
見たいモノはたくさんあった。
ノイエ・バッフェというところの
死んだ息子を抱きしめる母親の像、
ホロコースト記念碑。
親子像は何もない空間に天窓が開いていて
雪がヒラヒラと落ちていた。
ホロコースト記念碑は棺のイメージの石の塊が
巨大迷路のように並んでいる。



ベルリン映画祭は他の映画祭と比較しても
巨大なスケールであるらしく、街のいたるところに
上映会場やイベントスペースがある。
上映される本数が多いので日本の作品も多いが、
長編映画が若松監督、短編が平林監督と、
コンペティションに選ばれている日本人監督は
この2人だけだそうだ。



レッドカーペットがあるポツダマープラッツには
ロレアルのメイクブースがあった。
街全体が映画祭を楽しんでいて、観客の批評も鋭い。
日本では考えられないことだけど、短編の会場は
五百人収容なのに、チケットがすべて
売り切れていた。
標準レンズしか持っていなかったので
監督の舞台挨拶が豆粒みたいになった。














































やることが特になくなってきてから
写真を撮るのが面白くなってくる。
地下鉄のU-バーンを適当に選んで終点まで行ってみる。
そこは団地がいくつかあって、レンタルビデオ屋と
ちいさいスーパーがあるだけの駅だった。
浅草とか京都ではなく、
小菅とか西荻窪みたいなところ。
















ベルリンから5時間ほど電車に乗って、
次はプラハに向かう。


2010年2月23日 発行 converted from former BCCKS
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