うちの長女、全国の小・中学生の例に漏れずテニスの王子様に夢中の時期がありました。
中学校に行ったらテニスをやるんだって張り切っていました。が、中学校のテニスって軟式なんですよね。軟式と硬式の違いを話したら「硬式がやりたい」。ま、テニスの王子様が硬式だから、無理もないか。
で、ここで皆さんだったら子どもにどう対処しますか?
「中学校は軟式なんだから、高校に行くまでガマンしなさい」
「しょうがないでしょ、あきらめなよ」
「勝手にやったら」
などなど…。
この言葉を聞いて、子どもはどう思うでしょうね。せっかく硬式テニスをやりたいっていう「やる気」がしゅぅ~んってしぼんじゃうかも。それにもめげず、自分で何とかしようと硬式テニスクラブを探し出してきたとしたら?
「そんなのに通わせるほどの余裕はないのよ」
「そんなこと調べるより、やることやったの?」
「軟式でガマンしなさい」
これでは完全に「やる気」はしぼんじゃいますよね。
その状態を見て、多くの親が口にする言葉は
「ウチの子、やる気がみえないのよ…」
おいおい、だれがその原因をつくったのかわかっているのかな?
ここで『風船』を思い浮かべて下さい。風船をふくらませるにはどうしたらいいですか?
はい、空気を入れてふくらませますよね。
このとき、空気の圧力は「内から外に」向かっていますね。だからきれいな球形にふくらみますね。このときの「内から外に」向かう圧力が「やる気」なんですね。
ここで、先にあげた言葉はどうでしょうか?
せっかく「内から外に」向かっている圧力を両手でぐっと押しているようなもの。そうなると風船ってどうなるでしょう。
1.圧力に押されてしぼんでしまう
2.圧力のない方向へ、いびつな形でふくらんでしまう
3.圧力に負けて割れてしまう
だいたいこの3つでしょう。
この1.の状態が「やる気を失った状態」といいます。
2.の状態、これは圧力のない方向へ向いてしまう、その果てが「不良」と呼ばれる行為につながるんですね。
3.はどうか?これがいわゆる「切れた」って状態。昨日までおとなしかった子が突然…ってやつです。
親がなにげにかけている言葉、悪気はなくても子どもにとっては風船にかけられた圧力になっちゃう。怖いですね、ホント。
じゃあ、どうしたらいいの?
ここで先の長女の例をちょっとご紹介。私が最初にかけた言葉は
「じゃあ、どうしようか?」
「う~ん、調べてみるわ」
「どうやって?」
「そうね…インターネットで」
ということで、早速インターネットでいろいろと検索し始めました。そしたら地元で一つだけ、硬式テニスクラブがあるのを発見。
見学に行きたいと言っていましたが、それ以上の情報は得られず。とりあえず友だちと近くの市営コートに行ってみたら…
なんとちょうどその日に別の子ども向けの硬式テニスクラブが練習に。そこで声をかけられ、体験させてもらい、がぜんやる気に。
昨日、たぬき妻がつれそってそのクラブを見に行きました。たぬき妻、そのコーチの指導方法に惚れ、すぐに入会手続き。
なんと長女の願いが叶っちゃったんですよね。
ここで私がやったのは、長女に圧力をかけずに、長女のやることを否定せずフォローしてあげただけです。そうすることで、自分で何かを見つけてくることができ、目標を達成することができちゃうんですよね。
まずは風船にかかっている圧力を緩めてあげて下さい。
それだけで、子どもって自分で何かをやり遂げる力はあるんですから。
前回は「やる気の正体」というテーマでお伝えしてみましたが、いかがだったでしょうか?
子どもってもともと「やる気」は十分あったはずなんですよね。それが外からの圧力により伸びる力をそがれて、それを繰り返すうちに「やる気」が失われていく、という内容でした。
さて、今回はその「やる気」を伸ばすには…ということについてお伝えしてみましょう。
ウチの長女、やる気が多すぎて困るくらいです。
幼稚園の頃から今までスイミング、ピアノ、バレー、工作、絵画、自転車、
料理、テニス、その他諸々…いろんな事に興味を向けています。そしてそれらはどうなっているのか…
なんと、そのほとんどが身になっています。残念ながらプロ級になるようなものは今のところありませんが、それぞれに対してそれなりの成果を上げているのは確か。
その影響か、次女、長男もいろんなことに興味を向けています。そしてそのすべてが、「親からしかけたものではない」のも確か。
ではたぬき家がどのように育ててきたか、これは単純なことなんです。
1.興味を持ったものはすべてやらせてみる
2.興味をもったものを行う「環境」を整えてあげる
3.成果が出ようが出まいが、それを行っている「行為」について認めてあげる
といったところでしょうか。
1.については言葉のとおり。ただしお金はなるべくかけない手段を考えましたよ。
買わなきゃいけないものがあれば、中古品やフリーマーケット、特売で手に入れたり、知り合いからいろんな情報を集めたり。「最高のもの」を与えるのではなく、「最低限度必要なもの」を集めるだけにしました。それで十分なんですよね。
2.については1.と似ているのですが、親としてやれること、例えば習い事の送り迎えとかをできる限り行っています。
また工作名人の長男に至っては、お絵かきのできる紙(広告の裏やお絵かき帳)、クレヨン、工作用の箱、はさみ、セロテープは要求されるだけ与えてあげ、思いついたら作業できる環境をつくってみました。与えるといっても、セロテープ以外はほとんど家にある、一見「ゴミ」ですけどね。
そして何より大切なのが3.の「認めてあげる」です。
いい成果を出したとき、これはだれでもほめてあげるでしょう。ではいい結果を出さなかったときは、皆さんどうしていますか?
おそらく「何も言わない」「気にもとめない」、最悪は「いい結果がでないので叱る」ということもあるのでは?
「叱る」というのは前回書いた「外からの圧力」になるので、良くないのはわかるでしょう。
では「何も言わない」はどうでしょうか?
実はこれは「無視」という、別の「外からの圧力」なんですね。
できたときだけほめられて、普段は何も言われない。
「いい結果に向かって行動を起こすためには、それでいいんじゃないの?」
そう思う人もいるでしょう。自分がその立場に置かれたら? きっとやる気がどんどん失われていくのに気付きませんか?
特に「ほめてあげる」必要はないんですよ。「認めてあげげる」ことをやればいいんです。
「ピアノ、どうだった? そう、うまくいったね」
「バレーは何をした? へぇ、そんな練習したんだ。」
「今日は料理してくれたんだ。 ありがとうね」
「お、たくさんおえかきしたねぇ」
などなど。
結果がうまくいってもいかなくても、その行為をやったということを「認めて」あげれば、子どもは「ちゃんと見てくれているんだ」という安心感が生まれます。
そうすると、次もまたやってみようという意欲に結びつくんですよ。
この「認める」という行為は、毎日毎日行う必要があります。「たまにしかほめない」という親もいますよね。ほめるのは「たまに」でもいいんです。「認める」ことを毎日やってみて下さい。子どもは間違いなく、最初にあった「やる気」を保ったまま、いやうまくいくと、さらにやる気を伸ばして成長していくものなんです。
子どもの「やる気」を伸ばすのに、意識を変えるのは子どもではなく我々「親」だということに気付きましたか? 子どもとはいえ、親である「あなた」ではないんです。心を持った一人の人間です。その心を勝手に動かすことは、親といえどもできることではありません。それを動かそうとすると、前回言った「圧力」になっちゃうんですよね。
「認める」というのは、中から外に向かう「やる気」という力をさらに外に伸ばすための「周りの圧力を減らすこと」に相当するものだと考え ています。
風船も、外側の圧力が低ければすぐにふくらみますし、さらに外に向かってふくらもうとする力が生まれますからね。
まずは親である私たちの気持ちを変えてみましょう。
自分が「変わった」と思えたとき、子どもが「変わった」ことにきっと気付くでしょう。
「え、子どもに特別扱いするの?」
いきなりそんなことを思ったお父さんやお母さん、結構いるのではないでしょうか。
「子どもは兄弟で特別扱いしないで、公平に育てないと…」
「そりゃ下の子の方がかわいいって思うときが多いけど、だからといって差別はしていませんよ」
「公平に扱わなきゃって思っているけど、どうしても下の子に目がいっちゃうのよねぇ」
いろんな声が聞こえてきそうですね。
ところで自分の子どものときを思い出してください。
おばあちゃんから「あなただけよ」といって、お姉ちゃんに内緒でそっとあめ玉をもらった。そんな経験ありませんか?
その時、どんな気持ちがしましたか? うれしかったですよね。
優越感に浸れるし、それでおばあちゃんが好きになったでしょう。そしてその後から、おばあちゃんを見る目が変わってきた。いつでも「私の味方なんだ」って。
そう、信頼関係が生まれたんですよね。
人って、「自分だけだ!」っていうのに弱いんですよね。
広告なんかでも「これを見ているあなただけですっ!」なんて文字に弱い人、たくさんいるでしょ。そしてそれを所有することで満足感を得る。これって集団心理学なんですよね。
たぬき家、この手をよく使います。
普段の生活は兄弟の上下関係なく、じゃんけんで決めたり、均等に分け合ったり。公平に分け与えるんですよ。でも、ちょっと長女の態度がおかしいな、次女の機嫌がおかしいな、長男の感情が不安定だなって感じたとき、この「特別扱い」が登場します。
例えば姉妹げんかで次女の機嫌が悪そうだなって感じたとき。他の兄弟が周りにいないのを見計らって、こっそりと台所へ呼び寄せます。そして隠れて「あなただけだよ」ってチョコレートをあげるんですよ。そしてここがポイント。
「他の人には内緒だよ」
このときに次女の心の中には「あ、ちゃんと見てくれているんだ」って意識が生まれます。そう、これはコーチングスキル「承認」の一つなんですね。
さらに必要なのはこの後。実は折を見て同じ事を他の兄弟にもやるんですよ。そうすることで、一人だけ「にこにこ顔」になっているのを不審がられないし、みんなが満足していられるんですね。
ほら、特別扱いもこうやれば公平に扱っていることになるでしょ。
でもこの方法、諸刃の剣になるときもあります。
うちの長男、まだ3才のときにこの手を使いました。お姉ちゃんが学校に行っている間に「お姉ちゃんには内緒だからね」って。そしたらうれしいんですよね。姉ちゃんたちが学校から帰ってきたら、にこにこ顔で
「他の人にはないしょやっちゃが!」と大きな声で報告。
ま、まだ良くわかっていなかったと言うことで…。
お姉ちゃん二人はなんとなくわかっているので、特にそれについては何もいいませんでしたけどね。それに二人ともすでに何度も「特別扱い」を経験してますから。
でもこれ、何回も頻繁に使うと効果が薄くなるし、やっていない方にばれちゃうと、そちらの信頼関係を崩しかねませんからね。
コツは
「特別扱いは素早く、隠れて、公平に」
がキーポイントですよ。 是非おためしあれ。
先日、コーチングの講演をやったときに知り合った人から、こんな話しを聞きました。
その人がいる地区でも有名な小学生の少女バレーボールチーム。県内でもかなりの成績をあげてるとか。小学生の時からそれだけの成績なら、きっとその地区の中学校も中体連などで優秀な成績かと思いきや…。
実は、中学に行くと誰一人としてバレーボールをやらないそうです。
よくよくその話しを聞くと、どうもそのチーム、かなり厳しいらしい。また、第三者が見ての感想としては「チームが勝つこと=監督、コーチ、親の名誉」としてしか見られないということ。なんと、似たような話を別の地区のチームでも聞いたことがあるんですよ。
ま、チームの指導方法のとらえ方は人それぞれ。
しかしその結果、「子ども達がバレーボールを続けていない」という事実は変わらないんですよね。
この話、みなさんだったらどのようにとらえますか?
前にある指導者と話しをしたことがあります。私はコーチとして、コーチングをベースとした指導方法の話しをしたのですが、そのときの答えは
「それは正論だろうね。実際に指導者講習でもそんなふうに言われている。
しかし、実際にはそううまくはいかないよ。子ども達と長年つきあっているけど、それがうまくいかなんだよ。」
う~ん、ホントにそうかな? そして話しを続けていると、その節々で聞かれる言葉に気がつきました。
「どうしても子どものやる気がでないから」
「今の子どもはやる気がないから」
「そりゃ子どものやる気の問題だよ」
『やる気』というところに対してすべて『子ども』の責任にしているんですよね。
また、別の指導者とも話しをしたことがあるんです。その指導者いわく
「初めはボールを確実に取れるところに投げて、『よし、取れたな』というのを何回も続け、子どもが自信をつけたところで少しずつ難しい球を放るんですよ。
それを繰り返すことで、子どもは確実にボールを取りに行けるんだよね。」
そのチームを見ていると、とても活き活きして「自分からやっている」って雰囲気がありました。
前に「やる気の正体」で、やる気はその子自身から発生するということをお伝えしました。その中で、やる気を失った状態っていうのを伝えたの、覚えていますか?
親や周りからかけられた『圧力』が子どものやる気を失わせるっていうことでしたよね。そう、最初に書いた強いバレーボールチームにしても、やる気を子どものせいにしている指導者にしても、子どもに対して「圧力」をかけているとしか思えないんですよね。
この状態を総称して「やらされている」っていうんですよ。そうなると、子どもはどうなるか…。もうおわかりですよね。
ところで、同じバレーボールをやっているウチの長女。このような指導者の話を聞いて、ちょっと気になったので質問してみました。
「バレーボール、どう?」
返ってきた答えは…
「テニスをやるために、バレーもがんばってるよ。」
どうやらバレーで教わる技術がテニスに通じると感じたようで。それなりに張り切っています。
バレーボールは「やらされている」のではなく「やりたいこと」としてやっているみたいですね。ただし、その先の「もっとやりたいこと」のためにですけど。だから、長女にはこう言っています。
「やりたいことはどんどんやっていいよ。」
子どものウチから「やりたいことでやる気を伸ばす」という事のくせをつけると、あらゆる方面に興味を持って取り組む意識が根付きますよ。人生、「やりたいこと」をやっていきましょうよ。「やらされていること」は決して長続きしませんし、成長も望めない、たぬきコーチはそう考えています。
2012年2月15日 発行 初版
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たぬきコーチの古賀弘規です。コーチング、ファシリテーション、自己啓発、人材育成、その他もろもろ、人生にお役に立つ小説や物語、ノウハウをお届けします。