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登場人物紹介

安田課長
営業の課長でいつも部下や家族とのコミュニケーションで困っている

やる気仙人
安田課長が困っているとアドバイスをくれるお助けマン

安田課長とやる気仙人のコミュニケーショントーク

古賀弘規

ユーアンドミー書房

一年間にあったことはいいことから振り返ってみよう

安田課長 「いやぁ~、そろそろ一年も終わりだなぁ。今年もいろいろとあったもんだ」
やる気仙人「そうじゃな。安田よ、おまえさんは今年一年を振り返ってみてどんな年じゃった?」
安田課長 「そうだねぇ。いろいろとイヤな事件もあったし、不景気でなかなか売上も上がらなかったし。家でもカミさんとちょっとケンカしてなぁ…」
やる気仙人「なんじゃなんじゃ。おまえさん一つもいいことがなかったのか?」
安田課長 「いやぁ、そういうわけじゃねぇけどよ。つい悪い方が頭に浮かんじまうよなぁ」
やる気仙人「なるほどのぉ。ところでおまえさんのところでは反省会というものをやったことがあるか?」
安田課長 「反省会かぁ。営業報告を毎週やっているけど、それが反省会みたいなもんだな。うまくいかなかったところを出して、そこからどうすればいいかってのを考えるけどよ。これがみんな頭を抱えるんだよなぁ」
やる気仙人「当然じゃ。なぜならおまえさん達がやっとる反省会は正しい反省会じゃないからな」
安田課長 「なんだよ、正しい反省会ってのがあるのか?」
やる気仙人「うむ。反省というとつい悪かったことばかりに目を向けるじゃろ」
安田課長 「当然じゃねぇか。悪かったことを良くする、それが反省だろ」
やる気仙人「そうではない。反省というのは自分のやったことを振り返ることじゃ。悪かったことだけでなく、良かったこともな」
安田課長 「そうかぁ。ってことは正しい反省会というのは良かったことも出さなきゃいけねぇってことだな」
やる気仙人「その通りじゃ。ただしその順番も大事じゃ」
安田課長 「順番? 反省するのに順番があるってのかよ」
やる気仙人「うむ。まずは良かったこと。ここから出すことが大切じゃ」
安田課長 「ほう、そりゃどうしてだい?」
やる気仙人「悪かったことから出すと、気持ちはどうなる?」
安田課長 「そりゃ落ち込むよなぁ」
やる気仙人「その後良かったことを出せ、といってもなかなか出てこんじゃろ」
安田課長 「おぉ、確かに仙人の言う通りだ」
やる気仙人「しかし順番を逆にするとどうじゃ。良かったことで気持ちが高まるじゃろ。その後に悪かったことを出しても気持ちがそれほど落ち込むことはないはずじゃ」
安田課長 「なるほどねぇ」
やる気仙人「そのあとに、次にどうしようという話しをすれば、前向きな気持ちのまま良い意見が出てくるものじゃよ」
安田課長 「そうか。それでうちの反省会はなかなかいい意見が出てこねぇのか」
やる気仙人「おそらくな。これは一年を振り返るときにも活用できる。まずは自分の中で良かったことを振り返ると良い。そうすれば気持ちの良い一年だったと思えるはずじゃ」
安田課長 「その気持ちを持っていれば、次の一年も前向きに行動できるよなぁ」
やる気仙人「その通りじゃ」
安田課長 「よぉし、じゃぁ今年一年で良かったこと、良かったこと…おぉ、あったあった。今年は幻の酒が手に入ったんだよ。こいつで一杯ってのがよかったよなぁ~」
やる気仙人「安田の良かったことといえば、いつも酒の話題じゃのぉ…」

そこにしっかりとした意志があれば願いは必ず叶います

やる気仙人「安田よ、いよいよ新しい年を迎えることになったのぉ」
安田課長 「そうだなぁ。また今年もいろいろとがんばらなきゃな」
やる気仙人「ところでおまえさん、今年は何かやってみたいこととかあるのか?」
安田課長 「やってみてぇっていうかよ、今年こそは念願のマイホームを建ててぇよなぁ」
やる気仙人「なるほどな。しかしそれは毎年言っておることじゃないのか? いつになったらそれが現実になるんじゃろうなぁ」
安田課長 「それはこっちが聞きてぇよ。なぁ仙人、願いをうまく叶えるいい方法ってねぇのかよ?」
やる気仙人「う~む、知らんでもないがのぉ」
安田課長 「なんだよ、知ってるんだったらケチケチしねぇで教えてくれよ。な、頼むよ」
やる気仙人「まったく、おまえさんはずうずうしいのぉ。よし、まずは一つ聞くが、おまえさんは何のために家を欲しいと思っておるのか?」
安田課長 「何のためにって…そりゃ家族のためだろう」
やる気仙人「えらくあいまいじゃのう。じゃから家が手に入らんのじゃ。それでは家を欲しいと思っておっても、ただの空想にしかならん」
安田課長 「空想ってことはねぇだろう。じゃぁどうすりゃいいってんだよ?」
やる気仙人「頭の中で思い描いているものを空想からイメージに変化させるのじゃよ」
安田課長 「空想からイメージに変化? なんだよそれは」
やる気仙人「空想もイメージも、どちらも頭の中で思い描くものに変わりはない。じゃが空想には『そうなるぞ!』という意志が込められておらん。じゃがイメージにはその意志が込められておる」
安田課長 「だから『家を持つぞ』っていう意志はあるじゃねぇかよ」
やる気仙人「意志とはそんな簡単なものではない。『何のためにそうなりたいのか』がもっとはっきりとしておらんといかんのじゃ。それを手に入れたらどうなるのか、という姿もはっきりさせることが重要なんじゃよ」
安田課長 「それで本当に欲しいものが手に入るってのかよ?」
やる気仙人「うむ。これは多くの成功者が実践しておる方法じゃ。間違いない。さらにこれにコミュニケーションを加えると効果的じゃぞ」
安田課長 「どうやってやるんだよ?」
やる気仙人「イメージを湧かせようと思っても、一人ではなかなかうまくいかん。しかし誰かに『どんな家ですか?』なんて聞かれたら答えるじゃろ。こうやって質問をしてもらってそれに答えることでイメージがより明確になっていくんじゃよ」
安田課長 「なるほどねぇ。会話をうまく活用することでイメージってのは、よりリアルになるんだな」
やる気仙人「そうじゃ。そのイメージが自分の中で『当たり前』になったときには、気がついたらそれを実現させる行動を起こしておるんじゃよ」
安田課長 「よぉし、早速実践してみるか!」
やる気仙人「そうじゃな。では家に帰って早速奥さんと会話をしてみるとよいぞ」
安田課長 「いやぁ、家に帰る前にちょいと寄りたいところがあるもんで」
やる気仙人「なんじゃ? あ、こやつまたスナックで女の子の前で実践してからにしようと思っておるな…」

同情はしなくてもいいけれど共感はしてほしい

安田課長 「仙人、聞いてくれよぉ。ったく、なんであいつ怒り出したんだろうなぁ。」
やる気仙人「何じゃ、一体何があったのじゃ?」
安田課長 「昨日よ、オレの友達がウチに来たんだよ。先日車で事故に遭ってケガしちまったんだと」
やる気仙人「ほう、災難じゃったな」
安田課長 「だからよ、オレもそう思って『そりゃ大変だったな。かわいそうについてないなぁ』って言ったんだよ。そしたらなんだか急に怒り出して」
やる気仙人「なるほどな。おまえさんまたやってしもうたな」
安田課長 「やってしまったって、何か悪いこと言ったか、オレ?」
やる気仙人「やはり気づいておらんようじゃな。おまえさん、相手が事故に遭ってケガをしたと聞いたとき、どう思ったんじゃ?」
安田課長 「だから言ったろう。かわいそうだって思ったんだよ」
やる気仙人「では一つ聞くが、お前さんが逆の立場で同じような言葉をかけられたら、どう思う?」
安田課長 「どう思うって…まぁ確かにかわいそうだって言われていい気分にはならねぇな。いや、それどころかそんな同情よりももっとかける言葉があるだろうって思うかも」
やる気仙人「その通りじゃ。おまえさんがかけた言葉、それは同情以外の何ものでもない。そんな言葉、欲しいか?」
安田課長 「いやぁ、同情なんかされても嬉しくはねぇよな。なんだか相手の方が上に立っているみたいで」
やる気仙人「うむ。同情とはどうしても一方が上の立場で見てしまうものなのじゃ。そんな立場で言葉をかけられてもうれしいものではない」
安田課長 「そういや昔ドラマで『同情するなら金をくれ』ってのがあったな。あれもそうか?」
やる気仙人「そうじゃ。同情なんぞされても一円も得にはならんからな」
安田課長 「じゃぁこんな場合はどんな言葉をかければいいんだよ?」
やる気仙人「必要なのは同情ではなく共感じゃ。共感の思いがとても大事じゃ」
安田課長 「同情と共感って違うのかよ?」
やる気仙人「共感というのは相手の立場になって、同じ思いを共有する事じゃ」
安田課長 「なるほど。じゃぁあの場合はどんな言葉をかけりゃいいんだ?」
やる気仙人「お前さんだったらどんな言葉をかけて欲しいかな?」
安田課長 「う~ん、やっぱ大丈夫か、とか今困っていることはないか、とか」
やる気仙人「そうじゃろ。その言葉が共感じゃ。相手の立場になって考えること、これが大事じゃぞ。おまえさんはその友達が成功したら、一緒に喜んであげることができるかな?」
安田課長 「そりゃ友達だからよ。でもこれがライバルだったら喜べねぇなぁ」
やる気仙人「なるほどな。しかし相手に良いことが起きたら一緒に喜ぶのも共感じゃ。特に相手がライバルならなおさら一緒に喜んでやるとよい」
安田課長 「なんでだよ?」
やる気仙人「そこで喜べるということは、おまえさんのふところの大きさがうかがえるというものじゃ。これができればお前さんの信用はうなぎ登りじゃぞ」
安田課長 「なるほどぉ。共感ってのはとても重要なんだな。よしわかった。じゃぁ早速それを実践してみるか。え~っと、どこかに困っている人か喜んでいる人はいねぇかなぁ~」
やる気仙人「まったく、安田のヤツはホント単純なんじゃからのぉ」

「好きです」にもう一言添えると間違いなく印象度は高くなります

安田課長 「仙人、ちぃっと困ってんだけど聞いてくれるかよ」
やる気仙人「なんじゃ、どうしたんじゃ」
安田課長 「オレっちの娘の事なんだけどよ。どうやらバレンタインデーの時に何やら告白をたくらんでるらしいんだよ」
やる気仙人「ほうほう、お前さんに似ずにかわいい子じゃったな」
安田課長 「それはほっとけ! でよ、親としちゃそれをなんとか成功させてあげてぇんだけど。告白をうまくやるコツってのはねぇのかよ」
やる気仙人「親心じゃのぉ。よぉし、今回はワシも人肌ぬいでやろう」
安田課長 「よっ、さすが仙人だ。で、告白をうまくやるコツってのはどうすりゃいいんだよ」
やる気仙人「うむ、まぁ最終的には告白された側がどう思うか、というところにかかっておるからのぉ。しかし告白そのものを好印象にすると、後々心に残るものじゃ」
安田課長 「ほぉ、確かにそうだな。で、そのためにはどうすりゃいいんだい」
やる気仙人「うむ、告白するときにはただ『好きです』と言うだけでなく、そこに一言付け加えるとよい」
安田課長 「ほう、一言付け加えるのか。で、何を付け加えりゃいいんだよ」
やる気仙人「これが重要じゃ。よく聞いておけよ。付け加えるのはな、自分が相手のどこを気に入っておるのか、というところじゃ」
安田課長 「どこを気に入っているのか、だと? どういうことだい、それは」
やる気仙人「例えばこういうことじゃ。あなたのサッカーをやっているときの一生懸命な姿。それが私にはかっこよくてステキに見えました。と、こんな感じじゃな」
安田課長 「なるほどねぇ。そう言われりゃ悪い気はしねぇし、自分のどこがかっこいいのかがわかるよなぁ」
やる気仙人「そうじゃろう。ここで付け加える言葉に一つ注意点があるのじゃ。例えば今のセリフを次のように言い換えるとどう感じるかな?」
安田課長 「どれどれ、言ってみろよ」
やる気仙人「あなたのサッカーをやっている一生懸命な姿、かっこよくてステキですね」
安田課長 「まぁ、悪くはねぇけど。でもさっきの方がググッときたねぇ」
やる気仙人「そうじゃろう。それはどうしてだと思う?」
安田課長 「そういや、同じ意味なのにどこが違うんだ…あ、そうか、最初のは『私にはステキに見えました』と言ってたよな。でも二回目は『ステキですね』だったなぁ」
やる気仙人「よく気づいたな。最初のは私にはこう見えた、こう感じたというI(アイ)メッセージを使っておる。じゃが二回目はあなたはこうですね、というYou(ユー)メッセージになっておる。人の印象に残りやすいのは、自分がこう感じた、という言い方のIメッセージの方なのじゃ」
安田課長 「なるほどぉ。それだとおべっかを使っているようには聞こえないから、自分の正直な気持ちとして伝えられるのか。よぉし、いい事聞いたぞ」
やる気仙人「なんじゃ、また安田のヤツよからぬことを考えておるようじゃが。おい、安田よ、まさかこれをまた飲み屋のお姉ちゃんに使おうなどとは思っておるまいな」
安田課長 「ぎくっ! な、なにをおっしゃいますやら、やる気仙人さんよぉ」
やる気仙人「どうやら図星のようじゃな…」

本当に相手の事を思うなら本音を相手にぶつけてみろ!それが真のやさしさだ

安田課長 「ったく、あの野郎はむかつくんだからなぁ。」
やる気仙人「おいおい、なにやら腹をたてておるようじゃが?」
安田課長 「仙人、聞いてくれよ。学生時代からの友達の事なんだけどよ。この前一緒に飲みに行ったら口論になっちまってよ」
やる気仙人「一体何が起きたのじゃ?」
安田課長 「最近あいつ、金にだらしなくてなぁ。そのことをちょいと注意したんだよ。このままじゃ奥さんも泣いちまうぞって。そしたらよぉ」
やる気仙人「そんな事人に言われる筋合いはない、と返された。そうではないのか?」
安田課長 「そうそう、その通りなんだよ。仙人、どうしてわかったんだ? せっかくあいつのためを思って言ってやったのによぉ。こういう場合は黙って見てたほうがいいのかなぁ」
やる気仙人「おまえさんが逆の立場ならどう思うかな?」
安田課長 「逆の立場ねぇ。まぁそんなこと他人から言われたくはねぇけどよ。けどやっぱ言われねぇとこっちもわかんなかったりするからなぁ」
やる気仙人「じゃろ。ワシは今回のおまえさんの発言には感心しておる。友達の事を思っておるというのがよぉく伝わってきたからのぉ」
安田課長 「そうなんだよ。ヤツの奥さんも気の毒だからよぉ。やっぱ誰かがガツンと言ってやらねぇといけねぇ場面もあるよな」
やる気仙人「そうじゃ、その通りじゃ。じゃがほとんどの場合はそう言う事を言うとカドが立つと思い、つい避けてしまうものなのじゃ」
安田課長 「そうだよなぁ。けどやっぱオレっちも相手との後々のつきあいを考えると、つい口をつぐんじまうこともあるわ」
やる気仙人「ま、おまえさんが相手の事をどれだけ大事に思っておるかがポイントになるじゃろ。どうでもいいような相手じゃったら、そのままほったらかしにしておけばいいんじゃからのぉ」
安田課長 「いやぁ、今回はそうじゃねぇよ。なんだかんだ言ってもやっぱあいつは親友だからよぉ」
やる気仙人「うむ。それが真のやさしさというやつじゃ。」
安田課長 「真のやさしさかぁ。確かにそうかもしれねぇなぁ」
やる気仙人「やさしさとは、相手をなぐさめたり褒めたりするだけではダメじゃ。相手の成長を願ったり、悪い道から立ち直らせたりする事の方が大事なのじゃ。じゃから時にはこちらの本音を直接相手にぶつけなければいかんときもある。」
安田課長 「う~ん、仙人の言う通りだけどよ、やっぱ本音をぶつけるのは怖い時もあるよなぁ」
やる気仙人「それを恐れておるという事は、まだまだ自分かわいさが先に立っておる証拠じゃ。やさしさとは時にはお互いに痛みを伴うものなのじゃよ」
安田課長 「痛みかぁ。だからかなぁ」
やる気仙人「なんじゃ、思い当たることでもあるのか?」
安田課長 「いやぁ、最近スナックの景子ちゃんがやたらとオレっちにキツイ言葉をかけてくるんだよ。オヤジクサイとかスケベだとか言ってよぉ。これも真のやさしさなんだろうなぁ」
やる気仙人「いや、安田よ。それは単におまえさんがホントにオヤジくさくてスケベなだけなんじゃと思うがのぉ…」

相手がそこにいる だから会話になるのです

安田課長 「おい、わかってんのかよ。ったくおまえは人の話を聞いてねぇんだから」
やる気仙人「おやおや、安田のヤツ部下にお説教か。お、終わったようじゃな。安田よ、どうしたのじゃ?」
安田課長 「おぉ、仙人。聞いてくれよ。オレっちの部下がよぉ、オレの話を全く聞いてねぇんだよ。今度もそのせいでミスやらかしてな。んとに困ったよ」
やる気仙人「なるほどな。どうやらおまえさんは部下と会話をしておらんようじゃな」
安田課長 「部下と会話? ちゃんとしてるよ。オレっちは部下に言う事をしっかりと伝えてるぞ。それを聞いていない相手がわるいんだろうが」
やる気仙人「やはりそうか。どうやらおまえさんは会話というものの本質を知らんようじゃな」
安田課長 「会話の本質? なんだよ、それは」
やる気仙人「ズバリ言うとじゃ、会話は相手がいるからこそ成り立つ行為なのじゃよ」
安田課長 「そんなの当たり前だろう。だからオレっちは部下を相手に…」
やる気仙人「本当にそうかな? おまえさんがやっておるのは単なる伝達行為ではないのか? おまえさんが言った事に対して相手からの意見や言葉を耳にしたのか?」
安田課長 「相手からの言葉? どういうことでぇ」
やる気仙人「会話というのは双方向。つまりこちらが何かを言えば相手から何かが返ってくる。そのやりとりのことを会話というのじゃよ。じゃがおまえさんがやったのは一方通行。こちらが言いたい事だけを言ったのではないのかな?」
安田課長 「うっ、するどいところを突くじゃねぇかよ…」
やる気仙人「おまえさんが伝えた事が相手にちゃんと理解されておるか。それを確認する質問をしておらんじゃろう。じゃぁから部下はおまえさんの言う事をしっかりと理解しておらんかったのじゃよ」
安田課長 「じゃぁ会話ってのはどうすりゃ成り立つんだよ?」
やる気仙人「うむ、会話は双方向であることを自覚することじゃ」
安田課長 「双方向ねぇ。つまり相手の言葉にも耳を貸せってことか」
やる気仙人「その通りじゃ。目の前に相手がいるからこそ会話が成り立つ。おまえさんがやっていたのは単なる伝言ゲームに過ぎん。それでは相手はおまえさんの言う事を理解してはくれんぞ」
安田課長 「会話は双方向かぁ。わかっているようでいざというときにはそれがわかってねぇもんだな。どうりで会話が成りたたねぇと思ったよ」
やる気仙人「なんじゃ、他にも何かあったのか」
安田課長 「いやぁ、ウチのカミさんに小遣いの値上げ交渉をやったんだよ。でもよ、カミさんから何の反応もねぇんだよなぁ。こちとらふところ事情がきびしんだから、早く何とかしねえと」
やる気仙人「なるほどなぁ。そのためにはまずはおまえさんが奥さんの言う事に耳を貸さねばならんぞ。奥さんには奥さんの言い分があるからのぉ」
安田課長 「それを聞いてたらカミさんの欲しいものを買わされてしまうだろうが。よぉ、なんかいい手はねぇかよ」
やる気仙人「こりゃこりゃ、自分の都合ばかり言いおって。これじゃ奥さんとはとても会話になりそうにないのぉ」

形だけじゃダメ でも形も必要

安田課長 「おいおい、なんだよそのあいさつは。ぜんっぜん気持ちが入ってねぇなぁ」
やる気仙人「何じゃ何じゃ、安田のヤツ朝からえらく怒っとるようじゃが。どうしたんじゃ?」
安田課長 「いいか、あいさつってのは気持ちを込めねぇとダメなんだよ。わかったか」
やる気仙人「なるほど、あいさつのやり方を指導しておるようじゃな。しかし相手はまだ入ったばかりの新人のようじゃが。これ、安田よ、どうしたんじゃ?」
安田課長 「おぉ、仙人か。聞いてくれよ。あいつらはあいさつのやり方も知らねぇんだからよ」
やる気仙人「まぁそういうものかもしれんな。じゃがおまえさん、こういうことも知っておかなければいかん」
安田課長 「なんだよ、何を知っておかなきゃいけねぇんだ?」
やる気仙人「うむ、形からはいることも大事、ということじゃ」
安田課長 「形から?でもよ、それじゃぁ相手に気持ちなんか通じやしねぇだろう。やっぱ気持ちだよ、気持ち」
やる気仙人「結果的にはそうなんじゃが。しかしな、人というのはその行動に気持ちが入るまでに、その型というものを身に付けねばいかん。その極めたるものが茶道や武術といった古来からあるものなのじゃ」
安田課長 「まぁそう言われりゃそうだけどよ。けどそういったものとあいさつとはちと違うんじゃねぇのか?」
やる気仙人「では一つおまえさんに聞こう。今でこそ営業で身に付けておるおじぎ。おまえさんは最初から気持ちを込めて行うことができたか?おそらくおまえさんの時代じゃから、鬼教官みたいなのが出てきて、集団でおじぎの練習をやらされたじゃろ。どうじゃ?」
安田課長 「やなこと思い出させるなぁ。仙人の言う通りだよ。けれどそれが徹底されたおかげで、お客さんの前では自然にちゃんとしたおじぎができたよなぁ」
やる気仙人「そうじゃ。人が行動を習慣化させるには時間がかかる。そのためにはまず形を徹底して習得させることも必要じゃ」
安田課長 「ってことは何かい。連中もまずはあいさつの型を徹底させろと?」
やる気仙人「そうじゃ。今の時点では心がこもってなくてもよい。ともかくあいさつをするという習慣を付けることの方が大事なのじゃ」
安田課長 「でもそこに気持ちが入るのはいつになるんだよ」
やる気仙人「まぁ人それぞれじゃが。これはやっていくウチに、気持ちが入った方が楽しいということに気づけば後は早いぞ。そのためにはおまえさんが気持ちを込めたあいさつを連中に与え続けることじゃな。」
安田課長 「気持ちを込めてか。よし、それはやり続けてみるか」
やる気仙人「よしよし、安田にもまずは形から入らせてみるとするか」
安田課長 「でもやっぱあの連中も形から入ればいいのかなぁ」
やる気仙人「どうした。何か他に指導するヤツがおるのか?」
安田課長 「いやぁ、飲み屋のねえちゃんによ、形からでいいからオレっちのことを好きだっていわせれば、いつか気持ちが入るのかなぁって…」
やる気仙人「まぁったく、おまえさんはすぐにそういった方面に悪知恵がはたらくんじゃから…」

聞くと聴いてくれない 聴くと聴いてくれる

安田課長 「はぁ、どうしてウチのガキは言うこと聞かねぇかなぁ」
やる気仙人「なんじゃ、安田よ。今回は子どもに手を焼いておるようじゃが、何かあったか?」
安田課長 「仙人よぉ、どうして子どもって親の言うことを聞いてねぇのかなぁ。この前、あれだけ大事な書類だから、先生に渡すのを忘れねぇようにって、ウチの小学生のガキに言ったのに」
やる気仙人「それを先生に渡すのを忘れておったというわけじゃな。じゃぁおまえさんに一つ聞くが、普段子どもとどのくらい会話をしておるかな?」
安田課長 「まぁオレっちも忙しいから、平日はほとんど無理だろ。休みの日にちっとは会話をしているつもりだけどよ」
やる気仙人「ではそのとき、おまえさんは子どもの話をきちんと聴いておるかな?」
安田課長 「そりゃちゃんと聞いてるけどよ、オレも忙しいからなぁ」
やる気仙人「ということは、おまえさん子どもと向き合って話を聴くということをやっておらんのではないのか」
安田課長 「いやぁ、ちゃんと頭には入れてるって」
やる気仙人「それは『聞く』という状態じゃな。門構えに耳の『聞く』じゃ。本当に必要なのは『聴く』、耳へんに心の字が入った方じゃ」
安田課長 「いやぁ、だからちゃんと…」
やる気仙人「いや、おまえさんは『聞く』をやっておるな。その証拠が子どもに現れておる」
安田課長 「どういうこったよ。ウチのガキが証拠ってのは?」
やる気仙人「人はな、自分の話をきちんと聴いてくれていると、相手の話もきちんと聴こうとするものじゃ。じゃが耳だけを貸して心がついてきておらん、いわゆる『聞く』をやると、相手も同じように心を傾けずに聞いてしまう」
安田課長 「ってことはオレっちの話をしっかりと聴いていねぇってことか」
やる気仙人「その通りじゃ。これは与えたものはそのまま返ってくるという法則そのものじゃ。自分が相手の話を聴いておらんのに、相手にしっかりと聴いてもらおうなんていうのはもってのほかじゃ!」
安田課長 「そ、そんなに怒るなよ…」
やる気仙人「おまえさんにはしっかり言わんとワシの話を聴いてはおらんからのぉ」
安田課長 「いやぁ、オレっちも仙人の話はちゃんと心を傾けてしっかりと聴いているじゃねぇかよ」
やる気仙人「にしては毎度毎度いろんな問題が発生しておるからのぉ。おまえさんにいろいろとコミュニケーションのコツを教えておるが、本当におまえさんはワシのいうことを聴いておるのか、まったく出来の悪い生徒を持っておるような心境じゃワイ…ブツブツ」
安田課長 「仙人、そんなに言うんじゃねぇよ。オレっちだって努力してるだろうが」
やる気仙人「まったく、昔指導したやつなんぞすぐにワシの言うことを吸収して実行に移しておったのに。ヤツはなかなか優秀じゃったなぁ…ブツブツ」
安田課長 「おい、仙人、仙人さんよ〜。ありゃ、どうやら完全に自分の世界に入ってるわ。ったく、自分で人の話を聴けって言ってたくせに、今はオレっちのいうことをまったく聴いていねぇんだから。困った仙人だなぁ」
やる気仙人「ったく、安田のヤツときたら…ブツブツ、ブツブツ…」
安田課長 「ダメだこりゃ…」

安田課長とやる気仙人のコミュニケーショントーク

2012年2月16日 発行 初版

著  者:古賀弘規
発  行:ユーアンドミー書房

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古賀弘規

たぬきコーチの古賀弘規です。コーチング、ファシリテーション、自己啓発、人材育成、その他もろもろ、人生にお役に立つ小説や物語、ノウハウをお届けします。

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