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登場人物紹介

安田課長
営業の課長でいつも部下や家族とのコミュニケーションで困っている

やる気仙人
安田課長が困っているとアドバイスをくれるお助けマン

安田課長とやる気仙人のコミュニケーショントーク

古賀弘規

ユーアンドミー書房




  この本はタチヨミ版です。

仲間が欲しい それならまずは聴いてあげなさい

安田課長 「ったく、近頃の新人ってのは何考えてんだか…」
やる気仙人「おやおや、なにやら新入社員に手を焼いておるようじゃが。何かあったのか?」
安田課長 「おぉ、仙人か。ったく近頃のやつらは仲間を作るのがホントへたくそなんだからよぉ」
やる気仙人「仲間づくりがへたくそとは、これまたどうしてじゃ?」
安田課長 「ウチの新人なんだけどよ、見た目は立派で頭もいいんだけど、どうも人付き合いが悪くてね。何を質問しても、はぁ、とかしか言わねぇしよぉ」
やる気仙人「なるほどな。で、安田はその新人に何かアドバイスをしたのか?」
安田課長 「アドバイス?いや、別にそんなことはやってねぇよ。っていうか相手が聴く耳を持ってねぇみたいだしな」
やる気仙人「なるほど。それはまずおまえさんや周りの人間の考え方を変えねばいかんのぉ」
安田課長 「なんだよ、またオレっちが悪いってのか?」
やる気仙人「いや、悪いわけではないがこういった場合は本人の意識を変えるのは難しいものじゃ。それよりもわかっている人間の意識を変化させた方が手っ取り早いわ」
安田課長 「じゃぁ具体的にはどんなことをすればいいんでぇ」
やる気仙人「おまえさん、新人とちゃんと向かい合って話をしたこと、あるのか?」
安田課長 「向かい合ってって、そりゃ面接の時はしたかもしれねぇが…」
やる気仙人「そうではない。新人くんが思っていること、考えていることをしっかりと聴いたことがあるか、と質問しておるのじゃ」
安田課長 「いやぁ、そういったのは相手が心を開いてくれねぇとできねぇからよぉ」
やる気仙人「ではいつになったら心を開く、というのじゃ?」
安田課長 「そりゃ相手次第…じゃねぇんだろ、仙人。」
やる気仙人「うむ、気づいておるじゃろうが、こういったことはまずこちらからやらねばいかん。新人くんも仲間を欲しがっておる。じゃがそのやり方がわからんだけなのじゃよ」
安田課長 「じゃぁまずは話を聴け、と?」
やる気仙人「うむ。人というのは自分の話を親身になって聴いてくれたと思ったときに、信頼関係が結ばれるのじゃ。そうなればすでに仲間の一人になっておるわい」
安田課長 「仲間づくりの第一歩は、相手の話をしっかりと聴け、か。頭ではわかってんだけど、ついそれを忘れて相手が行動するのを待ってしまうんだよな」
やる気仙人「何事も自分から行動を起こさねば、何も変わりはせんぞ」
安田課長 「よぉし、じゃぁ今夜は早速…」
やる気仙人「なんじゃ、どうせまた新人の女の子のいる店にでも行って、口説こうとしておるのじゃろ」
安田課長 「そうじゃねぇよ。今夜その新人を連れて飲みに行くんだよ。そんときにしっかり話を聴くんだよ」
やる気仙人「ほぉ、感心じゃわい。で、どんな話を聴こうと思っておるのかな?」
安田課長 「そりゃもちろん、どの女の子が好みなのかだよ。景子ちゃんがいいか、明美ちゃんがいいか、それとも…」
やる気仙人「なんじゃ、結局は女の子のおしりを追いかけるつもりじゃな。まったく、これでよく部下がついてくるわ。新人の行く末が心配じゃのぉ」

大事なことを伝えるときこそ耳だけじゃなく目で伝えることが大事です

安田課長 「ったく、またミスやらかしたのかよ。おまえはいつも大事なことが抜けてんだよ」
やる気仙人「おうおう、安田のヤツはまた今日も部下にお小言じゃな」
安田課長 「毎回同じ事をいわせるんじゃねぇ。わかったな!」
やる気仙人「ま、こういった部下を持つと大変じゃな。じゃが安田のやつにも落ち度はあるわい。おい、安田、やすだよ」
安田課長 「おぉ、仙人か。今の聞いて足ろう。どうしてあいつは大事なところをいつも聞き逃すかなぁ。それでまたミスだよ」
やる気仙人「うぅむ。まぁ部下にも落ち度はある。じゃがおまえさんにもその責任はあるのじゃぞ」
安田課長 「な、なんでオレっちに責任があるんでぇ」
やる気仙人「それはな、おまえさんの伝え方じゃ。そこに問題があるのじゃ」
安田課長 「伝え方に問題? 一体どこがまずいんだよ?」
やる気仙人「伝え方を教える前に、おまえさんに一つ質問じゃ。人間には五つの感覚があるが、これは知っとるか?」
安田課長 「あぁ、確か視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚だったよな」
やる気仙人「ではその五つの感覚のうち、一番刺激を受けるモノはどれじゃ?」
安田課長 「一番と言えば…やっぱ視覚かな?百聞は一見に如かずっていうくらいだからなぁ」
やる気仙人「そうじゃ、その通りじゃ。目から入ってくる情報というのが人間にとっては一番の刺激となる。ならなんでそれを使わんのじゃ?」
安田課長 「え!?視覚を使えってどういうことだよ?」
やる気仙人「おまえさんは大事なことを言葉だけで部下に伝えておるじゃろう。これを視覚も使えってことじゃ。つまり大事なことは書いて伝えると、より確実に相手に伝わるのじゃ」
安田課長 「あぁ、なるほどなぁ。単純なことだけどそれはやってなかったな」
やる気仙人「じゃろ。よくメモをしろとはいうじゃろうが、これも視覚を活用することにつながるのじゃ。さらに自分で書くというと触覚も活用する。じゃが相手が書けるような状況でないときは、伝える側が書くのがよい」
安田課長 「でもよ、こっちも書く準備ができてねぇときはどうするんだよ?」
やる気仙人「それを防ぐために良いアイテムがある」
安田課長 「おっ、待ってました!」
やる気仙人「おだてても何も出らんぞ。良いアイテムというのは付箋紙じゃ。こういったものを手帳にはさんでおいてあり、ポケットに入れておくと良い」
安田課長 「なるほど、これならちょちょっと書いてすぐに相手に渡せるな。よしよし、これは使えるぞ…」
やる気仙人「うむ、おまえさんにしてはめずらしく素直に聞き入れたな」
安田課長 「よしよし、こいつをあそこで活用すればバッチリだな…」
やる気仙人「おい、安田よ。おまえさんどこでこの書いて伝えるというのを活用しようというのじゃ?」
安田課長 「え、そ、そりゃもちろんお客様との会話で活用するに決まってるじゃねぇか」
やる気仙人「おかしいのぉ。そのわりにはやけに慌てておるようじゃが。ひょっとしておまえさん、また飲み屋のお姉ちゃんを相手にしようとしとるな!」
安田課長 「え、そ、そんなことはねぇよ。誰がオレっちの電話番号を覚えてもらうのに使おうなんて言ったよ…」

こいつはこんなヤツだ そう思って接していたらホントにそんなヤツになる

安田課長 「ふぅ、うちの新人ってどうしてああ使いものにならねぇかなぁ」
やる気仙人「なんじゃ、新人教育で困っておるようじゃがどうしたのじゃ?」
安田課長 「いやな、前々からちょっとクセのあるヤツが来るって聞いてたからよ、しばらく観察してたんだけど、やっぱクセのあるヤツは使いものになりにくいようだわ」
やる気仙人「ほう、クセのあるヤツと先に耳にしておったわけじゃな」
安田課長 「あぁ、人事からそう言われてな。にしても人事はどうしてあんなヤツを入れたんだよ」
やる気仙人「そんなヤツを育てていくの、おまえさんはどう思う?」
安田課長 「育てるもなにも、そんなヤツだから半分あきらめてるわ」
やる気仙人「やはりのぉ。どうやらおまえさんはピグマリオン効果に犯されておるようじゃな」
安田課長 「なんだ、そいつは?」
やる気仙人「ピグマリオン効果とは、ローゼンタールという心理学者が実験して得たものじゃ。先生に『知能テストの結果、この子らは伸びる』と伝えて教育させたところ、一年後には見事に成績が伸びたのじゃ」
安田課長 「ほう。でもそいつらはもともと頭がよかったんじゃねぇのかよ」
やる気仙人「そうではない。実は知能テストなんぞやらずに適当に集めた子どもばかりが対象だっだのじゃ。つまり育てる側に良い偏見があれば、その通りに育つというものじゃ」
安田課長 「ってことは逆もありってことなのかよ?」
やる気仙人「そうじゃ。こいつらはダメな子どもだと先に言われておったら、先生もあきらめて適当にしか育てようとは思わんかったじゃろう」
安田課長 「なるほど。ってことは才能ってのは本人じゃなく育てる側の見方によって変わるって事か」
やる気仙人「その通りじゃ。おまえさんも新人について人事からクセのあるヤツと言われておったじゃろう」
安田課長 「だからオレっちは育てることにあきらめている。そう言いてぇんだろう、仙人」
やる気仙人「うむ、わかっておるようじゃな。よく考えてみぃ。人事だってまったく使えないヤツは入れんじゃろう」
安田課長 「そう言われりゃそうだけどよぉ」
やる気仙人「まずは人事に行って、何でその新人を採用したのか、その理由を聞くと良い。きっと光るものがあったはずじゃ。今度はその光るものに対して良い偏見を持ち、ピグマリオン効果を良い方に活用するのじゃ」
安田課長 「つまりオレっちが新人に対しての見方を変えれば、あいつもこれから伸びていく。そう言いてぇんだろう」
やる気仙人「うむ。これは子育てにも応用できる技じゃぁらな。覚えておくがよい」
安田課長 「たく、仙人はオレっちにあまり良い偏見は持ってねぇな。いっつも口うるせぇんだからよぉ」
やる気仙人「ん? 今何か言ったか?」
安田課長 「いや、仙人っていっつもいいこと言ってくれて助かるなぁって」
やる気仙人「ほうほう、おまえさんもワシに対して良い偏見を持っておるようじゃな。感心なヤツじゃわい。しかしおまえさんのようなヤツを相手にするのもなかなか大変なんじゃぞ…」
安田課長 「なんでぇ、結局オレっちに対して良い偏見は持ってねぇじゃねぇかよ。どうりでオレっちはなかなか伸びねぇと思ったよ…」

目的とルール さて、行動するのに大事なのはどっちだ?

やる気仙人「安田よ、突然じゃがおまえさんの子育てには何かポリシーというものがあるかな?」
安田課長 「おっ、なんでぇ、仙人。やぶからぼうに質問かよ。えっと、子育てポリシーねぇ…おぉ、あるぞあるぞ」
やる気仙人「ほう、ぜひ聞かせてくれんかな? どんなものじゃ?」
安田課長 「えっとな、きちんと靴を並べろ、あいさつは必ずしなさい、返事はすぐにする…」
やる気仙人「なるほど、やはり安田のところもそうだったか…」
安田課長 「おっと、それと人に迷惑をかけるな。ま、こんなとこかな」
やる気仙人「安田よ、今言ってもらったもの、これは安田家として守るべきもの、そうじゃな」
安田課長 「守るべきもの? あぁ、確かに言い換えればそうなるよな。こういったことを守る。これが安田家の子育てポリシーだよ。どうだ、立派すぎて何も言えねぇだろう」
やる気仙人「まぁ言っておることは確かに立派じゃ。じゃがそれで子どもはのびのびと行動的に育つと思うか?」
安田課長 「のびのびと行動的に? まぁ言われてみりゃ、これをしなさい、あれをしてはいけませんって感じにはなってるけど。でも子育てポリシーってのはこんなもんじゃねぇのか?」
やる気仙人「安田よ、今おまえさんが言ったのは厳密に言えばポリシー、つまり子育ての目的とは違う。おまえさんが言ったのは子どもにとってはルールに過ぎん」
安田課長 「なんだよ、ルールじゃいけねぇってのか?」
やる気仙人「では聞くが、おまえさんは車に乗るじゃろ。では何のためにのるのじゃ?」
安田課長 「何のためにって、そりゃその時によって違うけどよ。まぁ強いて言えばドライブを楽しむため、かな。」



  タチヨミ版はここまでとなります。


安田課長とやる気仙人のコミュニケーショントーク その2

2012年2月27日 発行 初版

著  者:古賀弘規
発  行:ユーアンドミー書房

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古賀弘規

たぬきコーチの古賀弘規です。コーチング、ファシリテーション、自己啓発、人材育成、その他もろもろ、人生にお役に立つ小説や物語、ノウハウをお届けします。

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