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たぬき流子育てこ〜ちんぐ パート2

古賀弘規

ユーアンドミー書房




  この本はタチヨミ版です。

一つずつ教える

 長女は小学生時代、少女バレーで大活躍。そこであった出来事を一つお話しします。
 ある年、やっとの事で新入部員を獲得。その中に背の高い有望な子がいるんですよ。それなりにセンスもあるので、監督や他のコーチもちょっと期待しているみたい。早くアタッカーとして育てたいみたいなんですよ。でも、それが裏目に出るんですよねぇ~。

 ある日、その子を中心にアタックの練習。始めてまだ数ヶ月、私から見て基本もあまりできあがっていない状態。そんな状態なのに、アタックでしょ。ただでさえ、その子はいまいちの顔つき。
 でもコーチはお構いなしです。まだまだまともにできるはずがない状態。それなのに
「ジャンプは前に飛ぶな、上に飛べ!」
「腕はきちんと振り切れ!」
「ボールは高いところで手に当てろ!」
「左手はきちんと上に上げて!」
 もう、一球一球打たせるたびに言葉の嵐。コーチとしては、一日も早く成長させたいといろんなことを教えようとしているんでしょうけどね。

 一通り練習が終わってから、その子に聞いてみました。
「いまの練習、どうだった?」
 その子いわく、
「う~ん、頭がこちゃごちゃしてわからない」
 そうなんですよね。大人でさえ一回にいろんなことを言われてわかるはずもないのに、ましてや成長期の子どもです。いろんなことを一度に言われてわかるはずがないですよ。
 さっき言われたジャンプをちゃんとやろうと頑張っているときに、「今度は腕を振り切れ」でしょ。今度は腕に集中していたら、「高いところで当てろ」でしょ。その繰り返しで、どこに集中していいのかわからなくなっちゃうんですよね。

 これはスポーツを教えることだけじゃないのは、もうおわかりですよね。何か子どもに行動を起こさせようとして、アドバイスするとき。大人はいろんな知識を持っているから、それを全て与えてあげたくなっちゃうんですよ。
 でも子どもは逆。
 一つ一つを、それができあがるまでは見守ってほしいだけなんです。そしてその一つができたとき、「お、できたじゃない!」という承認の言葉をかけてあげる。これだけでいいんです。
 その言葉を聞くと、子どもは次にどうすると思いますか?
「うん、がんばったもん。次は何をやればいいのかな。早く教えてよ」
 そうです、自発的な行動に結びつくんですよ。

 大人はせっかちです。でもそんな大人も、教わる立場になると「そんなにいろいろ言うなよ!」って気になりますよね。だから子どもはなおさら。
 一歩一歩階段を上らせてあげて下さい。
 それが親の役目ですよね。

算数の教え方

 先日、一家でスーパーへお買い物に。みんなで一つずつ、アイスを買おうって事になりました。
 スーパーのアイスだから、定価ではなく「4割引」って表示がしてあるんですよ
 最近のアイスって、ほとんどが定価100円ですよね。(私の小さい頃は30円とか10円なんてのもありましたけど)
 長女、お金にはうるさいので、すぐに
「100円の4割引だから60円か・・・」
 なんて計算をやってのけます。
 でもそこでちょっとした質問が
 「80円の4割引っていくらだっけ・・・?」
 すぐに計算はできるのですが、その問題をそのまま次女にふってみました。このとき次女は小学3年生。何割引とか何%なんてのは確か小学5年生くらいで習うんですよね。
 だから、「何割」って概念がないのは当然で、わかるわけがない。
 でも、丁度いい機会だし、スーパーでは何割引って文字をよく見かけるのでちょっとだけレクチャー。
「1割って10分の1のことだよ」
「10分の1って何?」
「10等分したときの1つ分のこと。 だったら、100円の1割っていくつかな?」
「えっと・・・100を10で割るから・・・10円!」
「そう、その通り! じゃあ、100円の4割っていくつかな?」
「4割って?」
「1割が4つのこと。さ、いくつになる」
「かんたん、40円!」
「それじゃ4割引は?」
「40円じゃないの?」
「4割引って、元の値段から4割引くことだよ」
「そしたら・・・60円!」
「そう、100円の4割引って60円だね」
 と、こんな会話をスーパーでやってみました。これが「生きた算数」なんですよね。
 
 計算方法だけ知って4割だから
 100×(10-4)=60
 たしかにこれも正解でしょう。
 でも、それがどんな意味でその計算式になったのか。これを知らないと「応用」ってできないんですよね。
 
 今回の教え方、一見「ティーチング」に見えますが、最終的な答えは一つも言っていないんですよ。教えたのは「考え方」だけ。最後に答えを出したのはすべて次女です。
 
 コーチングは「答えはすべて相手の中にある」って考えでやりますけど、知らないものは知らないんですよね。だから、知らないことを相手に教えるときは、ティーチングの中にコーチングの要素を取り入れながら行うと、記憶に残りやすいし、一度しっかりと考えるので応用も効きやすいんです。
 実はこの方法で、長女にも分数の概念を教えたことがあります。あのときは
「リンゴを何等分すれば家族全員に行き渡るかな?」
 と、食べ物の問題でしたけどね(笑)
 でも算数って、本当はこんなに身近なものだということに気付けば、それほど難しくも怖ろしくもないんですよ。親のちょっとした工夫で、勉強って楽しくなるものですよ。
 
 あ、そうそう。もともとの問題「80円の4割引は?」っての。
 ちょっと時間かかりましたけど、次女は何とか解くことができました。長女が答えを言いかけたけど、これを止めてしっかりと最後までやらせてみました。
 教える側の辛抱ってのも、コーチングには必要ですね。

『ありがとう』はどうやって育つ? 

「ありがと~」
 これって誰がうけとっても気持ちがいいですよね。
 この「ありがと~」って言葉、あなたは、そしてあなたのお子様は素直に口に出すことができますか?
「ほら、ちゃんと『ありがとう』って言いなさい!」
 あなたの子どもがお菓子をもらったときなんかにこの光景、よく見かけますよね。ホントなら子どもの方から、もらった瞬間にこの言葉がでるのがふつうと思うでしょ。 ではなんで「ふつう」じゃない状態になっているの・・・?
 
 これって二つの要因があるんですよね。
 一つは「モノをもらったときの子どもの心理」
 「ありがとう」が出る前に、それを「もらった」=「所有した」ことのほうで気持ちがいっぱいになるんです。はやくそれを使いたい、食べ物であればはやくそれを食べたい、袋に入っているのなら早くそれを見たい、だから「ありがとう」が頭の中からちょっと飛んでしまうんです。
 私はこれを「所有したときの喜び」とよんでいます。
 でも、これは二つ目の要因をしっかりとつかんでおけば、解決しちゃうんです。
 では二つ目の要因とは・・・?
 
 これは「思考のクセ」。
「誰かからモノをもらう」→「感謝の気持ちを表す」→「ありがとう」
 という思考のクセができているかどうかってこと。これがいわゆる「しつけ」ってやつですね。
 
 あなたのお子様に何歳くらいから「ありがとう」って言葉を教えましたか?
 たぬき家の場合は・・・と思い出したら、こんな感じで「思考のクセ」をつくっていました。
 子どもをお風呂に入れるのはボクの役目。赤ちゃんの時からそうでした。そしてお風呂からあがるときに、たぬき妻が受け取るんですけど、そのときに子どもの代弁をして「ありがとね~」って言うんです。
 まだ子どもが言葉を理解していないころからの習慣です。
 そうすると、「お風呂に入れてくれたから『ありがとう』って言うんだ」って思考のクセがついちゃうんですよ。

 お風呂だけじゃありません。たぬき妻はいろんな場面で小さな子どもの「ありがとう」の代弁をするんです。モノをもらうときは当然ですが、何か人にほどこしを受けたときなどでも気がついたらこれを行っていました。
 その結果、上の三人は割と素直に「ありがとう」って言葉が出ていますよ。
 そして、4人目の次男。
 1歳半くらいから、少しずつですが「っとー」(本人曰く、ありがとう)って言葉が出始めました。

 この「思考のクセ」がついちゃえば、一つ目の要因である「所有したときの喜び」でいっぱいになりつつも、ちゃんと「ありがとう」って謝辞の言葉も反射的に出てくるんですよ。
コーチングっていうのは、この「思考のクセ」をつくるものともいえるんですよね。コーチングが目指す一つに「自分で考えて行動できる人を作る」ってことがあります。そのためにコーチから「質問」し、それに対して「答え」て、そして自発的な行動を促し「行動」する。
 これを繰り返すことで、次第に「自分で考えてから行動に移す」という「思考のクセ」がついちゃうんです。

 今回の「ありがとう」ってのも、「ものをもらったら感謝の気持ちを表すんだ」というように「考えて行動するクセ」を磨く一つです。
 思考のクセ、これをつけるのは今からでも遅くありませんよ

満腹感

「うちの子、おやつばかり食べて晩ご飯あまり食べないのよねぇ~」
 こんな愚痴を言っているお母さん、よくいますよね。
 子どもがおやつを食べ過ぎてご飯を食べない、これって「満腹感」を与え過
 ぎちゃっているんですよね。大人だって腹いっぱいの時には、どんなにおいしそうなものが出てきてもそんなに食欲はわかないでしょ。
 で、今回のお話しは「どうやったら食べるようになるか?」・・・ではなく、どうやったら「やる気が起こるか?」です。

 これは、とあるスポーツ少年団のお話し。
 監督やコーチは子どもに「早くうまくなって欲しい」とばかりに、子どもに対して一生懸命技術を教えるんです。時には鬼にもなり、一生懸命やる気を引き出そうとして・・・。
 ところが、子ども達はそれほどやる気を見せない。見せないどころか、だんだん飽きっぽくなってきたんです。どちらかというと「うんざり」気味で。



  タチヨミ版はここまでとなります。


たぬき流子育てこ〜ちんぐ パート3

2012年3月5日 発行 初版

著  者:古賀弘規
発  行:ユーアンドミー書房

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古賀弘規

たぬきコーチの古賀弘規です。コーチング、ファシリテーション、自己啓発、人材育成、その他もろもろ、人生にお役に立つ小説や物語、ノウハウをお届けします。

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