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ワンポイント・コミュニケーション Vol.2

古賀弘規

ユーアンドミー書房

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  この本はタチヨミ版です。

間口の狭い質問で

 いきなりですが質問です。
「今日のお昼、何食べたい?」
 これ、デートなんかで聞かれると答えに困りますよね。特に食べたいものがあれば別ですが、そうでない時には返事に困っちゃう。これってどうしてでしょうか?
 この質問、あまりにも「間口」が広すぎちゃうんですよね。
 だから食べたいものが頭の中でイメージできないんです。
 ではこういう質問だったらどうですか?
「今日のお昼、和食と洋食と中華、どれにする?」
 これだったら今の気分でなんとなく選べるでしょ。ここで和食を選んだとすると、
「じゃあ、麺類とご飯もの、どっちがいい?」
「麺類だったら、うどんとそば、どっちにする?」
 こうやって選択肢を出してあげると絞り込みがしやすいでしょ。そしてその選択肢も、だんだんと間口が狭くなってきていることに気づくでしょう。
 人って質問の間口が狭ければ狭いほど、イメージの焦点がしっかりと合ってくるので答えやすくなるんですよ。
 他にもよくこんな間口の広い質問していませんか?
「最近、どう?」
 どうって言われても、これが健康のことなのか、仕事のことなのか、家族のことなのか。すぐには答えられないんじゃないかな。こういうときにも間口の狭い質問をしてみてね。
「最近、体調はどう?」
「えぇ、おかげさまで健康ですよ」
 こうやって答えやすい質問から会話に入ると、そのあとの会話がスムーズに移りやすくなりますよ。

たまには相対評価を

 最近は学校の成績評価でも「絶対評価」というのが叫ばれていますよね。通知票なんかがそう。 個人の能力に目を向けて、今どの段階にあるのかを評価するというもの。これと対象なのが「相対評価」。全体の中でどのくらいの位置にいるのかをみるもので、定期テストの番数成績なんかがこれですよね。兄弟間で「お兄ちゃんはよかったのに、弟のあなたはだめね!」なんてのは相対評価ですね。
 で、今は個人に目を向ける時代といわれているので「絶対評価」がもてはやされています。が、やる気を引き出すためには、たまには「相対評価」もいいんですよ。
 え、でも「相対評価」って他と比較するためのものでしょ。それって人に優劣をつけちゃうことにならないの?
 いえいえ、優劣をつけるために相対評価をやるんじゃないんですよ。これは「目標」となるものを見つけるために、相対評価を入れてみるんです。
 目の前にいる人に相対評価を行うときに、その比較対象とするのは、誰の目から見ても能力の優れている人。
 例えば野球選手だったらイチローやゴジラ松井。この人たちと比較して、今の自分に何が足りないのか考えてもらうんです。例えばこんな風にね
「今のボール、イチローだったらどう打つかな? それがわかれば今のおまえはもっと伸びるぞ!」
 そう、モデルとする人と相対評価を行うことで、自分の実力をもっと伸ばすために必要なものがわかっちゃう。これが人を伸ばすこつにもなるんですよね。「相対評価」も使いようですよ。

目を見て話さない

 え、それって逆じゃないの? 普通は「目を見て話せ」っていうよね。
 えぇ、確かに。しかしよく考えて。あなたは相手から「目」だけを凝視されて、どんな気持ちになるかな?
 おそらく、恥ずかしかったり照れくさかったり。妙に緊張したりってこともありますよね。
 そもそも、普段の会話で相手の「目」だけを見ていることってほとんどないでしょ。おそらくは顔のどこかだったり、全体をぼやっとだったり。
「目を見て話す」というのは、「相手の顔が、表情が見えるような向きで話す」というのが正解。顔が相手の視界に入っていればOKなんですよ。あ、勘違いはしないでね。「目を見て話さない」といってもそっぽを向きなさい、ということじゃないですからね。
 しかし、「目を見て話す」ことが必要な場面もあります。それは「こちらが真剣に何かを伝えたい」というとき。
 このときは、相手の目を見て、表情もまじめに、しっかりとした態度で自分の伝えたいことを伝える。
 いざというときにこの態度をとることで、相手も「おっ、この人は真剣なんだ」と受け取ってくれます。
 こうすることで、相手はこちらの話しをまじめに、しっかりと受け取ってくれますよ。
 このメリハリをしっかりと意識しておけば、普段からのコミュニケーションで安心感と信頼感を築き上げることができちゃう。そしていざというときにはその真剣さが相手に伝わるんですよ。ぜひ意識して相手と向き合ってみてね。

嫌いな理由を伝える

「私、トマトって嫌いなのよね」
 せっかくあなたがつくった料理なのに、いきなりこんな事を言われたらムカッときますよね。「だったら、食べなくていいわよ!」なんて言い返しちゃうかも。
 でも、これならどう?
「私、子どもの頃トマトを食べたらじんましんがでちゃて。それ以来トマトは食べられないのよ」
 これだったら、「あ、それは仕方ないな」って思っちゃうでしょ。だれだって嫌いな物は一つ二つあります。でも、第一声が「嫌いなの」じゃ、相手も納得はしませんし、不愉快な思いをさせちゃいますよね。
 そんな不愉快な思いをさせないためにも「どうしてそれが嫌いなのか」をしっかりと相手に伝えることが重要なんです。
 あ、このときに嫌いな理由を伝えるための「コツ」というのもあるんです。それは「事実のみを伝える」ということ。
 そもそも「嫌い」というのは「主観」ですよね。つまり他の人にとっては「事実ではない」ということになります。
「トマトっておいしくないよね」
何て言われても、「何いってんだ、こいつ」って思われちゃう。
ではこれを「事実」にするにはどうするか。
 ここで登場するのが「私メッセージ」なのです。
「私にとって、トマトって酸っぱくてあまり美味しくないと感じるのよ」
 これは「私」が感じた事実をそのまま伝えているだけ。これならば反感をもたれずに相手に伝わります。ちょっとしたことですが、嫌いな理由ははっきりと伝えてみてね。

元気に明るく大きな声で返事

 新学期。小学一年生が大きなランドセルを背負って、学校で張り切る季節ですね。入学式なんかでつきものなのが、新入生の名前を呼んで大きな声で返事をするというやつ。あれは周りで聞いていると、とても気持ちがいいものですよね。
 ところで、あなたの普段のコミュニケーションではいかがですか? 名前を呼ばれて、どんな返事をしていますか?
 相手によい印象を与え、しっかりと記憶に残してもらうためには「元気に・明るく・大きな声で返事をすること」がとっても重要。
 あなただって、誰かの名前を呼んだときに「元気に・明るく・大きな声で」返事をしてもらったら、なんだかうれしくなっちゃいませんか? だったら、それをそのままあなたが実行してみましょうよ。
 なんとなく人を惹きつける人をよく観察すると、返事がとてもハキハキしています。返事というのは、「自分はちゃんとここにいますよ」というアピールと当時に「あなたが呼んでくれたことをきちんと確認しましたよ」という意味も含まれているんです。
 ということは、返事が曖昧であるという場合は「あなたが私を呼んでくれたのはいいけれど、なんとなく面倒なのよね」というニュアンスを含んじゃっているんです。だから、曖昧な返事をしちゃうと、相手はなんとなくいやぁ~な気になっちゃうんですよ。
 自分の名前を呼ばれたら、「元気に・明るく、大きな声で」返事をしてみましょうよ。その一言が、周りを一層明るくするして、自分も元気になれる秘訣ですよ。

重要ポイントはゆっくりと二回繰り返す

子育てで子どもに何かを教えるとき、新入社員に新しいことを教えるとき、部下に何かを伝達するとき。相手にうまく伝わらないってこと、よくありますよね。
私も研修の講師をやっていて、こちらの思いが相手になかなか伝わらない、なんてことがよくありました。
しかし、最近研修やコーチング講座ではこんなテクニックを使うようにしているんですよ。
「今日のコーチング講座のポイントは相手の話にしっかりとうなずく、しっかりとうなずくこと。これが大事なんですよ」
 この波線の部分を、ふつうのしゃべり方よりもゆっくりと、しかも同じ事を二回繰り返して伝えるんです。
 ここまではっきりさせると、何が重要なポイントであるかが相手にしっかりと伝わってきます。
 この言葉のメリハリによって、こちらの言いたいことが相手の意識に植え付けられちゃう。
 繰り返して言う場合にはこんな言い方もあります。
「相手の話にしっかりとうなずく。もう一度言いますね。相手の話にしっかりとうなずく。これが大事なんですよ」
 このような言い方もOKですね。
 この言い方、特に子どもには有効ですよ。とくに子どもをしかるとき。(怒るときじゃないですよ!)なぜそれをやってはいけないのか、その理由をしっかりと伝える場合にこのテクニックはとても役立ちます。そのときには意識していなくても、二回繰り返すことで潜在意識には入りやすくなり、次に同じ場面になったときに無意識にストップ信号が働いちゃうんです。ぜひお試しあれ!

はきものを並べる

 はきものを並べる。これはよく言われることですよね。ビジネスでもそういった研修があると聞いてます。確かに、はきものがきちんと並べられている玄関って、気持ちがいいですよね。
 でははきものを並べることとコミュニケーションとはどんな関係があるのか? これ、大ありなんです。
 そもそも、はきものを並べる行為というのは、人に自慢するような行動ではありません。陰ながら人に奉仕をする気持ちがなければ続かないんですよね。
 その気持ちを持てば、人と接するときの態度が変わっちゃうんです。人を見る目が変わる、といった方がいいかな。
 自分が陰ながら人の役に立つ行為を続けていると、人を見るときに「あ、この人ははきものを並べるような人かな?」と考えちゃうクセがつきます。そうすると、見た目だけでなくその人の言動すべてを、つぶさに観察することが自然にできちゃうんですよ。
 また、同じようにあなたも見られているということもお忘れなく。あなたが常にはきものを並べるような人であれば、見ている人は「こいつは信頼できそうな人だ」と判断してくれます。
 人はこういった間接的な行為にこそ興味を示しちゃうんです。あなたが営業マンだったら、訪問した会社のトイレを借りたときには、そこのスリッパを並べるくらいはあたりまえにしてみてね。また子育てでも「はきものを並べなさい!」と子どもを叱るのではなく、まずあなたが並べること。それが信頼できる人間になる秘訣の一つですよ。



  タチヨミ版はここまでとなります。


ワンポイント・コミュニケーション Vol.2

2012年3月6日 発行 初版

著  者:古賀弘規
発  行:ユーアンドミー書房

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古賀弘規

たぬきコーチの古賀弘規です。コーチング、ファシリテーション、自己啓発、人材育成、その他もろもろ、人生にお役に立つ小説や物語、ノウハウをお届けします。

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