著者紹介
photo/ text_宍戸竜二
72年小田原生まれ
イラストレーター
http://shishidoryuji.net/
photo_宍戸美咲
83年小田原生まれ
webデザイナー
http://misakishishido.com
我家に迷い込み、いつの間にか住み着いた野良猫ボス♂(年齢不詳)。そしてこのボスにめろめろになっていくフリーランスのイラストレーター(夫:竜二)同じくフリーランスのwebデザイナー(妻:美咲)。そして先住猫うみ♀(8歳)、先住猫たま♂((1歳)と4ヶ月間一緒に暮らし、短い人(猫)生を終え土へ還ったボっちゃんの日々の記録。
<後編>
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ある日立ち上がる時によろっとするボス。最初はちょっと足でもしびれたのか?寝すぎたのかな?なんて思うくらいでしたが、数日そのような日々が続き、そう言えばご飯をあまり食べなくなったなと思っていた所でしたので不安になり、いつもよりもっと食べやすいご飯を試すようになりました。
そしてやっぱりボスは歩くのが辛そうで、病院へ連れて行く事に。病院では猫エイズの症状でなっていると思うと言われました。食事をなかなかしなくなっていますと伝え、栄養補給食を貰う事に。退院サポート食という高栄養のフードを与える事に。
猫はもともと味覚がそれほど無く匂いで食べると言われています。そしてこの栄養食はとってもいい匂いがして人間でも美味しそうと思うくらい。ボスは気に入ってくれたのかむしゃむしゃ食べてくれました。そして数日与え続けると日に日に元気になり足取りも元に戻り「なんだお腹空いていたんだな」そして歯を抜いた口腔内も状態が良くないようで同時に抗生物質も貰っていました。それも効いたのかさらにむしゃむしゃ食べてくれてしまいにはちょっと太ったりしました。
ボスはもともとそんなに速く動いたりしなく、いつものんびりしてるので健康状態も気づきにくかったのかも。そうだボスは病気を抱えた老猫だ。もっとちゃんと見てあげないと。
そして私たちはホッとし、薬を2週間与えボスも元気を取り戻していきました。
良く散歩に行くお隣の家のおばさんはヨダレをたらしたボスを見ると「きもちわるい」
と嫌っていた。
確かに知らない人が見たらヨダレをたらしてぼろぼろの猫を見たら忌み嫌うと思う。
自分だって最初みたときは「うっ」って思ったし。
ボスは今まで色んな所できっとそうやって嫌われて来たのかもしれない。そしてなんだか大丈夫そうな空気が漂う我家に入り込んで、思ったより人間が友好的でもう入れてくれる家なんて他にない!なんて意気込みで家に入り込んだのかもしれない。それくらいボスが家に入りたいという行動は切実な訴えを感じた。そして今までのそんなボスの苦労を思うと涙が止まらなかった。
こんな愛らしい猫なのにそんな健康状態では仕方が無いのかもしれないが、酷い仕打ちを受けるボスを想像するととても悲しい気持ちになった。
どこまで楽しくのんびりくつろいでくれてたのかは分からないが、ボスが最後の居場所にこの家を選んでくれたのは、ほんとうに嬉しい。
そしてまただんだんとご飯を食べなくなって行きました。この頃は前より体も痩せてきており、ますます不安になって行きました。
薬を再度病院で処方してもらい与えますが栄養食もなかなか食べなくなり、そしてある日からトイレの砂を食べたりテラスのコンクリートをなめたりするようになるのです。
肝臓の機能が低下してくると猫というのは嗜好性が著しく変わってしまうようです。見てれば止めるのですが、夜な夜な食べたりしてしまったりしましたが、日々色々工夫しながらボっちゃんの様子を伺っていました。そしてトイレもトイレの外にしてしまったり失敗する日が続き、みるみる弱っていき行動もおかしくなっていくのです。
こたつのふとんの上が大好きなボっちゃんはこの頃布団に行くたびにおしっこをしてしまうようになりました。毎日こたつ布団を洗うようになってしまい、かわいそうだと思ったのですがオムツをすることにしました。しかし以外にボっちゃんはすんなり履いてくれましたが、夜中には自分で脱いでしまいました。
数日オムツをつけましたが夜には取ってしまうの繰り返し、幸いトイレも半々の確率ではできてはいたので、少しでもストレスを掛けないようにオムツは外しました。あとは人がフォローすればいいと。それからは毎日あちらこちらにペットシートを置き、ボっちゃんの不穏なおしっこ姿勢を見つけるとさっとシートを入れ防ぎながら「防げた!」「だめだった!」など、そんな事も楽しむようにしました。
フリーランス夫婦の私たちは、ほぼ毎日四六時中家に居るのでそれがせめてもの救いでした。しかし弱ってゆくボっちゃんにしてあげる事がだんだん無くなっていきました。
元々私たちはボスと暮らし始めるとき、ボスの人生の最後は何不自由無く穏やかに命を全う出来るようにそんな環境を作ってあげよう、そんな気持ちで暮らし始めました。なのでボスに長生きしてほしい、いつまでも一緒に暮らしたい。という気持ちより野良暮らしで辛かっただろうボスに最後くらい贅沢をさせて幸せな気持ちで逝かせてあげたいそれを一番に考えていました。
ご飯もとにかく食べる気が起きるようにとお刺身をあげたりしました。妻が買ってきたカツオの刺身を細かく切り、それをボスはとても美味しそうにむしゃむしゃ食べてくれて、私たちは涙が出そうな程嬉しく思いました。
そんなはてしなく愛らしいボスをこの頃からボっちゃんと呼ぶようになりました。
ボっちゃんが家に来た時、病院で猫エイズが発症していると言われた時、もう先は長くないそう思いました。明らかに病気をしておりヨダレを垂らした風貌を見る限り、今まで忌み嫌われ辛い思いをして来たのだろう、それならもう辛い思いも無い穏やかな毎日を過ごさせたい、そして最後は私たちが見守りながら逝かせてあげよう、そう思いボっちゃんと暮らし始めた。きっと何も悲しい事は無い、生き物のこの世の摂理に従うまでだ。そう思っていました。
しかしボスとの暮らしは逆に私たちにとても穏やかで微笑ましい時間を沢山くれました。毎日毎日ボスに声をかけ、うみを撫でながらたまをあやした。そんな猫3匹との暮らしはとてもしっとりとしたやさしい時間でした。
ボっちゃんを看取ったその日、やっとこの日が来た、病気で辛かったろうそんな日もやっと終わり、軽やかな体に戻ったボっちゃんはきっと向こうで走り回っているだろうそう思えた私たちは
「ボっちゃん、今まで人生がんばったなおめでとう」そう二人で笑顔で話しかけました。
次の日ボっちゃんを庭の土の中に還し、その上に桜の木を植えた時一区切り着くとそう思いました。この桜の木はボっちゃんだからまだまだ世話ができる。そう思うとなにも寂しくないと思いました。
しかしボスの事を振り返ると、果てしなく健気で愛嬌があり、言葉のコミュニケーションも取れ、何一つ人に迷惑をかけないそんなボっちゃんの事を思うと涙が止まりませんでした。近所のお店でお酒を飲みながら夫婦でそんなボっちゃんの事を沢山話合いました。きっとお店の人はなんでこの夫婦は号泣しているのだろう、きっと夫婦喧嘩でもしてるのだろうそう思われたかもしれません。そんなこともおかまいなしに、私たち夫婦は二人で「ボっちゃんはほんとにいいやつだった」と泣きながら話しました。
そして私たちは、まるでボっちゃんのように涙や鼻水で顔をぐちゃぐちゃするのでした。
あとがき
人と動物との関係は世の中で色々な問題が起きています。ペット事情や毛皮事情、見ると悲しくなる事が沢山あります。ペットショップで生き物を買うなんて絶対にやめてほしい。贅沢の為の毛皮なんて絶対に必要ありません。人同士が出会うように生き物とも出会いだと思います。無理矢理繁殖させた生き物を全国に流通させそれをお金で買うなんて間違っていると思います。商品とされた動物達には沢山の悲劇が生まれていると言われています。
僕は老猫や老犬がとても好きです。老猫や老犬の良さを少しでも知ってほしいと思っています。成長した動物が新たな居場所を見つけるのはとても困難です。そんな動物達も一つの命だともっと強く思ってほしい。それに気の合う動物との生活はとても楽しいものです。自然な出会いならそんな関係になれる可能性も高いのです。そんな思いも込めてこの記録を作りました。きっと皆様にも素敵な動物との出会いが訪れるように願っています。僕らにとってボっちゃんとの出会いは何もにも代え難い出会いでした。動物を愛する人たちが少しでも生き物と自然な出会いができるように、そして動物虐待がこの世から無くなる事を願っています。
今回ボっちゃんとの出来事を記録にしようと思うのと同時に、そんな動物達の悲惨な出来事が少しでもなくなれば良い、そんな願いも込めこちらで作らせて頂きました。
2012年3月22日 発行 初版
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動くボスです。こちらもどうぞ。(動画)
http://twitpic.com/8vbkgs