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イヌジマ制作 ・ 石井 葉子
撮影 ・ 小林 雅弘
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瀬戸内海に浮かぶ島、犬島。
犬島には約百年前の銅の精錬所跡地の遺跡がある。
その遺跡には、銅の製錬過程で出る黒く光る砂がある。
妖怪[イヌジマ]は、その黒く光る砂の中からうまれたと言われる。
性質は人畜無害。
時折、人が住まなくなった古民家に出てきては走り回って遊んでいる。
犬島で疾風が吹いたら、この妖怪が近くに居るのかもしれない。
まれに、製錬所にしかないはずの黒く光る砂が古民家に落ちていることがあるが、それはイヌジマの足跡だと言われている。
島外各地でも目撃されており、神出鬼没。
不意に目の前に現れては心にまとわりつき、しだいに家に棲み憑きはじめるという。
イヌジマと暮らすうち、いつしか我知らず遠く犬島へと心誘われるという。
http://妖怪イヌジマ.com
妖怪イヌジマのたたずまい
妖怪イヌジマは写真の被写体としては最上のものです。
イヌジマ作者の石井さんが、このようにバシバシと写真に撮られることを想定して作ってはいないと思いますが、不思議とイヌジマの里親の方はカメラ好きの方が多いようです。
モデルとしてのイヌジマの最大の長所は、人間と違って自意識がなく常に無の境地なので、どんな風景とも一体化するところです。また、その体毛は実際にそういう動物(妖怪ですが…)がいそうだなと思わせ、リアリティがあり、草むらなどに立たせても違和感がありません。足、とくにヒザの造形にもリアリティがあり、存在感に説得力を持たせています。それでいて、白く異様な顔が写真にインパクトを与え、私のような未熟な者が撮っても常にある程度の「見れる写真」にしてくれる力を持っています。その力に甘えている部分もあるでしょう。
そして、妖怪イヌジマのもう一つの特徴として、手が無いということが挙げられます。人形にとって手の表情というのは、意図・意識を表現する要素であり、また、手は外部に対しての作用の象徴でもありますが、それがありません。つまり、妖怪イヌジマは「犬島の魅力を人びとに伝え、犬島に人を呼ぶ」という観光大使のような役目を持っているにも関わらず、その造形自体からはそういった積極性が排除されています。
だからといって、「犬島に人を呼ぶ」という目的を果たしていないかというと、まったくの逆で、『イヌジマトイヌジマヘイコウ』のように、完璧にその役目を果たしています(妖怪イヌジマの受容のされ方については公式サイトをご覧下さい)。
控えめな印象の妖怪イヌジマだからこそ、却って強力な誘因力を発揮している。喋りもせず、袖を掴んで引っ張ったりもせず、ただ無心にそこに存在しているだけなのに、大きな役割を果たす。『無為にして、而も為さざるは為し』(老子)とでも言いましょうか。
妖怪イヌジマの小さな体には、そんな玄妙な力が秘められています。
この写真集は妖怪イヌジマの作者である石井葉子さんのご厚意により製作させていただいております。 プロジェクトアート作品である妖怪イヌジマの本来の存在意義は岡山県の離島「犬島」へと人を還元することです。
この写真集をご覧になった方も、妖怪イヌジマだけでなく、離島「犬島」へ関心をもっていただければと思います。
■妖怪イヌジマ.com
2012年5月26日 発行 初版
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