ターミナルケアの現場で働き始めた時期、生まれて初めて“人の死”を目の当たりにした。
癌の痛みと闘いながら心を閉ざしていた患者さんと心が通ったと感じた矢先に見送ることになり、泣いた。
そのうち、二日に一人を見送るようになり、泣くことはなくなった。
“人はいつか死ぬ、そんな当たり前のことが見えやすい職場にいた、それだけ。”と思うことにした。
恋人を失った若い男性を、母を失った小学生の姉妹を、父親を失った女子高生の心中を思いつつも、
深く入り込み過ぎないようにした。
大好きだった祖父が亡くなった時、泣いたかどうか覚えていない。
いつも落ち着いている祖母が、嗚咽しながら祖父のために思い出の歌を口ずさんでいるのを眺めていた。
生前、できることが何かあったのか?
それとも、何かあると知っていたところで何も変わらなかったのか?
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生きているということ
目の前にいること
目の前にいなくても、電話ができること
話そうと思えば話ができること
その気になれば、一緒にでかけることができること
死ぬということ
もう戻ってこないということ
もう話をすることができないということ
もう一緒に出掛けることができないということ
当たり前のこと
後悔しないためには
なにも考えないこと
何も求めず
理想の姿を持たないか
極めて低く設定しておくこと
後悔しないためには
考えておくこと
そして行動しておくこと
2012年5月10日 発行 初版
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ノンフィクションとフィクションのはざまにあるものを表現できたらと思います。