大学生だった時、とにかく海外に行ってみたかった。
それも、なるべく安く、安全に。
できれば宿もホストもある状態で。
交換留学という形で行くのが最もリーズナブルと思ったので、
イスラエルのテルアビブ大学に派遣してもらうことにして、
約一ヶ月間、現地の学生寮で過ごしました。
滞在期間中、最も衝撃的だったのは、エルサレムにあるホロコースト記念館。
歴史を伝えることの意味を深く考えさせられました。
正しい歴史観が完成するまで何も伝えない事がよいのか、
それとも多様な見解をまずは残しておくことがいいのか。
例えば、映画『ショアー』のように。
少なくとも、“アンタッチャブルだから何も語らない・残さない”、という選択が、
自国の過去を風化させてしまうことだけは確かだろう、などと思いながら
帰国する旅となりました。
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成田から、イスタンブール経由でイスラエルへ。
テルアビブ空港まで学生が迎えに来てくれていてホッとする。
車まで移動している最中、路上にボストンバックの落し物が。
拾ってあげようと何気なく手を伸ばすと、案内の学生と空港警備員に、ものすごい剣幕で止められた。
学生寮に車で移動する途中、銃声のような音が聞こえたり、警官に押さえつけられている若者を見たりした。
そっか、ここは日本ではなくてイスラエルなんだ。
生まれたばかりの男の赤ちゃんを祝う会がある、と誘われた。
何の気なしに参加すると、何やら荘厳な雰囲気。
ラビたちが、赤ワインと新しい剃刀を使って手際よく処置を済ませていた。
あとは、飲んだり歌ったりの会となる。
撮影してもいいか尋ねると、お祝いなんだからいくらでも、との答え。
親しい人たちの集まりに急に参加して、プライベートな儀式の写真を撮ることに
心苦しさを感じながらも、何度かシャッターを切った。
2012年5月12日 発行 初版
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ノンフィクションとフィクションのはざまにあるものを表現できたらと思います。