spine
jacket

十一ヶ月の刑期を八ヶ月で終え、三ヶ月の保護観察期間を館山にある姉きの家で過ごすところからはじまるデザイン人生更正日記。

既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
現在、松本弦人は連絡をとることができなくなっております。
それに伴い、メールアドレスを以下の通り変更いたします。
新しいメールアドレスは sarubrunei@mail.ne.jp になります。
なお、このメールの送信に使用しているメールアドレスは
本日で使用できなくなります。
また、新メールアドレスにご連絡いただいた場合でも
早急な対応は難しく、
ご不便をお掛けします。
年があらたまるくらいの時期に、
本人よりご挨拶をさしあげる予定です。
ご不便をおかけいたしますが、何卒ご了解ください。
その節は、またよろしくお願いいたします。
誠に簡潔ではございますが、ご案内させていただきました。
今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、切にお願い申し上げます。

         株式会社サルブルネイ

服役中すさまじく世話になった山本祐子の関係者へのメール

こんな事でもなきゃ読まなかった『HAPITIC』等、最後に手元にあった本。

市川刑務所出所

前日から猛練習させられた『出所式』に、兄貴・アネキ夫妻が出席してくれた。何十年ぶりかの卒業式。
八ヶ月ぶりのシャバ。
出所と言っても『仮釈放中』の身。
刑はまだ三か月残っている。
今日から三ヶ月、アネキの家に身を置かせてもらい『保護観察期間』が続く。
『出所教育中』にさんざん見せられた『矯正ビデオ』のように、更正の道まっしぐらに。

出所祝いに800円の携帯をアネキが買ってくれた。
オイラの刑務所での月給と同額。

初メール

出所後初のメールを兄貴へ打った。

兄貴へ

とりあえずちょっと落ち着きました。
甥っ子の使っていた部屋を大掃除したら快適なオフィスになりました。
アネキの飯はすげーうまいし、義兄さんの名義で携帯を契約してもらったりありがたいです。
兄貴も仕事休んで迎えにきてくれたり、アネキにあずけてくれたお金とか…

とにかく馬鹿みたいに仕事するんで。

PCノート、中判デジカメ、17incモニタが唯一の財産。何でも出来る。

差し入れ本

みんなが差し入れてくれた本。
中でも「実際に刑務所の中に入った『刑務所の中』花輪和一著」は貴重本。
刑務所には図書室と娯楽室が備わってて、全一二〇〇〇冊のそのライブラリーはシャバでは絶対読まなそうな(宮部みゆきとか)モノがテンコ盛り。
ビデオレンタルもあって「NHK英会話全16巻」「茶の湯全9巻」とか楽しげなラインアップ。
マルコムXは六年間の受刑生活で、四カ所の刑務所を移りわたり、すべて刑務所のすべての図書室のすべての本を読破したんだそうです。


みんなが差し入れてくれた本。
アネキの家の裏の脇道を畑作業から帰宅する主婦。

保護観察

この道の奥にあるお寺の住職さんがオイラの『保護司』。街の人格者がやらされるボランティアで住職さんとかはけっこう多いそうです。
その住職さんは甥っ子の同級生のお父さんらしく「あ〜甥っ子にも迷惑かけてんだ〜」と落ち込む。
ここんちの住職さんは生粋のPCオタクで(88のころから)、モダンコンピュータ話に花が咲いた。
『仮釈中受刑者』の行動表やら就職斡旋リストなどは、きっちりエクセルで管理しているそうです。


 獄中日記。すべて3色ボールペン。

獄中ノート

  獄 中 ノ ー ト よ り
刑務所でも買い物が出来ます。筆記用具、歯ブラシ、石鹸、下着類など、遠足に持って行っても良いとされているような最低限の生活用品。発注してから手元に届くまで約二週間かかる。買ったものにはボールペンの芯にまで名前を書かされる。ノートの場合、破いたりしないようにノートの右上の「No」(初めて使った)に全頁ノンブルを記入させられる。無論、抜き打ち検閲が行われ、『仲間』の連絡先、卑猥なモノ、刑務所・教官などへの誹謗中傷、暴力的な内容など、好ましくない表現が見つかると即独房。

一日一個、デザインと日記を書き続けてみた。


  獄 中 ノ ー ト 初 日
世田谷警察留置場
この二〜三畳のうすら狭い部屋には、床壁天井にトイレと鉄格子があります。色はすべてベージュ。巾木だけが茶色。それで全て。それ以外ここには何もない。この素材は何だろう? とか、コレはどんな意図のデザインなんだろうとかいった洞察や思考が入り込む隙間もまったくありません。そんな、役所の無機質さに絶望が塗り足された空間に、マジックで「○留」と書かれた留置所ジャージの懲役候補が配牢されている。言うまでもなく、人をもてなす要因は微塵もない。外から「そと」は何も持ち込まれない「うち」の完全型。
つまりこの部屋は〝何もなされないための最高のデザインと管理〟がされてるってことなんだなぁ〜。

館山はとにかくどこでも日当たりが良い。

館山の神社

体がなまるんで歩いて五分の神社で一人サッカーが日課。
一時間ほど蹴っても参拝客は一人も訪れない。


アフォーダンス

  裁 判 待 合 室 で 一 緒 に な っ た 男 の お 話。
いろんな向きで人それぞれの環境になる、アフォーダンスっつったっけ。
受刑者の圧倒的なスペックは「刑期」。年令、出身、仕事、女、車、ゴルフや釣りやサッカーや競馬の話より、「で、長いの?」だ。三年を超える刑期だと周囲の興味は俄然増す。「仲間」として迎え入れる準備が始まる。ションベン刑(一年未満)だと「あ〜冷やかしね」という態度とともに全てが終わる。
実際、一年と三年以上では、ここでのすべてに対しての姿勢が違う。ごはんの味も仕事の長さもテレビや新聞から入る情報の意味も「全く違う経験」をしてるんだなあと感じる。
裁判当日、地下待合室に未決(懲役予備軍)の八人が車座を組む。シナリオ通り、面白いほど正確に求刑が短いヤツから順に話をする。11件の連続コンビニ強盗の「10年越え」で場も最高潮になったとき、最後に口を開いた男は「刑期があるだけイイじゃん」と、場を凍らせた。その男は「無期懲役」。
ごく普通の感覚を備え頭も悪くなく女にもモテそう。しかしなにもかもが異様に異質。「人はここまで絶望できるのもなのか?」。情動タコメーターを10倍はフリ切ってる。
同じ刑務所で同じ時間を過ごしても実はまったく違うところにいて、違うことをしている。
ションベン刑のオイラには本当の醍醐味は味わえないんだろうな。

毎日4時間温室を手入れする隣のおじいちゃん。時間違うよな。
アネキの飯がうますぎる。食う前に撮るが無理。

セグロ

伊藤ガビンがmixiに招待してくれた。何を書いたらいいのか皆目見当が付かず、房州自慢のセグロのうまさを自慢してみた。

  m i x i よ り
一部の方に誤解が生じているようなので説明させていただきますよ。
セグロ。カタクチイワシのことです。房州での通称なので正式名称とかじゃないです。「セグロイワシ」とか言わないように。目刺しといえばウルメイワシと思ってたけど、これが狂ったうまさ。
ご存じの通りミンク鯨がばくばく食いやがるんでこの辺りでもあまり採れないんだけど、それでも館山駅前の魚屋で69円(四匹串刺して)で売ってるのね。
上京の際には毎度店にあるだけ買ってます。運が良ければお届けします。

上京準備

「D2」で2HとHBと2Bのトンボエンピツを買った。捕まる前はステッドラーの芯ホルダーを使っていたけど、館山では手に入らないしだいいち金がない。
久々に手に取るトンボエンピツがどことなく北欧風? モスグリーンに白と金の印圧による凹や、文字のツブレ加減も片岡義男が評価しそうな仕上がり。
30円でこんな「フィギュア感」があるってすげー。


アネキの家の横にあるガレージを片岡義男風に撮ってみる。

上京 ビューさざなみ

かなりどきどきするねこれは。
ほぼ一年ぶりの東京。
ビューさざなみで向かいます。
むっちゃ迷惑かけた山本祐子。
鯛の缶詰を差し入れてくれた伊藤ガビン。
入稿直前に捕まって後始末に追われた佐藤雅子。
とにかく会ってみる。

『保護観察中』なんで外泊は二日。

なんかまぶしいぞ〜

「ビューさざなみ」はいつもガラスキ。
この車両もフーセン小娘とフーテンオヤジで貸し切り。
東京拘置所の新館に似た高輪のビル。リゾートマンションって呼んでた。

東京

アネキに借りた5万を握りしめ、じゃらんで見つけた都内最安のお茶の水の3800円ホテルに無事チェックイン。

今日は山本祐子、佐藤雅子と会った。
出所後初めて家族以外の人と話す。

ランチで山本と担々麺&麻婆。
夕飯で佐藤さんとステーキ。
二人ともおごってくれた。

ゴチでした。

事務所間借り ボシャ

伊藤ガビンに会いに高輪はボストーク社へ。
「事務所使います〜?」
と、ガビン。

バー・テラ。ピントのあった写真は見せられないヤバイお店。

住居間借り バー・テラ

井上よういちと会い、三軒茶屋のブラックホール、バー・テラへ。
「六畳のアパートが余ってるから使えよ」とコウさん。

あらら。

面会でガラス越しに写真を並べ次回作について熱く語り
面会時間を延長(絶対不可能)させた強者。

神蔵美子

神蔵さんのスタジオに遊びに行った。

  翌 日 に も ら っ た メ ー ル
厄払い、ではない。というか、起こったことは、「たまもの」と考えた方がいいというか、やっぱりあのノートと今の顔を見れば、賜物だったと思います。
ぜんぜん変わっていた。
おかあさんとかが、天国から見ているから、こうなったのではないでしょうか? そういう、いい力を感じます。
社会的ということよりも、本人の中身的なこと。物質的なことよりも、本人の精神的なことのほうが大事だから、そういう意味では全部ひっくりかえってよかった。としか、わたしには思えません。


でも、あまりに多くのものが、自分のまわりからなくなり淋しい気持ちも、もちろんあると、思うけど、

淋しくなってみることも、悪いことじゃないんだよね。

淋しくなったりすると、
ずーと、長い間に見えなくなっているものとか、見えたりもするし。

厄だったわけじゃないんだな。

もう一度、絵がすきとか、創るのが好きとか、
そういう純粋な気持ちに立ち返れたことは、よかった。

何度も言うけど、余分なころも(身の回りについていたもの)がなくなったところから、そう、感じているから。

あと、そう、「サルブルネイ」というものに、とりつかれていた。
というか、ゲントくん個人じゃなくって、サルブルネイというものに動かされるというか、頑張り過ぎた感じ。

サルなんてなくなってしまえばいいとおもう。
ある時期にあって、またなくなる。そういうものにしないと、
だんだん縛られる。よく、個人では、その個人の為に頑張らない人でも、
急に会社とか、事務所とか、カッコイイものを持つとそれに頑張る。
でも、存続とか、ずっとハデな仕事をそこで、展開しようとすると、
自分から、離れるし、その為になんかするなんて、無駄。

サルブルなんか、やめちゃえばいい。

ボシャに引っ越し

あっつーまに住居と仕事場が決まり、あわただしく引っ越し。
義兄さんが自前の四トントラックで運んでくれた。

すげー
机が出来た
港区に


伊藤ガビンの横、タナカカツキの前に用意してもらったスペース。

初仕事

バー・テラのコウさんから出所後初仕事をもらう。かおるって子のバナー(タダ)。さくっと作る。

  獄 中 ノ ー ト よ り
刑務所ではハイヒールのかかとをつくるのが仕事。毎日毎日せっせとプラスチックのヒールに合成革を巻く。
先輩の指導の元、革の張り具合、カットの要領、ナメシのコツなどの基本を教えられる。ところどころに極めて職人的な感覚や技法を伝えようとしているのがわかる。「そこですっと息を吐くんだよ」って、西岡常一バリのアドバイスを元銀行員の班長から頂く。
職人気質や職人技はほぼ手放しに褒めたたえられているけど、毎日毎日繰り返して身につける職人性の行き着く先って似てるのかしらね。

     う〜ん
ダンス神経鈍ってます。

出所後初クラブ

  獄 中 ノ ー ト よ り
体にまつわる様々が怪しい。雨と行事(盆踊り)の練習で昼休みの時間が奪われ「行進」と「ランニング」以外の運動をしていない。2週間も続くと普通に歩く姿勢が保てなかったりする。そもそも味覚は130%怪しい。元々独特だったインプットとアウトプットはその独特さにおいてさらに磨きがかかり、自分でも、もーどーなのかわからない。まったく外が見えないことでビミョーに保ててるような気もする。
自己率というのがとても高い日々を送ってる。情報や身の回りのモノの影響と自己の感覚の比率ね。シャバの平均が
[情報8:自己2]に対して[情報1:自己9]くらい? 
なにか根拠のない芯のようなものが出来つつある気がする。
だいじょうぶかね? オレ。

普段着です。

二つ目の仕事

  T D C 照 沼 さ ん か ら 出 所 後 す ぐ に も ら っ た メ ー ル
自分が生きている場所、意味などを、がらっと違って見えるようになるのは本当に奇跡的なことです。日常の中にいれば、見えないことは、およそいつまでも見えないままです。
宇宙飛行士なみの経験だったかもしれないですね。
もちろん痛みも伴って、リスクは大きかったかもしれないですが。
しばらく忍耐することもあるかもしれないですがどうぞプラスの面だけ考えて、前に進んでください。


TDC年鑑の依頼を受けた。捕まる前は皮膚感覚に自信ありで、全てをそれでゴリ押してた。今の手持ちでやり直してみる。
冗談なんかくそ食らえ。

99年に作ったフットサルチームgori。

gori

一年ぶりのフットサル。
楽しすぎる。


拘置所ワーク

捕まったときに進行中の仕事がいくつかあった。
拘置所の中でラフを描き、元スタッフのシャバのデザイナーに仕上げてもらったり、面会室のガラス越しに色校を見たりしてた。
あげく、
拉致監禁(21才) オレオレ詐欺(25才) 少女売春(22才)
の若者囚人を一日コーヒー一杯でアシスタントに雇った。
看守曰く「おい! この部屋『オフィス松本』って呼ばれてるぞ」


ユージンのフィギュアのラフ。
コピーがないのでアシスタントは一日中「手書きグリッド」を引く。
小沢さんとの初仕事、2003年のポストメインストリームのDM。

三つ目の仕事

プリコグの小沢さんから、三つ目の仕事。

弦人さん

まじで奥村さんに聞いて、差し入れ持って面会いこうかと思ってたぐらい心配してましたよ(笑)

ポストメインストリームフェスのパート2来年やる予定ですし、弦人さんに絶対お願いします。

出所祝いってやらないんですかね?

まじめに作る。

ボストーク乾義和

第一子が生まれたその週末に三本たて続けに映画を見に行っちゃう男。
そんな男に「二〇〇四年のおすすめの映画は?」と恥ずかしげもなく聞ける特権はすげ〜。
「今メールします」
といって五分で送られてきたのが以下。

⌾「10ミニッツ・オールダー」ほとんどゴミ、でもエリセのパートだけは珠玉。
⌾「ミスティック・リバー」イーストウッドはドストエフスキーの領域に
⌾「ニューオーリンズ・トライアル」良くできた作劇
⌾「ドッグヴィル」まあユニーク
⌾「ルーニー・チューンズ/バック・イン・アクション」ダンテズ・ピーク
⌾「ピーターパン」丁寧に作っています
⌾「オーシャン・オブ・ファイヤー」西部劇の興奮
⌾「永遠の語らい」何も言わずに観てください、絶対に観てください
⌾「スクール・オブ・ロック」中学生のロック魂
⌾「白いカラス」微妙ですがメロドラマです
⌾「イオセリアーニ特集」ブニュエル+タチ+αです
⌾「スパイダーマン2」評判いいですね、僕はあまりのれなかったですが…
⌾「ヴィレッジ」シャマラン、妄想飛び散らしてます
⌾「サンダーバード」最悪、弦人さん観たら激怒する
⌾「予言」恐怖新聞の映画化で良くできています
⌾「2046」これも微妙です、「花様年華」の続編なのですが…
⌾「コラテラル」ロスの街並みをとらえた映像だけでも価値有り、今公開中
⌾「インファナル・アフェア無間序曲」空気が伝わる映画です
⌾「隠し剣、鬼の爪」「血と骨」今公開中なので



日本科学未来館の「LED地球儀」をプロデュースした男。
変態だらけのボストークでもピカイチ。
仲條正義かっこいいすね。ヨーダのくせに。

TDC審査会

例年審査員として参加していたTDC審査会。
今年は年鑑の為にカメラマンとして参加。
こっちのオーラが下がったのか、あっちのオーラがすごいのか、外から見るとはっきりとその力を感じる。
リハビリにはもってこいな空間。

まあ、とくにモノヅクラーは顔に出るね。
仕事が。
正直みんなの顔が直視できないっすよ。

プロの仕事

  刑 務 所 で 聞 い た 仕 事 の 話
市原刑務所の同期に、ブタの解体中に勢いあまって自分の太ももに牛刀を貫通させ「七人の侍」ばりの鮮血が履いていたゴム長を二秒で満杯にしたSE会社の社長がいる。なぜSE会社の社長が豚の解体をしているのかというと、豚肉の解体計算プログラムを組むためだそうだ。「体験ブタ解体」かよ! ブタ解体師にはランクがあって、ピンとキリでは、同じブタから捕れる精肉の量が倍、値段も倍、になるらしい。なのでその日のブタの入荷量、質、解体師ランクをうまいことシフトしないと豚肉の卸値が最大四倍も違ってくる計算になる。
彼は三ヶ月もの期間ブタの体験解体をした。
「モノ作りのためにそこまでするってそりゃすげ〜! って思うけど三ヶ月ってど〜なの?」って聞いたら
「地方はそこまでしないと仕事がない」と彼は答えた。

2日間で約3500点の作品を並べ替えるTDC審査会のボランティア学生。
後にTDCに入った川口美砂。

TDC年鑑

審査会を初めて別の目線で体験。
おかげでかな? 年鑑のデザインの方針がほぼ固まった。
審査会バイト女子を一匹捕まえて、年鑑のラフのための撮影を手伝わせる。

方針は、
そのグラフィックが最も魅力的に見える年鑑。
かな?

このメガネバイトちゃん、この後これをきっかけに年鑑デザインのアシスタントとしてウチに来て、入稿データ作成のオペレーションをそつなくこなし、あれよという間にTDC事務局に入社。
引っかかるヤツは引っかかる。

なんかね。良い仕事を見ると焦るんですね。

六つ目の仕事

水戸芸の森さんから駆け込みで出所後六つ目になる仕事が舞い込む。
森さんとは捕まる前に、椹木野衣『ゼロ年点』、椿昇『国連少年』を一緒に作った。
なんとなく兄貴に似てて仕事はしやすい。
なんか捕まる前より忙しいんじゃねーの?

  森 さ ん の メ ー ル
弦人さん
海洋堂お願いしますわ。
一度電話ください。

水戸芸術館 森司

奥村さんの家から万引きしてきた原画。

館山の年末

出所後初の仕事納め。
で、ひさびさの館山。
奥村靫正の絵に迎えられる気分はなんかわるくないんだよね。
吉永マサユキのDMとのバランスも悪くない。

南国館山もさすがに十二月は寒い。
んが、魚がやばい。
今日は市場で義兄さんにおいしいマグロの見分け方を教わるが、セグロやサンマほど簡単じゃない。つかこれはなかなか無理。切り身になってる魚はマグロに限らず難しいそうだ。
義兄さんの買ってくるマグロはバチマグロのくせにやたらうまい。


最後の保護司訪問

築地で買ったカモとネギをしょって最後の保護司訪問。
またもやPC話で盛り上がる。
和尚お世話になりました。
良いお年をお迎え下さい。


保護司のお寺です。保護司はその素性を明かせないんですね。
なのでわかりにくい写真で。
白紙からやり直しますって名刺。

新しい名刺

ボストークの名刺に乗っかって新しい名刺を作らせてもらった。
乾さんからの出所祝い。

  乾 さ ん の メ モ
名刺の校正机の上に置いておきます。
文唱堂の人が、弦人さんの住所部分薄々ですが・・・
って心配していました。
それが狙いでしょ、って言っておきましたが、確認してください。

新年

姉貴と義兄と三人で初詣。

おみぐじ大吉。

右手がかわいい。

逮捕一周年

今日は捕まって一周年記念日。
一年前に留置所で書いた初日のメモ。

  世 田 谷 警 察 留 置 所 メ モ
留置所に入る時、全ての持ち物をチェックされ、受付に預ける。携帯、財布などはもちろん、カード、名刺、一円玉までリストに細かく記載する。身に付けてる物もベルトやパーカー等のヒモ等は首吊りを始め様々なツールになるので預かりになる。ピアスなどもってのほか。ジーパンも強力な首吊り道具になるんでダメ。インプラントとかはどーなるんだろうね。そーゆーわけで今オイラの身に付けているものは、Tシャツ、パーカー、ジャージ、靴下、これだけ。他は、紙切れ一枚持っていない。もしなんかの間違いで持ってたら即取り調べ。

あ〜、メールをうたなきゃいけないんだけどPCないし、打ち合わせ全部スッポカシたから携帯ガンガンだろうけど。本当に身一つ。服は着てるけど二十一世紀の人間としてはスッポンポン。しゃべれない、聞こえない、作れないの三重苦。面白いじゃないのよ、これ。不可能でしょ。シャバでこんな状況作ろうと思っても。
シャバでは身の回りに本当にものすごい量のモノがあって、そのモノどもにとてつもなく依存しているってことにいやおうなく気付いた。PCや携帯が無いと誰とも連絡とれないし、車やチャリンコが無いと外にもいけないし、ボールやアブフレックスが無いと、運動もできないし、PMパッドがないとデザインもできないし、時計がないと朝だか夜だかわからないし、ベットが無ければセックスもできないし、強火がなければチャーハンもできない。そんな、人の力を増幅・加速させるウルトラモノだらけのシャバから一変、「身一つで何ができるんよ、オイラ」って問いかけられる。


五五〇〇円のデザイン年鑑

今年、TDC年鑑は大きなリニューアルを考えていた。海外での需要が増してきたり、年鑑そのものの意義をみんなで話したり、デジタル写真、DTPフローによる低コスト化の環境がそろってきたり、様々な要因をバネに「五五〇〇円!」を目指す。

今までの半額以下。
最大のリニューアルだね。


TDCのメインビジュアルが出来た。権威とか権力にならないように。
この時点ではまだモック。ようやっと撮影が全部終わった。
バーゲンなのでお金。とりあえず小銭を降らせてみる。

Laforet
プレゼン

ラフォーレのプレゼンの話が来た。
こりゃ勝つっきゃない。

膨大なプレゼンアイテムで、ポスター、ショッパー、メガホン、垂れ幕、CF。
落ちたら洒落にならん。

花見

は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
たかだか一年しか空けていないのに目黒川花見がこんなにいとおしいとはね。
毎年必ず花見は欠かさないんだけど四年前からもうここ。目黒側沿い。
提灯は下がってるし、植え込みパーテーションに囲まれた空間はオープンなテラス気分だし、べろんべろんのオヤジのすぐ横をいたいけな小学生がすらすら通り過ぎるし、あたりまえだけど川がね、さいこ。

一斗缶スペアリブ
七輪餃子
ペニンシラの生ハム脚一本
中華街心苑の赤いチャーシュー
ドンキのお徳用よっちゃんいか

目黒川。この季節はくさくないんです。

Vanilla

捕まる前にロゴをやった六本木の巨大クラブ「Vanilla」に顔を出す。
あんまり大声じゃ言えないんだけど、本当にこのビルヤバイ。ご覧の通り威圧的で、挙げてくと切りナインだけど、今どこにいるのかが全く把握できないな奇っ怪な導線とか、目線の高さに突起物が異常に多かったりとか、おきまりの一人しか通れない狭い廊下とか、様々なデザインがそれを物語っている。
むっちゃ好きだけどね。


おまけにセンスが良い。

先っちょが1㎜のボールペン

先っちょ1㎜ペンのラフ。これでも描けてる方。

  留 置 所 で 困 っ た ペ ン の お 話
留置所では、午前中と午後にそれぞれ三時間づつボールペンを借りられる。紙はコクヨの便箋を買うことができる。便箋はたいてい濃い罫線がはいっているので絵を描くばあいは裏を使う。うっすらとガイドラインが見えるなかなかのグラフィック用紙になる。さて問題はボールペン。デザイナーでラフやスケッチを描くのにボールペンを愛用している人はあんまりいないだろう。子供の時にボールペンで絵を描いてたら「そんなもんで絵を描くとヘタになる!」と親父に怒られた事を思い出した。が、そんなこといってられない。ちょっと使いこめば慣れるだろうし。ところが、ここで貸してくれるボールペンがすさまじいことになってる。自傷、自殺、他傷、他殺防止の為に先きっちょが1㎜しか出ていない&ホルダーのグリップも刺さりにくいようにありえないくらい丸く太らせている。これで何かを書こうとすると、おのずとペンが垂直に立つ。そーすると、紙とペン先の接点が見えない。これはマジつらい。二画以上の文字は絶対ちゃんと書けない。
逮捕されて、それでなくとも動揺してる時にこんな不具なツールで書いた手紙とか送った日にはとんでもなく余計な心配をかける。それも狙いかもな。
二画以上の文字が書けないのに絵やデザインが描けるはずもない。が、オイラにはイマイマこれしか無い。
とにかく描いてみる。

グラビア印刷だと1円の質感が出ず、印刷所で粘ってなんとか…

ラフォーレ納品

忙しさには死ぬほどなれてるつもりだったけど、CF、B倍連貼ポスター、B全ポスター、連貼チラシ、DM、雑誌広告、大段幕、ショッパー、メガホン、フンドシ、うちわ、ハッピ、シール、
えーと、いちにいさん・・・
13アイテムはさすがに死ぬ。家に全く帰れない。
事務所がない、制作システムがない状態で受けられる仕事量じゃなかったね。

ア ヤ  ズ

新生P-House満を持しての企画展は飴屋法水「バ  ング  ント展」。
2005年美術展ベストバウト。
誰も声をかけないでいた男は秋田隆行に呼ばれ、誰も声をかけれない箱に21日間籠る作品を展示した。オイラを含む声をかけれなかった来場者たちは期間中箱をノックし続けた。

グラフィックを頼まれた。
野良のくせにまるまる。

くつした

ボシャに来る野良猫。オイラのユーザーネーム。

  獄 中 ノ ー ト
靴下が届いた。これで官モノのクソ靴下ともおさらばよ。少しずつだけどアイテムがそろっていくことでこのロールプレイングゲームでの戦いが俄然やりやすくなる。あまりにもモノが無いこの環境では靴下一枚がマックブック並のパフォーマンスを持ってる。よーな気すらする。
昨日寝る前の洗面所でのやりとり
懲役A「それ、なんすか?」 オイラ「あ、コンタクトの洗浄液ですよ」
懲役A「み、見せてもらっていいすか?」 オイラ「こんなものでよければ」
欲望は他者から生まれる。


品川駅前の光回りは撮影に抜群。

希望塾

前科者なのにTDCの講義を頼まれる。
出所してから何本か講義の依頼があったんだけど「前科モンだけどいいの〜」っていうと丁重に断られる。

犯罪者は、ほんと、いろんな手口を考える。オリジナリティという意味で言えばそこらのデザイナーはまずかなわない。道具についての詳しさも当然切実で、窃盗には写真のISUZUのEBFが、取り回し、荷物(窃盗品)の積み卸し、エンジン音、など総合的に人気車だそうです。
「キャバクラ嬢専門の窃盗団」ってのが拘置所の同期にいて、新宿または六本木のナンバー2をピンポイントに狙うんだそうです。一ヶ月ほど大枚を投入しての豪遊でナンバー2の子の売り上げがナンバー1の子を抜いた翌週くらいにたいてい家に上げてくれるらしい。そこで入念な下調べ。可能なら鍵の型を取る。さらに可能ならごちそうにもなっちゃう。バックや服や靴やアクセサリーややで通帳印鑑が無くても一件で二〇〇〇万〜四〇〇〇万の売り上げになるそうで、最後は本当に金の使い道がなく、ロシアとかにミサイル撃ちにいってたらしい。

今日は生徒たちとそんな話で朝まで盛り上がった。


 獄中ノートに記された妄想サイトデザイン。

サイト仕事

某サイトリニューアルのプレゼンへの参加依頼が来た。

毛皮族

天才江本純子の公演ポスター
篠崎さんの豚のイラストをメインにと考えていたんだけど結果こうなる。


杉本清子の写真が良すぎたんだよね〜。篠崎さんに嫌われたかも。
今は無き五反田民族村。キムチの浅漬けがヤバイ。

BEAMSの雑誌

来年はBEAMS30周年だそうです。

「BEAMSの年間のカタログを一冊の雑誌に! 一年間」って企画のADをマガジンハウスの中島敏子に依頼される。


出所一周年

は〜
つーことで、早いもんで出所後一年たちました。
少しづつシャバになじみつつ刑務所メール公開。

当たり前だけどメールは打てない。電話も。なので、「郵便局メール」を使う。郵便局最速のメールである速達ボタンをクリックすると270円かかる。驚く。いくらなんでも場違いな値段設定。三通で再安プロバイダー月額。うむ。しかたない。外とつながる方法はこの「郵便局メール」と「面会」しかないのだ。速達でだしても、検閲に一日かかるんで、朝だしても翌々日くらいになる。外からの手紙も検閲が入る。つまり「いまどこ?飲んでるんだけどこない?」「うわーチョービジネスチユー」ってやりとりに、四日ほどかかる。そーいったインタラクションで人はどんなコミュニケーションをとれるのか。


オイラが一言喋る間にシャバでは四〇往復のやりとりが行われている。手紙に書いた情報は世田谷警察でチェックしている間にすでに古くなり、シャバでは新たな問題について検討されていた。
一つの事柄に対してメールや携帯や直接会ってとか、人は様々な方法で連絡をとったりとられてたりする。メールの情報はそれに書かれているテキスト以外にも多くの情報を持っている。何時に、誰から、どんなテンションで書かれているのか、その情報には何人が接しているのか? どんな時間の流れをしているのか? 自分はどのぐらいの関わりをもっているのか? によって受け手の態度も変わる。さらに携帯にも着信があったりと、それは五感の様に、料理を目や耳でも味わうのと同じように一つの情報に対して接している。
携帯を複数もつ女子高生とかは、いったいどんな複雑な触感を持っているのだろう。

今まで本気で女の子を愛したことがないという、ウェブデザイナーの相馬君。

ウェブデザイナー

TDC希望塾の飲み会でナンパしたウェブデザイナーとプログラマーを「負けたらギャラ無し(ひどいね)」って約束で二週間拘束して某ポータルサイトのリニューアルプレゼンを仕上げた。
初めてのウェブ仕事。
負けらんねー。


まずは原宿BEAMS村をくまなく回遊。

BEAMS村

中島さんと原宿BEAMS村をぷらぷらする。思ったより良いのがあるな〜っつーかオイラ、ファッションから離れすぎてた様子。正直なんでもよく見える。そーいや「ショッピング」してね〜。
カーハートあたりからやりなおしっすね。

  出 張 本 屋 の お 話
月に一度、講堂で「本の展示購入会」がある。商品の現物を手に取って読み選んで買う、というシャバではあたり前のショッピングが、ここではとんでもなくスペシャルな事。世界初の万博「ロンドン博」以前のショッピングでは、消費者はあらかじめ買う商品を決めて(例えば5㎜のネジ)その専門店を訪れ、奥に座ってる定員の所まで倉庫のように積まれた商品の間の通路を抜け、「5㎜のネジ二〇本ください」と伝えると、店員がゴソゴソ出してきた商品と代金とを交換してくれる。普段の刑務所ショッピングは決められた数少ない商品をマークシートで買うという、万博以前のそれと同じく味気な〜いものなので、この「講堂セレクトショップ」での消費欲、選択欲の解放はグッとくる。


版型とそのメディア性。

「週刊文春」サイズ

本を作る時、まずは「どんな版型にしますかね?」から始まる。それより重要なデザインはない。中島さんと話してるうちに「大判ビジュアル誌は無し」と。
「ヤンマガ」とか「週刊文春」とかの体裁で「ファッション誌」。
原宿でゲットした帰りの山手線北千住あたりで網棚にポイと捨てちゃうメディア。
かな?

たん

出所後のなじみのお店周りがオモロイ。「お〜〜〜ひさびさだね〜」となにも知らずに迎えられ「大変だったんよ〜」と盛り上がる。

  獄 中 ノ ー ト
広島の暴走族の特攻隊長で二一歳。ガタイも顔も身のこなしも看板通りのこの若者と朝礼の整列時によく話す内容は「いや、マジぜんぜんどーでもいいんでスよね女のこととか。ヤバクないすかねオレ。飯になんか入れられてないスカね? そんなことより! 今日のハム! どーやって食います?」
とにかくここんちの懲役はみんなグルメ。出されたモノを最大限の努力をもっておいしくいただく。
カレーにバナナを混ぜたり、ハムにジャムを乗せたり、缶詰ミカンにチョコをまぶしたりと、そのクリエイティブは超斬新。

ヒトがマジメに撮影しようと思ってるときに限ってこんな団体が。

自然教育園

BEAMSで使う様々な素材集めを始める。今日は女子高生じゃなくて自然。
小枝や木の実やカエルなどを狙う。

市原刑務所に移管された。ここは「開放的処遇施設」という、塀がなかったり、園内を自由に歩けたり、お菓子が買えたり、付きに何度も面会が出来たりと、日本の刑務所としてはちょいと変わった待遇のいいところ。ここにきての印象を一言でいうと「ドラクエ」。はじめの二週間の「新入寮」はここでの生活に必要なすべてのチュートリアル。ゲームの取説からはじまり、歩き方や行進のしかた、入っていい場所とダメな場所、ゴールドの稼ぎ方や、戦闘の作法を教わる。この時点でアイテムはまだない。
「新入寮」のあとには「準解放寮」→「解放寮」→「希望寮」→「出所」といったステージが用意されている。



ゲームを進めるにつれ、「いかずちの下着」や「黄金の靴」や「香りのシャンプー」やらと、乏しいけれどそれなりにアイテムが充実する。ほんとうにわずかながらのゴールドもたまる。
ゲームデザインにおいてマップはとても重要。どんなに広大なマップでもそれは将棋やオセロの延長上にある。RPGに最低限必要そうなエレメントで構成された市原刑務所のマップを見たときにこれから始まる冒険のおおよそのストーリーが想像できた。



戦利品

キックオフミーティング

ロマンチカの足。湯川さんのパーティーで。

某サイトのプレゼン勝ちました。
来年の夏ローンチを目指し、今日は初の全員ミーティング。
大人数のプロジェクトはまず人を知るところから始まる。

  獄 中 ノ ー ト
『東京拘置所』に移された。東京中の警察署から懲役候補が集められる専用施設。東京拘置所はいわゆる刑務所に準じた所で八人部屋雑居で部屋長と呼ばれる人がいて以下新人までしっかりと役割分担が決まっいる。
そこがどんなステージなのか? がはっきりしていると人は自分の置き場所をわりと簡単に決める事ができる。ほとんどの人がシャバでも同じ様な役まわりなんだろう。大抵がうまい具合のポジションに収まる。

ここはまさに人生合宿。「一物もってるけどお互い様」な空気のなか、つまり相手ありきな気を使うのが基本となっている紳士的な空間。そこで三日もおなじメシを食っていると、そもそも無理をしようとかって気にもならない。お里はだいたい知れる。
その理解の速さの理由の一つには「モノを持っていない」というのがでかい。モノどころか肩書きも人格も何もない。素でいくしかない。なので速い。

ここには連日いろんな人が送られてくる。
送られてくる人たちは二種類。
「悪い人」と「頭の悪い人」。
出所したその日にベロンベロンに酔っぱらって翌朝目が覚めたらまた留置所にいたり、コンビニで120円のオニギリを万引きして拘置所まで送られたり、夜中に先輩から呼び出しくらって渋々出かけていったら殺人現場だったり、シンナーぶっかけて火つけちゃったり(人に)、道交法違反のあげくで逮捕されたりが後者の「頭の悪い人」。
捕まるって事を考えていない人たち。

前者は「仕事」または「ギャンブル」って考えてる人たち。
つまりプロ。
会社の金を3000万円横領して実刑三年の判決(通常1000万で一年の計算)
「三年はきっついんだよな〜、まあ散々遊んだからねー、それに本当はゆうに一億は横領してたんだけど会社はもう決算〆てるからさ、遡って告訴しないのよ、株主の手前」。

三年で一億円横領。で三年の実刑。
フラットな六年よりまあ良しとする。
彼はここで今後の様々な「仕事」に備えて社会に戻る。

出所後初墓参り

元旦。
朝一番でお袋の墓参りに。
松本家は神道なので、
 二礼
 二拍手
 一杯
でお墓を拝む。

捕まった事。出てきてからの事。入所前の荒れっぷり。

全てを報告したら二〇分かかった。

松本家のお墓

墓の氷

墓参りの帰りに見つけた氷。
見事なので器からだして撮影してみる。
デジカメのハイライトはなぁ。


ポケモンワールド並みのアイテムだらけのシャバ。
恵比寿のLimArt。全部買いしたいところをぐっと我慢。
英数字各いっこずつをバランスを考え慎重に
女子美の活字。いつ見ても壮観。

プリントブロック

三〇〜五〇年代のフランスのプリントブロックを大量にゲット。
英数字が一通り揃っているし、特にポスター用の大型のものがうれしい。
「B」のマテリアル収集も大詰めにきてこれは貴重な戦利品。


女子美

プリントブロックで組んだ文字組みを印刷するために活版工房がある女子美へ。
伊勢克也、立花文穂などが先生をしているおかげで工房は現役。


刷り上がり。お見事。
見出し用にBauer Bodoni Romanをボールペンで起こす。

Bのマテリアル

ダイモでおもいっきり深く打ったテープを撮影。
巻頭コラムのタイトル用。

おおよそ「B」で使うマテリアルが揃った。
刑務所での癖が抜けないのか、手業モノばかりになった。

  紙 に 関 し て の 日 記
【紙】
デザイナーじゃなくても自分で使うメモやノート、便せん、ダイアリー等の、紙の質とその形態にこだわる人は意外に多い。
「思考を一番最初に形として出力するツール」なので当然と言えば当然なんだろうな。
サイズ、色、質感、厚さ、罫線の色、細さ、ピッチ、綴じ具合、開き具合、縦開きなのか横開きなのか。それら全てのバランスが作り出すデザインが、まだ外気に触れてない自分の体の中で生まれたばかりのふもふもしたイメージや思考を吐き出させる。その「吐き心地」は紙のデザインによって微妙に影響される。


クレジット用にUniversをボールペンで。Helveticaに全然勝ってると思う。

【ノート】
市原刑務所で買えるノートはコクヨのキャンパス6A(いわゆるA4、B5とかと違う規格ですね、何なのかしら?)7㎜ピッチの横罫が三〇本入ったいわゆる「大学ノート」。「大学ノート」なのに社会人になっても愛用者多いよなあと思っていたけど、使ってみると納得する。デザイナーのノートの使用目的は九割が、ラフやアイディアスケッチになる。ラフやアイデアを書き留めるノートとしては「無地」と「方眼紙」が圧倒的に便利で、オイラが使っていたのはほとんどが「無地」。たまに「方眼紙」。言うまでもなく、「無地」は自由なアイデアや形を考えるのに、「方眼紙」はデザインをきっちりと詰めていくのに向いている。横罫の入った大学ノートは文字専用でデザインに使うわけ無かったんだけど、これがイイ。横だけというのがイイ。7㎜ピッチと罫の細さ、色もわるくない。


人のラフを見るのってすげ〜楽しいんだよね。絵でも良いんですが、普通の人の純粋な絵ってなかなか見られないから、打ち合わせの仕事相手の(デザイナーじゃなくても)メモに書かれるラフを盗見して和む。魂がそのまんまメモられているようなラフとかね。建築家とかファッション系とかもすごい人が多いですね。よくそんなラフから億単位とかプロジェクトをスタートさせる勇気があるなぁと感心します。オイラは想像力と勇気が無いんで、ラフでも出来上がりが想像できるようにキッチリ描かないとダメなんですね。
その「ある程度、ちゃんとしたラフ」を描くのに大学ノートの横罫のガイドがなんともイイ。まずさっと描く。このとき横罫線はグリッドのそれにくらべるとかなり気にならない。次に形をつめる。このときこの横罫がとても良いガイドになる。


ラフの時だけ成立する「辻褄の合わない美しさ」ってのがあって、フィニッシュするのに相当苦労するんだけど、そーゆーたぐいになりにくいんですね。無地に描いたラフは。逆に方眼紙は図面的になり過ぎちゃう。
白紙に近いところに気の抜けたまたは少しまぬけなガイドが入ってる。
大学ノートはそんなバランス。


   Olivettiのタイプライターをヤフオクでゲット。3600円也。

【版型】
二五二×一八〇というB5よりちょい小さいこの版型は頭の中のモノを吐き出させ、しかも整理してくれるのにちょうどな空間な気がする。テキストでも図版でも、別に版型上のレイアウトを意図して描いてるわけでもないし、片ページで終わるのか、見開き三つになるのかもわからないまま描き続けていくと、なんだかとても美しく分りやすく収まる。
シャバではラフ・アイデア・企画書等、すべてA4に書いていた。それとは違うまとまりを感じる。
松花堂弁当の弁当箱に納められた料理が、なんだか勝手に世界ができる。
そんな感じ。


市原刑務所はコクヨで東京拘置所はアピカ。グレーの黒の布テープの「大学ノート」と言えばってデザインのアレ。紙はいつごろ開発したのか知らないけど、「アピカ1000年ペーパー」という紙で、額面通りに受け取ると「1000年褪色しない紙」と言うことだろう。王子製紙の特抄中性紙75g / m2とだけ記されている。ボールペンのインクのノリやペンの走り具合はアピカのほうが数段よい。コクヨは「スベル」。ノンブル、ヘッダーなどのフォーマットデザインもアピカのやや勝ち。でも、横罫の太さや濃さは断然コクヨ。
太すぎず、濃すぎず。それと縦罫を引く時用の目盛りのピッチがアピカはなぜか10㎜、横罫のピッチは7㎜なので、コクヨのように縦罫用の目盛りも7㎜にしたほうが良いのでは。
とにかく今年のオイラのデザインツールは決まった。ボールペン80円×3、ノート210円×4、合計1080円也。安! と思うが、今のオイラの月給を上回る金額。


サイト運営

例えばグラフィックデザインなら、ほとんどその意図通りのカタチと質でさまざまなユーザーに届く。例えばゲームデザインなら、いく通りかの攻略方があったとしても、コチラが用意した範疇での自由度しか与えられない。
が、どうやらサイトデザインの場合はそうはいかない。そもそもの使われ方の自由度がハンパないし、なにより「いつでも更新出来る」って事により、パッケージの無い、終わりの無い、完成形の無い、流動的なデザインと発行が出来るっつーかさせられる。ハードルはすげー高いけど、おもしろいフィールドとも言えるし、多角的な自由度のなかでのモノ作りはちょっと油断するとすぐに明後日の方角に向かってしまう。
巨大サイトの様々な役割のスタッフ達との意見交換が進むにつれ、その自由と不自由のさなかにのらりくらりと身を置く「運営」って役割が、なにやら重要な気がしてきた。

この人たちを見ていると、その職能、
なにやらとっても重要な気がしてならないんだよね〜。
あんまりきれいなので万引きした。

が〜〜〜ん

脱臼〜
指二本〜
きれーにハズレてます。
明日からBEAMS合宿。
もちろん右手ギブス。
マウス持てねー。


「B」合宿

寝ているかのように仕事をする。仕事をするかのように寝るのが特技。

つーことでおしゃれなBEAMSプレスルームの一角にむさくるしい即席編集部を無理矢理作り、BEAMS合宿の始まり始まり。
右手は包帯。

編集長中島敏子はとにかく合宿好き。平日に自宅のすぐ近所のスパで一人合宿する始末。それととにかく溜め込む。目の前にぽろぽろとある仕事なんかやれば五秒と高をくくっているのでなかなか手を付けない。程度を超えた量にならないとやる気が出ないらしい。
周りはいい迷惑。


BEAMSに来たとたんにダテ眼鏡をかける自分をわかってない男。

BEAMSプレス内編集部

「編集部をプレス内に作る。」
このプロジェクトで中島敏子最大のディレクションかな。


まさにナレッジアンドエクシペリエンスっつー風貌。

新しい職能

BEAMSらしからぬ人がいる。いや、ある意味むっちゃ編集者っぽいんだけど、実はこの人「Relax」のころから中島さんとフルDTPシステムを構築してきた同胞、三々五々の西村さん。DTPチームのヘッドであり下手な編集者よりよほどシーンに詳しい校正マン。データ入力から色校正まで、つまりあとは刷るだけってデータまで仕上げる責任者。誤植があったり、写真の色が狂ってたり、わけわからんデザインになってたとすればすべてこの人のせい。

どの業界も同じだと思うけど、グラフィックデザインもDTP化したとき、それまで原稿作成、執筆、編集、デザイン、校正、版下、製版、印刷と作業領域と責任はきっちり分業されていたそれが、もわわ〜んとしたものになり、「これ俺の仕事じゃねえよ!」とあちこちから怒りの声が上がった。「Photoshopを使うことでデザイナーが製版をコントロールできる」ともとれるし「製版の知識を必要としその作業と責任をとらされる」ともとれる。
そんな「どー判断しましょうかね〜」なところに現れたやっかいとも楽しいともとれる「校正」を軸とする入稿フロー。
最大の功績は「InDesign」のことを「インデデ」と略したこと。

思いつくことはだいたいやってみた。

創刊号

  獄 中 ノ ー ト
「デザインのしかた」の欠点に「座ってやる」がある。座ってつめていくと、文字どおり詰まっていく。良くも悪くも。その時間はもちろん必要なんだけど、対比する時間が大切。オフデザイン。
ボールを蹴ったり、歩き回ったりするだけで、発想の軸が変わる。視線と視界が変わる。暑かったり寒かったり、明るかったり暗かったり、くさかったり匂ったり、人を見たり見られたり、景色と呼吸が変わるんだからそりゃ変わる。
デザインする場所や時間を持ち歩くと良いようだ。
歩きながら文字を打てる携帯メールは何を変えているのか。危ないから歩きながらは打たないか。
携帯でデザインがしたいな〜。ベジェを扱うとは言わない。感覚をメモれるようなツールが一つ入っていればいいなあ。毎日違う所でデザインしたい。



週刊誌っぽくファッション誌っぽく。

でも、まあ、今は、刑務所って超特殊な環境でのデザインワークとオフデザインワークを十分に堪能するんだな。ここで体と心が受ける影響をなにか形にできればいい。今はどんなカタチでその影響が表れるかを待とう。考えが変わればカタチが変わる。変わらないとダメ。そこからストレートに出たものでないと届かない。話を合わせるようにカタチをつくるのはやめよう。デザインは受注制作だからどうしても揺らぎやすいんだよね。オーダーに則すのとごっちゃにしちゃだめ。


何かは変わった気がするんだけど、
まだそれがわからない。


合宿場に行きがけに真鶴の地魚寿司をつまむ。

サイトリニューアル合宿

某サイトの合宿が始まった。
こっちはほんとの合宿。
伊豆で二泊。様々を話し合う予定。
今書きたい本がある。『ウェブデザイナーの憂鬱』。現状、ウェブページのほとんどはチラシとカタログ構造。そしてそのデザインは、例えば「豚肉98円!」に赤で爆発マークを入れたことでクリックが何ポイント上がった、なんてデータが蓄積される。スリーペイン構造が基本で重要なモノから左上でド派手なバナーに負けないUIが必須でと、代理店と企業のウェブ担当が死ぬほどグルメ化していく。もちろん参考のしようはあるんだろうけど、蓄積されたデータとグルメ化した担当者のばか力に対抗するのはカンタンじゃない。


若いうちの苦労は買ってでも。

 

スタッフ

「アートディレクターの仕事で最も大事なことは何ですか?」とたまに聞かれる。迷わず「巻き込むことですね」としたり顔で答えてる。こー見えてもオイラばりばり職人デザイナーで、ラフ、デザイン、緻密なパス、複雑なPhotoShop加工、撮影と何でもこなす。スピードも速い。弁当食う速さは半端ない。なので、余計に巻き込む。巻き込まれてくれないと全部オイラがやっちゃうんで。
今回DTPの画像処理担当の清水君と真木君もしっかり巻き込まれてくれて、BEAMSの地下でブローニーでの撮影までこなしてくれた。

SFC出身の新人webデザイナー鍵っ子。のちにBCCKSのスタッフに。

ウェブデザイナー

ウェブは頭数がいる。
合宿で切られたスケジュールはとんでもなく、スタッフを大増員。

あんこをイメージするモノを撮影。和菓子は空気感のある絵が似合う。

撮影

サイトの仕様もほぼ固まり、実制作に突入。
ばらばらな経験者が集められたこのプロジェクトでは、一つ一つの仕事の行われ方がそれぞれの指針につながる。
ほとんどのウェブデザイナーは撮影というものをしたことがないらしい。素材もソースも見本もすべてPCの中にあると思ってる。出社してから帰るまでほとんどPCから離れない彼らを様々な撮影現場に連れ出してみる。
実際にやらしてみれば、イイ造形力を持っていたりするのにね。
これも、「もったいない」だなぁ。
そしてウェブデザイナー最大の憂鬱。
ラフを描かない。
素材を作らない(手書きに限らず)。
ほら、楽しいじゃん。

COMET

大量に撮影があるんで、前から狙ってたコメット2400Wをヤフオクでゲット。
広い会議室を一灯ライティングでテストシュートしてみる。
部屋に太陽がやってきた。ってとこか。

この本をご覧になってる若いデザイナー全員にすすめます。
ヤフオクの安いヤツでいいんで、1200Wでぜんぜんいいので、撮影に立ち会う仕事なんかしてませんのででもいいので、スロトロボ買いましょう。
手持ちのネタの撮影にも、スタジオ立ち会いでも、圧倒的にレゾが変わるから。


2400wの威力は絶大。

『B』終了〜

一年間で四冊。
それなりのトライはできたかな。
なにより久々の雑誌作りは新卒の頃とは当然違うインプレッション。
ウェブ仕事と平行していたのもおもしろかった。
構造的設計を本とは違うところから考えたり、CGM的な不安定さを意識したり、デジカメっぽさをいじってみたり、それを物理的な紙に雑誌にどう綴じてメディアとして落とし込むか。
今度はサイトデザインに紙的なアプローチを混ぜてみたり、それをピンポンしてみたり。

二つの仕事が同時期に出来た事を次へかな。

   おつかれっす。

プロジェクト凍結〜

さて
詳しいことはあんまり書けないんだけど、某サイトのプロジェクトは日の目を見ることがなかった。集めたスタッフも解散。

やらなきゃなことが分かった。

来年の仕事はなんにも決まってないし。

出所後初の事務所を借りる。

マツモトタカシウシノミコト

松本弦人です

父松本岳が、三月、八十二歳にて永眠しました。

二〇〇三年春に、余命三ヶ月の末期喉頭癌の宣告を受けてから四年間、へたすれば家族の中で最も元気で「おまえらには迷惑掛けないから」の口癖通り最後までバイクを乗り回し、医者、にも家族にも世話にならず、安らかに帰幽しました。
武蔵美→デザイナー→画家→北アルプス山ごもり→小淵沢ログハウス生活。
その間三十八間松本美術教室を続けるという公私ともにタフでやりたい放題で充実した八十二年だったと思います。
故人のたっての希望で家族のみの密葬とあいなりましたので、父が気に入っていた穂高岳とパイプの写真にて失礼します。

オヤジすまん。

After Prison Uncut

2012年10月14日 発行 第三版

著  者:松本弦人
発  行:bccks publish

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松本弦人(まつもと・げんと)

スタジオボイスを廃刊に追い込んだ前科二犯のグラフィックデザイナー。

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