この本は2012年の1月から3月にかけて配信されたインターネットラジオ「ラジオSCCS」を文字に書き起したものです。総合文化政策学部に所属する教授や学生の生の声をお届けします。
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総合文化政策学部の理念
ゲスト:総合文化政策学部教員 杉浦 勢之
ラボ・アトリエ実習
ゲスト:総合文化政策学部第一期生 葛西 翔
高校と大学の違い&受験体験談
パーソナリティー:総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
メディア
ゲスト:総合文化政策学部教員 内山 隆
映像制作ゼミ
ゲスト:総合文化政策学部第二期生 白子 孝
論理とその構造&総文の英語学習
パーソナリティー:総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
表象文化論
ゲスト:総合文化政策学部教員 竹内 孝宏
受験体験談&青山学院大学とキリスト教
パーソナリティー:総合文化政策学部第二期生 永澤 健多 ほか
舞台とその現場
ゲスト:総合文化政策学部第三期生 皆川 玲奈
国際文化論
ゲスト:総合文化政策学部教員 岡 眞理子 ほか
文化研修旅行
ゲスト:総合文化政策学部教員 岡 眞理子 ほか
総合文化政策学部第一期生
ゲスト:総合文化政策学部第一期生 西山 京子
『BOOK SCCS』は二〇一二年の一月から三月にかけて配信されたインターネットラジオ「ラジオSCCS」を文章に起こしたものです。『BOOK SCCS』は、総合文化政策学部の教授へインタビューをする「ラジエスアカデミー」、インタビューの対象を学生に変えた「ラジエスクラブ」、受験生の疑問に答える「Q&A」、受験勉強のアドバイスをする「How to study」、これら「ラジオSCCS」の四つのコーナーを抜粋しています。
どれも総合文化政策学部への進学を考える上でとても参考となる内容となっています。この本を通して、受験生や高校生の方にほんの少しでも総合文化政策学部に共感していただいて、読んで良かったと感じていただければ幸いです。
二〇一二年 七月十八日
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
ラジオSCCS Vol.1より
「ラジエスアカデミー」
ゲスト
総合文化政策学部教員 杉浦 勢之
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスアカデミー」
永澤:このコーナーでは、総文の教員をゲストにお呼びし、簡単な講義をするコーナーです。このコーナーを通して総文のアカデミックな魅力を感じてみてください。今回は記念すべき初回放送のゲストとして、本学部の学部長である杉浦 勢之先生にお越しいただきました。よろしくお願いします。
杉浦:どうも、よろしくお願いします。
永澤:よろしくお願いします。本日は先生のほうからですね、総文が一体どんな学部であるのか、という説明をしていただきたいと思います。まず、この学部が設立された目的や理念を教えてください。
杉浦:はい。これはですね、かなりいろいろな媒体を通じて既に発信しているところですけれども、この学部を創らなければいけないなと思ったのにはいくつか理由があって、最も大きい理由というのは、現代の日本社会というよりは、世界ということで考えた方がいいのかもしれないですけど、これはかなり大きな転換点にいるという印象が強烈にあったんですね。それはいろいろなレベルであるわけですけど、一番大きい差し迫ったところで考えると、この数世紀の流れを見てきたときに、だいたい一世紀規模ですけれども、社会あるいは世界は大きなウェーブを描いていて、ちょっと難しい言い方になるかもしれませんけど、イギリスが中心となった世紀、アメリカが中心となった世紀、これがだいたい一世紀ずつ続いていて、単に政治とか経済っていうだけではなくて、その時代の、その世界の人たちの生活パターンであるとか、文化的ないろいろな在り方であるとか、そういったものをかなりハッキリと引っ張っていくような時代が二世紀続いてきた。で、簡単に言ってしまうとそれは、「モノの時代」であったわけですね。
永澤:「モノの時代」ですか…?
杉浦:はい。もちろんモノづくりというのはこれからも続いていくわけですけれども、少なくともこの二世紀を通じて多くの人々が飢餓から離脱し、モノ的消費が多様に花開く「豊かな社会」に突入している。その流れの中で、ただモノを作るだけということの限界が見えてきた。もちろん成長というのは、ことと場合によっては必要なんだけれども、その成長していく中で、人間がどういうふうに生きるのか、ということがすごく問われる時代に入ってきているということが、二十世紀、もう前一世紀になっちゃったんだよね(笑)、二十世紀の末には非常にハッキリ見えてきていたという気がするんですね。その時にそういった人の生き方とか、それからどういったものに「価値」を感じるか、そういったものを中心に社会っていうものをもう一度考えていく時代が来るであろうと、それを一言でいうと、それはやはり「文化」ということになります。で、これは広い意味での文化、狭い意味で言えばアートとかですね、文学とかありますけど、そういうものも含むような、もうちょっと広い意味での文化っていうものを総合的にどういうふうに考えていくのか、あるいは感じていくのか。そのことを通じて、社会を全体としてどのようにデザインしていくのか。そういったことをきちんと考える人々を創っていかなきゃダメだな、という感じが非常に強かったですね。それが直近最大の課題であったということですね。
それからもうちょっと長いスパンで言いますと、これは大変深刻な部分を含むんですけど、やはり少子高齢化というのは非常に大きかったということです。長生きする方っていうのは昔からいらっしゃるわけで、高齢化というのは、小さな子供たちが病気や貧困などで死なないですむ。これがひとつあるんですね。それと同時に、多くの人たちが長生きできる社会を創ってきたということがあるわけです。で、昔であれば長生きするということだけでたいへん素晴らしいことだとされていた。だからそれ自体否定するものではないわけです。ところが、今先進国では、多くのひとが長生きするわけですから、そういったいわば人生五十年で終わるはずのものが、簡単に言っちゃうと三十年延びる、ということを考えるとこれは人類史上、まったく経験のない時代に入っていくことになるわけですね。間違いなく日本がそのような時代に最初に入ったわけです。で、そのための制度設計は何もなかった。どんな古典を読んでも、こんな社会を「生きる知恵」は出てないわけですよ。それを考えたときに、日本がどういうふうにこの社会を、生きがいのある社会にしていくかっていうチャレンジ、それはもしかしたら人類史上我々に与えられた最も刺激的であると同時に、世界の人々にとっての希望となるようなテーマ、チャレンジになる可能性がある。
そのことは高齢化と表裏の関係にある少子化とも深くかかわっているんです。いま子供が減っているっていう時代ですよね。もちろん子供を産んだり育てたりするっていうことは、一人一人の判断があってのことなわけですけど、全体として子供が減ってくということには、一つだけ危惧があるわけで、もしそれが未来に対する不安のために子供が減っているのだとすれば、これは「豊かな社会」を創り出した我々の社会に何か盲点があったはずだ、という気がしたんですね。つまり、多くの人が長生きできる社会、その中で働いている期間というのはほんのわずか、三十年から四十年、平均寿命で半分くらいなんですね。ですから、その前後にはまだ働かないで育っていく時期と、それから働き終わって自分たちの余生…余生っていう言葉あんまり好きじゃないんですけども、自分たちが残りの人生を生きていく時間があって、そのことを共に価値あるものにするということに、近代っていう時代はきちんと答えられるようにできてなかったんです。で、そこのところをきちんと答えられるようになればですね、未来に対する不安というのも、少しは減っていくであろう。その中で、次世代っていうものが「希望」のあるかたちで生きていける。そういったものを生み出す力、それぞれの年齢と局面で生きることに感動できたり、勇気を持てたりするものというのはどこにあるんだろうかって考えると、これはもう「文化」しかないでしょうというのが、我々の結論であったということであると思います。
永澤:ありがとうございます。そのような背景から文化の重要性に気付いて、それをなんとかしなければいけないという目的でこの学部が設立されたわけなんですけれども、実際に入学してくるにあたってこの学部でしか味わえない魅力であったり、そういったものがあれば教えてください。
杉浦:学部でしか味わえない魅力ですか(笑)。ハハハ、そうですね、これは永澤くんのほうがよくわかっているだろうと思うので
永澤:ハハハ、確かに(笑)。
杉浦:そういう学部がどこ探してもなかったわけで、それでは我々がやらなきゃいけないとなった。そしてこれはもう一つだけ付け加えるとすると、やはり青山という場所はですね、もともと青山学院というものが昔からあったわけで、それと同時にいろんな歴史的変化の中で特異に文化の中心地帯として形作られていると。そういった意味ではアジアにおける、たとえば西と東がですね、ここで交じり合うような、そういったハブとしての役割をもともと持っているわけですね。
永澤:ハブですか。
杉浦:はい。そういう文化創造の場所には、必ずアカデミズムというか、やはり学術的なものとか、いろいろな形での情報発信母体になる大学というのが関わっている。だとすれば、青山においては我々しかないわけで、それはやはり文化のハブとして、ヨーロッパとアジアを繋ぐ、そういった役割を我々がここで果たしていくっていうのは社会的な責任である、というふうには考えていたわけですね。そういったものが一緒になって出来上がっているわけですから、教員サイドから考えるとですね、魅力っていう前に苦しいことの連続で(笑)。つまり自分たちが楽しむために創っているわけではないですから。だから、もしかしたら学生のみなさんに聞いていただくのが一番いいのかもしれないなぁ、というふうには思いますけれども。強いて挙げれば、十年以上の時間をかけて考えられてきた学部ですから、もちろん考えたことと現実というのにはズレというのが出てきてしまうのですけど、その十年の中で従来存在した大学教育の中で足らないものは何であるのか、ということを考えていった中に、いくつかのポイントというか、コアになるものはあった、ということになると思うんですね。
その一つは学問を学問として教えるというある意味当たり前のことなんだけれども、日本の教育がほぼ…これは…こんなこと大胆に言っていいのか…ここは個人的見解にさせてください(笑)。欠落してきただろうな、と思うのは、やはり「創造力」なんですね。で、これは一番難しいんです。教えられる「創造力」っていうのはたいしたことないんですよ。つまり、自ら学生のみんなの中から生まれてくるような創造性っていうものに、どう「場」を与えるのか。その「場」が与えられたときに、生まれてくるものをどこまで支えていくのか、ここのところをどう考えるかが一番大変だった。そのような中から生まれてきたものに、これは総合文化の一種のシンボルとなっていますけど、青山コミュニティラボ(ACL)があります。これは「場」ですね。で、今は(このラジオが)そこから発信されているわけですけど、そのへんに学生いっぱいいますけどね、これはね、ただし単なる「物理的空間」なんですよ。では、本当の青山コミュニティラボというのは何かと考えると、ここの外にはみだしていく、染み出ていく、それらの活動の総体だと思っています。つまり、君らが青山コミュニティラボなんですよ。で、おそらくこれから最初の卒業生が出ていく。じゃあ、彼や彼女たちも青山コミュニティラボなんですね。我々もそうです。教員も。そういった形での運動をなす「場」っていうものを常に生み出していく、ということですね。そしてその中から生まれてきたものを大事に育てていく、という。これがACLという考え方ですね。
永澤:なるほど。
杉浦:それと同時に、やはり教育の場というのはどうしてもしなければいけないことっていうのは決まっていますから固定しやすい、その中にクリエイティヴィティというのをどうやって自由度として保証していくのか、ということを考えたときに、外部の連携機関であるとか、クリエイターの方々とか、アーティストの方々との出会いを生めるようにしたい、と。これが「ラボ・アトリエ実習」です。もっともACLとかラボ・アトリエ実習というのは、総合文化っていうとすぐこれが出てくるのでね、それで私はいいと思っていますけど、ただ、それが学部のすべてかと言われると、そうではなくて、もし学部に魅力があるとするならば、そこで感じたものをもう一回根本的な問いとして持ち帰って、メインキャンパスにおいて、講義や演習を通じて徹底的に考えつくす、っていう。これが、学術教育機関であることの意味なんですね。フィードバックできるようにしてある、と。そういう「仕掛け」だけは創ったんですよ。
永澤:「仕掛け」…。
杉浦:だから、フィードバックしないと、正直言って片翼、翼は半分ということになってしまうので、そこを両方行ったり来たりできる状況を作っていく、ということですね。それが、総合文化の魅力であるとするならば、魅力でしょうね。
永澤:なるほど。では、創造を促す出会いの場を供給するのが魅力であり、それと同時に演習や学問でフィードバックしていく、というのがこの学部の魅力ということだったんですけど、この学部の魅力を最大限に活かすにはどういったタイプの学生が合っているのでしょうか?これから入学してくる高校生に向けて、こういった学生にここの魅力は発揮できるんじゃないかな、というようなことがあれば。
杉浦:まあ自分の考えでは、来る分には拒まず(笑)。なんだけれども、どうなんでしょうね。四年間経ちまして、ようやくここまで来て、完成年と呼んでますけど、卒業生を出すということで、去年二年制大学院の修士を出して、今年おそらく博士論文が出るので、これで五年制の博士課程も完成年、と。だからちょうど今年度(二〇一一年度)というのはそういう時に来ているんですね。で、しみじみ考えるときがありますね。もちろんマニュアル的に言えばね、やりたいことを持ってる、という学生のスタートアップの時には基本的なスキルは持ってもらわなくちゃいけないので、やっぱり世界に出て行ってもらうためには最低限の英語はやってほしいとか、そういうことはありますけども、基本的には目的意識を持っていればね、この学部というのはいろいろな形でその目的意識に向けて科目の組合せが可能にできていますから。それは目的意識を持ってくれているのはいいな、という気はいたしますけど。ただその目的意識の中身がとても大事になってくるとは思うんですね。完成年を迎えてつくづく思うことは、すごくシンプルなことだったんですけど、結局他人のことをちゃんと考えられる学生に来てほしいなと思いました。ちょっと変な言い方かもしれないけれど、やっぱり文化っていうのは一人じゃ成り立たないんですよ。あなたが発信する文化やアートが私に届いたっていうことが素晴らしかったって思ってもらえる、つまりあなたが発信してくれたことがよかったって思ってもらえなければ、いくら発信しても意味がないわけであって。で、そう思ってもらえるということで初めて、すごくつつましやかに言えば、自分が生きてるってことを自分が認められる、ということだと思うんですよ。そこはやっぱりね、とても大事なところだと思っています。で、やっぱりそこを大事にしてくれる学生に私個人は来てもらいたい、という気がしますね。
よく、人の身になって考えてみろ、と道徳みたいに言われるけど、そうじゃないんじゃないでしょうかね。自分が生きてるっていうことを肯定できるっていうことは、やはり多くの人にとってその人がいた、ということが何らか意味あることであったり、価値あることであったということに尽きるのではないかと。私はもともと経済学部から移籍してきてますから言えるわけですが、それは特別なことでなく、ものすごくいろんな活動の場でありえるんですよ。例えば、銀行にお勤めの方でもね、商品作る方でもね、この商品が消費者にとってその人の人生を豊かにしていく、という。これはよく気をつけていれば、仕事の中にどこにでもあるんですよ。で、私はそれはものすごく大事だと思っている。ただモノがあればいいとか、そういったことだけでは済まなくなった時代に突入したときに、そのモノにデザインを与えることを通じてまだ見ぬ人たちに何かメッセージを込めることができるかもしれない。あるいはダイレクトに人と人とが出会う「場」でもそうですね。それはサービスという無形のものかもしれないし、メディアという媒体を通じてかもしれない、こういうインターネット放送を通じて私の声が誰かに届いているかもしれない。その時に望むのは、私がどういうこと考えているかをただ聞いてください、才能見てくださいというのではなく、今日私の声を通じて「あ、そうかな」って、これ聴いたおかげで何か自分でヒントが出てきたかな、「あ、なるほど」と思ってもらえれば、私にとってはそれだけで十分なわけで。やっぱり文化の基本的なところは、「一人ではない」ということだと思うので、そこは是非大事にしてほしい。
というのは、文化というのは非常に怖いものでもある。一つにこりかたまってしまいますと、とても排除的になってしまいますから。だから学生のみなさんにとっての魅力の一つかもしれないけれども、学部のカリキュラムに自由度を非常に与えているつもりなんですよ。その自由度というのは何の為にあるのかということを考えると、やはり、のびのびと多くの人と出会ってほしいし、多くの人と出会い、そのことを講義の中で反芻することを通じて、うちの学生が、「あ、この人と出会って良かったな」「この人の発信したものを受け取って良かったな。今日の勇気もらえたな。」と思ってもらえるような、そういうしなやかで自由な人として育ってほしいということなんです。それはやっぱり道徳というのではないと思いますね。
永澤:では、最後に受験生に向けて簡単なメッセージがあれば、お願いしてもよろしいですか?今まで言ってきたことがそれになってしまうのかもしれませんが。
杉浦:メッセージですか。そうですねぇ、あの、いつも繰り返しているのでだんだんと言うのもなんだなぁと、うちの学生はみんな聞いてるからなぁと思うんだけど(笑)。時間てね、その時その時一回しかないんですよね。人との出会いもそうだし、一人一人もそうなんで、本当は厳密になぜそうなのかということを、それこそさっき講義という言葉が出てきてたけれども、本当は講義の中でお話ししなきゃいけないのかもしれない。もし総合文化政策学部を選んでくださって入ってこられたならば、その時またお話ししましょう、ということになると思うんですけれども(笑)。
個人的メッセージといたしましては、無理に総合文化政策学部を選んでくださらなくてもいいんですよ、率直に言うと。つまり、私が、いま十七、十八くらいの日本の若い人たちにお願いしたいことがあるとするならば、それは、十年後の自分をイメージして毎日毎日過ごしてもらいたい、ということ。それから先ほど言いましたように、自分でない人に対する「想像力」、これはイメージのほうですね、を持ってもらいたい、ということに尽きるわけで。つまり、今、グローバリゼーションの流れの中で、非常に厳しい競争社会になっていて、日本だけではなく韓国でも中国でも全部そうですけれど、その競争の中で自分が生きてくだけでも大変だ、ということ。それはわかるんですよ。で、競争というのは常に未来が見えないわけですから、不安は常にあるでしょう。だけれども、競争の結果がどうであれ、僕らはどうしたって生きてくんですよ。僕らはやっぱり生きていくし、生きていくときに、たとえうまくいかないことがあって、どんな寄り道があるかもしれないけれど、十年かけてそこにいこう、と。そのプロセスは一つも無駄ではないんです。そしてできれば自分一人じゃなくて、一人でも多く、自分にとって大切な人たちとそこまでいこうよ、というシンプルな気持ちを少し持ってほしいですね。これをそぎ落としてきたのは大人である我々の世代の責任であるかもしれない。もちろんそれに対する答えが個人的に私にとっては総合文化政策学部であったわけだけども。やっぱりそれは誰かが言わなきゃいけないな、と最近思うようになっています。
今日本も世界もものすごく大変な状況であるということは、事実なんです。だけれども、我々は生きていくんですね。それを我々は3.11で目の当たりにしたんですよ。我々は何があっても生きてくし、どんなに辛いなかでも、人っていうのは人に対して優しくあれるし、感動できるんですよ。それが広い意味での文化の力なんです。たぶんこれを長らく忘れていたと思うんですよ。大変哀しい事態だったし、不幸な事態だったけれども、やっぱり我々の原点はそこに置かなければならない、という気がしていて、で、十八歳のみなさんがね、若い人たちがね、それを感じられなかったとしたら、それは未来はないでしょう、というのが正直な気持ちですね。
それが総合文化政策学部を受験するみなさんへのメッセージだとは思ってはいないんですけど、十八歳のみなさんへのメッセージではあるかなという気がしますね。それは我々大人の責任でしょうね、そういう可能性としての「場」を創っていくということは。まあそんなに我々の時代が長く続くわけではないわけで。で、文化創造というのは、そういう形で「場」をバトンタッチしていく、未来に「場」を与えるということではないかなと思っていまして。そんなことを考えていますね、最近。
永澤:わかりました。ありがとうございます。というわけで、杉浦勢之先生からの学部についてのお話でした。改めまして、本日はお忙しい中わざわざ来ていただいてありがとうございました。
杉浦:いやいやいや。そう言われると恐縮です(笑)。あの、こんなんでいいのかな?と思いつつも、これ学生のみんながね、自主的に生み出した媒体ですから、少しは役に立てればということでした。どうもありがとうございました。
(二〇一二年 一月九日配信分)
ラジオSCCS Vol.2より
「ラジエスクラブ」
ゲスト
総合文化政策学部第一期生 葛西 翔
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスクラブ」
高橋:ラジエスクラブはゲストに総文の学生、総文生をお呼びして学生の目線から総文の魅力について語ってもらうコーナーです。
永澤:今回はゲストに総合文化政策学部第一期生の葛西 翔さんに来てもらいました。よろしくお願いします。
葛西:よろしくお願いします。
永澤&高橋:よろしくお願いします。
永澤:では早速コーナーに移っていこうと思います。インタビュー形式ということで質問をどんどんしていきますね。ではまずこの総合文化政策学部に入った理由について教えてください。
葛西:はい。総合文化政策学部に入った理由は色々とあるんですけれど、その中で取り立てて一つ挙げるとしたら「面白そう」だったからですね。大学に進学するにあたって、従来の学部にはそんなに興味がなくて、色々な大学や学部を調べていたんですが、最近は新しい融合系だとか、そういう学部いっぱいありますよね。それらの色々なパンフレットなどを見て、あんまりピンと来ないようなところもあったんですけれど、中でもこの青山学院大学の総合文化政策学部は、意義や目的というのがすごくわかりやすくあったんです。それが一番の決め手であったと思います。
永澤:その意義や目的というのはどういったものでしたか?
葛西:文化をターゲットにそれを全般的に扱うということがうちの学部の目指す部分であると思うんですけど…
永澤:第一回で杉浦先生がおっしゃっていた理念ですね。
葛西:そうですね。二十世紀から二十一世紀に移って、さすがに我々高校生から大学生ぐらいでも、ある時代の大きな転換点にあたってきている、ということはすごく身近に感じられることだと思うんですよ。で、私はその中で、二十世紀と二十一世紀との一番の違いというのは、パラダイム、あるひとつの時代の価値観をつくる軸っていうのが変わったと思うんですね。
永澤:はい。
葛西:二十世紀まではこの軸はやっぱり経済で、資本主義と共産主義の二つの対立軸っていう時代であったと思います。ただ、共産主義はソ連崩壊の八九年~九一年くらいの頃かな、そのあと党も崩壊してひとつの限界が露呈した。そして今度は二十一世紀になりました。で、資本主義がくるのかというと必ずしもそうではなくて、例えば二〇〇九年のリーマンショックであるとか、それ以降に続く二〇一一年のウォールストリートの占拠運動なんていうのはかなり記憶に新しい出来事ですよね。特に二十一世紀に入って一番最初に起こった世界貿易センタービルのテロの事件は象徴的です。このように経済という軸では解決できないことが出てきてしまった。 では新しい軸が必要となる。その新しい軸にあたるものっていうのがまさに「文化」だと思うんですよ。世界貿易センタービルのテロはキリスト教の世界とイスラム教の世界との激突であったわけですし。文化が次の時代、二十一世紀の価値観の軸になるものだと思っているんですね。そういうふうに何となくなんですけど予感がしたものですから、文化について扱う学部、ということでこの学部に興味がすごく湧いたんです。
永澤:なるほど。実際に入学してみて印象はどうでしたか?
葛西:そうですね…私は現在四年生でこの学部は二〇〇八年に設立されて、私はその年に入学したので一期生ということですが…
永澤:はい。
葛西:当時の印象は「できたて」の感じがすごくあって、まだ決まっていないような緩い部分もあったりして、ちょっとあたふたしているのかな、というものでした。例えば大学に入ると高校でいう宿題みたいなもので「レポート」というのがあるんですけど、その形式とかがおそらく当時と今とでは同じ授業でも結構違うと思うんですね。まだそういうところがあまり固まっていなかったような時代なんですけど、ただ一つだけ感じたのは、それでも「地に足がついていないわけではない」ということ。やっぱり、先生方が目指すところは最終的にはひとつの同じところなんです。これは杉浦先生や前の学部長の石崎先生が目指されていた理念であって、それに向かって何か研究を進めていくということ、あるいは、教育を進めていく、ということは当初から確立していたと思うんですよね。それから四年間過ごしてきて思ったのは、「できたて」の感じというのはだいぶ無くなってきている。ただどこかしら常に新しくあるような部分があって、それはどちらかというと柔軟である、ということだと思うんですよ。うちの学部はすごく柔軟である、様々な領域に開かれている、そういう感じがするんですよね。これがこの学部を選んで本当に良かったな、と思うことの一つです。
永澤:そのように柔軟な場であるからこそ色々な授業を受けたり、活動をしてきたりしたと思うんですが、具体的に教えてもらっていいですか?
葛西:はい。この学部に入ったことで色々なことを経験しました。具体的には、例えば授業でいうと、「音楽と心理」という授業を二年生のときに選択して、すごく面白かったな、という印象があります。タイトルの通り、音楽が人間の心にどのような影響を及ぼすのかということを扱う授業でした。あとは「文化人類学概論」。これは前の文化庁長官の青木 保先生の授業なんですけど、レヴィストロースの文化人類学が軸になっている授業でした。他には大島 正嗣先生の「情報工学」。この授業でやっていることはweb上のサービス、例えばホームページの作り方などを教えてくれました。このように総合文化政策学部では多様な授業のカリキュラムが用意されていると思います。その中で色々なことを勉強してきましたし、あと、やっぱり「ラボ・アトリエ実習」ですね。これは私たちの学部の最大の特徴でもあります。
永澤:そうですね。ラボ・アトリエ実習では自由に幅広く活動が出来ます。
葛西:ラボ・アトリエ実習は二年生と三年生の時に履修ができて、二年生のときから継続して同じラボを履修することもできるんですけど、変えることもできる。私は二年生の時には宮澤 淳一先生の「音楽ラボ」というところに所属していたんですね。そこでは実際にコンサートを企画して運営しました。私の時は「中川晃教MEETS青山学院」。中川 晃教さんという歌手の方をお招きして、実際にチケットをつくったり、会場をおさえたりなどの事務的な活動から、私の知り合いを集めてバックバンドを結成したり自分で曲のアレンジを書いてコンサートをやったりなどの企画活動までしました。
永澤:本当に一からすべて関わったんですね。
葛西:そうですね。今思うとかなり大きなプロジェクトだったと思います。そういうことに携われたっていうのはすごく面白かったなって思います。で、三年生になって「音楽ラボ」とは変わって、今度は大島正嗣先生のラボ、このラジオを配信しているラボですね。そこで「インターネット放送局」を作りました。最初はYouTubeみたいに色々なビデオをインターネット上にアップロードしていくということをやっていました。そして今回、その活動の一環として新しく、音声だけのインターネットラジオ、Podcastを配信するということで呼んでいただいたというわけです。ラボ・アトリエ実習ではこれらのことをしていましたね。
永澤:ありがとうございます。では、色々な活動を通して様々な経験をしてきたと思うんですが、最後にそれらの経験に基づいて、今の高校生・受験生の方々にアドバイスやメッセージがあればお願いします。
葛西:そうですね。皆さんの中で現時点で何を志すかということがはっきり定まっている人って、もちろんいるかもしれないけど、そんなにいないんじゃないでしょうか。皆さん十七、十八…まあ十代か二十代の前半かっていうそのぐらいの頃って、やっぱり何をやっていくのか決まってないと思います。でもそういう時って無理に決めてしまわない方がいいと思うんですよね。この学部は広い門戸があると先ほど言いました。もちろん踏み込もうとしたら色々と出来るわけですが、それよりは、いわゆる大学でいう「概論」系、優しい内容や入門編をいくつも触ることができる。だから総合文化政策学部に入ってくるのであれば、無理にやりたいことを決めずに最初は色々な入門編の授業を受けていく、ということがたぶん望ましいと思います。あるいは色々なことに興味がある人がここに入学するのがふさわしいんじゃないかなっていうふうに思うんですね。それで色々と学んだ中で最終的に自分が「これこそやりたい!」ということを見つけていけばいい。そしてそれは別に一つじゃなくて、二つ三つあっていい。まぁ孔子も「四十にして惑わず」って、四十歳までは迷うことがあるよ、と(笑)。だから四十歳というのは言い過ぎかもしれないけど、柔軟さを持って色々なことに取り組んだ方がいいと思います。その上で高校生の皆さんに言いたいことは、色々なことがある中で「いま、一番、なにかできることをやる」っていうことです。それが大切だと思うんですよ。例えば、高校生のうちに出来ることって受験だけじゃないと思うんですね。高校生なりに文化祭の出し物頑張ってみたりだとかすごく色々なことが出来ます。もちろん勉強も大事ですが、それ以外にも大事なことっていっぱいあると思うんです。その大事なことの中で「面白そうなことをやる」、「今できることをやる、やっていく」。これって意識しなくても視野を広げていくことだと思うんですよ。それをとにかくやっていくことが大切だと思います。
高橋:総合文化政策学部というのは、他の学部や大学の中でも本当に柔軟性があるからこそ、何をやるか決まってないという人でもそこから何かが見つかるかもしれない学部なんですね。お話ありがとうございました。
葛西:ありがとうございました。
高橋:ということで次回もどんなゲストが来るのか、楽しみにしていてください。
(二〇一二年 一月十六日配信分)
ラジオSCCS Vol.3より
「Q&A」&「How to study」
パーソナリティー
総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「Q&A」
このコーナーでは大学や大学生活に対する皆さんの疑問に答えていくコーナーです。皆さんが知らないような大学のちょっとした常識を紹介していきます。
今日のテーマは大学と高校の違い、特に青山学院大学での場合についてお話ししたいと思います。きっと皆さんも大学と高校はどう違うのかな?と疑問を抱いているかと思います。大学と高校の違いは色々とあるのですが、その中のいくつかを答えていきたいと思います。
一つ目は、大学は高校よりも自分の管理をしっかりとしなければいけない、ということです。皆さんも先生から言われたことがあるかもしれませんが、大学ではより一層自分の身の回りに対する責任が重くなっていきます。具体的にどういうところで自己管理が必要になってくるのか、ここで一つの例を紹介したいと思います。みなさんは大学には学生のためのサイトがあるのを知っていますか?私たちの大学では「学生ポータル」と言われています。「学生ポータル」は大学からの個人に関わる様々な情報が見られるサイトです。皆さんも高校によっては自分の高校のホームページに在校生がログインできるポータルサイトがあるかもしれませんね。小学校から高校までは、例えば行事スケジュール、授業参観のお知らせ、懇談会など、自分以外にも親に知らせたりする情報は紙の媒体を使って共有していましたよね。中学や高校の時にたまに学校のお知らせの紙を両親に出し忘れて怒られるということもあったかもしれません。一方で大学に入ると、個人に向けた大事なお知らせなどは全てこの学生ポータルに掲載されます。例えば、奨学金のこと、成績、レポートについて、もっと身近に言えば、授業の教室変更や休講情報なども全てポータルでしか確認できないので、毎日とは言わなくても週に何回か見る癖をつけないといけません。期限が過ぎてしまった後で、知らなかったです、という言い訳は通用しなくなってしまうのです。
二つ目は、大学は高校より広い場である、ということです。多くの方は高校まで自分の周りにいる友達のほとんどが皆さんと同い年で同じ地域に住んでいる人であると思います。一方で、大学では人数自体が高校より多くなるのはもちろん、様々な地域から来た人たちや違う個性をもった人たち、同じ学年でも歳が違う人たちなど、色々な人と出会う機会が増えます。自分が今までいた高校という狭い場所から大学という広い場所へ移っていくんですね。このような意味で、大学は色々な人と出会える広い場であるということがい言えます。では、せっかくならその機会を有効に活用したいですよね。
私たちの学部ではその機会を皆さんが活用しやすくなる工夫をしています。実は私たちの学部はクラスが一つしかありまん。一学年に三百名近くの学生が在籍しているのですが、一年生の必修の授業は全員一つの教室で受けます。もしクラスで別れてしまったら、高校の時と同じように三十人くらいの人としか接する機会がなくなってしまいます。クラスという単位に縛られずに自由に色々な人と接することができる訳ですね。
ということで大学は自分の管理をしっかりとする必要がある、大学は色々な人と出会える広い場である、という二つが大学と高校の違いになります。いかがでしたでしょうか?皆さんからの大学生に関する質問や疑問はもちろん大歓迎なので、ぜひ何でもいいのでお便り送って下さいね。それではQ&Aのコーナーでした。
— コーナー「Q&A」終了
タイトルコール 「How to study」
このコーナーは現役の大学生が受験生だった頃の体験をもとに受験勉強のアドバイスをするコーナーです。
今回はラジオSCCSのtwitter担当の高橋 明日香の受験生だった頃の話をしていこうと思います。高橋は高校一年の四月から三年の七月まで運動部に所属していました。それまではあまり熱心に勉強に取り組んでおらず、成績も後ろから数えた方が早い位だったので、勉強習慣をつけるためにも三年生の四月から予備校に通っていたそうです。本格的に受験勉強を始めたのは部活を引退したあと八月からでした。
そんな高橋が受験勉強する中で絶対にこだわっていたポイントがいくつかあるので、今日はそのポイントをいくつか紹介していこうと思います。
まず一つ目、間違った問題の見直しをすること。
同じミスは二度と繰り返さずに、同じ問題は二度と間違えないこと。基本的な事ですが、反復して見直すことで苦手克服にも繋がるし、知識を定着することにも繋がるとても大事なことでもあります。
そして二つ目、模試は受けすぎないこと。
模擬試験は皆さんもこれから受験するか、または何度か既に受験した方もいらっしゃるかと思います。本番さながらの緊張感のある雰囲気の中で試験を受けることで試験慣れするので、模試は皆さん受験した方がいいと思います。ではなぜ受けすぎることがよくないのか?数をこなせばこなすほど試験慣れしてよいのでは、と思う方もたくさんいらっしゃると思います。しかし一つ目のこだわりポイントと通じることがありますが、模試の問題も解いた後に必ず自己採点をして、間違えた問題の復習をしなければなりません。本番で同じ問題が出ないとも限りませんからね。そして、普段からの受験勉強の他に模試の見直しをするのは結構量があって大変なことです。なので自分のできる範囲で見直しをするためにも、むやみやたらと模試を受けるのは禁物です。緊張感をもって勉強をしたいときは十分以内に何ページ問題を解くなど、時間制限をつけるとよい緊張感が生まれますよ。
最後にもう一つ、息抜きもしっかりすること。
高橋の学校では体育祭や文化祭などの行事が秋にまとめて行われていたので、夏休みの間は息抜きとして学校に行って、行事の準備をしながら友達と話をしていたそうです。受験科目ではない学校の授業も休まず出席することで、気分転換になっていました。
この三つが高橋がこだわって勉強していたポイントです。全部基本的なことですが、それらを徹底することで、わからない問題を減らしていったのですね。人より勉強量が少なく、自信がなかった高橋はこの三つの点を意識しながら勉強することで自信をつけていったそうです。
というわけで高橋あすかからのアドバイスでした。いかがでしたでしょうか?もちろん今回紹介した勉強のポイントはあくまでも一例ですので、皆さんがやりやすい勉強の仕方で進めていくことも大事だと思います。ただ皆さんにとってやりやすい勉強方法をみつける手掛かりにはなりますのでぜひ参考にしてくれれば嬉しいです。逆に皆さんがどのように勉強しているのかというのも教えて頂ければと思います。こだわりの勉強法などがあればぜひ番組までお寄せ下さい。以上How to studyのコーナーでした。
(二〇一二年 一月二十三日配信分)
ラジオSCCS Vol.4より
「ラジエスアカデミー」
ゲスト
総合文化政策学部教員 内山 隆
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスアカデミー」
永澤:このコーナーは総文の教員をゲストにお呼びして簡単な講義をしてもらうコーナーです。コーナーを通して、総文のアカデミックな魅力を感じてみてください。それでは、ゲストに登場していただきましょう。本学部の教授である、内山 隆先生です。よろしくお願いします。
内山:はい、よろしくお願いします。
永澤:よろしくお願いします。今回は総文のカリキュラムのひとつである、メディアコースについて伺いたいと思います。
内山:はい、みなさんはメディアに対して何を期待しているでしょうか。たぶんいろんな期待があると思います。よく「マスメディア」とか「言論機関」という言い方なされるかなぁと思います。まぁ具体的に、新聞とか、ラジオ・雑誌、そしてテレビ、といったところが挙げられるかなぁと思います。そういったところにおいては、基本的にニュースというのが話題の中心になってくるのかなぁと思うんですけど、たぶんメディアの役割というのは、きっとそこに留まっていないでしょうね、というところなんです。
永澤:というと、どういう役割があるんでしょうか?
内山:はい。それこそこの学部のタイトルにあるように、「文化」というもう一面がきっとあるんじゃないかなぁというふうに思うんですよね。
永澤:「文化」というと、どういうことなんでしょう?
内山:例えば、テレビの番組でいったときに、ジャンルとして、先ほどもニュースというジャンルがありますよ、と言いました。他にも、例えばドラマというジャンル、あるいは日本だったらバラエティ番組というジャンル、あるいはお堅く、情報番組とか、ドキュメンタリーと呼ばれるジャンル、また、そのあいのこになってくるかもしれませんけど、教育番組というジャンルがありますよね。例えば、NHKの教育放送を見ていただいてもわかるように、時々昔の文化遺産を取り上げた番組があったり、あるいはNHKさんだと冠番組になってきますけど、大河ドラマのように、歴史公証をしっかりやった上でつくるドラマなんかになってくると、それなりに昔の文化をちゃんと把握しておかなければいけないとか、ということがありますよね。一刻を争うような情報のみならず、文化を取りまとめて発信する、ということもメディアのひとつの役割ではないかなぁ、といったところだと思います。
永澤:なるほど。
内山:その「文化を伝える」と言ったときに、従来は、例えば「映画」も文化を伝える役割というのは持っているんじゃないかなぁと。というのは、同じ「映像」でも、わりに国境を越えて視聴してもらえるもの、といったときに、意外にテレビよりも映画のほうがいろんな国に行ったときに見てもらえる可能性が高い映像ジャンルなわけですよね。そうした映画コンテンツということも、幅広くメディアという中では考えていきたい。あるいは、こういった総文のカリキュラムの中では考えていきたいジャンルのひとつ、というふうに考えています。
永澤:はい。では何か具体的に、この学部で映画を作れたりはするんでしょうか?
内山:はい。まぁいろんな先生がいらっしゃって、もちろん放送番組のほうに関わっていらっしゃる先生もいらっしゃいますけれども、特に私のゼミなんかでは、自主映画なんかもぜひ積極的につくってみて、という形でやってもらっています。
永澤:自主映画、ですか?
内山:うん、やってもらってます。
永澤:どんな自主映画をつくったんでしょうか?
内山:どちらかというと、予算の関係でヒューマン・ドラマ的なものが基本的には多いんですけれども。私のゼミが活動するときに、いつも注意していることは、映画は文化を伝えるクリエイティビティの高いものであると同時に、正直お金がかかる映像ジャンルなわけですよね。で、お金を集めて、限られた予算と時間と人手の中で、より魅力の高い映像をつくっていく、という作業が出てきますから、その一連の流れ、プロデュースっていう言い方をしていますけれども、そのプロデュースという側面にも力を入れながら、映像をつくってね、と。でないと、良いアイディアがあったとしても、たぶん机上の空論になってしまいますよ、と。
永澤:なるほど。
内山:現実に、人々に文化を伝える、あるいは文化の交流をしていくという形には繋がっていきませんよ、ということで、プロデュースというところに力をいれてやっています。
永澤:うーん、なるほど。そのクリエイティブというのと、利益という部分が、やっぱりどっちかに偏ったりするじゃないですか。そのバランスってすごく難しいと思うんですね。バランスの取り方ってありますか?コツというか。
内山:うーん、なかなか難しいところですねぇ。分野によっては、あまりお金ということを考えなくてつくれるものってあるんですよ。つまり、クリエイターさんがひたすら時間をかけて作ればよいコンテンツジャンル。例えば、クレイアニメとか、あるいは一人コンピュータと格闘しながらやっていくようなコンピュータアニメであるとか、であれば可能になってくるのかなぁと思うんですね。逆にたくさんの俳優さんや、たくさんの裏方スタッフさんたちなど、人間がたくさんそこに関わってくるようなコンテンツジャンルになってくると、正直、売上を出すとかなんとか、利益をだすとかっていうことを意識しながらやらないと、全くもってそれに関わる人間全員がボランティアでその作品をつくる、ということになってしまうかもしれない。で、もちろんそれでもいいんだよ、というケースもないわけでなないんですけれども、世の中には、コンテンツをつくることで生業を得ている人たちがいるわけで。で、その人たちに、じゃあボランティアでやってよ、というのはやっぱり成立しない話ですよね。で、そういう意味では、ある程度ちゃんと売上を出す、利益を出す、ということを考えながら、一方でクリエイティブという作業をやっていくということになるのかなぁと。だから、あくまで売上・利益というのは基盤であって、別にそれは飛び出るものでもないし、ほとんどの、九十九パーセントの場合、ガッツリ金儲けをしましょう、という意識で文化的なコンテンツ品をつくっている人はそんなにいないとは思うんですよね。
永澤:うーん、なるほど。
内山:でも、そこを意識しないと、作りたくても作れなくなりますよ、ということだと思います。
永澤:ありがとうございます。では、クリエイターという職業とプロデューサーという職業があると思うんですけど、総文での勉強はどちらの職業に向いているのでしょうか?
内山:はい。世の中で、美術学部・芸術学部という専門学部領域がありますよね。伝統的にああいった所においては、クリエイターという人たちの育成ということで、力が入れられてきた、と。で、もちろん総文でもその一端を垣間見ることはできるんですけれども、総文的にはプロデューサーの方向に、相対的にウェイトを置いておきたいなぁ、というふうに考えてます。というのは、この学校は青山という立地がありますので、忙しいプロの方にもちょっと来ていただきやすい立地なんですよね。で、実際に私以外の先生の授業であったり、ゼミであったりラボなんかでも、たくさんのプロの方が来て、学生と一緒にいろんな活動をなさっていたりします。そういった立地の面もあって、プロとの交流も取りやすい、ということもありますから、プロデューサーというとこに相対的にウェイトを置きながらやっていきたい。あるいは、やっていく学部である、という性格があります。もちろんクリエイティブの部分を無視しているわけではないですけどね。
永澤:はい。では、どちらかというとプロデューサーが向いているということで、その職に就くにあたって、たぶん向き不向きがあると思うんですね。
内山:はい。
永澤:総文に入る上で、どういった学生がプロデューサーに向いてると思いますか?
内山:はい。もちろんプロデューサーも当然いろんな企画を立てなければいけないというのはプロの世界であるので、常に新しいアイディアを生み出す、ということが求められるわけですよね。だから、「既成概念にとらわれない」だとか、「新しいことが好き」であるとか、そうした性格というのは当然必要かなぁ、というふうに思います。あまり杓子定規な世界ではないので、なんか正解を出しておしまい、という話じゃないですから、常に何か、いまあるものをブレイクして、突破していくというような、そんな感覚って必要なんですよね。
永澤:んー、でもその感覚って持つのなかなか難しいですよねぇ(笑)。
内山:難しいですよねぇ、ハハハ(笑)。
永澤:どうしたら持てるんですか?クリエイティブな思考というか。
内山:これはなかなか答えがない部分で…。でも、常に身の周りのことに疑問を持つ、ということは重要だと思うんですよね。大人になればなるほど、あるいは年を重ねれば重ねるほど、日常が当たり前になっていってしまう、というのは感覚としてあると思うんですよね。で、ちょっとした変化に気づかなくなっていく。でも、ちょっとした変化に気づくということはとても大切なことで、おそらくその意識を常に持っておくというのが重要かなぁ、と。だから例えば、毎日電車で通学する中でも、ちょっとした違いってきっとあると思うんですよね。で、その違いがいろんなことをある意味で連想したり、妄想できたりするっていうのが、その原点にあるんじゃないかなぁ、と思うんですよね。
永澤:なるほど。空いてる時間に想像というか妄想というか、そういう形でクリエイティブな思考を養っていく。ただ、今の社会って結構忙しいじゃないですか?空いてる時間がなくて。なかなか難しいと思うんですけど、忙しい中でもクリエイティブな思考を持つにはどうすればいいでしょうか?
内山:うん。もう単純にメモをとるとかね。あるいは、今だったらスマートフォンを持ってる方たくさんいると思いますけれども、まぁ写真を撮っておくとかね、そうしたことだと思うんですよね。昔何かの本で、人間の脳みそが発展する時期というのがあって、そのひとつが三歳児くらいだというふうに聞いたことがあります。で、それなんで?っていう話を聞いたときに、まさしく、そのなんで?っていう発想だったらしいですね。
永澤:あーなるほど。
内山:あのころの子供というのは、いろんな身の回りのことに対して、常になんで?なんで?っていう疑問を持って、両親であったり周りの大人にいろんなことを尋ねていく。で、その純粋な疑問を持つ心というのが、脳みその発展に繋がる、ということを読んだことがありまして。まさしくその意識を持ち続けるということだと思うんですけどね。
永澤:ありがとうございます。では話を少し戻して、先ほど自分一人でクリエイターをやっていく、例えばFlashだったり、そういうアニメーションだったりっていうのがあると思うんですけど、今インターネットが出てきて、一人である程度できる時代になってきてますよね。その中で、これが面白い!っていう何かありますか?
内山:うーん、インターネットとどう付き合っていくか、というのは実はプロもある意味悩んでる部分なんですよね。で、ある意味でまぁ成長している分野ですから、やがてもしかしたらテレビなんかよりも遥かに影響力も強く、また、産業規模としても大きなジャンルになっていくかもしれない、と。既存の、さっき挙げたような放送であるとか、あるいは新聞・ラジオ・雑誌というような旧来の媒体も、なにかしらネット対応というものをしていかなければいけない、という時なんですよね。で、ネットというのはひとつの特徴は、プロでなくても参加できる、といった側面が強いですよね。だから、YouTubeなんかでももちろんプロなんかじゃなく、むしろどちらかといえば素人さんの方がたくさん映像を投稿できたり、という面がある。で、そういったプロも素人も、その境目がないメディアというところで、ネットというのはひとつ特徴があるんだけれども、まぁプロに課せられたひとつの使命というか、責務というのは、その中でもちゃんと会社として維持できるようなことをしていかなければいけない。でも、一方で時々素人さんの方が面白い映像をYouTubeに投稿したりするわけで、まぁなかなか競争的には難しいところっていうのは正直ありますよね。
永澤:なるほど。では継続的に新しいものを生み出していける人が、プロになっていくんでしょうか?
内山:うーん。よくプロの人たちも、大ヒットメーカーなんかは、一回のヒットを出すのは簡単だけれども、ヒットを継続させるのは難しいし、それが出来てこそ本当に一流だ、という言い方をされる方もいるんですけど、なかなか一発のヒットを出すのも大変だと思うんですけどね。まぁでも、プロの本当にトップエンドの方々の意識っていうのはそこにあって、そこには一種の継続性というキーワードはいきてるのかなぁと思いますよね。
永澤:うーん、なるほど...ではそれがアマチュアとプロの大きな違いなんでしょうか?
内山:うーん、まぁそうですね。
永澤:それでは、アマチュアの人はどうやったらプロの人になっていくことができますか?
内山:はい。たぶん総文に関心を持っていらっしゃる受験生の方なんかも、ひとつ気になっていることは、総文出たらどんな会社に勤めたらいいのか、その職業ってなに?というところがあると思うんですけど、多少世の中の実態も含めてお話をしてみたいと思いますけれども。あのー、なかなかクリエイティブな世界って優劣をつけるってそんなに簡単じゃない。例えば、ペーパーテストがあって、ペーパーテストだとそれこそ零点から百点まで点数がついて、それこそ一点の差でもうそこには優劣という形がありますよね。でも、例えば白と黒という色があって、それには優劣はないですよね。好き嫌いがあるとしても。で、文化の世界っていうのは、そういった優劣よりはどちらかというとその好き嫌いみたいな形で、広がっている世界なので、なかなか自分は優秀だよ、という形で売り込んでいくことはできない世界でもあります。もちろんさっき挙げたようなハイエンドのプロから見れば、この人は優秀でこの人は優秀でない、というような見分けも多少はでてくるんですけれども、いわゆるどんぐりの背比べ状態なところでは、なかなか明確な優劣というのは見えてこない。でも、さっきもチョロっとお話した、例えば実写系のように、あるいは舞台のように、たくさんの人間が関わる形でつくられるようなコンテンツのジャンルになってくると、もうひとつそこで重要になってくるのは、「チームワーク」なんですよね。
永澤:あー、「チームワーク」。
内山:で、そのチームワークも違う見かたをすれば、「人の繋がり」ということが、ある意味重要になってくる。で、その人の繋がりの中で、「じゃあ今度君にはこんな仕事を紹介してあげるよ」とか、「こういうプロジェクトがあるんだけども一緒にどうかい?」みたいな形で、仕事の輪っていうのは広がっていく可能性もある。で、まぁいわゆる典型的な大手企業でないところで職を得ていく、あるいはこうしたクリエイティブな仕事を得ていくということになると、いかにその同じプロジェクトに参加できるような人脈をひろげていくかというのが、ひとつのポイントになってきますよね。
永澤:なるほど。
内山:で、そこに関して、総文的には先ほどもお話したように、学生のうちからいろんなプロフェッショナルの人と交わってもらって、それがすぐ就職であったり、あるいは職に繋がるとは思いませんけれども、でも、やがて本当にクリエイターとして、あるいはプロデューサーとして生きていく、といったときに、「あ、そういえばあの時に一緒に仕事をやったよね」とかね、あるいは、「学生時代の君と一緒にプロジェクトをやったよね」というふうな繋がりの中で、いろんなチャンスというのが模索できるようになれば良いかなぁ、というふうに思いますねぇ。
永澤:プロになるために、その繋がりをつくるための第一歩として、この総文が機能すればいい、と。
内山:ええ、はい。実際にプロの、例えば私がわかる範囲の映画の世界なんかでも、チームワークが良いクルーの作品と、ある意味であまり良くないところの作品ってやっぱり、その作品の出来栄えにも微妙に差が出てくる。で、そういう意味ではちゃんと仲間と一緒にひとつの目標の下でやっていけるか、ということはひとつあるし、いろんな仲間が集まる中で、それぞれがちゃんと役割をもって、あるいは使命をもって、自分の責務をこなしていく、ということも、実際にモノをつくるときにおいて必要なことで。実際に今、この後半の話ってかなり経営学の世界の話なんですよね。
永澤:経営学?
内山:はい。総文はまぁつくったときの理念から、いわゆる人文科学系、わかりやすく言えば例えば文学部であるとか、というような領域の先生方と、それから社会科学系、経済学部とか経営学部とかあるいは社会学部というような領域がありますけれども、そうした社会科学系の領域の先生方と、二つの領域の先生方が混じってカリキュラムをつくっている学部になっていて、まぁそうしたたとえばチームワークで何かやっていきましょう、ということが重要な分野においても対応できるようにはしているつもりです。
永澤:なるほど。では、ただ経営を勉強する経営学部とこの総合文化政策学部の違いってなんですか?
内山:そうですね。特に扱う分野が、例えばメーカーさんがつくる物品とかではなくて、まさしく「文化をつくらなくてはいけない」ところで、正直大量生産はきかないですよね。
永澤:そうですね。
内山:伝統的な経営学って、割に大量生産ということ、あるいは実際に物品をつくるということが意識の中にあったりするんで、なかなかそのサービス業であるとか、あるいは形のないものをつくっていく、ということに関しては、それほど学問的にも深く追求されているとは言い切れないんですよね。で、その大量生産ではない一品生産品的な、文化的なもの、でも一方で会社組織のようなところの中でつくっていく、という一種のハイブリット性というか、まぁ融合した部分があって。それこそが総文って考えたら良いかなぁ、と思います。
永澤:ありがとうございます。最後に、今、高校生の人たちにも簡単にメディア、例えばTwitterとかFacebookって扱えますよね。でもそれって実は扱いが難しいツールというか簡単に使っていいものじゃないと思うんですね。
内山:そうですね。
永澤:そういったメディアとの付き合い方を最後に教えてください。
内山:はい。「メディアリテラシー」という言葉があって、巷ではそれを研究されている方が非常にたくさんいる世界で、「メディアを読み解く力」というふうに訳されてはいますけれども、まずそれを持たなければいけないですよね。まぁネットの炎上話やまぁ本当にいち事欠かない状況で(笑)。まぁその炎上している姿を端から見ているのは一種のエンターテインメントかもしれませんけれども(笑)。でも炎上させないというのは、やっぱり意識として必要かな、というふうには思います。もちろん正しい情報を持つ、ということは必要ですし、それから、ちょっと抽象的になってしまいますけれども、そこには一種の倫理観、哲学あるいは正義というようなことが問われてくるように思います。総文で文化を学んでいただくということは、やっぱり文化って言うのは一朝一夕で出来るものではないので、ある程度歴史を踏まえて、その文化を理解し学んでいく、ということだと思います。で、おそらくその長い歴史の中には、人類がある意味で生きていく上において妥当な倫理観であったり哲学であったり正義、というものが織り込まれている面があるかと思います。総文の、さっき言った人文系のほうの先生方がご専門にされているところになってきますので、そうしたことを含めて、例えば楽しいエンターテインメントコンテンツをつくっていただけると、観る人も幸せになれるのでは、と思うわけですよね。逆にその倫理性が欠けたメディアコンテンツや放送番組というものがあると、それは強い批判が浴びせられるということになってくるかもしれないし、あるいはそれをつくった人の社会的な生命というものが絶たれるようなことになってくるかもしれない。自信を持って強い主張の中で、「人間はこうだ」とかいうような表現があれば議論にはなりますけれども、ただ単純に楽しいからという感覚で、ちょっと倫理的にどうかな?というようなことをメディアの中で表現しちゃうと、本当に命取りになってしまう、ということはあるかなぁと思うわけですね。だからそうした一種の「深み」みたいなのをもってコンテンツをつくってほしいですねぇ。今うちのゼミ生が自主映画つくっているけれど、一番そこが悩ましい部分で、どうしても自主映画をつくるというふうになるとテクニックに走るんですよね。撮影をするテクニック、カメラを回すテクニック、あるいは音を録る、照明をセッティングするテクニックとか。そういうテクニックに走っちゃうんだけれども、一番観客、観る人が期待していることは、その映像を通してその監督やプロデューサーが何を主張したいのか、ということだし、その主張したいことがどれだけスムーズに伝わるような表現手法がとられているか、というところなので。人間としての深みを持って映像をつくる、という姿勢でやってほしいし、まぁ総文はたぶんそれに応えられる学部じゃないかなぁ、というふうにある意味自負しているところです。
永澤:はい、ありがとうございました。というわけで、内山 隆先生のお話でした。本日はお忙しい中ありがとうございました。
内山:ありがとうございました。
(二〇一二年 一月三十日配信分)
ラジオSCCS Vol.5より
「ラジエスクラブ」
ゲスト
総合文化政策学部第二期生 白子 孝
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスクラブ」
高橋:みなさん、こんにちは。このコーナーでは毎回ゲストに総文の学生、総文生をお呼びして学生の目線から総文の魅力について語ってもらいます。
永澤:今回は総合文化政策学部三年生の白子 孝君に来てもらいました。よろしくお願いします。
白子:よろしくお願いします。
永澤:まずはこの総合文化政策学部に入った理由からお聞きしたいと思います。
白子:正直に言いますと、ここしか受からなかったんですよね。他全滅で。
永澤:はい。
白子:特に大学どこに行きたいというのもなかった状態だったので、最初はこの学部についてよく知らなかったんですよ。受かってからこの学部のシラバスだったり、カリキュラム的なものを見て、僕は芸能活動を少ししてるんですけど、その中で自分のマネジメントだったり、いろんな現場に行くことでどういうことを必要とされているのか、というのを勉強できるんじゃないかって思って。だから入ってみて、今としてはすごく自分には良かったんじゃないかなと思います。
永澤:偶然にも自分がやっていたことと被ったと。
白子:そうですね、導かれて(笑)。
永澤:実際に入ってみてどんな印象を持ちましたか?
白子:そうですね。授業で真面目に座ってノート書いて...みたいな授業よりは、いろんな実習に出て、現場に行って、みたいな実習をする授業とかグループワークとかが多くて、実際に動く授業が多いから体験で学ぶことができる。
永澤:うん。
白子:話を聞いてるよりも身に染みて分かる。このラジオもその一つだと思うけど。
永澤:そうだね。実習などで具体的にやったことはなんですか?
白子:ゼミの中で映画を作ってて、そのプロデュースをやっていたんだけど、場所を使わせてもらう交渉なんかをやりました。
永澤:それってどういう風にやるんですか?
白子:どういう風にって言うと、例えば色々と契約書の重要性とかお金が発生する場所だとそういうこともしっかりやっとかないといけない。あとは毎日頼み込んでいく。諸葛孔明じゃないけど、あれみたいに誠意を伝える事も大事なのかなと思ったね。
永澤:学生でそこまで考えて映画作るってなかなかないよね。
白子:大変だったよ。
永澤:なんかこう、泥臭いというか。
白子:そもそも、メディア業界華やかじゃないかも(笑)。
永澤:多分、今聞いてる高校生とか受験生って映画とか作るって聞くと華やかなイメージを持ちますよね。
高橋:うん、楽しいイメージですよね。
白子:多分、外部とあまり関わらずに自分たちだけで撮ってたら楽しくなるんだけど、一応授業だし、社会に出るための勉強だから、外部と関わらないとあんまり学ぶことがないのかなって感じはするね。だって、映画を撮るのはサークルとかでもできるわけだから。外部と関わることですごく勉強ができる。この学部に入って良かったと思うことの一つだね。
永澤:遊びではないわけだね。大変だったことが色々とあったみたいで、その結果、コミュニケーションとか積極性とか役に立ったスキルとかはあった?
白子:やっぱり単純なコミュニケーションって意味でもそうなんだけど、ただ仲良くするだけのコミュニケーションじゃなくて、相手が何を考えてるのか、相手にどうしたら伝わるのか、ということをすごく考えた。それが社会に出た時とかに必要な本当のコミュニケーションスキルだと思う。
永澤:なるほど。具体的にその違いってどういう事だろう?
白子:友達のノリでワイワイしてるんじゃなくて、それこそ気を使うとかね。気遣い、気配り。あと礼儀。それも重要なコミュニケーションの一つだし。相手がどういう風な礼儀の使い方とか気の使い方を求めてるのか、相手をしっかり見て考える。そして、こっちがそれに合わせて行動する。
高橋:なるほど。
白子:特に映画とか撮ってると、すごい芸術家気質みたいな人がいて、カメラマンさんとか技術系の人とかってそういう人が多い。職人気質っていうか。やっぱりそういう人って乗せてあげないと動かないから。
永澤&高橋:ああ(笑)。
高橋:気分屋だったりとか。
白子:そうじゃないといい仕事してくれないから。それは向こうの気質でしょうがなくて。もちろん、少しは気使ってほしいけど、こっちがお願いしている以上、うまく周りを乗せるのが大事なのかなと。
永澤:モチベーションとか、意識の面でのコミュニケーションなわけだね。確かにそれは学生だけの映画作りじゃちょっと身に付かないコミュニケーション能力だ。
白子:そうそう。
永澤:ゼミの活動以外でも個人的にさっき芸能活動やってるって話聞いたんだけど、具体的に教えてもらっていいですか?
白子:主に俳優の活動なんですけど、舞台に出たりちょっとした映画に出たりとか、ファッションショーとかでモデルをやったりもしてます。あとFM局のラジオに出たり、割と幅広く活動してるかな。
高橋:そういう活動が好きだったりとかですか?
白子:超目立ちたがり屋なんで(笑)。
永澤:その芸能活動を始めたきっかけは?
白子:楽しく生きたいなっていうのが始めです。
永澤:具体的に始まったのって例えばスカウトだったりとか?
白子:昔、バンドをやっていた時に芸能事務所の人と知り合うことがあって、そのつながりから始まりました。
永澤:それもじゃあ偶然なわけだ。
白子:そうそう。でも最近すごく思うんだけど、チャンスって割と転がってる気がするんですよ。つながりだとかも。そのつながりを掴むかどうかの話であって、多分みんなの周りにも始めようと思えばどこかにあるはずだから。
永澤:チャンスを掴むためには何をすればいいかな?
白子:ガツガツする。
高橋:ハングリー精神。
白子:そう、ハングリー精神。なんでもやります!っていう感じ。やっぱ生きていく上でガツガツしないと、若いうちは。
永澤:草食化なんて言われている時代には難しいかもしれないね。個人的な活動で面白いエピソードとかあったら。
白子:ちょっとVシネマに出たんですけど刑事役で。
永澤:ほう。
白子:ピストルを撃つシーンがありまして、ピストルって撃つ前にトリガーをカチャってやんなきゃいけないですけど、そのことを知らなくて、長台詞言った後にあれ?音ならないよ?ってなったことがある。その後はカットー!でめっちゃ怒られた。
高橋:それは一テイクだけで終わったんですか?
白子:長台詞ってのがなかなか厳しくて、そこでも二、三回噛んだからテイク五か六ぐらいまで行ったのかな。
永澤:そういった失敗とかってどうやって取り返してる?
白子:とりあえず素直に謝る。でもこっちが役者で行くと、逆に向こうが気使ってくれる。乗らなきゃ出来ない仕事でもあるから、そこまで責める空気は出ないんだけどね。でも、やっぱりピリピリするから次のテイクで絶対決めてやるっていう強い意志を持つしかない。深みにはまっちゃうとどんどんミスっちゃうから、切り替え切り替え。
高橋:切り替え。大事ですね。
永澤:その中でも絶対に失敗が許されない場とかあるよね。例えば舞台とかって。アドリブでどうにかしたりするの?
白子:そう、こないだの舞台でちょうどミスがあったんだよ。音声だけ流れて、その音声と会話をするっていう感じのシーンで、ちょっと音響さんがミスっちゃって。同じ音声が二回流れて会話にならなかった。どうしようって思って、お前二回同じこと喋ってんじゃん!ってアドリブで喋ってすごい頑張って切り抜けたけど、後ろ下がったら背中汗だくみたいな。こういう時はもう、音響さんのミスだからとか言えなくて、全体で作ってるもので一人のミスは全体のミスだから全体でカバーしてやらないと。
永澤:チームで作ってるものだからね。
白子:責めちゃいけない。誰かが台詞飛んだりとかもあって焦るよ。そういう時は次の流れにうまくアドリブでつなげちゃう。あいつ飛んだ、あいつ飛んだって役者同士で目を合わせて。気づかれないように。
永澤:チームだよね。内山先生が前回(ラジオSCCS Vol.4)このラジオに出演してもらった時に、チームで作ってる喜びを教えてあげたいって言ってたよ。映画制作の話に戻るけど、ゼミで映画を作っていくときって、チームワークを発揮するために白子はどういうポジションだった?
白子:ウチのゼミのメンバーってなかなか我が強い人がいたりとか、割とすぐ怒りやすい人がいたりとかって感じだったから、全体を見渡して、この人は今は怒ってるけどすべてを表に出してないな、とかいうのがあったら、うまいことフォロー入れたりとか、後で飲みに誘ったりとかはしたね。そういう人が一人はいないとね。おすすめなのが一個あって全員の誕生日を全員で祝うっていうのがある。
永澤:いいね。一体感が感じられる。
白子:ただの馴れ合いの友達に見えるかもしれないけど、やっぱ嬉しいじゃん?自分の誕生日祝われたら。
高橋:そうですね。
白子:チームのために頑張ろうってなる。そういう感じでちょっとでもモチベーションを持ってくれたらいいかなと思って、ウチのチームでは毎回全員の誕生日祝ってます。
永澤:プライベートも共に過ごすことでチームワークを築いてきたんだね。最終的にどんな作品が出来た?
白子:今までに二本撮っていて、一作目が東宝の学生映画祭っていうのがあって、そこで決勝まで残ってちょっと自慢できる功績かなって思う。二作目が去年の八月ぐらいに撮ったやつで、ヒューマン系で何かのメッセージを伝えるような感じ。ちょうど映画祭に出品してて、どうなるかな?っていう段階。
永澤:それって脚本から何から全部学生で作ってるの?
白子:撮影とかは協力してもらったり、あとは脚本の添削みたいなのを脚本家とかにやってもらってる。役者さんは基本的に事務所とかにオーディションの告知をかけてる。
永澤:外部から役者を呼ぶんだね。
高橋:学生がやると思ってました。
永澤:本当に本格的で、一貫して企画側なんだね。
白子:結構、本格的だと思う。カメラもプロで活動してる人が来る。先輩の作品ではカメラから全部、技術系を雇ったんだけど、ウチの代は音声とかを雇ったのかな?やっぱ、プロは仕事が違うよ。
永澤:プロに任せる部分と自分たちがやる部分ってどう分けてる?自分たちはどこまでやってるの?
白子:プロデュース面とか進行面がうちのゼミの一番大きな勉強するところだから、その面に関しては自分たちでやって、たまに先生の手を借りてっていうぐらいで。技術だったり、専門知識がいる所に関しては範囲外だから、逆にプロの人たちに投げて預けてた。それもプロデュース面の勉強だからね。
永澤:どこまで自分がやって、どこから任せるか、という勉強だね?
白子:そうそう。
永澤:難しいね。
白子:そこの判断も、これは自分たちで出来るのかとか、予算とかも自分たちで組んでるから予算的に行けるとか行けないとかも考えて、この値段で雇えるならこの人にしよう、とか、値段的に厳しいからなんとか自分たちでやろう、とか。
永澤:本格的だなあ。では最後に、いろんな活動をていた白子に是非、受験生や高橋校生の人たちへメッセージをもらいたいんですが、何かあればよろしくお願いします。
白子:メッセージねぇ…やりたいっていう熱い気持ちみたいなもの。熱さは持っててほしいかなと。
永澤:さっきのガツガツみたいな。
白子:うん、ガツガツみたいな。やっぱり熱くなれない人ってダメだからね。表面上クールに装ってても、心の中でこれやりたいっていう情熱だったりとか、そういうものをしっかり持っててほしいなということをすごく思う。
永澤:なかなか熱くなれるものが見つからないって人もいるよね。そういう人はどうやったら熱くなれるかな?
白子:とりあえず、今、自分の目の前に転がってる仕事を全力でやってみる。受験だったら受験でもいいし、バイトしかしてないんだったら、バイトの売り上げ一人で上げてみせるぐらいの事を思ってもいいし。何か一つに熱くなってみると熱くなる面白さが分かってくると思う。だんだん本気でやると自分のいろんな面が見えてくるじゃん?たとえ失敗したとしても、本気になる面白さがわかるのって本気でやった時だけ。だからそういう経験をまだ学生のうちにしておくのってすごく重要。恋愛でもいいんだよ。彼女欲しいとかでもいい。本気で女の子好きになったとかでもいいし。
永澤:選り好みせずに何かに熱くなってガツガツやってみようと。
白子:そうそう。
高橋:失敗を恐れないで。
永澤:失敗して何かを学ぶこともあるだろうしね。
白子:まだ二十歳前後なんだからね。
永澤:失敗しても全然許されるはずだよね。ということで最後にガツガツやれよというメッセージを頂いたところで、本日はありがとうございました。
高橋:ありがとうございました。
白子:こちらこそありがとうございました。
(二〇一二年 二月六日配信分)
ラジオSCCS Vol.6より
「How to study」&「Q&A」
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「How to study」
このコーナーは現役の大学生が受験生だったころの体験をもとに、受験勉強のアドバイスをするコーナーです。今回は私永澤の体験をもとに皆さんにアドバイスしたいと思います。参考程度に聞いてみてください。
僕が受験勉強を本格的に始めたのが、三年生の五月ごろだったと思います。僕は吹奏楽部に所属していて、厳しい部活だったので毎日忙しかったです。で、それまで特に受験勉強を意識したことはなかったので、実は最初の頃何から始めていいかまったくわかっらなかったんです。ただですね、ちょうどその時に通い始めた予備校の講師の方が、すごくいい先生で、その先生のおかげで受験勉強は軌道に乗ることが出来ました。今回はその先生に教えてもらったことの中で、特に印象に残っていることについて、皆さんにお話しできればなぁと思います。
早速なんですけど、皆さん勉強するときはおそらく英語は英語で単語を覚えたり、数学は数学で公式を解いたり、分野ごとに別々の勉強をして、各々のテストの点数をあげていくんじゃないかと思います。ただ実はですね、この分野をまたいで総合的にというか、すべての点数を効率的にあげていく方法があるんですね。それは論理力を向上させることなんです。
勉強するにあたって、色々なところにこの論理が使われています。この論理を理解することが、受験生に求められていると言っても過言ではないのかもしれません。じゃあどうしたらこの論理を読み解くことができるのかというのを、お教えすると、論理を構造的にちょっととらえるとわかりやすいと思います。論理が組み込まれているものには、必ず三つの要素が含まれています。それはクレームとデータとワラントです。
まずこのクレームというのは、まぁ、主張のことですね。英語や国語の文章だと書いている人が一番言いたいこと、これがクレームです。このクレームを伝えるために書き手は文章を書いているわけですね。つまりこのクレームを理解することが出来れば、書き手が何を言いたいのか理解できるということになります。
そしてこのクレームの根拠となるのが、データと言います、例えば、ある書き手さんがこのレストランは来年ますます流行るんだと主張、クレームしたとする。なぜなら、このレストランは某評価サイトで今年三つ星を取ったからだ。この三つ星を取ったという事実がデータになります。
ただ、このデータが本当に正しいものかどうか、読んでいる人が分からないというそういうときには、そのデータの正当性も証明する必要があります。それをワラントと呼びます。この場合、ワラントというのは、この評価サイトは歴史が古くて、評価に信憑性があって、年間で百万人も訪れるすばらしいサイトである。だからこのデータは信用できるというのが、ワラントになりますね。ワラントに関しては、説明するまでもないという場合があるので、たまに省略されることがあるので、覚えておいてください。
この三つの要素クレーム、データ、ワラントを理解することで、文章が格段に読みやすく理解しやすくなります。特にみなさんが受験勉強していくなかで、この論理がほぼ必ず組み込まれていると思います。この論理と三つの要素を意識して、これからの勉強に取り組んでみてください。というわけで、How to studyのコーナーでした。
— コーナー「How to study」終了
タイトルコール 「Q&A」
Q&Aのコーナーでは、番組宛に届いた受験生のみなさんから総文に関する質問に答えていきます。
今回はこちら、「青山学院大学では英語に力を入れていると聞いたのですが、総文の英語の授業ではどんなことをやっていますか?」ということで、なるほど。この大学を受験することを考えている人はもう知っているかもしれないんですけど、青山学院大学は英語に力を入れているイメージが少なからずあると思います。受験勉強でも特に、英語に力を入れて勉強している方はたくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか。今回は総文の英語学習についてお話しますね。
総文では一年生と二年生で必修の英語の授業があります。他の学部と比べて特徴的なのが、一年次の英語の授業は実は週に六回もあるんですね。この英語の授業は二種類あります。一つが「English proficiency」、もう一つが「English communication」です。最初のproficiencyの方は授業一コマまるまる使って九十分間、主に英語のリーディングやライティングに力を入れて週に二回授業をしています。次にcommunicationの方なんですが、こちらは九十分の授業を半分に区切って、四十五分一コマでスピーキングやリーディングに特化した授業を週に四回やっています。どちらもネイティブスピーカーの講師の方が授業を担当してくださるので、一週間に単純計算で六時間も外国人と英語で接することになります。さらにはこのcommunicationの授業は少人数制でクラスが分かれています。 proficiency の授業の方は一つのクラスの人数がだいたい三十人程度。それが communication の授業になると、分割されて十五人分のクラスになります。人数が少ないことで、ネイティブの方とより多く英語で接する機会が増えるわけですね。
この英語の授業のクラス分けなんですけど、入学時に受験する英語の小テストが実はありまして、その成績で振り分けられます。なので、クラスメイトとは英語力に大きな差がつくわけではないので、同じスタートで一緒に英語の力が伸ばせるし、何より一年間ほぼ毎日顔を合わせて週も六回会うことができるので、すごくメンバー同士交流が深まって、遊びにいったりとか、各クラスすごい仲良くなるので、すごく楽しいです。このようにして、一年間生の英語を聞きながら授業を受けていきます。
そして二年生になると、英語の授業ではネイティブの講師と総文の教授の授業を交互に受講することになります。二年生でもですね、英語のクラスは八つに分かれていて、一年生の十二月頃に全員が受けるTOEICの成績によって振り分けられています。
続いて学ぶ内容なんですが、「英語による日本理解」というタイトルで、日本を文化、経済、歴史、芸術の四つの側面に分けて、それらを英語の視点で学んでいこうというものです。講師や教授によって学ぶ内容は変わってくるんですけど、一年生の時よりも英語によるプレゼンテーションの機会が多くなります。このやり方は、クラスの中でさらにグループをいくつかつくり、少人数で発表していきます。クラスによってはプレゼンテーションのあとに、英語のWikipediaのページをつくるクラスもあるみたいですね。一年生で培った英語の力をこのような形で試されるのが、二年生の主な英語の授業となります。特に英語のプレゼンテーションなどは、これから海外で活躍する人間を育てていこうという総文の姿勢が色濃く反映されているのではないでしょうか。以上のように一、二年生の間、必修の英語の授業がたくさんあるので、青学、特に総文は英語に力を入れていると言ってもいいのではないでしょうか。
さらに、一年生では、必修で第二外国語の授業もあります。これは、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語、あとロシア語とスペイン語、この六つの中から一つ選択して勉強していきます。そのなかでも、フランス語の授業を選択すると、春休みの間にフランスへ海外研修に行くプログラムが実は総文では用意されています。海外研修はなかなか貴重な経験なので、学校のプログラムを使って、ぜひフランスの文化触れてみてはどうでしょうか?
以上が総文の英語及び外国語のプログラムです。どうでしょうか?高校よりもずっと英語の、特に生の英語ですね、触れる機会が多くて、きっと学ぶこといっぱいあるんじゃないかと思います。高校では主に読み書きの勉強ばかりだったと思うんですけど、総文の授業では二年間、ネイティブの講師と接することで、いつのまにかスピーキングやリスニングの力が伸びて、外国人と話せるようになるのではないでしょうか。というわけで今回は、「 青山学院大学では英語に力を入れていると聞いたのですが、総文の英語の授業ではどんなことをやっていますか?」という質問に答えていきました。ということで、Q&Aのコーナーでした。
(二〇一二年 二月十三日配信分)
ラジオSCCS Vol.7より
「ラジエスアカデミー」
ゲスト
総合文化政策学部教員 竹内 孝宏
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスアカデミー」
永澤:このコーナーではゲストに総文の教員をお呼びして簡単な講義をしてもらいます。コーナーを通して総文のアカデミックな雰囲気を味わってみてください。というわけで、今回はゲストに総文でアートマネジメントコースを担当しています、竹内 孝宏先生をお呼びしました。よろしくお願いします。
竹内:よろしくお願いします。
永澤:早速なんですが、まずは先生の専門分野である「表象文化論」というのは一体どのような学問なのか教えてください。
竹内:はい。まぁこれ「文化論」なんですよ。「文化研究」なんですよ。文化論って書いてある通りね。だけど、文化研究とか文化分析とかっていうのはさ、いろんな道筋があるんですよ。入り口がいろいろあるでしょう。
永澤:はい、そうですね。
竹内:例えば「人と人との関係」っていうところから入っていくやり方もあるだろうし、所謂「未開文化」の研究を通して、今のわれわれの文化を相対化してみる、というようなやり方もあるだろうし。で、そういったいろんなやり方がある、道筋がある中で、表象文化論っていうのは「表象」っていうものを入り口にして文化について研究するという学問分野です。大きく言うと。
永澤:「表象」というのは一体どういう…?
竹内:はい。うんとね、これもまたね、字面からじゃよくわからないのですが(笑)よく私が大学生の時に自分の先生から教わったことを話すと、これは英語だとrepresentationっていうんですよ。フランス語でreprésentationというふうに言うんだけど。えーと、プレゼンテーションというのはわかりますよね。そこにあるもの、とか、そこにあるようにする、ということ。で、それにreというのがついてるわけ。reってついてるのがミソで、これは英語の辞書を引くと、フランス語でもいいんだけど、一目瞭然なんですが、例えば「再現」って意味がありますね。
永澤:「再現」。
竹内:それから、政治的な「代表・代行」っていう、誰かに代わってかわりに何かするみたいなね。そういうこともあるし、フランス語までとんでいいのであれば、例えば芝居の「上演」だとか同じ単語で言うしね。このように、代わりのもので表現するとかね、代わって何かするとかそういうことがほとんど文化の定義そのものだ、みたいな。そういう考え方をするわけよ。
永澤:はい。
竹内:例えば今たまたま再現とか代表・代行とか言ったけど、もっと広く考えれば、メディアなんていうのもそうで。
永澤:メディア。
竹内:これも、あっちからこっちに直に行かないで、媒介するとかね。
永澤:あ~なるほど。
竹内:で、いろんなことがその中にはあるんだけど、今言ったような「再現」、例えば一番それがよくわかるのが、いわゆる「芸術」であったりする。そういうこともあり、この表象文化論っていう学問という中で、これが文化研究なんだけども、芸術というものがひとつの大きなトピックになっているのは事実ですね。でも、学問っていうのはさ、文学部って大学にあるけどさ、これって文学っていう対象を研究するっていう一応がっちり枠ができてるじゃん。
永澤:そうですね、はい。
竹内:法学部とかもそうでしょ?経済学部とかそうじゃない。対象で、これをやるってことでがっちり誰もが押さえておくべきコアのようなものが形成されていて、だからみんなやりやすいんだよね。それに基づいて、この段階にはこれをやっておいて次にこれやってこれやってっていうのが出来るから。ところがもうひとつ学問には「方法」っていうことを重視することがあって、それは今度比較芸術学科っていうのができるけれど、たとえば比較っていう考え方がそうでね。比較っていうのは、「何を」っていうより「いかに」っていうことに関わって、つまり比べてみるっていう。そういう方法っていうのを重視する学問がある。あるんだけど、表象文化論っていうのはそのどっちでもなくて、まず対象は何でもいいと。で、方法はって言うと比較しても別にいいわけだし、なにやってもいいんだけど、これが表象文化論のやり方だ、っていうような確固たるものを未だにたぶんなくて。だから結局のところ表象っていうコンセプトをどこまでキープ出来るかっていう。そこなのよね。
永澤:はい。では模索してる、と言えばそういう段階……?
竹内:えっと、まぁさすがにもうできて二十年以上経ったから、まだ模索してちゃまずいんだけど(笑)まずいんだけども、私の総括で言うとこの学問分野にはね、総論というものがないんだよね。各論ばっかりあって総論っていうものがなかなかこう出てきづらい分野で。まぁだからこれ「論」ってついてるんだよね。○○学じゃなくて○○論。なんか知らないけど、こういう感じかな?っていうものはゆるく共有していてあとはそれぞれ各論を突き詰めていってる、そういう状態だよね。
永澤:概して「こういうものだ。」とまとめるというよりは、共通感覚みたいなものを認識しているんですかね?
竹内:そうね。ノリと言ったらちょっと言い過ぎだけども、対象でもなくて方法でもなくてじゃあなんなんだって言われたら、ちょっとノリって言ってみたくなるんだけどさ、なんかモノを見るときの見方の問題ね。ようするに視線の問題。
永澤:「視線」…?
竹内:モノの見方ってこと。こういうふうに見るっていう。その見方っていうのを言葉で言うと「表象」になってるってね。
永澤:この学問が成立して二十年ということだったんですが、おそらく先生がこの学問の入り口に立ちはじめたときってやっぱり出来たばかりのときですよね?
竹内:そうです。
永澤:なぜこの学問を志そうと思ったんですか?
竹内:えっとこれはね、全く偶然で未だに覚えているんだけど、私のいた大学は東京大学というところなんですけど、ここは二年生から三年生にあがるときに専門を決めるわけ。レイト・スペシャリゼーションって言うんですがね。うちの学校は違うし、うちの学部はもちろん違う。で、その時に進学振り分けって言って、要するに点数で振り分けられるからみんな一生懸命勉強するわけよ。まぁそれが狙いなんだけどね、レイト・スペシャリゼーションのひとつの。だから二年生の一学期終わった頃になるとみんなそれぞれ三年生はどこに行こうか考え始めるわけさ。私はと言えば何となく、別に外国にも縁がないし国文かなぁとか思ってた。ところがある時私の某友人が、ねぇどうすんの?って。ふたりともたまたま試験の成績は良かったみたいで、その進学振り分けで…知ってると思うけど東大っていうのはキャンパスが二つあるでしょ?駒場と本郷と。で、三年生も四年生も駒場にいたい人は教養学部教養学科ってとこに進学するんだよね。ところがこれはね、結構難関なわけ。点数高くないとダメで。当時私がいた文科Ⅲ類ってところでは、そこから教養学科に行こうと思ったならば平均点が八十五点ないとダメってこと。みんなAAみたいな(笑)。そうでないと行けないところだったんだけど、なんかそれくらいの点数があったみたいでそんなときにその某友人と話してて、どうすんの?って。で、そいつが「表象」って言ったんだよね。その時までは全然オプションになかったからあぁ表象なるほどねって思って、まぁ調べてみるわけさ。どんな人がいるのかなって、どんな先生がいてどんな研究やってるのかなって。で、例えば渡辺 守章先生っていう人がいて、なんかフランス文学やりながら演出もやっている。蓮實 重彥先生っていう人がいて、フランス文学やりながら映画の評論もやっている。阿部良雄先生っていう人がいて、ボードレールの研究やりながら日本の美術史までやっちゃうとかね。なんかいいなこれって。うーん、どういうことかって言うと、みんな現場を持ってるってことだったんだよ。
永澤:…現場?
竹内:つまり大学の中で大学のアカデミズムをこう盛り上げていくということだけじゃなくて、大学の外に出て、例えば守章先生だったら演出家としてすでに何本も演出やってたし、蓮實先生は映画批評書いて当時の日本の最先端というか第一人者だったしね。もともと私は大学の中で、非常に閉じた自給自足経済で再生産を繰り返していくやり方、教授の弟子みたいなふうにして学生集めて、教授よりもちょっとだけ劣るくらい頭の良い人たちをつくっていくみたいなやり方がどうも嫌だなぁと思ってたわけよ。そこになんだそうかと。大学の外と大学の中を行ったり来たりしながら仕事をしている人たちがあぁいたの知らなかったとね。だったらここかなって。で、まぁその時は映画も演劇も文学もオペラも現代美術もそれから哲学も全部その表象文化論ってとこで教えてたから、なんかこれもこういろんなものがあって楽しいだろうと思ったっていう。それがきっかけですね。人生何が起きるかわからないね(笑)。
永澤:ハハハ(笑)。ありがとうございます。では、現場がある、ということなんですが、竹内先生もやはりこの学部「内」だけでなく現場に行って様々なことをなさっていると思います。それは恐らくラボ・アトリエ実習で発揮されていると思うんですが、具体的にどのようなことを?
竹内:ラボはね、楠美津香さんという人の芝居を学生スタッフで制作するっていう、そういう内容の授業をずっとやってました。一年目はなんかこっちも慣れてなかったし、あてにしてた劇場が使えなくなっちゃったりとか、いろいろあってほとんど何も出来なかったんだけど。二年目と今年は、だいたい思い通りの…クオリティはともあれ(笑)、一応思い通りの中身にはなってますね。
永澤:えっと、その楠さんはどういった方ですか?
竹内:楠さんっていうのはね、どこから説明すればいいのかな…もとはというとコメディアンだったのね。コントやってたのよ。九十年代は結構有名で、国立演芸場の○○大賞だ銀賞だとかとっちゃったりだとか、テレビにも随分出てたし、聞いたら「平成教育委員会」とかにもなんかレギュラーで出てたらしい。だから知ってる人は知ってるんだけど、ある時、二〇〇〇年くらいかな?ちょうど二〇〇〇年だと思うんだけど、何を考えたか、シェイクスピアの全作品三十七作あるんですが、これを一人芝居で全部やるって計画だったんですよ。
永澤:一人で…!?
竹内:そう、一人でやるって計画立てて、で、やっちゃったんだよね。二〇一〇年の十二月に「テンペスト」やって、それでやっちゃったんだよね。で、私が美津香さんの芝居を初めて観たのは、いつだったかちょっと忘れちゃったんだけど、場所は神奈川県立音楽堂の敷地にある青少年センターっていうところで、「ロミオとジュリエット」だったわけね。私たいてい芝居とか観に行くと、まず負けないぞ!と思って観に行くわけよ。で、ところがこれはダメだ完敗だって思った。全然勝ち目ないやって思って、いやぁ世の中すげぇ人いるなって思って。以来お客として、まだこの学部に着任する以前の話だから、お客としてもう欠かさず美津香さんがなんかやるときは全部観に行くようにした。で、こちらにお世話になって、大学の外の現場と切り結びながら何か新しい授業のモデルを創っていくみたいな話を聞いたときに、じゃあこれは美津香さんにご協力していただくしかないし、そうするべきなんだろうな私は、って思って。で、お願いしたなら快く引き受けてくださった。それでやってるんですね。
永澤:その中で具体的に学生はどういった仕事をしているのでしょうか?
竹内:年によっていろいろなんだけど、例えば現場行って、あの本当の工事現場って意味の現場ね。で、現場行って汗流したりね、汗流すってつまり舞台作るわけ。泥まみれになりながら(笑)。一人芝居だけど、結構いろんなものあるんだよ。まぁそれをやったりだとか、あといわゆる制作だよね、自分たちで企画たてて、美津香さんといろいろやって劇場決めてスケジュール決めてなんだかんだってやって。本当に制作をするだとか、あと制作するだけじゃお客は来ないんで、宣伝しなきゃいけないから宣伝の部分もやるとか。挙げ句の果てには、今年が一番思う存分やっているのですが、実際の音響とか照明とかのオペレーションとかね。一人芝居なんだけど、うちの学部で芝居っていったらおそらく高校生のみなさんも持ってるイメージとしてはたぶん、いわゆる商業演劇のほうだと思うんですよ。
永澤:そうですね。
竹内:そうだよね。それもそれでもちろん存在意義があるしいいんですが、美津香さん一人芝居だから、その制作チームとか、広報チームとかも小規模で動けるし、なにより全体が見渡せるっていうことが教育的なメリットだと私は考えています。誰がどこでなにやってるか全部わかる。また、逆に、誰がどこでなにやってるかわからなければ動きようがない。これが大きなプロダクションになるとさ、なんか一生懸命チラシとか折っててさ、これって何のためにやってるんだ?ってなるんだけど(笑)、美津香さんの現場はそこはもう全部クリアだから。いつこれがどこで必要でっていうのが全部わかるし。そこにはどういう人たちが関わってきていてっていうのも全部わかる。そういう見通しの良さのようなものが、たぶん教育っていう観点からすると、とても有効なんじゃないかと思って。もちろんプロの目で見るとね、学生の仕事には至らぬことだらけでずいぶん美津香さんも妥協してくださってるところがあると思うんだけど、まぁそれでも幸いなことにお付き合いいただいて、毎年面白いものができてますよ。
永澤:ではその実習の中で様々な学生と一緒に仕事をしたと思いますが、どのような学生が運営に向いていましたか?
竹内:これは総文をっていうとまた別の話なんだけど、こういう芝居の現場で動くってことに関しては、誰に聞いても答えは一つ。「気が利いてるやつ」。「気が利くやつ」。もうこれに尽きるのね。つまりね、どういうことかって言うと、言われたことをやるっていう、まぁそれだけでもたいした能力だと思うんだけど、ダメなのよ。それだと。芝居って生ものだから、一応段取り決めてやったってアクシデントやハプニングはいっぱい起きるし、それは事故って意味じゃなくてね、不測の事態ってことね。いろいろ制作面でさ、メール送っても三日間返ってこないとかさ(笑)いろんなことがあるわけよ。で、そういう時に、言われたことしかできないようだと、回っていかないのよね、現場って。
永澤:そうですね。
竹内:だからといって、勝手なスタンドプレーっていうのももっと悪くて、そこの見極めがつくかつかないかは難しいとこなんだけど、しかしさっきの話に戻れば、これは一人芝居の小さな現場だから、そこんとこもね、割とわかりやすいふうになってるんじゃないかなぁと個人的には思う。「気の利くやつ」です。
永澤:わかりました。ありがとうございます。では最後に、このラジオを聴いてくださっている高校生や受験生の方に簡単なメッセージかエールのようなものがあればお願いします。
竹内:聴いてらっしゃるということはたぶんこの学部にみなさん興味をお持ちで、ある程度のことは調べてらっしゃると思うんですよ。で、そうするとたぶんみんな、「え、なんかメニュー多すぎる」って思うんじゃないかと予想するし、また、卒業した四年生もだいたい似たようなことをぶつぶつ言いながら四年間頑張ってきたわけね(笑)でもね、結局それってね、面白いことなんですよ。どういうことかって言うと、高校と大学の一番の違いっていうのは、「自分で学びをデザインしていく」ってことよね。高校だとさ、あれやりなさいこれやりなさいってあっちからあてがってもらうんだけど、学校から。でも、大学行くとそうはいかない。全部自分でデザインしていかなきゃいけない。デザインていうのがわかりづらいたとえのようならば…私最近なんかね、なんの説明するにも料理のたとえをするようになったんだけど、まぁ料理みたいなもんなんだよね。材料なわけ、いろんな授業が。で、これとこれを持ってきて、こういう調味料を使ってこうしたらどういう料理ができるだろうかってさ。そこを楽しめるかどうかなんですよね。人によっちゃそんなの面倒くさい、と。そもそも料理をつくるのが面倒くさい。食べるのでも、アラカルトでこれとこれとこれとこれとって面白く考えるんじゃなくて、なんか生姜焼き定食って出してもらったほうが気楽だっていう、そういう人もいるだろう。だから、うちの学部に来て、喜べるっていうか楽しめる人っていうのはたぶん、料理好きとかね。料理を食べるにしても、定食じゃなくてアラカルト派だとかね。そういう冒険大好き人間みないな人がむいてるんじゃないかと思うんですよ。私自身今までそうやってきたし。
永澤:わかりました。ありがとうございます。改めまして本日はわざわざありがとうございました。
竹内:はい、どうもありがとうございました。
永澤:今回はアートマネジメントコース担当の竹内孝宏先生をお呼びしてお送りしました。次回のラジエスアカデミーもお楽しみに。
(二〇一二年 二月二十日配信分)
ラジオSCCS Vol.8より
「How to study」&「Q&A」
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
総合文化政策学部第二期生 樋口 小也伽
総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「How to study」
高橋:このコーナーは現役の大学生が受験生だったころの体験をもとに受験勉強のアドバイスをします。
さて、いよいよ入試も終盤に差し掛かってきましたね。みなさんはこの受験生活中、どのような勉強をしていましたか?今回はWeb担当の樋口 小也伽の体験談をもとにお話ししたいと思います。ではお願いします。
樋口:みなさん、こんにちは。Web担当をしております、総合文化政策学部三年の樋口 小也伽です。今回は私が受験生だったころのお話をしたいと思います。皆さんの参考になればいいなと思います。よろしくお願いします。
私は高校一年生の冬期講習から予備校に通ってました。いま振り返ってみてもちょっと通い始めるの早かったかなと思うのですが、日本史に関しては授業ではなかなか聞けない歴史エピソードを聞けたり楽しく学んでいた気がします。
本格的に受験勉強を始めたのは高校二年生の秋くらいですね。一学年上の三年生が受験を控えて、ピリピリしてきたころです。私は日本史選択だったので、受験では英語・国語・日本史が受験科目でした。それぞれの勉強法を紹介したいと思います。
まず英語に関してお話したいと思います。基本的には学校の授業で習ったことをしっかり理解していれば難しいことはないと思います。ただ英単語や熟語に関しては簡単なものからちょっと難しい単語までたくさんありますよね。私の予備校では毎週テストがあったので、電車の移動時間に必死に覚えていました。なかには、お風呂が一番集中できる!といって指がしわしわになるまでお風呂で単語を覚えていた人もいます。自分が一番集中できる空間や時間に頭に叩き込むのが、どうやらいいみたいですね。みなさんも自分が一番集中できる場所を探してみてください。
次は国語ですね、これに関しては、何を勉強したらいいのかわからなかったですね。みなさんの中にも国語の勉強って何すればいいの?という人も少なくないと思います。コツは、一文一文を見ていくというよりは全体や設問を考えながら読んでいくことだと思います。コツさえつかめば国語は簡単なので、あきらめずに頑張ってください。
古文に関しては、とにかく古文単語ですね。受験期間中は英語に力を入れがちですが、古文単語もしっかり忘れないように適度に覚えなおしたほうがいいと思います。ちなみに私は古文単語をおろそかにして、二月後半の入試では悔しい思いをした経験があります。
漢文は早いうちに覚えてしまったほうが楽な気がします。大学によっては漢文が出ないところもあるので、受験校の過去問題をみてみるのもいいと思います。
そして日本史。日本史は本当に大好きな科目だったので、楽しんで覚えていました。入試直前は、あやふやになってしまっている時代や人物名をしっかり覚えなおして、不安要素をなくす作業を繰り返していました。あと、美術・文化は最後のほうに叩き込みましたね。仏像の名前とかあれはもうみんな同じ顔に見えて、苦労したのを覚えています。
さて、長くなりましたが、私の受験勉強法はこんな感じです。実はかなり緊張していて足がガクガクしながら話していたのですが、大丈夫でしょうか。少しでも参考になればと思います。
というわけでWeb担当の樋口でした。みなさん受験勉強頑張って下さい。応援しています。
高橋:はい、ありがとうございました。もっと詳しく聞きたい人や、相談などもメールやツイッターのDMで受け付けます。なので、遠慮なく送ってください。では以上、How to studyのコーナーでした。
— コーナー「How to study」終了
タイトルコール 「Q&A」
永澤:このコーナーでは、大学や大学生活に対する皆さんの疑問に答えていくコーナーです。皆さんが知らないような大学のちょっとした常識を紹介していきます。今回の質問は「キリスト教概論ってどんな授業なんですか?」です。早速答えていきたいと思います。
私たちの大学では「青山学院教育方針」に基づいて、キリスト教関連の学科目が用意されています。そのなかでも「キリスト教概論I・II」は、全学生の必修科目として定められています。
私たちの学部では、一学年の時にキリスト教概論Ⅰを、三学年の時にキリスト教概論Ⅱを履修します。
キリスト教概論Ⅰでは聖書をもとに、キリスト教の基本的な教えや歴史、信仰などを学び、現代における生き方や課題など幅広く考察していきます。特徴的なものとして、定期的にキャンパス内の礼拝に出席してレポートを出すという課題があります。今までキリスト教系の学校に通っていなかった方にとっては新鮮なものであると思います。
次にキリスト教概論Ⅱでは、基礎からより発展し、社会とキリスト教の関わり方を学び、現代におけるキリスト教のありかたを考察していきます。この授業では学内の礼拝堂だけでなく、外部の教会に礼拝にも行きます。
ところで、皆さんがキリスト教を学ぶと聞いて、おそらく一番気になることとして、キリスト教徒でなくても大丈夫なのだろうかということだと思います。
これに関しては全く問題ありません。事実、私もキリスト教を信仰しているわけではありません。また、もちろん宗教の勧誘もなければ、強要をされることもありません。
日本ではあまり宗教が根付いていないので、皆さんあまり馴染みがないと思います。また、オウム真理教などの影響であまり宗教に対して良いイメージを持っていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。けれど、青山学院でのキリスト教教育はそのイメージとは真逆で、教員はみな誠実な方ばかりです。教育の内容も、キリスト教をただ良くみせようと言うようなものではなく、課題や問題点も明確にしています。むしろ、それらの解決のためにどうすればいいのか考えていくという傾向が強いと私個人は思っています。
キリスト教という名前に引いてしまわずに、一つの学問として捉えることが、青山学院でキリスト教を学ぶ上で意識してみると良いと思います。
というわけで、いかがでしたでしょうか。今回は「キリスト教概論ってどんな授業なんですか?」という質問にお答えしました。というわけでQ&Aのコーナーでした。
(二〇一二年 二月二十七日配信分)
ラジオSCCS Vol.9より
「ラジエスクラブ」
ゲスト
総合文化政策学部三期生 皆川 玲奈
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスクラブ」
永澤:ラジエスクラブはゲストに総文の学生、総文生をお呼びして、学生の目線から総文の魅力について語ってもらうコーナーです。
高橋:はい、で今回は総合文化政策学部二年の皆川 玲奈さんにゲストに来てもらいました。よろしくお願いします。
皆川:よろしくお願いします。
永澤:よろしくお願いします。
高橋:皆川さんは、前々回(ラジオSCCS Vol.7)に出演して頂いた、竹内先生のラボに所属している学生さんです。今回は、ラボでの取り組みを中心にお聞きしたいと思います。その前にまず、総文に入った理由をお聞きしてもいいですか?
皆川:はい、総文に入った理由ですね。私は受験はしていなくて内部進学なんですけど、新しい学部が出来たということで、結構みんな興味があったんですね。それで私のクラスの女の子と色々話してて、総文って何するところなんだろうね、みたいになって。まあ半分ノリですね。
高橋:ノリですか(笑)。
皆川:はい。ただ確かにノリで決めちゃったところもありますけど、私高校生の時に文化祭で実行委員をやっていて、クラスの出し物を色々決めたりしてたんですね。それで夏休みとか文化祭の準備をしている中で、結構物を作るのが楽しいなってその時思い始めて、それで、大学のパンフレットとかの内容を見たときに、あ、総文ってなんか私のやりたいことがもしかしたら見つかるかもしれないと思って。総文に入ったら何かしら物を作りたいなと、漠然となんですが。
高橋:興味が先行したんですね。
皆川:そうですね。
高橋:期待というか、ワクワクした感じが。
皆川:新しい学部ってそんな感じがありますよね。
高橋:ただやっぱり、具体的にこの学部がちょっと何をしてるのかなっていうのは分からないですよね。
皆川:そうですね。正直、わからなかったですね。総合文化政策学部なんて。
永澤:まあ名前からしてね、何やってんだか分からない。
皆川:長いですしね。文化なのか政策なのか、高校生の頃は全然そんなのわからなかったです。
高橋:でも高校の時に文化祭で実行委員を務めて、物作りの楽しさとかに気付いて、その延長線にあったと。
皆川:延長線ですね。大学でも、何かやってみたいなって。
高橋:うんうん。では入った時の印象とかどうでした?
皆川:入った時の印象は、一年生の時は、とりあえず全ての分野をオールマイティーに勉強する、必修がすごく多くて。
高橋:そうですね。
皆川:そうだったんですけど、二年生になると選択も多くなるじゃないですか。それで好きなものも、もちろん取りたいなって思うようにもなりましたし、あと、あんまり自分がよく知らなかった科目、例えば都市政策とか。何をやっているのかがわからなかったんですけど、でも取ってみたら、ああ意外と面白いかもなんて思っちゃって。都市政策系を今三個ぐらい取ってますね。それで色々な授業の内容が自分の中で関連してくると、色々と見えてくるものもあって、そうすると、ああもうちょっとこれに関して本読んでみたいなとか、勉強してみたいな、なんて。
永澤:おお、勉強欲が。
高橋:いいことですね。
皆川:そうですね。
永澤:二年生になると、ラボ・アトリエ実習も始まると思うんですけど、ラボはどのようなことを?
皆川:ラボは総文の目玉商品みたいな、そんな感じじゃないですか。ラボは、一年生の時に竹内先生のラボに前から参加してみたいなと思ってて。それで募集要項の冊子を読んだときに、公演の裏方のスタッフを主にやっていただくよ、みたいなことが書いてあったんです。これ面白そうと思って。もう私はここに決めたつもりで楠美津香さん(舞台役者。独自のスタイルによる一人芝居、「LSD」を定期公演している。詳しくはラジオSCCS Vol.7より「ラジエスアカデミー」を参照。)の舞台を一回観に行ったんです。で、うわ!この人すごいな!ってビックリしましたね。どんな言葉で表現したらいいか分からないぐらいなんですが、文字通りに一人で舞台を完結させてしまうんですね。ちゃんと芝居になっていて、なんかこの人に付いていきたいな、この人についてもっと知りたいなと思って、このラボに決めましたね。
永澤:なるほど。具体的にはどんな活動をしましたか?
皆川:夏にワークショップを開いて、それでこの間の二月の後半に三日間合わせて、公演のスタッフを、宣伝と制作と、あと照明と音響っていうのを、全部裏方。
永澤:全部?
皆川:はい。すべて学生でやって、三日間終わりましたね。まあ直前が一番忙しかったですね。特に私なんかは照明を担当していたので、舞台稽古の時なんか、毎日美津香さんと一緒に台本の打ち合わせをしたりだとかで忙しかったです。
永澤:照明っていうのは具体的にどんなことをするんですか?
皆川:そうですね、私も照明は全くの初心者だったんですけど。
永澤:ああそうだったんですね。
皆川:例えば美津香さんの一時間半の台本があったら、どこの部分でどの照明を作るか、美津香さんからまず要望があります。それについて自分でどのくらいの光がいるかなとか、光をどっから当てたら一番そこのシーンが映えるかな、とかそういうのを先生たちに相談しながら自分なりに考えて…て感じでシーンごとに作っていく、っていうのを三作品分しましたね。
高橋:大変ですね、それは。
皆川:結構大変でしたね。本当に何も分からなかったので。ただそれでも出来たのは美津香さんをどう見せたいかというのをしっかり考えたからで、これは美津香さんに惚れ込んでないと、出来ることではないと思うんですよね。
高橋:本当にさっき言っていた、付いていきたいみたいな。
皆川:そういう強い気持ちがないと、一緒に作っていけないですね。何よりも美津香さんを好きで、美津香さんの芝居を好きでいないと、どう照明を当てたらいいかとか、お客さんにどう見せたらいいかってのが考えられないと思います。
永澤:では具体的に楠さんにどんなイメージを持たれてるんですか?
皆川:そうですね、最初はプライベートでは全然話せなかったんですよ。一番最初の公演の時に先生が美津香さんに何でも好きなこと聞いていいよって言うんですよ。ただ美津香さんちょっと話しかけづらくて。でも折角、芝居を観た後だったので、美津香さんは一作品でいろんなキャラクターを演じ分けるんですけど、その演じ分けをするにはどういうことを気を付けてるんですか?とか、どんな感情なんですか?っていうのがすごい知りたくて、それはもう演じる側としてのことなんてすけど、ちょっと聞いてみよっかなと思ったんです。けど、いや別にそんなねえ…特に工夫はしてないよって言われちゃって、ああそうなんですかみたいな(笑)。最初はあまり話が続かなかったてすけど、舞台稽古の時に一対一で色々喋ってて、なんかそこでようやく仲良くなれました。
永澤:すごく特殊な芸風の方だよね。
皆川:そうですね。
永澤:LSDだっけ?
皆川:はい。「Lonely Shakespeare Drama」。一人でシェイクスピアのドラマをするから、LSD。最近はシェイクスピアだけでなくて、近松門左衛門とか、泉鏡花とかにも挑戦してるみたいなんですけど。
永澤:あの超訳っていうのかな、すごいよね。最初に昔の言葉で唄って、その後に今風に訳し直すんだけど、そのなんだろうね、稚拙な表現で申し訳ないのだけど、とにかくすごいよね。
皆川:時代を越えますよね。
永澤:そうそう。
高橋:スイッチが変わるというか。
皆川:世界観が一気に切り替わって、昔の物語が今風になるから、より物語にのめり込みやすくなる感じがする。シェイクスピアの時代とか、泉鏡花の時代なんて、私たちにはコアではないじゃないですか。にも関わらず、超訳をすることによって、すごく身近な物語として感じることができるんです。
永澤:その通りです、本当にね。先日観させていただいて、すごく僕感動したんですけど。
皆川:ありがとうございます。
永澤:楠さんの演技は言わずもがなですけど、学生の作り込みも独特で。特に気になったのが、照明の方がやってるのかな、楠さんのバックで映像も流してますよね。あれってどうやってやってるのかな?
皆川:そうですね。照明とプロジェクターを使ってるんですけど、私とプロジェクターの担当と音響の担当がいて、三人でスタンバイしています。永澤さんが観たのはシェイクスピアではなく近松門左衛門のお話だったと思うんですが、その中で三十三観音のお参りのシーンがあって、お寺の名前を言うんですけど、まあ言うだけでは分からないだろうなと。そこで、プロジェクターで美津香さんの周りに文字を映すことによって、ニュアンスを伝えました。親しみを持ってもらえるようにと思って、プロジェクターにしようかってなったんです。それで映画っぽく。時には映画っぽく、それでいてライブっぽくっていうのがテーマでもあったので。
永澤:あの映像は元々作ってある映像なんですかね?それともその場その場で組み合わせて?
皆川:その場その場でじゃなくて、元々ちゃんと作ってるんですけど、でも結構いろんな変更点があって、最初のものとはがらりと変わりましたけど。
永澤:そうだったんだ。あの映像と実際に演技をしている人を合わせるのってすごい難しいんじゃないかな?
皆川:そうなんですよね。そのプロジェクター担当の子は舞台稽古の時にすごい苦戦してました。でも毎日やってたんで、ようやくちゃんと息が合ってきたかなって感じでしたね。
永澤:これはそうですね、ぜひ皆さんに観てもらいたいって感じですね。
高橋:私も観たくなりました。
永澤:近いうちに公演とかはないんですかね?
皆川:そうですね、三月はありますね。まあ私とか学生はもうスタッフはやらないんですが、美津香さんの公演は月に二、三回あるので、是非。
高橋:定期的に行っているんですね。
皆川:そうなんですよ。定期的にやってるので、ぜひ観ていただければと。
永澤:今後も、楠さんのプロデュースを続けていくんですか?それともまた別の人をプロデュースしてくんでしょうか?
皆川:それは竹内ラボの活動で?
永澤:そうですね、ラボの活動として。
皆川:ラボではもうやらないみたいなんです。美津香さんは特にやらないみたいなんですけど、まあ私は呼んでいただければ、全然チケット売りますし、照明もちょっとやってみたいななんて思ってますね。
永澤:じゃあ今後は全く別の活動を?
皆川:そうですね、別の活動をするみたいです。
永澤:それはまだ決まってない?
皆川:まだ決まってないです。
永澤:なるほど、ありがとうございます。では色々とラボについて聞いてきたんですけど、ラボ活動を通して色々と学んだことが沢山あると思います。その中で何か教訓というとちょっと重くなっちゃいますけど、今このラジオを聴いて下さってる高校生や受験生の方に何かメッセージがあれば、最後にお願いします。
皆川:そうですね…私は特に二年生の時はもうラボを一番やりたくって、過ごしてきました。なので総文に入るなら、何か自分がやりたいことを明確にしてほしいなって感じですね。やりたいことがあれば、やりたいラボも見つかるし、その分野の先生も沢山いらっしゃるんで、その中でいろんなことを聞いたりして、もちろん独学でもいいので、何かしらやりたい事とかを見つけて総文に入ってもらいたいなって思います。あと、やっぱり何か作ることが楽しいって思う人が来てくれれば嬉しいですよね。
永澤:うん、そうですね。
皆川:自分の考えとかを発信出来る学部だから、それは音楽にしろ、舞台とかね、映画とか作ってるラボもあるわけで、それらの作品を通じて、何かを発信できたらいいんじゃないかなって私は思います。
高橋:ありがとうございます。今回は総合文化政策学部二年の皆川玲奈さんをゲストにお呼びしてお送りしました。ありがとうございました。
皆川:ありがとうございました。
永澤:ありがとうございました。
皆川:大分緊張しましたね(笑)。
高橋:アハハ(笑)。では、次回もお楽しみに。
(二〇一二年 三月五日配信分)
ラジオSCCS Vol.10より
「ラジエスアカデミー」
ゲスト
総合文化政策学部教員 岡 眞理子
総合文化政策学部第三期生 林 千沙都
総合文化政策学部第四期生 枡潟 和音
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスアカデミー」
永澤:このコーナーでは総文の教員をゲストにお呼びして簡単な講義をしてもらうコーナーです。今回は特別編ということで学生さんもゲストにお呼びしています。コーナーを通して総文のアカデミックな魅力を感じてみてください。それでは早速ゲストをご紹介します。まずは総合文化政策学部で国際文化コースを担当していらっしゃいます、岡 眞理子先生です。よろしくお願いします。
岡:よろしくお願い致します。
永澤:岡先生が担当する国際文化入門の文化基礎演習のゼミ生である二年生の林 千沙都さんです、よろしくお願いします。
林:よろしくお願いします。
永澤:そして総合文化政策学部一年生で、日越学生会議(日本とベトナムの学生の交流を支援する学生団体。二〇〇六年に設立。)に所属していらっしゃる枡潟 和音さんです。よろしくお願いします。
枡潟:よろしくお願いします。
永澤:はい、よろしくお願いします。では早速質問に移りたいと思います。まず岡先生に質問したいのですが、岡先生が専攻していらっしゃる国際文化論とはどのような学問なのでしょうか?
岡:はい。グローバル化した現代社会では、国際関係というのはこれまで政治経済から論じられることがずっとあったと思うのですけれども、冷戦終結後、特に二十一世紀に入って、世界各地で様々な固有の文化が現れてきているという状況のなか、国際関係を文化の観点から捉える、という学問が重要になってきました。これが国際文化論です。英語では、intercultural studies というふうに呼んでいます。
永澤:国際文化論という学問に関して、ゼミでも研究なさっていると思うんですが、ゼミでは具体的にどのようなことをなさっているのですか?
岡:私は文化基礎演習のなかで、前期には、基本文献の講読ということに力を入れています。例えば皆さん名前はご存知だと思うんですけれども、ルース・ベネディクトというアメリカの文化人類学者の『菊と刀』ですとか、日本の精神分析医の土居 健郎さんがお書きになった『甘えの構造』とか、あるいは当学部の特任教授をなさっている青木 保先生の『「日本文化論」の変容』ですとか、アメリカのインドネシア地域研究者で政治学者ですが、ベネディクト・アンダーソンという人の『想像の共同体』とか、まあかなり固い本をみんなに読んでもらっています。
後期は、夏休みの合宿の時にみんなで読んだ平野 健一郎さんの『国際文化論』という、まあ教科書のようなものですね、それに基づいて、異なる文化と文化が接触してどのようにお互いに影響を与え合い、変容していくか、ということを各自の関心のあるテーマを選んで、パワーポイントで発表するということを行います。例えばそれはファッションですとか、あるいは食文化ですとか、あるいは音楽などです。今の三年生が二年のときですけれども、ディズニーランドが世界各地に展開されるとき、どんなふうにその地の文化を反映して、どんなふうに多様なディズニーランドになっているか、ということを比較したグループもありました。
永澤:面白そうなテーマですね。それでは林さんはその文化基礎演習に参加したと思うんですが、テーマはどのようなものを選びましたか?
林:私は演習の後期に「文化が変容していくなかでの食文化の変容」について発表しました。
永澤:食文化とは具体的にはどういったものを?
林:日本の食文化が海外でどのように受け入れられているかということで、私はお鮨を取り上げました。
永澤:お鮨を。どのような国でどういうふうに受け入れられていましたか?
林:アメリカでの受け入れられ方を調べたんですけれども、日本のお鮨は生身のお魚を使ったお鮨が一般的だと思うんですが、アメリカでは鮮度の問題などで日本と同じようにはいかないので、アメリカなりに具を変えたりとか形を変えて、カリフォルニアロールなどロール鮨という形で独自の文化ができていました。
永澤:なるほど、日本の鮨の本質を受け入れながらもアメリカ的な形でアレンジされていたわけですね。他にゼミのメンバーでどのような方がいましたか?
林:私たちの学年は十九名いたのですが、どの方も個性豊かで、韓国と日本のハーフの子がいたりしました。その子は韓国に留学に行ってしまったんですけれど。他にも国際ボランティアでインドに住宅を建てたりしていました。他にも震災のボランティアで石巻に行った経験のある子がいて、色々な子がいたので、最後にゼミのメンバー全員でディスカッションした際などは、その人たちの経験が活かされた色々な意見が聞けたので、ゼミを通してとても勉強になりました。
永澤:ありがとうございます。ディスカッションということで、これは様々な意見を持つ人を含んでいたと思います。なので様々な価値観をもった学生さん同士がディスカッションをしたと思うんですけれども、そのディスカッションを聞いていて岡先生はどのような印象を持ちましたか?
岡:私自身、ゼミというのは、私が引っ張っていくものではなくて、学生が主体的に作っていくもの、参加していく、みんなで共有していくものだ、そういうところに意義があるというふうに考えています。先程たとえば基本文献の講読と申し上げたんですけれども、それも、ただ一人が自分の担当の本を選んで発表するわけではなくて、一つの本を四人から五人の学生が一緒に読むんです。それでお互い、願わくばでなかなかそれはうまくは行かないんですが、一緒に読んで分からないところを助け合ったり、こういう意味じゃないかっていうふうに教え合ったりというのを期待しています。一人は司会をして、二人か三人が発表をして、もう一人がディスカッサントという討論者、発表に対するコメントをする人、という役割にして、パネルを組むんですね。シンポジウムというのはそうやってパネルを組んで意見を交換させたりすることを言うんですけれども、それを教室のなかでやってみました。それで、皆さんの感想が、お友達の意見を聞いて、あるいは他の人の本の読み方を知ってすごく勉強になった、と。私が何度言ったってみんなはきっとあまり心に響かないんですけど(笑)、お友達が何か意見を言ったり、あるいは、こういうふうに自分は読んだ、と言って発表すると、あ、それは素晴らしい、というふうに素直に心に響くようなんですね。だからゼミというのはそういう意味で、お互い切磋琢磨して磨き上げていくという場としては、大変貴重だと思います。
永澤:一つの本をみんなで読むっていう機会はなかなかないですよね。
岡:そうですね。
永澤:すごく面白いと思います。話が変わってしまうんですけど、学生のお二人に、ごめんなさい、ちょっと枡潟さんはフェードアウトしてしまってたんですけど(笑)、お二人中心にインタビューを移したいと思います。まず、総合文化政策学部を選んだ理由があればお二人にお聞きしたいと思います。まず枡潟さんにお聞きしたいと思います。
枡潟:私は実はここは第一志望ではなくて、受かって入ったんですが(笑)、私はもともと文化政策っていうのがどういうものなのかなって興味があったんです。私は一年浪人していて、その浪人の期間に自問自答を色々としていたんですけれども、特に自分が一番興味あるもので、かつ、大学に入って勉強できるものって何だろう、って色々考えていました。もともとは建築をやりたかったんですけれど、建築を学ぶ上で本当に建築の知識だけでいいのかなって色々迷路の中に入ってしまっていて、その時に総合文化政策学部、青学のこの学部を見つけて、ここは色々なことが出来る学部ですよね、こうパンフレットを見ていても。自分はすごく悩んでいたのですが、大学入ってから悩んでもいいんじゃないかなって後から思い始めて、色々な学部や学校とも比較したんですけれど、結果的に魅力ある、特に立地がいいっていうのが一番良かったので、私はこの学部を選んで入学しました。
永澤:なるほど、確かに選択肢が増えるという意味では、ここは色々なことができる学部なので良い選択かもしれないですね。
枡潟:良いか悪いかどっちに転ぶかはまだわからないんですけどね(笑)。
岡:あの、私、枡潟さんのことを少し知っているのでひとこと。私は一年生全員に必修科目で「アートマネジメント概論」、これから「アートデザイン概論」という名前に変わりますけれど、それを教えています。私はその場で、なるべく沢山の現場をみんなに紹介したいので、演劇とか美術展とかのパンフレットを配るようにしています。枡潟さんは私が配る以前に、自分からもうそれを観たいと思って予約している、っていう、そういう学生さんなんです。
永澤:おお。積極的な学生さんで。いや絶対良い方向に行くと思いますよ。
枡潟:ありがとうございます。先輩から(笑)。
永澤:実際に入ってみてどんな印象を持たれましたか?
枡潟:実際に入ってみて…そうですね、本当に色々な仲間がいるなあと。こういうふうにラジオをつくる人もいれば、音楽をやっている、演劇をやっている、あるいはまた、自分は経済に興味があるんだ、っていうなんでこの学部に入ったんだって言いたくなるような(笑)、そんな人もいたりして、本当に色々な人がいて、刺激を受けるとともに、自分が自分を持っていないといけないのかなってすごく、なんて言うんだろう、自分はやっぱり結局一人なのかな、っていうこともたまに思ったりしますね。でもその中でさっきの、林さんが言っていた、色々な人がいて色々なことが自分のためになる、みたいなことを言ってたんですけれど、それは本当にその通りです。私はまだゼミには入っていませんが、普通のクラスで授業を受けている間でも授業に対して色々な意見が私の周りでは挙がっています。それを聞いているだけでも、総合文化政策って結局は何なんだろう、っていうことに色々つながっていくので、この学部は面白いなと。先輩も含め、本当に面白いなと思いますね。
永澤:では自分が思った通りと言えば思った通りの学部だったんでしょうか?
枡潟:いや、思った通りでは全然ないです(笑)。思った通りではないというのが思った通りですね。
永澤:なるほど(笑)。ありがとうございます。では今度は林さんはどういった理由でこの学部に入ったのでしょうか。
林:私も枡潟さんと同じで、総合文化政策学部が第一志望ではありませんでした。やっぱり、なんでしょう、立地の面で青山学院大学自体に惹かれていたのもありますし、あと日程とか色々な調整で…(笑)。
永澤:ちょっと細かいところを含めて(笑)。
林:それでそれで総合文化政策学部を受けました。高校生の時点で大学で何を学びたいかっていうのが明確な人って、まあ少ないと思うんですよ。私もその一人で。で、総合文化政策学部っていう、ちょっと何をしているのか良く分からない名前ですが、色々なことが学べそうだなと思ってこの学部に入学しました。
永澤:では実際に入ってみてどのような印象を持ちましたか?
林:そうですね、本当に先程も言っていたように色々な人がいる。私は高校時代、中高一貫の女子校だったので、同じような人たちが周りにいるような高校生活だったんですけれども、大学にはすごくファッションが好きで奇抜な格好をしていたりとか、映画がすごい好きでとか…好きなものが明確な子が多いな、と思いました。
永澤:そのような方々に出会ってどう思いましたか自分は?
林:そうですね、私もその…総文に入りたいと思って入った訳ではないんですけれども、周りの人たちのように高校時代から美術館に行ったりとか、映画を観たりするのが好きだったので、入ってから自分に合った学部だなと思いました。(学部の印象ということに関して)総文に入ってからゼミやラボの活動を通して、皆でイベントを企画して運営したりとかする機会もあって、新しいことに挑戦することができる学部だと思います。
永澤:なるほど。それでは具体的にどのような挑戦をなさいましたか?
林:はい。イベントというのは例えばメディアジャーナリストの津田大介さんをお呼びして学生とトークショーをする、というイベントの運営・企画を行なったり、ちょっと前に秋葉原の文化についてコミュニケーションとカルチャーを研究するという形のイベントを、そこでもまたゲストをお呼びして行ないました。私はちょっと司会をしたりしました。
永澤:面白そうなイベントですね。ありがとうございます。
岡:実は今お二人の学生さんが、総合文化政策って一体なんだろう、っていうのが分からないまま入学してきたっていうふうにおっしゃったと思うんですけれども、それは教員の間の悩みでもあるんです。教員たちも色々なところから集まって来ていて、分野も都市工学の先生もいれば、経済、マネージメント、経営、哲学、あるいは文学系の方もいらっしゃいますし、精神分析の方もいるし、私のような国際文化交流論という人間もいるんですね。とてもそういう意味では楽しく、色々な知らない分野を学ぶことが教員の間でもできますけれども、じゃあそういう方々が集まって、一体どういう学部を創っていくかっていうことは発展途上です。当初のコンセプトはもちろんあるんですよ。文化と経済を、カルチャーとマネージメントを結びつけようという考えに基づいていると理解していますが、では実際にどういう総合文化政策学部を創るかということは教員たちも日々模索している、というところですね。
永澤:その模索の段階に関わることができるっていうのは、なかなか面白いものですよね。ありがとうございます。ここまでで前半部分を締めたいと思います。後半部分では岡先生のゼミでのベトナムの文化研修旅行について中心にお聞きしたいと思います。引き続きよろしくお願いします。
(二〇一二年 三月十九日配信分)
ラジオSCCS Vol.11より
「ラジエスアカデミー」
ゲスト
総合文化政策学部教員 岡 眞理子
総合文化政策学部第三期生 林 千沙都
総合文化政策学部第四期生 枡潟 和音
パーソナリティー
総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスアカデミー」
高橋:ラジエスアカデミーの後半に入っていきたいと思います。その前に改めてゲストを紹介します。総合文化政策学部で国際文化コースを担当していらっしゃる岡 眞理子先生と、岡先生が担当する国際文化入門文化基礎演習のゼミ生である、二年生の林 千沙都さんと、一年生で日越学生会議メンバーの枡潟 和音さんです。それではまず初めに、ゼミでの文化研修旅行についての概要についてお話しいただけますでしょうか?
岡:どうしてこういう文化研修旅行というものをゼミの勉強のなかに組み入れているのかというと、私はもともと二〇〇八年四月に総合文化政策学部ができるまでは「国際交流基金」という、外務省の監督下で日本と諸外国との文化交流を中核的に担当している機関(独立行政法人)に所属しておりました。その間、カナダのオタワにある日本大使館に文化担当として出向し、また、大学に来る直前はパリ日本文化会館という基金の海外支部で仕事をしていました。ですから、現場で実際に自分たちが身体を動かして国際文化交流をすることの重要性を認識している者の一人です。文化研修旅行は今回のベトナムで四回目で、百聞は一見に如かずと言いますけど、いろいろな文化関係機関を訪問する研修旅行です。学生たちは行く前と行ってからのビフォーアフターが全く違うんです。出発までの準備期間のときはなんとなく先生にあれ調べろこれ調べろと言われ、訪問先予定機関にメールを書けなど、もしかしたら面倒くさいだなんて思いながら準備を進めます。でも帰ってきたら本当に見違えるように積極的になって、どんどん自分でお礼状を書いたり、担当した機関を実際にインタビューしたあとのまとめをしたり、事後レポートをきちんと出してくれたり。最後はいつも学生たちが編集して、報告書を作るようにしています。
高橋:それでは今回が四回目ということでベトナムの文化研修旅行ですが、どのくらいの日数滞在しましたか?
岡:二〇一二年の三月四日から十四日までの十泊十一日間でした。
高橋:結構長いですね。
岡:そうですか。最初に行ったカナダ東部は十六日間ですし、ニ〇〇九年夏のインドネシアと東ティモールは十一日間、昨年秋のフランスとベルギーも十四日間くらいでした。アジアは近いこともあってちょっと短いですね。
高橋:今年はなぜベトナムを選んだのかをお聞きして良いですか?
岡:ベトナムは注目を浴びている中国やインドと並んで経済発展の著しい国で、東南アジアのなかでは実は日本に来る留学生が今一番多いんです。日本との関係もますます緊密になっています。それがひとつ、学生たちにとっても面白い国なんじゃないかなと。今本当に発展途上の力のある国ではないかと思ったからですね。二十歳くらいまでの若者の人口が五十パーセントを越えているんです。ですから日本とは対照的なところがあると思うんですね。日本との関係でも、新幹線ですとか原子力発電所とか、ベトナムを支援していくというたくさんのプロジェクトがあります。
高橋:なるほど。これから経済的にも文化的にも発展する可能性があるということですね。
岡:そうですね。私は実は国際交流基金の時代に五回ベトナムに出張しています。ある程度ベトナムの事情はわかっているつもりですが、最後に行ったのは二〇〇五年でしたので、そのあとどんなふうに変わってきているのかというのに個人的にも非常に関心がありました。それから、文化の分野での日本との関係という意味では、日本語教育ということ、文化財保存支援ということ、その二つが今回の文化研修旅行の大きな柱になっています。
高橋:ではそのような日本語教育と文化財保護の支援という二つのテーマに沿って、具体的にどのように回られましたか?
岡:ベトナムは縦に長い国なんですけれども、北のハノイから入りまして、ハノイに四泊、それから中部の古都であるフエに二泊して、そこから少し離れたところにあるホイアンという、昔日本人町があったところに一泊しました。ここは観光地ですね。それから最後にホーチミンで二泊です。訪問した機関には日本側の日本大使館と国際交流基金のベトナム文化交流センターなどもありますけれども、ベトナム側のハノイ国家大学外国語大学東洋文化言語学部などを訪ね、さらにフランスが運営しているフランス極東学院ハノイセンターにも行きました。ここはベトナムの文化財支援を行っていますが、フランスの統治時代からあった歴史的な機関です。ほかには国立民族学博物館やタンロン遺跡,文廟をハノイで見ました。フエは王宮が有名ですが、とにかく世界遺産がたくさんあります。世界遺産は近くで行けるところは全部見ました。王宮とグエン朝時代の皇帝の廟を見たり、あるいはホイアンの近くにあるミーソン遺跡(七世紀から十三世紀に栄えたチャンパ王国のヒンズー教の聖地)も訪ねました。最後のホーチミンは日本へたくさん留学生を送りたいと思っている日本語学校がたくさんあるところなんです。五十近くある学校のうちの大手二つを訪ねました。ホーチミンにはベトナム戦争の爪痕が大きく残っていて、クチトンネルという地下でクチ村の人たちが敵の目を逃れて生活していた場所に行き、実際に身体がやっと入るくらいのトンネルを体験しました。戦争証跡博物館ではベトナム戦争とはどのようなものだったのか、ベトナム側から見たベトナム戦争や枯葉剤の被害が今でも延々と続いていることを示す数々の写真に大変衝撃を受けました。
高橋:ベトナムは世界遺産が多く残されているということですが、その一つのホイアンには日本橋がありますよね。
岡:実は日本に関連するものはそれしかないんです。中国人街は今でもちゃんと残っていて、それらの建物は人が住んで使われているんですけど、日本に関しては橋だけですね。
高橋:そうなんですね。あとは先ほど言っていた宮殿や廟が多く残されているんですね。それでは学生さんのほうに色々と聞いていきたいと思います。まずは林さんから、ベトナムに行かれたことはありましたか?
林:いえ、初めてでした。
高橋:実際に行ってみてどのような印象を持ちましたか?
林:そうですね。ベトナムはあまり馴染みのない国で食べ物しか知らなかったんですが、事前学習で訪問する機関などを調べているうちに少しわかってきました。先ほど先生もおっしゃっていたように今回の研修旅行で日本語教育というのがテーマだったのですが、実際に行ってみると日本語を学んでいる高校生や大学生、自分と同い年くらいの学生との交流が印象的でした。その学生さんたちは日本語を学んでいるということで日本に関心のある人が多く、アニメなどの話題で日本に興味をもって積極的に声をかけてくれたのがうれしかったです。ちなみに会話は日本語でしました。日本語を一生懸命勉強していて、一日四時間勉強していると言っていて少し危機感を持ちました。
高橋:自分が使う日本語と雰囲気が違うというか、向こうの方のほうが(文法的に)型にはまっているんですか?
林:言葉がきちんとしていますね、やっぱり。
高橋:日本のアニメの話題があったということで、ベトナムの学生は日本のことを色々と知っていましたか?
林:そうですね。日本語を学ぶきっかけが日本の文化やアニメで、それらに関心をもって日本語を学んでいる子が多いようですね。
高橋:滞在を通してベトナムに対する印象は変わっていきましたか?
林:そうですね。四か所回ったので街によっても違いますし、南北につらなっている国なので気候も違うし人柄も違うので、ひとつの国でしたが色々な経験が出来ました。
高橋:はい、ありがとうございます。それでは今度は枡潟さんに同じ質問ですが、ベトナムに行かれたことはありますか?
枡潟:はい。私は日越学生会議という団体に所属していて、初めての海外だったので去年の八月を含め今回が二回目のベトナムでした。
高橋:二回目のベトナムということで、ベトナムから日本に対する印象についてなにかありますか?
枡潟:そうですね。みんなアニメや漫画の話をします。あの推理漫画が好きなんだけど和音は持ってる?という話や、裁判をテーマにしたゲームが好きで自分は日本に行って弁護士になるんだ!という熱意のある男の子もいて。あと、向こうの人は歌をうたってくれるんですね。歓迎の意味もあると思うんですけど。カラオケもいっぱいあって、日本のビジュアル系が好きという子もいたりしました。日本の他の文化が好きだという子もいますが、やっぱりポップカルチャーに興味を持っている子がたくさんいましたね。
高橋:漫画やアニメ以外にも興味を持っているものはありましたか?おりがみとか。
枡潟:おりがみに関しては私たちが中部のフエの民間学校に訪問して交流したときに、鶴の折り方をレクチャーしたのですが、ユリを黙々と折っている男の子がいて、自分はユリは得意だ、と言って日本人の私より折り紙が上手い子がいてびっくりしました。
高橋:日本人にとっても折り紙は難しいですからね。ではもう一つのテーマで文化財保存の協力・支援について色々聞いていきたいと思います。まず林さん、世界遺産というテーマについて何か印象や感想はありますか?
林:今回の研修でタンロンの遺跡とミーソンの遺跡に訪れました。二つともベトナムの世界遺産に登録されているのですが、タンロンの遺跡はまだ発掘調査が続いている状態で、実際に訪れた時も発掘調査をしていてその様子も見ることができました。ミンソンの遺跡はヒンドゥー教の芝生の遺跡ということで、彫刻などにもヒンドゥー教の影響が見られました。事前学習の時にたまたまその二つの遺跡についての担当で調べたのですが、実際に行ってみると私が思っていたより遺跡の規模が大きくてそのスケールに圧倒されました。
高橋:林さん、ありがとうございます。では次に升潟さんは文化財に関する印象や感想はありますか?
枡潟:タンロンとミーソンのほかに私たちは無形文化財のカーチューとニャニャックを見学しました。カーチューは北部のハノイで見学しました。これは打楽器と弦楽器と太鼓の三つで演奏される伝統的な音楽です。私は青学の長唄同好会に所属していて三味線をやっているので興味があったんですけど、もちろん全然違うのはわかっていたのですが、ベトナムの音色というかゆっくりと流れる優しい音色なんです。楽器をやっている者として違いを感じられてカーチューは非常に興味深かったです。
高橋:より具体的に違いというのは?
枡潟:流れるようなところと歌い方。六曲聴いたなかで最後に演奏されたハノイの湖の曲が好きでした。実際、みんながゆっくりと歩いているような街の中心の湖なんですけど、そこを歌った曲で流れるような弦の音色と高校生くらいの若い歌い手さんの声がすごいきれいでした。
高橋:また聴きに行きたいですか?
枡潟:もちろん。中心街でやっているので聞きに行こうと思えばすぐにでも。フエ音楽院で見学させてもらったニャニャックという音楽は打楽器と中国の胡弓のような楽器と笛の三つで演奏します。授業の風景を見学させてもらって音楽院の中でどのように遺産音楽家は運営をしているのかを先生に伺って、そのあとに授業の見学として演奏を聞かせていただきました。
高橋:ありがとうございます。では次の質問です。まず林さん。ベトナムに行く前と行ったあとで精神的に変わったことはありますか?
林:実際に日本語を学び日本に興味のある現地の学生さんたちとの交流を通して、私たちは日本という留学したい気持ちや憧れを持たれている国で当たり前のように勉強しているという事実から、改めて恵まれているということを実感しました。また、学生との交流だけではなく現地で働いている日本人の方々にお話しを聞く機会もたくさんありました。大使館、日本語教師と色々な形で働いていらっしゃって、海外への関心はさらに高まりました。実際海外で働くにはどういった職業があるのか今までピンとこなかったのですが、自分の将来にむけての視野が広がりました。
高橋:ありがとうございます。
枡潟:私は日越学生会議に参加しているので今までも交流がありましたが、去年よりさらに熱意ある学生に出会い、今もSNSサイトでの交流があります。そういう学生に出会ってもっともっと刺激をうけたいと思って帰ってきました。今回は研修旅行ということでいろんな機関を訪問し、関係者の方にお話をうかがったのですが、「アートマネジメント概論」という岡先生の授業で習ったことを現場の方も言っていて、先生には失礼なのですが「本当なんだ!」と。現場の声が聞けたことは自分にとって今後の肥やしというか、勉強になる材料を持ち帰れたと思います。今後の二年のゼミで活かせたらと思います。
高橋:はい、ありがとうございます。
岡:結局、突き詰めていくと国際文化交流は異なる文化との出会いです。文化が接触し、変容することは、すなわち自分がどのように他者との関わりのなかで変わっていくのかということで、自己変革の運動だと思います。それを通して社会をどのように変革していけばいいのか見えてくるんじゃないかなと期待しています。
高橋:たしかに一人ではなかなか革新的な成長ってできないと思います。日本人同士ではなく自分と異なる文化の人と交流することによって成長できるところがありますよね。最後になりますが、このラジオを聴いている高校生・受験生の方にメッセージをお願いします。
林:特に総文は色々なことができるのが長所ですが、一方で色々なことが出来るから何をしていいかわからないままふわふわと時間が過ぎてしまうという面もあると思います。今回ゼミで行ったベトナム研修もそうですし、自分が成長できる機会は色々と転がっていると思うので、受け身ではなく自分で積極的に参加したり挑戦したりすることは大事だと思います。
枡潟:ズバリ語学と本を読むことではないでしょうか。今回のベトナム研修旅行でも私は語学に関して先生や先輩にお世話になりました。自分から現地の人と交流しないと何も始まらないわけですから。機関に訪問する上で、自分が何が知りたいのかを相手にちゃんと伝えるための語学。まずは英語ですかね。あとは自分が高校生や受験生の時に自分がもっともっと本を読んでいれば、大学の授業や外部の人と話しているときに、もっと自分の引き出しでこの質問や突っ込みができるのにと誰と話していても思うので、本を読んだりいろんなところに行くことで自分の引き出しをたくさん持てればと思います。
高橋:先生は今の学生にどのような期待をしていますか?
岡:そうですね、やはり今、そんなになま優しい世界情勢ではない、日本にとってもなかなか厳しい風が吹いているときだと思います。ですから日本人の学生、若い方たちは、したたかさとしなやかさを両方持っていただきたいですね。ちょっとやそっと打たれても、そこで負けてしまわない、やりたいことを貫くという、そういうしたたかな気持ち。それから相手もあるわけですからね、国際関係というのは。ですから、ほかの方たちに対する共感能力というのは、私はしなやかさではないかなと思うんですね。頭から「こうだ」と決めてしまわないで、ほかの人の話を聞いて「じゃあどういうふうにしようか」というその落としどころを考えるしなやかさ、柔軟性ですね。で、そういう力が身に付けば、困難を乗り越える力になっていくと思いますし、一緒に何かを作っていく、創造の方にもつながっていくと思うんですね。
高橋:そうですね、ただ自分の意見を押し付けたりとか、反対に相手の意見を聞いてばかりではなく、やっぱりちゃんとお互いにお互いのことを理解しながらはっきり言うことは言うというのは大事ですね。ありがとうございました。ということで、岡 眞理子先生、林 千沙都さん、枡潟 和音さんの三人をゲストにお呼びしました。では、ありがとうございました。
岡:ありがとうございました。
林&枡潟:ありがとうございました。
(二〇一二年 三月十九日配信分)
ラジオSCCS Vol.12より
「ラジエスクラブ」
ゲスト
総合文化政策学部第一期生 西山 京子
パーソナリティー
総合文化政策学部第二期生 永澤 健多
総合文化政策学部第三期生 高橋 由莉
— オープニングトーク終了
タイトルコール 「ラジエスクラブ」
永澤:はい、今回は総合文化政策学部四年の西山京子さんに来てもらいました。よろしくお願いします。
西山:お願いします。
永澤:では早速、インタビューということで聞いていきたいと思います。まず、この総文に入った理由から教えてください。
西山:総文に入った理由はまず第一に小さいころから絵を描いたり、物を作ったりするのがすごく好きで、それでデザイン系の学問への志望がすごく強かったんです。あとは高校が青学だったのもあって、内部進学というのもふまえて、青山学院大学の枠の中で、そのようなデザインとかアート系の学問分野がある学部を探したときに、ちょうど総合文化政策学部が立ち上がったんですね。で、その科目の中に○○デザイン、デザイン論といった科目も見つけたので、それで美大のようなことができるのではないか、面白そうだなと思って志望しました。
永澤:実際に入ってみてどのような印象を抱きましたか?
西山:一年目は大学生一年ということもあって忙しかったりで、生活についていくのが大変だったので、印象というのはキチンと育たなかった。でも、二年目で総文はメインと言ってもいいコース科目が出てくるんですけど、そこで入る前に学びたいと思っていた○○デザインといった授業をガッと取ったんです。でも申し訳ないけど、自分が思い描いていた勉強内容と実際の講義内容とにはちょっとイメージの食い違いがあって、思っていたのと違うなというのが入ってからの一番の印象でした。
永澤:入学前は具体的にはどのような印象を持たれてましたか?
西山:うーん…ワクワクドキドキというか(笑)。技術的なことがメインにできるのかなと。授業のレジェメでは理論については詳しく書いてあるんですね。それで、こういうものを踏まえて制作の課題とか出すのかなと思っていたら、文系であるというのもあると思うけど、理論教えてもらってから最後の発散がないんですね。理論を自分でロジックを組み立てて、詳しく説明してくださいまでだったので、折角インプットをもらったのに、そのアウトプットもインプットをただ自分の言葉に置き換えただけで、つまらないというか、自分の中で何かを作り出しているという感覚が持てなくて。何かインプットをもらったら自分のアウトプットで自分で何か実際に作るみたいな形式がやっぱり自分には理想でした。その理想と現実のギャップで思っていたのと違ったというイメージがありました。
永澤:学部とミスマッチだなと思うことがあったというわけで、逆に思ったとおりだったなということはありますか?
西山:思ったとおりだなと感じたのは、周りの学生がみんなそれぞれにアートとかファッションとか音楽とかに個人的に精通している人がものすごく多いんです。プラス、ただ知っているだけでなくて、音楽好きな子だったら自分でバンドやってどんどんライブやってとか、自分で何かアートとかにハマって表現活動をしている人がたくさんいるんです。このことはイメージ以上だった。思った以上に刺激を受けましたね。
永澤:刺激を受けた上で西山先輩も何か活動をしたりしましたか?
西山:すごく言い難いのですが、もともと絵を描いたり手で何かを作るのが好きということと、漫画とかアニメにもすごい興味があったことが高じて、コスプレ活動をしていました。大学二年から始めて今年で三年目になります。
永澤:コスプレとは具体的にどういうものなのでしょうか?
西山:一般なイメージで言うと…パーティーグッズショップとかに売っているナース服とかメイド服とかを着てわーっとやる感じだと思うんですけど、私の場合は漫画とかアニメのキャラクターを再現するんですね。具体的なものづくりのジャンルでいったら、服飾、写真とヘアメイクの三分野が混じって、総合的に発現していくものだと思います。
永澤:では、一つずつ聞いていきたいと思います。まず服飾という面に関して、具体的にどのようなことをやったんでしょうか?
西山:私は個人で洋服を作る教室に通いました。地元でおばちゃんたちがスーツとかパンツとかシャツとか作っている場所を発見したんです。そこに、半年くらいで教えてください!って服の作り方を教えてもらいに飛び込んで…それがまず第一歩でした。半年間通って、それ以降は大学の授業が忙しくなってしまっていけなくなっちゃったんですけどね。あとはコスプレの雑誌をがあって、その付録の型紙を使ったり、縫い方講座を見たり、そういう風に研究して、あとは自分でガンガン作って実戦経験を積むという感じでした。
永澤:入り方がすごく独特ですよね。近所に飛び込んでというのは。服飾をやるといったら専門に通おうと思いますよね。
西山:専門学校のカリキュラムではすぐに服を縫わしてくれないんですね。私は思い立ったらすぐって感じで、じりじりとやってられないんです。専門だとどうしても理論から理論からとなってしまって、そうじゃなくて、もうすぐ縫えますってのを探したときにこの教室いいなと。おばちゃんたちが本当に好き勝手作っているみたいな感じがちょうどいいと思って。
永澤:なるほど。では次は写真について色々とお聞きしたいです。
西山:写真に関しては、私がやっているコスプレのジャンルでは見た目作りプラス、写真を撮るというのがセットになっているんです。写真を撮るっていうことがコスプレ活動の一環となっていて、それで写真も始めたんですね。写真の勉強の仕方は、私はもうとにかく見よう見まねっていうのが九割ですね。最初は普通のデジカメ、みんなが持っているようなちっちゃいデジカメ撮ってたんですけど、段々と一眼レフとかに興味を持ち始めて、周りの持っている人に触らせてもらって、こういう感じなんだって学びつつ、自分でもおいおい買って、あとは使い倒していくっていう。写真の構図とか雰囲気、色とかっていうのは、自分より先陣のコスプレイヤーのサイトとかブログとかをいっぱい見て、この写真ぐっとくるなっていうのを自分の頭に焼き付けて、自分もこういう構図で明るさ色味で撮る、後ろの背景こんな感じで、表情はこんな感じで…最初はやっぱり真似ですね。
高橋:最後は...服飾、写真…ヘアメイクですね。
西山:ヘアメイクは結構コスプレの中でも重要。服以上に重要かもしれないです。変な髪型のキャラクターとかもいっぱいいたりして、普通に美容雑誌の髪型の作り方とかメイクの仕方とかじゃ参考にならなかったので、ちょっとふみこんで全然知らないヘアメイクアップアーティストの分厚い雑誌とかを買ってみました。女の子だったらわかると思うけど、ここアイラインどうやって引いているのかなとか、アイシャドーの色はここをぼかして、この色味ここに乗っけるとかわいいな、かっこいいなっていうアイデアやヒントをその本からいっぱいもらって、またこれも何度も何度も自分の顔で試してみて、経験を詰んでいく感じでした。
高橋:学んですぐ実践したんですね。
西山:あとウィッグの作り方とかは経歴の長い人とか、とっても奇抜な髪型を作っちゃうみたいな人のブログの記事とかに詳しく書いてあったりして、その人たちから知識をもらい、それでやってみるって感じで経験を積みました。
永澤:なるほど。では、もともと三つとも最初から経験のあることではなかったわけではなかったんですね。
西山:はい。
永澤:そのコスプレを何かで発表するということはあったんですか?
西山:コスプレのSNSサイトがあって、そこに写真を載っけて、こういうコスプレしてますとか、私こんな衣装にしたよーとか、自分のこだわったところのコメント付きで写真を載っけてました。
永澤:ではコスプレの活動は自主的な活動だと思うんですけど、それが何か学部での活動に発展したことはありますか?
西山:この活動を卒業制作という形で学部に繋げていきました。この学部は卒業論文、普通の論文形式のものと、卒業制作があります。個人的にアートとかやっている子が多いということで先生が設けてくれたんでしょうね。私は制作の方で、コスプレの写真作品と個人的に描いていた絵、それと名刺です。コスプレ活動ではコスプレイヤー同士が交流するために名刺を使うんですけど、その名刺のデザインをキャラクターごとに二十とか三十作ったので、その中から抜粋してポートフォリオにいれました。あと、音楽にのせて写真のスライドショーも作っていたので、それも一緒に。
永澤:一連のコスプレ活動の中で学部で学んだことが活かされたことってありますか?
西山:そうですね…理論とか学術的な知識っていうのはあまり反映されなかったんですけど、何かを制作するときに必要なアイデアを発想する力はものすごく鍛えられたと思います。一重にコスプレでキャラクターを真似するっていっても、自分がどこに注目して、ここの服のデザインはこういう形にしようとか、この髪型はどこどこ社のウィッグを使うとか、この色を使ってこういう形にしようとか、メイクも自分の顔に合わせつつキャラクターっぽさを出すにはどうしたらいいんだろうとか…考える。それをどう技術として発現するかは別として、自分なりにどうしていこうみたいな、そこのアイデア力、発想力、思考力はこの学部で鍛えられた部分はあったかなと思います。というのも、この学部の学問は他学部みたいに暗記して方程式を通して答えが出てくるようなものじゃないんですよね。もちろん、ますは知識とかを与えられるんですけど、最終的に課題などで求められるのは、ではそれについてあなたの意見を述べて下さいっていう無限に答えがあるようなものなんですね。みんながみんな同じものを学ぶんだけど、その中で自分の考え方をどう出すか、みたいなことをずっと三年間授業で自然にやっていたので、そうですね、コスプレとは全然違う領域のものなんですけど、色々なレイヤーさんと比較すると、自分は結構こだわってるほうなのかなーって実感しますね。そういうこだわりとかがなかったら、服もウィッグもすでに完成したものを使っているはずです。でも、自分の中に譲れない一線があると妥協したくない。そしてそれは乗り越えるラインになる。そのラインを超えるためのエネルギーっていうのはここでの勉強の訓練があったからかなーって思います。
高橋:ありがとうございます。それでは最後に総合文化政策学部に興味があったり、あるいはもう入りたいなと思っている受験生、高校生にメッセージがあればお願いします。
西山:総合文化政策学部という学部は私のこの四年間の経験上、全く以て自分次第の学部だと思います。動かなければ何も残らない、けれども動いたら動き回った分だけ得られる経験値はたくさんある学部だと思います。というのは学問領域が経営、経済、法学などの専門性の高いところよりもはるかに広いんです。ある意味で青学にある学びのジャンル全てをこの一つの学部で残全部見せてくれる、全部触らせてくれるので、卒業後に自分が、こういうことをしたいっていうアイデアの素材というか進路の形、進みたい世界というものが本当に広く見える学部だと思います。
永澤:幅広い学部ということで、逆に西山さんが一年生の時のように学部の全体像が見なくて最初の印象がよくわからなかったということがあったり、二年生になってコースが分かれて、何をしたらいいのかわからないといった場合はどうすればいいでしょうか?
西山:本当に自分が将来に何をやりたいかわかんないって状態だったら、とりあえずもう手当たり次第に授業を取ってみて、何でもいいからほんのちょっとでも面白そうだと思ったら、それに対して自分で動いてみるということで大分変わると思います。それでやりたいことが見つかると、次にどうしたらいいのかわからないって段階に入るんですが、この学部はそこで本領が発揮されると思うんです。先生のバックや施設などは他学部にはないくらい手厚い。例えば、メディア系だったら先生が実際の現場の人と知り合いであるとか、どうしたらいいのかわかんないときにヒントをくれる人が本当のプロフェッショナルな人だったりとか、環境や機材だったりとかも、もちろん全部プロのもの。なので、どうしたらいいのかわかんないって時に、自分で動けば結果はすぐに返ってくる。あとは周りに個別に精通しているオタクなやつがすごくいるので、そういう人たちに聞く。ヒントはいっぱいころがっているんです。何をやりたいのかわかってからが勝負の学部ですね。
高橋:自分次第ということにつながりますね。
西山:さらにそのヒントを与えられたその先も自分次第です。機会やチャンスを先生たちは与えてくれるけど、その後の具体的な指導は入らないので、与えられたものをどれだけ自分のバネに変えることができるのか。行けば何かしてもらえるという姿勢はもたないほうがいいですね。
永澤:この学部に入れば「誰か」何かをしてもらえるというわけではく、この学部に入れば何かが「自分」で出来るという感じですよね。
西山:そういう意味では何か見つかるかもしれないという風にいったほうがいいですね。何かしてもらえるというのだったら、卒業後に何も残らなかったっていうことになってしまう。
高橋:得るもの、繋がるものがないとですよね。
永澤:あくまできっかけであって、最終的には自分次第。
西山:きっかけの豊富さは本当にいっぱいあります。何をしたいのかわからないから何もしなくていいやって学校に来なくなるとかは本当にやめたほうがいい。親泣かせだし人生的にももったいない。とにかく動いてみる。わからなくても動く。答えがないのなら自分で探すっていうハングリー精神を持てば、すごい経験値があがると思います。
高橋:その通りですね。ありがとうございました。ということで今回は総合文化政策学部四年生の西山京子さんに来てもらいました。
永澤:ありがとうございした。
(二〇一二年 三月二十六日配信分)
大島ラボは、ネットとメディアを扱う、ふわっとしたラボです。いつもふわっとしているので、ある学生さんが発案した「受験生向けのインターネットラジオ」という企画を彼らに全て任せてみました。すると、いままで散漫だった活動が急にイキイキとしはじめ、ラボ生は我も我もと協力し合い、諸先生も快く出演してくださり、水銀柱はうなぎ上り、なんと一クール十二回を収録し終えたのでした。いやはや、恐れ入りました。知性と友情があれば何でも達成できるのですね。この本はその素敵な記録です。
ご協力頂いた先生方、学生の皆様、ありがとうございました。また聴いてくださった方、読んでくださった方にも御礼申し上げます。そしてラボ生諸君、お疲れ様。
二〇一二年 七月二十一日
総合文化政策学部教員 大島 正嗣
2012年7月12日 発行 初版
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総合文化政策学部の授業であるラボ・アトリエ実習の一つ。「通信と放送の融合」をテーマに学部主催のイベントやシンポジウムを動画や音声としてアーカイブ化・発信している。また、独自企画のコンテンツとして高校生や受験生に総合文化政策学部を紹介するインターネットラジオ「ラジオSCCS」を配信。