spine
jacket

かつて趣味で作成していた喫煙用のパイプ、引越しその他のイベントに伴い作業室が失われてどうにもならない日々が続いていました。

近頃になってようやく作業室を新たに用意できたので、少しずつ作ってゆけることになりました。
今回は作業を日記形式で追ってゆくようなbcckにしてみました。
(「まえがき」より)

諦めざるをえないキズに出遭わず、無事に完成することを期待してブライヤーを削ってゆきます。

───────────────────────



パイプ制作リハビリ中 #1201

GOIGOI

GOIGOI出版



───────────────────────

 目 次

まえがき

11月10日 制作開始

11月11日 ダボ穴開けと火皿の拡張

11月12日 端面を平面に整える

11月13日 ボウル部の切削を開始

11月14日 シャンクを削る 1

11月15日 シャンクを削る 2

11月16日 ブライヤー部の整形

11月17日 飾り材の準備

11月18日 ダボを切る 1

11月19日 ダボを切る 2

11月21日 マウスピースの準備 1

11月22日 マウスピースの準備 2

11月23日 マウスピース切削 1

11月24日 マウスピース切削 2

11月25日 マウスピース切削 3

11月26日 マウスピース切削 4

11月27日 木部の紙やすりがけ

11月28日 ダボと飾り材の接着

11月29日 パイプの組み上げ

11月30日 着色と磨き

12月 1日 仕上げの作業

付録1 完成パイプ写真

付録2 パイプのキズについて

あとがき

まえがき

私の2冊目のbcckです。

かつて趣味で作成していた喫煙用のパイプ、引越しその他のイベントに伴い作業室が失われてどうにもならない日々が続いていました。言い訳の常として、仕事も理由の1つになるかもしれません。

近頃になってようやく作業室を新たに用意できたので、少しずつ作ってゆけることになりました。

今回は試作的なものとして、作業を日記形式で追ってゆくようなbcckにしてみました。
なにぶん一人での撮影のため動きの無い写真ばかりで退屈するかもしれませんが、少しずつ作業が進んでゆくのを記録できるのではないかと。


Web上で本を作ることができるサービスであるBCCKSさんは2011年にリニューアルされたそうで、その際に以前私が作成したbcck「#0802 パイプ制作記」を現行バージョンへと変換してくださいました。文字が横を向いている等いくつか訂正しなければならない箇所もあるようなのですが未だに手を付けていません。
変換前のオリジナルバージョンも「BCCKS α館」で閲覧できるようなので、興味ある方はそちらもどうぞ。以前利用していたα館の私のユーザーページは次のアドレスです。
   http://alpha.bccks.jp/dept/GOIGOI

このbcckをどのような形式にしようか迷いましたが、「書籍」フォーマットの形式を用いて拙い解説で誤魔化すことにしました。
元来作業の記録であって文章で何かを伝えたいというものではありませんので、BCCKSさんが用意してくださっている「カードブック」フォーマットのデザインを用いて写真メインで構成してみたかったのですが、1人での撮影のため作業している姿を撮れるわけでもありません。それに絵葉書にするような写真でもありません。

「新しいBCCKS」を編集するためのエディタに触れるのはこれが初めてでした。かつて利用したbcck作成用エディタとは大きく異なり、編集を終えた今でも挙動を把握しきれていませんが、どうにか「本」の体裁を取れたようなのでほっとしています。


2012年12月
GOIGOI

11月10日 
制作開始

6-7年の間放っておいたブライヤーのエボーション(小さめにカットされた原木)がいくつかあったので、その中でごく一般的な形状のパイプに向いた木目のものを選びました。
側面に大体の形を描いてバンドソー(帯鋸)を入れます。

反対側から見たところです。こちら側には何も描いてありません。
実際に削り出そうとしているパイプは、ブライヤーの塊の中で左右方向に傾いて斜めになった状態だからです。この傾きが無く、プライヤーを机に置いた状態でxyz軸が出るのであれば、相当楽ができます。
ここらは余計な部分が残っている限り錯視的に影響してきますので、実際に切り落とすまでは補助線などを描き込んで垂直を意識するようにしてあります。

要らない部分を取り除いた上で、早速煙道と呼ばれる穴を開ける作業に入ります。
4mmのドリルで火皿底部の真ん中よりほんの少し手前まで入れたところです。奥に行過ぎないよう、ドリルには目印となるビニールテープを巻いています。
今回は「ベント」タイプと呼ばれる、マウスピースが斜めに刺さる形を作るため手前の円の中心ではなく、少し下からドリルを入れています。
火皿上部の穴はドリルを当てただけで、まだ掘り進んでいません。

せっかく撮影したので、少し違う角度からも。
写真では見づらいですが、右側面にドリルを入れる角度を描いてあります。この線と手前の面に描いた十字の中心線を頼りに垂直にドリルを入れます。毎回感じるのですが、人間の目は左右の真ん中を見定めることはうまくとも上下の真ん中はそれほどでもないようです。ブレが出るとすれば、まず上下方向です。
言い換えれば、どうしても上下に狂いを出したくない場合は90度傾けて作業すればよいというわけです。左右は多少狂うかもしれませんけど、そこは気合で。

火皿の下穴を開けます。
最終的には直径18-20mmの穴にする予定なので、12mmのドリルでぐいぐい広げながら先ほど煙道を通した終端を目指します。
電動ドリル本体が大きいので真後ろからはドリル刃が見えず、火皿底へと狙いをつけても角度を一定に保つことができません。全部をいきなり開けることはせず、側面に描いておいた2本の線を確認しながら進めます。

ここでも目安となるテープを巻いてあります。煙道よりも僅かにであれ下まで掘ってしまうと、もうその時点でまともなパイプにはなりませんので。
それでも、煙道を開ける時に比べれば火皿の直径18mmほどに対して12mmのドリルで開けているため、周囲に余裕があります。多少のずれを修正しつつ進められ、気持ちにも余裕が持てます。

だいぶ掘り進みました。
底(にあるはず)の煙道に接しようというくらいのところです。ここからは少し掘っては確認し、確認したら掘って、の繰り返しです。
火皿の側面と前面(写真では左側)に書いた補助線の通りに進めれば理屈上はピタリと合うはずです。

煙道を照らすと、底に明かりが見えてきましたよ。ど真ん中ですね。

上の写真は火皿上部にピントが合っていたので、改めて底部に合わせてみました。
どうやら掘り過ぎることもなく無事に火皿を作れそうです。

11月11日 
ダボ穴開けと火皿の拡張

制作2日目にて早くも写真を撮影するのを忘れるという失態。激しく後悔しています。
作業がはかどっていると撮影する区切りができませんね。
ダボ穴は直径11mm、深さは12mmにしました。

ダボ穴が見える角度からの写真です。周囲の端材は実際に切り落とした箇所の周囲に配置しています。
ダボを開ける際の注意はできるだけ水平に近い状態にした端面にドリルを落とすこと。ボール盤の万力の大きさからくる制限でどうしても斜めになる場合は、少し大きめのエンドミルなどで部分的に平面を作っておくのもよいかもしれません。
ダボ穴下部が煙道の端でえぐれていますが、これは端面を平らにする過程で消える予定です。このために11mm狙いのところを12mmの深さにしておきました。

上部に描いた円に近づくように、電動ドリル用の回転ヤスリとハンドルーターで火皿を広げてゆきます。
この時点で16-17mmになっています。
煙道が角などの違和感無く消えるような形状に火皿底の丸みを整えておきます。

今週末の作業はこの辺りまでです。
切り出したり穴をあけたり、変化が分かりやすい作業でしたのでそこそこ見栄えもするのですが、この後には地味な作業が続く予定です。

11月12日 
端面を平面に整える

ダボが収まり、飾り材が嵌まる部位にあたる端面を平らにします。
写真のように、現在は11mmのダボを切ったエボナイトを差し込んで擦り合わせると一部だけが光ります。

平らな面に広げた紙やすりを使って、ダボの向きに対する直角を出してゆきます。
以前は平らな面を持つ台を持っていたのですが、引越しにより失われました。この「平らな面」というのが身の回りにあまり存在しません。どれも少し歪んでいます。
臨時の策として、現在はボール盤のベース部分を利用しています。

作業自体は難しいものではありません。ブライヤーを掴む自分の指のどちらにより力がかかりやすいかの癖を理解して、より多く削れるほうをより多く削りたい側に合わせておくだけです。
根気よくやっていると上の写真のように全体が同じような光りかたになります。
これで端面の平面出しは完了です。

ようやくボウル部分を削る作業に入ります。鋸ヤスリと呼ばれる、釘の頭すら一緒に削ってゆけるヤスリでゴリゴリと角を落としてゆきます。
削りすぎるとキズが出てきた時に逃げられなくて困ることになるので、肉厚は多少残しておきます。

本日の作業はここまでです。
次はボウル部を削る過程を数日分まとめて載せる予定ですので、3-4日後になると思います。

11月13日 
ボウル部の切削を開始

昨日の最後に削り始めたボウル(火皿を含む部分)は、四隅をガリガリッと削って上の写真のようになっています。
これをパイプっぽい形になるまで根気よく削ってゆきます。

左側はこんな感じです。ボウル上部に十字の中心線を入れてありますが、そこから伸びる線をボウル底部まで描いています。写真だと淡くて分かりにくいですね。

ボウル上部の縁を削りこんでみました。まだ側面にはブライヤーの断面が残っています。

前のページ下段のものを角度を変えて撮影しました。ボウル手前はガタガタですね。シャンク(マウスピースへと続く煙道の外側部分)側面に小さなキズが見えます。

上から。火皿とボウルの外周はそこそこの円さを保っているようです。メーカー製のパイプだと旋盤を使ってボウルを削り出すので真円が出るのですが。

本日はここで終了しました。

11月14日 
シャンクを削る 1

火皿からマウスピースへ向かう部分を「シャンク」と呼びます。
本日はまだぼってりとしているこの部分を削ってゆきます。

中心線を入れておき、歪みが出ないように削ってゆきます。ダボに嵌めているエボナイトが目標とする直径の16mmに作ってありますので、同じ太さを目指します。
16mmのシャンクはかなり太めのものなので、マウスピース接合部に角度をつけるこの形でもシャンク根元で煙道を掘り当てる心配はありません。本気で薄くする場合は煙道までの厚さ2mmくらいまでは攻め込みます。

右側根元にキズが出てますね。この部分は何故かキズが出やすい部分です。未だに理由はわかりません。

11月15日 
シャンクを削る 2

昨日のシャンク削りの続きです。

だいぶ形状が整ってきました。右根元にあったキズは削り落とすことができました。掘れば掘るほど大きくなるキズもあるので、ヒヤヒヤします。

左側を写すとブライヤーエボーションを購入してきた時点での一番外側にあたる部分が残っており、ボウル部分に削っていない箇所が残っているのが分かります。
中心線は手で握っているうちに消えてくるので、何度も描き直しています。数本の線が左右対象に作れるかどうかの手がかりなので、失わないようにしないといけません。

嵌めてあるエボナイトを外してみるとこんな感じです。シャンクの木目も接合部の断面に合うような流れになっていますね。いい感じです。

本日はこの辺りで終了です。
仕事を終えて帰宅してからのんびりと作業を進めています。実際に作業できるのは21時から0時前くらいまででしょうか。

11月16日 
ブライヤー部の整形

ボウル部分を完成形に近いところまで整えてゆきます。
ヤスリで直接削るのはこの段階が最後になる予定です。
ボウル左側中央付近にキズが出ていますね。

こういったクラシカルな形状のパイプで大事なのは、シャンク根元とボウル部分の接合部がはっきりと区別できるようになりつつもボウル部が丸みを帯びて「ぷっくり」としているかどうかだと思っています。より立体的になるとでも言えばいいのかも知れません。

ボウル左側の真ん中付近にキズが出てきました。
形が崩れない程度に削り込んで消せればよいのですが。

ボウル上部から見ながら真円に近い状態になるように整えてゆきます。シャンクも余分な肉を削り、直径16mm+αを保つようにしておきます。

写真には写っていないですがボウル左側のキズは消すことができました。形はこんな具合でよさそうですね。
細かい調整は紙やすりで行いますので、ボウル部分はこれで一段落です。
明日からは別の作業に入ります。

11月17日 
飾り材の準備

マウスピースとエボナイトの間にアクリル製の飾りを入れることにします。
使う分をブロックから切り出したところです。

周囲を実際に使う部分に近くなるように切って、円形に近づけます。
その後旋盤に設置し、端面削りをしているところです。
続いてセンタードリルで中心を出してから、6.5mm、8mm、11mmと徐々に大きなドリルに変えて穴を広げます。あくまでも非力なミニ旋盤なので、いきなり大きなドリルで穴を開けようとすると失敗しかねません。

もう製造していない旋盤(KS-200)なので、大事に使いたいものです。うーん2面刃物台欲しいですね…。

先ほど端面を削ったのと逆側の面も切削してゆきます。
周囲を18.50mmまで削り、後ほど紙やすりをかける際の遊びを残しておきます。切削の際に表面の仕上がりを気にしなくてよいので気楽なものです。使っているのは荒削り用のバイト(旋盤で使う刃物)です。
段々とリングっぽくなってきましたね。

マウスピースが当たる部分を掘り下げます。内径は16.05mmにしました。ここに15.90mmくらいのマウスピースを入れる予定です。
中ぐりバイトを使わないのは、アクリルが欠けやすい素材であり角を作りたくないためです。手っ取り早く先の丸い右片刃で済ませています。
一連の作業は3つ爪チャックにリング外周を咥えさせたくないので、11.04mmに切ったダボ付きのヤトイを端材のエボナイトを用いて作成し、最初に削った面を合わせるように嵌合しています。

飾り用のパーツが出来上がりました。今回は交換用マウスピースを作りやすい接合形式を選びました。
この先アクリル素材を試したり黒色エボナイトを使ったり、内部構造や全体の長さを変えてみたりと、マウスピースを複数作ることになるかもしれません。それぞれ煙の味が異なるからです。

本日はここで終了し、次は接続部分のダボを作成する予定です。

11月18日 
ダボを切る 1

外側に飾り材を把持し、内側にはマウスピース用のダボ穴を持つダボを切ります。
ブライヤーを旋盤で加工してゆきます。
中心の穴はドリルで7mmを開け、外側はバイトで切って11.00mmを目指します。

最初に角材のような状態で断続的にバイトの刃に当たるのが気になりますが、一旦円周を得てしまえば少しずつのんびりと細くしてゆけばよいだけです。写真では超硬バイトですが、綺麗に円になるまではハイスバイトのほうが欠ける心配も無くてよいかもしれません。
しかしそこは「木」ですから、右片刃でぐいぐい削ります。エボナイトに比べれば軟らかいものです。
11.00mmまで進めて、今夜の作業は終了しました。

11月19日 
ダボを切る 2

ダボ先端をドリルの先端の傾斜に合わせておきます。
写真で使っているのはブライヤーにドリルで穴を開けて半分に切っただけのものです。
こんなものでも作っておくととても役に立ちます。

最後に、使う部分を突っ切ります。相手が木でも突っ切るのは緊張しますね。
ころん、とダボが落ちたら出来上がりです。全長は17.2mmです。実際に使うのは15mmくらいですが。
忘れないうちに余分なバリを取り除いておきます。

ダボを突っ切った後の「ヘタ」と呼ばれる部分も、それなりに使える道具へと加工しておきます。
直径15.60mmにしておきました。マウスピースの接合部に紙やすりをかけるのに用います。

これでボウル部分のパーツは揃ったので、次はマウスピースを準備することにします。

11月21日 
マウスピースの準備 1

マウスピースを作る準備を開始します。今回はカンバーランドと呼ばれる茶色いマーブル模様の丸棒素材を使います。
ダボ部分の長さを考慮して76mmを用意しました。旋盤に咥えさせる部分の加工もしておきます。

大まかにダボ部分の目安を切り出したところで、3.1mmのドリルで煙道を開けます。
その後、この3.1mmの穴に予め3mmのロングドリルを入れておき、ドリルチャックに咥えさせます。これでより奥まで掘り進められます。芯押軸のダイヤルを回しきったら、軸を戻して芯押台自体を手で押して進めます。
貫通する13mm手前で止めました。
芯間が短いのはミニ旋盤の宿命ですね。かといって大きなものは部屋を圧迫してしまうのと、今後も引っ越しをする可能性があることから選べません。

1.5mmのロングドリルで貫通させます。
これで穴開けは完了です。ダボ切りに戻ります。

直径7.05mmを目指して切ってゆきます。超硬バイトでグイグイと落としてます。
ダボの長さは14mmにしました。

7.40mmを下回った辺りで、ダイヤモンドバイトに取り替えました。少しずつ7.05mmに近づけます。
ダボの根元のRを作り、端面も切って、煙道入り口も加工しておきます。

今現在のパイプ用パーツです。マウスピース側の接合部は直径15.90mmに加工しておきました。丸棒のままなので、次回からはこれを削る作業に入ります。
本日はここで終了…する前に…

旋盤の清掃が待っています。
今回の制作では旋盤の利用は(どこかで失敗しない限り)これ以上無いはずです。
個人的には結構楽しい作業で、時折無意味に分解清掃したくなります。
綺麗になったら埃を被らぬよう覆いをかけて次回の作業に備えます。

11月22日 
マウスピースの準備 2

前回は貫通穴を開けただけでしたので、吸口の穴を横に広げておきます。1.7mm径のドリルを使っています。
折れた時の予備を買ってきました。手持ちが1本でしたので、この作業が本日に回ってしまったわけです。

えいやぁ!、と煙の出口を広げたところです。ドリルを折ることもなく済ませることができました。こんなことならこの作業だけのために1日延ばさなくてもよかったかもしれません。
でも、たまたま手元に1本しか無い細いドリルで作業をしていて折ってしまうと…。
マウスピースのダボには保護用&握りの延長用として木材を嵌めています。せっかく綺麗に切った端面を傷つけてしまうとがっかりですので。
本日は帰宅が遅かったので、この作業だけで終了です。

11月23日 
マウスピース切削 1

本日からマウスピースを削る作業に入ります。
木の部位と材質が異なるとはいえ、ヤスリで削って形を整える過程はそれほど違いがありません。

マウスピースを削り始める前に、バンドソーで余分な箇所を落とします。
本体だけでは短かすぎるので、少し延長させるための木材をダボにはめておきます。
これにはダボ・接合面・接合面の縁を保護する役目もあります。
切り落とす箇所はダーマトグラフで大まかに目印をつけておきました。

両手で把持して切ってゆきます。
片方を落とした後は先端に指を掛ける余裕がほぼ無くなり、刃から1-2mmのところを指が通過することになります。結構怖い作業です。
無事に上下両面を切り落としました。

端面に吸口の形を描き、直径の両端の目印を側面にも記しておきます。ここでは鉛筆で描いているので少し見づらくなってしまっています。
歯で噛む部分(ビット)は厚さ4mmまで削り込んでゆく予定なので、単純計算で…
 (4mm-煙道拡大時のドリル1.7mm)/2 = 1.15mm
が上下両側に残ることになります。
うっかり煙道を掘り当てたら大変です。マウスピースを新規に準備しなおさねばならなくなります。

平面を削るのは大変なので、その都度角を削り、それによってできた角をまた削る…という具合に作業します。
吸口周辺を一気に削り、その周囲の角を無くすように削ってゆきます。

大雑把な形状ですが、ゆくゆくはマウスピースになるだろうという形状にはなってきました。
本日はここまでにして明日に続きます。

11月24日 
マウスピース切削 2

マウスピースの横幅が吸口から接合部まで平行に通っているというものは、大型のパイプか狙っての場合以外、私はあまり作りません。
吸口で広がるような形に両側を削り込んでおきます。中心線を描くのも忘れません。

少しずつ整形してゆきます。
マウスピースを嵌めているのは、かつて作ったパイプの端材で鉤形をしているものを選んで先端に7mmの穴を開けたものです。力を入れて削るのに持ち手が中途半端だとやっていられません。各種サイズの穴を開けたものを用意して使っています。
廃材も使いようによっては便利に機能するので、「いつか使えるかも」と様々な大きさの端材が溜まってゆくことになります。なかなか捨てられないので困ります。

咥える時に歯が当たる部分(ビット)の厚みが4.95mmになりました。ここが薄くなってくるとマウスピース全体が整って見えてきます。
手前の膨らみの部位(リップ)を整形していないため結構薄くなっているように錯覚しますが、まだ上下それぞれ1.5mm削っても煙道を掘り当てない計算です(そこまで削りませんが)。

旋盤で真円を出しておいた接合部付近に貼ったテープを減らしつつ、段差を無くして吸口から接合部までのラインを通してゆきます。
ビニールテープを貼っている間はマウスピース全体を見られないため、なかなか長さを把握できません。横に転がっているブライヤー部分と並べても、まだパイプ全体をすんなりと想像できない段階です。
この作業が進むにつれて、ようやく全体像がくっきりとしてきます。

段差は無くなってきたものの、接合部付近がまだ綺麗なテーパーになっていません。
接合部で円にするとはいえ上から見て吸口は横に広がりますので、少しでも接合部から離れた箇所では上下は削って漸次減少させ、左右は最初平行でビットに近い辺りで削る量を減らして広げてゆきます。
荒目のヤスリを使っているため深く傷つけてしまうと修正がききませんので、ほどほどにしておきます。
現在、ビット部の厚みは4.85mmになっています。
本日はここで終了しました。

11月25日 
マウスピース切削 3

本日は実際に咥えることになる吸口部分の厚みを攻めてゆきます。
現在のところ4.85mmです。

幾らか削り込んで4.65mmにしました。
これくらい、もしくはそれ以上の厚みで販売されているパイプもありますが、0.1mm薄くなればその変化をはっきりと認識できるほどに人間の口元の感覚は鋭敏です。
どうせなら使っていて疲れないものを作りましょう。
実際に計測する箇所は先端の膨らみの根元ではなく、そこから1mmくらい離れたところを計ります。歯には厚みがあるためです。

ヤスリを細目のものに持ち替えて、荒目のヤスリの痕を消してゆきます。
接合部付近のラインも整えてゆき、紙やすりをかける前の段階まで持ってゆきます。
先端の膨らみ(リップ)の厚みも調整し、歯が当たる部位の厚みも減らします。写真では4.25mmまで削ったところです。紙やすりをかけるうちに丁度良い厚みになる範囲に入りました。
しかしその前に、リップの形状を整える作業が残っています。

マウスピースに紙やすりをかける前の最後の段階として、リップを調節して最終的な形へと整えます。
現在は上の写真のようになっています。端面から見ると楕円形で、上下とも煙道に対して平行に削られており、左右は元々18mmだった丸棒の端です。パイプは咥えるだけでなく、手で持って唇に当てて使う場合も多いので、端面に向かう多少の傾斜も付けてゆきます。

私の場合、削った後はこのような具合になります。
この部分を削って整えることで途端に完成へと近づいたように錯覚してしまいますが、実際のところはまだまだ先です。
ここは作る人によって形が異なっていて面白い箇所です。様々なメーカーや作家のパイプをお店で見る機会がありましたらとっかえひっかえ眺めてみてください。膨らみが平行なのかカーブしているか、厚さ、奥行き、両側の端が丸みを帯びているか線に収斂しているか、様々です。

仕上げとして、ドリルで広げておいた煙の出口がガタガタなので均してやります。
これでマウスピースの形が概ね整いました。明日の作業では紙やすりをかけてゆきます。

ここ数日というもの、肝心のブライヤー部分を見かけませんが、実はマウスピース切削作業の間は乾燥箱に放り込んであります。作業台に置いておいても落としたりヤスリが当たることもありますので、避難させておくのが一番です。

11月26日 
マウスピース切削 4

昨日まで形を作っていましたが、本日は表面を整えます。
バフ磨きの手前まで行い、ヤスリ痕を残さないのが目的です。
使う紙やすりは3種類。400、800、1200番です。

まず400番で全体を削り、直前の細目ヤスリの痕が無くなるまで進めてゆきます。
1方向だけでなく縦横双方に動かすことで、確実に消してゆきます。
ここで使う紙やすりの組み合わせでは細目ヤスリの痕は400番でしか消せませんし、続く400番の痕は1200番では消せず800番で消すしかありません。

咥える部分の近くは立体的な構造になっているため、マウスピース本体に沿った方向に動かしにくいのですが、こまめに削っておくと後々の2度手間を防げます。
写真ではまだ作業していませんが、リップ部分にもかけてゆきます。そしてうっかり忘れがちですが、端面にももちろん手を入れます。

カメラを寄せてみると…まだ痕が残ってますね。

ちまちまと削ってから、マウスピース接合部付近も入念に削ります。アルコールを1滴たらしてみました。完成時にはこういった艶が出ているはずです。

続いて800番で同様に削ってゆきます。やることは400番と同じです。満遍なくかけてゆきます。
直前の400番の痕だけが残っているはずなので、それらを落としてゆき、次の1200番につなげます。
この番手では最初のヤスリ痕は大きすぎて落とせません。残っていたらやり直しです。

1200番はほとんどオマケみたいなものですが、800番で削りきれていなかった痕を見つけられます。うーん、400番の痕が残ってますね。
…やり直しです。
800番をかけなおします。

再度800番をかけてから1200番でなでてみると、今度は大丈夫なようです。
マウスピースについてはこの後に「曲げ」と「バフ磨き」が待っていますが、曲げる作業はブライヤー部に接合した状態で全体の形を見ながら行いたいので、接合先ができていない段階では見送るしかありません。

明日からはブライヤー部分をいじる作業に戻ります。

11月27日 
木部の紙やすりがけ

中目のヤスリで軽く形を整えてから紙やすりをかける作業に入ります。
表面の凹凸を気にしつつ気長に作業をします。
どれくらい「気長に」かと言うと…

この写真はボウル部分に対して斜め上から照明を当てたものです。影のでき方が綺麗な弧を描いていないのが分かると思います。これが歪みです。
どこから光を当ててもいびつな影ができないようにしてゆきます。…とまぁ、このくらい気長に行います。
プロのパイプ作家さんやパイプメーカーさんは軟らかい円盤に紙やすりを貼り付けたものを用いるそうですが、私はそのような道具を持っていません。全ての形をヤスリと紙やすりで作ります。

だいぶ滑らかになってきました。
ヤスリ痕が滑らかになるかだけでなく、2cm四方ほどを1度に見た時の滑らかさも見ておきます。面ではなく点だけで見たところで、判断を狂わされるだけです。
ここではまだシャンクに手を付けていません。

シャンクにも紙やすりをかけたところです。
この際ここには写っていませんが、シャンクの端に嵌めるリングも一緒に削っておきます。ダボを数mmの深さで軽く嵌めた上でリングを通して作業します。
リングよりもダボの接着の方が順序としては先なので、削り終えたら鉛筆で目印を付けておいてリングを外します。次回リングを嵌める時には目印に合わせれば済みます。

本日はここまでで終了し、明日のダボ接着に備えます。

11月28日 
ダボと飾り材の接着

ボウル部分を作り上げるパーツを接着し、まとめ上げます。
接着には2剤混合型のエポキシ系接着剤を利用しています。接着後の「粘り」を考えると、この用途では5分硬化型は選ばない方が無難です(経験済み)。

以前用意しておいたダボを接着します。
この際にしっかり奥まで押し込まねばなりません。とはいっても、素材はブライヤーなので変な押し方をすると割れたり折れたりしてこれを外す作業が発生します。しかも接着剤は徐々に硬化してゆきます(経験済み)。

パイプの横にあるのは端材で作った先端5.7mmダボを持つ押し込み用具で、ブライヤーダボを面で押せます。内径7mmに対してなら根元のRも問題なく収まります。写真は無事に押し込めたところです。

接着するボウル部の11mmダボ穴と飾り材リングの11mmの穴の、それぞれの接着面の穴の縁を僅かに削り取ります。
ここが僅かに膨らんだだけで、接着面には隙間ができてしまうからです。
写真では回転ヤスリを使っていますが、何を使っても構いません。穴よりも大きなドリルを軽く当てて手で回すだけでも縁を削るには十分だと思います。

さぁ、接着しました。
目印のためにつけておいた鉛筆の線を合わせ、これがずれないようにぐぐっと押すと余分な接着剤が溢れてきます。マスキングしておくのも手ですが、このあとさらに紙やすりをかける予定なので端折りました。
溢れた接着剤はすぐにふき取らず、少しおいてから剥がします。

上の写真や、前頁にもあるように、実際に使った混合済みの接着剤をヘラにとっておき、放置しておくパイプと同じ場所(=同じ室温)に置いておきます。
今の時期は結構冷えるのでエポキシ系接着剤の硬化が遅くなりすぎます。缶に入れて最悪のアクシデント(家人or猫、その他落下物、いずれも経験済み)から遠ざけた上で暖かい場所に置いておきます。
飾り材と一緒につけているのは、飾り材ごと押すための11mm穴を開けたエボナイト端材です。

時々ヘラの先の接着剤を指で触ってみて、指に付いてこないくらいになればOK。ただし、硬くなりすぎてもいけません。「グニッ」としているのが良いのです。
この状態になるまでの時間は、使用した接着剤の硬化時間がどのタイプなのかによります。
この状態でどこか1箇所を針で突いて剥がすと、残りは上の写真のように「ペロ~ン」と1周させて剥くことができます。剥がした箇所が少し変色していますが、これはより細かい番手の紙やすりをかける時に落とします。
本日の作業はここで終了です。

11月29日 
パイプの組み上げ

前回飾り材を入れたので、ダボ部分が出っ張っています。
あと、ボウルトップは何も触っていませんでしたので、こちらもこの段階で削っておきます。

ハンドルーターでギリギリのところまで削ってゆきます。
今回は飾り材の縁が盛り上がっているので、この縁を削らないようにしないといけません。また、ダボ部分を削りすぎると「面」で掘り下げねばならなくなり、かなり面倒な作業が追加されることになります。絶対に避けたいところです。
無理に機械で削り落とすよりは、余裕があるくらいのところで手作業に移るほうが安全です。

ダボを作成した時に「ヘタ」を使って作成しておいた補助具の先に紙やすりを貼り付け、マウスピース接合面に当ててコリコリと均してゆきます。

しばらく削って、さらに細かい目の紙やすりをかけてゆくと…面一になりました。このままだとマウスピースのダボの根元にあるRが邪魔になって奥まで入らないため、Rを逃がす部分をブライヤーダボの入り口に作っておきます。

「ボウルトップをいじろうかなぁ」と思いましたが、誘惑に負けてマウスピースを嵌めてみることにしました。長さのバランスはよさそうですね。
専用のワックスも存在しますが、私は汎用的にロウソクです。震災後の計画停電に備えていたものから引っ張り出してきました。
ダボに塗りつけて5回くらいに分けて徐々に奥まで入れます。蝋が塗りつけられていない状態で回すとダボ表面が摩擦熱でざらざらになり、がっちり喰い込みます。力一杯回して折ってしまうお決まりのコースです。

マウスピースの曲げる部分周辺をアルコールランプでゆっくりと熱してゆきます。あまり近づけると「ジュジュッ」と音がして気泡ができるので注意。奥まで削りこむ作業が追加されます(経験済み)。

グニグニと曲げられるようになったら、狙った角度まで曲げてすぐに冷やします。熱を持っている間は元に戻ろうとするのでじっと押さえておきます。

寄り道をしましたが、当初の目的であるボウルトップの加工も行います。機械を使わずに綺麗な円にするのはそこそこ面倒なのですが、専用の道具を作っておくのも手です。
写真ではシャンクの上側に黒い点がポツンと写っていますが、これは玉杢の箇所に出てくるタイプのキズの1つで俗に「玉抜け」と呼ばれているものです。完全には抜けていないのでパテで埋めておきました。制作中断ということにならずに済んで、ほっとしています。

全体の形が出来上がりました。実物はもう少しボウル部分が細いように思うのですが、カメラの腕が悪いからだと思います。

写真両端にゆくほど伸びてるように感じます。ズームしながらマクロ撮影というのは向いてないのかもしれません。撮影の方法を考えないと。

全体の形は整えましたので、次回は着色作業に移ります。

11月30日 
着色と磨き

着色作業に入ろうかと思ったものの、4年間放置されていた染料は写真のように乾燥しきっていました。
瓶を洗って新しい染料を作りました。今回使うのは焦げ茶色と黄色ですが、ついでに黒や茶色も作っておきます。

私は焦げ茶色を木目出しに使うことが多いです。黒だときつすぎる場合が多いので。
特に今回はマウスピースが茶色のマーブル模様になっているため、多少軽めの色合いにしておきたかったのもあります。
そこそこの濃さの染料をブライヤー部分に数回塗ってゆきます。
焦げ茶とはいえ、こうやると真っ黒になりますね。

染料が乾いたら、次は落とせるところまで落としてゆきます。
いきなり紙やすりで削ってもよいのですが、元々アルコール染料なので、ティッシュペーパーにアルコールを含ませて拭いています。大半はこれで落とせます。
アルコールはどんどん気化しますから、この時期には指先が冷たくなりますね

ここから細かい目の紙やすりで削ってゆきます。目安は木目が焦げ茶で出つつも木目以外の部分に別の色の染料をのせられるくらいの濃さになるまで、です。

木目出し前の最後の紙やすりの痕が残っていないように目を凝らして、さらに1200番以上の細かいもので磨き…、大体こんなところでしょうか。

あまり濃くはしたくないのとリングが黄色だということから、黄色の染料を上に薄く被せることにしました。

大目のアルコールで溶いて、淡い染料液を作ります。
色を決めるのに濃い染料を使うことはまずありません。
既に液体の状態で売られているものを使う場合も、私は薄めてから使います。

パイプの煙道を掃除する時に使うモールを用いて全体に薄く塗ってゆきます。
何度も塗ってゆき、好みの濃さになるまで続けます。濃い液を1回で塗ろうとすると調整が効きませんのでこの方法を取ります。

表面が黄色く包まれているのですが…、カメラの腕が悪く伝わりませんね。ホワイトバランスの調整は難しいです。

ブライヤー部の着色は一段落しましたので、マウスピースの磨きを行います。
まずは荒目の研磨剤を塗りつけたバフで全体を磨きます。
今回のパイプではマウスピース接合部に段差があり、なおかつ接合部が0.4mmほどめり込む形にしてありますので、マウスピースを外して単体で磨き作業を行っています。シャンクとマウスピースの接合部が面一になる繋ぎ方の場合は一緒に磨きます。
作業はいわゆる「赤棒(荒)」→「白棒(並)」→「白棒(細)」の順に進めます。

まず荒い研磨を終えました。光ってきてはいますが、幾分くすんでいます。

続いて白棒を使っての研磨をしたところです。ツヤツヤになってきました。実際、これで十分という人も多いです。

最後に細かい研磨剤で磨きます。これで周囲が映り込むくらいの表面になります。

続いてブライヤー部分の磨きに移ります。カルナバ蝋を使います。専用のバフに付け替えて蝋を染み込ませてゆきます。
バフはそれぞれの研磨剤・ワックスで使い分けており、その都度外して交換しています。

しっかりとパイプを持ってバフに押し付けます。中途半端な持ち方だとバフにパイプを持ってゆかれます(経験済み)。思いのほか強いものです。
最悪のシナリオとしては、モーターの土台の角に当たってブライヤー部陥没&壁まで飛んで当たり所が悪くマウスピースダボが折れる&キズ多数、といったところでしょうか。そうなると修復は…可能ではありますが、それ以前に心が折れていると思います。

全体にカルナバ蝋による磨きを済ませて、やわらかい布で拭いて余分な蝋を落とします。
色々と写真を撮影してみたのですが、難しいですね。色合いはもちろん、写真にすると若干の歪みが出ます。
あれこれいじっているうちに、ズームマクロがいけないように思えてきました。
マクロをやめ、少し離したところからズームにしておき、光が少ない状態でフォーカスを合わせ、タイマーでシャッターを切るまでに照明を1つ追加すると、私の眼に映るパイプと似たものが撮影できました。

ブライヤーを切り出した際に出た端材がまだ作業机の上に放置されていましたので、パズルのように組み合わせてみました。

鋏を使う紙切りの芸で、お題通りに切り抜かれた紙の残りを「B面」と称して頂けたりしますが、このB面は使いようがありませんね。

これで「ほぼ」完成ですが、まだ作業が残っています。

12月 1日 
仕上げの作業

最後に、火皿を仕上げます。粗めの紙やすりで火皿内部を均一にしてゆきます。
ボウルトップを傷つけないように、紙やすりの大きさは中に収まる程度に切っておきます。

内側が綺麗になったら「保護剤」を塗る作業に入ります。
これを塗ることで、木材であるパイプが焦げないよう保護するカーボン層ができてくるのを早めます。メーカーによって素材そのものや色が異なり、蜜蝋を塗っているものもあります。また、何も塗っていない木地むき出しのものもあります。使う側も、そのまま使う人、塗られているものをわざわざ剥がして地肌を出して使う人、自分の用意した保護剤を塗る人、様々です。

手製の糊を用意して、保護剤を混ぜてゆきます。
私がパイプを制作する中で、唯一水を使う工程です。

結構な量を入れます。最初はとろとろだった糊がシャリシャリという音を立て始めるくらいまで混ぜ込んでゆきます。
時折、端材に塗って濃度を確認します。今回はこんなに作る必要なかったですね。

火皿の内側にヘラで軽く塗った後、指を入れて延ばしてゆきます。
側面は簡単なのですが、火皿底部は少々やりにくいです。煙道に入り込まないようにするのと、底部に一定の厚みをもたせて塗るのが難しいです。塗ろうとする部分の反対側に触れぬよう、細い指で作業します。私の場合はこのパイプでは薬指が丁度良かったですね。
塗り終えたら表面が乾くまで放置です。

保護剤が乾いたところで、重量測定です。
各種サイズは以下のようになっています。
   全長:121mm
   重量:35g
   ボウル部直径:35mm
   ボウル部高さ:43mm
   火皿上部直径:18.6mm
   火皿深さ:32mm

相変わらず1本仕上げるのに時間をかけ過ぎですが、これでフルストレートグレイン(全面柾目)のパイプの完成です。
ただし、保護剤を塗った際の水分が完全に抜けるまではまだ時間がかかります。他の原木を入れている乾燥箱に一緒に放り込んで2週間ほど置いておけば乾くでしょう。
誰かに見てもらうのであれば未使用の状態のほうがよいので、使うのはまだ先になると思います。
今夜はこのパイプを箱から引っ張り出して、にやにやと眺めながらお酒を楽しむとしましょう。

付録1 
完成パイプ写真

付録2 
パイプのキズについて



古くからパイプに関しての書籍には綺麗なパイプの写真が数多く掲載されています。

しかしブライヤーが天然植物の根である以上は小さな石を巻き込んでいたり、成長の過程で空洞ができてしまうことになり、キズを避けての制作は考えられません。私が遭遇した最大のキズは石の巻き込みで、パチンコ玉くらいのものが出てきました。
ごくまれに制作の途中で1度もキズが出てこないことがありますが、数多くこなすプロの作家さんでもなかなか経験できないものだそうです。

そこで今回は、綺麗に仕上げることができたパイプの写真を掲載して終わりということにはせず、最終的に消すことができなかったキズを、これ以上はできないくらいに大きく掲載することにします。
「キズってどんなもの?」と思う方も多いと思いますので。

シャンク左側に出ているキズです。そこそこの大きさでしたが、ここまで削り落とせました。上-中-下と楕円形に配置されているうち、上と中は内部で繋がっています。パテを染み込ませるように流し込んで固めています。
ボウルの左側、シャンク根元上部に出ているキズです。このタイプのキズは木目が渦を巻くところに出てきます。これ以上削ると楔型に剥離するので寸止めにしています。内部で広がってはいますが、奥深くには続かないタイプなのでパテ埋めを施しています。
こちらも渦を巻くところに出るキズです。シンプルな出方をしていますね。パテ埋め。どのキズももっと削り込めば消せますが、形が崩れることを考えるとこれ以上削るのは無理です。
小さなクラックの名残です。深くまで入ることが多いタイプのキズですが、あとは消えるだけというところまで削り込みました。シャンク下側のカーブが損なわれるのでこれ以上は削れません。パテ埋め。
今回一番危険だったキズ、シャンク上側の玉抜けです。深い場合は10mmくらい奥まで芯の周りが軟らかい樹皮(?)のようなものに包まれています。今回は浅かったのでパテを流し込んで補修完了。

あとがき

4年ぶりにパイプを仕上げました。長いブランクでした。
不満な点もいくつかあるのですが、今回のパイプは他人に見せられる程度のものにはなっているようです。
クラシックシェープなので、フリーハンドを好む人には詰まらないものに映るようですが、左右対称と真円を手作業で出す練習にはこれが一番です。キズの大きさがそれほどでもなかったのは不幸中の幸いというものでしょう。
完成直後、数多くのパイプ制作を手がけてきた方々に見ていただく機会にも恵まれ、及第点を頂きました。

このbcckを作成するにあたって写真を多用しました。bcckは「本文」「見出し」「写真」「改頁」などのパネルを組み合わせて作ってゆきます。この上限が320個までと決まっているため、これを超えてしまうとそれ以上編集できません。
そして、今ここで記述している「本文パネル」が320個目のパネルです。まさかこんなにあっさりと上限に達してしまうとは思いませんでした。
「総ページ数」も気になるところです。というのも、BCCKSというサービスがWeb限定のものでなく物理的な「紙の本」への視野も持っているためです。

撮影に使用したカメラはRICOH R8です。

紙の本にすると総ページ数は製本時の「折り」の都合で32の倍数になり、そこから外れた分の白紙ページが発生してしまいます。このbcckを紙の本のページ数ぴったりにするにはどうすればいいかな…ゴニョゴニョ

制作中から公開していたこのbcckを読んでくださっていた皆さん、ありがとうございます。これからという方も気が向いたら「書評」機能でコメントをいただけると嬉しいです。
ではでは、いつか別のbcckで。編集が大変なので写真だけのbcckになるかもしれませんが。
GOIGOI

パイプ制作リハビリ中 #1201

2012年11月11日 発行 初版

著  者:GOIGOI
発  行:GOIGOI出版

bb_B_00110239
bcck: http://bccks.jp/bcck/00110239/info
user: http://bccks.jp/user/10137
format:#002y

Powered by BCCKS

株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp

jacket