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茶屋町クラブ 創刊号

茶屋町CLUB

茶屋町CLUB出版



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 目 次

茶屋町クラブ開店

年間BESTアルバム  峯 大貴

年間BESTアルバム  杢谷 栄里

年間BESTアルバム  瀬田 サトシ

クロスレビュー
『ぱみゅぱみゅレボリューション』きゃりーぱみゅぱみゅ

『Lex Hives』The Hives

『午後の天気』吉田拓郎

峯大貴の音楽的自己分析

音楽、それはみんなが楽しめる魔法~2012年11月22日横山和明カルテット+仲田サリー LIVE at 東京学芸大学に寄せて~  杢谷 栄里

艶POP特集  瀬田 サトシ

戯言 えっ!?ウソだろ。Das Racistが解散!?  瀬田 サトシ

Playlist 8tracks  瀬田 サトシ

冬曲サミット~峯瀬対談Tomato n'Pine拡大版~

冬曲サミット・不参加の杢谷による戯言 

茶屋町クラブ開店

 ここは大阪。時々刻々と街並みが変化していくファディッシュなキタを代表するおしゃれスポット、茶屋町。の年中音楽が鳴りやまないとあるクラブからお送りしております「茶屋町クラブ」の第1回目でございます。ここは日夜、音楽好きが集い自由に語り合う場。話の形式はロジックの強固な評論からフェティシズムの告白、暴論、エッセイ、雑記などなど何でもOK。いわば音楽駄話の会であります。
 音楽不況・出版不況の煽りを受けてか音楽評論の場の窮地に追い込まれつつある昨今。今一度音楽評論を書くこと、読むことの面白さを見つめ直さなければなりません。その上で私はもっと手軽に気軽に楽しく読める評論があってもいいのではないか、論調・語り口の形式を取っ払って、ともすれば対象とする音楽すら置いてけぼりにした書き手主体の評論があっていいのではないかと思い、このクラブを立ち上げました。「音楽の解釈人の立場から文章の面白い音楽好きへ。」
 しかしそんな音楽評論の未来を担うようなそんな気取ったものではございません。今回ここに集った三人は全員、音楽ライター・評論家の岡村詩野さんの音楽ライター講座イン京都で出会った仲間です。音楽を介して出会った三人がざっくばらんに音楽を語る、それだけで十分なのです。なので当クラブは誰もが音楽を語ることが出来ます。執筆陣は流動的で今回集まったのがたまたまこの三人だったという訳です。読んでいただき是非書きたいという方は編集部までご連絡ください。
 それではそろそろ始めて行きましょうか。極上の時間が待っております。こんな時間からクラブ酒飲んで酔っ払って、しかもフロアで踊ってしまっていいのかいって?御安心ください、今宵あなたを酔わせるのはウィスキーより度数の強い極上の音楽です。なおここで踊ることは風営法によって禁止されていますが、あなたをトリップさせるのはダンスよりも不毛で知的でエキサイティングな駄話です。いらっしゃいませ。茶屋町CLUBです。

chayamachiclub@gmail.com
                                                             峯 大貴

年間BESTアルバム
  峯 大貴



①PS4U/Tomato n'Pine
○銀河のほとり、路上の花/中川敬
○アルキネマ(2007~2012)/Theピーズ
○リトルメロディ/七尾旅人
○ロックンロール イズ ノット デッド/サンボマスター
○坩堝の電圧/くるり
○はじめにアイがあった/禁断の多数決
○桜富士山/奇妙礼太郎トラベルスイング楽団
○CITY DIVE/一十三十一
○This is My Story憐情のメロディ/伊集院幸希





 当初は洋邦問わず並べてみたのだが今年の洋楽における新作を聴く数が少なく思い切って邦楽のみにシフト。それほどまでに今年は聴くべき邦楽タイトルの数が多かったともいえる。また本年度は山下達郎、桑田佳祐、松任谷由実といった大御所どころのベストアルバムの発売も目立った一年ともいえるだろう。そういうこともあってオリジナルアルバムのみで構成されたこの10枚を見てみると若手の台頭が目立つ。

 ソウルフラワー関連、Theピーズはもれなくランクインという独自ルールによって2枠は確実。ピーズこれまでのシングルをまとめた形ではあるが7年ぶりのアルバムとあって思い入れも深かった。

あまり順位の甲乙はつけていないのだがTomato n'Pineの1位だけはすんなり決まった。昨年のももいろクローバーZのブレイク以降アイドルの楽曲志向性が高まっているがそれの頂点を極めてしまったのではないだろうかとも思える。東京女子流の『Limited addiction』にもその要素は多分に感じられたが、何十回と聴いても高揚感がこみ上げてくる10年に1枚の歴史的名盤であるこちらを選出。

 七尾旅人、くるり、サンボマスターは今年震災の影響を色濃く受けたアルバムの中でも復興への思いを自らの音楽性に消化させることが最も上手くいっている3枚。特にサンボ初回盤についているDVD『きみのためにつよくなりたい』は胸に迫るものがあった。

 禁断の多数決と奇妙礼太郎は今年見つけた逸材。それぞれアニマル・コレクティブだとかジャズからの影響を公言しているが言わなくても露骨すぎるからわかるよ!でもなんかそれちょっと解釈が違うよ!という雑さと欲張りから唯一無二の新しい音楽が生まれているという現代っ子らしい勢いのある2枚。

 一十三十一はナイアガラ、ティンパンフェチにはたまらない70年代シティポップ。選出されないわけがない。

 曲単位で今年一番聴いたのは伊集院幸希の「迷子」かもしれない。バックで鳴り続ける抑揚豊かなストリングス、ブルージーな拳を聴かせながらも透き通った彼女の声、2番のブレイクから入る客演の鬼によるラップ…1曲に一つでもあれば名曲!と言いたくなるような要素がふんだんに盛り込まれている豪華さ。もう日本人全員聴けよ!!この曲嫌いな奴いないだろ!!と客観的知見・ロジックを無視して取り乱してしまうほど心ときめいた10年に1曲の名曲。(あれこれさっきも言ったっけ?)100点満点中5億点。

 その他次選として前述の東京女子流『Limited addiction』を始めユメオチ『これからのこと』、吉田拓郎『午後の天気』、NONA REEVES『ChoiceⅡ』、クリープハイプ『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』の5枚。ここに入っていない今年よく聴いた曲としてRHYMESTER「The choice is yours」、一青窈「Lesson」、AKB48「ちょうだい、ダーリン!」を挙げる。

年間BESTアルバム
  杢谷 栄里

1位Spiritualized/Sweet Heart Sweet Light
2位Jack White/Blunderbuss
3位Ringo Deathster/Mauve

1位Spiritualized/Sweet Heart Sweet Light

 1位は文句なしにSpiritualized。1980年代以降のUKサイケの最重要人物・ジェイソン・ピアーズによるソロ・プロジェクト。轟音で爆発するギターノイズよりも、メロディを重視した、耳触りの良い、幸せに満ち溢れているロック讃美歌が中心。中にはギターノイズが効果を発揮することもあるが、それすらも轟音でもなく、やさしさを秘めている。特にリード・トラックであるM2『Hey Jane』は、霧が晴れたような爽快感を感じさせる壮大なスタジアム・アンセム。ただし、恋する女性への恋慕を歌った曲であり、ストーリーは悲しく、儚い。なぜ、クリップがあんなことに…と、思ってしまうが、ほかの楽曲も美しいバラードやスタジアム・アンセムで占められている。疲弊した世の中に指す、一筋の光である1枚。一度、生死をさまよったジェイソンによる渾身の1枚であり、2012年を代表する1枚である。とくにライブを経てから、M11『So Long You Pretty Thing』の良さに気付いた。ピアノとジェイソン、女性コーラス嬢のデュエットで始まるシンプルなイントロでこのまましっとりと終ると思いきや、転調を挟み、壮大なスタジアム・アンセムへと昇華する。もしや、いや間違いなく『Hay Jane』を超えるスタジアム・アンセムだ。正直、今作は、尻つぼみじゃないかと思ったが、そんなことはなかった。きちんと最後までぬかりない、1枚の作品であった。期待を裏切らないジェイソンの魅力が詰まっている。

2012.12.11 Live at 梅田クラブクアトロ
 12月11日の梅田クアトロライブに行ってきました!!2月17日のHostess Club Weekenderに行っていないのにもかかわらず3回目のスピとなった今回、唯一期待を裏切ったのはジェイソンがいつもの右側ではなく、左側だった…ってこと…。でも、右端にいると、必然的に左を向かざる得なくなり、ジェイソンの顔がよく見えたからよしとしよう。
 今回はいつもの爆音音合わせではなく、バラード一曲で音合わせ。そして、来ました来ました、『Hey Jane』。会場も分かりやすく揺れる揺れる。爆音系『Electricity』『Heading for the Top』ロック讃美歌『Freedom』を挟み、名曲『宇宙遊泳』。プレスリーの『I Can't Help Falling In Love With You』を黒人女性コーラス嬢2人と歌うという素敵なアレンジが!!!今回、このコーラス嬢がかわいらしい声をしていてロック讃美歌に花を添えていた。スピには美しい曲が多い。そして、「Sweet Heart,Sweet Light」の中でも隠れたスタジアム・アンセムである『So Long You Pretty Thing』。日本だと、クアトロじゃないと、無理なんだけど、いつか、ウェンブリースタジアムかThe O2でこの曲を聞きたい、そう思った。そして、気付いたら再び爆音天国にいざなわれ、夢から覚めた。そんな一夜だった。
 今年、3回見ているけど、3回とも全くバンド編成は同じでも、曲構成は違ったので、大満足でした。おそらく、1回目は3月のリリース前のロンドン、2回目はフジ、そして3回目はリリース、フェス後のジャパンツアーってのもあって、必然的に曲構成変えたんだろうな。3公演すべてやった『Hey Jane』は2012年を代表する曲だなー!

2位Jack White/Blunderbuss


 2位はThe WhiteStrips、The Raconteurs、ドラムで参加したThe Dead Weather、と数々のバンドをこなし、さらにはレーベルの社長までやってしまったジャック・ホワイトがついにリリースしたソロ作。様々な音楽活動を経て彼が今までで一番自由に好きにやっている作品である。ホワイトストライプスの路線をそのまま維持した古いブルースやジャズっぽい曲からギター少年ならだれでも一度はやってみたいハードロックまで、ギター小僧ならだれでも一度はやってみたいことを全部やっている印象を受けた。比較的生楽器を使い、古き良きブルースで進みながらも、M8『I'm Shakin’』でいきなりのギターイントロ炸裂、ジャックの高音のボーカルと相まってThe Darknessを聞いている錯覚を覚えた。間奏部のギターバカテク披露も特にハードロックなギター少年ならやってみたいことだろうな…と、思った。その後、クラリネットが印象的なM9 『Trash Tongue Talker』では女性ボーカルと一緒にブルースを歌う。古き良きアメリカンブルースとギター少年が共存したアルバムを作成することで、現在アメリカで増加中の古いロックンロールをやる20歳前後のバンドや反対にそういったものを無視するバンドへのなにかメッセージめいたものを感じる1枚。音楽というのは、温故知新。古いものを大切にすることで、新しい素晴らしいものが生まれるのだ。それは、音楽以外の、他のものにもいえる。

3位Ringo Deathster/Mauve

 3位は若きシューゲイザーバンドの中でも紅一点ベースのアレックスの美貌も手伝って、日本で一番人気のあるRingo Deathster。9月に行われた東名阪ツアーも東京は早々にソールドアウト、各地で見た人の評判も上々で成功を収めた。
 サイケにも聞こえる爆音ギターノイズ、さらに、男女のボーカルが浮遊感たっぷりに絡み合う「My Bloody Valentine」直系のシューゲサウンド。さらに、パンク、グランジ、ハードコアも取り入れ、比較的外に開かれたギターノイズを作りだしている。それが親しみやすさを生み、聞きやすく、従来のシューゲよりもポップに聞こえる。さらにRideのように歌詞がある歌をつけることで、サウンドはマイブラmeetsギター少年っていうようになってて、世界中のギター少年たちにギターの可能性を訴えているような印象を受ける。9月のライブ(難波Rockets)でも前2列の客全員をステージに上げてみたり、遊びに来ていた友人をステージに上げ、ラモーンズを歌わせたり、従来のシューゲバンドとは異なり、みんなで楽しもう!そんな姿勢のあるバンドである。
 特筆すべきは、M1『RIP』。友達とひとしきり遊んだあとに超絶聞きたくなる、寂しさに寄り添う曲だ。若者が、とくにこの行き先の見えない時代に、感じる閉塞感に寄り添う1枚である。

2012年によく聞いた2011年作品BEST3
杢谷 栄里

極めて個人的な理由により、音楽を聞けていなかった2011年。その代わりに2012年に2011年リリースの作品をよく聞いた。そこで、選出した2011年ベストアルバム。

1位 The Horrors/Skying
2位 The Vaccines/What Did You Expect from theVaccines?
3位 S.C.U.M/Again Into Eyes

1位 The Horrors/Skying
 なぜか一番聞いた。好きだからに違いない。いや、聞いていると物事を忘れられる。社会人1年目、忘れたいことが多いから、一時的に逃避したいから聞いているのかもしれない。なにかのインタビューで読んだが、この作品では「幸福感」をテーマとしているという。なるほど、聞き手は幸福感を感じることができるわけだ。そして、聞き手はホラーズのかけた魔法に取り込まれていく。一見するとつかみどころのないサイケであるが、ビートがしっかりしているがために聞きやすい。
2006年のデビューではゴスファッションでキメッキメで暴れまわるは、演奏はガタガタだった彼らが、2009年の2ndでシューゲイザーに傾倒し、その後のサイケに移行した3rdである。どの曲もビートがしっかりしているため、自然と体はリズムをとり、夢のようなサイケデリックな世界へといざなわれる。決して派手なことはしていない。しかし、音数は少なくても、多用されるエフェクトにより、様々な表情を持った音により、なんだか夢の世界へ迷い込んだような錯覚を覚える。現実を忘れ、The Horrorsの奏でるサイケデリアへ。特筆すべきは#4Endless Blueだろうか。イントロのゆらゆらサイケデリックサウンドから一変、ロックビートで曲は進む。しかし、どことなくゆらゆら地に足ついてないようなファリスのVo。どことなくハッピーに物語は進んでいくが、最後のOcean Burningで暗い現実が待っている。そして、物語は静かに終わる。

2位 The Vaccines/What Did You Expect from theVaccines?
 1位に選んだThe HorrorsのsynのTomの弟がいるバンド。若々しい勢いのあるガレージサウンドを鳴らしながらも、ノエル・ギャラガーを彷彿とさせる声、そして、どこか懐かしく、さらに、UKらしく、どこか儚げな、哀愁が漂う。
The Horrorsをはじめとして、現在、UKではサイケやダブステップ、ドリーミー、シューゲイザーといったような、どこか元気のなく、つかみどころのない音楽が流行っているが、The Vaccinesがデビューたった1年でグラストのメインステージで何万人もの人を熱狂させたことを考えると、UKの人たちは、2000年代前半のロックンロールリヴァイバルを思い起こすような、こういうストレートな、そして、UKらしいガレージロックを鳴らすバンドを求めていたのではないだろうか。

3位 S.C.U.M/Again Into Eyes
 The HorrorsのRyth Webbの弟、Huw Webbがいるバンド。なんだお前、The Horrorsのおっかけかとかなんだかんだといわれそうだが、それだけ、今のUKインディシーンではThe Horrorを中心に回っていると過言ではないのでは…?というわけで、結果的に2012年における2011年のベスト・アルバムはThe Horrorsとその周辺になってしまった。このS.C.U.Mの英単語でのもともとの意味は下水の汚物がたまって塊になったもので、それが転じてスラングでクズとかろくでなしという意味を持つ。(余談だが、スカムは下水道管の老朽化を早める原因になっている)
全体的にはThe Smithにエレクトロサウンドを付加し、ビートを効かせた印象を受ける。ボーカルはほぼ完全にモリッシ―である。The Smithのような切ないやる気れなさがありつつも、サウンドは踊れるものとなっている。The Smith meetsクラブサウンドってとこか。
 元々、The Horrorsの周辺にいるバンドであるからだろう、クラブでみんなと音楽を楽しむ姿勢はあるバンドである。そのために、ビートを効かせ、みんなが踊れる仕掛けを作り、浮遊するエレクトロサウンドは皆が音楽をより楽しむ効果を生み出している。20歳そこそこの若者らしく、疾走感も忘れていない。
それが良い感じに耳に残ってクセになる。現在のロンドンアンダーグラウンドを感じさせる1枚である。

年間BESTアルバム
  瀬田 サトシ

①Tame Impala「Lonerism」
②Pond「Beard Wives Denim」
③Melody's Echo Chamber「Melody's Echo Chamber」

Tame Impala / Lonerism

 ロックシーン最大のサプライズをやってのけたオーストラリアが生んだ孤高の天才Kevin Parker。Pond、Melody's Echo Chamberと彼の関わった作品は、60年代サイケを基調としながら、そこに現代的なエッセンスが加わり我々をゾクゾクとさせる魅力を持っている。
 本作は、そんなKevin Parker率いるオーストラリアはパースを拠点に活動している4人組バンドの2年ぶり2ndである。本作はそのほとんどをフロントマンKevin Parkerが作曲から録音、プロデュースに至るまで一人でこなしている。数曲Jay Watsonが参加しているものの、ほとんど一人で制作されているTame Impala作品には、Pondのソリッドな感覚ではなく、ズブズブとサイケデリックな深海へと誘われていく独特なトリップ感覚がある。1st「InnerSpeaker」では、彼の音楽的嗜好のコアな部分が剥き出しになっており聴く人を選ぶ嫌いがあった。しかし2ndとなる本作ではPondやMelody's Echo Chamberにも通じる開かれたポップとして、彼のコアな部分を装飾している。反復するビートに身を任せずっと揺れ続けることのできる歌モノポップとして貫かれている。その中でも11曲目「Nothing That Has Happened~」は6分もの長尺曲にも関わらず、ずっと揺られていたくなる中毒性を持っている。特に3分過ぎから2分間ズブズブと深部へと誘われていく間奏は至福のヒトトキ以外の何物でもない。
 孤独主義と冠された本作は、その名の通り一人で録音されズブズブとした箱庭的な世界観がある。しかし、ここからはこういった音楽にありがちな閉塞感を感じない。逆に私にはここに轟くシンセの音が新たな音楽シーンへの扉を開く福音のように聞こえる。

Pond / Beard Wives Denim

 60年代後半のサイケデリックロックンロールを彷彿とさせる「Fantastic Explosion Of Time」を初めて聞いたときの衝撃は未だに忘れられない。音が割れてもお構いなしにガンガン飛ばしウネリを挙げるギターは、少し間違えれば古臭いと言われるだろうが、彼らは00年以降のサイケポップの新たな形として鳴らしている。そこに生み出された何者にも代え難いグルーヴは、本作の魅力を悠然と物語っている。
 Pondの中心人物は現在Tame Impalaの正式なメンバーとなったNick Allbrookである。メンバーはTame ImpalaのJay Watsonを含む3人組であったが、本作からKevin Parkerを含む2人が加入し5人組となっている。
 本作は、もちろん彼らのホームである地元パースで録音され、そんな彼らの無邪気な音楽への愛情が凝縮されている。そして、ホームという言葉がしっくりする程リラックスしながら録音している姿が節々から漏れ伝わってくる。聴いているだけで気持ちが温かくなるそんなロックンロールの魅力がここには詰まっている。
Melody's Echo Chamber/Melody's Echo Chamber

 本作は、フランス出身の新人SSWであるMelody Pochetによるプロジェクトの1stである。彼女の音楽はよくBeach Houseと比較される。Beach Houseは、新作「Bloom」でビートを強調しその甘く幻想的な世界観を押し広げることに成功したが、ダイナミズムはなかった。
Melody Pochetによる本作は、メランコリーを感じさせる美しいメロディーと舌っ足らずな歌声にロックンロールのダイナミズムを加えたことで生まれたグルーヴによるサイケデリックなトリップ感は、他のシンセポップと一線を画し体にガツンと迫ってくるモノがある。
そんな本作は、オーストラリアはパースで録音された。フランスの彼女がわざわざこの地を訪れたのは、プロデュースをTame ImpalaのKevin Parkerが手掛けたからだ。彼がTame ImpalaやPondのメンバーとシェアするスタジオは、現代サイケロックの総本山とも言える所である。彼女のサウンドが身体感覚へと訴えるトリップ感を生み出すことができたのは、彼らとの出会いの賜物であろう。

期待外れ作BEST3 
 瀬田 サトシ

 紙面のバランスの都合上、BEST3のトコロでは、余白がなかったので、ここでちょっぴり今年を振り返ってみたいと思う。今年は、Kevin ParkerにはじまりKevin Parkerに終わった。そんな一年だった。だからBESTで上げた3作は必然的にそうなってしまった。他には、後ろで私が書いた艶POP周辺。あとは、Hip Hop~R&Bをよく聴いていた。基本的にロックリスナーである私が、ここまでハマるとは思わなかった。なので、機会があれば、Hip Hopの特集記事なども書いてみたいなと思っている。それでは、そろそろ期待外れ作へいきましょうか。
 ここに上げた3枚は、私にとって今年楽しみにしていた作品だったが、聴いてがっかりした作品である。わざわざ期待外れ作を選んだのは、その方がなんか面白そうだったから、そんなトコロです。楽しんで頂けたら幸いです。

①Wild Nothing / Nocturn
②Twin Shadow / Confess
③Passion Pit / Gossamer

①Wild Nothing / Nocturn

 2010年に発売された前作「Gemini」は、サーフポップ~チルウェイヴの盛り上がりと共振する形で注目を集めた。そして2年のブランクを開け発売されたのが本作だ。
 本作はドリームポップが乱立したいまのシーンを象徴する「つまらない一枚」だ。前作は、作品全体を覆う薄い膜があるかのような感覚にさせるシューゲイズサウンドがメランコリックな世界観を築き上げていた。楽曲がパッチワークのように詰め込まれていた前作に比べ、全体のトーンが統一された本作は同様の曲が並び退屈な印象を与える。きれいに整列させられたギターをはじめ、ワザと悪く言うが小奇麗にまとまり過ぎているのだ。前作の荒削りな部分がスッポリと抜け落ち、ただのドリーミーポップと言えてしまう一枚だ。
 本作にがっかりしたあなたへオススメの一枚→Frankie Rose『Interstekkar』

②Twin Shadow / Confess

 彼の1stである「Forget」は、Toro Y Moi『Underneath The Pine』と共に、艶やかなファンクネスを身にまとい話題となった。Twin Shadowは、そこにディスコを通過した軽快さがあった。Blood OrangeことDev Hynesを中心にディスコを通過したサウンドが台頭してきたことで、私の期待は膨れ上がった。
 本作は彼の服装がシャツから革ジャンへと変化を辿ったように、サウンドもより硬いロックテイストな重いモノへと変化した。それにより前作にあった陶酔感は減退した。楽曲単位では、ほんのりアジアンな雰囲気を醸し出す楽曲など彼の世界観を押し広げたものだった。しかし、前作がダンサブルなディスコポップであっただけに、アルバム全体を通して聴くには、単調な印象を持った。

 本作にがっかりしたあなたへオススメの一枚→本書後方の艶POP特集へ



③Passion Pit / Gossamer

 本作収録の「Constant Conversations」は、今年のBest Trackである。この楽曲は、雨上がりのGossamer(蜘蛛の糸)に光る雫を見た時に感じる昂揚感、初夏の暖かなぬくもり、そんな感覚を呼び起こさせる。躁状態の極みとも言えたネオンが輝くこれまでの彼ら楽曲とは一線を画す。
 そんな今年のBest Trackが入った本作を期待外れ作に入れたのは、他の楽曲が決して駄作な訳ではない、躁病的なフックとキラキラしたネオンを思わせる最も彼ららしい「I'll Be Alright」や、おもちゃ箱をひっくり返した多幸感が心地よい「Love Is Greed」など粒ぞろいな好曲が並べられている。しかし「Constant Conversations」の前では他の曲が陳腐に聞こえてしまう。期待というより想像を超えてきたマイケル・アンジェラコスのソングライティングにもう感嘆の声しかでない。
 本作にがっかりしたあなたへオススメの一曲→Constant Conversations(St.Lucia Remix)

クロスレビュー

『ぱみゅぱみゅレボリューション』
きゃりーぱみゅぱみゅ

 瀬田 サトシ

 ぱみゅぱみゅレボルーションは、倦怠感に包まれスノッブが良しとされる日本のポップシーンに風穴を開けたポップ革命作である。
 彼女のサウンドは、「Candy Candy」に見られるように誰でも受け入れられる宝箱型アイドルポップソングなのに、クラブミュージックのようなフックが所々に埋め込まれている。そして、どこまでもどこまでも底抜けな楽天的ポジティヴシンキングなのだ。
 つまらないと揶揄されるタイアップ式も彼女にかかれば、そんなものはどこ吹く風である。バイト情報誌anとのタイアップで作られた「きゃりーanan」は、企業名である「an」と「きゃりーぱみゅぱみゅ」しか基本的に言っていない。あからさまだが時代を逆手に取ったストレート過ぎる楽曲に思わず笑みがこぼれてしまう。
 サウンドを手掛けているのは、Perfumeなどでもお馴染みの中田ヤスタカである。しかし、きゃりーの楽曲はこれまでの彼のサウンドとはニュアンスが違う。きゃりーの底抜けな天真爛漫性が、中田サウンドと合わさったとき、夢見る乙女とメランコリーの見事な融合を生み出したのである。もう一度言うがこれは世界へ打って出るJ-POP革命作である。


 杢谷 栄里

 えーみんな、こんなに楽しい曲聞いてるの!!?エレクトリカルパレードのようなかわいらしいキャンディテクノポップ。90年代初頭、2000年代前半に流行ったハイパーテクノ(ユーロビート)、トランス、また、デトロイトテクノとの相違はトゲや冷たさを一掃し、さらに瞑想状態、浮遊状態になるものではなく、まさに一緒に楽しめるものとなっている。テクノやトランスのビートを採用しつつも、中田ヤスタカがきゃりーをイメージして上に乗せる音はポップでキュート。一度聞いたら耳から離れないクセになる覚えやすいメロディ。歌詞も女の子ならだれでも気持ちがわかるものであったり、言葉として楽しいものであったり、みんなで楽しもう!と、いうものである。一聴すると、あほっぽく聞こえるかもしれない。しかし、それが、無条件で誰もが楽しめるものとなっている。気取って馬鹿にすることもできる。同じテクノサウンドであっても、従来あるデトロイト、ハイパーとの差別化、それは、チームきゃりーぱみゅぱみゅがきゃりー流原宿かわいいを発信するための、世界中のだれもが楽しめる健全な仕掛けが詰まっている。病的な世界に一石を投じる健全で楽しい、明るい一枚。


 峯 大貴

 Perfumeファンとしてはいかんせん比較せざるを得ないのだが、Perfumeは持ち前のアイドル性でヤスタカ作品に通ずるドロついた部分をキュートに消化しているのに対し、きゃりーの場合は双方の個性の強さが一致しているのでヤスタカマインドをただ具現化した存在に聴こえてしまう。しかしそういった意味で中田ヤスタカはPerfumeよりも思いっきりやりたいことをやっているようだ。これから作を追うごとにきゃりー自身の音楽性を洗練・発揮してくれればもっとキャッチーな存在になるだろう。この次のシングル「ファッションモンスター」を聴いた限りいい予感がするぞ。

『午後の天気』
吉田拓郎


 瀬田 サトシ
 タイトル通りに午後の陽だまりにゆったりと揺らめいている、そんな作品だ。「昨日の雲じゃない」などAOR世代にとっては耳馴染みあるド真ん中と言えるシンセの使い方など斬新さは一切ないが、そこに聞き手は安心感を覚え、さらに当時に思いを馳せたくなってしまう。さらに「危険な関係」など歌詞を追っていく内に若かりし日に戻れるような細工が施されている。聞き手を考えたなんともニクイ演出が随所に散りばめられている。

 
峯 大貴

 この人なくして今の日本のポピュラー音楽はないと断言できる、拓郎3年ぶり31枚目のアルバム。御歳66歳ともなればこのインターバルはコンスタントとも言えるだろう。前作『午前中に…』発表後ツアー中に慢性気管支炎が悪化し、ファンにとっては拓郎の歌声が聴ける日がもう来ないかもしれないという危惧もあった。ところが拓郎は帰って来た。それだけで満点なのである。ありがたいと思え!!…取り乱しました。『午前中に…』は現在の自分が置かれている「人生の週末」感が色濃く反映されているもので、あっけらかんと歌う拓郎の様子は変わらないのだがなんとなく懐古主義に包まれているものであった。
 だが本作は1曲目「僕の道」から”この道が大好きだからこの道を行くんだよ”と自信たっぷりに言い放ち、その歌声には70年代当時のギラギラした感情も見え隠れする。10曲49分、何処を取ってもわかりやすいコード進行に奥深いメロディが乗っている唯一無二の拓郎節だ。欲を言えば本当はもっとアコースティックギターをフューチャーした楽曲が聴きたい、一つの音符にこれでもかと言葉を詰め込んだトーキングスタイルの楽曲が聴きたい。しかし聴取者と一緒に円熟味を増してきた今の拓郎が魅力的だ。日本のポピュラー音楽には今なお吉田拓郎が立ちはだかっている。


 杢谷 栄里

 吉田拓郎といえば、昭和のフォークというイメージがあり、現在も活動していることはほとんど知らなかった。名前は知っているけど…と、いう状態だ。しかし、楽曲提供、70年代からの活動、そして社長の一面を持ち、現在も精力的に活動している。
 吉田拓郎はフォークから政治色をなくしたことで有名である、今作も、歌詞は恋する男心や父への気遣いを歌い、家族や愛する人を大切にしながらも、愛する人に対して不器用で葛藤する大人の男の姿が垣間見ることができる。
 昭和っぽいシンセや懐かしさを感じる中にどこか哀愁漂うUKロックにも通じるやさしいサウンドからは、彼もまた、ロックを通ってきたのだと感じさせる。その一方で、ポイントとなる箇所でこぶしを効かせた泥臭い歌い方は日本の演歌の特徴にも通じるし、黒人のブルースにも通じる。思いを強調させたい箇所ではこのこぶしを効かせるのは古今東西の共通だ。
 注目すべきは歌詞も全編通じて日本語であることだ。ついついロックをやろうとすると、英語を取り入れたり、全部英語にしてみたり。しかし、吉田拓郎にかかればロックであっても、日本語がしっくりきてしまう。まさに日本語ロックである。不器用ながらも周囲の人たちを大切にしようとする歌詞、そして、こぶしを効かせたやさしいサウンドというのは、まさにザ・日本男児がロックを歌うとこうなるのだ。

『Lex Hives』
The Hives

 杢谷 栄里

 メンバー全員がお揃いのスーツでキメて、ガレージロックを演奏する…あれ、どこかで聞いたことのあるようなバンドのような…?しかし、メンバーは5人、チビもデブもヒゲもハゲもいる…それがスウェーデンのThe Hivesだ。実に5年ぶりとなる今作では、衣装は期待を裏切らないシルクハットに燕尾服、場合によっては黒のライダースジャケットと、相変わらず、どかどかのシャウト満載のThe Hives節を聞かせてくれる。しかしだ、何かが違う。
 M1『Come on Come on』では1文で5年間のうっぷんをがーっと鳴らす。リードシングルとなったM2『Go Right Ahead』ではホーンセクションを加え、変声機を使うというちょっと凝ったアレンジとなっている。今まで、The Hivesといえば、勢いでどかどかとガレージロックを演奏するバンドのイメージであった。しかし、本作ではホーン隊を加え、音に厚みをだしたり(2、6)、ハードロックっぽいM4、M5ではコード進行Aではニコラス(g)とヴィジランテ(g)がボイスパーカッションのごとくペレの裏で「Wait a Minute…」と歌い続け、きちんとBの部分は抑え、曲に展開を持たせている。古典的なブルースを思わせるような8、今回はハイテンションで押すガレージロックではなく、全体的に音に厚みを出し、アレンジを効かせ、また比較的落ち着いたブルースといったような曲が多い印象を受けた。
 前作との間が5年間という待ちくたびれそうになる長さになったのは今まで所属していたレーベルと揉めたからだそうで、それならば、自分たちで自由にできる環境を整えようということで、自分たちでレーベルを作ったからだそうだ。今作はその自分たちのレーベル「Disques Hives」からのリリースだ。
 完全に自由を手に入れた彼らはより自由に楽曲制作を行い、さらにいろいろとやってみたのだろう。しかし、結成からすでに20年を超え、ただただテンションが高いロックンロールはできなくなってきた。いい言葉でいえば大人になった、悪く言えば年老いてきた、そこで彼らが出した答えが、ただハイテンションで押すのではなく、音に厚みやアレンジを加え、それでも疾走感を失わない、メロディを重視したロックンロール、なのであろう。


 瀬田 サトシ

 全体の印象は最初から最後まで勢いで押し切る。まさにHivesらしい一枚。疾走感が最後まで衰えないのでさらっと聞けてしまう、そこにモノ足りなさを感じなくもない。しかし、⑤「Wait A Minute」は、“Wait A Minute Now”とずっとずっ~と溜め込み。ギターのカットインからの展開には予定調和が崩れたことにより生まれた開放感が心地よい。本作の特出すべきハイライトである。


 峯 大貴

 どれだけ音楽を好きになって、多くのアルバムを聴いて、自らの嗜好が確立された後でも彼らに興奮できる嬉しさよ。リフがよくてね!めっちゃ盛り上がってね!すぐ覚えちゃう魅力的なメロディでね!すぐ終わっちゃうの!と興奮のみしか伝えられない。パンキッシュなガレージロックというブレナイ姿勢があるからホーンセクションなどの新しい試みも全て1+1+1+…と目標に向かってベクトルが伸びており、全ての要素がかっこよさに繋がっている。ストレートなロックンロールに気恥かしさを感じる必要はないのである。

峯大貴の音楽的自己分析


 今年就活!21歳の私、峯がマイPCの中に入っている9620曲(2012年11月現在)を曲名を見ずにシャッフル再生!その曲への思い入れ、もちろんこの曲知ってるよね?と一人語り。私もまだ知らない自分の音楽的嗜好を探りたいと思います。


①Midnight Down/the pillows
 これはわかる。ピロウズの「ミッドナイトダウン」でしょ。サビでも言ってるしね。高校時代(2007年~09年)にはかなりはまりました。ピロウズにとってこの時期はavexに移籍してこれまで日本オルタナキッズのみに響いていたのがだんだん全国的に人気出てきたんですよ。軽音楽部の私は全て山中さわおさんに似せようとしてました。この頃の自分のライブ音源とか聴いて見ると第1期ピロウズ(上田ケンジ(ba)在籍時の89年~93年)の時の餅をノドにつまらせたような声だった若かりしさわおさんと結構似てて。あとさわおさんのギターの特徴的な押さえ方でローコードのGの時、普通2弦は開放でGを鳴らしているんですけど、3フレットのBを押さえる癖があって。ちょっと音に広がりが出るんですよね。そこも真似していました笑 さわおカブレ。


②Talking The Central Course/槇原敬之
 あーもうマッキーは何かけられてもわかりますよ。私の初めて買ったCDがベスト『SMILING』ですからね。音楽の入り口であって。もう好きすぎて高校同じところ(大阪府立春日丘高校)行って、同じ軽音楽部入って、同じく部長もしましたから笑 メロディよりも歌詞を先に作る人とあってどうしても歌詞世界に目が行きがちですけれども彼のコード感と音作りが非常に好きで。「二つの願い」のイントロのシンセとか耳に入ってきた瞬間「雨の歌だ!」って思わせるような音色とメロ運びなんですよ!これはシングルverでアルバムのテイクではないんですが。季節感を音で描く天才だと思いますね。
 

③Some girls/Bananarama
 バナナラマかな?この「WOW!」も大好きなアルバムですね。マイケル、ワム、マドンナ、プリンスみたいないわゆる80年代ポップスは無条件で好き。でもガンズとかヴァン・ヘイレンとか言った同世代のハードロック勢は全然わかんないから不思議なもんです。多分その影響は西寺郷太さん(NONA REEVES)のキラ☆キラ(TBSラジオ)でやっていた音楽コラムの影響が強いと思う。あとは幼少期にずっと見ていた天才てれびくんの音楽コーナー。これについては私の著作「HITORI JAMBOREE Vol.1」を読んでください笑 



④Step and Go/嵐
 嵐は母がファンクラブ入っているほど好きで。この前もライブはずれたといってごねていました。私も大好きです。嵐は曲展開や転調がものすごく複雑ですよね。この曲なんか”We’re gonna step and go~”が一拍食って入ってくるのでサビが来た!と思うんですけれどサビじゃないんですよね(笑)その後にちゃんとしたサビが来る。パートごとに全部調が違うし、キャッチーだから変わるたびにびっくりしちゃうんですよ。でもどんなに展開変わっていても大野君の”愛しっさ~溢れて”でギュッと引き戻されてしっかりメロメロになりますもんね。力技なんだけど不自然じゃない。というかこの不自然が今まで聴いたことのない心地よさになっているというか。聴いていて楽しいなぁ。


⑤かえり船/ちあきなおみ
 ん?ド演歌だ。確かちあきなおみさんの演歌カバーアルバム入ってたと思うからそれかな。すでに一線から引退なさったのでコロッケさんがやる「喝采」の形態模写でしか知らない人が多いと思いますけれど、私は志村けんさんの「夜へ急ぐ人」を歌うコントの方が印象強いんです。本気で聴き始めたのは大学入ってから。「喝采」の歌詞世界でノックアウトされました。冒頭の「いつものように幕が開き」は他の誰にも歌えませんよね。鼻から抜く息遣いと一つ一つの言葉を丁寧に置く歌い方!歯切れ良いとはまた違った絶妙のニュアンス。多くの方がカバーしていますがなかなかここを意識してくれない。一青窈さん今年カバーしていましたが非常に滑らかに歌っていて惜しかったですね。ただの私のフェチなんですが。

音楽、それはみんなが楽しめる魔法~2012年11月22日横山和明カルテット+仲田サリー LIVE at 東京学芸大学に寄せて~  杢谷 栄里

 突然ですが、私は学生時代、ジャズ研なるサークルに所属し、講義の合間に、研究の合間に、ジャズをやっていました。運よく、今回、研修で東京に行った際に、ジャズのお師匠さんのライブを拝聴することができ、今回の記事はそのときの感想をつらつらと書いたものであります。


 音楽は楽しい!それを感じさせてくれるライブだった。2012年11月22日、東京学芸大学学園祭内軽音楽部(ジャズ研究会)の出展のなかで行われた横山和明(ds)、岡淳(ts,fl)菊池太光(pf)、本山二郎(b)、仲田サリー(Vo)のライブでの感想だ。
 横山和明、岡淳、菊池太光は東京、本山二郎、仲田サリーは静岡市を中心に活動をしているジャズミュージシャンだ。本山と横山は師弟関係、本山はいわゆる伝統的なジャズ―Be Bop,Hard Bopの伝道師だ。さらに菊池太光は大学生ジャズミュージシャンの兄貴的存在として、週一回、高田馬場イントロでセッションホストを務める。セッションが何よりも好きなメンバーが集まった今回のライブ、何かがおこらないはずがない。
 単純に楽しいライブはたくさんある。しかし、このライブは何かが違った。まさにわかりやすい形でジャズの本来あるべき姿が現れていた。
 岡がフルートを吹いていた3曲目の「Bules in the Closet」。ソロの最中、フルートを吹きながら、だんだんと声が出てきて、いつの間にかフルートから唇を離し、スキャットを始めてしまったのだ。これには観客はもちろん、共演者も度胆を抜かれていた。
 その後、フルートを再び吹いて、次の菊池にソロを回したのか、スキャットのまま回したのかは覚えていない。あと、この曲に関して起こったことを覚えているのは、岡がフルートのソロの最中、菊池の指示(というか企み?)により、ピアノ、ベース、ドラムスの演奏が消え、完全にフルートだけの演奏になったところくらいなものだ。
 いくら即興を重視するジャズであるとはいえ、ライブという場、初めて演奏する同士であっても、だからこそ、演奏の仕方はある程度、事前に決めておく。しかも、今回は、本山にとっては菊池と岡は初共演なのだ。初共演でこんなまさにセッション状態、それも相当心がお互いに開けていないとできない演奏になってしまったのだ。
 まあ、これもその場で出演者が思いついたことなんだから、ジャズ本来の即興性、好きに自由に音を出し合って曲を作っていく、展開していくっていうことが如実に現れたってことだ。
 ここでいうジャズはいわゆる1940年代から1960年代までのBe Bop、Hard Bopと呼ばれる4ビートを主軸に、ソロのアプローチをコードに求める、いわゆる伝統的ジャズと呼ばれるものだ。各人のソロ、即興に主眼が置かれているジャズといっても良い。
 Be Bopは1930年ごろ、ジャズがSwingを演奏するビックバンドを主体としていた時代、店の営業が終わってから団員が好き勝手にセッションし始めたのが始まりであるといわれている。また、南北戦争が終わってから、アメリカ南部の黒人たちが、南北戦争で使われていたヨーロッパのクラシックで使われる管楽器を使い、自由に音楽をセッションし始めたのが、Tin Pan Areyになり、やがて今のポピュラー音楽の起こりとも言われている。
 一般的にジャズは難しそうとかおしゃれとか言われるが、そんなのまったく違って、そこにあるのは、ポピュラー音楽が本来持つ、みんなで好き勝手音を出して楽しむものである。時に不協和音になったり、サックスは耳をつんざくようなフラジオを出してみたり、一歩間違えたら、気持ち悪いとしか思えない音色…。おしゃれでもなんでもない。音楽の本来の姿を現在、最も色濃く残しているのが、ジャズなんじゃないのか。
 Be Bop、Hard Bopはコードにソロのアプローチを求めたあまり、コードから自由になれず、やがて、行き詰ってしまった。その後、スケールアプローチのモードジャズ、さらにはコードもビートも一切無視したフリージャズにまで、進化した。一方で、他のジャンルとの接触も起こり、ジャズの自由に音を出し合い、音楽を展開してく試みは今もなお行われている。その姿がジャズの多様性を、一方でわかりにくい、という印象を与えてしまうことになった。
 しかし、ジャズは楽しい、なぜならば、みんなで好きに音を重ねていって成立するポピュラー音楽の、原点を持つ音楽だからだ。それを思い出させてくれた、今回のライブ。自由にミュージシャンが演奏でき、それがお客さんも楽しめる場って良いなあ。そして、いつも、ジャズの面白さを伝えてくれる本山師匠には感謝!である。

艶POP特集
瀬田 サトシ

 艶POPシーンなる言葉は存在しない、私が思いつきで面白がって付けてみただけである。PitchforkなどではSmall POPとして特集されている。それでは、前置きはこの辺にしてどうぞ。

 私の2011年BEST盤はBlood Orange『Crstal Grooves』であった。本作は、Lightspeed Championとして知られているDev Hynesが新しくはじめた80'sポップテイストのプロジェクトである。プロデューサーにはAriel Rechtshaidが関わっており、いまのSmall POPと言われている一つの潮流は、この二人が起点となっている。
 この2人が関わり80'sディスコを通過しつつ妖艶でメランコリックな彼らのサウンドを一つの潮流へと押し上げた楽曲が2つある。Sky Ferreira「Everything Is Embarrassing」Solange Knowles(ビヨンセの妹)「Losing You」である。この楽曲が公開されるやいなや、ComplexやPitchforkといったメディアが彼らの特集を組むなど、いま注目を集めている。ポップ然とした楽曲を覆うメランコリックな雰囲気が醸し出す妖艶な世界観は、どちらも一度ポップシーンから干された彼女たちだからこそ辿り着くことができたのだろう。ここにはポップシーンの狂騒から離れた安堵感が漂っており、聴く者を素朴なトリップワールドへと誘ってくれる。
 いまこのシーンは盛り上がりの兆しを見せており中でも、Charli XCXは、ポップシーンへと打って出る筆頭として注目を集めている。そして、You Are The One EPの制作にはプロデュースとしてAriel Rechtshaidが参加している。この他にもYacht ClubはFucked UpのギタリストBen Cookのプロジェクトであるし、Evan VoytasはいまをトキメクFlying Lotusのライヴ・キーボーディストであったりと、気鋭のミュージシャンが集いはじめている。


このシーンに位置する作品をリストにした。
Charli XCX『You Are the One EP』
(何故か日本のiTunesでは、「So For Away」が入っていないので、ご注意を。)
Chromatics「Cherry」(Single)
El Perro Del Mar『Pale Fire』
Evan Voytas『Feel Me EP』
MØ「Pilgrim」(single)
Sky Ferreira『Ghost EP』
Solange Knowles『True EP』
Yacht Club『Nonnavera Mixtape』









Dev Hynesって誰だ?

 そんなこんなでここからは艶POPシーンの中心人物として注目を集めているDev Hynesにスポット当ててみた。本名Devonte Hynesは、早すぎたニューレイヴと言われ、いまや一部から伝説的扱いを受けているTest Iciclesのメンバーとして音楽シーンに登場してきた。ニューレイヴ・シーンの寵児としてKlaxonsがシーンで注目を集めはじめた06年に、このバンドは解散してしまう。
 そこから2年Lightspeed Championとして08年『Falling Off the Lavender Bridge』でTest Iciclesとしても在籍したDominoよりソロ・デビューし、シーンにカムバックしてきた。音楽性はガラッと変わり、哀愁を漂わせるそのサウンドに誰もが驚かされた。オーソドックスできれいな歌モノPOPとみせかけ、その旋律はどこか単純には聞き流せないギコチナさを併せ持っており、ズケズケと聞き手の懐へと入り込んでくる。その独特な旋律が話題となり多くの人が彼のサウンドに耳を傾けた。その後、フリー配信の『House-Sitting Songs』や2nd『Life Is Sweet! Nice To Meet You』を発表するなど精力的に活動してきた。
 そんな中、艶POPの起点となる作品がドロップされる。それはDev HynesのWEBページで突如フリー配信されたミックステープ『DJ Exotica Sage Presents : Blood Orange Home Recordings Mixtape』である。Lightspeed Championとは全く違い、プリンスを彷彿とさせる80年代ディスコ・サウンドに驚かされたが、Erika Springとの「Huge Quit Part 2」をはじめとし、オリエンテッドな旋律が織りなすトリップ感に、この新プロジェクトの本気度をまざまざと魅せつけられた。それからほどなくして発表されたBlood Orangeの1st『Crystal Grooves』にはAriel Rechtshaidがクレジットされている。この二人は、Cass McCombsのプロデューサーとしてAriel がDominoを訪れていた時の出会いがきっかけであったようだ。
 DevはFlorence & The MachineとのTeam Perfectや、Theophilus LondonとSolangeとの3人のコラボ曲の「Flying Overseas」などなど他のアーティストとのコラボも積極的に行ってきた。そんな彼の中でも、今回注目したのは、Basement Jaxx『Scars』に収録されている「My Turn」である。この楽曲にはLightspeed Champion名義で参加していた。まさにその名義通りの彼はアコギで弾き語りをしながら歌っている。しかし、Basement Jaxxとのコラボであるこの曲には、電子的なビートが載る。いま思えばLightspeed ChampionとBlood Orangeのちょうど中間に位置するような楽曲となっているのではないかとも思う。
 ざっと彼の経歴を中心に振り返ってみたが、彼は一つの所に留まらず常に新たな刺激ある所へと動いている様子がわかった。彼がここからどんな音楽を聞かせてくれるのか今後も楽しみで仕方ない。

戯言 えっ!?ウソだろ。Das Racistが解散!?
瀬田 サトシ

 まさかのニュースに、驚きを隠せない。Das Racistは解散したとHeemsがライヴで明らかにした。
 Das Racistとは、Heems,Kool A.D.が中心となり結成され、後にDapwellが加入し3人組ヒップホップグループとなった。ロックリスナーであった私にヒップホップの面白さを気づかせてくれたのは彼らである。ロックシーンで言えばVampire Weekendのような雑多な影響源が見られるポップミュージックで、それはHeemsとDapwellがインド系、Kool A.D.はアフリカン・キューバ系とイタリアンのハーフと言う出自がそうさせるのだろうか。彼らのサウンドは明らかに西洋文化圏とは違うエッセンスが注入され、それが聴くたびに私の意識を絡み取っていくトリップ感や、彼らの一筋縄ではいかない独特なサウンドを生み出しているのだろう。
 彼らの文字通り肩の力を抜いたヒップホップは聴いていてカラダを揺らしたくなる。Mixtape『Shut Up,Dude』の「You Oughta Know」や「Combination Piz」は、思わず笑ってしまう彼らの魅力を見事に示した中毒性を持っている。さらにMixtape『Sit Down,Man』の「Rapping 2 U」では、ジャパレゲ界の母ことMinmi「四季の歌」がサンプリングされていたりする。
 どちらのMixtapeも面白いが、『Relax』を聴いてしまうと作品としての完成度に度肝を抜かれる。本作の肝である「Relax」「Micheal Jackson」「Booty in the Air」を含む5曲は、今年リリースされた新作『Something』が各方面から絶賛を浴びているChairliftのPatrick Wimberlyがプロデュースを担当。さらにPVが公開された「Girl」は、Summer Sonic2012でGrimesと共に来日したことでも記憶に新しいBlood Diamondが、「The Trick」ではVampire WeekendRostam Batmanglijがそれぞれプロデュース担当している。他にもYeasayerのAnand WilderやEl-Pといったアーティストが関わっている。ChairliftのパトリックやVampire Weekendのロスタムなど、雑多な文化を呑み込んでいくいまのブルックリンシーンを代表するミュージシャンが集ったこと、それによりDas Racistの異なる出自が浮き彫りになったことでVampire Weekendなどとも共振してしまうクロスオーバー・ワールド・ポップミュージックに仕上がったのだろう。
 ここ数か月彼らは、Heemsが『Wild Water Kingdom』(今年の初めにはMixtape『Nehru Jackets』も発表していた)を、Kool A.D.が『51』とそれぞれミックステープを発表し、彼らの1st『Relax』収録の「Girl」のPVが公開されるなど、量産体制に入ったと見えていたが解散前の動きだったとは…今回の解散は彼らの悪フザケであって欲しいというのが率直なトコロだ。

Playlist 8tracks
瀬田 サトシ


 この「Playlist 8tracks」とは、一つのテーマに沿って8曲のお気に入りプレイリストを作ってしまおうという企画。
 タイトル通り、いま話題の非対話型インターネットラジオとして注目を集めている8Tracksで作ったので、8tracksのAPPをダウンロードすると、外でも聞けちゃいます。簡単に8Tracksについて説明しておきますと、このサイトは自分のプレイリストを作成してウェブ上に公開。そのプレイリストを他のユーザーと共有できるというもの。このプレイリストには条件があり、その条件とは、最低8曲以上でそのうち同一アーティストの曲は2曲までという至って単純なものです。しかし、この単純な縛りが意外と難しく誰を入れるのか頭を悩ましてくれます。

それではさっそくどうぞ。

Playlist 8Tracks Dreaming Mix

 テーマはDreamということで、やってみました。理由は至って単純、Rilo Kiley「Dreamworld」を紹介したかったから、ただそれだけ (笑)

 少しだけRilo Kiley「Dreamworld」をご紹介。発売から5年たっても未だ聴き続けている作品が果たして何枚あるだろうか。2007年に発売され、00年代を代表するポップ盤としても人気の高いRilo Kiley『Under The Blacklight』。しかし、彼らはこれを最後に、作品を発表しないまま2011年に解散してしまう。「Silver Lining」や「Breakin' Up」など開放感あるポップソングが並ぶこのアルバムの中でも、「Dreamworld」はメランコリーに溢れ、新しくはないが帰ってくる場所があるような安心感を覚える。そして何かあるたびに聞きたくなる、そんな1曲だ。

 ちなみにこのプレイリストはタイトルに「Dream」の付く楽曲という縛りで8曲を決めてみた。しかし、これが意外と骨の折れる作業だった。自分のiTunesに入っているDreamの付く楽曲は、全部で292曲。どんだけ夢見がちなんだ、自分。。。と思いつつも、断腸の思いで10曲に厳選。しかし、ここからがどれも甲乙つけがたく、もう最後は泣きながらなんとか8曲を選定いたしました。
危うくPart 2を作りそうになりましたが、そこはなんとか思い留まることができてよかった(笑)

冬曲サミット
~峯瀬対談Tomato n'Pine拡大版~

これは、茶屋町CLUBの峯氏と瀬田の2人で開催した冬曲をテーマにした音楽サミット、題して「冬曲サミット」である。しかし、大部分をアイドル談義に終始してしまった。実は、今回仕事の都合により杢さんが参加できなかったことが、話をここまで脱線させてしまった一番の要因だろう(笑)では、お楽しみください。

第一章
Tomato n'Pineは何が特別なのか。

~第一節Tomato n'Pineって誰?編~

-Tomato n'Pine /ジングルガール上位時代-

峯 まずは年間BEST1位にも選んだTomato n'Pineから。
  まずイントロが七拍子っていうところがすでに。僕はキテマスよね。
瀬 わからん、全然わからん(笑)七拍子がそんなにクルの?
峯 七拍子って変拍子使ってるアイドルなんですよ(熱)
  あと冬になるにつれてベタな歌が聞きたくなるみたいな
瀬 マジで!?俺、全然コレ夏感あるで。
峯 えっ!マジっすか!めちゃめちゃ冬の歌ですよ。
瀬 俺は、こういうアイドルの歌を聴いちゃうと夏感しかわかないよね。
峯 2番に入って、このAメロのフレーズ、ドラムのビートが1番と違うっていう所
瀬 (爆笑)もう一回一番から聞こうか(笑)
  これがね、年間BESTの1位になるっていうのが分からない。
峯 マジっすか?う~ん。
瀬 これが、他のアイドルの歌と違う訳は?
峯 バランスの良さと、アイドルなのに商業的なAKB的なベタさではなく、
  音楽好きのベタさに合わしてくれている感じがする。
瀬 あぁ~。昔のポップソング的な感じがするね。
峯 そうですね。ニューミュージックみたいな。
瀬 商業的じゃないって感じはなんか分かるわ。でも懐古主義的な感じがする。
峯 う~ん。いまのアイドル業界の中でできる懐かしさというか、音楽的に振ってる。
瀬 なんか安室奈美恵以前っていうか、エイベックス以前みたいな感じがする
峯 ユーミン感みたいな。歌詞世界的にも。
瀬 あぁ~!!(激しく同意)
  そういうの聞くといまこういうのってアイドルであんまりいないね
峯 アイドルがこれをやってくれたっていう感動と、同じ土俵にたったなっていう。
瀬 あぁ~なるほどねぇ~

~第二節東京女子流との比較編~


峯 冬とは関係なくなっちゃうんですけど。いいですか?
瀬 いいよ。全然いいよ。

-東京女子流「Limited Addiction」-

峯 年間ベストから外した東京女子流の今回のアルバムは、いき過ぎてるんですよ。
  インストルメンタルが2曲入ってたり、可愛く無いんですよ。
瀬 ちょろっと聞いたよ。
峯 聴いたんですか?!
瀬 YouTubeでちょろっとみたよ。
  やり過ぎな感じはスゴイするよね。それと歌のアレ。
峯 歌のつたないというか、成熟してない感じ。
  曲に追いついてないっていうね。
  しかも今回まだ中学生ですよ。平均年齢14歳ですよ。
瀬 アイドルってさぁ。YouTubeとかで自分の好きなのパぁ~って観てて、
  なんか関連であがってくるでしょ。
  で、なんでこんなトコに上がってくるんだろう?
  ってなってとりあえず観るやん(笑)
  見てて、気が付いたらずっとそこを漁ってるていうね。分かるよね。
峯 うんうん、分かる。
瀬 それでハマっていく感じあるやんか。その時にコレを魅せさせられると。
  これは聞かなくていいわってなる。
  これだったら自分の元の路線に戻っていく感じ。
峯 ただエイベックスだから。安室ちゃんみたいなものを取り入れてる。
  これ2ndなんですけど、1stはアイドルっぽいかわいい曲があったんですけど。
  今回は全曲がファンキーなんですよ(笑)
瀬 俺がPVみたのは…
峯 「Limited Addiction」。
瀬 そうそう、コレコレ!俺ね、この曲結構好きなんだよね。
  アーバンポリス24時的なね(笑)
  このちょっと笑っちゃう感じ。
峯 こんなカッコイイギターフレーズいらねぇ~よってね。
瀬 でも、トマトン…トマテン?
峯 トマトゥンパイン。トゥンなんすよ。
瀬 そうそう。Tomato n'Pineの方が絶対良いよね。
  東京女子流を挙げなかった理由が、Tomato n'Pineを聴いたらわかったわ。
  Tomato n'Pineは一つの形としてまとまってる感じがすごくする。

~第三節アイドルの定義って?~



峯 Tomato n'Pineって結構いろんな要素あるんですよ。
  ダンスミュージックだとか。
  それこそ東京女子流みたいなファンキーなのとか。ありつつ。
  パフィーの「渚にまつわるエトセトラ」のカバーとか。
瀬 曲は誰が作ってるの?
峯 アゲハスプリングスっていうクリエイター集団が、作ってるんですよ。
瀬 ほぉ~。そのアゲハスプリングスは他に誰の曲をつくってるの?
峯 ほとんど編曲プロデュースが多くて、エレカシ、チャラ、YUKI。アニソンとか、
  幅きかしてますよ。表にはあんまりでないですけど。
瀬 へぇ~。Tomato n'Pineって絶対アイドルソングとして聞かせるね。
峯 そうなんですよ。しかも全部似た曲っていう訳でもないんですよ。
  Perfumeのそれみないな。
  全然冬の話じゃなくなっちゃった(笑)

-Perfume「願い」-

瀬 あぁ~。そうそうコレね。コレ。冬感するね。
  あっ、そうそう冬感って言ったら俺絶対ボコーダーね。
峯 分かる。
瀬 冬って寒いじゃん。外歩いて聴いてると、包まれてる感じするやん。
  でボコーダー使ってると、なんか声に一膜かかってて包まれてる感じするやん。
峯 しますね。厚着も含めて。
峯 ちょうど受験の時でトライアングルが一番聴いたアルバムなんですよ。
瀬 俺はね。Gameの後聞き始めて、「願い」がちょうど、
  Dreamfighterのカップリングに入っててよく聴いた。
峯 Perfumeって歌詞自体はベタですよね。
瀬 だから俺はぱみゅぱみゅの方が好きなんよ。
峯 あぁ~、僕はその点でPerfumeの方が好きなんですよ。
  ぱみゅぱみゅは中田ヤスタカのエグさをそのまま具現化した感じがするんですよ。
瀬 えぇ~ホンマに!?
  いや俺は、CapselとかPerfumeって音的にシャープな感じがするけど、
  ポリリズムとかさぁ、めっちゃええ曲やし、めっちゃできた曲で、
  Underworldのモロパクリやけど(笑)
  きゃりーさんは柔らかい感じがする。おふざけ入ってる感じがする。
  いまのPerfumeについてどう思う?
峯 Perfumeがあって、その反動としてのAKBじゃないですか。
  Perfumeがアイドルを受け入れる土壌を作ったけど、
  アイドルのメインストリームにいなかったじゃないですか?
  だからAKBのあのベタさで真ん中に立てた。
瀬 あぁ~そうだよね。AKBなんて端っこの端っこだったよね。
  何アイツラみたいな感じだったもんね。
峯 AKB以降のアイドルブームが来て、
  Perfumeは別格でいようとしてる感じしますよね。
  それを意識してのいまなのかなと。
  別格の存在やでっていう意味での、いまのあの曲なんじゃないですか?
瀬 いまのPerfumeって気負い過ぎてる感じがしない?
峯 今年のPerfume動きのあの、Universal移籍して、
  海外進出の感じは気負ってますよね。
瀬 あれだよ。Perfumeが海外進出するって言ってUniversal移籍したけど、
  ぱみゅぱみゅ世界ツアーするからね。
  しかもUSのインディーバンドのDOMとか、カナダの宅録少女Grimsとか
  RadioheadのプロデューサーのNigel Godrichとかが
  きゃりーぱみゅぱみゅイイねって言ってる
  今の世界の音楽シーンがある訳よ。
峯 ぱみゅぱみゅはアイドルやないですやん。あんなん。
瀬 えぇ~!俺はアイドルやと思うけどね。
峯 アイドルの定義は時代ごとにあると思いますけど、
  いまでいうアイドルにカテゴライズされるのは、AKBを中心とした一派ですよ。
瀬 あぁ~。なるほど。
  じゃあ安室奈美恵がアイドルじゃないって言ってるあの感じ?
峯 「安室奈美恵とかSPEEDをアイドルとして見ていいのか問題」ですよ。
瀬 安室奈美恵は小室哲哉の時、
  俺は小学校やったけどアイドルとして捉えてたよ。
  SAMと結婚して、
  沈黙あったじゃんで帰ってきたぐらいから
  アイドルじゃなくなったっていうイメージだよ。
  SPEEDは最初から最後まで、いまもアイドルとして俺は見てるよ。
峯 ZONEは?
瀬 アイドルやん。
峯 SCANDALは、どうなんですか?
瀬 SCANDALなんてモロアイドルやん(笑)
峯 (笑)
  僕から見ると、アイドル的なんですよね。
瀬 アイドル的?
峯 SCANDALのファンってオタって言い憎いじゃないですか?
瀬 いやオタよ!
峯 アイドルソングの連載も持っているライムスターの宇多丸さんが
  言うアイドルの定義は「魅力が実力を上回っている存在」なんすよ。
瀬 魅力が実力を上回っているってことは、実力ないのに惹かれちゃうっていう。
  その定義なるほどねぇ~。
  そう考えたら…きゃりーぱみゅぱみゅめっちゃアイドルやで。だって実力ないで。
  めっちゃヘタやで歌。
峯 ああいうことができるっていうのは、魅力なのか、実力なのか。
瀬 歌ヘタやし、サマソニでLiveみたけど出てきた時、タタタタッって出てきて
  「どうも~きゃりーぱみゅぱみゅですぅ~。」みたいな感じやで、
  私特になにもできないんで、皆さんと一緒に盛り上がりましょうみたいな。
  あれを見た時にアイドルやなって思ったよ。
  でも…スゴイ楽しかった。アイドルのLiveっていいなって思った。
  アイドルのLive見たことある?
峯 ももクロ二回行ってますよ。
  Zepp Osakaで見たんですけれどあれくらいのキャパだと
  ペンライトで彼女たちが見えないっていう(笑)曲も聞こえない(笑)

-ももいろクローバー「労働讃歌」-

瀬 ももクロって全部中途半端!これやったらリリカルスクールの方が良いよね。
峯 ももクロって基本レイプっすから、その辺に関しては。
  大槻ケンヂのやってる特撮の楽曲を作ってるNARASAKIが作ったのは
  全部そういう感じになってしまいますよ。
瀬 これやったらGo!Team聴くもん。

-Panda1/2「上海は夜の6時」-

瀬 Panda1/2の「上海は夜の6時」って知ってる?
  藤岡みなみちゃんとジェームス・パンダJrのユニットなんやけど。
峯 あぁ~、アイドルクロニクルに載っていましたね。
  (注 今年ミュージックマガジンから発売されたアイドルソングレビュー本)
  これビクターじゃないですか?
瀬 そうなんよ。ビクターやのにCDデビューしてないかわいそうな娘なんよ。
峯 これめっちゃいいじゃないですか。

  (注 ちょうど、この収録の裏でパンダガールこと藤岡みなみが
      Panda1/2脱退の発表と、アルバムの発売が決定。)

-AKB48「ちょうだい、ダーリン!」-

峯 これはどうです?AKBの「ちょうだい、ダーリン!」。
  これもろフィルスペクターやん。ロネッツやんってなりますよ。
瀬 アイドルって基本二番煎じやん。
峯 だから一番手を聴いとけばいいはずなんですよ。絶対。
瀬 俺は一番手を聴きたくなっちゃうよね(笑)で、ときどき疲れたときに、
  こういうのがあってもいいのかなっていう。
峯 あぁ~。僕はむしろ元ネタをどう処理したのかが気になる。HIP HOP的な。

第二章
やっと始まりました冬曲サミット

~第一節冬はボコーダーでしょ編~

-Drake「Fire Works」-

峯 ちょっと冬の話戻りますか?紙面に全然使えない(笑)
瀬 だね。冬言うたらボコーダーって言ったけど、
  ボコーダーしか思い浮かばんかった。
  まずはDrakeのFireworks。
  と言いながらこれはボコーダー使ってないんやけどね(笑)
峯 花火?
瀬 そうそう花火っていうタイトルね。歌詞も7月なんやけど。
  最初花火がバンバンバンって上がるやん。
  その感じが冬聴いてると染みてくる感じなんよ。夏を思い出す感じがする。
  Drakeは夏聴いてると、うっとうしくなるだよね(笑)

-Bon Iver「Holocene」-

  あとはコレ、インディーロック好きな人は、去年はこれだろうっていう。
  Bon Iverっていうやけど、フランス語で「良い冬」って意味なんよ。
  グラミー賞とか獲ってね。
峯 (笑)ボコーダーで裏声っていう。
瀬 讃美歌チックな聖歌隊的なところが冬来たなっていう。
峯 これはわかりますね。

-Mount Kimbie「Tunnel Vision」-

瀬 あと、冬ってなんか暗いの聞きたくならない?
  Mount Kimbieとか。この人たちは、
  James Blake周りで一緒に出てきて人たちなんやけど。
峯 冬っていうか、年中聴きたくならないですね(笑)
瀬 こういう暗~いの聴きながら寒いなって言ってポーッとするっていう(笑)
  で次が。

-Passion Pit「Sleepyhead」-

峯 おぉPassion Pit!
瀬 そうそうSleepyhead。冬っていう感じしない?電子音がネオンみたいでさ。
峯 ベルの使い方がもうクリスマスですね。
  もうこれフォーククルセイダース「帰ってきたヨッパライ」ですね。
  回転数いじくるっていう。
瀬 今年の夏、サマソニでみたんやけど。
  正直あんまりテンション挙がらんかったもん。
峯 スキー場で聴きたいですね。
瀬 スキー場と言えば広瀬香美やね。
峯 広瀬香美。僕選んでますよ。
瀬 マジで(笑)

~第二節冬はアカペラでしょ編~


峯 広瀬香美の冬ソングといえば
  「ロマンスの神様」とか「ゲレンデが解けるほど恋したい」なんですけど、
  僕は違うんですよ。
瀬 そうじゃないと、広瀬香美の冬ソングはコレだ!と。お前らコレを聴けと(笑)
峯 Dear Againですよ。

-広瀬香美「Dear...Again」-

瀬 あぁ~知ってる。最初から冬っぽいね。もう一回最初から聴こっか(笑)
峯 僕は、ボコーダーよりもアカペラが聞きたくなるんですよ。
  コーラスワークの分厚いヤツが聞きたくなる傾向があるんすよ。
  ロマンスの神様とかは、僕にとっては派手すぎるんすよ。痒くなる。
瀬 どういうこと?(笑)
峯 お前ら冬やのにアツいやんけって、バブル感がする。
  僕このBメロはJ-POP1やと思うんすよ
瀬 爆笑
峯 広瀬香美って声量もあって声もめちゃめちゃ通るんですけど、
  そのめちゃめちゃ上手い人が、音量を抑えた感じが、寒さ感じますね。
瀬  (笑)
  冬ってJUJUとかそういう感じするけど、JUJUってガンガンくるやん。
  でも、これちょうど良い冬加減やね!
峯 声張るとね。歌詞が入ってこないんすよ。
  これくらいがちょうど歌詞世界が聞きながら入ってくる。
瀬 あぁ~なるほどね。まぁ俺歌詞はどうでもいいけどね(笑)
峯 (笑)このコブシの回し具合
瀬 演歌か!(笑)



峯 アカペラでもう一つ。

-山下達郎「Love Can Go The Distance」-

瀬 出た~達兄~!!いいね。
峯 山下達郎と言えばクリスマスイヴじゃないですか。
  あれは殿堂入りで、「Love Can Go The Distance」ですよ。
瀬 あぁ~コレね。ど真ん中やね。
峯 ど真ん中ですよ。
瀬 スゴイね、達兄~。だって達兄ってさぁ、夏やん。
  夏やのに、冬も達兄~っていうね(笑)
峯 (笑)
瀬 スゴイ冬感する、温かいもんね。
峯 CMの保管もあるでしょうね。
瀬 ストーブの匂いするもんね。この曲聞いてると。マフラー巻きたくなるもん。
峯 スターダストレビューは、アカペラでも冬感がない。
瀬 だねぇ~。なんか夏!夏、夏やね。行っても秋までだね。
  声かな(笑)冬に合わない。
峯 これも歌いすぎてますよね。冬にしては。
瀬 あぁ~。
峯 山下達郎って歌いすぎることあんましない。
瀬 冬って、歌い過ぎたらあかんのか(笑)。物悲しさがなくなってしまうのかな。
峯 スターダストレビューのクリスマスライヴに行ったことがあって。
  ガッツリ、アカペラコーナーでハンドベル持ってやるんですよ。
  でも!冬っぽくないんすよね(笑)
瀬 クリスマスコンサートやのに、どういうことや(笑)

~第三節僕のルーツだよ編~

-桑田佳祐/Kissin' Christmas-

峯 じゃあこれは、クリスマスの記号的なモノを散りばめまくったっていう。
  86/87年のメリークリスマスショウっていう番組で、司会が、明石家さんまで、
  桑田佳祐、松任谷由美、泉谷しげる、RCとか出てた番組で。
  そのために作詞松任谷由美作曲桑田佳祐で作られた曲です。
  で、これまで、今年のBestに入るまでは一切音源化されてなかった曲です。
瀬 スゴイね。何十年越しの!
峯 今年ようやく、クリスマスに聞けるようになったっていう。
瀬 あぁ~そっか。でも、クリスマス感、あんま無いね(笑)
峯 桑田さんって結構クリスマスソング何曲もつくってるんですけど、
  あんまりどれも、シャンシャン言ってるだけで、あんまりクリスマス感がない(笑)
  代表曲の「白い恋人達」も冬要素いっぱいあるはずなんですよ。
  ピアノ弾き語り調だとか、単音でスタッカート鳴らす感じだとか、
  ストリングスとか。
瀬 一つ一つが全部、強いんよね(笑)

-木村カエラ/Snowdome-

峯 木村カエラ「Snowdome」ですよ。
瀬 カエラ姉さんね。俺木村カエラはね、冬っていうよりも陽射しを感じるかな。
峯 最近は、母性を出してきやがったんで(笑)
瀬 (笑)その母性を出した木村カエラについてどう思います?
峯 母性なんか出したら絶対アカン。
  木村カエラは、尖ってるのが木村カエラですよ。
  あの誰も信じないみたいな。
  明るい曲を歌ってるのに歌詞暗いの代名詞的存在やった。
  それやのに、歌詞中にありがとう入れやがって。角が取れた。
瀬 まぁ角は取れていくよね。
峯 この頃の木村カエラは、
  尖ってる中にこういうたまに
  真っ直ぐな曲がアルバムの中にあると捕まる感じがある。
  元々、ココロの状態をそのまま歌にしてる人だから、
  まぁ幸せなんやろうなとって(笑)

-はっぴいえんど/しんしんしん-

峯 はっぴいえんど。しんしんしん。
瀬 冬感はしないね。
峯 冬感というか、お正月に聞きたくなる。
瀬 あっ!?冬っていうのと、お正月っていうので、
  だいぶニュアンスが変わるね。
  こんなん正月から聴く?
峯 年末聞きたくなる。
瀬 僕は、年越しはやっぱりジャニーズだよね。
峯 カウントダウンTVじゃなくて?
瀬 ジャニーズだね。
峯 紅白が面白くなくて一人で部屋で聴いてるみたいな。


-槇原敬之/今年の冬-

峯 じゃあめちゃめちゃ冬アーティストと言われているこの人は。
瀬 あぁ~マッキーね。
  あぁ~マッキーは冬じゃないと聞きたくない感じするね。
峯 夏聴くとアツい。
瀬 マッキー今年なんか出したよね。
峯 冬BEST出しましたよ。
瀬 またBESTか(笑)マッキーさ。悲しいの多いよね。
  だから冬聴きたくなるんじゃない?
峯 悲しいのは冬にあんまり聞きたくないですよ。
  それからマッキーはほっこりしますよ。
瀬 マッキーさ、別れ話多いよね。イメージかな。
峯 それ96年までですよ。

-槇原敬之/涙のクリスマス-

峯 涙のクリスマス。
瀬 この歌詞に出てくる信号!信号はね冬感でるよね。
峯 光るモノってクリスマスですよ。
瀬 あぁ~たしかにね。キラキラする感じ。あの冬ってさ。
  この信号待ちの人の隙間が冬を感じさせるよね(笑)
  あれっ、思わない(笑)

瀬 話変わるけどさぁ、初めて買った音楽は?
峯 マッキーですよ。マッキーのBEST。
  「もう恋なんてしないなんて」を小6のとき聴いてた(笑)
瀬 WOW!はじめようよ。恋はじめようよ(笑)
峯 なんじゃこの素敵なメロディーはってなってたんですよ。
  中学・高校と好きだったから、マッキーと同じ学校入って、
  同じ軽音楽部の部長になったんですよ。
瀬 マジかぁ~頭イタイわぁ~
峯 なんでなんすか(笑)
瀬 俺いまインディーロック三昧やけど、最初はELTやからな。
  はじめて買ったのはELTのシングル。
峯 LIVE一回行ったことあるんすよ。
瀬 えぇ~、俺ないよ(笑)
  いま、自分の中できてるダサい80年代ポップが来てるのは、
  この辺がちょっとかすってるのかなとか。
峯 ELT全部持ってますよ。
瀬 えぇ~引くわぁ~。
  俺なんか、
  ELT入ってたら自分の過去を覗かれているようで無理やわぁ~
峯 僕はいまもマッキーガンガンに聞きますしね。全部が積み重ねですね。
  ここが好きで、他に手を広げますもん。絶対。
瀬 でも、そうやって好きになるやん。
  そしたら、昔のダッセぇ~なぁ~って切り捨てない?
峯 あぁ~銀杏ですね(笑)ガガガとか。それぐらいですね。
瀬 俺は結構あるなぁ~

-Every Little Thing/Tomorrow-

瀬 あっ、この曲良いね。
  あっそうそう、
  この流れで、コレ誰にも共感してもらえなくて腹たってるんやけど。
  名曲やと思うんだよね。季節の変わり目ごとに毎回聴く。

-新垣結衣「No Problem」-

峯 あぁ~新垣結衣。コレいいですよ。めちゃめちゃ良いですよ。
瀬 でしょ!めっちゃいいんよ。
  じゃあ、そろそろまとめに入らんとね
峯 どうまとめるんすか。
瀬 まとめんでいっか?
峯 今日のBEST選びます?
瀬 じゃあアレ聞かしてくれる?

-Tomato n'pine/ジングルガール上位時代-

峯 じゃあお言葉に甘えて、やっぱこの七拍子がたまんないんすよ。
瀬 ブサイクだねぇ~。いやそうでもないか?
  シングルガール上位時代かぁ~なるほどねぇ~
峯 いやジングルガールです(笑)
瀬 アルバムタイトルPS4U。うわぁ~PS For Youやんか!
  マッキーが好きっていうバックボーンを聴いた上で、
  これを聴かされると分かるよね!
峯 分かるでしょ。ポップミュージックとして秀作ですよ。
瀬 秀作やね。俺の年間ベストと全然ちゃうね。
峯 モクさん入れてもちゃいますよ。
瀬 あぁ~だろうねぇ~。今年はほんと邦楽聞かなくなったね。
  去年までは聴いてたのにね。
峯 じゃぁぱみゅぱみゅぐらいっすか?
瀬 ぱみゅぱみゅとMoe & Ghostsぐらいだね。あと新垣結衣ね(笑)
  あとトマテン・ペイン?
峯 トマトゥン・パインですよ。
瀬 これはイイね!

ぐだぐだと終わらぬ音楽談義は続くのであった。

後日談

 瀬田さんとの白熱対談を終えたそのわずか3日後、この中でも大きく取り上げ、『PS4U』は私の「ベストアルバム2012」でも堂々の本年度第1位となっているTomato n'Pine(以下トマパイ)が12月29日を持って散開(何故にYMO?つまり解散)することが発表されました。
 元々2009年に2人組でデビュー2010年に現在の3人体制となったトマパイですが、私自身このグループを知ったのが昨年のシングル「ジングルガール上位時代」でした。J-POPとしては珍しい7拍子のイントロ、対談中でもあったユーミン感満載のアレンジ・メロそして情景描写巧みなストーリー性のある歌詞でアイドルソングを超えた上質シティポップスかと思いきや、デレッデレのアイドルしか出来ないセリフ回し、その全てに心をつかまれました。その超名曲「ジングルガール~」で上がりきったハードルを超えたのがその翌年、今年出た現3人体制初のアルバム『PS4U』なのでした。奇しくもこれが最初で最後のアルバムとなったのが残念でなりません。
 散開報道が出た直後ツイッターを追っていると、これを機としてアイドルブームの終わりの始まりが来るのではないかと危惧する人もおられました。AKBの対抗馬としての地位を完全に築いたももいろクローバーZを始めとする楽曲派グループアイドルの一翼を担う存在になりつつあったトマパイはこれからシーンの中心へ、いやどちらかといえばアイドルシーンと一線を画したPerfumeに近い位置に向かうこともできる稀有なグループでした。
 誠にもったいない!!後は誰に期待しようか。avexにいながらユーロダンスビートではなくゴリゴリのファンクダンスミュージックを鳴らす東京女子流、そしてアイドル界のお姉さん的存在バニラビーンズか、それとも新進気鋭のトラックメイカーtofubeatsが手掛けるヒップホップアイドルユニットのリリカル・スクールか…え!?リリカルも高いラップスキルと歌唱力で屋台骨となっていたマリコが年内を持って卒業で新メンバー募集だと!?うーん、こりゃ不穏な空気が漂ってきたような…

冬曲サミット・不参加の杢谷による戯言 

 冬曲サミットに不参加となった新人OLの杢谷です。社畜ですみません。
 ってことで、私、杢谷の「冬に聞きたいこの曲」を紹介します。


The Chemical Brothers/Star Guitar
(The Chemical Brothers/Come With Us収録)

 この曲を聞くと思い出す、というかイメージするのが、2000年代前半の地元・浜松の駅前の繁華街。季節はちょうどイルミネーションで彩られる冬。よく聞いていたんだろうな。というか、イントロのきらきらシンセが流れ星というか、そもそも曲名にStarが入っている時点で、何か輝くものを連想させ、テクノの電子音がどことなく低温で、冬っぽい、冬に聞きたい!ってなるのかも。



JJ72/Formulae
(JJ72/ I To Sky収録)

 天使のような声を持つマーク・グリーニー(vo&g)を中心に、ヒラリー・ウッズ(b)、ファーガル・マシューズ(dr)の3人で、内なる秘めた思い(ほとんどのクリップでギターを破壊しているような…汗)を美しいメロディに乗せて歌い上げる三ピースバンド。コールドプレイと同じく、ビューティフルにロックを昇華させた彼らの代表作。終盤の紙ふぶきが雪を思い起こさせ、余計に冬に聞きたい作品になっているのかも。ただただ美しい。なぜか第一回ロッキン・オン・ジャパンフェスに出演。こんなに美しいバンドが出演したことに驚きを隠せない。今は解散してしまっているが、二〇〇〇年代前半を代表するバンドの一つであるのは間違いない。


Watergate/Merry Christmas Mr.Lawrence(Des Mitchel Remix)
(Watergate/Heart of Asia収録)

 坂本龍一の『戦場のメリークリスマス』のトランスカヴァー。冬といえば、これ!と、一番押したいのがこれ。メリークリスマスなだけに、冬っぽさを、戦場だけに切なさ、寂しさを、それらが相まって、冬を強調させている。トランスの無機質な電子音やエコーもまた、それを強調させている。なぜかトランスは冬に聞きたい。夏はそうでもない。おそらく、冬によく聞いていた経験と、トランスが持つ、無機質な電子音が冷たさを連想させているからだ。


Mew/Am I Wry No
(Mew/ Frengers収録)

 デンマークはコペンハーゲンのバンド。リリースされた二〇〇三年当時、FMラジオでパワープレイされていたから、さぞかし、収録されていた「Frengers」、流行っていたのだろう…って思っていたら、最高位本国デンマークでは二位、UKは一〇二位ですか!!!?イントロのギターサウンドから冬っぽい。全編通してかかっているシンセが冬っぽいんだと思う。さらにヨーナスの中世的な声、時折入る合いの手のピアノ音が美しく、神秘性を演出。出身がデンマークなだけに、神秘的で美しいサウンドが生まれた、つまり、それが冬っぽいのだろう。


Dexter Gordon Quartet / The Christmas Song
 (Dexter Gordon Quartet/The Panther収録)

 ジャズで冬!って言えばこれ。そもそもジャズ(伝統的な少人数編成のジャズ、Be-Bop,Hard Bopと呼ばれるもの、この作品は一九七〇年収録)は冬に聞きたい。とくにこういうバラードは。ピアノが美しく、Dexのテナーが渋くて、良い。きっと、時代が時代なら、男子がこんなテナーを吹けば女の子は落ちるだろうな。楽器ができてもモテないと、ある有名ジャズピアニストの方がおっしゃっていたので、現実はそんなもんだろう。
ちなみに、デクスター・ゴードンはメタリカのドラマーのラーズ・ウルリッヒの代父(キリスト教の洗礼を受けるときに立ち会い、証人となる人)だそうだ。


 冬は美しく、哀愁漂う重たいきれいな曲が聞きたいっぽいです。また、寒い地域出身のミュージシャンの作る音楽は美しく、冬っぽい、冬に聞きたいってなるのかも。ジャンルは違っても、5曲中、クリスマスソングが2曲、というのも、クリスマス=冬のイメージが定着しているのは間違いない。冬からイルミネーションを連想するのもまさにその典型だよね。

茶屋町クラブ are...

峯 大貴

同志社大学在学中の21歳。無料電子音楽雑誌「HITORI JAMBOREE」「茶屋町クラブ」発行人(情報はTumblrからチェック!!)。岡村詩野さん音楽ライター講座in京都受講生。ポップ、ロック、フォーク、アイドル、落語、日本史、皇室と何でもござれ、語りましょう。気鋭のJ-POP批評家、と言い張りたいが絶好調就職活動中。
Tumblr(公式ブログ)http://minecism.tumblr.com/
Twitter https://twitter.com/mine_cism

杢谷 栄里

静岡出身、大学進学を期に上京。そのまま東京で就職し、今年7月より大阪配属。華の江坂OL1年目。但し、本人は全くそうだとは思っていない。出勤時にホラーズやスピリチュアライズドを聞く、サイケガール。その一方で、ジャズを習いに行く、ジャズ女子でもある。担当楽器はテナーサックス、フルート。しかし、本人は全くおしゃれだとは思っていない。中学時代はブリットポップ、高校時代はガレージ、トランス、テクノ、大学生・院生時代は(伝統的)ジャズ、サイケデリックロックに傾倒。なんでも聞いているようで実はかなりの偏食家である。

瀬田 サトシ

ポップばかり聴いているポップ愛好家。余談ですが、Kevin ParkerのギターはCasio DG20らしいです。単体だとおもちゃみたいな電子音を出しますが、シンセと重なったときあの何とも言えない音を生み出すのかと思うと、自分も欲しくなってきました。リズム・セクションも内蔵しているそうなので、一人バンドもできそうだし(笑)

茶屋町クラブ入会の案内…

どこかしらから音楽好きが集まってくることで、いま業界を震撼させているらしい“水の都”大阪は梅田の茶屋町CLUBを拠点に活動する
不定形音楽評論ユニット“茶屋町CLUB”
当CLUBは先ほども書いた通り不定形ユニットの形をとっておりまして、その時集まった者たちで電子書籍を発行しております。我々と一緒に音楽談義がしたいぞという方おられましたら、お気軽に茶屋町倶楽部事務局までお問い合わせください。

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茶屋町クラブ 創刊号

2012年12月19日 発行 初版

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