編集中
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はじめましての方もそうでない方もこんにちは。作家・編集者のバーバラ・アスカです。
通常、まえがきというものは「編集がすべて終わった後に書くもの」であり、「前書き」という名前自体看板にいつわりありなのですが、このまえがきは「真の」まえがきなのであります。なぜなら、この『実験料理』とは、これから書く本なのですから。
料理は化学実験だ、とはよく言われることですが、実験は実験でも「どうなるかわからん実験」と「わかっているのだが確認するための実験」があります。
この『実験料理』の「実験」とは、あきらかに前者であります。
本で見たり、人に聞いたり、自分で思いついたりした料理をはじめて作る時はドキドキの連続であります。それが「失敗したら被害甚大」な場合はなおさらです。例えば、「高級食材」を使う料理であったり、家族がおなかを空かせていま、そこで待ち構えている場合などです。
料理をする方ならわかると思いますが、料理馴れしていれば、材料と作り方を見れば、だいたいコトの難易度と味、見た目くらいは想像がつきます。
しかし、つかないものもあります。それは、自分の経験から大いに外れた料理の場合です。例えば突如「豚が一頭手に入ったからしめてさばいて料理を作ってくれ」といわれたら、私はマジ泣きしてしまうでしょう。いや豚でなくとも「コケー」と鳴いている鶏の入ったカゴをつきだされても泣きだしてしまうかもしれません。
かように料理とは一坪の中で行われる壮大な冒険と実験。自宅にいながらにしてロビンソン・クルーソーも真っ青の経験が得られる行為であります。
この『料理実験』では、壮大な冒険から極小の実験まで、さまざまなことを試してみたいと思います。
もちろん私はケチでありますから、「失敗した食材を処分する」などということはしたくありません。常に成功を期してのぞみたいと思います。
つまり、本書は「レシピ集としてはあんまり役にたたない」ことが想像されますが、私とともにロビンソン・クルーソー並みの大冒険に出たい方はどうぞお読み下さい。
バーバラ・アスカ
真のまえがき
実験1「肉じゃが炊きこみごはんはアリなのか」
実験2「ぬれおかきでごはんを食べる」
実験3「切り干し大根の煮物のつゆでごはんを炊いてみる」
実験4「丸ごとの鶏を焼いてみる」
肉じゃが。
大好きであります。
肉じゃがそのものも愛しておりますが、肉じゃがを食べた後の「つゆ」をごはんにかけて食べるのが大好きなのです。飲み屋でも「おいしい肉じゃが」がでたら、「すいませーん、半ライスひとつ」というのが常であります。
では。
もーこの際、「肉じゃがのつゆでごはんを炊いてしまえばどうか」というのが今回の実験であります。
なぜ、このようなことを思い立ったのかと申しますと、私がいくら「肉じゃが汁かけごはん」をラブラブしておりましても、つい、肉じゃがの汁を余らせてしまい、「肉じゃが女王様の汁を捨てるなんてもったいない。私下僕がのちほどごはんにかけさせていただきます」(なぜ敬語?)と取っておいても結局ニワトリのように三歩歩くと忘れてしまい、結局ダメにしてしまうという、ハムレットもかくやという悲劇を繰り返してまいりました。
それならば! 「肉じゃがを作った翌日は、肉じゃが炊きこみごはんを作る」というのを我が家の憲法としてしまえば、「捨てるべきか、取っておくべきか、それが問題だ」という事態は起こらないのではないか、というわけです。
前日の肉じゃがの余り
めんつゆ 少々
水
飯ごう
ガスコンロ
我が家ではごはんを炊くのにもっぱら「飯ごう」を利用しております。都市に住んでいてもココロは陸軍。「耳をすませ! 飯ごうの声が聞こえるはずだ」と、同志(娘、約1名)に言い聞かせ、日々炊事にいそしんでおります。
申し訳ありません、ここまで書いたら突如眠くなって参りましたので、1時間ほど仮眠してまいります。
ただいま戻りました。先ほどの続きでありますが、「飯ごう」でのごはん炊きのコツは「1に給水、2に水加減、3、4がなくて5に火加減」であります。
1、まず飯ごうにといであるお米を入れ、その1・3倍の量の「肉じゃがのつゆ」を入れます。「つゆ」が足りない場合はめんつゆと酒を少々加え、それでも足りない場合は水を足します。味が濃くなりすぎないよう、味見をしてください。どのくらいの濃さにしていいかわからない場合は、「普通の肉じゃがのつゆの濃さ」にしましょう。
2、そのまま30分以上、できれば1時間おきます。電子ジャーでの場合はそれほど気にしなくてもいいのですが、飯ごうでの炊飯は「吸水」はコトの成否にかかわります。親が死んでも水吸わせろ。親が死んでもフイルム巻け。あ、すみません、後者は「アナログ時代のカメラマンの心得」でした。
3、米が水を充分に吸ったら、肉じゃがの残り(ただし、じゃがいもは除く)を具として飯ごうに入れ、強火にかけます。ふたの上には重しとして、「冷たい牛乳もしくはお茶」を載せておくと、炊きあがったときには飲み頃の温度になっています。
4、飯ごうの中身が沸騰して中身がこぼれ出してきたら、火をごく弱火にします。
5、中から「プチ、プチ」という音がしてきたら、20秒強火にし、火を止めて、飯ごうをひっくりかえして蒸らし、飯ごうが手で触れるくらいの温度になったらできあがりです。
……と、なるはすだったのですが。
4の段階で大変なことが判明いたしました。
「飯ごうをいつまで加熱するか」の目安は、「中身が『プチ、プチ』と言い出したとき」なのですが、中身に「肉じゃがの残り」をを入れてあるので、それがグツグツ音を立ててしまい、とてもプチプチは聞こえそうにありません。あわててタイマーを5分セット。
さて5分たちました。とりあえず5の手順を実行。
飯ごうが冷えてきたので、それではとふたを開けると、
……。
まだちょっと加熱不足。まだちょっとべしゃべしゃです。
ふたを閉じ、さらに20秒、強火で加熱。
冷えたのでふたを取ると、もー、ひといき。
再度ふたを閉じ、さらに20秒、強火で加熱。
さてどうか、とふたを開けると、おお、リカバリ成功。たいへんうまそうであります。
飯ごうの中ぶたによそって、いただきまーす。
ぱくぱく。
大変美味であります。ただ、お客様にお出しできるルックスではありませんなあ。
ぱくぱくぱく。
たいへんおいしくいただきました。
注意点として、味が濃いと後でとてものどがかわくので、たくさん食べたいときは味は薄めに。
それと、肉じゃがの翌日にコレ作ると、味的に飽きるので、もしかして翌々日くらいのほうがいいかもしれません。
二度の調理でとろとろになった玉ねぎと肉のだしが染みた、たいへんおいしい炊きこみごはんであります。普通に作る場合は材料を炊飯ジャーに入れて炊くだけでイイと思います。
2012年12月13日(編集中) 発行 初版
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作家・編集者。好きなことだけやって生きていきたい。一生幼稚園児魂。(編集中)