2012年のゲームエンタメ総まくり! 今年登場したゲームの中で、一番を決めようじゃないか(勝手に)。ゲーム系メディアから3人の編集長にお集まりいただき、独自の視点で今年のゲーム系エンタメ作品や市場全体を振り返りつつ、ゲームとゲームメディアが今後どうあるべきかをうかがっていきます。
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音楽、映画、ゲーム、ネット、IT、すべてのエンターテイメントの原点を見つめなおし、来るべき未来へのエンタテインメントのあるべき姿をポジティブに考える会です。開催時期に合わせてのゲスト・テーマを決定し、参加者とそれらを共有し、現状分析、動向を研究し、新たな化学変化を起こし、まだ見ぬ方向性、あるべきエンタメ像を創造するものです。
参加者においては、新たな気づき、明日からの活力になる勉強会、企画開催を心がけます。
音楽、映画、ゲーム、ネットワークなど、すべてのエンタメビジネスに精通した黒川文雄がナビゲートするエンタメ小宇宙。それが「エンタテインメントの未来を考える会」、黒川塾です。
明日からのエンタメビジネス、自らのライフスタイルへの気付きを与え、与えられる会にしたいと考えます。毎回、多才なゲストを招待しての事例紹介、クロストーク、質疑応答形式で進めてまいります。
今回のテーマ
ゲーム・エンタメ系メディア有識者による
「2012年 エンタテインメントの未来を考える大賞」選定ならびに忘年の夕べ
2012年を振り返り、ゲーム・エンタメ系メディア系編集長たちを一堂にお招きし、登壇ゲストの印象に残る今年のコンテンツなどを語り合っていただきました。
同時に一般から(フェイスブックなどのアンケート機能などを活用)のアンケートなどによりエントリーを募り、2012年度の「エンタテインメントの未来を考える大賞」(コンテンツ)を選定したいと思います。
2012年を振り返り登壇者が考えるトピックなどをご披露いただきます。またこれからの未来のエンタメの方向性などを語り合う会にしたいと思います。
進行にシナリオはありませんので、思わぬサプライズ発言や普段は言えない本音を聞ける可能性もあるかもしれません。
ゲスト紹介・プロフィール
■土本学(つちもと まなぶ)
株式会社イード インサイド編集部編集長
インサイド、Game*Spark、GameBusiness.jpなどゲーム系メディアを統括。2000年に個人でゲーム情報サイトを立ち上げ、大学卒業を期に2007年、IRIコマース&テクノロジー(現イード)に事業譲渡し加わる。主な興味関心はビジネスとしてのゲーム、インターネットメディア、マーケティングリサーチ、お酒を飲むこと。
GameBusiness.jp
■目黒 輔(めぐろ たすく)
株式会社エンターブレイン 「ファミ通App」編集長
1974年生まれ。大学卒業後、フリーライターを経て株式会社エンターブレインに入社。「週刊ファミ通」、「ファミ通.com」、「ファミ通DX」の編集者、記者を経験後、2011年から「ファミ通App」の編集長に。Web媒体運営のほか、ムック本「ファミ通App iPhone&Android」やファンブック「世界のなめこ図鑑」なども手掛ける。直近では12/19に「ファミ通App iPhone&Android NO.005」を発売予定。
ファミ通App
■佐藤和也(さとうかずや)
朝日インタラクティブ株式会社 CNETJapan編集記者
徳間書店インターメディアでゲームキャラクター雑誌「バーチャル・アイドル」、新紀元社でコナミ公式攻略本やゲーム関連書籍のほか、ゲームやアニメ媒体各所での編集・ライター経験を経て、2008年よりシーネットネットワークスジャパン(現朝日インタラクティブ)にてゲーム情報サイト「GameSpot Japan」を担当。2010年より編集長を歴任。「ドリームクラブ」や「アイドルマスター」などにおいて、特定のキャラクターを押し出す記事で好評を得る。2012年4月よりITニュースサイト「CNET Japan」編集記者(CNET Japan編集部)として異動し、ゲームを含めたデジタルコンテンツにおけるエンターテインメント関連記事を主に担当している。
GameSpot Japan
CNET Japan
黒川文雄の 『帰ってきた! 大江戸デジタル走査線』
〜2012年11月30日のブログより抜粋〜
パネラー 土本学
目黒輔
佐藤和也
黒川 皆さんこんばんは。本日は2012年12月12日のゾロ目ということで、コンピューターっぽくていい日かなと思います。今回の黒川塾は、今年1年のエンタメ業界を振り返りつつ、ゲストの御三方それぞれに思うことを語っていただこうとおもいます。またエンタメ大賞を決めます。勝手にやることなので価値があるのかっていうところではあるんですが(笑)。では、ゲストの御三方に登場していただきます。
佐藤 CNET Japan編集者の佐藤和也です。最初は雑誌媒体などで編集の仕事を十数年、その後Game Spot Japanで編集長をしておりました。4月から現職です。よろしくお願いいたします。
黒川 次は、ナチュラル・ボーン・編集長こと土本学さんです。これについては後で説明しますが、まずはご本人から。
土本 株式会社イードの土本学です。インサイドというゲーム媒体の編集長です。他にゲームスパーク、Game Bisness jp、アニメ! アニメ! などを全体的に見ています。今日は特に話すこともないんですが(笑)。今年起こった出来事についてなにかおもしろいことが話せればなと思っています。
目黒 ファミ通Appの目黒輔です。去年の4月にスマホゲームの情報サイトを立ちあげ、同時に関連のムック本、なめこ図鑑やパズドラのブログ本などWebと紙の両方をやっております。今日はよろしくお願いします。
黒川 先ほど土本さんから「いいなぁファミ通は紙とWebが両方あって」と楽屋で話をしていたんですが、今のところ本の方は不定期刊行なのですね?
目黒 そうです。プッシュしたいタイトルがある時に出す、っていう形式です。
黒川 では今日もアプリの話題の時は目黒さんの熱い語りに期待しましょう。
目黒 ・・・がんばります。
黒川 そんなに固くならないでくださいよ(笑)。今日はわたしの繋がりの中でも素晴らしい方々に来ていただくことができました。いつも黒川塾の取材をしていただいている佐藤さん、サイトで原稿を書かせていただいている土本さん、そしてやはりエンターブレインさんからも参加していただきたいということで目黒さんにお声がけしました。
まずは2012年を大きく振り返るところから始めたいと思います。前半は家庭用ゲーム機のタイトルがあまり振るわず、厳しかったかなと思います。一方ソーシャルゲームではコナミさんの『ドラゴンコレクション』が牽引したというのはあった。夏前にコンプガチャ問題が取り沙汰され、これはいろいろな方面の思惑とでもいうか、恣意的な要素があって結果ああいう形で取り上げられてしまったと思うのですが、それによって世の中的にはソーシャルゲームについて一旦冷静になろうよという空気があったと感じています。それとは別に、古くからあるゲームメーカーが盛り返してきた。いい作品を作って世の中に出していくことによってきちんとユーザーに評価されていくというまっとうな流れがありました。前回ゲストに来ていただいたガンホー・オンライン・エンターテイメントの『パズル&ドラゴンズ』はその好例だと思っています。あの作品はまさに枯れた技術の水平展開と言えると思いますが、そうしたゲーム作りが評価されたことは誠に喜ばしいことです。私のざっくりとした印象はこういう感じですが、ゲストの方々はいかがでしょうか。まずは土本さん。
土本 やっぱりこれですね。このぬいぐるみ。
黒川 でました! 『LINE』のキャラクターの『ブラウン』ですね。
土本 今年はやはり『LINE』がすごかった。最近登場したゲーム『LINE POP』も配信開始12日で1000万ダウンロードを突破しています。電車に乗っているとかわいい女子高生が結構遊んでいるのを見かけるんです。これはすごいなと。
黒川 今日はぜひともブラウンについて語りたいとおっしゃっていましたね。
土本 本当に、キャラがかわいいってことがこんなにも人を引きつけるのかと感心しています。キャラクターの強さを改めて感じたのと、昨今『アングリーバード』などの海外製キャラクターが席巻している中で日本製のキャラクターどうなのみたいなところがあってですね。まだまだ日本いけるじゃんと感じさせてくれたのが、よかったなと思っています。
黒川 では目黒さん。
目黒 今年は『パズドラ』と『おさわり探偵なめこ栽培キット』一色でした。『パズドラ』は2月にリリースされて、いまだにトップセールス1位です。これほど息の長いタイトルはそうそう生まれないじゃないでしょうか。『なめこ』もシリーズで累計2500万ダウンロードです。アプリ以外にもグッズ展開で成功しています。僕は埼玉在住なんですが、地元のアミューズメントがなめこ一色になった時「これはキタな」と思いましたよ。弊社でも『世界のなめこ図鑑』を作らせていただいたんですが、これが30万部を突破しました。今年は本当に『パズドラ』と『なめこ』を追いかけていた1年でした。スマホのIP(Intellectual Property。知的財産)が花開いた1年とも言えます。
黒川 この出版不況で30万という数字はすごいですね。なめこみたいにアーケードのプライズになるっていうのはひとつブレイクスルーしますよね。
目黒 そうですね。あと『ぐんまのやぼう』もプライズ化しています。
黒川 ゲームのキャラクターがプライズになった時のブレイクスルーってすごいですよ。ガシャポンになるであるとか、ケータイストラップをつけてたりすると「それどこで手に入れたの?」と聞かれたりする。『なめこ』が手に入れた瞬発力、ブレイクスルー力ってすごいですよね。『なめこ』を開発したビーワークスさんは個人的に存じ上げておりまして、リクルート出身の金子健一さんが編プロとしてずっとやってこられた会社です。たまたまはじめたゲーム事業の中でブレイクしたっていうとこから考えると、ある種突然変異的な出自を持つタイトルといえます。
目黒 すごいなと思うのは、ソーシャルゲーム全盛の今、『なめこ』をソーシャルゲームにしなかったこと。英断だったと思うんです。
黒川 確かにそうですね。
目黒 そこに課金を求めないっていうポリシーがすごい。
黒川 お金、儲けなくていいんですかって聞くと「別にいいです」っておっしゃるんですよ。ファンの子どもさんから「なめこを無料で遊ばせてくれてありがとうございます」って投書が来て、それがスタッフの励みになってるとも言っていました。
目黒 そこがヒットの要因だったと思います。
黒川 では佐藤さん。
佐藤 はい。良くも悪くもモバイルゲームですね。フィーチャーフォン、スマートフォンのゲームが世の中に注目された1年だったと思います。4月からIT系のサイトに異動になったんですが、それまではゲームのサイトを担当しておりました。まさにその頃に物議をかもしたコンプガチャ問題がありました。『ドラクエX』の発売もありましたが、やはり注目はモバイルゲームの方に集まっていたと思います。家庭用ゲーム機では情報を常に発信し続けること、場の盛り上がりを維持することがとても難しい。それがモバイルゲームだと常に新しい情報を発信し続けられるという利点があります。僕自身もソーシャルゲームは今年に入って初めてやりました。そこで実感として感じたことです。
黒川 特に思い入れのあるゲームがおありなんですよね?
佐藤 (笑)。個人的には『アイドルマスター シンデレラガールズ』をすごくやっていたので、僕の中ではそれが大きかったんですが、それについてはまたあとでゆっくりと(笑)。
黒川 今日は勝手にエンタメ大賞と銘打ちましたが、打ち合わせで「じゃあエンターテイメントって何か」っていう話を4人でしていたんです。そこで話に出たのが『LINE』についてです。『LINE』の提供するサービスをエンターテイメントと呼べるのかっていう話。確かに僕はすごいツールだと思うんです。その素地は古くからずっとあって、ポケベルから始まって、絵文字や写メール、デコメ・・・。感情的なものを表現する文字以外の手段がずっと求められていて、その流れにメッセンジャーソフトも乗っかった。そこで人とのコミュニケーションって非常にプリミティブなエンターテイメントだと思いました。スタンプはひとつのエポックですよね。コミュニケーションをより豊かにできる、素晴らしいなと思います。『LINE』のブラウンが好きな土本さん、いかがでしょうか。
土本 『LINE』は誰もが使っているような状況になって、インフラのようにさえなってきている。それに伴って共通言語のように『LINE』さえ持っていれば誰とでもコミュニケーションできるようになりました。そういう状況が作られていて『LINE』ゲームのヒットがある。ソーシャル性の部分においてはフェイスブックやミクシィのゲームとそう変わらないんですよ。これは編集長目線ではないんですが、『LINE POP』で遊んでると、昔の同級生だった可愛い子とかから「ハートを送って!」とメッセージが来たりしてそういう、ホッとする瞬間がある(笑)。
黒川 夜中に『LINE』の通知がきてびっくりすることありません? 「◯◯に招待されました」みたいな。
土本 ずっと連絡とってないあの人がゲームで高得点出していて絶対許せないみたいな(笑)。いちユーザーとしての感想です。
黒川 目黒さんはどうですか。
目黒 やはりスタンプはすごく発明だなと思います。会話のきっかけになりますでしょう。新しいスタンプを買ってそれを自慢するところからスタートしたり、特定の文字を入れなくてもスタンプのやり取りだけで会話が成立するなど、非常に新しいなと思います。
黒川 目黒さん個人は仕事やプライベートでも使われますか?
目黒 プライベートでなら(笑)。
土本 僕は仕事でも営業に怒りのブラウン送ったりしてますよ(笑)。文字で書くとニュアンスが難しいんですけどスタンプで少し和むというか・・・ホントは仕事で使うものじゃないんですけどね。
黒川 あ、それで思い出したんですけど、たまにフェイスブックで、どこかにむけて書いているんだけど対象がよくわからない怒りの文章ってあるじゃないですか。そういうのが文面で来ると怖いんですよ。ひょっとして俺のことかなと思ったりして。それがスタンプだったら和らぐっていうのはありますね。絵にすることで効果として感情表現を円滑にしている。
佐藤 僕はスマホは持っていますが『LINE』は使ってないです。
黒川 最近メッセンジャー界隈が慌ただしくて、ヤフーと『カカオトーク』の協業、『comm』のスタンプ全て無料施策などバンバン競争が起きています。そこでの『LINE』の優位性ってなんだろうって書き込みが今ニコ生であったんですけど、どう思われますか。
土本 それはもう、登録ユーザー数の多さ。数をおさえてるってのはありますよ。さっきこのメンバーで打ち合わせがてら中華料理屋でご飯を食べていたら、僕らの横でおじいちゃんおばあちゃんが『LINE』とか『Skype』の話をしていて。
黒川 それ、私も聞こえてました。ご年配のご夫婦でしたけど、メッセンジャーアプリを話題にしていてびっくりしました。浸透しているんだなって。
今日のお客様の中で『LINE』使っている方は挙手をお願いします。おお、すごいですね。ネット系のニュースサイトで4人に1人が『LINE』を使っているという調査があがりました。それを受けて渋谷で街角調査をしてみようというネタ記事があった。調べた結果全員が使っていて、罰ゲームに調査員が白い粉かぶせられるっていう、まあ面白い笑える記事だったんです。渋谷で聞いたらそういう結果になるよなとは思うんですが、今日会場にいらっしゃっているITリテラシーの高い方の中でも多くの人が『LINE』を使っているということですね。これから群雄割拠の時代に入っていくメッセンジャーアプリの今後って想像つきますか?
目黒 うーん。今後っていうのはわからないですけど、聞くところによると文字ベースのコミュニケーションは『LINE』で通話は『comm』と、使い分けている人がいるそうです。『LINE』の優位性に話を戻すとプラットフォーム化を始めているっていうところで、モバゲーやグリーはバーチャルグラフだったけれど、『LINE』はリアルグラフになると思います。それでどういうふうにゲームが拡散していくのか注目しています。『LINE POP』の、配信から12日間で1000万ダウンロードという記録は他ではそうそう生まれないものなので。
黒川 ソーシャルゲームではグリーさんやディー・エヌ・エーさんがいままで高成長を続けてきましたが、『LINE』についてはどのような可能性を感じますか。
目黒 バーチャルグラフにはその良さもあると思うんですね。他人と闘って後腐れなく、っていう部分では。リアルな関係だとそれはやりづらいですから。どちらにも強みはあると思うので、それをどうやってゲームに落としこんでいくか。それが今後の課題というか注目点ですね。
土本 『モバゲー』『グリー』のユーザーは男性が多く、『LINE』は女性が多いと思っています。スマホも女性の購入が増えてきました。スマホが日本人の共通インフラであり、誰もが使うものになりつつあるっていうことの象徴として『LINE』のヒットはあると思います。
黒川 低年齢化も進みます。初めて持った端末がスマホっていう世代も登場するでしょうからそこから新しいカルチャーも生まれてくるでしょうね。
土本 そうですね。ガラケーってなんですかっていう時代も間もなくかも知れない。
佐藤 昨日、CNET Japanで「スマホネイティブ登場。高校生の25%がはじめての携帯がスマホ」っていう記事が出ていたんですね。サンプル416人、博報堂さんの調べです。高校生の2人に1人が携帯を所有し、スマホ所有者がフィーチャーフォン所有者を上回って、女子は6割、男子は5割という結果になったそうです。僕等世代なら最初に触ったゲームはファミコンだみたいな共通体験がありますけど、最初にさわるデジタル機器がスマホっていう子どもたちがこれから多くなりますね。
黒川 これから先もっと下の年齢までにその割合が増えていくことになるんでしょうね。そうなるとサービスのあり方自体も変わってくるかと思います。
来年の私自身や黒川塾のテーマとして考えていることでもあるのですが、これからゲームの作り方や据え置き機のあり方も時代の移り変わりとともに変わらざるをえない。ゲームの作り方、周辺インフラ、ゲーム機のあり方、全体に及ぶ話です。そのあたりエンターブレインさんはファミ通というメインフラッグの本があって、アプリの情報サイトも運営されている。なにか感じることはありますか。
目黒 スマホの勢いは感じます。けど、スマホゲームをやってるから絶対コンシューマゲームはやらないとか、その逆っていう人はいないと思うんですね。うまく共存していける。しかし、ゲームの提供の仕方はすごく変わってきたと思います。今年一年で有料アプリはキツいって考えたメーカーさんは多くあった。フリーミアムで提供して運営によって継続率を上げていく形の作品がスマホではヒットし、その方向に舵を切った年だったのかなと思います。今までは有料アプリでももしかしたら勝てるかもっていうとこだったんですけど、その可能性が消えた年になりました。
黒川 フリーミアムモデルも競争が激しいです。その中で生き残るためにはどうしたら良いと思いますか。やはりブランド力? 宣伝? 獲得単価なんていう言葉もありますけど。
目黒 宣伝の力も重要ですが、加えて基本的な面白さが直感的に伝わるゲームであることが大事。フリーミアムなので、誰でも入ってこれるしすぐにやめられる。極端な話「つまらないな」と感じたら10秒くらいでやめてしまう。その序盤でうまく興味を持続させられるか、そこの部分のゲームデザインが特に重要になってきます。宣伝や作り方全てにおいて、張るというか全力でいかないと見透かされてしまう。
黒川 大変ですよね。簡単には言いにくいことです。全てにおいてベストを求められる。ダウンロードして触ってみたけどつまらなくて、アイコンだけ残ってるみたいなケースはよくある。
目黒 なんとか最初のチュートリアルを乗り切ったとしても運営がだめなら持続できない。ユーザーとメーカーの長い付き合いにしないといけないってのはあると思います。
黒川 体力も予算もないと運営もなかなか厳しいですしね。
目黒 メーカーさんに聞く限り、宣伝費も上がっていると聞きますので、体力あるメーカーの方が運営は強いかもしれません。
土本 ユーザーの要求がすごく高くなっていると思います。フィーチャーフォンやスマホで表現できることも増えて、作る方としてはやらなきゃいけないことが山ほどある状況ですから、人員も資金も持っている会社が有利というのはわかります。が、宣伝費が全てとは思いたくないですね。やっぱり面白いものを求めてるのは皆同じだと思うし、僕らメディアの側も面白いものにはすごく飢えているところはあります。小さいメーカーや新規タイトルでもまずは一度プレイさせられる、興味を引く切り口を工夫すればまだまだ成功できると思うんです。
黒川 私達も市場に夢を見たい部分があってたとえば『アングリーバード』みたいに、新しく生まれてくるものがあるといいですね。ソーシャルゲームはいま沢山ありますが、ひとつプラットフォームがでてくると時間とともに作り手も受け手も考え方が固定化されてしまいがちになります。なにか新しいものが生まれてきてほしいなと思いますね。
佐藤 やっぱり面白さが第一であってほしいなと皆が感じていたところに『パズドラ』がうまく応えたのは間違いないですよね。僕がCNET Japanに移ってからソーシャルゲームのメーカーさんにお話を聞く機会があったんですが、やはりそういったメーカーはゲームをネットサービスと捉えている印象が強かった。「これらのゲームを他のメディアに展開していく事を考えていますか」と水を向けると、なかなかそこまで考えられている会社さんは少ない。コンシューマゲームのようにマルチメディア展開に投資するのではなく、会社のサービスに投資するのもひとつ正しいとは思います。いかに枠を広げて、裾野を広げていくか、の考え方が違う。スマホのことについていうと『パズドラ』はヒットしましたが、ビジネスモデルやヒットの法則はまだそこまで確立されていないと思います。スマホ特有の表現力もありますので、まだまだアイデア一発で行ける可能性はあると思います。
黒川 実は、私自身インディーズでゲームを作る取り組みを始めています。商業ベースではないインディーズで、作品をどうやって世に問うていくことができるかを勉強中です。お金もあってプロパティもあってっていう会社でなくても何かができるという実例になればと思っています。実験的な取り組みです。
では、そろそろ皆さんが大賞にふさわしいと思われたコンテンツを挙げてもらおうかなと思います。
土本 僕、任天堂信者でして、『Wii U』すごいですよっていう話をさせていただきたいんです。ゲーム機としてはロードが遅かったりフリーズしたりちょっとやばいんですが、思想として面白い。スマホに注目が集まっていますが、コンシューマにもまだまだ何かできる余地があると思っています。皆さんせっかくでっかい液晶テレビを買ったのにつまらない地上波を見るのにもそろそろ飽きた頃だろうと思うので(笑)、リビングのエンターテイメントの中心になりうるような端末(それがゲーム機とは限らないですが)、ヒットするものが出てくるんじゃないかと思っています。リビングをお母さんに占拠されていても、ゲームパッドがあれば遊べるみたいな。『Wii U』の設計思想は面白い。ゲーム機は本来親には邪魔者扱いされてきました。それがゲームパッドがあることでリビングにスッと入っていける。そういうふうになればなと思います。
黒川 タブレットで遊ぶことで色々変わってくると思います。
土本 そうですね。大きい画面をさわりたいっていう欲求はあるとおもうんです。でも液晶テレビクラスの大画面を手で触ろうとすると直感的でなくなると思います。大画面で解像度が高くなるとその分情報量も増えて色々できそうなんだけど、近づきすぎたらあまり目に良くないし触りづらい。テレビのリモコンでは素早い操作には向いていない。『Wii U』のゲームパッドなら、テレビを見ながら手元のタッチパネルで操作できる。これは大きいと思いますよ。あと、ゲームパッドだけでベッドやソファに寝転がって遊べるのはよかった。
黒川 スマホじゃ小さいがテレビじゃでかいと。
土本 家が小さいので(笑)。本格的なゲームをするにもテレビの前にずっといるのも疲れるし、家族がいたら嫌がられるし、とかいろいろ。
黒川 パッドを使った新しい遊びができるツールとして評価しているわけですね。
土本 『アサシンクリード3』と『NewスーパーマリオU』をやってます。
黒川 目黒さん、佐藤さんは『Wii U』いかがですか。
目黒・佐藤 まださわってないです。
黒川 土本さん最先端いってますね。
土本 まあ、任天堂好きなので(笑)。
黒川 さっきナチュラル・ボーン・編集長と紹介しましたけど土本さんは社会人になった瞬間から編集長だったんですよね。ご自身で高校生の時からニュースサイトを運営されていたとか。
土本 もう12年やっています。
黒川 その時からずっと編集長としてやってこられている。
土本 そうですね、下っ端の仕事はできないんじゃないかっていう(笑)。困ってます。
黒川 常に積極的に活動されていますよね。土本さんは『Wii U』が今年のトピックということでよろしいですね。
土本 個人的な興味として、リビングでもっと何かできるだろうっていうのがあって、『Wii U』の前段として『Wii』が新しいゲームの提案をしたことでリビングに置かれるようになったというのがあるんですが、家族の中心となる可能性がまだあるとおもいます。
黒川 今、外食産業が落ちてきていると言われています。よくても横ばい。それがなぜかと調べてみたら家で食べるのが増えていると。外でお金を使うより家の中で過ごそうっていう流れはあるかもしれないですね。
土本 結構寂しい時代なので、家族の良さが見直される可能性はあるでしょう。モバイル端末は個人のデバイスなのでそれだけになっていっちゃうのは寂しいですよ。
黒川 うちにもiPadが2台あるんですが、子どもたちがずっと遊んでいる。ひとりが『なめこ』やってるとおもったらもうひとりの子も別の端末で『なめこ』をやっている。お父さんご飯食べにいくのにお店検索したいのになあ、と思ったりしてですね(笑)。家の中で端末をどう使うか、何を調べるかがパソコンやゲーム機からタブレットに移ってきているというのはありますね。
『LINE』に話を戻して、先ほど話していたキャラクターの魅力についてうかがいたいと思います。見た目にはどっかで見たような気もするんですが。
土本 そうですね。あまり主張しなさというか、目に力が入ってないゆるさが魅力かな。キャラクター全体がそうです。
黒川 外部のIPさんが持っているキャラクターにはないゆるさですね。
土本 あと世界観ですね。LINEをやっていると他のいろんな所にこのキャラが出てくるんですね。そこが面白いですね。
黒川 あのスタンプだけで優しくなれるみたいなとこありますよね。では佐藤さん、今年の気になる作品をなにか上げていただきたいと思います。
佐藤 何にしようかなあ。大賞に相応しいのは『パズドラ』だと思います。ソーシャルゲーム界ではKPI思想が支配していた中で、ユーザー寄りの視点に立ったデザインでまさに皆が待ち望んでいたものが登場したという感じです。黒川さんからひとり3本くらい上げてくれと言われてたので他の2本どうしようかなあと迷っていたところなんですが、モバイルゲームは他メディアへの展開があまり見られないっていう話を先ほどしたんですが、そんな中で今年はいくつか出てきた。
グリーさんが自らグリーエンターテイメントプロダクツという会社を作り、『ドリランド』のアニメやグッズ展開を始めました。IPを使った次の一手として注目できる点だと思います。
コナミさんが戦国コレクションをアニメ化したのも大きいですね。コナミさんらしいなと思うのが、イケメンと可愛い女の子が武将になってる作品なんですが、アニメではイケメンを全てカットしてひたすら女性武将でしかも舞台が現代。一話完結で徳川家康がアイドルを目指す話もあるぐらい破天荒な設定です(笑)。そういうところ含めてコナミさんらしく展開したなと思っています。
僕が一番何に興味を持っていたかというとモバゲーの『アイドルマスター シンデレラガールズ』です。僕がなぜ『アイドルマスター シンデレラガールズ』を大賞に推すかというとですね。作品としてはもう登場から8年経つんですが、既存のIPでありながら、積み重ねを生かしつつ全く新しいIPを作ったという所。ソーシャルゲーム『アイマス』からCDを出したというのが大きい。元々『アイマス』はゲームもそうなんですが、歌に支えれらてきた作品だと思うんです。アイドルが歌う設定を生かしてCD展開をしてきました。ゲームタイトルとしてはアイマスはそこまで多作ではありません。CDを出すことで話題を提供し続けるという展開をしてきた。もちろんダウンロードコンテンツを継続的に行なって記録的な数字を出したという面もあります。その辺りの強みをうまく生かしたと。
ソーシャルゲームの『アイマス』はサービス開始が2011年の11月ですが、キャラクターCDを出すことで更にキャラクターの魅力が増幅していった。ユーザーもそれを望んでいたし、発表の時に日本コロムビアさんのサイトが混雑したというのにも見られています。また最初に発売された5作が全てオリコントップ10入りするという結果にもあられている。同一のアニメ作品が5作全てオリコントップ10入りしたのは初めてという記事も出ています。
なぜ売れたかっていうところでダウンロードコードがついてるとか、2枚買って合成するといいとか色々言われたりはしたんですが、CEDECアワードで最優秀賞を受賞したり、楽曲としても評価されているんですね。ダウンロードコード目当てで買った人もそこで楽曲にふれる機会になる。よりキャラクターとしての創出のためのプラットフォームに『シンデレラガールズ』はなっていたと思います。このCDの役割は大きいと思います。非常に熱意のあるプロデューサー(ファンやユーザーのことをアイマスではプロデューサーさんと呼ぶ)さんのたちの支えが・・・
黒川 佐藤さん、大プロデューサーですね!
佐藤 いえいえいえ(笑)。『シンデレラガールズ』でキャラがいっぺんに100人に増えたので、ある種世界観を壊すくらいのことが起きたんですが、それでもCD展開などでキャラクターに奥行きがつくことで距離感が近づいていった。先程も言ったように、既存IPでありながら全く新しいIPを打ち立てたっていう意味ですごく評価しています。
黒川 大変多く貢いでいるそうですね。
佐藤 いや『シンデレラガールズ』に関してはそうでもないです。アーケードは、500円3プレイの時代に、ひとりをアイドルに育て上げるのに60周するので・・・。1ユニット1万円だから・・・。あー、いくらでしょうねえ。一応称号はアイドルマスターまで行ったんですけど、これ言って分かる人がどれくらいいるのかっていう話ですが(笑)。
黒川 じゃあもうエグゼクティブプロデューサーくらいはいってるんじゃないですか(笑)。『アイマス』に対する愛が感じられるたいへんいいお話でした。
佐藤 どうなんですかね。いや、まあ、すごくやりました。すみません長々と・・・。
黒川 単にゲームだけじゃなくて、他メディア展開でユーザーの心をくすぐったみたいなところがあるんですかね。
佐藤 そうですね。僕はスマホを持つのもソーシャルゲームをはじめるのも遅かったですから、実態がよくわからなくて、よくわからないけど儲かっていそうだなっていう印象だった。メーカーリリースをみればタイトルはわかるけど内容はよくわからない。やっぱりゲームのキャラクターがゲームの外にメディア展開していくことによって認知度、広がりが出てきますし、楽しませるための一つの手法だと思うんです。広がりをもたせた方がエンターテイメントとして先があるのかなという気はします。ネットサービスだと失敗するとすぐ閉じてしまう例が見受けられますが、長く育てる気概が欲しいです。『アイマス』は長い積み重ねがあったからこそ出来たものなので、なかなか他には真似のできないことではあります。ゲームをひとつのコンテンツとして捉えて、カードバトルゲームでも更に世界観や設定を練りこんだものが今後出てくると思います。そうでないと飽きられてしまうんじゃないでしょうか。ユーザーを楽しませる取組の一環として頑張ってもらえると、いちユーザーとしては嬉しいです。
黒川 次は目黒さんにお願いします。
目黒 『パズドラ』抜きには今年は語れないと思います。カードソーシャルが全盛の時にそちらに舵を切ったメーカーもたくさんあったと思います。そんな中で面白さを追求したゲームもちゃんと売れるんだという、開発者やメーカーに希望を持たせてくれたという部分を評価しています。ゲーム業界を盛り上げる仕事をしている立場として『パズドラ』の登場は非常に良かったと思います。
黒川 最近そういう流れになってきていて、ひとつは『パズドラ』フォロワーが増えてきたということ。もうひとつはセガの『ドラゴンコインズ』のヒットにもみられるような、家庭用ゲーム機で鳴らしてきたメーカーの作りこみの鋭さ、最後まで突き詰めていく良さみたいな、いままで培ってきたナレッジを生かした作品が出てきたのは大きいですね。ソーシャルのパブリッシャーだけでなくそういう成功例が出て来るようになった年でもあります。
目黒 『パズドラ』の山本さんが言うには「RPGとパズルの要素を落とし込んだのがパズドラ。成長要素をどうやってスマホに落としこむかが今後キーワードになっていくんじゃないか」というんですね。アクションでもRPGでもジャンルはいいんですけど成長要素をどう作っていくか。レベルアップをどうスマホのゲームとして落とし込んでいくか。
黒川 端的に言ってやめさせないための要素、続けたくなる要素ということ?
目黒 そうですね。そことつながってくるとは思うんですが、あと運営のしやすさ。ちょっと語弊があるかもしれませんが、起爆剤を投入しやすさっっていうのが大事ですね。僕が勝手に思っているのは、無課金でもけっこう遊べちゃうものの方が口コミで広がっていきやすいのではないかと。
黒川 無課金でも沢山やっている人いますよね。
目黒 弊社で出した『熱血パズドラ部』も無課金プレイをやっていまして、メーカーさんからするとあまりありがたくないことのはずです。でもそれを許してくれる度量の広さに感謝しています。あとは、一番新しいなと思ったのは弊社の攻略記事にアプリから直接リンクをつけてもらってるんですね。アプリは容量に制限があるので補足できない部分は僕らメディアがフォローすることができる。新しいゲームとメディアのかたちをひとつつくれたかなと思います。
黒川 目黒さんの個人的な推しは『パズドラ』ということですね。
目黒 そうですね。『パズドラ』というよりガンホーさんの理念といいますか、『パズドラ』以外にも『クレイジータワー』など色々出されました。その全てにおいてオリジナリティを追求する姿勢、面白さを追求する姿勢が感じられて、これからも新しいゲームを作ってくれるんじゃないかという期待感があります。なので作品というよりガンホーさんを大賞候補に推薦します。
黒川 なるほど、なかなかいい視点ですね。実は前回出て頂いたガンホーの御三方とこの間食事会をしたんですが「実は今日苦しい会議があって」と切りだされまして。どうしたの? と聞いたら「半年程開発してきたタイトルを、今日会議で開発中止にしてきました」っていうわけですよ。続けていればよくなったかもしれないけど、止めましたと。彼らがいいものを作るための妥協がないことのあらわれなんですね。黒川塾 参での「KPIを設定しない」はすごく印象的でした。ガンホーさんへの一票というのは賛同できます。他には、目黒さんどうですか。
目黒 そうですねやはり『LINE』は外せないほど巨大になってしまったというのはあります。ゲームプラットフォームとしてこれからどう成長していくのか楽しみです。今はライト層向けのものが主流ですがいずれはヘビーな層へアピールするゲームも出てくると思います。そういう時に僕らも微力ながらご協力できればなと思います。
黒川 直球の質問なんですが、アップルやグーグルのポータルサイトの上にたとえばグリーやディー・エヌ・エーのリンクが乗りますよね。アップルには30%、グリーに30%とられて自分のところの儲けが少ないとなったら、ソーシャルアプリケーションプロバイダになるんじゃなくて、自分らで直接やったほうがいいじゃんっていう考えは出てこないでしょうか。今後そうした広告や宣伝展開はどうなっていくと思われますか。
目黒 僕個人の見解ですが、iOSやAndroidっていう垣根を取り払って、モバイルのゲームユーザーを僕らメディアが情報の入り口となって抱えていくという方法があるかなと思います。ユーザーはそこまでハードやプラットフォームを意識していないと思うんです。「モバイルで遊べるゲーム」という大きなくくりの中で僕らはどうメディアをやっていこうかと考えています。アンドロイドスマホからアイフォーンに買い換えてもうちのサイトに来てくれればモバイルゲーム情報は見れますよ、ここから飛んでくださいっていう風に育てていきたいです。
土本 目黒さんが完璧にまとめて下さったところで恐縮なんですが、プラットフォームの上にプラットフォームをのせるというのは僕もどうかなと僕も思っていて、プラットフォームを作っている人たちもそう感じていると思うんです。3割の上に更に3割のせるというのはちょっと、ないんじゃないかなと思います。
黒川 これだけ開発費も上がっていく、ユーザーの目も厳しいという中では難しいですよね。佐藤さんは他に推薦作品ありますか?
佐藤 そうですね、これ賛同を得られるかわからないんですけど、僕が今年一番感動したのは『ミルキィホームズ』の武道館ライブです。これネタでもなんでもなくてですね、よい体験を提供するのがよいエンターテイメントだと思っていて、GameSpotに在職していた時、ゲーム情報サイトなのにライブの取材に結構いかせてもらったんですね。そういう体験は非常に強力だと思いまして。『ミルキィホームズ』もずっと取材をさせてもらいました。ブシロードさんの強力なプッシュがあったからこそ短期間で武道館ライブまで成功させた面はあるのですが、それだけではないと思います。武道館、本当にお客さん埋まってましたよね。
黒川 私は天井に近い席で見ていました。
佐藤 僕もです(笑)。ファーストライブの頃って席はそんなに埋まってなかったんですよ。もちろん熱心なファンはその頃からいたんですけど、カードゲームの大会に出たり、ファンとの距離を縮めていく地道な活動してきた。ちょっとずつファンを増やして口コミ的に広がっていったからこそ結果がついてきたのだと思います。キャラクターを育てていく共有感は大事だなと思っています。ちなみにニコ生をご覧の方は黒川文雄さんのウィキペディアを御覧ください(笑)。あることがわかります。
黒川 『ミルキィホームズ』については私がブシロード在職中に立ち上がったプロジェクトでした。4人の女の子がそれぞれキャラクターを与えられてやったわけで、その頃って何もなかったんですよ。コンセプトシートだけがあって、これはホームズ、これはポワロみたいな設定だけがあってそれに対してゲームとしてのコンセプトが出来上がっていく過程を見ていました。残念ながらそれを見届けることなく私は退社する事になってしまいましたが。このあいだ、その武道館ライブに招待席で呼んでいただきました。武道館を全部見渡せる高いところなんですが、満席の武道館を見て、3年前に何もなかったものがここまで大きくなったことに感動しました。お客さんひとりひとりが、『ミルキィホームズ』の女の子たちを支持している。そこまで持っていくプロデュース力はすごいなと思いました。そういう意味では私もあの日武道館で佐藤さんと同じように「体験のすごさ」を感じた。
佐藤 ゲームやモバイルの中でいい体験ではあるんですが、僕たちは「やってよかったふれてよかったと思える気持ち」を求めているわけで、暇つぶし以上の何かを求めているんです。アニメ化が大きかったとは思うのですが、3年前に何もなかったものがあそこまでになるのを一緒に見ることが出来たのは素晴らしい体験でした。ちょっと今回の趣旨とは離れてしまってるかもしれません(笑)。
黒川 業界全体について思うことなど、土本さんなにかありますか。
土本 僕も一応ゲーム業界誌もやっていますので、ゲームの海外展開うまくやってほしいなというのはあります。日本のゲーム市場は大きいので国内だけでも大丈夫だって思っておられるかもしれませんが、今後はそうも行かなくなってくると思うんです。海外に出ていって外貨を稼いでくる。日本の産業のひとつとしてエンターテイメントがもっと稼ぎを挙げて日本の将来を支えるくらいになってほしいし、その力があると思っています。ソーシャルゲームでもそうしたタイトルが出てきています。投資に見合うのかというと厳しいという面もあるようですが、それに負けないように頑張っていただきたい。
黒川 海外に出てはみたけれど失敗した会社もあります。それでも果敢にチャレンジしろと。
土本 そうですね。頑張って欲しいです。
目黒 海外繋がりでいうと『インフィニティブレード』っていうタイトルがあるんですが、それを作ったエピックゲームスの開発者の方にインタビューをした時に「我々はAAA(トリプルエー)タイトルしか作らない」と言ってて、その考え方が世界標準なのかなと感じました。ソーシャルどうこうではなくて、AAA(トリプルエー。高評価)タイトルを作りたいっていうクリエイターの人たちに感銘を受けました。そういう意味でも日本は負けて欲しくないですね。あとスマホアプリは個人制作でも魅力的なゲームが作れてヒットの可能性がある。ですので、僕的には『ネコアップ』を作った方やラッキーゲームスさんにも頑張ってほしいなと思います。
黒川 ラッキーゲームスさんに黒川塾の出演をオファーしたら「人前に出るのが恥ずかしいので」と辞退されてしまいました。いつか出ていただきたいですね。今のゲーム市場は夢があると思うんです。大手だけじゃなくて個人でもトライできる。初代プレイステーションの頃にも新人発掘の取り組みの中から、新しい才能が見出されてきました。スマホでもそういう新しい作り方や新しい才能が生まれてきてほしいなと思います。
黒川 今日お話いただいた中でいうとやはり『パズドラ』は大きかったなと思います。前回ガンホーナイトをやらせていただいてコンテンツ作りの姿勢を伺って『ケリ姫』とか、関連会社のアクワイアが手がける『ロード・トゥ・ドラゴン』などをみていると、作り手としてユーザーにどうすれば満足してくれるかっていうのを徹底して考えているかなと思います。一方、『LINE』はコミュニケーションツールとして優れていると思います。しかしエンターテイメント「作品」なのかというところですね。あれはカジュアルなサービスになっていくでしょうし、インフラとしても期待されるようなスタンダードになっていくと思います。やはり『LINE』はサービスだと思っています。目黒さんがおっしゃるような強さもありますし『LINE』のゲームがApp Storeで上位を独占したということもありますが、これからどんどん拡張していくでしょう。そうするとやはり『LINE』そのものが大きすぎるかなと。
黒川 では、このあたりで客席の方にご意見を伺ってみます。知り合いの方が挙手してくださいました(笑)。今井さんどうですか?
今井 取材に来ている今井です。今年の出来事として海外の『Ouya(ウーヤ)』という、アンドロイドOSをベースにした完全に民主的なプラットフォームについてうかがいたいと思います。キックスターターというクラウドファンディングで一番お金を集めたプロジェクトなんですが、現在開発中で今後どうなっていくと思われますか。海外のゲーム業界ではかなりなビッグニュースだと思うのですが、皆さんにご意見を聞いてみたいと思います。
土本 僕、投資しましたよ。そのうち届くと思うんですけど。とにかくカッコイイ。僕個人的にはカッコイイだけでそれ以上のものではないですけど。
黒川 結構ドライですね(笑)。期待されてないんですか?
土本 アンドロイド端末をテレビにつないでモニター化するっていう端末がいくつか出てきていて、日本でもauさんソフトバンクさんが似たような端末を出されており世界各国でも色々と出はじめました。スマートテレビといま盛んに言われているけど、みんな液晶テレビ買ったばかりだし買い替えが進まないのが現状です。そのテレビをネット端末化するものとしてありかなとは思いますが、だから売れるとか世界をひっくり返すかというと難しいと思います。
黒川 3DOみたいな・・・。
(会場ざわめき)
黒川 失礼しました(笑)。
土本 でも『Ouya』はカッコイイからそれだけで全てオッケーだと思います(笑)。
目黒 メディアとしてはユーザーの関心を引きそうな端末ではあるので大歓迎ですが、個人的に期待してるかどうかというのはわからないです。メディアとして、動向を追っていくのはかなり意識しています。
佐藤 そうですね、未知数であるという事以上は言えないですね。興味関心がある人は多そうですが。
黒川 私はああいうことが成立するのがすごいと思います。従来のゲーム機メーカーではなくて、クラウドファンディングでお金を集めて有志がやろうとするダイナミズム。すごく羨ましい。実現したたら希望の光になりますよ。土本さんは成功しないんじゃないかなと言ってるけど、あれがうまく寄付だけで軌道に乗ればそれはいいことですよね。日本ではなかなか出来ないんじゃないかなと、そういう不可能と思えることに挑戦しているのがあのプロジェクトの面白いところです。
では、次の質問の方どうぞ。
質問 先ほど民主的という言葉が出たのでその繋がりで、Unityについて伺いたいとおもいます。この中でもUnityでゲームを作る方も増えてきたと思うんですけど、インディーズでもUnityでないと出ていこないような作品が出てきました。ゲーム制作者側の視点からはどう見られているのでしょうか。
土本 そうですね、民主化はいいことだと思います(笑)。Unityは雰囲気もいいし世界観が好き。作るハードルが下がっていくのもいいことだと思うんです。パソコンが安価になって環境の裾野が広がっていってなんでも手軽にできるようになってきました。それ自体はハッピーな話なんですけど、でも表現する人ってそんなに増えたっけなあとも思っていて。作る道具が揃っていますと、そこから創るに至るまでにもう一段回あるかなと、土壌としてはできていてなんとなくゲーム作りに興味ある人がもっと上にいける、ビジネスが出来るという環境が必要かなと思います。
目黒 「Unityで作られてるゲームだよ」とたとえば僕らが報道することがひとつブランドのようになったと思うんですね。最終的にはゲーム性が求められるところなのでUnity=面白いではない。逆にいうとUnityで作ったとわざわざ言わなくなるようになるくらいがいいんだと思います。
土本 じゃあ、関連して伺いたんですが、アンリアルエンジンで作りましたみたいな記事ってメディアだと書きやすいですけど、どう思われます?
目黒 グラフィック綺麗ですよ、ある程度のレベルに達してますよという表現で使うのはメディアとしては使いやすい言葉ですけど、遊んでみて面白いが面白く無いかはやってみないとわからないですからね(笑)。
黒川 あまりわかってない状態で「アンリアルエンジンで作りました」って訴求していくと「スゲー!」と感心するかもしれないけどアンリアルエンジンがだんだんどういうものかわかってきてしまうと、別にこれ普通ですよねって言われちゃうと思います。
目黒 字面としてフックにはなると思うんです。まだ知らない人に向けてもそうなんですけどUnityだよ、アンリアルエンジンだよというキーワードを使って伝えていけたらなと思います。
佐藤 僕もUnityはブランドになったなと思います。でも結局は面白さが第一ですよね。
質問 ネット上では昔ながらのゲームが好きだった人たちのソーシャルゲーム叩きが最近見られますが、どうやって彼らの気持ちを溶かしていくか、何か手段があったらお願いします。
土本 どうしたらいいんでしょうね(笑)。どうする必要もないかなと思っていて、僕は家庭用ゲーム機も好きだしスマホゲームもします。好きなコンテンツを選んで遊べばいいんじゃないかなと思いますけど。
目黒 スマホゲームは課金ゲーと揶揄されることもありますが、いいとおもったことにお金を払うのはふつうのコトなので。一回やってみてくださいとしか言いようが無いですね(笑)。
佐藤 そうですね。ネットやツイッターの発言は居酒屋でくだ巻いているのが可視化されているだけだと思うんですが、みんなで啓蒙していくしかないんじゃないでしょうか。とある広告代理店の方にソーシャルゲームについて話した時に「ケータイで遊ぶゲームは全部ソーシャルゲームで、課金はガチャでカードゲームだ」っていう認識を持たれていたんですよね。それはいくら説明してもなかなかわかってもらえない。最終的にはやってみてくださいというしかなくて。一回遊んでから言おうよっていうしかないですよね。
黒川 最後に結論として、エンターテイメント大賞はガンホーさんということでよろしいでしょうか?
(会場拍手)
黒川 ありがとうございます。では、勝手ながら第1回エンターテイメントの未来を考える会大賞はガンホー・オンライン・エンターテイメントに授与させて頂きます。いきなりここで森下社長に電話すると失礼なので後日改めてご連絡差し上げようと思います(笑)。
今日は色々なタイトルが上がりました。『LINE』、『ミルキィホームズ』、『アイドルマスター』、『どうぶつの森』、『Wii U』・・・。今年はコンプガチャ騒動、ZingaとEAの訴訟など暗いニュースもありましたが、お客さんにちゃんと支持されてた作品も多かったと思います。私自身もいい作品をこれからもお客さんに届けていきたいと思いますし、今日のゲストの方々はそれを広く一般に伝えていくのがお仕事です。互いに高め合っていければと感じた次第です。本日は大変勉強になるお話をどうもありがとうございました。
2012年 エンタテイメントの未来を考える会の大賞は
様に決定をいたしました。
「パズル&ドラゴン」をはじめとしてユーザー目線にたった、魅力あふれるコンテンツを真摯な姿勢で企画開発し、それを運営される企業体ということで、コンテンツ単体の評価はもちろん高いのですが、それを生み続けることの努力を重ねている企業体として評価し、登壇者一同で大賞とさせていただきました。
このたびはおめでとうございます。益々のご発展を祈念しております。
黒川塾 塾長 黒川文雄
登壇者 土本学/佐藤和也/目黒輔
ガンホー・オンライン・エンターテイメント 社長 森下一喜様よりフェイスブックにてコメントをいただきました。
黒川さん ご登壇者、ご参加者の皆様 この度は誠にありがとうございました。正直たまたま運が良かっただけの事ではありますが、このようなご評価頂き、身に余る光栄です。今後もゲーム業界及びエンターテインメントの発展に微力ではありますが、寄与出来るよう、「おもしろ果汁100%」のゲーム創りに取り組んで参ります。最後に黒川塾及び皆々様の益々のご発展をお祈りいたします。
2013年1月11日 発行 初版
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東京都生まれ。
大学卒業後、アポロン音楽工業に就職。
以降、
ギャガコミュニケーションズ(現在のギャガ)
セガエンタープライゼス(現在のセガ)
デックスエンタテイメント
ブシロード
コナミデジタルエンタテインメント
NHNJapan
とエンターテイメント企業で活躍。
営業、宣伝企画から販売、コンテンツプロデュースまで、その経歴は多岐に渡る。
コラム、ブログなどを通じてメディアコンテンツ研究家としての顔も持つ。
エンタテインメントの未来を考える会 「黒川塾」主催。