駅弁を知ることは、日本を知ることです。作家・編集者のバーバラ・アスカが食べた駅弁を写真とコラムで紹介。さああなたもレッツ駅弁。
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個人的に、「柿の葉寿司」って、駅弁としてはどうかなと思っているのです。
というのも、この笹八「柿の葉寿司」って、いつもの立川ルミネの食品売り場にもありますんで。
まー、それを言ったら、銀座のデパートには世界中の食材があるぞ、ということになるのですが、やっぱり駅弁は「駅でしか買えない」という付加価値が欲しいのですわ。
とはいえ、私の駅弁の定義は「駅で売っていること」「パッケージがそれ用に作られたものであること」の2点のみなので、この「柿の葉寿司」は立派に「駅弁」の定義を満たしていることになります。
さて、実は「押し寿司」のたぐいって、とっても駅弁に向いていて、
1、コンパクトでもおなかがいっぱいになる。
2、縦にしても横にしても型崩れしない。
という利点があります。
さらにこの「柿の葉寿司」はひとつひとつ柿の葉にくるまれているので、食べるとき手が汚れない。おしょうゆも(ついてはいますが)つけないで食べられるので、大変合理的なのであります。柿の葉には殺菌作用もあるしね。
では試食タイム。この笹八「柿の葉寿司」は鯛、鰺、鮭、サバの4種類が二つずつ入っています。
柿の葉をむきむき。
ぱく。
うまい!
濃いいお茶かビールがあればサイコーなのですが、いまそのどちらもないのが悔やまれます。
個人的には「柿の葉でなくてもいいのでは……」と思うのですが、そうしたら単なる「押し寿司」になってしまいますので、この柿の葉はメーカーとしては譲れないところでありましょう。
ルックスは正直なところ、鮭以外はどれも同じような感じ……。サバはあまり好きではないのですが、この柿の葉寿司ではおいしく食べられました。
小さいパッケージにきちんと個別包装された寿司、おはし、おてふき、しょうが、おしょうゆが入っていて、その「ドールハウス」感がたまりませんな。味も飲んべえであれば「ビール持ってこい!」という感じで(もちろん日本酒にもワインにもぴったり)、つまみとしてもイケちゃいます。
味よし、ルックスよしの「柿の葉寿司」ですが、問題はそこではなく、「いつものスーパーにも売っている」というところでして、それはそれで、困った問題(でもないけど)だなあ、と思ったりします。
毎日会える美人より、滅多に会えない美人のほうに、人は神秘性を感じるのです。
まあ、駅弁に神秘性がいるのかと言われれば……いや、いるだろ、駅弁は鉄道の神秘です!
駅弁はもはや「弁当箱に入った物産展」の様相を呈している。
おぎのやの「峠の釜めし」は言うに及ばず、日本中のあらゆる駅弁があらゆる場所で売られ、けっこう人気を博している今、「地域の名産品を駅弁のパッケージにして売る」ということは広く行われているようだ。
駅弁売り場に行くと、牛肉、豚肉、鶏肉、鮭、いくら、うに……さまざまな土地のものを詰めた駅弁がたくさん売られている。なんだか似たようなものがいくつも並んでいると、「どこの牛肉かはどうでもええわ!」と思えてきたりする。
というわけで今回選んだ「秋田比内地鶏こだわり鶏めし」も、それほど意気込んで選んだわけではない。NRE(日本レストランエンタプライズ)製品ではない、ということと、私が個人的に鶏肉を好むというだけのことだ。
駅弁が「弁当箱に入った物産展」であるのだとすれば、その中身は「おらが村を代表する渾身の一撃」でなくてはいけない。本もそうだが、駅弁の客をなめてはいけない。本も駅弁も、読んだり食べたりすると、作り手のレベルや本気度はすぐにわかってしまうものだ。
結論を言うと、この「秋田比内地鶏こだわり鶏めし」は実においしかった。ふたを開けたときの印象は「地味だなあ」というものであったが、鶏めしの上に載っている比内地鶏照り焼きスライスを一切れ食べて、私は「うーん」とうなってしまった。
うまい、というだけではない。何だかこの鶏肉の一切れが「秋田の鶏肉はどうだ!」と誇らしく主張してきたような気がしたからだ。酔っていたからだろうか。いや、酔っていてもまずいものはまずい。うまいものはうまい。
私は不勉強なもので、比内地鶏がどのような飼育をされているのかは全く知らないのだが、少なくともいつも食べる「米国産冷凍鶏肉モモぶつ切り100g75円」とは明らかに味も品格も違ううまみがあった。私はそれほど舌に自信がある人ではないので、素人にもわかるほどの味の差があったということになる。
さらに、つけ合わせも素晴らしかった。カレー屋の格は「食べ放題福神漬けとらっきょう」のうまさに表れるように、駅弁の格も「つけ合わせの小さいおかず」のうまさに表れる。この弁当のじゅんさい酢の物のおいしかったこと! 酢の物が苦手な私もつるつる食べられた。入れ物もふた付きの小さなものに入っており、「弁当をおいしく食べてもらおう」という製造元の心配りが感じられた。他のおかずもおいしく、この弁当でなら充分にうまい酒が飲める。
惜しむらくは、パッケージが安っぽいこと。ここまで気が回らなかったのか予算が足りなかったのか。ぶっちゃけ中身が大したことないのに大人気の「峠の釜めし」のことを考えるとパッケージがいかに重要かよくわかる。
ぜひ、「秋田比内地鶏こだわり鶏めし」を見かけたら秋田のためにも買ってあげてほしい。JR東日本大人の休日倶楽部「もう一度食べたい駅弁」で10位にランクインしたということだが、それは決して、ヤラセでもウソでもないことがよくわかる。
2013年2月5日 初版 編集中 発行
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作家・編集者。駅弁を知ることは日本を知ることだと思う今日このごろ。牛肉、いくら、うにを目玉にした駅弁の多さに辟易している。
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