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2013年5月僕は中国に出かけた。
タイトルは中国トホホでオホホな旅日記なのだが、、、
実際には旅行ではなくお仕事で僕は中国に出発した。
2013年中国では鳥インフルエンザが発祥した。
中国河南省で発祥した鳥インフルエンザは、やがて上海へと拡大して行った。
僕は日本から、上海にそこから河南省へと向った。
ありゃりゃ、全く鳥インフルエンザの進んだ道を逆走だ。
僕は河南省(鳥インフルエンザ発祥の地)へと出かけた。
日本を発つ前には、結構心配した。
日本で体調を万全にして出発しようと僕は考えた。
人はあんまり考えると案外上手くいかない。
僕は出発前に実は少し体調を崩した。
まずいな体力が落ちると感染しやすいもんな。
前夜僕は、日本人初の感染者が、、、というニュースを妄想した。
まあ初だから良いかな?
等とは欠片ほども思わない。
ますいよなとか心配になる。
うーん東スポに載るかな?
心配になるつつもそんな事を考えたりもする。
そのうちに出発の朝が来た。
実は中国に行くのは2回目になる。
僕は中国が好きである。
何故だか分からないが、大好きである。
意拳を源流とする太気拳を僕は学び、教錬の資格を頂いた。
だからなのか中国に僕は惹かれる。
前回の旅行は北京と桂林、桂林は水墨画のような景色の街だ。
中国好きな僕は北京でジャージを買った。
中国の国旗入り、多分日本人でそれを持ってるのは僕だけだろう。
僕はそのジャージで空港に向った。
人生はネタの宝庫である。
宝の倉庫を満タンにするのは自分である。
さっそくネタを用意して空港に僕は向った。
空港には和田さんと宮沢君がいた。
あはは 僕を見た瞬間に固まっている。
正確には僕の服装を見て固まっている。
日本出発からネタを自分で用意して良かったな。
人生はネタの宝庫である。
それを満たすのは自分自身なのだ。
和田さんと宮沢君は、出発前にタミフルを飲んだらしい。
それで彼らは僕にも飲むかと、、、
彼らは実は優しい。
恐ろしいのは外見なのだ。
筋肉が優しさを隠してるだけのだ。
僕もきちんと前の晩に飲んだ。
青島(チンタオ)ビールを飲んだ。
アルコール消毒したから万全なのだ。
それで、僕はタミフルは飲まない事にした。
飲むと普通の人になってしまう気がした。
それじゃ面白くないではないか。
東スポどころか、テレビのニュースにも出れるのだ。
日本人として初なのだから。
そんなくだらない事はもちろん考えはしないが。
僕は何故か大丈夫と知ってた。
大丈夫なのだから、タミフルを飲んだ方がどちらかと言えば身体によくない。
インフルエンザでもないのにタミフルはよくない。
あの2人とは違うのだ。
僕は普通の人なのだ。
そう言ったら、和田さんが笑った。
もう少しで殴られそうになった。
僕はタミフルを飲まずに、日本を出発した。
充分にネタを用意して出発した僕たち3人は、上海でトランジットして
目的地の河南省に到着した。
空港からタクシーでホテルに向う、怪しい3人。
空港を出ると、もう夜の11時位で、空港の周りも怪しい感じで
走り出したタクシーはいきなり凄いスピードで走り出す。
何もそんなに急がなくても、激しいスピードに乗ったタクシーは
どんどん追い抜きながら走る。
抜き方が尋常じゃない、猫の額程しかないような隙間を見つけて
そこに鼠のように滑り込む。
前の車を追い越すと、また車線を変えて、獲物を狙うように
車と車の隙間を探し出して、追い抜くのだ。
唖然としながら運転手を見てみたら、、、
何と日本では考えられない程のカーチェイスばりの追い抜きを仕掛けながら
携帯で話を始めた、、、
多分、今の客が終ったら、家に帰るとか言ってるんだろうな。
晩御飯何とか聞いてたりして。
晩酌はするのかな、、、
中国河南省で僕の妄想は暴走してゆく。
この運転手は実は新婚なのだ。
この運転手は結構いい年なのだ。
それで奥さんは若いのだ。
運転手は半年前まで、上海にいたのだ。
そこで出会った2人は恋に落ちたのだ。
若妻はまだ17歳、右も左も分からないまま上海にやって来た。
上海は17歳の生娘にはまだ厳しい街だったのだろう。
何かで挫折した折に、運転手のタクシーに乗ったのだ。
運転手は、タクシーに乗って塞ぎ込んだ顔をしてる生娘(後の若妻)
が気になってしょうがない。
それでも彼は声をかける事が出来なかったのだ。
生娘(後の若妻)がタクシーから降りても気にかかってしょうがなかった。
いや正確には、降りてからの方がどんどん気になるのだ。
運転をしていても、たった一度だけ乗せた生娘(後の若妻)の事が頭から離れない。
これが恋なのだろうか?
それともあの塞ぎ込んだ顔を何とかしてあげたいという年上の優しさなのだろうか。
生娘(後の若妻)と運転手の年の差は25歳。
運転手は42歳なのだ。
恋愛という関係よりは親子といった関係の方がしっくりとする。
運転手は一人運転席で笑った。
自分の心の中の不思議な感情の整理がつかない自分が可笑しかったのだ。
3日後、2人は再会する。
運命の出会いには、運命の再会がつきもなのだ。
2人は恋に落ちた。
そして紆余屈曲があり、半年後河南省で2人は愛の暮らしを営んでいる。
だからなんだろう、この異常な飛ばし方、追い抜き方。
常識では考えられないのだ。
自殺行為なのだ。
愛は自殺行為なのだ。
盲目の愛こそが至上の愛なのだ。
妄想で暴走のフレーズもタクシーと一緒に暴走を始めた。
しばらく走ると(暴走すると)高速道路に入った。
タクシーの暴走は更に加速する。
高速道路に入った分激しいレース展開になった。
ここでレースのビビリを完全に忘れ去らせるような不思議な現象がやって来た。
中国の高速道路の照明は、日本に比べると暗い。
そして何故かオレンジっぽいような色だったりする。
高速道路の周りの景色は山、夜の山は真っ暗でただ陰のようにしか見えない。
オレンジ色の不思議な光が、山の間を走る高速道路を照らしてる。
ふと前を見ると、不思議な物体が飛んでいる。
ふわふわした、泡の塊みたいな不思議な物体が数え切れないくらい飛んでる。
物体は結構大きい、パイナップル位の大きさの物体もある。
泡の塊がオレンジ色のライトに照らされて、無数に高速道路を飛んでくる。
始めは何だかあっけに取られて見ていた。
暫くすると他のみんなも気がつく。
あれは何だろう?
鳥インフルエンザの正体!
工場が近所にあって、規制を逃れた怪しい化学物質を放出しまくっている!
惑星からの怪しい物体が河南省に飛来!
われわれは、中国が喋れない。
そんな事は忘れて日本語で運転手に聞いた。
あれなんですか?
運転手には当然通じない。
日本語だから通じない。
運転手は生娘(若妻)との帰宅後の甘い時間に心を奪われたままなのだろう。
全く相手にしない。
始めて来た河南省、謎の物体が飛び交う真っ暗な高速道路。
僕たちはUFOが人を捕獲する場面を想像した。
キャトルシュミレーションという英語が、中国の僕たちの頭に飛来した。
タクシーの周りには謎の物体が飛来しまくってる。
僕たちはビビリまくってる。
タクシーの運転手に、何度も聞いたら。
ようやく意味が分かったんだろう。
手を振りながら、問題ないよと言った。
でもタクシーの外には、惑星から飛んできた謎の物体が無数に飛んでるぞ。
この時点で、謎の物体は惑星から飛んできた事に僕らの中で決定していたのだ。
人は心配しすぎると、思考がマイナス方向に働く。
僕たちはUFOに連れ去られると感じた。
そうか運転手は宇宙人なんだ。
だから運転のやり方が違うんだ。
UFOはくねくねしながら飛ぶもんな。
僕は納得した、そして面倒くさいので考えるのを止めた。
いざとなれば運転手をやっつけてやろうと考えて。
手足をくねくねさせて備えながら座ってた。
そんな妄想が暴走してる間にタクシーは街に着いて
ホテルの前で停まった。
何の問題もなく、連れ去られる事もなく。
むしろ早く降りてくれよ。
これから生娘(若妻)とむふふなんだから。
もう早くしておくれ。
そんなにやけた顔の運転手は僕らを降ろすと。
一瞬で消えた、まるでUFOが消えるみたいに消えた。
次の日になれば、謎の物体の正体がすぐに分かる。
街中だからそれ程目立たない小さな謎の物体を僕は見つけた。
綿花だ、綿花みたいな綿みたいなのが街を飛んでる。
多分高速道路の山の一体にはこの綿花みたいな木がいっぱい生えてるんだ。
それが風で飛んで、オレンジのライトに照らされてたんだ。
凄いスピードで走る愛妻タクシーだからどんどんぶつかって来る。
綿花が凄いスピードで飛んでたんじゃないんだ。
ふわふわ漂う綿花に愛妻タクシーが凄いスピードでぶつかってたんだ。
分かれば何の事はない。
田舎の街のよくある風景。
のどかな綿花の沢山ある田舎の風景。
知らないという事は恐ろしい。
綿花が惑星からの謎の物体に見えるのだ。
人は思い込みによって目の前の景色が変わる。
思い込みが変われば、目の前の景色も変わる。
中国への思い込みが変わったら、中国の景色も変わるのです。
ホテルに着いたら、大会のスタッフや代表がロビーにいた。
中国の河南省だから正直いってわたくし舐めてました。
ホテルは大きな立派なホテル。
ホテルの正面には大きな大会の宣伝の看板が掲げられていて。
日本では見た事が規模で、ホテルの壁は大会の宣伝看板になっていました。
それで代表が食事をしようと。
夜も遅いので、ホテルのレストランで食べて休みましょうと。
行ってみると、レストランはもう終って掃除とかしてます。
代表余裕で、大丈夫やらせますと。
何と普通に営業再開させたのですよ。
中国という大国で力を持つという事はこういった事が簡単に
出来てしまうという事なんだ。
僕は愛妻暴走タクシーの事も惑星からの謎の物体の事も忘れていました。
閉店後のレストランを余裕で再び営業させる。
やるな中国です。
僕たちは、調子に乗って色々食べます。
ダイエット中と嘘を偽りを言う和田さんは、空港で食事をして
機内食を食べまくり、ステーキと焼きそばとラーメンみたいなのと
サラダとか、、、
もう思い出せない位喰らいまくってました。
そのまま部屋に行って寝ます。
流石に眠いので少しゆっくりと翌朝は起きて一緒に食事をしようと
約束をしてそれぞれの部屋に向いました。
次の日の朝、何故か6時前に目が覚めました。
目が覚めたら、そのまま起きるのが旅の醍醐味です。
誰が決めたのでも、僕が決めたのでもなくその朝の思い付きです。
旅の醍醐味は非日常なのです。
ちなみに中国に来たのは本当は仕事です。
まあ良いのです、人生は楽しむ事にその意義があるのです。
目が覚めたら、起きるという謎の旅ルールに従い僕は起きた。
それから、散歩に出かけた。
旅の朝に散歩をするというのも旅のルール(もちろんその日に決めた)
ホテルから出てみると、見慣れない異国の景色が広がってる。
ホテルに着いたのは深夜に近い時間だから真っ暗で周りは見えない。
しかも謎の物体にビビッていたからなるべく早くホテルに入りたかった。
朝に始めて見るホテルの周りの景色は異国情緒が満載だった。
道路の両端には大きな樹が植えてある。
等間隔で大きな樹が道路の両端に並んでる。
樹は不思議な形をしていた。
大きな樹は途中から、2つに分かれていた。
Yの形になって大きな樹が天に向って伸びていた。
まだ少し眠い異国の朝。
Yの形の樹が大きなパチンコに見えた。
もしかしたら、このパチンコであの謎の物体を真夜中になると打つのかな。
ははは そんな訳ないよな。
等と異国で一人考えながら、僕は歩く。
ホテルの向こうから不思議な匂いがしてくる。
中華料理の香辛料の匂いがしてくる。
匂いの方向を見ると、そこから活気が感じられて人がいっぱい集まってる。
そのままそっちに方向を変えて歩いていくと。
鶏がいっぱい並んでた。
鶏は毛を抜かれ、丸々一匹そのままで縦横無尽に並んでいた。
冷蔵庫には入っていない。
そのまま地面にシートみたいなのを置いて並べてある。
鳥インフルエンザという文字が僕の目の前を通過する。
昨日の晩の謎の物体ばりに、文字が縦横無尽に果てしなく飛び交った。
やばいかな?
等と思いつつも、興味の方が勝ってしまった。
僕はそのまま鶏が並ぶ方向に進んだ。
路地のような場所を入ると、中は案外広い。
何本か通路のようになって続いていた。
通路には鶏が無数に並んで、肉の塊もいっぱい並んでた。
そのどれもが冷蔵庫には入っていない。
独特の香辛料の匂いと生肉の匂いが混じり合った不思議な匂い。
そのまま通路を進むと、並んでる種類が増えていく。
魚や貝も並んでる。
もちろん冷蔵庫には入っていない。
どんどん不思議な匂いが大きくなっていく。
鳥インフルエンザの文字も大きくなってゆくが。
不思議と楽しいのだ。
僕は引き込まれるように中を歩いて進む。
鶏が焼いてある、焼いてあるというよりも燻製のようになった鶏が
無造作に通路に重ねてある。
その横には見た事もない燻製が重なっていた。
大きさは鶏よりも少し大きい。
手足がきちんと4本ならんで頭も付いてた。
燻製になってるから頭を見ても元の姿は分からない。
燻製になったその動物はムササビみたいな感じで
広がっていた、内臓を取り出して開いた感じで燻製になっていた。
ビックリするというよりも不思議な感じがした。
何でも食べる中国という国をその場で感じた。
もう少し進むと今度は凄いのがぶら下がっていた。
内臓を取り出して、魚でも開くようにしたヤギが何匹のぶら下がっていた。
毛はきちんとむしり取られて、何故か尻尾の毛はそのままだった。
もちろん頭もそのままついてる。
ヤギの開きが生のまま、冷蔵庫に入らないでぶら下がってた。
異国だなと思った。
ビックリするよりも不思議な感じがした。
そのまま散歩を続けた。
散歩というよりは探検だ。
すっぽんがいっぱい生きたまま重なっていた。
その隣にはミドリ亀みたいな小さな亀も重ねられていた。
すっぽんは分かる。
ペットじゃなく食べるんだろう。
ミドリ亀はいったい何の為にいるんだろう?
食べるには小さ過ぎるぞ。
出汁にするのかな?
そんな事を思いながら、散歩をしてたら全部の場所を歩き終わっていた。
そのまま街を少し散歩してホテルに戻った。
日本を出る時に少し悪かった体調が何故か元に戻ってた。
早起きして散歩して、体調も回復したから
ホテルに戻って、朝食を食べにいった。
和田さんとか日本人が朝食を食べてたからそこに合流。
散歩に行って見て来た事を話したら。
みんなビックリしていた。
それで、朝食を食べたらまたみんなで行こうって事になった。
むふふあれを見ない手はないのだ。
ヤギの開き尻尾つきがいっぱいぶら下がってるのだ。
すっぽんの横の謎のミドリ亀も見るのだ。
あの匂いもむふふなのだ。
決していい匂いではないが、日本では嗅ぐことはない匂いなのだ。
何でも経験なのだ。
訳の分からない日本語で僕は独り言をつぶやいた。
朝食を食べて少ししてから、みんなで出発。
ところが怪しい市場はすでに店仕舞いしてた。
市場が早く始まって早く終わるのは万国共通なのだ。
そのままホテルに帰るのも勿体ないので、僕らは街を散歩する事にした。
街は碁盤の目のような造りになっていた。
京都と同じように、○条とか道に書いてる。
まあ平安京も平城京も街の造りの基本は中国なんだな。
そんな事を思いながら街をプラプラ。
集団でプラプラしてるのは楽しい。
何の目的のなく、ダラダラそしてプラプラ。
何度も書くが、これな旅行ではない。
仕事でやって来た、中国の見知らぬ始めての街をダラダラそしてプラプラ。
これは何か贅沢な気分になる。
その気分に僕は勢いを乗っける事にした。
ダラダラそしてプラプラしてたら床屋を発見したのだ。
中国で髪を切ろう。
これは勢いが付くぞ。
髪を切る、整髪だ、髪は神、神様を整えるのだ。
根拠の無い事をするのが僕は大好きなのだ。
そのそも人が産まれてくる根拠を君は知ってるのか?
妙にテンションが上がってゆくのが楽しい。
さっそく床屋に。
床屋には3人いた。
客は0人。
つまり暇なのだ。
そこにやってきた謎の集団。
僕たちは5~6人位の集団だった。
それで髪切ってください。
と日本語で言ってももちろん通じない。
中国ではもちろん言えない。
ところが世の中は上手く出来ているのだ。
ここは床屋なのだ。
だから、新聞の勧誘もやってこないし、怪しい株も進められる事はない。
髪を切るしぐさをすれば、髪を切りに来たと通じてしまう。
ところがどれくらい切るとかは伝えられない。
床屋のオヤジが身振りでどれくらい切ると聞いてるのは分かるのだ。
ところが伝えるのは難しい。
まあ勢いなのだ、適当なのだ人生の意味は適当に楽しみなさいなのだ。
僕は適当に、これ位と手で示して、結果は気にしない事にした。
その方が面白いに決まってるから。
床屋オヤジは、戸惑いながら髪にはさみを入れてくる。
ははは いきなりバサッときやがった。
やるな床屋オヤジ。
そこでひるんだら負けなので。
一緒についてきたギャラリーに拍手を強要。
その場をおーと盛り上げる俺様。
床屋オヤジは、良い気分。
中国4000年の歴史の中でも髪を切って拍手喝采は始めてなのだろう。
床屋オヤジは戸惑いながらもニヤニヤし始めた。
そこを逃しはしない。
チャンスに一気に畳み掛けるのは格闘技の基本、武術でも基本。
チャンスはいつまでもそこにいないから、一気にいかなければ意味がない。
おー上手いね、流石だね。
日本語で褒めだす俺様。
日本には褒め殺しという素敵な言葉があるのだ。
床屋オヤジは段々興奮して髪を切る鼻息が荒くなってく。
背中に熱い鼻息がかかってくる。
暑苦しいぞ床屋オヤジ。
もう少しで鼻くそが飛んできそうな勢いで床屋オヤジの鼻息が飛んでくる。
まあそれも旅の思い出だな。
勢いで僕も興奮し始めた。
何で河南省で髪を切ってるんだろう。
あはは だからネタ作り。
人生はネタの宝庫なのだ。
髪を切り終わったら、床屋オヤジと握手して記念撮影。
あはは 人生のネタは自分で作るのだ。
街を散歩しながら気が付いたのだ。
ここ華南省は鳥インフルエンザの発祥の地。
本場なのだ鳥インフルエンザの故郷なのだ。
でも不思議だな、誰もマスクしてないぞ。
朝市場で鶏一匹丸ごとを山のように見たぞ。
咳き込んでる人も誰もいない。
街を歩く人はみんな元気いっぱいだ。
日本を出る時に少し悪かった体調は、朝から大騒ぎしたら元気になった。
というより日本より元気だぞ俺様。
何か不思議な感じがした。
誰もマスクをしてないし、街のみんながとっても元気なのだ。
床屋オヤジと、再見(さよなら)してホテルに戻ったら
お昼ごはんを食べて、それから仕事が始まる。
そう旅行じゃないのだ仕事なのだ。
ようやく本来の目的を思い出した僕は仕事モードになった。
午後はレフェリー講習会。
中国での総合格闘技の歴史は浅い。
歴史が浅い競技の興行をやる際には、選手よりもレフェリー
を集める方が大変だったりする。
新しい競技のレフェリーから始めようとする人はいない。
まずは選手として競技を経験してからレフェリーになったりするものなのだ。
それで中国人を集めてレフェリー講習会。
選手とレフェリーに位置の取り方。
選手の動きの邪魔にならないで、ストップのタイミングが遅れない。
その為には位置の取り方にコツがある。
その辺りを教えてあげたらみんな喜んでくれた。
まあここは世界の和田良覚に全部任せて僕はのんびりしてました。
翌日は興行の日。
さて本番だ。
翌日の朝、テレビ局に向う。
今回の興行はテレビ番組の一環として放送される。
毎週テレビで放送しているらしい、武林風というタイトルで色んな格闘技が出て来る。
全中国に毎週中継している大きな番組。
日本の感覚でいうと、今週はK-1その次の週はプライド、翌週は極真空手の全日本大会
そんな感じで毎週放映されている中国で有名な番組。
今回はテレビ局で収録されるという。
僕は日本のテレビ局の感覚で出かけた。
河南省は中国で言えば田舎。
僕は舐めていたのだ。
河南省の人口は日本とほぼ同じなのだ。
テレビ局の収録スタジオは後楽園ホールよりも大きかった。
立派な格闘技用の会場だった。
中国でよく聞く話がある。
中国で商売をする時の話。
中国全土の規模で、一人から1円儲けが出れば、13億円の儲け。
今日の興行は全中国で放映されるのだ。
僕は日本のビックイベントもよく知っている。
規模で言ったら中国が圧倒していた。
行ってみないと分からない。
日本で知る情報は日本が主体に発信している事が多い。
鳥インフルエンザなんて全く河南省では関係なかったのだ。
河南省に来たら、体調が良くなったのだ。
日本にいる時よりも僕は良い体調で河南省を満喫したのだ。
見ると聞くでは大違い。
諺にもならないような日本語が僕の周りを文字になって飛び交った。
興行はとても良い興行だった。
日本の格闘技の選手と比べてレベルで言えば大した事はない。
選手のレベルと試合の内容は必ずしも一致しない。
格闘技バブルが弾けた現在の日本格闘技界。
現在の日本の選手がバブル期の選手と比べてレベルが低いかと言えばそうでもない。
むしろ時間が経った分だけ格闘技そのもののレベルは上がっている。
選手のレベルとプロとしてのレベルは一致しない。
道場での強さとリングでの強さが一致しないのと同じか
それ以上に一致しない。
強い選手同士をマッチメイクしても案外良い試合にはならない。
穴のあるような選手同士。
初期のUFCのように組み技対立ち技のような対戦は緊張感がある。
強くてプロ意識にかける選手は、必要ない。
その選手はただの選手に過ぎない。
ただの選手にはプロの舞台に上がるような資格はないのだ。
今回の興行に出た選手は選手としてはそれなり。
けれど、プロの舞台に上がる資格をみんなが持っていた。
何しろ全中国13億人が見る可能性があるイベントなのだ。
それを意識したら、選手としてだけでなく
プロのお金を貰う試合を心掛けるようになる。
そんな心掛けの選手が今回きっちり集まった。
プロモーターの手腕が物をいった興行だった。
試合がよければ未来に繫がるのだ。
どんどん勝ちに行けないのならプロではないのだ。
メインに出場した選手は良い。
名前は忘れたが、みんながスターって呼んでいた選手。
ニックネーム通り格好良い。
スターは本当にスターなのだ。
彼はアクションスターだった。
日本と中国の違い、カンフースターという職業が中国にある。
カンフースターは実戦というよりも表演。
そこがいいのかもしれない。
変な格闘技の癖がない。
カンフースターの身体能力は驚異的だったりする。
圧倒的な身体能力で、スターが使った技は柔術。
彼は柔術をきちんと学んでるらしい。
柔術家に入れば彼の身体能力は脅威的だったりする。
柔術のマット運動とか簡単すぎるだろうアクションスターにとっては。
メインに登場したスターは、試合が始まる前から格好良い。
スクリーンで見られる訓練を積んだスターは普通の立ち居振る舞いから格好良いのだ。
試合が始まる前から観客を惹き付ける。
それもスターの素養だったりする。
もちろん身体は鍛え上げられて格好良い。
それで強ければ文句なしだな。
等とジャッジしながら野次馬根性で見ていたら。
試合が始まってすぐに下からの逆十字を極めて一本勝ちだ。
出来すぎだぞスター。
高い身体能力で、柔軟に下から絡みつくように逆十字を極めた。
負けた相手はあまりの威力にタップするタイミングが遅れてリングで呻いてた。
とにかく動きが速かった。
しかも格好良いのだ。
この試合が全中国に流れるのが楽しみだな。
もしかしたら一気に中国に総合格闘技のスターが産まれるかもしれないな。
そんな事を想いながら、全部の興行が終った金網の中を僕は見つめた。
あっという間に終った中国の旅、、、
だから仕事なんだよ本当は。
でも旅行に来るよりも楽しい時間だった。
和田さんが出発前に奥さんに言われたらしい。
「あんたたち良いね。」
「楽しい事ばっかりやって。」
ちなみにあんたたちのもう一人は俺様
ははは 何故か和田家の話題に俺様が
しかもあんたたち扱いだ(笑)
どうやら和田家には
俺様の行動は筒抜けらしい(笑)
どうせ夕餉のひと時酔っ払って和田さんが言ってるんだ(笑)
今回の中国ネタもきっと食卓を賑わすだろう。
僕はこう言った。
「楽しいのが仕事になるんだから。」
「遊んでるんじゃないのにお金を貰ってるのに楽しいんだから。」
「子供に聞かせてあげると良いよ。」
「人生は楽しむ為にあるんだよ。」
「辛い事してお金を稼ぐ為に人生があるんじゃないよ。」
「人は楽しい事する為に産まれて来るんだよ。」
「そう出来てるんだ。」
「理由は分からないけど。」
「僕はそう思うよ。」
「楽しい事を真剣にやれば、もっと楽しい事が、、、」
「もっと大きくなって向こうからやってくるのさ。」
僕は中国でドヤ顔になってそんな事を言った。
だって僕は本当にそう思ってるんだから。
(完)
2013年5月17日 発行 初版
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