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Interview! 004 谷内志穂さん

Interview!編集部

Interview!出版



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  この本はタチヨミ版です。

ジャム作りで、つながりの輪を広げたい

 京都の北白川にあるこのお店のことをパン屋さんと思われている方が圧倒的に多いようなのですが、本当は四つの商品を扱っているお店なんですよ。兄夫婦と私と友人の神前真知子、四人で共同経営しています。まだ2階にも展示スペースがあることに気づかれていない方が多いですが。私の兄、谷内亮太がアクセサリー担当で真鍮のネックレスとか指輪を作っていて、兄のお嫁さんのノロマサコが陶器、私の友達の真知子がパン、私がジャムを作っています。
 お店は木曜日から日曜日までは通常に営業しています。月曜日と火曜日が定休日です。そして水曜日はパンだけお休みです。パン作りは真知子が一人でやっています。家庭用のオーブンで焼いているので一度にたくさん作れないんです。体力的にも結構ハード。売れ残りが出るともったいないし、少しずつ置いているよりは、ある程度まとめて並んでいる方がいいという理由からパンは週四日です。
 お店には、ほとんどの時間、私と真知子の二人がいます。営業時間は十一時から十九時までですが、最近は二十二時頃まで開けています。0時という時もありました。その時は閉め忘れでした。仕込みに夢中になるあまり閉店の作業を忘れてしまっていて、その時は来られたお客さんもビックリされていました。

家にいる安心感を感じてもらいたい

 お客さんが沢山きてくれるピークの時間は夕方四時くらいから閉店までです。夕方から閉店まではパラパラと絶え間なく来てくださいます。来てくださるお客さんは、いろいろで、近所の方や、おじさん、おばさん、若いお母さん、とか、このあたりを通られる方はのぞいてみてくださっているようです。
 店名の「ちせ」は、アイヌ語で家という意味です。家にいる安心感を感じてもらえるお店にしたいなという思いを込めてつけました。誰でも家に帰った時には安心しますよね。お客さんにそんな安心感を与えられるお店にできたらなと。好きなものに囲まれた時の幸福感。「ちせ」のお店で売っているパンやジャム、陶器やアクセサリーなどの商品からもそういう風に感じてもらえたらと思っています。家庭的なぬくもりや安心感を、商品であるパンやジャム、陶器、アクセサリーを通して感じてもらえればいいなと思っています。

ジャム作り

 私はこのお店でジャムを作って売っています。もともと料理を作るのが好きだったのですが、なにかお菓子作りにも挑戦したいなと思った時に、ジャムがそれまで作っていた料理を作る感覚にいちばん近かったので作りやすかったのです。果物をもらったりする度に作って、組み合わせを変えたりするのが面白いなと思ったのがきっかけでした。
 ジャムを作りは、果物の場合、一日二種類くらい仕込んで、次の日にそれを仕上げるというペースでやっています。お店は月曜日と火曜日がお休みなので、週の初めである水曜日は、一日で出来るミルクジャムを作ります。これはまず、ミルクと砂糖熱して練乳みたいにします。それを抹茶やきなこと混ぜればさまざまな風味が楽しめるんです。
 現在、レパートリーは七十種類くらいあります。ブルーベリーやイチゴ、マーマレード等の定番の他に、バナナやミルク、キウイ、豆乳とかもあります。豆乳はてん菜と合わせて作っているのでベージュっぽい色になります。おいしいですよ。豆の味がします。おすすめは、スモモです。季節の素材を使ったものが多いです。酸味のあるフルーツはジャムにすると、甘くておいしいです。私はヨーグルトによく入れています。いちばんの売れ筋はバナナクランベリーです。
 基本は本などで学びました。それを配合をちょっとずつ変えるなどして、自分でアレンジしています。アレンジしたもののレシピも保存しているのですよ。ちせオリジナルのジャムレシピが、これからどんどんたまって行く予定です。
 朝の七時から七時半の間に店へ来て、十時頃までジャムを作ります。十時から十一時まではオープンの準備をして、開店後は店番、十八時から十九時頃までは閉店作業をしています。閉店後の二十時頃からはジャムの仕込みをしています。
 朝、七時頃にジャムを作っている時が一番充実しています。頭の中がすっきりして、ジャムの甘い香りがして、一番充実した時間です。
 安心できるものを作りたいという思いから、ジャムには保存料を使っていません。原料は市場へ買いに行っています。
 お店ができて二年が経ち、いろいろな経験が出来ました。それを踏まえて、より良くするために、農家から直接野菜や果物をジャムのためだけに作ってもらえるようになればいいなと思っています、今更ながら。今は中央卸売市場へ週に一度買い出しに行っています。丹波口の駅のすぐそばにあるすごく大きな市場で、鮮魚と八百屋と果物とかたくさんあります。そのほかにもジャムに入っている果肉の大きさを種類ごとに大きくしたり、もう少し細かくしたり。良くするために、いろいろ試しています。

陶芸を学んだ学生時代

 絵がすごく好きで、中学の時に美術系の高校に進もうと思ったんですがその時は諦めて、普通の高校に進学し、高校で進路を選ぶときにやっぱり美大に行きたいという思いがありました。兄も美術系の学校に進んだので、その影響もあるかも知れません。
 高校時代に通っていたアトリエで勧められて陶芸コースに入学しました。何をするのかもわからないままに。もともとは絵を学びたいと絵を学んでいたんですが、アトリエの先生に「陶芸をやってみたら」と勧められて、やってみたら粘土を触ることがすごく面白かったんです。入試の実技試験も通って、勧められるまます受け入れてやってみたら、そのまますんなりと(笑)。
 陶芸は作品にその時の気持ちがそのまま出るから面白いんです。上手い、下手を越えて、その時の手跡が形になるんです。今は全然作っていないので、また作りたいですね。いずれは食器も作ってお店に並べてみたいです。
 大学では陶芸を学んで、そのときの先生はわりと作家を育成したいようだったので、そういうつもりでいました。しかし両親からは反対されましたね。卒業後がしばらく、おばんざい屋さんでバイトをしていました。兄は2歳年上だったのですが、大学院に進んだため社会に出るタイミングは私と同じでした。兄はデザイン会社に一度就職しましたが、やはり悩んでいましたね。私も卒業する前は進路についてかなり悩んでいました。けれど私は、具体策のないまま、悩んでいたので、私の場合はただ暗くなるだけでした(笑)。
 作家を目指して陶器の作品を作るのと並行してジャム作りを始めました。陶器の作品はお店の二階にもすこし飾ってあります。食器も作っていましたが、小皿しか作れなくて、オブジェのようなものが多いです。作品としての陶芸の方に興味がありました。ここにある食器は兄の嫁であるノロマサコが作ったものです。彼女も陶芸を学んでいて、大学時代は四人とも、今とは全然関係のない事をしていました。陶芸やテキスタイル等を学んでいたんです。

お店を始めたきっかけ

 大学を卒業後、私はおばんざい屋さんで働きながら陶芸作品を作っていました。その頃から、陶芸と並行してジャムも作っていました。いつジャムを始めたのかは、はっきりとは覚えていなくて、たぶん趣味の料理作りから派生したのだと思います。



  タチヨミ版はここまでとなります。


Interview! 004 谷内志穂さん

2013年5月24日 発行 初版

著  者:Interview!編集部
発  行:Interview!出版
ブログ:http://blog.livedoor.jp/interviewproject/

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Interview!

2012年5月に始動したInterview!プロジェクト。インタビューという手法を用いて、世の中を読み解き伝えるというテーマのもと、フリーマガジン『Interview!』を創刊しました。京都や大阪で配布している本フリーマガジン。ここでは過去に『Interview!』で公開されたインタビューや最新のインタビュー等を公開していく予定です。        About us          「Interview!プロジェクト~芸術力とは何かを問う、本の出版プロジェクト~」            人と話す。相手を引き出す。わたし達が追う「芸術力」というのは、一般に言う美術・芸術の類のものではない。各々が持つ感覚や感性、つまり生き方に表れるものである。当たり前のように存在しているからこそ、人々は見落としがちだ。だが、特出して誰の目にも見て分かるものだけが素晴らしき芸術の力ではない。だからこそ、インタビューという手法を用いて、世の中に数多存在する芸術力を見出し、伝える。そうして出会った芸術力に、人は触発され、自らの行動に落とし込むことができる。では、わたし達はどうやってそれを伝えればいいのか、本を出版して人々に問うことを選択した。文は人の意思によって読まれる。何もしなくとも進んでいく映像とは違い、自分で読もうとしなければ何も進まない。つまり、人が文を受け入れながら読むため、心に響きやすい。芸術力を「感じ」とってもらうには最適な方法。お金も知識もないが、自分にできることはなんだってやる。自己満足で終わらせないために、本の出版という形で人に情報を発信するのだ。作ることで糧を得、わたし達、そしてこの『Interview!』を手にした人が生きることに繋がるよう。現に、あなたにも届いている。 http://blog.livedoor.jp/interviewproject/

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