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    水になりたい―


海水でも雨水でも汚水でも構わない


     ただ漠然と

   水になりたいと思う―

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絡繰隔離

楓仙子

我落駄出版



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  この本はタチヨミ版です。

 目 次

灰かぶり
夜半の雪
いろ
姫菊
死んでしまえばいい
汚したいもの
独占欲の標的
夢見の樹
カプセル
格子の向う側
徒桜
微罪
フィギュア
日影と月陰

散華
非力な僕と、まだ幼い少女
笑顔
弔砲
雨水の頃
ぐるんぐるん?
生き人形
猥牡丹の物云ひ
少年
からくり
子宮
神無月の風
天竺鼠
迷彩
飼育

 灰かぶり


大切に大切に守ってくれた
「僕の宝物が壊れないように」と

紅をさして 着飾りたいけれど
私は窓を開ける事さえ
許されていなかった

硝子の向こう はしゃぐ少年達
何という遊びをしているのか
私は声を発する事さえ
許されていなかった

膝の上で閉ざした御伽おとぎ
束の間の幸福と絶望をくれた

私には 灰かぶりがお似合い

親指姫の様に小さいわけじゃないし
ラプンツェルの様な長い髪も持っていないから
此処から出られないの
あなたが私に飽きるまで

ガラスの靴なんて履けない
王子様は絶対現れない
都合の良い結末なんて望めない

私は 独り遊びに飽きたあなたに
飼われたお人形

やがて私が此処にやってきた時の様に
新しい玩具が欲しくなった その手で
あの部屋の暖炉に投げ棄てられるのでしょう



                          ―目次へ戻る

 夜半の雪


ふたりを遮る
着物の厚みさへ
疎ましく感じ
涙と云ふ形で溢れ出す
あなたの体液さへ
惜しく思ふのです

昨晩 交はした契りは
夢か現か
深々と白く染まる
が心の如く
叶わぬ約束に身を焦がし



朝の訪れと共に
戦場へとおもむ
あなたの背を見つめ
花の様に微笑み手を振りながらも
見も知らぬものの手にかかり
絶命するより
いっそ今 この場で
私が其の命を終はらせたいと願うのです

憎い 憎い
罪の無いふたりを
引き剥がす朝が
ただただ恨めしひのです



やがて空が白み
刺す程の冷気の中
あなたが後ろ髪をひかれる思ひで
振り向いたその時には
贈られし此のかんざし
共に逝く所存に御座居ます



                          ―目次へ戻る

 い ろ


緋色の雪に溺れていく僕

笑い出した枯葉色の空

灰色のせ返るかお

琥珀色の水と滲む涙

鋭く覗く鏡の銀

砕け散る群青の石


汚れのない純白の朝

紫色の煙に抱かれ

僕は蒼い夢を

異形の黒が漂い

紅蓮に巻かれ君は死す



  タチヨミ版はここまでとなります。


絡繰隔離

2013年6月23日 発行 初版

著  者:楓仙子
発  行:狗尾堂

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楓仙子

詩集第一弾「絡繰隔離」
闇詩、恋愛詩など、九割の作品が
実体験をデフォルメして書いたものです。

10歳からマイペースに書き続け
いつしか、それなりの作品数に
なっておりましたので
今回、こうして纏める事にいたしました。

楽しんでいただけましたら
幸いで御座居ます。

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