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333DISCS PRESS

AUG 2013



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 目 次

Q and A #1「おなかを壊した時の必殺技」

Q and A #2「夏休みの思い出」

UPCOMING EVENTS 8~10月におすすめのイベント

ニューヨークの街角から「野外イベント」

パリの街角から

国立の街角から「circle / gallery & books」

西荻の街角から〜トウキョウエコノミー「インターメディアテクでフラッシュバック」

乙女歌謡「DANCE,DANCE,DANCE」

おやこでおでかけ「図鑑入門」

tico moonライブレポート

Q and A #1
「おなかを壊した時の必殺技」

夏は意外と寝冷えや冷たい物の食べ過ぎ、食中毒などでお腹を壊したりしますが、さて、そんな時のあなたの必殺技を教えてください。

【甲斐みのり】子どもの頃から冷たいジュースが好きだったので、よくお腹を壊していました!そのため、正露丸が常備薬。けれども、最近はそんなこともなくなりました。夏でも靴下のかさね履きをしているおかげでしょうか。4枚の靴下を履いているので、ひとつ大きなサイズの靴も必須です。

【阿部桂太郎】割り箸を焼いて、炭にして飲む。
子どもの頃、近所に住むおばさんが教えてくれました。炭には、腸内の有害物質を吸着して、体外に排出する効果があるとのこと。

【吉野友加】ホカロンやお湯でゆっくりと温めます。

【青芝和行】人肌に暖めたポカリスエット(スポーツドリンク全般OKだと思いますが)を飲むといいと教わってたまに実践してます。プラシーボ効果かもしれませんが、効いてる気がします。

【伊藤葉子】とにかく、熱い緑茶を飲んで「これで治るんだ!あと1時間もしたら笑っているんだ!」と自分に言い聞かせます。

【伊藤ゴロー】僕は日常的におなかをこわしがちなので、あまりきにしていないのですが
これと行った処置も無く。

【影山敏彦】あまりお腹をこわす事は無いのですが、こわしてしまった時は子供の時からの定番、正露丸です。

【塚本浩哉】特に自分はお腹をこわしやすいので気をつけていますが、特にこれというのはなく、いつも正露丸です。

【葉田いづみ】普段、ほとんどお腹を壊すことがないのですが、とりあえずビオフェルミンは常備しています。

【三品輝起】エビオス先生、腹巻先生、厚手の靴下先生、LG21先生、ビオフェルミン先生、ぜんぶダメなら正露丸先生といった順で連絡。

【岩崎一絵】香港のお腹の万能薬、保済丸(ポーチャイピル)。吐き気、下痢、乗り物酔い…と何にでも効く気がします。シンガポール滞在時に愛用していたのですが、帰国時に買い込んだ在庫がもうすぐ底をつきそう。誰かお土産にお願いします!

Q and A #2
「夏休みの思い出」

子どもの頃の夏休みの思い出、記憶に残っているエピソードを教えて下さい。

【影山敏彦】家族旅行で川辺の旅館に出掛けた時、川にかかっている吊り橋の途中で足が竦んで動けなくなってしまった事。今から思えばとても小さな川にかかった小さな吊り橋だったのですが、当時はちょっとしたトラウマになりました。

【吉野友加】夏休みは、山梨にある母の実家で、ぶどうの収穫を手伝ったりしていました。段ボールを折って出荷用のぶどうの箱を作ったり、箱にハンコを押したり、小さな頃から単純作業を淡々とすることが大好きでした。

【塚本浩哉】少年キャンプに夏休みになると毎年行っていたのをよく覚えています。山の中で過ごす夏の約1週間は普段の1週間よりも非常に大きかった気がします。

【甲斐みのり】高校生になるまで毎年、夏休みは家族旅行にでかけていました。最初は親に「旅行記」なるものを“書かされて”いたのですが、それが次第に楽しみに。夏休みの自由研究のかわりに、訪れた旅先は、どんな歴史があって、なにが名物で、そこでどんなふうに過ごしたかというのをノートに書き込んだものを提出していました。思えば、今、旅の本を書く仕事をしているのも、夏休みの旅行記をつけていたおかげかもしれません。

【葉田いづみ】父の実家近くにある、浜岡の海に出かけるのが毎年の恒例でした。今は原発で有名になってしまいましたが…。
足の裏をやけどしそうなほど熱い砂丘を頂上まで登るとようやく海が見えて、走って降りたのが懐かしいです。あの砂丘はまだ残っているでしょうか。

【三品輝起】ハワイのホテルのプールで溺れて父に助けられる。

【伊藤ゴロー】僕の田舎に夏泊半島というところがあるのですが、夏休みは家族やいとこたちとよく行きました。「夏泊」という文字を見ただけでサウダージ。なんともいえない夏のにおいがしてきます。他にも合浦公園の「おでん」や、木村屋の「みつかけ」など、あげたらキリがありません。

【阿部桂太郎】やっぱり、入道雲かな…。
僕の生まれ育った新潟は、夏はフェーン現象によって気温が上がり、入道雲がもくもくと湧き上がるようなお天気続き。そんな中、毎日朝から晩まで遊んでいたような気がします。

【青芝和行】早めに宿題を終わらせるタイプの子供ではありませんでしたので、8月後半は毎年修羅場でした。そのせいかいまだに8月の終わりが近づくと落ち着かない気分になります。

【岩崎一絵】祖父母のいた留萌に海水浴に行くのが楽しみでした。海と言えば冷たく黒い日本海しか知りませんでした。

【伊藤葉子】小学生~高校2年の夏休み前半(7月末~地獄の釜のふたが開いて、海底に足を引っ張られるといわれる8月16日まで)は、長崎県五島列島の蛤(はまぐり)海水浴場で毎日のように泳いでいました。
(2011年8月に行った時の写真。2kmもの遠浅!本当に素晴らしいんですよ!)
海にいく途中、一本道のむこうから獅子舞がこっちに向かってきていて、どう考えても私とすれ違うのは間違いない!=かまれる!真夏の蜃気楼のゆらゆらした感じと、こっちに来るぞ~~という恐怖と、赤と緑の獅子舞がとても印象に残っています。めちゃめちゃ恐ろしかったです。なんでお盆に獅子舞がいたんだろうか。。

UPCOMING EVENTS
8~10月におすすめのイベント

【伊藤葉子】海のカフェフェスin横浜、アコースティックギターサミットをはじめイベントが盛りだくさんです。どれもぜひお越し頂きたいのでぜひ333のサイトをご覧下さい!

【影山敏彦】6月に開催された「森のカフェフェス」に続き、9月に開催される「海のカフェフェス」にも出演させていただきます。初めての海辺でのイベント、とても楽しみです〜。

【吉野友加】9月に開催される「海のカフェフェス」が楽しみです。

【塚本浩哉】9月21日の海のカフェフェスが楽しみです。そしてそれのすぐ前にアメリカから素晴らしいパーカッショニスト武石聡さんを伴ってデュオで日本でライブをします。9月18日東京、19日横浜、20日京都、22日神戸です。ずっとこのデュオでやりたくて数年越しで実現した日本ツアーです。ぜひ皆さんに来て頂きたいです。

【伊藤ゴロー】アコースティックギターサミットというイベントが10月5日6日にあります。アコースティックギターに焦点を絞った今までに無いイベントです。
コンサートは10月5日  鈴木大介、おおはた雄一、藤本一馬、10月6日  大萩康司、伊藤ゴロー、小沼ようすけ、小松原俊。ギター製作家、メーカーによる展示販売、ギターリペアー、ルシアーによる様々なワークショップなど、ギター好きにはたまらない2日間です。ぜひ!ギター好きに教えてあげてください。

【甲斐みのり】私が絵本シリーズの文を担当するチェコアニメ『アマールカ』。
8/31〜渋谷ユーロスペースで劇場版アニメが公開されます。
そして、その劇場版のオープニング曲とエンディング曲の作詞をさせていただきました。
オープニング曲は「夢見る森のアマールカ」という楽しげな曲で、羊毛とおはなの千葉はなさんが歌っています。エンディング曲「青の時間」は、真夜中にふとめざめたとき思ったことを詩にしたので、静かな優しい歌に。南波志帆さんが歌ってくださいました。2曲の楽曲と、絵本から千葉はなさんと南波志帆さんによる朗読が収録されたCDが、8/27〜全国のタワーレコードで限定発売されます。女性へのプレゼントにぴったりなので、映画とあわせてぜひよろしくお願いします。
http://www.amalka-project.com/category/news/

【三品輝起】今年も8月7日から11日まで、アヴァンギャルドな音楽家・工藤冬里さんの陶芸展とライブがあります。天才的な展示タイトル。
「漏れかっこいい」@ FALL → http://falldays.exblog.jp/20755777/

【葉田いづみ】国立新美術館で9月16日まで開催中の「アンドレアス・グルスキー展」
本来のサイズでその写真を見てみたい/体感してみたい作家です。
http://gursky.jp/

【阿部桂太郎】露天風呂!
お薦めは、新潟県の妙高高原にある、燕温泉の「河原の湯」。夏休み中は混むかも知れませんが、晩夏や初秋の頃の平日に出かけ、チャポンと浸かって青空や周囲の木々を眺める…。もう~、最高です!

【青芝和行】今年は9月1日開催、富山県立山KAKI 工房、Life is beautifulに今年もおじゃまします。

ニューヨークの街角から
「野外イベント」

塚本浩哉

日本も大変な暑さと聞いていますが、これを書いている7月半ばニューヨークも暑い日が続いています。

今回はこちらの夏の風物詩ともいうべき、野外でのイベントについて書きたいと思います。夏ならではのこの野外イベントには、コンサート、ミュージカルそして映画まであり、ニューヨーカーの夏の楽しみの一つになっています。多くのイベントは無料でありながら、かなりクオリティーの高いものをやっているので非常に見応えもあります。屋内では味わうことの出来ない、風や温度の変化、ときには人の声、ざわめきなども含めてアウドドアで行われる魅力と言えるでしょう。

例えばコンサートの場合、音楽のジャンルも多種多様で、有名なものとしてはニューヨークが誇るリンカーンセンターオーケストラが奏でるクラシックの夕べや、セントラルパークで行われるロック、ポップのコンサートがあります。また個人的には、毎年欠かさず見に行く山の中で行われるブルーグラスフェスティバルもあります。参加する人達それぞれが自分のイスを持ち込み、好きな飲み物や食べ物を片手に、くつろいだ一時を過ごしているのを見ていると、本当にみんな夏を楽しんでいると思いますし、基本的にアメリカでは男でも女でも夏日焼けをするということが、夏をいかに楽しんでいるかというステータスというか証として判断されることが多いで、みんな率先して夏になると外に出ます。

自分自身もまた面白そうなイベントを見つけて、この季節でしか見れないものを体験してこようと思っています。それとと同時に、個人的にはやはり日本人ですので日本の夏祭りや花火大会などの風情ある催し物を懐かしくも思います。日本らしいそういったものも長らく味わっていないので久しぶりに地元の花火大会に行ってみたくもなります。皆様も良い夏をお過ごし下さい。

塚本浩哉(つかもとひろや)
京都生まれ、現在ニューヨーク在住のギタリスト/ソングライター
http://hiroyatsukamoto.com/

パリの街角から

阿部桂太郎

突然ですが、僕はこの春、フランスのパリから日本の東京へ帰って参りました。
家内や子ども達はパリに残したまま、単身、約10年ぶりの日本です。

なお、日本に帰ろうと思った理由は、以下の3つです。

1. もともと、10年くらい外国に住んでみたいと思っていたから。別な言い方をすれば、一生、フランスにいたいとは思っていなかったから。そして、日本に帰るのであれば、これ以上、歳をとらないうちに帰った方が良いと考えたからです。日本では、歳をとってから仕事を探すのは、容易ではないでしょうから…。

2. 子ども達の、進路の選択肢を増やしたいと考えたから。現在、長女が5歳になったのですが、彼女が6歳になった時(要は、小学校に入学する時)、このままフランスの教育システムの中を進んでいくのか、それとも、日本の教育システムの中に入れてあげるのかを、選ぶことができるようにしたいと思ったからです。そしてそのための生活基盤を確保するために、一足早く、僕だけが日本に帰ることにしたわけです。

3. 両親のこと。お陰さまで、僕の両親は現在も新潟で元気に暮らしていますが、気がつけば、彼らもだいぶ歳をとりました。ただ、今は元気でも、あと5年、10年したら、どうなるか分かりません…。そしてその時になってから、日本に戻ってくるのも容易ではないと考えたからです。これでも、僕は長男ですから。

なお、フランス、パリに移り住んだ頃は、日本とフランスとの違いに驚き、毎日、そのことをブログに書いていました。
しかし現在は日本に帰って来て、それらの違いを検証するような、再確認するような日々を送っています。
そしてこれからは、検証・再確認したそれらのことについて、少しずつ書いて行きたいと思っています。
今後とも、よろしくお付き合いのほどお願いいたします。

阿部桂太郎(あべけいたろう)

1965年8月22日生まれ。新潟県小千谷市出身。2003年~2013年春までフランス パリ、現在は日本 東京に在住。好きなことは、旅をすること、食べること、温泉に入ること。

国立の街角から
「circle / gallery & books」

昨年9月に出産し、しばらくお休みを頂きましたが
今回からまたコラムを再開することになりました。
どうぞよろしくお願い致します。



以前このコーナーでも紹介した地域コミュニティ「やぼろじ」に新しくギャラリーがオープンした。
「circle / gallery & books」 はもともとあった古い倉を改装して1Fが古書・新刊を扱う書店、2Fがギャラリーになっている。店主の丸山晶崇さんの本業は広告、雑誌などのアートディレクションを手がけるグラフィックデザイナーで、以前からこのやぼろじ内に事務所を構えていた。

驚きなのは並んでいる本のラインナップ。アートブック、写真集、デザイン書、リトルプレスなどなど…しかも決して一般受けするとは思えない内容の本が多く、思わずこちらが心配になってしまうほどの強気のセレクトだ。店内で本に夢中になっていると、ここが国立だということを忘れてしまう。遠近感のない不思議な絵の魅力に惹かれて手に取ったNathalie Du Pasquireの画集と、東京タイプディレクターズクラブの同人誌『CDT』の2冊を買い求めた。都心まで出かけなくてもこういった本が手に入るのは、国立住民としてはうれしい限りだ。ラインナップは数ヶ月に1度入れ替わるそう。

訪問時はサイトヲヒデユキさん(グラフィックデザイナー/書肆サイコロ主宰)の個展を開催中、次の展示は8月2日からイラストレーターのfancomiさんとのことで、こちらも非常に楽しみ。
国立駅付近ではなく谷保にこのようなギャラリーショップを開くのはなかなかのチャレンジだと思う。
本業だけでもかなり忙しそうな丸山さんが、過労で倒れないことを願うばかり。

12:00~19:00 火、水、木曜定休
国立市谷保5119やぼろじ内(JR南武線谷保駅より徒歩5分)
tel 042-505-8019
www.circle-d.me

葉田いづみ(はだいづみ)
グラフィック・デザイナー。主に書籍のデザインを手がける。静岡県出身。2009年より国立に暮らす。twitter

西荻の街角から
〜トウキョウエコノミー

「インターメディアテクでフラッシュバック」

文責:三品輝起

大学のころ、はじめてヨーロッパに旅行をした。帰国した翌日、表参道をのろのろ歩いた。夏も終わりが近づいている。なぜかさっきから欅に並走するショーウィンドウが、ぜんぶハリボテのように映じたままつづいている。

あの感じを思いだしたのは、10年以上たった今年3月のことだ。場所は「インターメディアテク(以下、IMT)」。丸の内にできたばかりの商業施設「KITTE」に入っている美術館である。IMTがあるのはKITTEの2階と3階の一角である。入場無料。KITTEの事業主である日本郵便と、東京大学総合研究博物館が共同で運営する公共性の高いスペースだ。パンフには「東京大学にある学術文化財を常設するとともに、現代における様々な学術研究の成果や芸術表現をそれらと組み合わせながら」公開していく、とある。

東大が明治10年の開学から蓄積してきた古い研究資料や学術標本が、見事な展示デザインによって再構成されている。具体的には、数理模型、構造模型、剥製、骨、化石、鉱物や昆虫の標本、ボタニカルアート、実験器具、観測器具などなど(注1)。

役割を終えた物たち。市場価値もよくわからない。一見すると、ぼくの好きなシュルレアリスムのレディメイドがもっていたようなユーモア感覚、彼らが再発見したヴァンダーカンマーの世界に通ずるあやしくて濃厚な空気がある。さらに対面していると、口を閉ざした物たちが自身の出自をちゃんとわきまえている顔つきが見えてくる。なんのために作られ、集められたのか。なぜ近代の終わりとともに忘却され、ふたたび日の目をみたのか。その切実さと謙虚さが、堅牢な美へ転じていく。どこかで老夫婦の口論がはじまった。近くにいたカップルが、恵比寿にあるおしゃれな骨董屋に似てるだのなんだのと話す声が聞こえた。そんなことはないだろう。と思っているところでフラッシュバックした。フラッシュバック。

大学のとき、はじめてヨーロッパに旅をした。帰ってきた翌日、表参道を歩いていると目眩がした。なんだかぜんぶ切ない。あれほどかっこいいと思ってたカフェだのショップだのギャラリーだのが、テーマパークのカキワリに見えた。サイズのあっていないコスプレのようなドアマンが老人に謝っている。骨董通りに折れた。なじみの店に後生大事に飾られいていたヒビ割れたデルフト皿が寂しげだった。いわれのわからぬ磔刑のイコンも、現地で投げ売りされていたジャンク品に見えてくる。いつも丁寧に「侘び寂びの見立てがどうのこうの」と教えてくれた店主が、会わない間にずいぶん老け込んでしまった気がした。見渡すと、どこかしこがおかしく見えた。視界すべての看板に、読みかけの本に、あらゆる商品に、読めもしない欧文表記があることすら気になってきた。まあ、フワフワした異邦人感も夏休みの終わりとともに薄らいでいったし、その後なんどか海外に行って帰ってきたが、あんな違和感におそわれることはもうなかった。

大学生活に戻ってから、ときどき思いだしたように山奥の図書館で考えた。古来から外来の文化を都合よく改変して、ある部分で怯えながら、ある部分で狡猾に利用しながらなんとかやってきたこと。明治以降はそれが中国から西欧列強へ、戦後は主にアメリカへとかわったものの、つねに海の外に愛と憎、羨望と劣等の感情をいだき、その抑圧に対して、自身の文化の特異性をシニカルに抽出しつづけることで解消せんとする構造は、ついぞかわらなかったこと。そして結果的にいびつながらも独自の文化を育んできたこと。大学の図書館には、この涙ぐましい抑圧の体系にこそ、日本の矜持を認める書物がいっぱいあった。仏教伝来から侘び寂び、漱石先生の発狂をへてオタクの誕生までをつらぬく、ひとつの史観さえも形成していた。はんぶんはウソだと思ったけど……。フラッシュバック。

眼前には木でできた船底の構造模型が美しく並んでいる。それらは自らの抑圧された出自に向いあったまま時が止まっている。この近代化は猿マネなのかもしれないという不安のなかで生みだされ、その先に新しい工学を切り開かんとする痕跡を残したまま。けっしてコスモポリタンな若者がどっかの国から「美しい」などという身勝手な意識でくすねてきた商品ではない。とってもいい場所なので、みなさまもぜひ行ってみてください。

http://www.intermediatheque.jp

(注1)これらは東京大学総合研究博物館の館長である西野嘉章氏の提唱する「モバイルミュージアム」というコンセプトにのっとった配置となっている。氏は『モバイルミュージアム 行動する博物館』(平凡社新書)のなかで「ミュージアムとは美術品や文化財を収集し、保管し、公開する施設」としながら、硬直化した、もしくは短期的な利益に捕われた美術館運営の現状を厳しく批判する。打開策のひとつとして「展示コンテンツを複数のセグメントに分割し、可動性あるコンパクト・ユニットに纏め(略)モジュール化された展示ケース」にしつらえることで、どこにでも運搬、設置できるシステムであるモバイルミュージアムを提案している。その実践例で一番わかりやすいのは、赤坂インターシティビルのエントランスロビーを使ったオフィスモバイルという試みだ。他にも、スクールモバイル(全国の学校の空きスペースを使った展示)や、海外モバイル(9カ国18カ所)といった形がある。IMTもモバイルミュージアムの集合体でできている。よって漫然と所蔵品を並べた美術館ではない。常設スペースと特別展示スペースは渾然一体となっており、会場のあちこちで次々と新しい展示が更新されていく。例えば、古い望遠鏡や天体写真などを組みあわせた「コスモグラフィア(宇宙誌)」や、三次元関数の数理模型と、現代の服飾パタンナーがその形からインスパイアされたドレスを展示した「アントロポメトリア(人体測定)」といったミニ展示が同時多発的にもよおされ、訪れるたびに発見がある。 同博物館の収蔵品を展覧する主な場所は都内に3つある。東京大学本郷キャンパス内にある総合研究博物館・本館、小石川植物園内にある小石川分館、そして丸の内のIMTだ。きっとミュージアムの常識を揺さぶられるだろう。

三品輝起(みしなてるおき)

79年京都生まれ、愛媛出身。東京在住。音楽活動としては10年『LONG DAY』(Loule)、12年『OFF SEASON』(RONDADE)をリリース。同年、美術家・武田晋一とともに「OUTBOUND」にて展示「OFF SEASON」を発表。13年3月「iTohen」に巡回。普段は05年より東京・西荻窪にて器と雑貨の店「FALL」を経営。経済誌、その他でライターなどもしている。twitter

乙女歌謡

「DANCE,DANCE,DANCE」

 10代の頃、映画の中のダンスシーンばかりをひとつのビデオテープに編集して集めていました。『なまいきシャルロット』でルルという女の子が鏡の前で踊るシーン。『カラスの飼育』で姉妹がレコードに針をおとして背伸びをして踊るシーン。『恋する惑星』でフェイ・ウォンがママス&パパスの「カリフォルニアドリーム」にあわせて踊りながら仕事をするシーン。『小さな恋のメロディ』のダンスパーティーシーン。それから、“ダンス”について歌った歌もひとつのカセットテープにまとめておさめ、友人と部屋で騒いで遊ぶとき、楽しげにBGMとして流していました。

 そんな若き日のある時間を思い出したきっかけが、LYKKE LIの「DANCE,DANCE,DANCE」。渋谷のレコードショップで人と待ち合わせをしていたとき、店内で流れてきた音楽があまりに好みで、すぐさまレジへ向かい誰の曲か尋ねて知った歌。LYKKE LIは、音楽家の父親と、写真家の母親という芸術家の両親のもとに生まれた南スウェーデンの女の子。2008年のデビューアルバム『ユース・ノヴェルズ』に収録されていた1曲で、リズミカルでありながらどこかメランコリックなメロディーと歌声に心を奪われたのでした。

 それからしばらく毎日、朝も夜も、まるでそのときの自分のテーマ曲であるかのように「DANCE,DANCE,DANCE」を聴いて過ごす日々。イラストレーターの網中いづるさんとともにおこなう企画展も、自分の中のテーマ曲として設定したほど。You Tubeで見つけたプロモーションビデオもとても愛らしくて、ワンピースに白い靴を履いてターミナル駅で踊る彼女の姿を元にお話を書いたりもしました。

 もう我が家にはカセットデッキがなくなってしまったので、まさに“dancs,dance,dance”とタイトルをつけていたカセットテープに追加することはできないけれど、大切な「ダンスの歌」コレクションのひとつです。

甲斐みのり(かいみのり)
文筆家。1976年静岡生まれ。旅・お菓子・各地の食材・クラシックホテルや文化財の温泉
宿などを主な題材に、女性が憧れ好むものについて書き綴る。twitter

おやこでおでかけ
「図鑑入門」

 こんにちは。暑くて長い夏休み、お子さんとどうお過ごしですか?前回までは乳児向けのお出かけアイテムを中心にご紹介してきましたが、これからは幼児向けの物を取り上げていきたいと思います。

 外を散歩するとき、子どもたちは皆、道端の草花や生き物に興味津々です。「これなあに?」と聞かれて、名前がわからず「きれいな花だね〜」なんて誤魔化し続けるのもどうかと思い、良い図鑑がないか探してみました。

 しゃれた装丁の学研もちあるき図鑑『まるごと近所の生きもの』はまず私が気に入って、『里山百年図鑑』(松岡達英/小学館)は娘が書店ですかさず手に取った「一目惚れ」の図鑑です。どちらも身の回りの親しみ深い動植物が一冊にまとまっていて、大人も読み物として楽しめます。前者は名前通り持ち歩けるポケットサイズ。街路、公園、空き地など、生き物のすんでいる場所から調べることもでき、ペットの犬猫、金魚まで網羅しています。後者は何と言っても松岡さんの描くダイナミックな里山の風景が素晴らしいです。生き物の種類は多くないけれど、野遊びという軸に沿って編集されており、魚の捕まえ方、山菜の食べ方などを読んでいると早速山や川に遊びに出かけたくなります。

 先日、虫取り大好きな娘が、外でアゲハチョウを見て「あれはメスだよ」なんてあっさり言うので調べてみたら正解。図鑑でオスメスの模様の違いを覚えていたのです。すでに4歳児に追い抜かれた母、情けなし。もっと勉強しなくては…。

 大きな図鑑をシリーズで揃えるのが理想かもしれませんが、その一歩手前の入門編として、こんなコンパクトな図鑑はいかがでしょうか。

岩崎一絵(いわさきかずえ)
当ウェブマガジン編集担当。北海道出身。

tico moonライブレポート

6月29日に北海道ニセコ町で行われた「森のカフェフェス」を挟んで、仙台、弘前、青森、秋田、盛岡を巡る「初夏の東北ツアー」を開催いたしました。仙台stock books & galleryさんでは詩人の武田こうじさんのリーディングとコラボレーション。弘前は約2年半振りのビストロレザンさんで久しぶりのライブ。青森は昨年に引き続き2度目のコノハトカフェ&レコードさん。そして今年も快晴のニセコビレッジへ。「森のカフェフェス」をとことん楽しんだ後は秋田cafe Epiceさんへ。打ち上げで伺った数万枚のアナログレコードが楽しめるバーは当分忘れられません。そしてツアー最終日は盛岡の大好きなcafe cartaさんで初めてのライブ。とても親密な空気の中で演奏を聴いていただけました。タイトなスケジュールでしたが、毎日とても濃密な時間を過ごす事ができ、あらためて人との出会いの大切さを実感できたツアーでした。
(影山敏彦/tico moon)

仙台stock books & gallery
秋田cafe Epice
盛岡cafe carta

naomi & goroライブレポート

ブラジルミュージックフェスティバル in Korea

「韓国でもブラジル音楽はとても盛んです。ボサノヴァだけではなくて、サンバやインストバンド等いろんな音楽がありました。
歌がみんな上手かったです。naomi & goroでは演奏はもちろんですがコンテストの審査員もしました。」(goro)

ブラジルミュージックフェスティバルの看板。
naomi & goro ライブ本番。
ブラジル音楽コンテストの審査員も務めました!

333DISCS PRESS AUG 2013

2013年8月5日 発行 初版

著  者:333DISCS
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