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誰もいない星の花

スギモトダイキ

Maumaukii



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 目 次

雨がふる日もいい天気

誰もいない星の花

アルパカみあげる

死神のランチ

僕らはみんな、最後の一匹

森に誰かの忘れ物

あの物語は

星を食べる鯨が来るよ

星と僕らのアパートメント

誰もいなくなる前の話

おまけの話・無人島ウサギ

あとがき

雨がふる日もいい天気





ぶらさがっていた。





ぶらさがって暮らしていた。





ずっとこのままだと思った。





あばれたらヒモはちぎれた。





いこう。





海を見にいこう。






みんなで海へ





海へいくんだ。





とおくとおく





僕らのせいで雨が降っても





僕らの海だ。





小さくてもちっぽけでも、僕らの海はきれいだった。





かなしくてもかなしくても、僕らの世界はうつくしかった。

誰もいない星の花





君が落っこちてしまった





僕も落ちたら君はぺしゃんこになってしまう





まってて 木の実が育つまで





僕がたくさんお話をしよう





夜になったらライトをつけよう





君の好きなお花をあげる





君がさみしくないように





毎日お話をしよう













君がもどってきてもさみしくない星にしておくよ

アルパカみあげる





てっぺんにいいものがあるそうだ





誰か行けばとみんな延々言ってる





のぼってみた





誰のためか





みんな見上げてる





まだ見てる





もう疲れた





なんかあった





おりてみた





いこう





あげる





まだみんな見上げてる

死神のランチ





やさしい死神は、不器用に人前にあらわれるから
村人たちから嫌われていました。
やさしい死神は、誰も死なせることができないから
死神たちからも嫌われていました。





雨の日、やさしい死神は森の老人の小屋を訪れました。
嘘をついて、迷子の人のふりをして、おじいさんを困らせました。
もうすぐ死ぬ順番の、森のおじいさん。





帰るところがないと告げると
おじいさんは一緒に暮らそうと言ってくれました。
ミルクコーヒーをくれました。





おじいさんが寝る時も、畑を耕してる時も、
怖くて震えてしまいます。
死なせることが出来ずにいつも
怖くてやめてしまいます。





夏の日、おじいさんは秘密を教えてくれました。
だれにもないしょだが、わたしはサンタさんだ。
こっそり死神に教えてくれました。





自分が誰だか隠して生きて、人から離れて住んでいました。
気付けばサンタは年老いて、一人ぼっちで暮らしていました。
村の人からはこっそりと、いつも怖がられていました。





好きな子からも怖がられたまま、しょんぼり年老いたサンタに
死神は言いました。
その子にプレゼントを渡しに行こう。





夏の夜にサンタは、よぼよぼトナカイと死神をつれて
重たいソリを風船で浮かべ、プレゼントを持っていきました。





しぬほどドキドキしながらサンタは
プレゼントを置いていきました。





楽しくて楽しくて
笑い転げたサンタは死神に
そっとたずねました。
君も何か本当は、隠してることがあるんだろう?





笑いながら死神は、ぽろぽろ泣いてしまいました。
本当は全部わかっていた、サンタの隣で泣きました。





君のおかげで本当に楽しかった。





いただきます。
ごちそうさま。





僕らはみんな、最後の一匹














「助かりたかっただけなんだ。」

森に誰かの忘れ物





ん、





久しぶりのお客さんだな。きみはぼくがこわくないのか。





いつも笑ってるんだな。ぼくの傘を貸すよ。






めずらしいからつつかれるんだ。ぼくとおんなじだ。





きみはちっともにげないんだね。行くところがないのかい。





ずっとずっとがまんしてきたんだろう。
本当はどこかに行きたいのに。
でも、みんなをこわがらせちゃうもんな。





おんなじだ。





すごいな、きみは飛べるのか。





だいじょうぶ。がんばれがんばれ。





ああ、





そうだった。





ぼくも行かなくちゃ。




あの物語は、






星を食べる鯨が来るよ





星と僕らのアパートメント





誰もいなくなる前の話



※※画像が正しく保存されませんでした。再度アップロードしてください※※




おまけの話・無人島ウサギ



あとがき

最後まで読んでいただきありがとうございます。
アパートメントというサイトに連載させていただいた作品をまとめました。
僕には、何を描くにも動機がありました。
雨がふる日もいい天気は題名のとおりに思う日の、形式だけの挨拶として今日もいい天気ですねと言われたあの掴み切れない感触、
誰もいない星の花は表情の変わらない可愛くない人物を登場させる実験、
アルパカみあげるは泣ける物語への反抗と遊び心、自分を消して多数派に隠れる人への憤り
死神のランチは真逆のような立場の誰かが同じ寂しさを持っていた時のじんわりした感覚、
僕らはみんな最後の一匹は自分の為に掲げた灯りが誰かの安心になっていた日の気持ち、
森に誰かの忘れ物は勝手に怪獣が勘違いして勝手に悲しくなって勇気をもらってそして勝手に走ったという話、
あの物語は、はどこかで繋がっていたということ
星を食べる鯨が来るよはどうしようもない何か
星と僕らのアパートメントはどうにかすることとどうにかなってしまうこと。

言葉はただの言葉だから作った物の事はあれこれ語るほど白々しくなって避けたくなるけど
ばらばらに描いた話を一つの線で繋げたのは連載中のある日の夜に友達と電話をした時、
小さい頃はひとりぼっちだなあと思う事ばかりだったけど、きっと世界のどこかに同じような事を感じて暮らしてる子がいるはずだと思って生きてから、あの頃の自分に手紙を書きたいなあとよく思う。
と友達が言って、ああそうだったと思ったから。
会った事も無い知りもしない人が沢山いるというのは、なんというか希望です。
立て続けに色んな話を描いてそれでも何か同じような雰囲気が見えた時、知りたくもない自分がそれでも自分だと知れて楽しかったです。面白いと思う事をしていると面白そうな人達が話しかけてくれます。それがとても嬉しいです。
誰かにとってとるに足らない僕が誰かの何かに間に合えばいいなあと、しばらくはあれこれ作っていると思うので、またどこかで会いましょう。

スギモトダイキ

誰もいない星の花

2017年2月1日 発行 第二版

著  者:スギモトダイキ
発  行:Maumaukii

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スギモトダイキ

自分のいる場所が自分の居場所になれ。 HP http://1st.geocities.jp/maumaukii/index.html

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