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大人の卒業文集

ほりうちなお

豆の箱



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 目 次

アオ 29歳 大阪府

池田彩乃 22歳 滋賀県

泉田美穂 45歳 青森県

小野寺モトエ 78歳 岩手県

かなざわ 32歳 青森県

いち 20歳 青森県

舘山由 19歳 青森県

宵町 35歳 大阪府

nes 33歳 青森県

なめ子 29歳 愛知県

棟方悪子 55歳 青森県

盛合さよ子 52歳 岩手県

おわりに

はじめに


3月、卒業。
切ないけど、すがすがしい。

なんかさ、ないよね、大人って。
そういう切り替えスイッチ。

大人になってからのほうが、
ずっとずっと長いのにね。
たいへんだよ。

そうだ、いいじゃないか、
大人だって卒業だ。

あの小さな机を並べて書いたように、
あの頃よりも少し等身大の
10年後の自分を書いてみようか。

アオ 29歳 大阪府

池田彩乃 22歳 滋賀県

32歳の私は、
あいかわらずzineが好きで
つくることが好きで
この世界を好きでいると思います。
今よりずっとまるくなって
どこかで根っこを伸ばしてるといいなぁ。

泉田美穂 45歳 青森県

10年後、私は着物を一人で着られるようになっています。
紬の着物を普段着にさらりと着こなしています。
10年後、子ども達が巣だって世界中に散らばっています。
10年後、私は余裕を持って生活しています。
健康で経済的にも恵まれ、いつもワクワクしています。
10年後、私は漬物を漬け、味噌も、梅干しも、甘酒も作っています。
10年後、世界が平和になっています。
10年後、好きな人達に囲まれて幸せに暮らしています。

小笠原絵美 32歳 北海道

 10年後の自分をなかなかイメージできずに居ました。けどそれは、今の自分が持つ“可能性”みたいなものを見出せていないからではないかなぁ…と気付いて、考え方を変えてみることにしたのです。10年後、どう生きていたい?

 答えは、この日のこの写真の中にあるような気がしています。もう長いこと“自分の居場所”を求めて、ただそれだけが欲しくて生きてきたのだと思うことがあります。一人で居ることは嫌いではないけれど、突き放されたような感覚に陥ることがとても耐えられなかった。誰かそばに居て欲しかった。

 「一緒に居よう」とこの人が言ってくれたとき、自分の居場所を得たと同時に、“守る場所”をも見つけたと思いました。それは使命にも似たなにかで、ふたりがとても似ているのだと気付きました。10年後42歳の私は、相も変わらずこの人と穏やかな朝を迎えていることでしょう。

小野寺モトエ 78歳 岩手県

ボケないようにしたい
いろんなものを食べて運動して、お茶をのみながらおしゃべりする、
今のような暮らしを続けていけばそうなれると思います。

かなざわ 32歳 青森県

1年後の自分はまだ旅の途中。
曲を作って自分の音楽の完成を目指して進んでいる。
生活は変わらないがやる事は多い。

5年後の自分はある程度
自分の音楽に対する答えが出せるようになっている。

10年後の自分は音楽に携わる仕事をしているか
音楽とは関係ない他の仕事をしている。
結婚しているかはわからないが
今より忙しい生活を送っている。
見た目は少しやせこけている。

美しい十代 青森県

楽しみが増えました。10年後私は生きているかしら?どのように暮らしているかしら?あの頃に戻れるなら戻りたいとも。でも此れまで色々な事が有ったから今が有りこの瞬間今が一番幸せかもね。どんなことも無駄なことはひとつもないと今思えるように成りました。

コブクロ、徳永、藤沢ノリマサ、他ウォークマンで楽しんでいます。有難う。私に定年は無くもう少し頑張れるかと・・・

沢山の方々、お金では買えない方々が私の財産で、感謝。

菊池みどり

『十年後の私』

十年後、私は恋をしている。仕事を楽しんで、生活も楽しんでいる。恋はそんな生活のスパイスになっているだろう。片想いかもしれないし、テレビや映画に出ている芸能人のファンなのかもしれない。

ほんの小さな「好き」がきっと、世界を明るく見せてくれている。そのために今から自分を磨こう。未来の恋の相手に恥ずかしくないように、未来の自分がいい恋を出来るように。

いち 20歳 青森県

 10年後の私は地域活性化の事業をしていると思います。私はこの4月で大学3年生になり、年末にはついに就活が始まります。以前からまちづくり、地域活性化の事業に興味があったので、その関連の就職先を探すつもりです。

 大学に入ってから、やってみたいことがかなり増えました!(^^)社会に出ると、学生のように自由に使うことのできる時間は少なくなるとよく聞くので、今は学業以外もいろいろ活動しています。趣味も増えました。
 10年後も今のように、やってみたいことに挑戦し続けたいなぁと思います。

舘山由 19歳 青森県

 「十年後の自分が何をしているか」について考えてみるが、人間という存在は過去を振り返ることは得意だが、未来のことを考えることは不得意である。未来というのは不確定要素が多いからである。私も例に洩れず苦手である。特に今の時代ともなれば、一寸先は闇とも言える。

 では、私は十年後に一体何をしているだろうか?取り敢えず生きている方向で考えたい。でも、きっと平凡に暮らしているだろう。出来れば今希望している会計系の仕事をしていたい。結婚していないかもしれないし、しているかもしれない。していても仕事は続けたいと思っている。だが、今の私のことを顧みたら、していない可能性の方が高そうだ。

 どんな未来であれ、生きて家族が居れば、良い未来だと思う。

宵町 35歳 大阪府

木版画をやりつづけている
違うことをかじっているかもしれない。

でも1人で、誰かと
何かを作り続けている。

日向りね 18歳 広島県


10年後、私は28歳だ。

28歳!?大人ではないか。

正直、全く想像できない。

今の私は高校すら卒業していない。

10年後の私は大学も卒業している。

就職はちゃんとできているのだろうか。

免許(車)とかはとっているのだろうか。

なにもわからない。本当に何もわからない。

ただ、10年後にも友達や家族、

支えてくれる人たちがいてくれればいいなと思う。

盛合杏子 26歳 岩手県


一年後の自分

働いて、勉強して、

貯金もして、しっかり遊ぶ。

自分にとって、

何が必要なのかを知る。


十年後の自分

向上心を忘れずに、

さまざまなことに挑戦していく。

新しい何かを作りたい。

nes 33歳 青森県

多分宝くじが何年か後に当たってるから、
狭い事務所借りて細々と絵を売って生活してるはず。
土日は家族で鈍行列車でブラブラ当てもなくさまよってます。

ほりうちなお 29歳 青森県

欲張りな私は10年前にやりたかったこと、
そのすべてを手に入れています。

それは、しあわせのパンで、
心がやわらぐコーヒーで、
身体がほどけるスープで、
たくさんの本で、
たくさんの人の想いで、
たくさんの人の声です。

なめ子 29歳 愛知県

夢を諦めようと思ったのは、ちょうど10年前のことだった。

「キミは上手くないから」と言われた私は、その場で泣き崩れるしか無かった。今思えば、その分野のプロでも無いただのおじさんからの他愛もないひと言だったのだけど(笑)、当時の私が絶望するには十分すぎる破壊力があったのです。

怖くて鉛筆を持てない時期もあったというのに、それでも諦めが悪いもので、その後もしつこく絵を描き続け、手芸をやり続けた。全く違う分野の学問を専攻していたけれど、好きだから、どうしても距離を取るなんてことができなかったんだ。

10年後の今、私はイラスト雑貨を作ったり絵を展示したりして、たくさんの方に作品を見て貰う機会に恵まれています。ここから10年経ったときも、あなたはきっと性懲りもなくなにかを作っているのでしょうね。そうあってください。そうあってほしいと、願っています。

棟方悪子 55歳 青森県

梅の苗木を植え、我が家の空地に小屋を建てよう。
世界最低会議と経済対策会議は毎月開催。
煉瓦を積んで火も焚かなくちゃ。
鬼を焼いたりたまにはピザやお皿もね…。
まずい、なんか忙しくなりそう。
娘達の話に耳を済まして楽しそうな事は一足先にやっちゃうよ。
年金も取り損ねないよう生きるのだ。
がっぽりへそくりためないと…。
余ったらどうしよう。
心配だ。
色即是空。

盛合さよ子 52歳 岩手県

一年後の自分
車の運転に、もっとなれる

五年後の自分
花巻空港のお姉さんと仲良くなって、
情報を入手する

十年後の自分
知り合いをたくさん作って、
外国にもバンバン行く

千葉貴弥 41歳 青森県

10年後の恍惚

競輪場に来た目の焦点会っていないおじいさんと
取り巻きの何人かのおじさん
ごつごつした体躯の彼の注文したメニューが
品切れで調理できないと告げると
すぐに不機嫌になり恫喝される
それでも圧力を遮りながら妥協点を見出し
みそ味の麺料理を持って行く

カウンターは他のお客で埋まり
まだ調理しなければいけない
品々が僕の記憶を侵食していて頭が痺れている

しかししばらくして
おじいさんが麺がドロドロだというが心当たりがない
とにかく謝りその場を取り繕う
急いで作らなければならない品々が多々あるからだ
カネを払うと言うが、
カウンターの奥にあるテーブルなので
彼は3歩ほど歩いてこなければならないのだがそれが
気に入らないらしく、金をとりにここまで来いと騒ぐ

カウンター客らはそのやりとりを感じ強張る
僕は急いで彼のイルテーブル席まで小走る
何かまた鋭い目で恫喝されるが
間を観ながら謝るだけだ

取り巻きのおじさんらは、
空間を観て間を持て余し過ぎる事を待つ
早くこの場を収めなければ、
茹で上がった麺がそれこそ
ドロドロになってしまう

25年前に川べりで全裸でオナニーしていた時に、
ヤクザに見つかり捕まった。
僕は酔っぱらって友人達に
服を取られてしまったんですと嘘告白したが
草原で腕立て伏せ途中の状態で
停止している全裸人間は
ある意味恐怖だろう
とりあってもらえない

混雑時期が終わって、
生ごみの袋を処理している時に
それは来た。光と共に。

その時のヤクザは、
さっきのおじいさんだったのだ。

僕は過去の僕だけが記憶の片隅にある人間に出会った。
それに少しウットリしてしまい
嫌な出来事だったのに
どこか爽快感が微細を抱き濡れた。

彼が
乱雑で粗暴で無学で性欲の塊で
未来への溢れる光しか所持していない
美しい僕だけを知る人間だったからだ。

神様なんていない。
調理した分だけ幸せになどなれない。
それでも巡りあわせを擬人化するならば
神と名付けて良い。
すぐに死ぬ。僕はすぐに死ぬ。
一瞬で死ぬ。
早く自己破産しなければならない。
早く子ども達をディズニーランドへ連れて行かなくてはならない。
早くストーブ列車で詩の朗読会をしなければならない。
早く東南アジアの深夜で酒を飲まなければならない。

10年後の僕は知らない。ただ
またあのヤクザに出会ってしまった時に
過去の僕を、ウットリ眺めない僕でなければならないのだ。

そうしなければそう僕は
もうすぐに死ぬ。

おわりに

 「zine」という言葉をご存知ですか?ジンと読みます。私はこの言葉に2012年2月、国際芸術センター青森のチラシ置き場で出会いました。それは、盛岡のCyg art galleryの「ZINE stop tohoku」の作品募集のチラシでした。「zine」とは、個人でつくる本のことです。出版社を通さずに作り、大体は自分の目の届く範囲で販売も楽しみます。名刺代わりに交換なんかもします。「そんなものが世の中にあるんだ!!」その出会いは、自分の中では革命でした。

 当時、結婚や出産で大きく環境が変わって、心も体も随分とバランスを崩していました。色々ともう無理なのかもしれないと、思った時もたくさんありました。無垢で何ものにも代えがたい尊さと愛しさをたたえた子供の横で、私は真っ黒でした。もちろん毎日ではないですけれど、1年の半分くらいは黒々としていたような気がします。
 そんな時、zineという存在を知りました。真っ黒な殻にひびが入り、「本をつくってみたい」ただその一心でたくさんのものに目を向けるようになりました。たったの1年で、劇的に目の前が明るくなったのです。奇跡のような体験でした。

 見ようと思わなければ見えない世界があるような気がします。私にとってはそれは、明るい未来でした。見ようと思ってももちろん見えない世界もあるでしょう。でも、そこでまた、何かが分かる。あの時苦しかった思いがあったからこそ、見えてきた光を誰かと分かち合いたいと、この本ができました。
 今回ご寄稿いただいた方はもちろんのこと、zineを知るきっかけをつくってれた「ZINE stop tohoku」、夢中になって部屋が散らかるのを見て見ぬふりしていてくれた夫、そしてこんなショボショボの母にたくさんの笑顔をくれる息子に、感謝を。

2013年9月5日 豆の箱 ほりうちなお

【お知らせ】

 今回の「大人の卒業文集」企画は、今年、つまり2013年度も行います。募集についての詳細は、11月頃、こちらの企画元の豆の箱webサイトにて、お知らせできるかな、と。ちなみに豆の箱は、今回のような募集企画の本(zine)の発行や、その本の展示・販売をするイベントを継続的に実施しようと思っております。何分ひとりで行っているため、ご迷惑おかけすることもあるかと思いますが、末長くお付き合いいただければと存じます。

【豆の箱】

 (旧まめまめ書房)
 2012年 ●大人の卒業文集原稿募集
 2013年 ●大人の卒業文集発行
       ●ZINE meets Aomori in
         あおもりアートICHIBA主催(9月)

大人の卒業文集

2013年10月11日 発行 初版

著  者:ほりうちなお
発  行:豆の箱

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子どもが生まれて、色んな気持ちに整理がつき、少し自分を肯定できるようになりました。そしたら忘れていた好きなことを、思い出しました。

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