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jacket

これは、2013年12月から2014年5月の間に10回開催された、ミュージシャン支援システム「Frekul」の提供するFrekul Talk Liveに出席した筆者が、その内容をまとめたものです。読みやすさを考慮して、現場の臨場感を損なわない程度に、議題の順番や発言などに一部補足を加えてあります。
http://frekul.com/

おとやガイド通信2014 Vol.2 Frekul Talk Live 総集編

 目 次

Frekul Talk Live Vol.1 2013.12.9

Frekul Talk Live Vol.1 2013.12.9

趣味がプロになる瞬間

クラウドファンディングを選択肢に

本国じゃ売れなかったけど・・・

メルマガを使うバンドマンは超少ない

Frekul Talk Live Vol.1 まとめ

Frekul Talk Live Vol.2 2014.1.15

Frekul Talk Live Vol.2

投げ銭だけで月25万

初任給10万円

風来のドラマー

3つの音楽欲

隠れ音楽家

Frekul Talk Live Vol.2 まとめ

Frekul Talk Live Vol.3 2014.2.12

Frekul Talk Live Vol.3 2012. 2.12 概要

音楽事務所のアングラ捜査

女子シンガーのジレンマ

大手レコード会社をやめて

エージェントの手腕

現代バンドマン3つの選択

エージェントの定義

Frekul Talk Live Vol.3 まとめ

Frekul Talk Live Vol.4 2014.2.24

Frekul Talk Live Vol.4

音楽といえどサービス業

クリエイターが稼ぐためのネットサービス

好きなことを貫く

インディーであれ!

Frekul Talk Live Vol.4 まとめ

Frekul Talk Live Vol.5 2014.3.12

Frekul Talk Live Vol.5 概要

5人でひとつのギターを弾くバンド

Youtubeストラテジー

バンドシーンで規模拡大していく方法

はじめようバンド屋さん

ファンピラミッド

まじめにCDをつくるという戦略

Frekul Takl Live Vol.5 まとめ

Frekul Talk Live Vol.6 2014.3.24

Frekul Talk Live Vol.6

音楽は洗脳の道具

世界観×コンセプト

デフォルトミュージック・パンデミック

サービスvsアート

やりたい音楽をやれ

Frekul Talk Live Vol.6 まとめ

Frekul Talk Live Vol.7 2014.4.16

Frekul Talk Live Vol.7 概要

ライブ黒字化はじめの一歩は?

ライヴに集客する方法

ダウンロードカードというビジネスモデル

Frekul Talk Live Vol.7 まとめ

Frekul Talk Live Vol.8 2014.4.28

Frekul Talk Live Vol.8

Frekul Talk Live Vol.9 2014.5.19

Frekul Talk Live Vol.9 5.19.2014

『アナと雪の女王』がバズる仕組み

ありそうでなかった?「シェアCD」というコンセプト

Frekul Talk Live Vol.9 まとめ

Frekul Talk Live Vol.10 2014.5.26

Frekul Talk Live Vol.10 概要

音楽活動費>生活費=死

プロのアーティストにはなれない

音楽収入構築コンサルティング

Amazonのビジネスモデルをバンドに応用

Frekul Talk Live Vol.10 まとめ

音楽コラム

自分大学をつくる

検索の罠

世界に失望することはあっても、音楽に絶望することは決してない

バンドを始める前に

モーツァルト属とベートーベン属

宇宙のリズムに燃えよ!

バトル曲の作り方

音楽で笑いを起こす

著者情報

Frekul Talk Live Vol.1 2013.12.9

Frekul Talk Live Vol.1 2013.12.9

今回から

アーティストがCD販売に依存せずに生計を立てる新しい方法を探る

「Frekul Talk Live vol.1」at 12/9/2013

のレポート&スタディをやっていきます。

これは、20人くらいが入れる東京の小さなレンタルオフィスのようなところで開かれた音楽会議です。

Frekulサポーターは入場が無料で、終了後は懇親会もありました。

19時30分からの開始で22:30ごろに終了(ディスカッションは21:00まで)だったので、わりと短い時間でしたが、それでも濃い情報交換の場となりました。

参加者はミュージシャン、バンドマン、ドラマー、DJ、アイドル、エンジニア、音楽ライター、PV制作者など、なんらか音楽をライフワークとしている人々でした。

登壇者は

・浅見義治
ポイントでも応援ができるクラウドファンディングサービスWESYM(ウィシム)運営。
株式会社ドリームフォー取締役COO最高執行責任者。
株式会社リクルートにて、新規事業開発、立ち上げ等に従事。
独立後、経営コンサルティング事業立ち上げ、上場企業の経営戦略策定、事業戦略設計等に従事。
その後、現在の株式会社ドリームフォー創業に伴い現任。

・海保けんたろー
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。
「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。

・原孟俊
ギタリスト MyMusicTaste, Regional Marketing & PR Manager Japan & Asia Pacific
神奈川県生まれ。15歳の時、母親の仕事の関係でNYに渡り現地で受けた影響により音楽家を志す。
高校入学後、本格的にギターを始めダブルスクールで夜間の専門学校に通いバンド活動等を経たのち、卒業後都内に移り20代前半からプロのキャリアを開始。
以後メジャー、インディーズ問わず複数のアーティストのレコーディング、サポートに参加し、講師業などもこなす傍ら貿易業、輸入業など多彩なビジネスも手掛ける。
また、昨年は再びNYへ渡り現地でネットワークを築き、出会ったスタジオエンジニア等との交流の中で、レコーディングセッションに参加、同時にNYでのキャリアもスタートさせる。
本年度からはグローバルコンサートメイキングプロジェクト”MyMusicTaste”の海外チームよりヘッドハントされ、日本アジア方面の マーケティング&PR、企画などに携わる。

・jMatsuzaki(モデレーター)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報として参画。

です。

最初に、それぞれの登壇者たちより、自分たちの考え方や活動の詳細、ヴィジョンなどが話され、次にテーブルトークという形で、4人のうち興味のある人のところに集まって話をきく×2回という変則的なセミナーでした。

主題的には「アーティストの新しいマネタイズ法」みたいな乾いたビジネストークみたいな感じですが、
別に確立されたメソッドとかおいしい方法を公開とかいうものがあるわけではなく、自分たちの考えるスタイルを提唱しそれについて議論するという、なんだか専門学校のゼミみたいな集まりでした。

文化人らしくマインド的な誠実な話だったのが印象的でしたね。

それくらい、いまだに音楽人のマネタイズ方法というのは不確実性の高いものなんですね。
トークの中でも出ましたが、音楽ビジネスというものがまともに経済の中で成立するようになったのがそもそもここ2-30年の話で、それまではパトロンや権力者の保護のもとに展開される特殊な文化でしかなかった。

音楽を売ってお金を得るという行為が成立していること自体が、人類の歴史上類をみない珍しい現象なのです。

われわれがいかに幸福な時代に生きているかがわかります。

100年後や200年後、今の時代20世紀〜21世紀は「音楽家がようやく経済的・社会的独立を実現した音楽文化の真なる創世記」と称されるか、
または逆に、「音楽家というあり得ない職業が成立し得ていた人類の歴史上稀にみる幸福だった時代」と懐かしがられるか、どちらかでしょう。

つまり、今に生きるわれわれの手に、そのどちらの評価を選ぶかという選択が迫られているのです。
民衆の音楽史の生死が分かれる歴史の分岐点、それが今なのです。

われわれの選択で未来が変わる。

何もしなかったら、そのうち音楽産業は絶滅して、また金持ちだけの贅沢になってしまいます。それくらい、いま音楽をめぐる世界は危機を迎えているのです。

レコードやCDなど大きなキャッシュポイントを生んだ発明品が廃れ、音楽をやるものが稼げなくなってから、音楽事情がどんどんおかしい方向に向かっているのは事実です。

レコード、CDに変わる新たな発明品を開発するか、もしくは新しい活動をモデルを作り上げなければ、音楽に携わるものの社会的な未来はありません。

この場に集まった方々は、その危機感を深く実感しており、とても真剣な議論がなされました。
今日は概要のみに留めますが、先に全体を要約しておくと

・ミュージシャンは組織に使われていては一生貧乏のまま
・お金は組織からの報酬としてもらうのではなく、ファンからの共感の対価としていただく
・プロの定義とは?音楽をやり続けていくためには、必ずしも「演奏の」プロになる必要はない。その方向性を決めることが重要
・クラウドファンディングの可能性に気付くこと
・メジャーシーンの終焉と多様化の時代の到来を意識する
・国境を越えていく時代 自国で売れなくとも他国で異様に売れたりする

ということです。
今まで盲点だったことがどんどん見えるようになります。こんなやり方があるのか!と驚かれるはずです。

趣味がプロになる瞬間

今回のテーマは

「プロフェッショナルの定義」

です。

具体的な「生計を立てる方法」にいくに、こういう本質的なところから入るのが、文化人のいいところです。

いないと思いますが、こういう人たちの集まりで「手っ取り早い金の稼ぎ方を教えろ」

という人間は処刑されます。

思っているだけでもダメ。思考は言動や行動にあらわれて伝わるから。

でもそういう人たちはそもそも音楽なんて金にならんことはやってないので、ふつうは大丈夫です。


さて、音楽人にとっての、もっと大きくくくれば何らか表現制作をやる人間にとしての「プロの定義」とは何なのか。そこを明確にすることで、活動の方針をより具体的にすることができます。

普通の商売と違って、わかりやすいファクトベースの付加価値を提供するわけではないし、資格とか認定証があるわけではないので、どうしても定義が曖昧になりがちです。

「プロっていっても、どこからがプロなの?」「アマチュアやインディーズで稼いでいる人たちはプロっていうの?」「ヘタクソなプロもいれば、めちゃくちゃうまいアマもいるし・・・」

という疑問がよくでてきます。さらに言えば、

「わたしの作品は芸術なのだから、娯楽とは違う。よって理解できないバカどもに売れはしない。芸術家はお金をもらうなどという野暮なことは要求しない」

とかいう勘違いさんもでてきます。

結論から先にいうと「プロとは、自分の活動でお金をもらっている人のことである。うまい下手は関係ない」となります。

では詳細に見ていきましょう。

「プロミュージシャン」とは何なのか、実際に現場で活躍していた原さんや海保さん自身も、常にこの疑問と向き合ってきたと言います。

海保さんの経験談をまとめると・・・

「サポートやレッスン講師などの仕事がくるようになって、何とか月15万円くらい稼げるようになったあたりから、一応プロドラマーと名乗るようにはなった。でも、まだアルバイトもしているし、それしか稼げていないのにプロって言っていいのか・・・」

という自問自答を繰り返す日々だったとか。

アメリカで活動していた原さんの経験談をまとめると

「アメリカには、そこらへんのハウスとかにめちゃくちゃうまいブルースギターを弾くおっさんがふつうにいる。ただうまいんじゃなくて、本当にプロよりうまいってくらい、死ぬほどうまい。クラプトンより余裕でうまいんじゃないかってくらい。

でも、その人に聞いたら、アマチュアだっていうんですよ。本業はなんと弁護士。

毎日夕方の4時半まで仕事して、それからギターをやるっていう、そういう生活をずっと続けてきたっていうだけ。完全に趣味でお金をもらっていないから、アマチュア。

でも、明らかにプロよりうまいんです。いやいやあんた、それ絶対プロだから!て叫びたくなるくらい。でも本人は弁護士なんです。

逆に、資産家とか金持ちの家系の生まれで、家にスタジオとか機材とかふつうにあるような貴族みたいなヤツらで、他になーんにも仕事していないけど自称プロミュージシャンとかいうヤツもいる。

そういうヤツがいざ演奏となると、クソみたいな腕だったりする。それでいくら稼いでいるの?て聞きたいけど、本人はそれでもプロだと言い張る。

一生働かなくても生きていける環境だから、どんなにヘタクソのインチキで稼ぎが少なくても、それしか仕事していないし、一応金はもらっている。だからプロ」
という感じです。

※これはあくまで要約で、わたしの頭の中で原さん海保さんの声が再生されているだけなので、本人たちが正確にこの通り話したわけではありません。伝えやすく補足と修正を加えて書いてます。わかると思いますが念のため注意。
お二人の話から導きだされた結論は「技術やスキルはプロになるための必要条件ではない」ということです。

一般的に「プロ」と認知されるには、もちろん一定の技術は当然必要ですが、必ずしも技術的に優れている人が売れているわけではありません。

その人の思想だったり、個性だったり、キャラクターだったり、ユニークな社会的活動だったり、メッセージだったりと、そういうイメージが総合して作り上げる

「情報的な価値=ヴァーチャルバリュー」がブランドをつくりあげることによって、お金が集まりやすくなったり集まりにくくなったりするのです。

岡本太郎や村上隆さんの作品がどれだけヘタクソでありふれていても、彼らのメッセージや活動は唯一無二である。だから、支持されるわけです。

まあ、こういった考察や、ヴァーチャルバリューの作り方などは本題ではないのでまたの機会にゆずるとして、では「プロの定義」とは一言でいうと何なのか。

それはこうなります。「うまかろうがへたかろうが、自分の音楽活動でお金をもらっている人はプロ」です。
だから、少しでもお金をもらったら、その時点でプロミュージシャンとして自信をもって自称していいわけです。名刺に書いてもいい。

アマチュアやインディーズなどでたまに「趣味だと思って」お金を稼いでいる人たちもいますが、それはただグレーゾーンなだけで、やっていることはプロと同じです。

お金のやりとりがある時点で、対価の交換が発生し、契約が成立していますからね。

お金を受けとる、お金を払うという行為にはそういう責任が伴うものなのです。お金をもらってしまったら、
「趣味」は通用しなくなります。自分で思っていても、それはただの思い込みになります。

やってることはプロと同じなので、他の人からみたら、実力の差はあれどプロはプロ。そこに一切の妥協は許されません。

「趣味」で通すなら、お金をもらわない。ボランティアと同じです。「わたしは震災のボランティア活動をこんなにがんばった」とか言ってお金を要求しているヤツがいるといいますが、
あれはバカ以外の何者でもありません。趣味・ボランティアは見返りを求めない活動です。お金を要求するなんて見当違いでしょう。

ここを明確にしておかないと、自分の活動や発信するメッセージに致命的な矛盾をきたすことになるので、注意しましょう。

ヘタクソでも売れている人と、プロよりうまくてもアマチュアでいいという人の違いは、ここを意識しているかどうかの差にあります。

どんなにうまくても、趣味ですアマですと自分で決めつけている人には、プロとしての責任を果たす意向がないので、よいとか悪いとかではなく、お金をもらう資格はありません。

一生自分だけ楽しむ、それでいいのです。自分のためだけだから、お金をもらうのはナンセンスなわけです。

逆に、プロとしての責任を果たす決意を持っている人なら、
ある程度の技術とコンセプトやヴィジョンの提示があれば、お金を出してくれる人は必ずいます。バーチャルバリューの作り方次第で、いくらでもお金は増やせます。

ヘタクソでなかなか売れないよ〜っていう人は、メッセージ性やオリジナルコンセプトの部分を磨く方向にシフトした方がいいということです。唯一無二の存在になるために。

問題は、例の弁護士ギタリストのように、趣味がすごくなりすぎて付加価値が発生してしまった場合です。
これは、本人が望まなくても、プロデュースさせてくれという人が出てきますので、
信頼できるプロデューサーやビジネスをやってくれるパートナーが見つかったら、そのとき仕事にすればいいです。ただ、だまされないためにも、やはりある程度のプロ意識は必要でしょう。

今日の結論の内容は、

「芸術でお金をもらうなんて俗悪だ。私は作品は売れていなくても”プロ”の芸術家だ。理解されないから売れないのだ」という主張を持っている自称天才の方々を一撃で葬り去ることになります。

この議論は絶えないらしいですが、結論は決まっているので、本当は議論の余地はありません。
この資本主義においては「お金をもらっている人がプロです」でおわり。

だから、「お金を受け取っていなければプロではありません」で粉砕されます。
こういうことを書くと批判されそうですが、あえていいますと、
バッハもベートーベンもモーツァルトも、シェイクスピアもジョンソン博士もブロンテ姉妹もドストエフスキーもポール・オースターも、みーんな金のために作品をつくったのです。

もちろん、それだけが動機ではないでしょう。

自分の宇宙を表現するというもっとも崇高な命題と一致させるために、それ以外ないから、音楽やら小説やらを選んだわけですが、少なくとも趣味ではやってません。

「歴史に残る偉大な作家の誰一人として”金のためにペンをとらなかったものはいない”」と言われています。

偉人たちもある程度お金を得るために作品をつくっていたと知ることで、お金を得るための制作が決して創造性を破壊するものではないということが理解できると思います。

まあ、当然俗悪な作品が生まれることもありますが・・・今は、作家が大衆に迎合しすぎたのだと思います。しかしそういう時代ももはや衰退しました。
これからはネットを駆使したゲリラ活動の時代なので、そういう悪しき流れも徐々に変わっていくでしょう。

クラウドファンディングを選択肢に

今回から具体的なお金の集め方(共感の集め方)の例が出ます。

それは「クラウドファンディング」です。

ご存知だと思いますが、クラウドファンディングとはかんたんに言うと
「アイデアを持つ人がプロジェクトを提示して、共感者がお金を出して実現を応援してあげる」
というものです。

一般的に、出資者をつのるシステムは4つのタイプがあると言われています。

寄付型
購入型
融資
投資

です。

寄付型は、お金を出す側にリターンがない。完全にボランティアによる応援です。
購入型は、お金を出す側が何らかのリターンを期待していますので、価値の交換として商品やサービスの提供が必要です。

融資型、投資型は、そもそもお金のある人の資産運用のためのシステムですので(融資はちょっと違うかもしれませんが)、一定の利回りが約束されないといけません。

クラウドファンディングは購入型に近いタイプです。
プロジェクトを提示する人は、お金を出してくれる人に対して何らかの商品・サービスの提供を約束するのがルールです。

出資の額に応じてサービスの質を大きくするというのが一般的です。

より大きな額を出してくれた人に、よりよい特典やサービスを提供するわけです。まあ当たり前ですね。
いま、ミュージシャンがクラウドファンディングを利用することが注目されているのです。

何か面白い活動のコンセプトを提示して、それに共感した人から出資をつのる。
ミュージシャンの場合、ちょっと変わった独自の発想が必要です。必ずしも物理的な商品サービスの提供をしなくても、

「体験価値」や「娯楽としての楽しみ」が高ければ、出資が集まる可能性があります。

例えば、以前メルマガでも紹介した、Sleepyhead Jamie というユニットは、
「全国のハンバーガーショップを巡るツアーをやる」というアイデアで100万円以上集め、
そのお金でキャンピングカーを買って実際にやり遂げました。

見ると500円から5万円まで段階的に出資を募集していますが、物理的にそんなにすごいアイテムをもらえるわけではありません。

彼らの「ミュージシャンとして生きる新しい形を提示したい」というストーリーにのっかるという、その情報的な価値に魅力があるわけです。

お金は物質的なリターンにではなく、共感の対価として集まるわけです。これが投資型とは違う、クラウドファンディングの特徴です。

登壇者の浅見義治さんの運営するクラウドファンディングシステム「WESYM」も、
http://wesym.com/

一般的なクラウドファンディングと同じようなシステムを採用していますが、
他とは違う特徴がいくつかあります。

それは、「ダイレクト型」という新しいシステム。
これは、プロジェクトの提示者が「既に進行中のプロジェクト」にライヴ的に出資する、というやり方です。

一般的なファンディングでは、例えば「新しいエフェクターつくります!開発には100万かかります」とアイデアを投げると、
実際に100万円ぴったり集まるまではプロジェクトを開始できません。

99万9999円集まっても、100万円に足りなかったら出資者には返金され、プロジェクトはお流れになるのです。

そんな極端な切り捨てシステムをやめて、もっと柔軟にしたのが「ダイレクト型」です。

「いま新しいエフェクター作っているんですけど、どうしても後50万円足りないんです。あとそれだけあったら、これだけすごい機能がつきます!」

という場合にも出資してあげることができるのです。

また、もう一つ特徴的なのが、WESYMの出資では「お金」を集めずに「ポイント」を集めるということです。
ポイントとは、お店で使うポイントカードのポイントです。よく余って期限が切れたりするでしょう。実は日本ではあれが大量に余っているんです。

国内で一兆あると言われています。しかもそのうち「永久不滅ポイント」と呼ばれる無期限のポイントが700億もあると言われています。

これを再利用させてやろうというのが、WESYMの斬新な試みです。

「お金をください」というのはどうしても言いにくいですが、ポイントだったらお願いしやすい。しかもどうせ余って期限切れにしちゃうんだったら、使ってくれる人にあげちゃう方がいい。双方がハッピーになるというわけです。

しかも永久不滅が700億もあるというから、半永久的に出資を集めることが可能というわけです。
ポイントを利用するなんて、よく気付いたな、と思いますよね。盲点でした。

クラウドファンディングの本質はお金を集めることではなく「共感を集める」ことが目的です。
そして、共感の形として提供するリソースは必ずしもお金でなくともいいのです。お金はただの紙ですからね。

リソースなんてのは、つまりモノとか道具です。生活に必要なものは別として(生活費のファンディングなんかしちゃいけませんよねw)、プロジェクト進行に必要なモノは、
それ自体直接手に入れば、お金で買う必要もないわけです。
物事の本質を見抜いた素晴らしいシステムだと思います。

これからクラウドファンディングを活用するなら、WESYMがおすすめです。
面白いアイデアをお持ちの方は、ぜひ一度企画を投げてみてはいかがでしょうか。

これからの時代、いかにすごいテクニックを誇るかよりも、いかに独創的なアイデアで人々の共感を得るかどうかが重要になってきます。
クラウドファンディングを当たり前の選択肢の一つとして考えられるかどうかで、可能性は大きく広がります。
アーティストたるもの常にチャレンジ精神をもって活動しないとダメです。
「ふーん。関係ねえや」とか思ってないで
やってみましょう。

本国じゃ売れなかったけど・・・

今回は

自国で売れない→海外で売れる可能性

です。

インターネットの発達がコンテンツの国境を事実上無くしてしまったことは既に明らかな通りですね。
わたしも海外サイトを紹介したりしていますし、いろんなところでこのことは騒がれています。

しかし、とはいえまだそのことを実感できていない日本の方は多いと思います。

グローバル化の波はすぐそこまできており、どの業界にも海外勢力の影響がみられ、TPPの発動後は外資が大量に流入・・・
などといっても、結局ニュースの中だけの話のように思えてしまう。

しかし、原孟俊さんは、インターネットの力が一瞬にして運命を変えてしまった一組のアーティストの例を紹介してくれました。

原さんはMy Music Taste という韓国の音楽アプリケーション会社のお仕事をしています。
http://www.mymusictaste.com/nowmaking

このアプリを利用したあるダンスグループが、まさにグローバル化時代の可能性を決定づけるマイルストーン(歴史を左右する画期的な出来事)的な発展を遂げたのです。

それが韓国のダンスグループ「LUNAFLY」です。

いわゆる歌って踊れるウインズ系のダンスボーカルグループというヤツで、ソウルでは200人規模のライヴをギリギリできるくらいの、まあ中途半端な位置づけのアーティストだったわけです。一応規模はあるけど、そこまで有名でも売れてもないしなあ・・・という感じの。

それが、My Music Tasteの利用をはじめてから、たいへんなことが起こったのです。

ブエノスアイレスほか南米の国々からアクセスが殺到し、一気に2000人規模のファンを獲得。ファンの方から、来国してライヴをしてほしいという要望がきてしまい、いま大慌てでポルトガルを勉強したりと準備に追われ、嬉しい悲鳴をあげているそうです。

すでに2000人の来場が確定しているライヴですから、集客の必要なし。素晴らしいです。

なぜ自国の韓国ではそれほど売れなかった、ありふれたダンスグループが、いきなり南米というまったくの異国でブレイクしてしまったのか。

その原因は、現地のいわゆるソープオペラ(昼ドラマ)の時間帯に、LUNAFLYの出演するCMが流れていたことらしいです。

つまり現地で昼ドラを見ているヒマ人たちが、見ているうちにだんだん好きになったと。
昼ドラ視聴者の人口が多かったので、ファンも多い。そんなことらしいです。

何が起きるかわからないですよね。これぞネットの力です。

自分の国で売れなくとも、もしかしたら何かのはずみで、どこか異国の地で大ブレイクということになる可能性は充分にあることを
証明した例です。

LUNAFLYの場合だって、CMの効果があったとはいえ、それだけではやはり2000人ものファンはつかないと思われます。

何かアルゼンチンの人々に好かれる要素が偶然あったはずです。

どうして韓国のダンスグループがアルゼンチンの人々に受けるのか?これは謎なのですが、
とにかく人気が出たことは事実なのです。

だから、自分のバンドが売れなくとも気にするな、国内外問わず発信しまくれ!ということです。
ほんとうに、もう国境は無くなってしまったのです。

日本は日本語という特殊な言語で守られた市場であるため、
巨大な金のジャブ池市場にもかかわらず海外勢力が金稼ぎを仕掛けに参入しにくいのです。

それはつまり、内部にいる日本人も、日本語に守られた市場に囲まれてしまい、海外市場の可能性や外国企業の不穏な陰に気付かないということを意味します。

日本という島国に依存しきっているあまり、盲目になってしまっているのです。

しかし忘れてはいけません。インターネットは国境を消しました。Youtubeは全世界からアクセスがきます。
ソーシャルも全世界の人々が相手です。そのことを実感できるかどうかが、可能性を拡大or縮小を左右します。

ちょっと目を向ければ、日本よりも海外で売れた例もけっこうあるのです。雅(MIYAVI)さんはそうですね。
日本では百人程度のライブしかできなかったころ、フランスで数千人規模のライブをしていた、という話です。

英語が使えることがこれからのミュージシャンには必須であるということを証明している存在でもあります。

あなたの音楽も、日本では理解されなくとも、もしかしたら北欧や南米のかの地では大爆発するかもしれません。

海外も見通す広い視野をもって活動しましょう。

メルマガを使うバンドマンは超少ない

今回は

バンドがメールマガジンをやるということ

について改めて確認です。
Frekulさんの提供するメールマガジンシステムは、
CD販売に依存しない音楽活動を体現する画期的なものです。

「ネットの発達により、音源がフリーで手に入る、または視聴できるようになってしまったため、CDは売れない」

という事実と正面から向き合った結果生まれた方法です。
音源はむしろ公式にフリーで配ってしまう。しかしただバラまくのではなく、メールアドレスをいただくことで、
告知やマーケティングに利用させてもらうというやり方。

Frekulでは、読者(ファン)を獲得した後の収益化のお手伝いとして、
投げ銭制度や月額制プレミアムサポーター制度、カラオケ流通サービス、グッズ制作支援に最近では協賛付き無料ライヴと、
徹底的にミュージシャンのプロモーションと収益化をサポートするサービスを展開しています。

基本的に「音源を売って稼ごうとしない」というのが特徴です。

コピーできるデータには価値がないのです。

いまの時代の価値は、代替できない「体験価値」すなわちライヴや
その人独自のオリジナルコンテンツ(SONALIOさんで言えば、Frekulシステムやメンバーデザインのグッズなど)
しかありません。

Frekulはこのことにいち早く気づいて、体験価値の提供というところに重点を置いた収益化のサービスを提供しているわけです。

実際は、前回紹介した「LUNAFLY」のように、Frekulではまだそこまでドカンと売れたような例は聞いていません。

バンドのオリジナルコンテンツのプロデュースやもっと高額なキャッシュポイント化を可能にするサービスなどを展開していくことが課題だと思います。

高音質音源や限定ライヴ音源の販売とか、ファン限定のちょっとリッチなコンセプト・ライヴとか、演奏方法の指導セミナー、作曲方法公開とか
いろいろできることはありますから。

構造はコンテンツビジネスと同じなので、個人の力を磨けばいくらでも商品なんて作れるはずなんです。
本人の得意な部分をのばして、ひとつ小さなビジネスをもてるようになることが理想です。SONALIOさんがFrekulを持つことができたように。

エフェクターをつくってもいいし、作曲方法を開発してもいい、絞ったマーケットでいけば必ず何かサービスを持てるはずです。

やるやらないはあなた次第です。

Frekul Talk Live Vol.1 まとめ

アーティストがCD販売に依存せずに生計を立てる新しい方法を探る
「Frekul Talk Live vol.1」at 12/9/2013

レポート&スタディ第6回。今回はまとめです。


1.概要

企画の趣旨と登壇者の紹介です。

もはや常識として知っておかねばならない現代ミュージシャン事情として、以下のことを確認することからはじめました。

・ミュージシャンは組織に使われていては一生貧乏のまま
・お金は組織からの報酬としてもらうのではなく、ファンからの共感の対価としていただく
・プロの定義とは?音楽をやり続けていくためには、必ずしも「演奏の」プロになる必要はない。その方向性を決めることが重要
・クラウドファンディングの可能性に気付くこと
・メジャーシーンの終焉と多様化の時代の到来を意識する
・国境を越えていく時代 自国で売れなくとも他国で異様に売れたりする

12月10日の記事「Frekulライヴ/美術展に無料招待」の時に触れましたが、

じっさいメジャーシーンの最前線で活躍しているバンドのサポートを行っている原孟俊さんのぶっちゃけ話で、

「めちゃくちゃお金をもらっている」メジャーバンドの給料についての裏話が出ました。

この時の記事では直接的な数字は公開せず、明らかな具体例との比較によって示唆するにとどまりました。

しかし、もはや隠すこともでもないし、どうせ誰かが告発することでしょうから、このメルマガの中でだけ、言ってしまいます。

月収20万円くらい、だそうです。

売れ時を過ぎたバンドだから、プロモーションに力を入れてないから、新人だから、
とかではありません。超トップで活躍してメディアにもでまくっている女子5人組のスーパー人気バンドで、この額だそうです。

もしバンド全体でその額だとしたら、個人としては数万円です。そこははっきりしていませんが、その可能性が高いと思います。

どう思いますか?お客さんに貢献し自己犠牲と清貧にあえぐアーティスト、すばらしい!貧乏万歳!と感動しますか?

人間として最低限の生活はできるでしょう。しかし彼らは世界一豊かな国のアーティストなのです。ふつうに考えておかしいですよね。

そういう業界です。それが事実です。

2.趣味がプロになる瞬間

社会における「プロフェッショナルの定義」を確認しました。

趣味・アマチュアリズム=まったく人の役に立たない・自分だけが楽しい

仕事・プロフェッショナリズム=人の役に立つ・人を楽しませる

ということです。

大切なことは「技術的問題はプロの定義に関係ない」ということでした。

テキスト的な定義でいえば、「職業(プロフェッション)=付加価値の提供=お金を媒介にした価値の交換」

ですので、お金のやりとりが発生した瞬間にその業界ではプロとみなされるということになります。

しかし、本当に大事なことは、マインド的な定義の方です。つまりアート・クリエイティブ界においては「人を楽しませる」ことです。

「楽しむ」の定義ははっきりと決まってはいませんが、本人が楽しいと思えばそれが付加価値となります。
「怖い」「悲しい」など
ネガティヴな感情であっても、本人が望んでそれをもとめればそれは「体験価値」としての「娯楽」となり、広義には「楽しむ」行為に相当します。

必ずしも実生活の役に立たなくとも「娯楽」としての機能を果たすから、アート活動でも職業になるのです。

これは職業の定義から導きだされた正論なので、覆りません。

「人の役に立つ・楽しませる」という精神があるかどうかが、真のプロであるかニセモノであるかどうかを分けるポイントです。

そこは見た目では判断できないことが多いので、当人の情報発信や社会的発言から探っていくことが大事です。

アマの延長上のような気持ちでやってるプロも中にはいますので、注意しましょう。

また、自分が真のプロとしての自覚を持つことも重要です。

3. クラウドファンディングを選択肢に

ミュージシャン・アーティストとしていかにおもしろい活動を提示できるかが求められている時代において、

クラウドファンディングというシステムを有効活用することが現実的な手段の一つとして浮上してきました。

「全国のハンバーガーショップをめぐるツアー」のような、一見「何の意味があるの?」とか思えるような活動であっても、

「おもしろそう!応援するぜ!」という人を集めることができれば成立するという例をあげました。

クラウドファンディングについてよく理解し、実際の活動の選択肢として視野にいれておくことが

活動の可能性を大きく広げることになります。

具体例として、WESYMというポイントを利用したシステムを紹介しました。

お金を直接くださいとお願いするのではないので、アーティストでも応募しやすいファンドとして注目されているシステムです。

クラウドファンディングにおいては、
プロジェクトの斬新さとともに、当人の人間性・思想がファンディング支援者集めに影響することは間違いありません。

5.本国じゃ売れなかったけど・・・

グローバル化により、音楽活動に国境がなくなったことを改めて確認しました。

具体例として、韓国のダンスグループ「LUNAFRY」をあげました。My Music Tasteというサービスを利用したとたん、

南米で急な大ブレイクを果たしたという奇跡です。こういうことが当たり前に起こる時代になっていくでしょう。

6.メルマガを使うバンドマンは超少ない

Frekulを例に、メールマガジンを使ったバンドの運営方法を再確認しました。

インターネット業界ではすでに当たり前のことが、日本のバンドマンの間ではまだまだ起こっていない(海外ではすでに主流)。

しかし、音楽コンテンツとメルマガシステムの相性の良さに気付いたSONALIOさんは

いちはやくそのサービスを展開し、Frekulというメルマガシステムも同時に立ち上げ、自分たち以外のバンドマンにも普及を進めています。

CD販売に依存しない方法としては、もっとも可能性があるシステム、それがメルマガ、それがFrekulです。

Frekul Talk Live Vol.2 2014.1.15

Frekul Talk Live Vol.2

2014年1月15日、Frekulトークライヴ Vol.2 に参加してきました。
https://www.facebook.com/events/557827167625532/

今回も新しい発見と出会いのある場でした。

読者の方ともお会いできて嬉しかったです。

これからレポートしていきますが、先に得た情報をまとめておきましょう。

・ハンバーガーツアー成功の秘訣は「コンセプト」「場所」「身軽さ」
・すわさんのP/L(損益計算所)明細。収入の半分は「ライヴ」でも「物販」でもなく、なんと「投げ銭」
・メジャーバンドのP/L。初給料は相場は10万円
・音楽をやっている人が持つ根源的な「3つの音楽欲」。その一つを満たすだけで他の2つのものはまかなえるという、もっとも大事なものとは?

以上が主に重要なものです。

では、これからレポートしていきます。お楽しみに。



■ 登壇者プロフィール(五十音順・敬称略)

・海保けんたろー(SONALIO、Frekul)
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。 「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、
2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。

・すわだいすけ(Sleepyhead Jaimie)
8〜18才をアメリカで過ごし帰国後 Sleepyhead Jaimie を結成。アメリカンテイストな音楽性とバイリンガルな歌詞が特徴。代表曲「Hamburger Song」のリリースをきっかけに、
2012年にはハンバーガー店のみをまわるライブツアーを決行し、クラウドファンディングで購入したキャンピングカーで400日かけ全47都道府県の165店鋪を完走。このユニークな活動スタイルに注目が集まり、ネットメディアから全国ラジオテレビまで幅広く話題となる。
その後も独自の展開を継続するかたわら、次世代型アーティスト論を語るスピーカーやライターとしても活躍中。

・Choro(Jeepta)
ロックバンド「Jeepta」のギタリスト。音楽塾「Choroidea」代表。ゲストギタリストとしてライブやレコーディング、MVに参加するなど多岐に渡って活躍。
2010年、Jeeptaでメジャーデビューを経験。ROCK IN JAPAN FESをはじめとする大型フェスにも多数出演。
2011年、現役で活躍するアーティスト達が所属する音楽塾「Choroidea」を設立。他にも「choroさんレンタル」など、未来の音楽の形、アーティストとファンの新しい形を提案し続けている。

・jMatsuzaki(モデレーター)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。
その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、
仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報として参画。

投げ銭だけで月25万

Frekul Talk Live Vol. 2 のレポートをしていきます。

Sleepy Head Jamie のすわだいすけさんは、

全国のハンバーガーショップをまわるライヴツアーで生計を立てているといいます。

この企画の成功で少し有名になり、音楽だけで生活もできるようになったということで、貴重なお話をきかせていただきました。

活動がうまく言った要素をまとめると、こういうことになります。

・コンセプトがわかりやすい
・機材費がかからない(アコギ・ベース・歌だけ)
・チケットノルマがかからない(ハンバーガー屋でやるから)
・集客しなくてよい(お店には既に人が集まっている)自分たちの広報は無料のSNSだけ
・投げ銭しやすい(経済的に余裕のある人がお店には多い)


という要素がうまく相互作用し、収益面でもうまくまわっています。活動のユニークさも注目され、地方メディアなどにもオファーされ出演されています。

機材費・チケットノルマという、ミュージシャンがライヴをするにあたって致命的なマイナスを排除したという点と、

ハンバーガーが大好き!ハンバーガー屋さんでライヴをさせたら世界一!というコンセプトの突き抜けたわかりやすさ、唯一性というのが、

うまくいった要因だと分析されます。

このスタイルをそのままマネするのは不可能と思いますが、視点を上げて、取り入れるべきは大枠の構造です。

・機材費を少なく、ノルマのないライヴスペースでのライヴに特化したパフォーマンスを考案する
・何か専門の狭い分野に特化したコンセプトを掲げる

ということです。

同じ人間は一人もいません。誰にも自分だけが特化することができる領域があります。

それを模索し、具体的に楽曲とかメッセージとかに盛り込んでいく。それが、競争を抜けて、自分だけのスタイルを確立し、濃いファンをつけていく秘訣です。

食べ物でいったら、ポップなジャンクフードの方が受けそうですね。ハンバーガーの他には、フランクフルトとか、インドカレーとか、ドネルケバブ(w)なんかいいのでは?こういうのはマニアックな方が当たりやすいのです。

さいごに、トークライブではすわさんたちの驚くべきPL(損益計算書)が公開されましたので、その内容を少しだけお伝えします。

すわさんはキャンピングカーで全国をまわっているので、ガソリン代などがやたらかかったり、とてもユニークな活動収支になっていますが、

一番びっくりしたのは、その収益源です。

約40%はCDとグッズの売上で・・・

残り60%はなんと、投げ銭です。

ある月は投げ銭だけで約25万もあったとか。

すごすぎますね。

これは、ハンバーガー屋にくるお客さんが、ライブハウスなどにくるお客さんと違って、少しリッチで、となりのおねーさんとかに見栄を張りたいタイプのおにーさんとかおじさまが多いから、ということが背景にあるようです。

さらっと1000円とかをあげちゃうことが普通、そんな空間でライヴを行っているからなんですね。

何が起きるかわからない。これぞ人生ですね。とてもおもしろい生き方をしている。

これからも楽しみにしています。

すわさんの例は、すごく参考になります。王道とは違いますが、最初からセルフマネジメントだけでやっていく姿勢でつくりあげたスタイルなので、わたしたちが勉強できる点が多いです。先ほどあげた2つの点はとくに重要なので、ぜひ追求してみてください。

初任給10万円

Frekul Talk Live Vol. 2 レポート第2回です。

今回はChoroさんの話から。

Choroさんは主にメジャーバンドのお財布事情を、自らの経験から語ってくれました。

確認しておきますと、このトークライヴは「CD販売に依存しない音楽活動」というコンセプトから出発していますので、

しぜんとセルフマネジメントとか、キャッシュポイントの作り方とか、お金に関する議論が中心になります。

よって、こういった「メジャーデビューすれば安心」という幻想を振りほどくステップは、毎回のことよく話し合われるのです。いまだにこの幻に取り付かれている人はいますが、これ事態は間違いなくウソですので、まずはここからはじめるのがセオリーのようになってます。

さて、初任給10万円

とは、Choroさんのインサイダー情報。メジャーに移行して最初にもらえるのは、だいたいこれくらいが相場だそうです。

バンド全体でこの額なのか、一人あたりこの額なのかは不明ですが、いずれにせよ少ないです。

ミュージシャンは、このお金の中から、生活費、交際費、移動費、服、機材費、娯楽代、楽器メンテナンス費、その他一切の自己投資などもまかなわねばなりません。

事務所が負担してくれるのは、レコーディング費用だけだそうです。

あとは、三ヶ月に一度、印税が一人6万円くらい入る。

他にはグッズ販売の収益が少し、という感じです。

で、バイト禁止。

Choroさんは、メジャーになってから、ライブの際に交換用の弦が買えなくなるという事態が起きる、と言っています。

こんな収支じゃ、納得です。

こういった状態がいつまでも続くなら・・・というわけで、独立。現在は、サポート活動や

メインのChoroidea Music School というレッスンスクール運営で生計を立てています。

独立してからは、弦が買えるようになったそうです。

メジャーレーベルに所属することの是非のジャッジは置いといて、

お金に関することだけみたら、正直、「やってけない」というのが事実のようですね。

Zepp Tour(2000人クラス)までいけたら、まともな生活ができるという噂だそうですが、

そこまでいくのを待っている間に、生活に殺されてしまうのではないでしょうか。

だから、早いうちに決断して、自営にシフトする動きが活発になっているというわけです。

議論の性質上、
メジャーに所属する場合ばかりが絶望視され、
セルフマネジメントでいくしかない、というような方向に傾きがちですが、
この会場では、なるべくどちらが良いとかいうジャッジはしないというルールになっている感じがしますね。
メジャー経験者と未経験者で、自営でやっている人が登壇されてはいますが、
あくまで、選択肢の一つとしてみてくくればいい、やり方を押し付けるつもりはない、というスタンスです。

この記事でもフェアネスのために、事実のみをつみ上げていきます。

メジャーに所属すると・・・

・レコーディング費が浮く
・強力なマーケティングで全国的に認知させてくれる
・メジャーという「権威」と「実力のお墨付き」がもらえる
・ミュージシャンに還元される対価は極端に少ない(常に赤字が予想される)

セルフマネジメントだと・・・

・あらゆる値段設定を自分で行うことができる
・稼いだ分だけ自分のお財布に入る
・企画・コンセプト次第で突き抜けたマニアックな人気を得る可能性がある
・大衆受け、万人に認知されることは極めて難しい
・広報活動を全て自分たちでやる
・事業を持つことができる(法人化)
・著作権を自己管理できる

などといった特徴があります。

もちろん、「実力ありき」ではありますが、選択肢は一つではない、ということを知ってほしい、ということです。

自分の音楽活動スタイルによって、どんなやり方も選べるのです。

やりたいことがやれてない、生活が厳しいと、自分たちでもっともいろいろやれそうと思うなら、独立すればいい。

給料は少なくていいから、面倒なことは全部事務所にまかせて、音楽だけに集中したい、というなら、事務所に入ればいい。

どちらが良い悪いかなどは全く相対的、個人的な判断でしかないので、個々の事例をつきあわせて、じっくり検証の上、自分自身の頭で、どちらの方向でいくか、決断しなければなりませんね。

風来のドラマー

Frekul Talk Live Vol. 2 レポート第3回です。

今回は、海保けんたろーさんのお話から、

サポート活動でお金を稼ぐ

というトピックをあげてみます。

海保さんはかつて、いくつものバンドのサポートドラマーを掛け持ちし、なんとか月にギリギリ生活できるくらいのお金を稼いでいたと言います。

具体的には、with9 などのメンバー募集サイトに登録しまくり、
http://www.with9.com/

「なんでもやります」アピールをして、バンドのお誘いを待つ。

メンバー募集サイトでは、賃金や報酬の設定は具体的に提示しないでおく。

で、メールがきたら、「実はサポートの場合、いつも〇〇円くらいはいただいているんですが・・・」

と交渉をする。

すると、意外にも「あ、いいですよ〜」となる場合が多いとか。

募集の文面の時点で「プロフェッショナルとしての報酬」を提示すると、気が引けて連絡できなくなるか、
または「お金かかるのね・・・」として敬遠されるけども・・・

一度申し込んでからは、「ライヴも近いし、他に探すのも大変だし・・・」ということで「ま、いっか」

となることが多いようですね。

海保さんは実験として、この「自己設定の報酬」をどこまで上げられるか試してみたそうです。

最初は数千円から初めて、だんだん慣れてきたら1万円とかにしてみる。2、3万あたりになると「ちょっと無理」となるみたいです。あくまで参考ですが。

他には、ドラムのレッスンも募集していました。レッスンの場合は、生徒さんにお願いすれば、さいあく自身のバンドのライブなどで都合が悪いときは、レッスン日程をずらしてもらえたりするので、
サポートよりもやりやすいという性質があるそうです。
海保さんの場合、サポートを組みすぎてご自分のバンドのライヴができなくなってしまったので、だんだんとレッスン活動にシフトしていったそうです。

このような感じでサポート・レッスン活動を繰り返して、ドラムだけでお金を稼ぐことができてしまった。

まるで「旅するドラマー」ですね。昔の言い方で「流しのギターやろう」みたいな感じというんでしょうか。

ギター一本で全国をまわり、歌で人を楽しませながら稼いで回る、というおじさんが、昔は存在したといいます。

それに似てるスタイルですね。外国ではいまでもいそうです。


対価発生の条件は、そのバンドに認めてもらえること。だから、演奏力が全国クラスのプロでなくとも、

超有名な演奏家でなくとも、「そのバンドにとってのトップクラス」であれば、事実上、機能的役割を充分果たしているので、
対価は発生するのが自然というわけです。

特に実績や所属がなくとも、求められているだけの実力が充分ある方は、いつでも演奏でお金を稼ぐことができるという例です。

なにも全員がビリー・シーンやスティーブ・ヴァイから教わったりサポート受けたりしたいとは思いませんからね。

ビジネス界では有名なスーパーコンサルタント神田昌典さんは、コンサルタント業をはじめる際、

既に有名な人と競っても勝てないということで、「幼稚園児に教えるコンサルタントからはじめよう」

という心意気ではじめた、という話を聞いたことがあります。

既にやっている人がいる、といっても、自分にもできるところからはじめれば、どこかに隙があるはず。だから、あきらめちゃいけないということですね。

意外と見落とされがちですが、サポートバンドメンバー、またはミュージシャンの個人指導サービスというのは、常に需要のある職業ですから、

それ専門に特化するというのも一つの在り方です。

続けていくうちに、どんどん技術的にも向上し、コミュニケーション能力も上がると思いますし、

お金を稼ぎながら演奏家として成長できる、良い機会なのではないでしょうか。

そういう人たちのために、小さなサポートメンバー仲介サービスや、レッスン仲介サイトなども、

ビジネスとして成長しているという動きもあります。ChoroさんのChoroidea Music Schoolなどは、

その流れとして見ることができそうですね。

「音楽で生活していくにはどうすればよいか」ということをひたすら考え続けてきた海保さんらしいエピソードです。

後日談

海保さんの場合、結局サポートやらレッスンやらが忙しくなりすぎて、自分のバンドがままならくなってしまった。

そこで開発したのが、ミュージシャン支援サービス「Frekul」というわけです。
これが他のミュージシャンにも役立つシステムというわけで、サービスとして法人化につながったわけですね。

「最初は自分たちのためだった。人の役に立つなんて考えてなかった」といつもおっしゃっています。

つねに「どうすればよいのか」ということを考え続けることで、人間はすごい発明をするのです。
そして、考え続けることができるのは「好きで好きで仕方がないこと」です。

自分の「好き」をもっと楽しむために試行錯誤をしていれば、何かが生まれる。
そして、それが人の役にも立てば、対価も発生し、お金が集まる。

これは、経済における健全な価値発生の仕組みです。既にある価値を奪い合うのでなく、
新しい価値を生むことが望ましいのです。そうすれば、
競争を抜けて、お金に支配されない生活が可能になるというわけです。

「好き」を続けるということが、自分のためにも、社会のためにも良いということがわかります。

音楽に関しても、アプリとかエフェクターとか、いろんな形で発明は起きています。

自分が何を好きなのかを明確にし、それを突き詰めることが、頭一つ抜けたユニークなおとやになる秘訣ですね。

どうぞ「好き」を極め続けてください。

3つの音楽欲

Frekul Talk Live Vol. 2 レポート第4回です。

今回はすわだいすけさんの格言を引用します。

おんがくをやっている人間には、「3つの音楽欲がある」

その3つとは、

・音楽で稼ぎ生計を立てたい
・一生音楽をやり続けたい
・音楽で有名になりたい

だそうです。
だいたいの人はこのうちのどれかに強い思いがある。

この3つのうち、どれが自分にとって一番大切か。

それはその人の気質によって異なります。

自分はどれにあたるのか、考えることも重要ではありますが、

本質的なことは、そこを見極めることではない、とすわさんはいいます。

そんな自己啓発みたいなことをしてもしょうがなくて、わたしたちは行動してなんぼなのです。

3つのうち、まず誰もが、一番優先すべきことは、

実は決まっているんだ、といいます。

それは、一番目「音楽で稼ぎ生計を立てる」

です。

他の2つに思いがある人も、「稼ぐなんて・・・」と思う人も、

とりあえずまずは徹底的にここを実現するのが大事と言います。

なぜなら、「音楽を一生続ける」にも「有名になる」にも

「音楽で生計を立てることができている」ことが大前提になっているからです。

必ずしも、というわけではないでしょうが、これができていれば、少なくともあとの2つは

自然についてくるものなのだ、というわけです。

まずは、稼げということです。

メジャーに所属することもなく、ひたすら自営で全国まわって音楽生活を送ってきたすわさんの言葉です。

だからすごくリアルで重みのある助言です。音楽人として稼ぐことにきちんと向き合っている。そこに抵抗を持っていても仕方がないのですね。現状、資本主義の枠組みから抜け出すことは不可能なのですから。

曲をつくるよりも、バンドを結成するよりも、まず先にマネーをブロッキングする意識を変えることが必要なのではないでしょうか。

きれいごとや理想論で終わらないのが、この会合のいいとろこです。

改めてこの場が「音楽人として稼ぐ」ことにフォーカスしたディスカッションであることを確認しました。

Frekulさんの目標は、「ミュージシャンがファンとの関係だけでミュージシャンでいられる」ことを実現することです。

事務所ありき、中間業者ありきの音楽活動の在り方を変え、ミュージシャンたちの独立を支援する、さらにいえば、表現者の資本家とお金の支配からの脱出、復権を促すということです。

中間業者を取り入れるのはオプションであって、必須条項ではないのですね。

Frekul使用者のバンドさんは、着実にこれを実現しつつあるようです。

本当に音楽が好きなら、稼いでみましょう。

ライヴとCDだけが収益源の時代は終わりました。

サポーター募集、投げ銭、レッスン、WEBサービス、グッズ制作、カラオケ配信、楽曲提供など、自分にあったやり方があるはずです。

隠れ音楽家

Frekul Talk Live Vol.2 レポート第6回です。

今回は、jMatsuzakiさんのお話から。

jさんは、Frekulのシステム・広報担当ですが、本業はフリーのシステムエンジニア・セミナー講師・Webコンサルタント、
さらに月35万PVを誇る有名ブロガーという多彩な方です。
http://jmatsuzaki.com/whoami

jさんは音楽をやりたかったけど、ずっと後まわしにしていて月日は流れてしまいました。
しかしある日偶然見つけた「会社やめる宣言」しているブログ記事を見つけ、独立を決断。音楽をつくるため、フリーに。

といっても仕事はすでにプロフェッショナルのシステム開発・セミナー講師で回して、作曲はあくまで「作曲のための作曲」というスタンスでやる。曲を広めたいとか多くの人に聴かせたいという思いはそんなに強くなく、とにかく純粋に音楽をつくるということそれ自体を大切にするという姿勢です。

このように、同じ組織内であっても、音楽との関わり方は人によって違う。面白いですね。
Frekulの「ファンさえいればミュージシャンとして成り立つことを目指す」というゴールを共有してはいますが、

海保さんとjさんでは、音楽をすることによって得る感情とか、音楽によって実現する目的がまったく異なるわけです。

自分にとって音楽とは何か、ということの定義がしっかりできていると、必要なだけのリソースと状況だけを構築すればよく、
そのための要素が見えてくる。
jさんの場合はバンドをやったりライヴをすることが目的じゃないから、自分の世界を守るための仕事・仲間・経済状態のみあればよく、迷いのない行動ができるわけですね。

そして、ブログや電子書籍、Webツール講師、セミナー講師、システム開発などの自分独自のコンテンツをきっちり発明してます。
一見、ぜんぜん音楽をやっている用には見えませんが、
実はそれらはすべて、自分の音楽的ゴール実現のためにあるのです。
このような隠れ音楽家が、現代ではたくさんいると思います。

「自分にとって音楽とは何か」というコアの部分さえしっかりしていれば、迷わずに行動できる。それを体現している方だと思います。

広告戦略により、音楽の夢には「CD出したい」「売れたい」「有名になりたい」「もてたい」という感情が結びつけられることが多いですが、たいていは、何も音楽でそれを実現する必要がなかったりするので、途中でやめたり挫折したり迷うことが多いと思います。

音楽を何が何でも続ける人は、自分の描きたいことが「音楽でなければならない理由」というのが必ずあります。
音楽だけでしか表現できないイメージ。人の心に聴覚からダイレクトに非言語で働きかける情報、心への無意識的透過性、
言葉では伝わらない何かです。そういう目に見えない不思議な魅力が音楽の力です。

jさんはたぶんその理由をしっかり持ってらっしゃるんだと思います。
自分のやりたいことが本当に音楽である必要があるのか?それを一度、自分に問うてみましょう。

音楽の他にも何かやりたいことがある人は、本当にやりたいことの媒介がそれである必要があるのかどうか、じっくり確認しましょう。

やりたいことと得意なことは必ずしも一致しないことがありますから。

Frekul Talk Live Vol.2 まとめ

Frekul Talk Live Vol.2 レポート。今回はまとめです。
記事が気になった方はバックナンバーをご覧ください。

1.投げ銭だけで月25万

「ハンバーガーショップ専門のライヴ」というコンセプトでクラウドファンディングでお金を集め、全国ツアーを成功させたSleepy Head Jemie のすわだいすけさんのエピソード。

プロジェクト成功の要因は
・コンセプトがわかりやすい
・機材費がかからない(アコギ・ベース・歌だけ)
・チケットノルマがかからない(ハンバーガー屋でやるから)
・集客しなくてよい(お店には既に人が集まっている)自分たちの広報は無料のSNSだけ
・投げ銭しやすい(経済的に余裕のある人がお店には多い)

などです。そして一番のポイントは、月の収入の6割は投げ銭だということ。
それだけお金を投げてくれる「人」「場所」「環境」というコンテクストを構築すれば、
誰もが応用可能なスタイルだということを考察しました。

・機材費を少なく、ノルマのないライヴスペースでのライヴに特化したパフォーマンスを考案する
・何か専門の狭い分野に特化したコンセプトを掲げる

参考にしてみてください。

2.初任給10万円

インディー/メジャーデビュー当時からの貧困を越え、独立するまでのChoroさんのエピソードでした。
メジャーとセルフマネジメントのメリット/デメリットをまとめました。

メジャーに所属すると・・・

・レコーディング費が浮く
・強力なマーケティングで全国的に認知させてくれる
・メジャーという「権威」と「実力のお墨付き」がもらえる
・ミュージシャンに還元される対価は極端に少ない(常に赤字が予想される)

セルフマネジメントだと・・・

・あらゆる値段設定を自分で行うことができる
・稼いだ分だけ自分のお財布に入る
・企画・コンセプト次第で突き抜けたマニアックな人気を得る可能性がある
・大衆受け、万人に認知されることは極めて難しい
・広報活動を全て自分たちでやる
・事業を持つことができる(法人化)
・著作権を自己管理できる

これらはあくまでファクトであり、実際にどちらがよいか悪いかは、まったく個人の状況によるので、
その判断は基本的にしない(ほぼできない)というスタンスを確認しました。
自分で選択した方が、いつだって最善なのです。

3.風来のドラマー

海保けんたろーさんの昔のエピソード。どうやってドラムだけで生計を立てることができるようになったか、
リアルな話をまとめました。

・メンバー募集サイトでサポートの仕事を受けまくり、さりげなく報酬交渉する。
・個人レッスンも受け付ける。

というのが主なやり方でした。実力さえあれば、サポートだけでもやっていくことはできるのです。風来のミュージシャンとして。

問題は、それで本当にいいのか。その後に何をしたいのか、ですね。
海保さんが何をしたのか、それは見ての通りで、もはや語るまでもないほど言ってますが、
Frekulをつくって、ミュージシャンの活動収益化を支援しています。

4.3つの音楽欲

すわだいすけさんの発見した、音楽人がもつ「3つの音楽欲」について書きました。
それは
・音楽で稼ぎ生計を立てたい
・一生音楽をやり続けたい
・音楽で有名になりたい

です。誰でもがこのどれかの欲求を持っている。
すわさんの経験上、何はともあれ、
まずは一番の「音楽で稼ぐ」ことに集中して一点突破することが絶対大事ということ。後の2つは、それができれば必然的についてくるということです。
やはり創作活動における最大の問題は、どんな時代も「金」なのです。
そこから目をそむけることはできません。
重みのある話です。

5.モーツァルト属とベートーベン属

音楽家にみられる2つのタイプについてみてみました。

モーツァルト属は

・いわゆる天才タイプ
・多作
・作品つくり以外は無頓着
・人に受けやすい、認められやすい
・素直で明るい。光を放つ。

ベートーベン属は

・一生懸命なんでもやる
・作品以外のことも真剣にやる
・少ない作品に命を賭ける
・大衆受けしない。認められにくい。(が、コアなファンを持つ)
・少しひねくれ。陰のある感じ

という特徴があるように見られます。
自分がどちらか分析してみると、やるべきことが見えてくるのではないでしょうか。

6.隠れ音楽家

Frekulシステム開発・広報担当のjMatsuzakiさんのスタイルについてまとめました。

・jさんはバンドをやったりライヴをすることが目的じゃないから、自分の世界を守るための仕事・仲間・経済状態のみあればよく、迷いのない行動ができる
・そのために、ブログや電子書籍、Webツール講師、セミナー講師、システム開発などの自分独自のコンテンツをきっちり発明している
・一見、ぜんぜん音楽をやっている用には見えないが、
実はそれらはすべて、自分の音楽的ゴール実現のためにある

という在り方について、システム・ソフトウェアの専門家として一見ビジネスライクな生き方をしていると思いきや、外に見えないところで自分の音楽世界を追求し続けているという、そのGAPに深い人間的魅力があるということを述べました。
単にシステムが好きなだけなら海保さんたちとFrekulをやる必要は無いわけで、他の会社でもいいわけですからね。
音楽への情熱があるからこそ、質のよい外部活動ができるという内在的論理。やはり人間ておもしろい。

自分にとって音楽とは何かということをしっかり持っていると、
あらゆる外面的なことに説得力が出てくるという話でまとめました。

いかかがでしたか。どれも普通は聞けないようなリアルなエピソードだったでしょう。

非常に参考になりますし、何より場の力がすごい。みなさんのエネルギーが伝わってきます。
それに触れることが、一番の価値かもしれませんね。

以上でまとめをおわります。

1/15 Frekul Talk Live Vol.2
■ 登壇者プロフィール(五十音順・敬称略)

・海保けんたろー(SONALIO、Frekul)
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。 「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、
2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。

・すわだいすけ(Sleepyhead Jaimie)
8〜18才をアメリカで過ごし帰国後 Sleepyhead Jaimie を結成。アメリカンテイストな音楽性とバイリンガルな歌詞が特徴。代表曲「Hamburger Song」のリリースをきっかけに、
2012年にはハンバーガー店のみをまわるライブツアーを決行し、クラウドファンディングで購入したキャンピングカーで400日かけ全47都道府県の165店鋪を完走。このユニークな活動スタイルに注目が集まり、ネットメディアから全国ラジオテレビまで幅広く話題となる。
その後も独自の展開を継続するかたわら、次世代型アーティスト論を語るスピーカーやライターとしても活躍中。

・Choro(Jeepta)
ロックバンド「Jeepta」のギタリスト。音楽塾「Choroidea」代表。ゲストギタリストとしてライブやレコーディング、MVに参加するなど多岐に渡って活躍。
2010年、Jeeptaでメジャーデビューを経験。ROCK IN JAPAN FESをはじめとする大型フェスにも多数出演。
2011年、現役で活躍するアーティスト達が所属する音楽塾「Choroidea」を設立。他にも「choroさんレンタル」など、未来の音楽の形、アーティストとファンの新しい形を提案し続けている。

・jMatsuzaki(モデレーター)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。
その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、
仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報として参画。

Frekul Talk Live Vol.3 2014.2.12

Frekul Talk Live Vol.3 2012. 2.12 概要

2014年2月12日に開催されたFrekul Talk Live Vol.3のレポートをしていきます。

第一回は概要です。

登壇者は

モデレーター:海保けんたろー(SONALIO、Frekul)
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。 「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。


・川光 賢(フリーランス・エージェント)
1988年2月18日生まれ 広島出身
上京・進学を経て、2008年に大手レコード会社に入社。2009年より新人発掘を担当し、個性的なアーティストを多くプレゼンするも理解を得られず、2010年末に退職。
2011年、自ら手がけるべくレーベル&マネージメントを個人開業。同年末には当時23歳ながらカワミツエンタテインメントとして法人化し、インディーズで5000枚規模のヒットアーティストを送り出す。しかし、2013年夏の終わりに退職。
2014年、エージェントに個人で参入する。


・木村 優詞(クラウディ、stageAce)
1985年11月3日生まれ
専門学校卒業後、約3年のフリーター生活を経て、ソニー・ミュージックエンタテインメントSDグループに入社。
新人発掘業務として、年間で500を越えるライブチェックをこなす傍ら、閃光ライオットなど、オーディションの審査・運営に従事。
しかし2012年末、未来の行く末に限界を感じ、2年半のメジャー生活にあっさりサヨナラ。
現在は、ミュージックビデオ・CM制作を主とした映像制作会社、クラウディ株式会社に所属し、営業とアシスタントを担当しながら、
スマートフォン専用インディーズアーティスト向け映像配信サイト『stageAce』にて、営業・編成や、Facebookコラム、Twitterなど、いわゆる中のヒトまで担当。
その他多数のインディーズミュージシャンのディレクションやマネジメント、ライブイベント主催などもフリーで行っている、“自称:裏方系フリーランス”へ邁進中の28歳。
http://ameblo.jp/kimkim-air


・jMatsuzaki(Frekul、ブロガー)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報としてFrekulに参画。

です。いつもはモデレータがjさんで海保さんがアーティスト代表として話されていますが、今回はその役割が入れ替わってますね。

Frekulという会社(正式にはこれはサービス名で、社名は「ワールドスケープ」)には、このようにアーティストを主人格としながらも、それに付随した専門職(ビジネス・デザイン・システム)などを持っているマルチクリエーターが多いのです。
基本的にみなミュージシャンかアーティストであるという会社。素敵です。

で、ゲストのお二人もすごいです。

大手レコード会社、ビーイングとソニーにあっさり入り、あっさりやめて、「エージェント」という先鋭的なアーティストサポート業を日本でいちはやく始めている方々です。

論題を先にまとめておきましょう。

・音楽事務所での新人発掘の実情とは?
・集客10人しかできなかったシンガーを、たった一人でマネジメントし、どうやって500人動員まで成長させメジャーデビューさせることができなのか(川光賢)
・これからの音楽人の活動オプションはどれが最適なのか・・・レーベル/事務所/プロダクションorエージェントorセルフマネジメント(木村優詞)
・モーツァルトやカートコバーンが死ななくてもすむ世界をつくる(jMatsuzaki)
・エージェントという新しい仕事の認識について

などです。で、先に結論も言っておきますと

・音楽事務所は新人発掘担当を各地のライブハウスに送り込んでいるが、正体はなかなか明かさない
・新人アーティスト採用基準は、年齢(若さ)と「うちの事務所らしいか」
・売れないシンガーを爆発的に広めたソーシャル戦略は「プレミア感・売れてる感・実力ある感・ブランディング」の演出というレトリック法
・事務所に入るか、エージェントと組むか、セルフマネジメントでいくかは、「スタイル次第」
・アーティストといえども、ビジネス感覚を持っているヤツと組むのは大事

などという感じです。

今回も業界の内情にかなり踏み込んだ内容となっています。何かと良いイメージがない大手レコード会社、その実際は?

衝撃の内容をお届けしていきます。

音楽事務所のアングラ捜査

今回からFrekul Talk Live Vol.3 詳細レポートです。

まずはゲストの音楽事務所出身エージェントお二人から聞く、音楽事務所という得体の知れない組織の内情打ち明け話から始まりました。

川光賢さんは元ビーイング、木村優詞さんは元ソニーミュージックですが、お二人とも新人発掘の仕事をされていましたので、

新人(アーティスト)発掘は実際どうやっているの?ということが話の中心でした。



新人発掘の部署というのは、若手社員育成の場でもあるらしく、だいたい新入か若手の社員ががんばってやることになっているそうです。

で、やり方。

とくに特殊なことはなく、普通にAudio Leafというインディーズバンド登録サイト(当時はまだ「生きていた」という言い方をしていましたw今も影うすいですが一応あります)を一日中あさり、

良いヤツがいたら候補にあげておく、というリサーチをえんえんとやる。もう一日中Audio Leaf 見ている日もあったそうです。



わたしもよく「Audio Leafみたんですけど〜しませんか」というメールがきます。別になんにもマーケッティングとかしてないのに・・・

それは、色々な事務所とかハウスとかイベント業者の新人発掘マンが、仕事でやってたわけです。納得ですね。

仕事ですから、いくら文面で「カコイイデスネ」とか言っても、どこまで誠実かはわかりません。ノルマを達成したいだけの営業マンだっているでしょうから。

しかし、ビーイングやソニーなどの大手もこういうことをやっているのだという事実は、驚きではないでしょうか。ちゃんと見てくれているんですね。



次は、ネット上で目星をつけたヤツのライブに足を運びます。

よく「ライブハウスで演奏終了後にナントカ事務所の採用担当に声をかけられてデビューした」という話を聞きますが、

それって普通に起こり得ていることだというわけです。以前紹介した音楽スクール経営者のギタリストChoroさんはJeepta在籍時ビーイングからデビューしましたが、まさにハウスで声かけられたのがきっかけ、と言っていました。

大手のレコード会社の採用担当者が、普通に場末のライブハウスでお客さん少ない中がんばっているミュージシャンのライブを見に来ているわけです。

木村さんは一日4回もライブ調査をし、年500回も無名ミュージシャンのライブをみて、その度にレポートを書いて会社に提出していたそうです。下手したら、客が自分だけの時もあったとか。

ライブハウスを見回りにきているメジャーの採用者はきちんと存在しているということでした。ここは意外にも夢のある話でしたね。

近年疑問視されがちなライブハウス出演も、全然チャンスがないというわけではなかったのでした。



ただ、実際に声をかけはしてもすぐには正体を明かさないというところが大手らしい。

控えめに「たまにイベントやってるものですけど」ぐらいの感じで、正体を偽って近づく戦略らしいです。

で、会社にも相談して、本当に「いけそうだ!デビュー!」という許可が出たとき、やっと「じつは・・・」という感じで打ち明ける。「あまちゃん」に似たような役回りの人物がいたような気がします。松田さんがやられていた。

これが現実にもあったということ。何ともドラマティックです。

これが、新人発掘事情。けっこう良い話でした。事務所はちゃんとやってくれているわけです。



ですが、お二人はすぐにこの仕事をやめます。なぜでしょうか。

いろいろわけはあるのですが、大きな理由は「事務所が良いっていうアーティストと自分が良い思うアーティストは違うことに気付いた」です。

アングラ調査をしていて、自分個人としてはすごく好きなんだけど、会社としては色が違うということで、上からは許可がでず、デビューさせられないアーティストに遭遇するようになったからです。

発掘担当はデビュー候補のアーティストを見つけたら、会社の方にプレゼンをするわけです。で、そこでの採用基準は、ぶっちゃけていえば「ソニーらしいか」「ビーイングっぽいか」「若いか」など。

担当としていくらその子に思い入れがあっても、「うーん、確かにいいけど、こいつはソニーじゃなくね?」という感じで落とされる。

「残響レコード受けてみれば?」とかなればまだましですが、

既存の事務所でうまくマネジメントできそうなところも見当たらないとなったら、そこでサヨナラ。だから、世の中には実力はあってもデビューにいかないアーティストが多いのではないでしょうか。

「うちじゃないよね」「残響っぽくね?」というジャッジがでた時点で、おわり。

結果的に、事務所の過去の事例の枠を出ないようなスタイルのアーティストばかり集めていくようになるというわけで、チャレンジ精神がなくなってしまうわけですね。

川光さん、木村さんはそこに疑問をもったのです。そして本当に自分たちで売るために、大手レコード会社の職を捨てました。

川光さんは、実際に新人発掘をしているおり、「こいつはすげえ!売れる!」と思ったシンガーを発見するも、いざプレゼンしても会社からは一切無視されたので、

「じゃ、自分でやっか」ということであっさりやめて独立。そのシンガーのエージェント業をはじめ、本当にファン10人の状態からライブ500人動員・メジャーデビューというところまで売っていくわけです。

音楽的に実力は変化していないにもかかわらず、専属のエージェントがついただけで、ここまでのブレイクです。

このあたりの詳しい話を次回以降やっていきます。

今回の話では、音楽事務所がどのように新人を見つけ、採用しているのかというところを踏まえておいてください。

ポイントは「採用担当が良いと思っても上の許可が出ないとデビューさせられないもどかしさ」です。

その上で、「エージェント」という個人単位のアーティストマネジメント業を考察すると、お互いのメリットやデメリットが見えてきます。

Create Your World!

女子シンガーのジレンマ

Frekul Talk Live Vol.3 レポート第3回です。

女子シンガーのジレンマ

ということですが、これは現象の名前です。

これは現象の名前です、とは変な説明ですが、要するに「音楽活動あるある」です。

何がジレンマなのか?

女性シンガーには特有の問題があるのです。

川光賢さんがエージェントとしてマネジメントしたのは、「さめざめ」という女性ソロシンガーですが、

川光さんが彼女をどうやって売っていったのかという話の前に、準備としてこの話がされました。

女子シンガーによくある話です。

駅前や繁華街などで、ギターやキーボードを弾いて路上弾き語りをやっている女の子シンガーを見かけたことがありませんか?

それ自体はよく見ることだと思います。では、彼女の周りにお客さんは集まっているでしょうか?

立ち止まって聴いてくれている人がいるなら、その人たち(客層)をよく観察してください。

若い男性が多いですか?

女性が多いですか?

高校生?大学生?

おばさん?

そういう人たちが多くいたら、幸せです。



しかし、実際には・・・






中年のおっさん

がたくさんきてしまうのです。

若い女の子が一人で一生懸命うたっている姿にズキュゥゥゥゥンときてやってきます。

最初の一人がおっさんだったら、次からもおっさんです。

おっさんしかまわりにいないと、若い子や女性は集まってきません。本当はすごく曲がよくて聴きたいと思っていても、

まわりにおっさんが集まっていたら、近づけません。

歌い手は誰のための曲を書いているのでしょうか。きっと同年代の若い女の子の気持ちを代弁しようと歌っていることが多いはずです。恋とか、青春とか。

でも、声を届けたいファンをさえぎるように、おっさんが集まり、おっさんの見せ物になり、おっさんのアイドルになってしまう。

ファンになってくれるのは嬉しいし、CDを買ってくれたり、ライブにきてくれたりして、投げ銭もくれるから、大切な存在ではあるのだけど・・・

あの視線、あの態度・・・本当にわたしの音楽を良いと思って応援してくれているのかしら?

ビックリマンチョコみたいに、CDはおまけで、その他のあんなことこんなことが目当てじゃないかかしら・・・何回も握手してくださいとか言われても困るのに・・・
握手券をつけるのはアイドルだけなんだって知らないのかな?わたしってアイドルと思われているのかな・・・

・・・などという困ったことに陥る!

一度この状態にハマったら、相当きついみたいです。

正直なところ、同世代の若いファンにきてほしい。でも皮肉なことにおっさんのファンのおかげで生計が成り立っちゃったりするわけで、否応無しに感謝、サービスするしかない。どこかひきつった笑顔・・・

これを突破するためには、大胆なモデルチェンジをしてわざとドン引きされるようにするか、きてほしいファン層に直接アピールするしかありません。

しかし、そのやり方がわからずに、いつまでも同じところで迷っている純粋な女子シンガーが多いそうですね。

今日もまた思い機材を背負って駅前へ、女の子のために歌う恋愛曲・・・でも、聴いているのは・・・orz

これが女子シンガーの悲劇です。たぶん、たとえうまいこと若いファンの目に留まっても、続けていたら必ずおっさんもきてしまうでしょう。それはそれで良いですが、同じくらい本命のターゲットを集める工夫もしていくことが試練です。

女性の弾き語りの人は路上ライブが嫌いとよく言いますが、それにはこういう理由があったのです。

弾き語りの女子シンガーに一人も客がいなかったら要注意です。最初の一人の客で、その方の運命が決まってしまうことがあります。

もし、若いあなたが本当に良いと思えたら、気軽に足を止めてみてはいかがでしょうか。その時点でファンにならなくてもいいのですし、CD買ってとかいきなり言われることはまずないですから。

この寒い中、思い機材を背負ってひとり自分の作った歌を歌いにくる女の子の気持ちを考えたら、数分間でも止まって聴く価値はあるはずです。これは同情ではありません。

何が彼女をそこまでさせるのか?ということを発見するだけでも価値があります。強さでもなく、努力でもなく、自信でもなく、自分はこれをやるんだ!という超越的な意思、何かやむにやまれぬ決意があって、彼女はそこにいます。それがアーティストです。

それは人間のエネルギーです。

女の子は、一人で歌っているだけでは存在できないけども、あなたが目の前に立った瞬間、世界とつながることができる。これって素敵じゃありませんか?

(かわいくなかったらどうしよう?とかいう人のために一つ言うと、一人で路上ライブをしている女の子はなんとなくかわいく見えてしまうという現象があります・・・というかそこを目当てで見ないように!それじゃおっさんと同じです。この話でいうおっさんとは年齢ではなくマインドのことです。)

さて、川光さんがマネジメントしたさめざめさんもおっさんハーレムの洗礼を超えて成長していったそうです。どうやって突破したのか?そこが川光さんの手腕です。

次から見ていきましょう。

大手レコード会社をやめて

Frekul Talk Live Vol.3 レポートをしています。第4回は、アーティストエージェントとして独立した川光賢さんのお話。

たった一人のマネジメントで、アーティストのライブ動員を50倍にさせ、メジャーデビューまでさせてしまったお話です。

この物語が面白いので、川光さんのエージェントとしての具体的な話よりも先に、ストーリーから紹介します。

戦略やテクニックの背景には何があったのか?そこを理解していないと技術は使えませんから、ご理解ください。

いったい何をしたというのか?こんなことができるなんて、誰が予期しえただろうか?

川光さんがエージェントをしたのは「さめざめ」という女性シンガー。

http://samezame-official.com/discography/index.html

コンドームをつけないこの勇気を愛してよ
ぐるぐる禁断ラブ
愛とか夢とか恋とかSEXとかV

など、過激な曲が特徴です。

川光さんは新人発掘をしていたビーイング在籍時に彼女を発見しますが、上にプレゼンしても誰も反応しなくて、受け皿がなかった。

自分が良いと思ったシンガーを見つけても、いちいち許可をとらないとデビューさせられないもどかしさに、川光さんは不満を覚えました。

実はそもそも、ビーイングには「新人アーティスト発掘」などという仕事自体がありませんでした。川光さんが「やりたい」と言って、勝手に社内で始めたことだったのです。

ですが、入社して間もない新人社員で、なかなか上の許可が出るようなアーティストも見つけられない。せっかく見つけた良いシンガーだったのに、結果はまたボツ。

さめざめさんの歌詞を見たときに「これは同年代の女子に受ける!」と確信したものの、どうしても企画が通らない。

新人のくせに勝手に始めた仕事で、まだ結果を出してないから焦ってもいる。彼女だったらいけると思うんだけどな〜どうしても彼女を売りたいんだけどな〜・・・

上がマネジメントできないならおれがやるのにな〜・・・

ということを先輩に相談したところ・・・

「じゃあ会社やめれば・・・?」

と言われたそうです。

で、「はい」といってやめました。それからいきなりエージェントとしてさめざめ専属レーベルを立ち上げました。まだ何も始まっていないのに。

その決断の早さはどうですか。

中学生の頃、B'zにはまり、「将来は絶対ビーイングに入る!」と夢に見た川光さん。

音楽業界に入るのだから、とりあえず東京に行こう!ということで適当に関東圏の入り、

ビーイングに入るのだから、アーティストのマネジメントを知っといた方がいいだろうということで、これまたささっと専門学校に入り、

20歳であっさりビーイング入社。

憧れの会社で働くことができるのは、それは幸せだったはずです。

中学生の頃からの夢だったのですから、それは嬉しかったはずです。

でも、人生は続くのです。川光さんは古い夢を更新し、新しい夢を見つけ、よりにもよってまったく稼げる見込みも無い音楽起業の道に踏み出しました。

それからさめざめさんを爆発的に売るまで、1年2年くらいはかかってますが、それでもそんなもんです。

実績が注目を呼び、次のアーティストのマネジメントの仕事も決まっている。

普通の人だったら、できるわけがないと言ってあきらめそうな道ですよね。

普通の人だったら、憧れを抱いて入社した大手レコード会社をあっさりやめたりはしません。

音楽業界にとっては、まったく予想外の事例なわけです。

予想外だったからこそ、注目されるわけですね。でも、これからもしエージェントという仕事がはやって、川光さんに次ぐアーティストと個人エージェントのタッグが売れる例が出てきたら、それが普通になるわけです。

エージェントという仕事が広まるかどうかは未知数ですが、少なくとも海外では広まっているということでした。言葉自体も海外からの輸入ですしね。



と、文面で書いてみれば感動的なサクセスストーリーのようで、すごくがんばって栄光を勝ち取ったように思われそうですが、

実際会って直接話を聞いたわたしとしては、少し印象が違います。

なぜなら、この話をしている時の川光さんは、その態度からも言葉からも

「つらかった〜」「すっげーがんばったんだよな〜」というオーラがまったくなかったからです。

すごく楽しかった遊びのことを話しているような、中学生の時にドラクエ3にはまって毎晩徹夜していたことを語る教育実習生のような、とてもお茶目な感じだったのです。「自分はすごい仕事をやりとげたんだぜ!」という自負すらないような感じ。

きっと、そのアーティストという存在が好きだという気持ちがあって、純粋に、この子を世の中の人に知ってもらいたい!という一心でやり続けただけなんだと思います。

集客50倍!とかメジャーデビュー!とかいうことは、考えてなかったんじゃないかな?そう思います。

結果的にそれは実現しちゃったけども、実際のところあったのは、そういう出世欲のようなものを超越した情熱。

自分が本当に良いと思えるシンガーだから、もっと世に広めたい!広まるはずだ!という確信。ただそれだけでしょう。

でなければ、安定した大手レコード会社の職を捨てて、社内の誰も良いと言わなかったシンガーのサポートを一年以上もやるなんてことはできません。

この話は奇跡でも何でもなく、当然起こるべきことが起こっただけのことなのです。こんなのはまだ序の口です。

川光さんもさめざめさんも、もっともっと成長して、もっとすごいドラマをつくっていくことだと思います。

「やっていることが好きでたまらない」という情熱はすごく強いです。

次回からは、実際に川光さんが何をしたのか?という具体的なワザを紹介していきます。応用もできるワザです。

川光さん、けっこうイタズラ好きで、巧妙なトリック(w)がお好きなようです。

Create Your World!

エージェントの手腕

Frekul Talk Live Vol. レポート第5回です。

エージェントの川光賢さんが、女性シンガーの「さめざめ」さんをたった一人でマネジメントし、たった数年でファンを50倍にまで増やしメジャーデビューまでもっていた手腕とは?

それは、何とも地道なセコ技(w)の積み重ねでした。

今の時代らしく、ネットを駆使してコツコツとゲリラ活動を繰り返していっただけなのです。

考えてみれば当然ですが、タッグを組んだ時点のお二人は、単なる無名のミュージシャンとエージェント。人脈も資金も大したことはないわけです。

手元にあるわずかな武器、それはさめざめさんの強烈な歌詞のメッセージ性と、川光さんの彼女を売りたいという情熱、あとはインターネットです。

わたしたちとほとんど変わるところ無い場所からスタートしたわけです。

川光さんは、ビーイング在籍時の経験と直感を活かして、ネットを駆使したアピール戦略を展開していきます。

まずは、ネット上の活動拠点所をMixi(当時はまだ生きていたw)とYoutubeだけに絞ると決めました。MyspaceとAudio Leafは解除し、注目の分散を防ぎ、居場所をわかりやすくしたのです。

ここからはもう、言葉のトリック・レトリックの連続コンボです。

ここからは全部川光さんが行った戦略ですが、アーティスト本人は思いついてもやりたくないだろうという感じのマーケティングのセコ技テクニックです。

こういうことに特化して、実際にやってくれるという存在として、エージェントというのは非常にありがたい存在だなと思いました。


以前も話したように、女性シンガーはおっさんファンに囲まれると悲惨なことになるので、

おっさんが集まりやすい路上での弾き語りはやめ、きちんとメッセージを届けたいファン層にアピールする必要がありました。

さめざめさんのファン層は10代後半から20代の若い女性。そこで、若い女性ファンが多いバンド、たとえばチャットモンチーなど(あくまで例です)のMixiコミュニティに侵入し、そこの掲示板に、

「いま個人的に注目しているアーティスト」のようなスレッドがたいていあるので(なければつくって)、そこに書き込みをします。

何を書くかというと、一通りチャットモンチーレベルの有名どころのアーティストを書いた後、さりげなく最後に「さめざめというシンガーがまじやべえ。歌詞がやべえ」などと書いておくのです。

すると、見ている人は、「ふーん、だいたい知ってるわよ・・・ん?さめざめって知らないぞ・・・」と引っかかります。

川光さんはそこで巧妙にも、さめざめさんの激推し曲のYoutubeのダイレクトリンクを貼っており、釣った女の子たちをYoutubeチャンネルに飛ばします。

つまりステルスマーケティング的なことをやるわけですが、それは置いといて、これをいろいな掲示板やコメント欄に書きまくっていれば、Youtubeに飛んでくる人が増えます。

狙ったファン層のいるところで書き込みをするので、きちんと狙った女の子のファンがYoutubeにやってきてくれます。

Youtubeのほうにも仕掛けがしてあって、チャットモンチーのMixiやYoutube動画から飛んできた人たちが増えることによって、

まださめざめのことを知らないチャットモンチーのリスナーのYoutube動画のおすすめリンクに、さめざめの動画が表示されるようになってます。タグ付けとかもしているのでしょう。

さらにYoutubeの楽曲動画の概要からさめざめ自身のMixiコミュニティに飛べるようになっています。

そこで、Mixiのコミュニティに入ってくれた人が濃いファンとなり、ライブにきてくれたり曲を買ってくれたりするようになったのです。

こんなことを地道に続けているうちに、一日10人ぐらいの規模で少しずつ増え、ついには500人にまで増えます。

ただ、次はここからライブの動員につなげるというところが大きな課題でした。

すでにソーシャル戦略で「ホット感」は演出できているので、次は「ライブに行きたい感」の演出にかかります。

どうやったのかというと、最初の目標として、まず小さなアコースティックワンマンライヴをやって、30人だけでいいから集め、チケットを完売させることにしました。

すでにコミュニティにはファンが増えているので、30人ほどを集めるのはできます。それでも30人は少ないですが、ここで重要なのは数ではなく、

「チケット完売」という事実を作ることでした。

「Sold Out !」のインパクトというのはかなり強くて、それだけで「このアーティストのライブはやべえ」というイメージがつきます。

現代は有名なバンドでもSold Out というのはほとんどないので、売り切れが毎度当たり前のとなると、かなりプレミア感がでるのです。

それに加えて、次回のライブからも「人数限定」や「締め切り間近」「もう少しで販売終了」などというリミット感を演出し、

「この人のライブチケットはなかなかとれない」というイメージによって、普段ライブにこない人でも呼ぶことが可能になります。

本当はチケットあまってて、当日でも普通に予約できたりする状況であっても、必ず販売の締め切りは設け、「売れている感」というのを出すのです。

そんなこんなで無事にライブ動員数も増えてくると、少し有名どころのバンドが集まるライブイベントなどの出演枠を掴めるようになります。

そこでも巧妙な演出。たとえ自分が主役級でないとしても、有名なバンドやシンガーと同じイベントに出るということを示すために、

宣伝ではそういう人たちと一緒に名前を並べます。それだけで、同じくらいの実力ある人なのだと、ファンは思ってくれます。権威の委譲。

有名大学の学園祭では有名アーティストが呼ばれりしますが、インディーでそこそこ活躍しているバンドはそのオープニングアクトで呼ばれたりします。

そこで、オープニングアクトという言葉を使ってしまったら、力関係を明らかにしてしまうので、あくまで「同じステージでやる」という事実だけを自分たちの宣伝メディアで述べるのです。

すると、人は勝手に同じくらいの実力者として見てくれます。

これは、事実を述べる言葉の使い方で相手に勘違いさせるという、「ウソをつかずにウソをつく」方法。外交官もやってるズルイ技ですが、手段なんか選んでいる場合ではありません。強力なカードは惜しまず使います。

そしてある時のライブイベントで、チャンスがきました。コメンテーターに音楽ライターの鹿野淳さんがいたのです。

そこでのライブで印象づけることに成功し、鹿野さんがTwitterで「さめざめやべーかった」とつぶやきます。

それだけでは終わらず、川光さんは新作アルバムのカバーの印刷ミスを利用し、その白枠に鹿野さんのこのツイート画像をコピーして貼るというアイデアを思いつきます。

これによって、非公式でありながらも、有名人の「お墨付き」をもらったということをアピールすることができたのです。

ここまでやれば、「本物感」はばっちり。ファンは勝手に増えます。

このような戦略を駆使して、たった数年でメジャーデビューまで持っていくことができました。



音楽的なスキルはそれほど短期間で進化するものではありません。にもかかわらず、短期間でここまで爆発的に売れたのは、

川光さんのチャンスを逃さない嗅覚と、地道な戦略によるものです。

そしてもちろん、大前提として、さめざめさんの強烈な世界観とアーティスト性があってこそ。

そもそもこれがなければエージェントがどうこう以前の話なわけですが、

あるのだったらもう準備は整っている。エージェントの戦略で相応の活躍と市場を得ることができるのです。

お二人はその可能性を証明されました。

文面だけみると、川光さんがたくみに言葉のトリックでリスナーをだましていったような感じがするかもしれませんが(それも間違いではないですが)、

さめざめさんの実力が本物だと心から確信できているからこそ、そこまでやることができたわけです。いや、やるのが必然だったのです。でないと、素晴らしい才能が埋もれたままになってしまう。

やるべきことをやれば、ちゃんと活躍はできる。アーティスト自身が苦手なやるべきことを肩代わりしてくれるのがエージェントです。

事務所と違って、所属関係が逆になるので、アーティストの音楽性に口を突っ込むようなこともしません。エージェントは惚れ込んだアーティストに自分から所属を申し込み、

本人には音楽に集中してもらうのです。

理想的な協力関係だと思いませんか。

このような形態が、今年からも流行っていくでしょうか。注目していきましょう。

現代バンドマン3つの選択

k Live Vol.3 レポート第6回です。テーマは、

木村優詞さんにきく、現代バンドマンのマネジメントはどれがいいのか?

現代の音楽活動状況はカオス化してしまったので、過去のように「メジャーレーベルや事務所に受かって定期的にヒットソングをつくっていく」という王道だけがバンドマンが音楽を生業にしていく道ではなくなりました。

今はインターネットがあるので、セルフでも充分な収益を上げるほどの運営ができ、またエージェントというセルフマネジメントを肩代わりする小さな事業者も出てきました。

よって、現代的な音楽活動の主な広報手段は、

事務所orセルフorエージェント

主にこの3つです。

創作活動と経済活動のバランスがとれれば、実際はどんなスタイルでも良いわけですが、メインはこの3つになるでしょう。

ネット以前はセルフでは生き残れませんでしたし、エージェントなんて人たちはいませんでした。この新たな2つの方法が、音楽活動の可能性を無限に拡大し、また混乱させてもいるわけです。

実際のところ、ミュージシャンはどれを選択したら自分にとって一番よいのか。映像制作を中心としてエージェント業を展開している元ソニーミュージックの木村優詞さんに聞きました。

答えをまとめると、どの手段を選ぶかという基準は、自分自身の方向性や音楽に対する姿勢をもとに判断することが大切、ということです。

ネットのおかげでセルフでもやっていける可能性は十分あるし、エージェントという人たちも出てきたし、事務所というのは何かうるさい制約が多いし・・・うーん、どれがいいんだぁぁぁぁぁぁうわああああ!

となるのではなくて、まずは自分自身が音楽とどういうつきあい方をしたいかを見極めることが大切なのです。

できるけ曲を売りたい、多くの人に届けたい、有名になりたい、という思いが第一に強いのであれば、そのゴールを一番達成しやすい手段はメジャー事務所に入ることだとすぐにわかるでしょう。

言うまでもないことですが、どんなにネットを駆使して、個人単位の力で影響力を拡大することが可能になった時代とはいえ、それでもメジャークラスの資本の市場への広報力リーチ力には絶対に勝てません。

大衆指向なのであれば、素直にメジャーにいけばいいのです。

一方、多くの大衆に理解されなくともいい、自分の音楽性を追求し続ける上で共感してくれるファンを大切に、ミニマムにやっていきたいというタイプの場合、メジャーを目指す必要はありません。今までは、そんな人であっても、

メジャーを目指さなければ餓死するしかありませんでした。

しかし今はなら、餓死する必要はなく、セルフでやるかエージェントでいくかを悩めば良いというだけになった。それが普通の時代になった。

で、セルフかエージェントかの選択基準も簡単。

メンバー内にコミュニケーション能力が高いヤツもしくはビジネス感覚に秀でているヤツがいれば、まずはセルフでやってみて、どうしてもうまくいかなかったらエージェントでいくという流れが自然。

そういう対人関係の喜びや経済的指向というのが一ミリもなく、本当に音楽的なこと以外に手を出すと吐き気がして自殺したいならば、エージェントと組むしかないでしょう。

いずれの場合も、少なくともメジャーに入れなかったりたくさん売れなかったりしても、絶望して解散や自殺に走ることはないわけです。やれることはいくらでもあります。

やれることがあるのにあきらめてしまう場合は、そもそもそんなに音楽が大切じゃなかったというだけのことなので、他のやりたいことを探しにかかればいいわけです。

質問の答えに関しては以上です。

このように、どの選択をするかは自分の心と向き合ってはじめて答えがでてくるものです。

どれが有利だとか、どれが注目だとか、新しい方法だとか古い方法だとかというのはあくまで二次情報でしかないので、それらに賭けたり便乗したりしようというヨコシマな心で音楽をやるなら、きっとどれを選択してもうまくいきません。

それぞれの手段に良い面と悪い面はありますが、どれが一番良いとか悪いとかいうのはなく、手段自体は音楽活動というカオスの海からかろうじて浮上した可視可能な事実の表象でしかありません。

要するに価値としてはどれもイーブンということです。

だから、ますます自分の音楽への情熱が問われるわけです。今までなら道は一本だったらから、自分と深く向き合わずともにそこを突っ走っていればよいから、ある意味楽だった。

しかし、選択肢が増えたならば、自分の可能性を最大化し、もっとも目標実現に適した手段を自分で選ばないといけない。思考力と内省力が問われているわけです。

もしかしたら、こういう選択肢が増えたことで、バンドや音楽を本格的にやっていこうという人が増えるよりは、逆にやめる人が多くなるかもしれません。

なぜなら、本気で自分と向き合わなくてはならなくなるから。自分にとって音楽というのはどんな存在なのか、ということを考えなくてはいけなくなるから。

有名になりたいのだったら、音楽でなくともいいし、自己表現を追求したいのだったら、やっぱり音楽以外に手段はあるし、自分が自分であるための存在証明が欲しいのでれば、なおさら音楽などという難しい方法でいくこたあないわけです。

今の時代、音楽を本気でやりたいなら、自分の作品に投影するテーマとか、表現形態としての在り方を具現化する手段として、それがどうしても音楽でなければならない理由を証明できなければ、そもそもアーティストとしてのアイデンティティに致命的な欠陥をさらすことになるのです。

音楽という表現形態に特徴的なこととして、

他者に再現可能であること
時間芸術であること
解釈の多様性があること
共有に刹那性のあるライブが可能であること

などがあります。

とくにライブは大きい。同じ曲をやるのであっても、その時その場所そのメンバーそのオーディエンスで体験されるライブというのは、二度と体験できない。だから、体験した人の心に深く刻まれ、大切な思い出として唯一の価値として残ることになるのです。きっとここが決定的な魅力となって、音楽に身を捧げる人が多いのだと思います。

とにかく自分の人生なわけですから、自分の追求したいことがもし音楽以外でもできるのであれば、音楽でなくともいいかなという場合は、むしろ音楽をやるのはよくありません。

自分のしたいことを間違った方法にこだわって追求しようとすると悲劇を招きます。そういう意味で、選択肢の増えた時代というのは、幸せでもあり、悩ましい時代でもあるのです。


最後、少し大きな話になりましたが、別にここまで真剣に考える必要のない人もいるでしょう。ただ音楽が楽しいだけ。そういう人は、それでいいのです。堅く考えずに、音楽は自由なのですから。

何が大事かというと、それが人生問題に絡んでくる選択である場合には、真剣に考えなくてはいけないということです。

音楽が人生問題に絡んでくる人は少数です。その少数の人であれば、上記のような真剣さを持って選択をしないとダメでしょう。

そうでない人は、Just Enjoy! ひたすら音楽とともに楽しさを追求しましょう。

おわり。

エージェントの定義

おとやガイドです。中村大輔です。

Frekul Talk Live Vol.3 のレポート第7回です。

今回はエージェントの定義ということについて少しお話します。

これまでエージェントエージェントと、さもこの仕事が昔から当たり前に存在したように話が進められてきましたが、

そもそもエージェントという概念自体、アメリカから輸入されたばかりで日本の音楽業界にとってまだはっきりした定義がきまっている仕事ではないわけです。

ですので、そこのところを川光賢さんに尋ねました。

すると、川光さん自身もそんなにはっきりした答えを持っているわけではないとのこと。

きっと、自分のやっていたことが、たまたまエージェント業と呼ばれるようになっただけで、狙ってエージェントをやろうと決めていたわけではないのでしょう。

ただ、事務所やレーベルと大きく違うところはいくつかあるので、その差異によってある程度「エージェント」という人物像についての暫定的な定義はできそうです。

それはこうです。

・個人または極少人数のマネジメントチームであること
・事務所のように、アーティスト側が所属するのではなく、エージェントがアーティストに所属するため、対等の関係である
・音楽的な方向性に一切口出ししない
・といっても場合によっては、広報・集客などのマネジメントだけでなく、制作やデザインなどにも関わり、あらゆる面のプロデュースを総合的に行うこともある
・中間業者を通さず、DRM的な手法でもって効率よく利益を回収する

などなど、大手が分業で大規模にやっていることを、一人で全部ミニマムに行うという印象です。まさに才能ある人のためのトータルプロデューサーという感じ。

以上が一応今の時点の暫定的な特徴ですが、まだまだ例が少ないですので、これがエージェントだと言い切ることはできません。これからどんどん新しいスタイルがでてくるかもしれませんし、

アーティスト自体が主体のエージェント集団なんてのも出てきそうです。

ただ、個人単位で少人数、中間業者排除、最小限の資本での展開という部分はきっと変わらないであろうと思います。大手は完全に低迷状態なわけですから、それとは対照的な形態と戦略が用いられる。そのセオリーは変わらないでしょう。

音楽業界からの認識も曖昧で、実際のところ「エージェント?何じゃそれ?」のような見方をされているらしいです。

そんな状況下でゲリラ的な活動をやっていく。ですので、よほど信頼するアーティストでないと仕事は引き受けられないようです。

川光さんのスタンスとしては、スゴイアーティストを育てるというのよりは、もとよりスゴイのに埋もれているアーティストを世に売り出して、デフォルトでファンがある程度ついた状態にしてから、

強くてニューゲーム状態で大手に紹介する、という方向でやっているようです。

興業として採算をとりたい大手会社の心理をよく理解しておられる。彼らは素材を育てる暇がないので、いきなり実績とか利益回収率があっててっとりばやく売れるヤツしか受け入れる余裕がないでしょうから、

強いステータスの証明がついているアーティストを毎回紹介してくれたら、そりゃビジネスになるでしょう。何か人身売買のような言い方ですが、そんなこといったら教育も大学もすべて人身売買センターです・・・

川光さんは、惚れ込んだアーティストとはいえ、いつまでも自分の懐に抱え込んで金儲けしようとはしてなくて、ちゃんと終わりを決めているんですね。

一人で面倒見切れるキャパシティには限界がありますし、どこまで一対一でアーティストとつき合ってゆくのかという部分がはっきりしていないと、いろいろ面倒なことが起きそうですから、賢いやり方だと思います。

以上、暫定的なエージェントの定義でした。川光賢さんと木村優詞さんの活躍例から引き出した特徴ですので、いまのところこのお二人の仕事内容という、やや具体的すぎる情報に頼る定義です。

思うに、エージェントという職業も、アーティストと同じように、各々が独自のやり方や個性を発揮してユニークに活躍していくスタイルが発生していくのではないでしょうか。

誰かと同じようなことをしてても生き残れないのは自明なわけですから。

最低限共通する特徴として、上に挙げた点を満たしていれば、エージェントと呼べるかもしれません。

とくに、アーティストがエージェントに所属するのではなく、エージェントがアーティストに所属するという関係は大きな特徴でしょう。

何となれば今まで契約関係として一番下に位置していたアーティストが、ビジネスにおいて対等な契約関係を結べるようになったというのは、史上初めてのことではないかと、密かに感動しております。

21世紀は虐げられてきた表現人たちの復権の時代となるかもしれません。

Frekul Talk Live Vol.3 まとめ

Frekul Tallk Live Vol.3 おさらいです。

1音楽事務所のアングラ捜査
音楽事務所はどのように新人アーティストを発掘しているのか?
ネットで探しまくってライブに潜入するという、すごく普通のことをすごく頑張ってやっているだけ、という実体を知りました。

2女子シンガーのジレンマ
女子シンガーが陥る「おっさんハーレムの罠」について考察しました。
問題としては女性だけでなく、カコイイ男性でも注意しなければならないことですね。

3大手レコード会社をやめて
いちはやくエージェントとして成果を出した川光賢さんの物語。夢だった大手レコード会社をたった数年でやめ、エージェントとして独立するまでの道のりを明らかにしました。
自分の信じるアーティストを何としても売りたい!という情熱が最大のエネルギーでした。

4エージェントの手腕
川光さんがある女性シンガーを爆発的に売った具体的な手段を解説。ネットを使ったゲリラ的な活動のかけ算で成果を出していきました。

5現代バンドマン3つの選択
「エージェント」の登場によってますます混乱を極める音楽活動の状況。現代のバンドマンが取り得る三つの進路選択について、ひとつひとつ考察しました。
自分がどのように音楽と関わっていきたいか、という部分をしっかり知ることが最も重要なことだという結論です。

6エージェントの定義
エージェントという概念自体はまだまだ曖昧で認知度も低いもの。今の時点での暫定的な定義をしてみました。
アーティストがビジネス側のエージェントに従属するのではなく、エージェントがアーティストに所属するという、対等な関係が今までにない形態です。そこを押さえておきましょう。

以上です。

今回は特に「エージェント」という新しい職業にフォーカスした面白い回でした。音楽業界を超えて、社会的に見ても、このように個人で活躍しているフリーのマネジメント業の台頭は、注目されるべき現象だと思います。

俳優とかダンサーとか他の業種まわりでも、エージェントのような仕事を始める人が出てくるのではないでしょうか。

おわり。

Frekul Talk Live Vol.4 2014.2.24

Frekul Talk Live Vol.4

2014.2.24は、Frekul Talk Live Vol.4 でした。今回もかなり貴重なお話でした。

登壇者プロフィール(五十音順・敬称略)


・海保けんたろー(SONALIO、Frekul)
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。 「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。


・こおろぎ(作・編曲家、ブロガー)
1982年生まれ宮崎県出身。フリーの作・編曲家、ブロガー。15才からギターを始め、22才から編曲の仕事を開始する。現在はギター、ベース、鍵盤を演奏し、歌モノ・ボカロの編曲、TV・舞台・アプリ・ゲームのBGMなどを制作している。2013年から自身のブログ「こおろぎさんち」 kohrogi.com/ にて収益の公開、稼ぎ方のシェアを開始。フリーミアムや広告収入等、収入先を複数作る戦略で活動しつつ、音楽での新しいメシの食い方を発掘するため日々発信・実験している。


モデレーター:jMatsuzaki(Frekul、ブロガー)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報としてFrekulに参画。


・湊 景太(チューンコアジャパン)
1980.2.7 33歳
チューンコアジャパン株式会社 取締役
新潟県新潟市生まれ。2001年、アメリカ、ロサンゼルスへ渡米。約5年間のアメリカ生活を終え、2006年、日本に帰国。同年7月、エイベックス・グループに就職。著作権利用開発、商品企画、制作、マーケティング業務に携わる。2011年9月エイベックス・グループを退職後、2011年12月、TUNECORE JAPANの立ち上げに参加。現在、夢を追いかける日本全国のミュージシャンの方々にTUNECORE JAPANのサービスを普及すべく奮闘中。
▼TUNECORE JAPAN official website
http://tunecore.co.jp/

▼TUNECORE JAPAN facebook
http://www.facebook.com/tunecorejapan

▼TUNECORE JAPAN Twitter
https://twitter.com/TUNECOREjp

ゲストのこおろぎさんと湊さんを中心に、自分の音楽をお金に換える具体的な手法がレクチャーされました。

こおろぎさんは
・Webだけで楽曲制作の仕事を得、生計を立てるためにやっていること
・クリエイターが好きなことで生活するために日々実践すべきこと
・嫌いなことを一切やらずに好きなことをして生きる

というテーマについて。

湊景太さんは
・アーティストから搾取しない画期的な音源配信システム、TuneCoreの利点
・TuenCore登録アーティストの面白い社会的成功事例

というテーマについて講義されました。

結論の全体像も先にのべておくと、

・フリーミアム、信頼の貯金、クリエイター系SNSや登録サイトへの露出を増やすことによって影響力を高めることが、仕事の依頼につながる
・独立ミュージシャン、クリエイターと言っても、ビジネスモデルはITベンチャーに近い。よってインターネットを活用している他の業界からのアイデアやモデルを積極的に取り入れるべし
・人生は好きなことをやって、嫌いなことはやらない、でいい

・TuneCoreは、オリジナル音源さえあれば、誰でも最短・最速・最安で音源配信でき、権利もアーティストに残し、収益も100%還元するシステム。徹底的にアーティストの不利を排除している
・TuneCoreは、音楽だけで安定収益を上げている独立ミュージシャンがうじゃうじゃいるのを知っている。すでに音楽活動で生活基盤を立てるツールは整っている。失敗のリスクもほとんどない。言い訳はできないし、やらない理由もない。
・アーティスト、ミュージシャンよ、徹底して「インディー」であれ!待ってれば誰かがプロモートしてくれるとか、集客をしてくれるなどという待ちの姿勢をするな!

このようになっています。

音楽といえどサービス業

おとやガイドです。中村大輔です。

Frekul Talk Live Vol.4のレポートをしていきます。2/26に概要の記事を書きましたので、今回から本編です。

ブログで集客をしフリーの作編曲家として活動しているこおろぎさんと、

アーティスト利益還元率100%の音源配信サービスTuneCoreの日本支部の湊景太さんのお話です。

今回はこおろぎさんのお話から。

テーマは

フリーの作編曲家、こおろぎさんの仕事内容と収益

です。

こおろぎさんは、歌ものの編曲と、インストゥルメンタル曲の作曲をメインの収益源として、

他にブログでの広告料やアマゾンアフィリエイト、ニコニコモンズのクリエイター支援制度(再生回数に応じて報酬発生)などでもお金を稼いでいます。

で、なんとその収益内容を、具体的に何でいくら稼いだという詳細にわたって、全てブログで発表しているのです。
http://kohrogi.com/

「1月は14.6万円」などとリアルな数字を提示しちゃっています。

こおろぎさんのユニークなところは、まさにこの「音楽活動での収益がいくらだったか、何で稼いだか」という部分を正直にばらしているところ。

これを他にやっている人はいません。

また、ブログでは音楽制作に関するテクニック、ソフトのレビューや、集客のための戦略も大胆に公開しています。

サービスのスタイルとしては、とくにユニークなものは展開しておらず、

「歌ものの編曲」「インスト曲の提供」という至って普通のもので、それほど他の作曲家と比べて差別化されているわけではないのですが、

こういった情報発信による「話題性」と「有用性」が相乗して、注目を集めご活躍なさっています。

「歌ものの編曲」というのは、仮歌とバッキングだけ録音しただけのようなの音源に、
ソフト音源による新たな楽器演奏や伴奏を加えたりリズムトラックをつけたりして、きちんと商品として販売に値する音源に仕上げることです。

「作曲」というのは、簡単に定義すれば、単にメロディとコードだけ作ることができれば、それは「作曲」です。建築で言えばビルの骨格を作ることです。

「編曲」というのは、どういう楽器で演奏するのかとか、どういう奏法で、どういう展開にするのかとか、転調はするのかなどなど、もろもろの発展的作業をさすことが多いです。建築で言えば部屋の内装や家具の配置を考える作業です。

実は、ほとんどの音楽活動や「作曲をする」「音源をつくる」などという作業は「編曲」であるわけですね。厳密に言えば、ピアノでメロディと伴奏だけ考えることを作曲といって、後の作業は全部、編曲の範疇に入るわけです。

今の時代、単なる作曲家と言ってもだいたいの人は作曲だけでなくある程度の編曲の技術も持っていることが多いですが、

もっと昔であれば、ただヒットソングのメロディを譜面に書くだけで作曲家として大きな報酬と著作権をもらう人もいたわけですね。

とはいえ、今であっても個人で活動しているアマチュアやパソコンに疎い人であれば、ギターと歌だけで作曲だけを行って、あとの「編曲」の作業はまるまる誰かにお願いする、という人もいるわけです。そこで、こおろぎさんに依頼がくるのです。

「歌ものの編曲」というのは、簡単に言えばこういうことです。

もう一つ、「インスト曲の作曲」というのは、こおろぎさん自身が作曲と編曲を行い、個人やゲーム・アプリ会社などに提供する活動のことです。

純粋に自身の作品を提供することで、こちらの方がわりと普通のミュージシャンや日常的に言う「作曲家」らしい仕事ですね。

「インスト作曲」「うたもの編曲」ともに数万円くらいの規模で行っているそうです。

その他の収入として、ブログやクリエイター系SNSへの楽曲掲載による広告料、ニコニコモンズの小作品登録による再生回数に応じた報酬などがあり、アルバイトの収益も合わせると、普通に東京で一人暮らしできるくらいの収益が得られている、というわけです。

「音楽でメシ」「好きなことをして生活する」と正直に言い切って、情報発信でもその部分を全面的にさらけ出してしまっていることで、ユニークな存在感を放って、ファンやクライアントが来てくれるようになるいう仕組みです。

しっかり音楽で生活しているにも関わらず、変にアーティストぶった発言などは一切無く、わりと事務的なことやビジネス的なことを淡々と語るという姿勢です。講義中は、アーティストの話というよりは、普通に個人事業者向けのビジネス講師のような感じでした。

実際に会ってお話させていただいたときも、とてもきさくで正直な方でした。扱っているのが音楽という特殊なサービスだけで、サービス業を展開する個人の事業者さんですので、かなり社会的にはしっかりしてます。

音楽で生活していきたいと思っている全ての人が、いわゆる「アーティスト」という人種ではないということです。

デザイナーやエンジニアやライターの方と同じですね。フリーランスでギャラを得るサービス業、著作業。

音楽をやっていきたいという人だけでなく、何らかの技術を持っていて、独立をしたいと思っている方すべてに参考になる例だと思います。

次回からは、もうちょっと具体的な活動方法とか戦略まで突っ込んでみようと思います。どうやって集客しているのか?どのサイトを使っているのか?どんなマインドでやっているのか?など。

今回はここまで!

クリエイターが稼ぐためのネットサービス

Frekul Talk Live レポート第3回です。テーマは

(音楽)クリエイターが稼ぐためのネットサービス

です。

これは、こおろぎさんのトーク内容そのままです。

親切にも、作曲家やミュージシャン限定のトピックでなく、「クリエイター」まで視野を広げて語ってくれました。

ご自身の活動経験が、音楽に限らず他分野のクリエイターにも役に立つものだと意識してのことでしょう。

具体的に、ネット上のどんなサービスを使って集客をし、注目を集め、収益化を図っているのか、主要なものを教えていただきました。

まず、メインはブログです。ここに自分の全ての情報、すなわちサービス内容、プロフィール、活動報告、作品、有益な記事などをのせておきます。

http://kohrogi.com/

そこにファンやクライアントを呼び込むために、次のようなサービスを活用しています。クリエイター独自のものが多いですね。

・Sound Cloud
https://soundcloud.com/shunichi-kouroki

おなじみの楽曲登録サービス。まずはここからという感じですね。

DOVA SYNDROME
http://dova-s.jp/

作曲家登録をして、フリーで自作曲を配信、提供できるサービス。楽曲を置いている限りGoogleアドセンスによる広告収入が入るという珍しい仕組みがあり、楽曲が起業や個人に使用されると宣伝にもなります。
こおろぎさん自身による解説がありますので、こちらもご覧ください。
解説記事
http://kohrogi.com/?p=3011

ニコニコモンズ
http://commons.nicovideo.jp/user/724006

クリエイターを支援するニコニコサービス。再生回数に応じて報酬が発生するが、そのレートがYoutubeなど他の動画配信サイトより高い。
しかしこちらは月額525円の会員登録しないと使えない上、月3000回以上再生されないと支払いは行われない。月1500回以下だと赤字になるという。このあたりのバランスを考えなければならない。
親作品と子作品という仕組みがあり、自分の曲(親)からリンクで飛んだ先の作品(子)の再生回数も報酬になるという、マルチ商法のような(w)仕組みがある。
親作品は1再生0.3円。子作品は1再生0.1円。
特徴としては、Vocaloid系がほとんどらしく、それ以外のジャンルは流行ってないらしい。
効果音や素材BGMなどの短い作品で再生回数を稼ぐこともある(セコい手だが許容されているらしい)。

オーディオストック
http://audiostock.jp/account/2219

主に企業向けにアピールしている作曲家登録サイト。

以上のようなサービスに楽曲を登録しまくり、フリーで配信しまくることにより、ブログへの集客を促すという方法を意識しているといいます。フリーミアムです。

この1年で140曲を作り、その全てを使用料・著作権フリーで解放、使用許可などもいらないよ、という形で提供しています。

完全にコンテンツマーケティングと同じ手法です。フリーの作曲家でこれを実践して結果を出している人は、日本には他にいないのではないでしょうか。

海外ではそりゃ当たり前だよーってくらい同じようなことやってるミュージシャンや作曲家がいますが、日本ではあまり見かけません。

しかしきっとこれから同じことやる人が増えますね。こおろぎさんはその先駆けです。

こおろぎさんの情報発信で目立つのは、やはりこのような特殊な「クリエイターのための稼ぎ方」にフォーカスしたトピック。

音楽人だけでなく、他の分野のフリーデザイナーやクリエイターにも参考になる記事が多いので、ぜひブログをお読みになるといいと思います。

ちなみにワインが趣味らしく、ワインレビューなどもやっています。

ブロガーの稼ぎ方も取り入れているので、ブログ自体もかなり力を入れているそうです。

どうしてこれらのサービスを使用するようになったのか、どうしてフリーでやっているのか、その辺りの内面的なことを次回は探ってみます。

好きなことを貫く

Frekul Talk Live Vol.4 レポート第4回です。テーマは

好きなことを貫いて生きるために

今回のトークでは、こうろぎさんは稼ぎの手法だけでなく、フリーの作曲家として生きるために心がけていること、マインドの部分を語ってくれました。

収益向上については経営者的な側面でたんたんと語っていましたが、

自分がなぜ今のスタイルになったか、その話になると、組織に所属することなく、自分がやりたいことを仕事にして生きたいという気持ちの強さが見られました。

そこはやはりアーティスティックな、本質的な部分だと思います。

一番大事にしているのは、「好きなことをする」ということ。とてもシンプルです。

好きなこととはもちろん作曲です。こおろぎさんの場合はライブとか演奏とかよりも、曲を作るという営みのほうが喜びが大きいわけです。

だから、その活動を続けて生きていきたい。そのために意識していることがいくつかあります。

・自分だけのブルーオーシャンを見つける

「ブルーオーシャン」なんて言葉が出てくるとは意外でしたが、要するに自分だけのポジションを見つけて、無理な競争のない活動をしようということです。

誰もやっていないことをするということ。こおろぎさんの場合は、「音楽活動の収益を月ごとにブログで報告する」という部分で注目を集めています。気になることですが、ほかに誰もやっていないため、注目を独占できます。

ここで面白いところは、こおろぎさんのブルーオーシャンは、この「ブログでの情報発信」であって、サービスの主体である音楽そのものに関しては、別にブルーオーシャンを勝ち取っているわけではないわけです。

うたものの編曲とインスト作曲といっても、その程度の限定ではいくらでもほかに強い競合がいます。

その中でこおろぎさんを選ぶのは、活動がユニークであるから、その人としての在り方に魅力があるからでしょう。

サービスは品質では選ぶことができない、誰がやっているかで選ばれるのだという、まさに今の時代に顕著な現象です。

・好きなこと、得意なことを重ねる

これは情報発信で意識していることです。音楽のほかにも好きなことがいくつかあるので、それを情報発信に組み合わせてユニークさを出す、情報に厚みを出すということです。

ワインレビューなどは完全に趣味だそうですが、ソフトウェアのレビューやボーカロイド物語プロジェクトなど、直接仕事に結びつかないことであっても、好きでやっていることは、

外へのアピールに使うということですね。

人間は好きなことはいくつもあるものなので、好きの力を活かして、自分の活動に取り入れる発想が必要なのです。

・他業界からのアイデアをパクる

フリーミアムやブログ広告収益などは、まさにネット業界では主流のコンテンツマーケティングですね。こおろぎさんはこの手法を当然のごとく取り入れてファンを集めています。

今じゃたいていのビジネスがやっている方法ですが、ミュージシャンとかバンドはビジネスに対する意識の低さからか日本ではやっている人がかなり少ない。それをいちはやく実践しているという点でも、一つ抜けてますよね。

・スタートアップを個人に応用

起業家の手法や意識を個人事業に取り入れて、仕事のスタイルを構築しているようです。この視点を持てるアーティストは、これから強いです。

・土台となる収入源を上げる

作曲や編曲の依頼が多い月は収入があがりますが、少ないと稼ぎがまったくないということもあります。

そこで、ブログや広告収入で定期的な収入の土台を築くことにしました。もちろん集客の手段でもありますが、コンテンツをフリーで配布してページビューを上げることで、

地道に収入はアップしていきます。そのために、使用許可不要の楽曲を140曲も無料で配っているわけです。

以上です。

一番大事なのは「好きなことを貫いて生きること」。そのために自分で手探りして発見してきた方法だそうです。
あと、さんざん稼ぐことを意識しておいて矛盾するようですが、「先に稼ぐことを考えない」ということも言っていました。これは、本当に稼ごうとしたら音楽なんかやってられないので、

本末転倒になるからですね。あくまで好きなことを守りつつ稼ぐ方法を考える姿勢だということです。

これが難しいテーマなわけですが、こおろぎさんは実際にこの一年で結果をだし、すでにバイトをやめることも決まっているということです。音楽生活の人生です。

これだけ自由にやれている個人の作曲家がいるということは、将来の人々にとっても希望だと思います。

まさに次世代の「おとや」!これからも注目です!

インディーであれ!

Frekul Talk Live Vol.4 レポート第6回です。明日Vol.5です。

今回は、アーティスト利益還元率100%の音源配信サービス、TuneCore日本支部の湊景太さんのお話から。

サービスのシステムの話が中心です。

TUNECORE
http://www.tunecore.co.jp/

トップに堂々と掲げているように

・アーティスト還元率100%
・最短2日配信
・1480円/年(シングル)

というのが最大の売りです。

特徴をひとつずつ吟味していくと、

アーティスト還元率100%利益というのは、音源配信サービスとしては画期的なことです。

なぜなら、多くのアグリゲータ(iTunesなどにオリジナル曲の楽曲配信を手配してくれる業者)は、

アーティストの曲をiTunesに配信してあげますよ、というわけで、

アーティストの楽曲配信欲をビジネスに生かしているので、そこから利益をとってしまいます。

よって、曲が売れてもアーティストは利益をいくらかもっていかれます。

売れなくても、業者はすでにアーティストから利益を得ています。

このちょっといやな構図がない音源配信サービスがTUNECOREです。

最短2日で配信というのも、ありえない速さです。

ほかのサービスでは、審査やら手続きやらで、数週間以上はかかることを覚悟せねばならないところです。

そして、1480円/年というのは、アーティストが最初にTUNECOREのサービスを利用する際に支払う代金。

最初にこの額を支払うだけで、一年間、曲を配信し続けてくれます。売れた利益は、100%自身のものです。

アルバムは4980円/年です。

以上が概要ですが、この「アーティストの視点に立ったサービス」が喜ばれ、注目を集めています。

既存のサービスは金のないアーティストから容赦なく金をしぼりとり、しかも自分たちの懐は痛まない構造というのが多いですが、

TUNECOREは違います。

実際、月10万円単位の稼ぎを上げているミュージシャンのデータをごろごろ持っているそうです。

インディーである程度実力がある人たちに、本当に経済的な支援をしてあげよう、という姿勢がすばらしいです。

湊さん自身も、アーティストよインディーであれ!と訴えています。

Youtubeやクラウドファンディングなどを利用して、金がなくても活躍できている人たちが台頭してきている。自分たちはそんな流れの中で、ミュージシャンを後押しする機能を持ったサービスであり、

100%利益還元を提唱して支援する・・・しかし、われわれは特に、マーケティングや宣伝を手伝ったりはしない。曲が売れるかどうかは、本人たちの工夫にかかっている。

マーケティングをするのはあくまで自分たち自身であるということを忘れるな!という意味で、自分の曲を売りたいならそのための活動はどんなことでも自分たちでやりなさいよ、というメッセージを込めて、

インディーであれ!と言っています。

というのも、たまに利用者からの相談で、「登録するのはいいですけど、宣伝とかしてくれるんですか」みたいな声を聞くことがあるかららしいですね。

アーティストを応援するという立場ではありますが、事務所とか誰かが自分を売ってくれると思っているような輩には厳しいようです。

放っておけば発見されて売ってもらえる、とかいう時代ではないし、そもそもそんなマインドでやっている人はいつまでも売れないよ、とのことです。

TUNECOREで売れているアーティストも、集客などのアピールはすべて自分たちで考えて考えて実力を伸ばしてきたとのこと。

どこかに所属していようがなかろうが、依存するのではなく、自分から働きかけていくということ。そのような姿勢があってこそアーティストと呼ばれるのです。

今の時代、インディーであるとはそういうことです。

インディーであり続けましょう!

ちなみにTUNECOREはオリジナル曲さえあれば誰でも配信が可能です。オーディションや厳しい審査はなし。

音源を持っている方は、ぜひ登録してみてはいかがでしょうか。

Frekul Talk Live Vol.4 まとめ

次世代の音楽活動を考えるイベント「Frekul Talk Live 」Vol.4 レポート、今回はまとめです。

フリーの作編曲家、こうろぎさんの活動の秘密と、
TUNECORE 日本支部 湊景太さんのメッセージがメインでしたね。

1.音楽といえどサービス業

こうろぎさんの仕事に対する姿勢を紹介しました。フリーでプロフェッショナルとしてやっていく上で心がけていることです。

いわゆる「アーティスト」的なスタンスでなく、いちクリエイターとしてサービスを提供する。そこはほかの事業者と変わらず、社会で何らかのサービスを提供する人は全員学ぶべきところでした。

差別化をはかるために「音楽活動の収入を毎月ブログで報告する」ということをやっている、という点は、それ自体がおもしろい情報であると同時に、

自分を世の中に認知してもらおうという積極的な姿勢でもありました。とてもリアルな在り方を見せてくれたことに感謝です。


2.クリエイターが稼ぐためのネットサービス

こうろぎさんが実際に利用して収入を得ているサービスを紹介しました。

メインはブログです。ここに自分の全ての情報、すなわちサービス内容、プロフィール、活動報告、作品、有益な記事。

http://kohrogi.com/

Sound Cloud
https://soundcloud.com/shunichi-kouroki

定番の楽曲登録サービス。

DOVA SYNDROME
http://dova-s.jp/

作曲家登録をして、フリーで自作曲を配信、提供できるサービス。楽曲を置いている限りGoogleアドセンスによる広告収入が入るという珍しい仕組み

ニコニコモンズ
http://commons.nicovideo.jp/user/724006

クリエイターを支援するニコニコサービス。
しかしこちらは月額525円の会員登録しないと使えない上、月3000回以上再生されないと支払いは行われない。月1500回以下だと赤字。
親作品と子作品という仕組みがあり、自分の曲(親)からリンクで飛んだ先の作品(子)の再生回数も報酬になるという仕組み。
親作品は1再生0.3円。子作品は1再生0.1円。

オーディオストック
http://audiostock.jp/account/2219

主に企業向けにアピールしている作曲家登録サイト。

3.好きなことを貫く

好きなことを生活から趣味から仕事まで徹底的に貫いて生きるために、こうろぎさんが真剣に取り組んでいること。

すべてのクリエイターに実践する価値のあるお話でした。

・好きなこと、得意なことを重ねる

音楽のほかにも好きなことがいくつかあるので、それを情報発信に組み合わせてユニークさを出す、情報に厚みを出すということ。

ワインレビュー、ソフトウェアのレビューやボーカロイド物語プロジェクトなど。

人間は好きなことはいくつもあるものなので、好きの力を活かして、自分の活動に取り入れる発想が必要。

・他業界からのアイデアをパクる

フリーミアムやブログ広告収益などのコンテンツマーケティング。

・スタートアップを個人に応用

起業家の手法や意識を個人事業に取り入れて、仕事のスタイルを構築している。

・土台となる収入源を上げる

ブログや広告収入で定期的な収入の土台を築く。使用許可不要の楽曲を140曲も無料配布して人を呼び込む、など。


4.インディーであれ!

アーティスト利益還元率100%の音源配信サービス、

TuneCore日本支部の湊景太さんのお話。

TUNECORE
http://www.tunecore.co.jp/

・アーティスト還元率100%
・最短2日配信
・1480円/年(シングル)

という画期的なサービス。インディー指向のミュージシャンにとっての強い支援になります。

しかし、この「インディー」という点を徹底してないとダメ、というのが講演の本質的内容でした。

アーティストに100&還元するといっても、決して甘えたり楽観視したりせず、自分の曲や活動を広めるための方法は、

あくまで自分でみつけて自分でガンガンやっていけよ、ということ。

依存はダメ。誰もが自立しなければいけない時代、世界を創造していく立場のクリエイター、アーティストらがインディーでなくてどうする!

という熱いメッセージがありました。


以上です。休みなく 3.12に行われたFrekul Talk Live Vol.5 のレポートをしていこうと思います。

おとやガイドでは、もちろん純粋に音楽を楽しむための情報も配信したいと思っていますが、いまはこの音楽活動リサーチがメインのようになっていますね。

その狙いは、単に音楽活動の研究というほかに、世の中にはこれだけおもしろく生きている人間がいるよ、という、

ふつうは表に出てこないまたは一般の生活をしていたら出会えないような人々を紹介することで、社会を違った角度で眺める視点を提供するということなのです。

音楽をやっている人は、やりたいことを何が何でもやってやろうというエネルギーをもった人間の典型です。

それ自体お金がかかるうえ、お金には結び付きにくいし、時間を食うし、曲なんか役に立ちにくいし、と一般的な考え方からしたら良いことなんてないわけです、音楽なんて。

それなのに、やってしまう。それはもはや理屈ではないのです。やりたいからやる。またはやらざるを得ないほどのアイデアが出てくるから、勝手に体が動いている、という状態。

そういう人間のエネルギーは半端じゃないのです。食寝性欲よりも何倍も強い楽しみが、そこにあるんですね。なんとなく生きている人には狂気に見えます。

しかし、わたしはそういう状態のほうが、自然な人間の姿だと思います。そういう人を抹殺せず、もっと増えるような社会であったら、この世の中は今ほど暗くはないと思います。

というわけで、こういう人に触れて、そのエネルギーを届けてあげたいと思いますので、まだまだやっていきます。

Frekul Talk Live Vol.5 2014.3.12

Frekul Talk Live Vol.5 概要

おととい、Frekul Talk Live Vol.5でした。

https://www.facebook.com/events/756578717704177/?fref=ts

まだVol.4のまとめがおわってませんが、先に概要を記しておきましょう。

回を増すごとにすごい人、すごい可能性のある話が出てきます。体面上はサバイバル会議ですが、根底にあるのは、音楽を真剣にやってる人にとっての、真剣に人生を生きることを考える場であります。


登壇者紹介!

●海保けんたろー(SONALIO、Frekul)
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。 「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。


●金野和磨 (メディア編集者、YouTuber)
1987年生まれ宮城県出身。Frekul営業企画担当を経て、2013年に音楽ブログ『マナスタ!』(マナビのスタジオ/manasuta.com)を立ち上げたメディア編集者。
昨年末からFrekul代表の海保氏とYouTubeチャンネル『海保けんたろーのドラム教室オンライン』を運営するなど、YouTubeが専門。


●テディ (空想委員会、レーベル代表)
4歳からドラムを始める。プロドラマーとして様々なジャンルのライブ、REC、TV収録に参加。ドラム3台のイベント『Groove Addiction』を坂東慧(T-SQUARE)、今村慎太郎(円人図)と共に開催。ドラムスティック『wincent』エンドーサー。
また、個人イベンターとして最大年間150本のライブイベントを制作。現在は、ギターロックバンド『空想委員会』のサポートドラム&マネジメントを担当。昨年はサマーソニックやイナズマロックフェスに出演し、今年はメジャーデビュー&赤坂BLITZでのワンマンライブが決定している。また、同バンドが所属する(株)エルブリードの代表取締役、インディーズレーベルONE EIGHT RECORDSの代表を務める。
演奏だけでなく、バンドのマネジメント、プロモーション、リリースなど様々な角度から音楽の仕事に携っている。


●モデレーター:jMatsuzaki(Frekul、ブロガー)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報としてFrekulに参画。


今回のテーマは


金野さんが

「ミュージシャンのためのYoutube活用法」

テディさんが

「バンドシーンで規模拡大していく方法」

でした。

具体的な話は後にゆずるとして、それぞれの結論を先に述べておきます。

・Youtubeの仕組みをよく理解して、複数の方法を組み合わせて動画を配信しよう
・自分よりすごい人と継続的に巻き込んでいことが成長につがなる
・頭でっかち(ノウハウおたく)にはならないように!まずはミュージシャンとしての実力を磨くのが最優先!

です。今回はとくにテクニカルな話が多かったですが、結論ではきちんと本質的な話に着地します。

それは、この場にいる全員が音楽を大切に思って生きているからだと思います。いま、音楽ビジネスにすごい可能性があるからだとか、そういう思考が先にあるわけではないのです。

では!

5人でひとつのギターを弾くバンド

おとやガイド。Daisukeです。Frekul Talk Live Vol.5レポート、やっていきます。最初のテーマは

Youtubeの可能性

です。

スピーカーは、音楽ブログ「マナスタ!」を運営する金野和磨さん。

http://manasuta.com/

Youtubeなどのメディアを駆使してサービス・マーケティングを行う「メディア編集者」として活動されています。

誰もが個人メディアを利用できるようになった時代、自身の影響力を高めるために、これらを活用しないという選択は考えられなくなってしまいました。

それは起業家だけでなく、ミュージシャン、クリエイターも同様です。

Youtubeでブレイクしたインディーミュージシャンの有名な例として、

「5人で一本のギターを弾く」というパフォーマンスで話題になった

Walk off the Earth

というバンドの話がでました。

https://www.youtube.com/watch?v=564MZYqocIw

Youtubeに上げたこの動画をきっかけに大ブレイクし、一気にワールドツアーまで決まったということです。

5人で一本のギターだから機材費がかかってないし、事務所などとも契約していないから稼いだお金はすべて自分たちのところへ入る。

すべてセルフマネジメントで、無料で使えるメディアだけを駆使してパワフルに活躍しています。

まさに今の時代に合ったスタイルではないでしょうか。

音楽的にもこれ以上ないほどシンプルですし、活動の仕方も無駄がない。

「5人で1本のギター」をいつもやっているわけではなくて、あくまでバンドです。しかしいつもおもしろいパフォーマンスを考案しているようですね。Youtubeチャンネルを見ると楽しさがわかります。

https://www.youtube.com/user/walkofftheearth

それにしても時代を象徴するような例です。Youtubeでこんなによいスタートが切れれば、すでに影響力がついているので、これからもとてもやりやすいでしょう。

Youtubeでブレイクしたミュージシャンでは日本でもヒカキンさんという方がいますね。

今はおもしろ動画作成のスタンドプレーが得意のYoutube芸人のような感じになっていますが、もともとビートボックス(ボイスパーカッションのこと。口でドラムをマネするヤツ)の動画でブレイクした、一応ちゃんとしたパフォーマーなのですよ。

Youtubeの可能性を実感したところで、金野さんが具体的な活用方法を紹介してくれました。

Frekul代表でドラマーの海保けんたろーさんと協力して開設した「海保けんたろーのドラム教室オンライン」を例に、

金野さんが実践している方法を次回から見ていきます。

Youtubeストラテジー



Frekul Talk Live Vol.5 レポートをしています。今回はメディア編集者の金野和磨さんのお話から

Youtubeストラテジー

つまりYoutube活用戦略です。

金野さんの専門はYoutube編集。現在、海保けんたろーさんと組んで

「海保けんたろーのドラム教室オンライン」というYoutubeチャンネルをつくり、

さまざまな戦略を用いて登録者と再生数を増やしていっています。

https://www.youtube.com/channel/UCEB_sPJENkiROdMSDqdlWZg

出演しているのは海保さんですが、撮影や編集といっ制作過程はすべて金野さんが担当しています。

開設は昨年2013年の12月。2014年3月現在までで33本の動画を撮影公開、330人のチャンネル登録数があります。

わたしはチャンネル開設時から見ていて、その時は当然ですがぜんぜん登録数も再生数もなかったのですが、

着実に数字を増やしていっていますね。

金野さんがどのようにYoutubeを活用しているか、具体的に戦略を公開してくれました。

ポイントは

複数のメソッドを組み合わせる

ということです。

・関連動画ジャック
・カスタムサムネイル
・チャンネルページの整理
・動画広告

など、自身のYoutubeチャンネルを広めるための方法はいくつか用意されており、

そのどれか一つに集中してやるのではなく、なるべく多くのやり方を組み合わせて、

その相乗効果で影響力を高めていくというスタンスです。

関連動画ジャックというのは、タグ付けなどの機能を活用することにより、

動画ページの右側に表示される「関連動画」へのリンクを全部自分のチャンネル動画にしてしまうという技です。

ご覧ください。右側に海保さんがたくさんいますw
https://www.youtube.com/watch?v=YR23UFEg4OA

カスタムサムネイルというのは、文字どうりクリックするとその動画に飛べるサムネイルのカスタム版。

素人は単なる動画の一部抜粋画面だけを表示させるようにしちゃいますが、やる人はちゃんと自分でカスタマイズしています。

ヒカキンさんなどの動画のサムネイルも、ぱっと見ただけで何か面白そうな感じがしてきますよね。目立ちますし。

少しでも興味をひくために、かなり大事な部分なのです。

チャンネルページの整理というのは、動画チャンネルのトップページを見やすく整理すること。

チャンネル紹介用の動画をトップに置くのはもちろん、動画の内容ごとにプレイリストを作成し、見やすくするのです。

「超基礎編」「バスドラ編」「8ビート編」などと整理されていることにより、「価値あるコンテンツ」として見られやすくなります。

断片的なカオス状態の知識は、パッケージ化されると価値あるものとみられやすく、欲しくなってしまうという心理があります。

整理されているだけで、内容は変わっていないのに付加価値が出るというマジック。やらない手はないですね。


動画広告とは、ユーザーが動画を再生する前に自動的に挿入される動画広告のこと。

見たい動画を再生しようとすると、いきなり知らない会社の広告が再生されて、「あと何秒でスキップできます」などと表示されますよね。あれです。

「ビジネスにはメッセージがあり・・・メッセージには受け取り手のユーザーが必要です」という広告をちょっと前に死ぬほど見されられましたが、

あれは広告主が動画広告というサービスを使ってやっているわけです。

これは単純に、Youtubeにお金を払えば払うほど広告の範囲を広げられるそうです。動画のカテゴリもある程度指定でき、音楽系を狙う場合「エンターテインメント」カテゴリを指定するようです。

金野さんは動画広告に3700円使ったそうですが、広告動画視聴者の1/3がチャンネル動画再生に結び付いたといいます。ほかのメソッドとのコンビネーションがうまくいっているからですね。


以上のような複数の方法を組み合わせることにより、平均11倍のクリック率を実現しています。

このチャンネルからマネタイズするとかいうことはまだ考えていないようですが、フリーで公開しているだけでも海保さんの影響力はどんどん上がっていきますね。

のちのち本格的なパーソナルドラムレッスンなどへの道も用意すれば、とても優れた集客媒体になるでしょう。

ミュージシャンとして自分が持っている力を、このような形でコンテンツ化してYoutubeで公開していくことは、

これからもっと頻繁に起こっていくことでしょう。実際に、レッスン系の動画をアップしているミュージシャンはすでに大勢います。

レッスンだけでなく、もっと自分の独自性なども加味した、ほかにない付加価値のある動画をつくっていくことが求められていますね。

とはいえ、まずは自分ができることから始めるのがよいのではないでしょうか。エフェクターのセッティングの仕方とか、音つくりの方法とか、

細かい分野では自分の得意な方法論を持っている方は多いと思うので、そういうものからどんどん出していくうちに、慣れてくると思います。

持っている情報を隠してもあまり意味のない時代です。出し惜しみせずに、公開していきましょう。



と、音楽だけでなくあらゆるジャンルに適用できそうな、何ともシステマティックな話でしたが、味気ないことばかりではないです。人が活動するには理由がある。

金野さんがこれだけの戦略を持っていながら、ほかの金儲けできそうなジャンルへの適用には一切興味なく、

音楽というカテゴリで実践しているのはなぜ?と思いませんか?

ふつう、メディアをうまく使える人間は、それを使って権力アップとか金儲けとかをやろうと考えるわけです。

しかし金野さんはそれをしません。

理由はいたってシンプル。音楽が好きだから、音楽に大きな影響を受けた人生だから、この世界に貢献するために自分の力を使う、というわけです。

そういう思いあってこその、Youtubeストラテジーです。メカニカルにネットマーケティングだけしているほかの連中とは根本的に違うということを、知っておきましょう。

価値ある存在はあくまでたった一人の人であって、メソッドそのものではないです。そこを勘違いしないよう注意しましょう。

金野さんの音楽ブログ「マナスタ!」も注目です。

http://manasuta.com/

バンドシーンで規模拡大していく方法

Frekul Talk Live Vol.5 レポート。今回はドラマー、イベンター、マネジメントプロデューサーなど多様なサポート面のプロフェッショナルとして活動しているテディさんのお話から

バンドシーンで規模拡大していく方法

です。

テディさんは現在、サポートドラマーとして活動するかたわら、バンドのマネジメントやイベントのプロデュースを手掛けています。

4歳からドラムをはじめ、ドラマーとしての長いキャリアをもち、20代前半の大半をサポートドラマーとして活動してきました。

同時に、ミュージシャンのプロデュースやマネジメントに関してもたくさんの戦略を持っており、多くのバンドやイベントのプロデュース、集客、マネジメントを行って報酬を得ています。

音楽制作や創作に興味をもたず、人をサポートすることや音楽ビジネスが好きで、その方面での活動に面白さを追及していく、音楽人としては少数派のエージェントタイプです。

音楽的なことに関しては、ドラマーとしてどんなジャンルもオールラウンドにこなせる、サポートドラマーのプロフェッショナルとしての在り方を追及していますが、

音符とかドレミとかはぜんぜん知らないということです。

音楽とどう関わりたいか、という信念のようなものが非常にはっきりしています。そこにぶれがないことが、突き抜けたアイデアと活躍の秘訣でしょう。



その豊富な経験から、バンドをどうやって売るかということに関して、論理的にメソッドを組み立てています。

ここではバンドを例に解説していただきましたが、チームで何らかのプロジェクトを抱えるクリエイター全般に当てはまる内容でした。これから見ていきます。



バンドシーンで規模を拡大していく、というテーマですが、具体的な方法論に入るまえに、まず大前提として、

現代のシーンで規模を拡大したいなら、自分で自分を売るという意識を持ち、バンドをプロジェクトとして考えること

が重要、という話から始まりました。

つまり、待っていれば誰かがやってくれるわけではないということです。

マネジメントやマーケティングといった創作面以外のところも、当然自分たちでやっていくのです。

だから、メンバー内にそういうことが適任の人間がいたら、そいつがやると決定する。

で、制作に集中したいメンバーにはそれに集中してもらう。



バンドには「黙っているのがカコイイ」という変な思い込みがよくあるので、

創作以外のことは、やらないヤツは絶対にやらない。

だから、多少上下関係が発生しても、徹底して役割分担を行えということです。

というのも、本気のバンドというのはプロジェクトであり、企業であり、ビジネスであるから。

本格的に規模拡大していくことを考えるのであれば、企業と同じように、

部門ごとに責任者を決めて、プロジェクトを回していけというのが、テディさんの考え方です。



もし、不運なことにメンバー内に広報活動が得意そうなヤツがひとりもいない場合は、

そういうヤツと組む。そういうことを引き受けてくれる人材を探す。エージェントのような人間にアピールする。

そこまですることが大前提であって、それすらしていないのに、売れたい売れないどうすりゃいいのとかほざくのは論外ということです。

それと、当然ですが音楽活動をおろそかにして、いきなり売れそうな方法を求めようとするのも論外とのこと。

当然満たすべき条件ではあるのですが、どの業界であっても、一定の割合でそれがない人には遭遇してしまう。


テディさんや前回登壇されたTUNECOREの湊さんなどは、立場上たくさんの人と会っているので、そういう

「売ってくださいよ」「何とかしてくださいよ」系のオーラのみが強く出ている人を一発で見抜く勘を持っています。

そういう人に限って、コンテンツがそれほど魅力的でなかったりするという・・・。


そういう人は、大前提としての「ファクト」を先に鍛えろよ、というわけです。「ファクト」というのは、

曲、精神、活動、メッセージ性、アート性など、曲だけでなく人間性なども含む、総合的にみて明らかにユニークなコンテンツを持っているという「事実」そのもののことです。

何よりも先にそれがなくては、いくらブランディングやら何やらしても、売れるはずがありませんからね。

そこを勘違いして、テディメソッドを使えば売れるらしい、と寄ってくるだけの人は、そりゃあ勘弁、というわけ。

テディさんは立場上、ファクトができる前の人から早急に「売れたいです。売ってちょ!」系の相談を受けることも多いらしく、

いやあ、その前にさ、自分のラーメンがうまいかどうか考えてみろや・・・(`‐ω‐´)/

などと、さとさなければならない場合も多いとか。

そんなことを言わなきゃいけない時って、何とも言えぬ雰囲気ですよね。

なるべくそんなことをしなくていいように、テディさんは自分が本当に面倒を見たい、売りたい、マネジメントやりたいと思う仕事以外引き受けないそうです。

相手が誰であろうと、やりたくないことはやらないと断るといいます。

そういった一貫したスタンスが、結果的に多くの案件を呼び込んでいるようで、今年は関わっているバンドのひとつがすでにメジャーデビューが決まっているそうです。


音楽でもなんでも、何よりもまずはコンテンツありき、ファクトありきです。

才能でも、資本でも、コネでもなく、ファクトです。それは一人ひとりにしかもてない独自の魅力であって、日々磨いていけば必ず光るもの、怠けたら言い訳がきかないものです。

それがある前提で、これから話す方法論を使ってくれよ!ということでしたので、そのことをよく胸に刻んだうえで、活動に取り入れてみましょう。

つづく。

はじめようバンド屋さん

バンドをやってるせいと「せんせい、もうコピバン、ジコマンは飽きました。本気でバンドをやりたいです」

せんせい「本気のバンドとな?曲はあるか?メンバーはいるか?」

せいと「はい。ほーら」

せんせい「おお!なかなかよいぞな。準備はできているようじゃの。メンバーもいる、曲もできた、自信もある。となるとではさっそく・・・」

せいと「ライブですね!」

せんせい「のんのん。まずは、バイトしてちょ」

せいと「バイトですか」

せんせい「そうじゃ。なぜなら、本気のバンドとはな、企業活動に近いからじゃ。最初に資金がいるの」

せいと「企業活動ですか」

せんせい「そうじゃ。まずは需要をつくるのじゃ」

せいと「需要がないのにライブしようとしてましたー」

せんせい「それでは赤字が続いて即解散じゃ。本気のバンドなら、それはやっちゃいかん」

せいと「バイトして金をためたら、何に使いますか?」

せんせい「投資じゃ」

せいと「株ですか!いまさらアベノミクス景気に便乗ですか。あれは円建ての数字だけの演出にすぎませんよ。だまされちゃいけませんよせん・・・」

せんせい「のんのん!バンドに必要な投資じゃ!何に金を使うか、わかる?」

せいと「練習?集客?機材?」

せんせい「ちがうよ。ためたお金で、自分のバンドのお客さんになってくれそうな人がいそうな、ある程度有名なバンドと一緒にライブさせてもらうの」

せいと「わいろだー」

せんせい「ちがうちがう!自主企画のライブに呼ぶの!自分でつくるイベントにゲストで出てくださいってお願いするの。」

せいと「なるほどー。その人たちのブランドを自分に移そうって腹ですねー。そのバンドのお客さんも見てくれるわけだー」

せんせい「もちろん、いくら高い依頼料を払っても、きみらの実力が伴ってなければ、きちゃくれないよ。でも、ある程度実力があれば、ふつうに交渉してくれるよ」

せいと「依頼料、つまりギャラですね。相場はいくらぐらいでしょうかー」

せんせい「それは全く不明。昔は、相手のバンドのmixiコミュニティの数を【戦闘力】とかいって目安にしていたけど、今はわかんないね。でも、そんなバカ高い金をとったりはしないよ、ふつう」

せいと「あとは、けっこう人の入る有名なフェスとかイベントも、出演料数万払えばふつうに出られたりしますよねー」

せんせい「知ってるねー。そうそう、自分たちの影響力を広めることに、投資するんじゃよー。で、ライブごとに確実にファンを増やしていくの。もちろん利益も出して、次なる挑戦の資金にするんだよ。」

せいと「投資、交渉、利益・・・本気のバンドって、会社をやるみたいなんですねー」

せんせい「がんばってるインディーズバンドは、みんなこれくらいはふつうにやってるのじゃ」

せいと「なるほどー。これはこれでおもしろい、と思えばおもしろい、かも?」

せんせい「バランスのよいバンドならメンバーにひとりくらい、そういう仕事が得意なヤツがおるはずじゃから、そいつに丸投げしな」

せいと「はい」

せんせい「いなかったら、やってくれるヤツと組む。わしみたいに」

せいと「お願いしまーす」

・・・・


・・・・


Frekul Talk Live Vol.5 テディさんのお話を参考に

バンドシーンで規模拡大していく方法

というテーマで話しています。

今回は、会話形式になりました。なぜなら、話が具体的すぎたからです。

テディさんのお話された方法論やテクニックは、かなり具体的で、実務的・実践的な経験から導き出されたものです。

非常にリアルで納得いく反面、だれがやってもうまくいくとは限らないし、いまやって通用するかということもわからない。

そのため、おしえてもらったからって、今の時点でこういうやり方をぜひやりましょう!と言い切ることができないどころか、

手法の一つとして紹介することさえ、怪しいのです。

過去の方法ですからね。

そのバンドに合った方法さえ見つかれば、実際は何をしたっていいわけで、重要なのは、

「バンドを企業活動と考えることができるか」

という点を伝えられるかどうか。そこを意識してこの記事を書いています。

ここで紹介したエピソードは、「まずはバイトをして金をため、ためたお金で強力な対バンやイベント出演を組み、一気に勝負に出る」

という手法です。

実際にテディさんが使って一度も赤字を出さずにバンドを大きくしていった方法ですが、

すごいのは方法というより、テディさんの思考方法です。このやり方は参考にはなりますが、そこだけマネしても仕方ありません。

方法論をうのみにせず、考え方として、「バンドの規模を拡大したいと思ったら、企業活動のようなことをやる必要がある」ということを意識する、そこを読み取れるかどうかが大事。

誰もが同じことをして、バンドシーンで規模拡大していくことができることはないです。状況は次々に変化しています。

きのううまくいった方法が、明日もうまくいくとは限らない。そんなの当たり前の時代に生きています。

要するに、本気でバンド(もちろんバンドに限りませんが)を規模拡大していくことを考えるならば、

どこかで本気の企業活動をする必要があるよ、という点だけ学んでおきましょう。

方法論は、結局のところ、自分で考えるのです。

人がうまくいった話は、あくまで参考程度に役に立てるぐらいです。

自分で考え、自分で実践し、自分だけの方法論を編み出す。そのために必要な、考え方の部分だけ、しっかり身につけておきましょう。

ファンピラミッド

Frekul Talk Live Vol.5 レポートをしています。今回は

ファンピラミッド

です。凄腕バンドマーケッターのテディさんがバンドを売り出すとき、はじめに考えていることです。

ファンピラミッドとは、ファンのレベルによって階層分けした図のこと。

三角形のピラミッドをイメージしてみましょう。

中を横線で6分割します。

一番下の層からてっぺんの三角形(ちなみにこれを考古学用語でキャップストーンという。まったく関係ないけど・・・)まで順番にクラス分けすると・・・・

     固定ファン (積極的に応援,フォロー,ファンクラブ)
    行動×リスクテイク (曲を買う,ライブにいく)
   行動 (調べる,検索する)
  関心 (気になっている)
 知ってはいる (名前だけ,噂だけ)
知らん (全く認知なし)

となります。

で、それぞれの層に適した広報戦略をとるということです。

たとえば、すでにファンになっている人や、自分たちのことを気にして調べたりしてくれている人には、積極的にライブ告知や販促キャンペーンを送ってよい。

しかし、多くの場合は(というか常に)それをしても効果のない下の層が圧倒的に多いわけで、そういう人たちに向けて、何とかアピールしていかないといけない状況なわけです。

だから、下層4レイヤーレベルまでに対しては、曲の無料配信やYoutube動画、フェスやイベントなどで、自分のファンになってくれそうなお客さんがすでについているバンドに関連付けて露出し、まず知ってもらうことだけにフォーカスする。

決していきなり「CDあります」アピールやライブ告知や内輪ネタなどはやらない。

ほとんどのバンドが、全部のお客さんに対して、いきなりフライヤーを作って配り、CD買え!何月何日ライブです!きてちょ!などとやっているが、これは迷惑なだけ。相手の気持ちを考えていない。

それをやっていいのは、すでに関心を持ってくれている層に対してだけ。

そのようにして、想定する受け手の性質に対して適切なメディアを使い、適切な情報を発信していくことが大事だそうです。


非認知層に対しては、間口の広いYoutubeやブログなどのメディアで、

関心層に対しては、FacebookやTwitterなどより距離感の近いメディアで、

行動層に対しては、メルマガやFrekulなどの直接アピールできるメディアで・・・

・・・て、あれ?なんかどっかのWebマーケティングセミナーで聞いたような話ですねw

要するに、テディさんが最初に話された、「バンドシーンで規模拡大するなら企業活動と同じことをやる」というところとつながっているわけですね。

たぶん、ビジネスに詳しい人には、まったくコンテテンツビジネスと同じじゃないか、と思われるでしょうが、まさにその通り。

バンドもこういうことやっているんです。

こういうことを積極的にやっているバンドが、規模拡大していくバンドであって、

「いいものは勝手に広まるさー」みたいなことは、別にないということです。

誰がいいはじめたのかこの「よきもの ほっときゃ 広まるさー」というスローガンは、いまとなってはサボりの言い訳のようになってしまいました。

逆に、おうおうにして、よきものというのは、時代から抹殺されるものだと、個人的には感じます。嫉妬とか、ひがみとか、常識はずれとか、前例がないとか、危険視とかで。

よきものは、やはりそれだけじゃ広まらないです。それが好きで、面白しろくて、広めようとする人がいるから、広がるのでしょう。そうやって文化はできていくものだと思います。


ファンをピラミッド化するという方法論も、本質は「相手の気持ちを考える」ということでしょう。

何も知らない相手に対して、いきなりCD買ってなんていうことは、嫌だろうなって、少し考えればわかることです。

じゃあ、どうしたら、相手にわかってもらえるだろうか、ということを考える。それができたら、好かれるアーティスト(変な言い方ですが)の第一歩です。

アーティストが自分ひとりの孤独な創造の世界を飛び出して、外の人々と交わるとき、衝動や摩擦が起き、感動や心の変化が起きます。

プラスでもマイナスでも、その時のコミュニケーションから人生に影響を及ぼすことが、価値あるものだと思います。それこそが、アーティストの機能、役割だと思います。

一生孤独であり続けるか、外の世界に飛び出すか。そんな自問自答をいつも繰り返している彼らに、テディさんのメッセージは響くと思います。一見ビジネスライクですけどもね。

いきなり「マーケティング」などと考えなくていいから、たまには部屋の外に出て、作品を披露して、人と交わってみましょう。

まじめにCDをつくるという戦略

Frekul Talk Live Vol.5のレポートです。

プロのサポートドラマーでありながら、バンドの売り出しに職人的なスキルを持つテディさんのお話は衝撃的でした。

あれほど楽しんでビジネスをやっているミュージシャンを見たことがありません。

よいバンドをもっと売り出すためにはどうしたらよいか、つねづね考えてきたテディさんが過去に試してみた面白い試みを紹介します。

・雑誌のページを買い取る

大胆な広告戦略ですね。少し金を集めればできます。


・A3用紙を縦に3枚つなげて折り畳み式の長いフライヤーをつくった

縦に開いてみなければならないため、ライブ会場のみんなが巻物を読んでいるような恰好にw

誰のバンドのフライヤーなんだ?とそれだけインパクトを与えられます。


・無料CDを地域全部の家に飛び込み営業して配布

これはテディさんがやったわけではなく、ある地方バンドがやった話だそうです。

地域のみんなの家にいきなり行って「CDあげるよ!」と配って回る。目立ちすぎて地域中の人に覚えられ、人気ものに。毎回ライブは大盛況。それだけで大きな収入だとか。

競合のいない地方の町の楽団さん。そんな暮らし方もあるんですね。


・CDが売れる、というすごい状況を生かす

日本はまだCDが売れる国として、海外では良くも悪くも注目されています。

だから、CDをグッズのひとつとして積極的に売る。音楽というよりは、グッズとしてファンは買うのです。だから同じ曲が入っていても買う。

戦略というよりは、CDが売れないからコストがかかるからうんぬんいわずに、こんな時代でもまじめにCDをつくって売ることを今もやっているということが大事だそうです。意外と。

海外では違います。音楽配信はデータ配信が主流になってしまったので、もうCDは売れません。これは絶対に近い事実らしい。実際、CD屋はほぼ絶滅してます。

グッズとしての認識もないようです(グッズとしては昔のLPが最近はやりらしい)。

日本にいると気づきにくいですが、CDが売れるということはこの時代にあってとんでもない奇跡的な状況なのです。

先進国でCDが売れるのは日本だけ。欧米各国ではCD屋はぜんぶつぶれて、Spotifyなどのストリーミング配信、サブスクリプションサービス(月額何円で聞き放題など)が主流です。

タワーレコードもHMVもとっくにつぶれました。外国の人が日本でこれらCD屋を見ると、「うそ!まだあるの?懐かしい!」とタイプスリップした感覚になるそうです。

Spotifyも日本参入をいまかいまかと期待されながら、結局きてません。それは、まだ日本ではCDが売れてるからというのが一つの理由です。サブスクリプションサービスが定着するのかどうか心配なのかもしれません。

いかにCDをプレミア感あるグッズとして売るか。その手が通用するので、一応やります。

やはり特典とか特別限定版を用意するとかいう形が多いとは思いますが、ふつうに置いといても売れるのが、日本という不思議な国です。

実際業界は古い体制のまま変わっていないし、「CDありき」でいまだにやってる。作り手もリスナーもCDやCD屋がなくなるとは夢にも思っていない。CDが売れたという実績が今でも通用する国、それが日本。

テディさんはその良さを素直に認めていた、ということです。モノは売りやすいからですね。


などです。こんなに面白いことをやっているバンドは注目してしまいますよね。

テディさんがこれからどんな動きをするのか、これからも楽しみです。

Frekul Takl Live Vol.5 まとめ

Frekul Takl Live Vol.5 まとめに入ります。

1.5人でひとつのギターを弾くバンド

ソーシャルメディアを活用してブレイクした顕著な例として、Walk Off The Earth というバンドを紹介しました。

5人でギターを弾くというパフォーマンスのほか、楽しそうなMVや妊娠しながらも踊る女性ボーカルなどが話題になって、

Youtubeから爆発したバンドです。

動画メディアの大きな可能性を無視できないという事実に向き合いました。

2.Youtubeストラテジー

メディア編集者、音楽ブログ「マナスタ!」運営の金野和磨さんが実践する、ミュージシャンがプレゼンスを発揮するためのYoutune戦略についてみていきました。

・関連動画ジャック
・カスタムサムネイル
・チャンネルページの整理
・動画広告

などの複数のメソッドを組み合わせて、「海保けんたろーさんのドラム教室オンライン」というYoutubeチャンネルを

https://www.youtube.com/channel/UCEB_sPJENkiROdMSDqdlWZg

着実に浸透させていっているリアルタイムの例をみせていただきました。現在登録者400名を越えたそうです。

金野さんの学べるスタジオ「マナスタ!」はこちら。勉強になります。

http://manasuta.com/

3.バンドシーンで規模拡大していく方法

サポートドラマー兼バンドマネージャー、マーケッターのテディさんのバンドマネジメント実践学・マインド編です。

バンドをビジネスと考える、というストイックな姿勢と、バンド内の役割分担、ディレクションなど、ビジネスマン顔負けのマネジメント術と対人外交を用いたリアルな戦略で規模を拡大していく方法・・・
の前の、大前提としてわきまえておくべき心の在り方について念を押されました。

何よりもファクトありき、コンテンツを鍛えるのが最優先だよ!ということです。


4.はじめようバンド屋さん

一気にバンドシーンで規模拡大しようというときは、まずバイトしてまとまった金をつくり、

対バンや有名イベント出演にお金をかけて勝負をかける、というエピソードをなぜか会話形式で紹介しました。

テディさんが実践している方法の中でも有用性の高い手だそうです。


5.ファンピラミッド

ファンを関心のレベルごとにわけて、レベルごとに適切な広報をする、というアイデアを紹介しました。


     固定ファン (積極的に応援,フォロー,ファンクラブ)
    行動×リスクテイク (曲を買う,ライブにいく)
   行動 (調べる,検索する)
  関心 (気になっている)
 知ってはいる (名前だけ,噂だけ)
知らん (全く認知なし)

というピラミッドがあるということですね。

ふつうにビジネスの現場で話されていることをバンドマンが講義するというのは、不思議な感じがしました。

一般の人なら、ミュージシャンもそういうことをやっているという事実は、とても新鮮に思えるのではないでしょうか。

6.まじめにCDをつくるという戦略

テディさんが過去に実践した、または見聞きした面白いバンド売り出し方法の具体例を紹介しました。

・雑誌のページを買い取る

・A3用紙を縦に3枚つなげて折り畳み式の長いフライヤーをつくった

・無料CDを地域全部の家に飛び込み営業して配布

・CDが売れる、というすごい状況を生かす

本当に面白いことと、地道なことををいろいろやっています。これからも楽しみですね。



今回もかなり実践的な内容でした。しかし最後にやはり重要なのが登壇者全員から聴講者へ向けたメッセージ。
これがあるのとないのとでは、この会議の意義はまるきり変わってきます。ここが一番大事なとこです。

海保さん「音楽に対する欲求、自分が音楽を通して何を実現したいのかということを真剣に考えて!」

金野和磨さん「自分よりすごい人とプロジェクトベースで長く継続的にかかわっていくことが大事。それが成長し続けるコツ」

テディさん「なるべく頭でっかちにならないように。何よりも大切なのは音楽を磨くことです。うまいラーメンつくれないラーメン屋には、どんな方法使ってもお客さんはきません」

本質からぶれない誠実な精神があるからこそ、必然的に活躍できているのですね。

方法論もいいですけど、会ってその心を体感して吸収することにもっとも価値があるのではないでしょうか。

Frekul Talk Live Vol.5 は以上で終わります。次はVol.6です。

Frekul Talk Live Vol.6 2014.3.24

Frekul Talk Live Vol.6

Frekul Talk Live Vol.6の概要をいったんまとめておきますね。

ゲスト登壇者は、

geststage代表の鈴木竜太さんと、

シンガーソングライター、日本語一級で俳優、通訳・翻訳、作詞、司会者などマルチクリエイターのネルソン・バビン=コイさんでした。

geststageというのは、企業やイベントとミュージシャンのマッチングを行う会社。

ネルソンさんは、マルチな才能でさまざな企業との関わりを持つ現役で活躍する音楽クリエイター。

音楽ビジネスに関して、企業目線とミュージシャン目線の双方の視点を招いて議論することができました。

主なテーマは2つ。

・大企業、広告代理店はアーティスト・ミュージシャンをどう見ているのか
・他人に求められている音楽 vs 自分がやりたい音楽

です。

登壇者への主な質問として

・大企業や広告代理店(〇通、〇報堂)などはアーティストをどのように扱っている?
・企業がミュージシャンを広報戦略として採用する基準は?
・現代のミュージシャンが企業に売り込む方法は?

・事務所に所属した場合、本当に事務所側から音楽性変更の指示を受けるの?
・そもそもなんで、求めらている音楽とやりたい音楽が食い違ってしまうのだろう?
・生活優先?自分の信念優先?
・自分のバンドを海外にアピールするには?

などがありました。アメリカ出身のネルソンさんならではの海外事情の話もあって、いつもより濃かったですね。

では、もったいぶらずに先に2つのテーマに対する大枠の結論だけまとめておきます。

・企業側にとっての音楽の付加価値は「広報のための道具」よってミュージシャン自身も使い捨ての道具と見ている
・とはいえ、きちんとミュージシャンのキャリアを考え、人間として見てくれる企業もある
・ミュージシャンが持つコンセプトや世界観と、企業が商品に込めるメッセージ性やコンセプトがうまく合致したとき、双方はパートナーを組む
・現代ミュージシャンは、自分の楽曲を広報戦略商品として、直接企業に売り込む方が契約をとりやすい
・自分の好き得意を追及し、時には音楽以外の才能も生かして、コンテンツに付加価値をつけていくことが大切

・事務所に所属して最初の方は音楽性への指示はこない。そもそもいきなり音楽性にテコいれが必要なバンドは契約まで結び付かない
・しかし、投じた予算に見合った売り上げがないと、不可抗力として、「売れる音楽やってくれ」という圧力がかかってくるのは事実としてある
・そうやって変えられた音楽が、本来自分がやりたかった音楽と著しく食い違うと、葛藤が生まれてしまう
・金のために注文どおりの音楽をつくるか、やりたい音楽を守り通すかという大きな選択が迫られ、ここであとの運命が変わる
・金のためならそうとわりきってやる、本当に譲れない部分は守る、というバランス感覚も大事
・米ではそもそも、あまり上から圧力はかからない。ミュージシャンの好きなようにやらせる(インディペンデント文化)
・日本は鎖国された巨大マーケット。海外にも市場があることを認識し、英語での情報発信やYoutubeで他国の曲のカバーなどもすると、思わぬ反応があって有効だから、ガンガンやれ

などです。

で、最後に定番の、登壇者からすべてのミュージシャンへのメッセージ。

海保さん
「人生で一番優先したいことを見極めて。それが音楽ならば、さらに音楽とどうかかわるのが一番自分にとって良いのかを考えて。そうすれば自ずと必要なものが見える。」

鈴木竜太さん
「増大したソーシャルのタッチポイントに対してきちんと自分を露出していくことが大事(つまり情報発信)。自分の世界観を煮詰め、なるべくニッチなコンセプトを提示していくこと。」

ネルソン・バビン=コイさん
「自分のやりたいことをぶらしちゃダメ!やりたくないことはやらないとはっきり言う!自分の核を譲らない!そうすれば、最初はきついけど、後から信頼されてくるから、たぶん大丈夫!」

詳細はのちのちに。余談ではバビン=コイさんのお話で日本の音楽が海外でどう思われているかというぶっちゃけた話がおもしろかったですね。AKBやきゃりー・・・うん、まあ、日本じゃすごいけど、実際は?

では!

音楽は洗脳の道具

もはや専属ライターみたいになってますが、勝手にやってます。Frekul運営チームのサポーターもしてますしね。

今回は講義の入口のお話。大企業、広告代理店はミュージシャンをどのように見ているのか、というテーマについて。

ミュージシャンと企業・イベントのマッチング事業を行っているgeststage代表の鈴木竜太さんが教えてくれました。

率直に言って、主にミュージシャンの扱われ方は二通りにわかれます。

・広報の道具
・クリエイティブ・パートナー

と、フレームつけするとこんな感じ。

どちらのパターンも、自社の商品サービスの宣伝役としてミュージシャンの曲やパフォマンスを使わせてもらう、という仕事内容では同じなわけですが、

「人間として接するか」「時間軸を意識して接するか」という点で大きく異なります。

どちらがどのような扱い方をされるかは、言うまでもないですね。

企業が注目する音楽の一番の付加価値は、「宣伝に効果的」ということです。

自社商品のイメージやサービスにぴったり合ったミュージシャン自身や曲をモデルにして、CMやYoutube広告に投下し、顧客に印象づけます。

いってしまえば音のイメージによって洗脳し買わせるわけです。印象的な音楽は何度も頭の中でリピートされますから、そのたびにCMが頭の中で反復され、気が付いたら買っている、という状態にさせます。

何ともコンベンショナルな音楽の使い方です。宗教や支配者や権力者がやっていたのと同じ。したたかな企業はきちんと音楽も広告効果として最大化させます。

で、ある企業はミュージシャンを、一度きりの切込み宣伝隊長として捨て駒扱いし、

ある企業は一個の意思を持つ存在として尊重する、

そんな傾向が少なからずあるようです。あくまで業界の雰囲気の話であって、断言することはできませんが。

ミュージシャンとしては、自分の音楽を使って、企業が自分たちをパートナーとして信頼してくれるのは嬉しいはず。そうすれば、プロジェクトが終わっても商品を使い続けたり、応援しようと思うはずです。

ともにキャリアを築いてくパートナーとして関係ができれば、お互いのためによいはずです。

逆に、ただの外注の兵隊として扱われるのはそりゃあいい気分ではない。コラボする企業の態度やイメージは、当然そのミュージシャンのイメージにも影響を与え、メディアには記録が残っていきます。

それがもしミュージシャンの人物イメージや方向性と食い違っているなら、今後のキャリアにも影響を与えるわけなので、宣伝の仕方などについて対等に交渉してくれないようならば危険でしょう。

硬派な技巧派バンドがアイドル扱いされたりするのは避けないといけません。

宣伝にさえ使えればあとは知ったことかなどという人たちも確実に存在するでしょう。

報酬によってビジネスとして割り切ることはできても、傷ついた尊厳、間違ってついたイメージは治らない。だから、洗脳の道具としてしか見られないようなところとの付き合いは・・・なるべく避けた方がいいと思います。

〇通はどちらのタイプですか、などという冗談もでましたが、そこは鈴木さんきちんとスルーしました。

企業という営利追求団体がミュージシャンをどのように見ているか、きれいごとなき企業目線の実際を知っていることは良いことです。

最大の注目点は、こいつの曲を宣伝に使って商品の売り上げにつながるかどうか、です。建前はなんであれ、それが一番大事なこと。

そのうえで、商品イメージとアーティストイメージがぴったり合っていれば、たぶん摩擦なくやっていけるはずです。

クールなバンドの演奏するアクションゲームの主題歌など、良い例でしょう。

ミュージシャンと企業の微妙な関係を考察する興味深い話でした。

世界観×コンセプト

Frekul Talk Live Vol.6 レポートその2です。

ゲストの鈴木竜太さんが運営するgetstageでは、登録したミュージシャンに企業や個人が直接、ライブや楽曲制作、イベント出演などの仕事を依頼できるような仕組みを提供しています。

https://www.getstage.com/

冒頭にあるように、「アーティストとアーティストを求める方を結び付けるマッチングサービス」です。

鈴木さんは、getstageに登録したアーティストに仕事が依頼される基準をお話してくれました。

前回お話した通り、大前提として、企業がアーティストに求める機能は、音楽やパフォマンスを用いた広報・イメージ戦略の力です。会社と商品を印象づけるためにコラボするのです。

一部大手メディアなどでは癒着とかお抱えとかあっていつも同じ人が使われれるとかあるでしょうが、そういう話は置いといて、

音楽や生きたアーティストのイメージを必要とする企業や事業者が、個別で企画をローンチする際、広報パートナーとして実際にアーティストに仕事を依頼するポイントは何かというと・・・

ずばり「アーティストの世界観と商品のストーリーが合致しているとき」です。

「世界観」「コンセプト」が抽象的な概念ですが、要するに相性です。お互いのイメージが合えばいいのです。

たとえばですが、地方自治体がイベント集客のためにオリジナル曲を求めているとします。で、歌詞は市長とかが書いたけど、曲は書けないし、歌えないし、音源はつくれない。

そういうときに、その地方のことが大好きなことをアピールしまくっているアーティストがいたら、オファーされる。

または、地方のゆるキャラブームにのって、わたしはゆるキャラソングだけつくるんだ!という人がいれば、ゆるキャラソング市場にひっぱりだこになるかもしれません。これは実際にやってる人いるのではないでしょうか。

getstageでオファーを待っていなくても、いざ自分の世界観とコンセプトが合っている企業があると思ったら、メーカーに直接売り込む形でアピールするのがポイントということです。

メディアに売り込んだりせず、直接会社に電話なりメールするなりして企画を持ち込む方が圧倒的に協力関係が成立しやすいそうです。

CMに曲を使ってほしい!という人には向いてませんが・・・

ネルソンさんのリアクションでは「アメリカでもアーティストがメーカーに直接売り込むのがふつう」ということ。珍しいことではないのです。

企業は広報の道具として、ミュージシャンは収入源として、双方利用しあうような見方になりがちですが、

視点を高く持てば、企業とミュージシャンの共通のゴールとして「ファンベースを共有する」ということがあります。

そこでうまく信頼関係を築いて協力することができれば、長くパートナーとしてやっていくことが可能性もあるはずです。

鈴木さんのまとめとしては、今は企業も売り上げを上げるためにさまざまクリエイティブな試みに挑戦しているのだから、

ミュージシャンも、ただ音楽をつくるだけじゃなくて、アーティストとしてオンリーワンの付加価値や機能を展開していけば、いろいろな仕事ができるようになって、もっと企業と提携したりできるようになるはず、ということでした。

ネルソンさんも、シンガーソングライターだけでなく、俳優・MC・翻訳/通訳・作詞などいろいろな仕事をしています。

アーティスト=曲を作って演奏する人 という概念はもうとっぱらちゃって、この社会で自由におもしろいことをして仕事をつくり、多くの人を巻き込んで影響を与えていくこと、のように考えてやっていくのがいいのではないでしょうか。

そういえば、最近佐賀県が「ロマンシング・佐賀」というイベントをやりました。

http://romasaga.jp/

知っている人も多いと思いますが、20年くらいも前にSQUARE(現スクエア×エニックス)というゲーム会社が作った「ロマンシング・サガ」というゲームがあります。

この「サガ」はSagaaつまり「冒険談」とか「年代紀」とかいう意味で、佐賀県とはまったく関係ありません。単に音が同じだけどいうギャグです。

ニコ動での実況動画では必ずといっていいほど「佐賀」「ロマンシング佐賀」「ロマ佐賀」などという冗談がとびかっているわけです。

ばかみたいな話ですが、このギャグはゲームの人気度のおかげもあって20年間語り継がれて?きたわけです。

そして何とついに会社と行政ぐるみで大きなイベントを起こすまでに・・・

ギャグも20年たつと国のイベントになるという笑える奇跡です。

ホームページで佐賀県知事が「これは奇跡です。20年前はサガから、10年前は佐賀県から、お互いにラブコールを送り合っていた両者が、ようやくこうして結ばれました。」

言ってますけども・・・「お互いにラブコールしてた」・・・ってほんとかよ!

あとづけ感満点ですが、まあ別にいい。

とまあこれは珍しい例ですが、こんなこともある。アーティストとの間に何かしら共通点があれば、オファーがくる可能性が高いということです。

デフォルトミュージック・パンデミック

Frekul Talk Live Vol.6 レポート3回です。

鈴木竜太さんの運営するgetstageというサービスでは、アーティストとアーティストを求める企業・事業者・個人を結び付ける仕組みを提供しています。

getstageから生まれたアーティストと企業のマッチングの実例について、どんな例があるか聞きました。

・ソニー ウォークマンのデフォルトミュージックに!

http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/12939

Mayu Wakisakaさんです。

なんと、ソニーのウォークマンの「プレロードソング」つまりデフォルトミュージックといって、買って最初から入っている曲のことですね。

それに選ばれました。

これは世界中で売られているので、世界中でファンを獲得。商品を買った人みんなにいきなり届くわけですから、世界中にパンデミック(とてつもなく広い範囲に)に広まりますね。

このウォークマンを持っている人はご存知の方も多いのではないでしょうか。

getstageにもアーティスト登録されています。

http://www.getstage.com/artist/detail.php?id=174

ストーリーがありますね。

getstageは誰でも登録できます。楽曲や写真などの細かいエディットもできますが、基本的にはインディー・メジャー問わず登録できます。

Frekulと同じくらい注目のサービスです。

今後ますますおもしろいマッチングがでてくるのでは、と思います。注目です。

サービスvsアート

Frekul Talk Live Vol.6 レポートその4。

今回からネルソン・バビンコイさんのお話です。

ネルソンさんはシンガーソングライター、俳優、通訳、MCなどマルチな活動をされているアメリカ出身の日本語一級アーティストです。

語っていただいたテーマは



他人に求められている音楽(活動) vs 自分がやりたい音楽(活動)


どっちを優先するべきなのか?という話です。


公式では(活動)はついていませんでしたが、話の内容は音楽や曲つくりだけでなく、バンドやシンガーとしての活動スタイルの話にも派生したので、実際は音楽活動全体に関して、

他人の期待に沿ってやるのか、自分のやりたいことをするのか、という議論になっていました。


先にネルソンさんの結論から言うと、

「やりたいことだけやれ!」

です。


このメッセージにもネルソンさんの背景があってのことですので、同じことを言っていてもほかの人とは意味は違うものです。

ネルソンさんの場合でいいますと、数年前、とくに計画もなく日本にきました。

で、最初に英会話の講師になりました。

が、せっかく日本語一級なのに、日本語を使う仕事でなかったので、すぐやめました。

そのあと、セイン・カミュのマネージャをやったり、番組のナレーターをやったりして生活していました。

しかし、心の奥底で、本当の自分自身のアイデンティティはシンガーソングライターであるネルソンさんは、ずっと音楽をやり続けていました。

そこで、Youtubeに日本のポップソングなどをカバーした動画をあげはじめます。2007年のことです。

今じゃたくさんの人がやっていることですが、当時は誰もやっていませんでした。

しかもネルソンさんはアメリカ人。日本の歌をカバーしている姿はとても新鮮で、Youtubeでは大人気に。


Youtubeで活躍したミュージシャの先駆けの先駆けがネルソンだったのです。


Youtubeでの活動が話題になり、HEYHEYHEYという番組からオファーがかかりました。


やった!これで全国に俺の歌が響きわたる!(Youtubeではもう世界に響きわたっているけど、テレビをとうして爆発的に!)と、思いました。


しかし、出演日の前夜、ネルソンさんのもとにある連絡がきます。


「あなたの動画、著作権違反ネ、消しといたのでヨロ。」


「なん・・だと・・・」


当時はまだ他人の曲をカバーして動画投稿するというのが著作権的にグレーゾーンでした。

ネルソンさんはあまりに目立ちすぎ、ついに全国メディアへの出演が決まってしまったので、「管理者当局」から

「やりすぎだ。消せ」

との判断がされてしまったのでしょう。


ですので、翌日無事にHEYHEYHEY出演し、「Youtubeで日本の歌をカバーして話題の日本語ペラペラアメリカ人シンガー!」として晴れて全国デビューを果たしたのにもかかわらず、


「ネルソン・バビンコイ」検索してもYoutubeのどこにもいないじゃん!という事態になったという、苦いエピソードがありました。


しかし、なんとその直後に、著作権管理団体JASRACがYoutubeと契約し、カバー曲をアップすることが公式に許可されることに。


悔しい思いをされたことでしょう。まさに「なん・・だと・・・」ですね。


このような経験から徐々に日本の音楽活動環境に窮屈さを感じるようになったネルソンさん。もう一つ重大なエピソードがあります。


NHKの高校講座の番組に俳優として出演していた時のことです。


ネルソンさんは音楽もやっているということで、制作側が「ドラマの中で歌いなよ。曲も自分でつくっちゃってさ」という提案をしました。


それこそが本業のネルソンさん、「やったる」という気持ちで臨むところでしたが・・・


「・・・と、それじゃあJASRACに登録しなきゃね」


という話に。


「何・・・だと」


JASRAC・・・


「おれの日本全国デビュー前日に、おれの魂の歌をぜんぶ消した、あの・・・」


JARAC・・・


「HEYHEYHEYにでるほど人気になったおれを危険視してYoutube上のすべての動画を葬り去った、あの・・・」


J A S R A C・・・・



・・・ヤダナー・・・


(実際に本人が言った言葉ではありません。あくまで心の中のイメージです)


テレビで放送される曲は、構造的にすべてJASRACに登録しなきゃまずいことになっているらしく、番組ディレクター陣も当然それに従うようネルソンさんを説得するしかありません。


しかしネルソンは、JASRACに登録するのは嫌だったので断りました。


よって番組内で歌を披露するのもなし。結局また音楽での大手メディアデビューはできなくなりました。


その後も、どちらかというとソロアーティストというよりはタレントのような扱い方をされることが多かったといいます。


大手メジャーからも声がかかったりしましたが、


「オリジナル?いやーやっぱり(ルックス重視だから)最初はカバーで手堅く(キャラで)売っていこうよー」とかいう話が多かったので、オリジナル曲をやりたいネルソンさんは

そういうオファーはすべて断ってきました。とうぜん、大きなお金も入ってはきません。



作詞の仕事をしているときは、「ここはもうちょっとこんな感じで書き直してちょ」などと言われることが多く「じゃあ自分で書けや」と言えるはずもなく、ストレスを覚えながらやっていました。



「アメリカではインディペンデントが普通なのに・・・日本は管理、注文、見た目が大事・・・やりたいことなんかできやしない」


音楽をやっているにも関わらず、音楽に関係ない部分に大きなエネルギーをとられてしまう環境に、ネルソンは嫌気がさしてきました。


で、自分がやりたくない仕事は一切引き受けないことに決めました。


数年の間は仕事も少なく、地味な活動が続いたそうですが・・・


自分の信念は絶対にぶらさずに、自分の核であるアーティストとしてのマインドだけは守り続けてきました。


すると2013年から急に仕事が増えたそうです。


メディアに魂を売らず、信念を貫き続けたことで、各方面から信頼を獲得していたのです。


他人に求められていることにこたえるのは大事だが、それが自分の存在意義を脅かすようなことであればやらない。

それが

「自分のやりたいことはぶらさず、やりたいことだけをやれ」

というメッセージに込められた思いでしょう。経験から来た重いメッセージです。


アートとサービスというのは本質的には相いれない性質のものです。


日本ではサービスの面が絶対視され、お客さん至上主義のようなところがあるので、こと音楽業界はやりたいことができずストレスがたまっていくミュージシャンが多いでしょう。


日本にいればこれが当たり前な感じですが、アメリカでは事情が違うようでしたので、その摩擦にネルソンさんは苦しんだのです。


ではアメリカの事情はどうなのかというが気になるところ。次はそのあたりも含めて続きを書きたいと思います。


おわり。

やりたい音楽をやれ

Frekul Talk Live Vol.6 レポート続きです。

ネルソンさんの打ち明け話が始まります。

テーマは「他人に求められている音楽(活動) vs 自分がやりたい音楽(活動)」でしたね。

今回の結論は「自分のやりたい音楽をやり続けろ」となるのですが、

そこに至るまで、かなり雑多なトークが展開しました。トークライブなので、ひとつのテーマでもいろいろな方向に話が飛ぶところがいいですね。

印象的だったポイントを紹介しておきます。

・ジャパンでは「注文どおりの音楽をつくらなきゃならない」

ネルソンさんによると、アメリカではそんなことはないようです。

日本でよくされるプロフェッショナル論では、「自分の個性は封印して相手の欲しいものを提供するのに徹する」精神ですから、

何が何でも「相手を楽しませるための音楽をつくる」です。それはそれですばらしいことです。

その音楽が自分がやりたいものと食い違いすぎたり、良い結果が出なかったり、正当な対価をもらえなかったりすると、「もういやだー!」となっちゃいますが、

それは仕方のないことで、

エンターテインメントビジネスが絡む場合は、どんな時も対価を与えてくれるお客さんを楽しませることが一番、というルールは変わらないと思います。

ただ、意外にもアメリカでは、日本よりはオーダーがうるさくはないようです。

つまり、やりたい音楽をやっている人に、ふつうにファンはついてくるから、別に変に大衆受けを狙った曲つくりはする必要がないらしいです。

これって音楽をつくっている人には理想的。

それぞれのやっている音楽に、マーケットはあるということですね。

日本では逆に、ひとつのマスマーケットにとらわれすぎて、すべてのミュージシャンがそこで売れるための音楽をつくらなければいけない、という思い込みが強いようです。

みながみな同じような音楽を聴く時代が長かったからかの・・・

きけば、海外を意識することもあまりない、というのも、マーケット固定化の原因だということです。

曲の売り上げが国内で完結するので、内向的に国内大衆だけに売れる曲だけつくらされるようになってしまう。

生活がかかっているミュージシャンは、やりたい音楽はひたすら封印して、「みんなが大好きな」音楽をつくらされ続ける。それがやがてストレスに、ということが多いようです。

自分がやりたい音楽をやり続けて独創性を発揮し、国内を飛び出して世界にマーケットを見つける、という発想がないのはなぜだろう、ということです。

・海外にもアピールを

というわけで、日本の音楽屋さんは海外にも自分をアピールしていけよ、という話です。

他国の曲のカバーをやったり、英語でも情報発信をしたり、とにかく世界の目があるということを意識していけということ。

テクニカルなことで言えば、Youtubeのパートナープログラムというものに参加すれば、公式にYoutubeから動画広告の仕組みをサポートしてもらえるからやってみろということ。意外と知らない人が多いらしいです。

「やり方がわからない」うんぬんはよくききますけど、ちゃんと教えてくれてるんだから、言い訳できないですね。

Youtube パートナープログラム
https://support.google.com/youtube/topic/14965?hl=ja&ref_topic=2676320

「クリエイターハンドブック」なるものまで配布して丁寧に教えてくれています。公式ですよ。

http://www.youtube.com/yt/playbook/ja/getting-started.html

知らなかったら灯台下暗し。チェックしておきましょう。


それから、ネルソンさんの話では、アメリカでは有名ブログに紹介されるとバズるらしいです。

ブログのキュレート活動が大きな影響力を持つということは、日本では少ないですけども、アメリカでは音楽レビュー専門のブログがあって、そこがいつも新しいバンドやミュージシャンを見つける。

それがきっかけで有名になって売れていく、ということが起こっているようです。

たとえばこれ。Needle Drop.

http://theneedledrop.com/

力あるブログにアピールして見つけてもらう、というのも方法の一つなのですね。


・正直な話

ネルソンさんは言いました。

「本当に音楽的な実力を試したいなら日本じゃムリネ」

どういうことかというと、「音楽活動に注文が多すぎる」原因でもあるのですが、つまり

「日本の音楽はエンターテインメントビジネスとして優れているのであって、音楽そのものは・・・」

ということです。

AKB,きゃりーぱみゅぱみゅなどの有名は海外にも轟いていますが、正直な話・・・

「ビジネスとしてはすごいけど、音楽はわたしたち、聴けないんだよネ」

ということでした。

文化的な違いもあるのでしょうが、日本の国民の多くが心地よく聞いているJPOPは、

アメリカ人の耳には合わないようです。

「中田ヤスタカは・・・うーん、海外じゃあんまり・・・ね。日本ではすごい人気だけどネ」

というような感じ。民族の好みの問題なので、決して悪いということではないと思いますが、正直な感想はこういうことだそうです。

まあ、当たり前ですよね。国が違うんですから。

国内ですごく有名だから、海外でも人気間違いないだろう、という勘違いだけはしないように、ということです。

そうすると、日本という音楽マーケットですら、結局は日本人が満足するためにつくられているわけで、

全世界の人のためにつくられているわけじゃあない。

それって結局、日本の音楽業界の自己満足じゃないの?

プロは自分のやりたいことをやらないで、相手の喜びのために全力を尽くす、ていうけど・・・

その「相手」の中にアメリカ人やイギリス人は含まれていないの?

・・・

たぶん、今までの時代だったら、日本国内だけ満足させてりゃよかったんでしょう。

でも、そのことに矛盾が発生してしまうのが、このグローバル社会なわけ。

しかしそうなると、全世界の民を感動させるような音楽を作るのは、現実的には難しいじゃん、となる。

よって、結論は・・・

「他人の求める音楽を作り続けるのは果てがない。だから、自分のやりたい音楽を追及し続けて、それぞれが自分だけのマーケットを発見していく」

これが重要だということで落ち着いたようです。

(あくまでトークライブレポートなので、わたしが汲み取った話の流れ、雰囲気、わたしの見解です。ほかの参加者は違う見方をしていたかもしれません)

ネルソンさんの話は以上です。

Frekul Talk Live Vol.6 まとめ

Frekul Talk Live Vol.6まとめです。

今回のテーマは「他人の求めている音楽(活動)vs自分がやりたい音楽(活動)」でした。

ゲスト登壇者は、

geststage代表の鈴木竜太さんと、

シンガーソングライター、日本語一級で俳優、通訳・翻訳、作詞、司会者などマルチクリエイターのネルソン・バビン=コイさん。


1.企業はアーティストをどう見ているか(ロックマンX4の主題歌はあの有名大女優が歌っていた)

企業は主に、アーティストやミュージシャンを「広報の道具」に過ぎないと捉えるところと、

ともにコンセプトを共有しあって成長していこうとするクリエイティブパートナーとして見ているところに分かれるという話でした。

提携しあうなら、相手をよくリサーチして、後者のタイプと組んだ方がいいです。

2.世界観×コンセプト

企業がアーティストと組むのはどのような場合か考察しました。

それは「アーティストの世界観と商品のストーリーが合致しているとき」でしたね。

そのために、ふだんから自分の活動がどんなコンセプト・世界観でやっているかを磨い続け、発信し続けることが大事だということです。

3.デフォルトミュージック・パンデミック

getstageから生まれた企業とアーティストの大きな例として、Mayu Wakisakaさんを紹介しました。

Sony製ウォークマンのデフォルト・ミュージックに採用されたことで、世界中に知られたというすごい例です。

4.サービスvsアート

ネルソン・バビンコイさんが日本に来てからのストーリーをお話しました。

何かと注文や規制が多い日本での音楽活動に疑問をもちながらも活動し続けた結果、ネルソンは「やりたくない仕事は引き受けない」というルールを自分に設定。

自分のコアを決してぶらさずにやり続けたことで信頼を得て、仕事の依頼が増えたといいます。

これからの時代は、自分をだましてやりたくないことをやり続けるより、自分の真の欲求を追及していった方が個人としては生き残る可能性が高いということです。

やりたくないことをやって生きるのは、生きたままの自殺。死んでるのと変わらないということですね。

5.自分がやりたい音楽をやれ

海外とは違い、自己犠牲を前提としたサービス精神が強い日本のあらゆる業界、音楽業界も例にもれずそうであることに気付いたネルソンさんは、

議論の最終的な結論として、「自分の一番やりたいことは絶対にぶらしちゃいけない。そうして続けていれば、たぶん大丈夫!」と伝えました。


トークライブの内容からきちんとまとめると


「他人の求める音楽を作り続けるのは果てがない。だから、自分のやりたい音楽を追及し続けて、それぞれが自分だけのマーケトを発見していく」


ということになります。


さいごに、登壇者全員からみなさまへのメッセージ。

海保さん「人生で一番優先したいことを追及して。何に喜びを感じるのかを知ろう」

鈴木竜太さん「タッチポイントが増えた世の中ですので、その数に対してきちんと露出しておくこと。で、自分だけのニッチなコンセプトをつくってアピールしていくのがいい。できるだけマニアックなヤツで」

ネルソン「自分のやりたいことは絶対にゆずらないで!」


以上でVol.6 レポートはおわり。

Frekul Talk Live Vol.7 2014.4.16

Frekul Talk Live Vol.7 概要

Frekul Talk Live Vol.7 の内容がすごすぎたので先にまとめをシェアします。

ゲスト登壇者↓

天野翔(ラクロワ・デスフェール、LiveLockOn)
東京都出身。ロックオペラバンド「ラクロワ・デスフェール」主宰、Office Lacroix合同会社社長兼CEO。
国立音楽大学作曲専攻在学中より、楽曲提供、オーケストレーションなど作編曲家としての活動や、ミュージカルへの客演、レコーディングなど歌手としての活動を開始。
今年2月、グッズ収益の増加を支援すべく、ライブレコーディングした音源をダウンロードカードとして即日販売するサービス「LiveLockOn」を開始した。

yamamiya山宮徳晃(Peatix)
Peatix Senior Evangelist 2003年から2012年までApple StoreのEvent Coordinatorを担当。 2012年より、Peatixにて面白い活動をしている人達をサポートしている。 EventをInnovateする会社として、常にイベントのあり方を模索している。 peatix.com


テーマは「ライブをいかに黒字化するか」です。

議論されたサブテーマ、質問などをまとめると

・コストをおさえる
・ライブハウスビジネスにはまらない
・イベントの起こし方をちゃんと考える

・黒字化するのにグッズ収益は必須
・集客に特別なテクニックは何もない
・ゴールがあるかどうかで結果は決まる

という感じ。で、結論。

・リピート性のない集客活動は徒労
・呼んだお客さん「全員」を100%以上満足させるパフォーマンスを提供する
・誰も経験したことがないような予想外のイベントをやる

・なぜライブをやるのかというゴール決める
・そもそもなぜ音楽をやるのかというゴールを見直す
・世界の気運を感じろ!

などです。

最終的な結論は、この回はとくに「目的」「本質」を明らかにすることが大事というところにまとまりました。

なぜライブをやるのか、なぜ音楽をやっているのか、そのコアな部分がないヤツは何をやってもダメで、

ゴールをもっているヤツは特別なことをしなくてもきちんとやり方はついてくるということ。

最後に登壇者全員からみなさまに届ける熱いメッセージが強烈でした。

海保さん「そもそも自分が音楽を通してどうなりたいのかを決めることがすべて」

天野翔さん「海保さんと同じ。なぜ音楽をやっているのかという問いをし続ける。音楽をやろうと思ったときの純粋な感動、初期衝動を忘れず、それを人にも伝えられるように活動して」

山宮さん「世界の気運を感じろ」

です。

細かいところは後ほど。

山宮さんの「気運」ということばが刺さりましたね。

これはどういう意味かというと、昨年の終わりごろから現在までにかけて、

どの業界、どの世界の人間も、一様に・・・

「ノウハウ、スキル、テクニック、マーケッティング、なんとかステップ・・・うんぬん・・・あああああーーそういうのはもうやだああ!」となっており、

「いい加減、本質を追及しようぜ」という流れになっている、という大きな意識の流れがあるそうです。


いわく、「Pharell Williams が "Happy"という歌を歌うのは、世界の人々がハッピーになることを望んでいるからだ。」

https://www.youtube.com/watch?v=y6Sxv-sUYtM

らしいです。

われわれがみなハッピーになりたいというイメージを持っているから、"Happy"を歌うPharrell Williams が存在する、という少し哲学的な見方。そういうレベルの話。

これは「5人でギターを弾くバンド」のWalk Off The Earth もカバーしていたり、最近不思議とよく聴く曲です。


経済的にというよりか、これからの文化的な存在としての生存が、どれだけ本質的に生きられるかどうかというところにかかっているという大きな話だそうです。

元Appleで何年もイベント関係の大きな仕事を動かしていた人が言うのは非常に重いです。

だから、今どんな業界でも「らくして~できる」系のうすっぺらい言動はぶっとばされます。心の底からまじで死ねというレベルで嫌われるということです。

まあ、今更そんなことをする人はいないと思いますけど・・・

そういう社会全体の人々の心の変化を感じられなければ、死。

世界的に来ている本質の時代。多くの人が感じているであろうことだと思いますが、こうして業界の先輩の口からはっきり告げられたことで、確信に至りました。いよいよですね。

自分をだまさず、本質的に生きるということに、自分の存在が賭かっている。

後悔なきよう、生きましょう。

ライブ黒字化はじめの一歩は?

Frekul Talk Live Vol.7 レポートです。

テーマは「ライブをいかに黒字化するか」です。

Live音源レコーディング&ダウンロードカードサービス LiveLockOn を運営されている天野翔さんは、

大前提として、ある音楽メディアが発表しているデータを提示しました。

音楽を買わない人の「音楽を買わない理由は何か」というアンケートの調査結果、

1位が「今ので満足だから」50%です。

2位が「買いたい曲がない」でした。

という状況で、つまり言うまでもなく音楽作品というかCDや音源というものが売れないというのはもうどうしようもない事実ということですね。

そんな時代にあって、収益を上げていくには「ライブ」に付加価値をつけていくのは必須。

「音源パッケージとしてのCD」にファーストコンタクトで魅力がないのは間違いないので、

自分たちだけの独特のコンセプトつまり付加価値を感じるような魅力をつけ、ライブに呼び込んだ後で、グッズとしてCDを受け取ってもらうという流れが主流です。

そのためにどうすればよいか、「ロックオペラ」というまさにライブ命のコンセプトのバンドを主催している天野さん、およびイベント企画業に携わる元Apple現Peatixの山宮さんが講義します。


ライブを黒字化するためには?

最初に上がった一言は


ずばり「コストを減らす」


ビジネスでは当たり前のことですが、音楽活動をまじめにやる上でももちろん大事なのです。

しかし、多くのバンドマンはなぜか、コストを減らすという意識がまったくなく、自分から貧乏になりにいっている。

このことは、海保さんが説明してくれました。


海保さんに相談をもちかける困ったバンドマンの典型的な例はこうです。

・月に3-4回もライブを入れている
・毎回5人くらいしか集客できていない
・ライブハウスからの「出演依頼」(ただの営業)に喜び、またすぐにライブを入れる

それで、「CDつくりたいんですけど毎月5万も出費しててつくれないっす」と言う。

こんな状況の人には「・・・ふう。どこから手を付ければいいのか・・・」と海保さんも困ってしまうそうです。

まずは、いちばんの出費の原因であるライブの回数を減らし、ひとつひとつのライブに確実に黒字できるくらい集客するということを意識しなければはじまりません。


しかしこのバンドマンという民族は、

毎回高いノルマ(出演料)を払わされるライブを月に何回もやって、それでお客さん数人で、なんてことを毎回やっていたら

コストが高くなるのは当たり前なのに、

「ライブを減らしたら?」

という考えがなぜか出ないのです。

ライブハウスビジネスに洗脳されているので仕方ないといえばそれまでですが、それでも明らかにいけないのはよく考えればわかるはずです。

そのままじゃいずれつぶれるだけですよね。

本当に音楽をやり続けたいなら、どこかで真剣にライブ黒字化を考えなければいけないわけです。


どうやら、バンドマンには「赤字でも貧乏でもライブしているおれカコイイ」みたいなプライドがあるようです。

「カネないんすよー」と言いながら高い機材を買って高いノルマを払ってライブをし「今月やばいっすー」などともらすのがスタンダードな精神になっている。それが何か心地よくなっているんですね。

これがふつうになってしまったらもう死。


絶対に、「ライブを黒字化する」と意識しないとままなりません。


でも、いきなりお客さんをたくさん呼ぶことは難しいよ!という声が聞こえますね。

そんな場合に海保さんは言います。


まずはすごくせまいところでいいから、ちいさいところでいいから、

なるべくライブハウスのような高いノルマを払わされるところでなくて、

ライブカフェや小さなライブスペースを見つけて、そこでライブを繰り返し、トップになるところからはじめてみよう。

いま、そういう場所はたくさんある。


冷静に考えれば、そういう方法に気付くはずですよね。

海保さんのバンドSONALIOも、一時ライブハウスに出ることをやめ、お金のかからない路上ライブに集中していたことがあります。

自分たちだけの機材で、自分たちのことを知らない人を惹きつけなければいけない路上ライブ。純粋な実力を試す良い機会だったといいます。


そういうことをやっていたわけです。路上ライブはもっともかんたんで原始的な方法ですが、今はもっといろいろな場所が探せばある。見つけようとしていないだけで。

メルマガでも紹介したSleepy Head Jamie というユニットはハンバーガーショップでライブを繰り返し、有名になっていきました。

空間デザインに音楽は最適な道具。気軽にライブを行えるユニットには付加価値があります。

世界中探してもお金のかからないライブスペースが見つからなかったとしても、インターネットでも路上でもできる。


まずは、「ライブハウスに出てライブをしなければならない」という思考を捨て去ることです。

出るなというわけではありません。

きちんと動員を増やして黒字が期待できるなら堂々とライブハウスに出演すればいいのです。動員が多ければハウスも喜びます。



シンプルですが、確実に一歩踏み出すための最初の方法はこれです。


この基本的な意識があることを前提に、次からは天野さんや山宮さんがより革新的な知恵を貸していただけます。

ライヴに集客する方法

Talk Live Vol.7の続きです。

(Vol.8は5.25にさらっとやってしまったので、これが終わったらはVol.9です)

テーマは

「(バンドが)ライブに集客する方法」

です。

これをメインで話されたのは、チケット販売・イベント運営サービスなどを行うPeatixの山宮さんです。

http://peatix.com/?lang=ja

山宮さんは元appleで、日本でiTunesを軌道にのせるマーケティングを行っていました。

現在はPeatixで、面白いイベントの企画や運営を考えています。

そんな山宮さんですから、「いかに面白いイベントを企画し、お客さんを集めるか」という問題には明確な考えを持っています。

ミュージシャンがライブに顧客を動員するためにはどうするか、というテーマについて、ミュージシャンが盲点になっている新しい視点を与えてくれました。

結論をまとめると、ポイントは

・Promotion Eventというムダごとをやめる
・集客が目的になってはだめ
・集客に特別なことはない
・呼んだお客さんを全員確実に満足させることができるかをはかる

です。

では具体的に見ていきます。

まず、ライヴにお客さんを呼ぼう、という精神がないバンドマンは論外。

きちんと自分たちの活動を届けたいという意識があることが大前提として、

お客さんを呼びたいと強く思えるようになるのが第一歩。

で、問題はそこからです。

まずは、ライヴに対するスタンスから。

いけないのは、Promotion Event のような気分で進めようとすること。

プロモーションとは、つまり「自分のことを知ってもらうためにライヴや音源配信などの活動をすること」

「CDでます!」「新曲できました!聴け!」「ライヴやる!こい!」

などという告知活動に明けくれることです。

これは一見まともなようで矛盾してます。

ふつうに考えればわかるわけですが、そもそも誰も自分のことを知らない、もしくは知らない人が圧倒的に多い段階で、

自分らに興味のない人・知らない人に「新曲でたよ!ライヴやるよ!」

などと言ってもムダ。とうぜんすぎる。

プロモーションはすでにファンができている人たちがやることであって、これからやっていく人がやってもムダなわけです。

わたしたちはインディーズです。大手のやり方をマネしても勝てるはずがない。

それなのに、こういう「ショットガン告知」に「ハードコアがんばり」を繰り替えしてれば勝手に動員が増えると思って、えんえんとやる。

それは徒労だし、悲しいので、やめること。



もうひとつスタンスについて大事なこと。

それは、やってるうちに、どうしても集客が目的になってしまう。これはいけない。

イベントやライヴのゴールは集客ではありません。

そもそも何かしらの企画意図があって行うライヴで、集客はそれをお客さんに届けるための手段です。

そこをはき違えないこと。



では、具体的にやること。

まずは、集客に特別なテクニックなどはない、という事実を知る。

多くの場合、集客、マーケティングときくと、

広告、営業、根回し、SEOうんぬん、掲示板まわり、ステマなど手練手管を駆使して、なんとか効率よく客を捕まえるためのスキルだと思いがち。

しかし、集客に特別なスキルなどはなく、「集客」という行為において自分がなし得る役割を分析すること以外は必要ないということです。



どういうことかというと、まず

自分の純粋な集客能力を見つめてみる。

ともだち、なかま、ソーシャルフレンドなど、すべての人脈やコミュニティをたどって、

本当にライヴに来てくれるだろう人物にどれだけアプローチできる力があるか?を確かめるのが第一歩。

名もないうちは、自分が誘うしかないんだし、自分が知らない人にいきなり来てもらうなんてことはありえない。

ツイッターでショットガン告知してもムダ。親しい人以外、所詮だれも反応はしない。

正直に判断して、自分のライヴをお金を払って見に来てくれる人はどれだけいるのか、まずはメンバーひとりひとりがその数字を出すのです。



では次。自分らが誘った人が確実に来てくれたとして、その人は次のライヴにも来てくれるのか?

つまりリピート性を考える。

とうぜん、次のライヴにも、その次のライヴにも来てくれるようにするためにはどうすればよいか、考えなければならない。

たいていは、こない。

なぜか。

それはかんたん。「またきたい」と思わせることができていないから。

この段階では、来てくれた人は「付き合いできてる」が本音。「応援してるぜー」くらいの気持ちしかなく、パフォーマンスに期待はしていない。

だから、なんとなく見て、なんとなく終わり、「また今度ー」みたいな感じで別れておしまい。次はない。

とうぜん、「組んではじめてのライヴですからー実験ー」みたいなノリではここで終わることになる。

しかし、動員を増やしていくためには、ここでいきなりマジ本気ぶっちぎりのパフォーマンスを披露して、「え、こんなすごかったんだ・・・やべえ」と思わせないといけない。

呼んだすべてのお客さんに、100以上の満足を与えること。それが必須。

全員を満足できなければ、とうぜん、次のライヴ動員は確実に減る。

それができているか?をきちんとはかる。

アンケートやツイッターでもいいから、正直な反応をみる。

(こういう作業は事務所に所属していればマネジャーがやるが、インディーは自分らでやるしかない)

でもそれって、そんなに厳密に感想をきかなくても、ライヴ後のお客さんの顔や反応を見ればわかるもの。

すごいライヴをぶつけた後は、「よかったよー」的な軽いノリの言葉なんぞはこない。

「・・・」という、ちょっと挙動に困る感じ。あるいは「なんかほめてるみたいだけど何言ってるかよくわからない」つまり混乱しているような態度になっている。表情が違う。

つまり言葉を失わせるくらいの衝撃やエモーションを与えることができてれいれば、そうなる。そういう反応を見る。

「よかったー」「すごー」的な言葉はただのあいさつ。まったく感動していないから、そういう言葉が帰ってきたら反省する。

とにかく、「その場にいる人全員を確実に満足させる」を徹底して実現する。

そうすれば、そのお客さんは「付き合いの人」でなく正式に「ファン」になる。

ライブの本数は少なくても、どんな小さな場所でもいいから、とにかくその場の全員を100%以上確実に満足させられるパフォーマンスを練り上げ、毎回確実に提供すること。

すると、満足した人たちが、次は口コミをつくり、べつのお客さんを連れてリピートする。

これを毎回のライヴでやれば、確実に動員は増えていく。

たいていのバンドはここを超えることができないが、売れているバンドはだいたいこのプロセスをクリアしている。

もらった代金に対して、期待以上の対価を与えるということ。その当たり前のことを毎回続けていく克己心、それが自分にあるか?

そこをきちんと見極めてください、ということでした。

集客に、特別なテクニックなどはありません。

ただ、己の腕に磨きをかけて、毎度のライヴに命をかけてやる。それが一番大事なことです。


この話をしているときの山宮さんは、熱かった。おもしろいイベントの企画、集客への情熱が伝わってきました。

これくらいのことをスタンダードのマインドにするだけで、バンドは確実に成長するはずです。

ダウンロードカードというビジネスモデル

Frekul Talk Live Vol.7 続きです。

「ライヴに集客する」

というテーマから一歩進んで、

「ライヴを黒字化する」

という内容をメインに話されたのが、

ロックオペラバンド「ラクロワ・デスフェール」リーダーの天野翔さんです。


天野さんの「ロックオペラ」というバンドは、

ヴィジュアル系×メタル×クラシック×舞台芸術

というような、自分が愛するアートの要素を複合して生み出したオリジナルコンセプトです。

そして、これは明らかにライヴに重きを置いたコンセプト。ライヴを黒字化できなければ継続できません。

そこで、ライヴを黒字化するにはどうすればよいか、という課題を解決するために、

Live音源ダウンロードカード

というサービスを発明しました。

サービス名は「LiveLockOn」

http://www.livelockon.com/


これの説明にいく前に、ライヴ黒字化のポイントを教えてくれます。

・コストをおさえる

むやみやたらにライヴを組まず、毎回のライヴで確実に収益を上げるために、ひとつのイベントに全力をあげる。

・プロモーションイベントをやらない

これは、前回述べた通りです。

・動員を増やす

これも前回の通り。


これらの前提要件を満たしたうえで、さらに収益を拡大するためのポイントは、

ずばり「グッズ」です。これしかありません。


アイドルグループやヴィジュアル系バンドは、ライヴでの収益をかなりの部分グッズで上げています。

会場に行ったことがある方はわかると思いますが、まるでお祭りですね。うちわやらタオルやらTシャツやらポスターやら、とにかくメンバー関連のアイテムが大量に売られています。


ライヴイベント自体の入場価格なんてたかが知れてますから、そこで収益を上げようとはふつうしません。

一度のイベントの収益を最大化させるためには、グッズ販売とその後の展開(ファン化・リピート)にまでつなげる用意が必要なわけです。


天野さんは、ダウンロードカードというビジネスモデルを導入することで、この「グッズ販売」「その後の展開」の両方を補うライヴモデルを作り上げています。


構造はこうです。

ライヴ本番の際、演奏を録音します。天野さんの会社のスタッフが録音します。

次に、その音源をネットにアップします。

それをダウンロードできるパスワードが取得できる「Live音源ダウンロードカード」を会場で販売する、というわけです。

お客さんの体験する流れとしては、

大好きなバンドのすばらしいライヴ演奏が終わって余韻にひたっている時に、

「今日のライヴ音源ダウンロードできます!」というアナウンスがメンバーからかかる。

すると、素敵なデザインが施されたオリジナルのカードアイテムがあるではないか。

「これに書かれているダウンロードコードと、氏名とメールアドレスをLiveLockOnというサイトで入力すると、今日の録音した音源を1度だけダウンロードできます」とのこと。

今日の演奏はすばらしかった、セットリストもいつもと違ったし、MCの時にドラムの人がおもしろい話をした、それに感動した。

この体験をもう一度味わえるというわけか。しかも今日限りの販売だから今しか買えない。

買う。

という仕組みです。


付随的な特徴として、

これはただの数字が書かれたカードでなく、デザイン可能な、きちんとコレクショングッズとしての機能を持ったカードであること。

自分でデザインしてもよいし、デザイナーさんに仕事をお願いしてもいい。ほかのクリエイティブな仕事を巻き込めるわけです。

また、その日その瞬間だけの演奏を録音した音源で、しかもダウンロードは1回のみ可能という設定。よって唯一の希少な付加価値があり、ファンにとってはのちのちプレミア化する可能性もある。

その日これないともだちのために、複数購入するということや、ヤフオクで高値で取引されたりという現象も起こりうるわけです。

そして、カードの販売価格は自分で決定可能。相場は1000円くらいらしいですが、よく売れているそうです。

また、ライヴをするたびに録音していれば、その都度カードが増えていく。その日かぎりの販売に限定しなければ、ライヴを重ねるごとに、販売できるカードが増えていくわけです。


かつて70年代にThe Greatful Deadというバンドが「ライヴ音源を生で高音質録音してその音源CDを後で配達する」というサービスをやって、ビートルズより稼いでいたといいますが、

それのデジタル版ですね。


このカードのすごいところは、「その後の展開」につなげる力を持ったグッズであるところ。

グッズ販売が単発で終わらず、継続的にでき、しかもライヴをするたびにグッズが増えていく、ということが可能なわけです。

今までのグッズ販売は、Tシャツやバッジやタオルなど、希少性や非コピー性は高くても、一度買ったら満足してしまうものばかり。新たなファンを増やし続けないかぎり、継続的な収益は望めませんでした。

しかしLiveLockOnカードは、希少性もあり、毎回買いたくなる、集めたくなる、という性質を持っています。

グッズ販売を毎回でき、収益化を常に維持できるシステムとして成り立つわけですね。


これは、ビジネスとしてもかなり可能性を秘めていて、たとえば落語や舞台など、バンドでなくともライヴイベント系のコンテンツには流用可能なわけです。

しかも、LiveLockOnはバージョンアップを重ねており、今後はただLive音源を録音してダウンロードさせるだけでなく、音源のストリーミング配信や動画収録までできるようになる可能性があるとのこと。

ストリーミング配信にすればコピーはできないし、ライヴ終わった帰りにすぐ音源を聴くことができる。しかも動画つきで。かなり唯一性と即効性の強いコンテンツです。

そしたら、興奮さめやらぬファンの購買意欲は高まります。家に帰るまでの間に、その日のライヴをすぐ楽しめるわけですから。


ダウンロードカードのデザインという、デザイナーの新たな仕事もできます。有名なバンドならば、CDジャケットデザインと同様に専属契約とかもありそうです。

音楽や視聴コンテンツを中心に、すごいクリエイティブ市場が連鎖的に創造される可能性を秘めているのです。


これがLiveLockOnの概要です。もちろん天野さんはご自身のバンドで導入していますし、すでにいくつかのバンドが取り入れていて、順調に収益を上げているそうです。

ある元メジャーバンドは、来場者の80%が購入したとか。

これからのライヴ収益化に必須のアイテムになりそうです。

LiveLockOnの今後の動向に注目です。

Frekul Talk Live Vol.7 まとめ

Frekul Talk Live Vol.7まとめです。

全体テーマは「ライヴをいかに黒字化するか」

登壇者はいつもの海保けんたろーさん&jMatsuzakiさんと、ゲストの

ロックオペラ「ラクロワ・デスフェール」リーダーおよびLive音源ダウンロードカード制作サービス「LiveLockOn」提供者の天野翔さん。

http://www.livelockon.com/

チケット販売、イベント運営などを行うPeatixの山宮徳晃さん。

http://peatix.com/?lang=ja


ディスカッション1「ライヴ黒字化はじめの一歩は?」

これは登壇者全体一致で、

「コストを減らす」

という結論。具体的には、やみくもにライヴを入れず、本数を減らす。そして、どんなに小さい場所でもいいから、なるべくお金のかからないライヴスペースとかを探して、そこで一番になる。

ライヴを中心に活動していきたいならば、それがまず最初の一歩となります。


ディスカッション2「ライヴに集客する方法」

イベント企画と集客のプロ山宮さんがメインで講話。ライヴ動員を確実に増やしていくためのポイントは

・Promotion Eventというムダごとをやめる
・集客が目的になってはだめ
・集客に特別なことはない
・呼んだお客さんを全員確実に満足させることができるかをはかる

大前提として、「てっとりはやくお客さんを集める特別なテクニックなどはない」ということ。

特に大切なのは、最初はどんなに少なくてもいいから、とにかく自分の人脈を最大限駆使して人を集め、そのきてくれた人たちを全員期待値以上に満足させる。それを繰り返すこと。

毎回100%以上の本気でライヴを提供するということ。それを徹底する。それができなければ、永遠に動員が増えることはない。熱い講義でした。


ディスカッション3「ダウンロードカードというビジネスモデル」

ロックオペラバンドというライヴ主体のコンセプトのバンドを主催し、

ダウンロードカードLiveLockOnを考案・サービス提供している天野さんがメインで講話。

ライヴの収益化をアップさせるためのツールとして、Live音源ダウンロードカードがどのように機能するかを解説しました。主な特徴は、

・Live演奏を録音してサーバーにアップ
・カードに記載のコードを入力すると録音されたLive音源をダウンロードできる
・ダウンロードは一回だけ可
・譲渡可
・販売価格はバンドが自由に設定可能(最低価格200円から、相場は1000円くらい)
・購入率は6-8割超えというすごさ
・カードはデザイン可
・ライヴのたびにつくればコレクショングッズになる
・プレミア化する

などです。音源ダウンロードという付加価値がありながらグッズとしても楽しめるというすばらしいアイテム。

これでLiveの思い出音源をLock On(録音)、お客さんのハートをキャッチ、あなたのLive収益アップ!というわけです。

いろいろクリエイティブな拡大可能性がある、かなり画期的なアイデアです。


今回はライヴ黒字化に関するマインド的な話と、具体的に収益アップさせるツールの紹介と両方あって充実した回でした。

では最後に登壇者よりライヴ活動を行うみなさんへのメッセージ。ここが一番のみどころ。

海保「音楽活動を通じてそもそも自分がどうなりたいのかを見極めることが大事」

天野「海保さんと同じ。なぜ音楽をやっているのかという問いをし続けること。音楽をやろうと思った時の感動、初期衝動を思い出して、それを伝えるような生き方をしてほしい」

山宮「世界の【気運を】感じろ。
世界の人々の思考調査をすると、2013年後期くらいから現在まで、
全世界の人間が、

「テクニック、スキル、手練手管、こうすればうまくいくああすれば儲かるうんぬん・・・あーーー!!!もういいかげんこういう話はいやだーーー!!!!」

となっている。だから、いまそういうことを言っているヤツは間違いなく冷たくスルーかぶっとばされる。
本質的に生きた人だけが生き残る時代。
世界全体にそういう傾向というか【気運】が間違いなくきている。
だからいろいろなテクニカル論に溺れないで、純粋に、自分の求める音楽を追及して」


という感じでした。集客に関する話はどんなイベントを行う人も参考になる貴重なお話です。誰もがこの話から何か活動のヒントが得られるはずです。

今回はここまで。

Frekul Talk Live Vol.8 2014.4.28

Frekul Talk Live Vol.8

Frekul Talk Live Vol.9の内容を出していきます。

この回は

音楽ビジネス系の権利関係に詳しい弁護士の

河瀬季さん

音楽クリエイターの使用権販売サイトCREOFUGA代表取締役の

西尾修一郎さん

クレオフーガ
http://creofuga.jp/

でした。

メインは音楽著作権についてだったのですが、法律の話だけに、たった1日の講義だけのわたしの理解度で間違った知識を与えてしまうことは危険なので、

著作権の話については割愛し、重要なキーワードだけ出しておきますね。これだけは調べておいた方がいいです。


・著作権
・著作人格権
・演奏権
・原盤権
・グッズ売り上げ権

このうち、特に注意すべきなのが「原盤権」と「グッズ売り上げ権」です。権利関係を結ぶさいは必ず調べておきましょう。河瀬さんに相談をお願いすれば完璧です。

では、西尾修一郎さんのお話も公開しておきます。

クレオフーガは「音楽を必要としている人と音楽を作っている人」を直接結び付けるサービスで、

作品登録側は個人単位の音楽クリエイターが多く、クライアント側はアプリゲーム会社などが多いようです。

中間業者を介さず直接取引できるところがスマートでまさに現代的。

西尾さんはほかにオーディオストックというサービスもやっています。

http://audiostock.jp/

これは「BGM/効果音のマーケットプレイス」ということで、クリエイターは自分の作品を登録して販売することができます。


作った曲を販売したい人はバンバン登録しておくとよいですね。

両方とも「家でパソコンを駆使して音楽をつくりあげるクリエイター」系の方に多く利用されているサービスです。


西尾さんがサービスを立ち上げた動機は、自分自身がこのようなDTMクリエイター系の音楽制作をしていた経験のようです。

音楽を生み出す人がそれを欲する人のところへスムーズに曲を届けられるといいなという願いを実現したものです。

オーディオストックの役割は、音楽業界のムダをなくし、音楽の産地直送を実現することだということ。

「産地直送」これって今の時代のキーワードだと思います。あらゆる産業が中間のムダによって利益を吸い取られている。ならばできる限りスモール化してやっていこうという動き。

とくにインディー産業はこのやり方がふつうです。


アメリカではオーディオストックのようなサービスはふつうにたくさんあります。Music Licencing Industry といいます。

ということは、つまり自分で楽曲を管理しようという意識が高いクリエイターたちが多いということ。

日本にはそういう意識を持っているクリエイターおよびミュージシャンが少ないから、そのマーケットがまだないようですね。


最後に登壇者からのメッセージ。

西尾さん「ミュージシャン本人がきちんと楽曲を管理していける時代なのだから、しっかりやっていきましょう。」

河瀬さん「原盤権とグッズ売り上げ権の行方だけはしっかり調べましょう。

海保さん「楽曲の権利は個人で管理できるのだから、やれ」


今回はこんな感じです。ではまた。

Frekul Talk Live Vol.9 2014.5.19

Frekul Talk Live Vol.9 5.19.2014

Vol.9「SNSの活用方法」です。

登壇者はFrekul代表海保けんたろーさん、jMatsuzakiさんと、ゲストの


バンド「打首獄門同好会」リーダー大澤敦史さん。

http://www.uchikubi.com/pc/

株式会社トライバルメディアハウス、音楽系ソーシャルプロデューサーの高野修平さん。

https://tribalmedia.co.jp/recruit/interview_takano.html


です。


大澤さんはSNSを積極的に音楽活動に取り入れているプレイヤーとして、

高野さんはメディア業界で培った専門知識を自分の好きな音楽業界に提供するプロデューサーとしての視点から、お話してくださいました。


テーマはバンドマンなどの音楽活動をしている方々が、ファンを増やした他者との関わりを深めていくための「ソーシャルメディアの活用法」です。


が、いわゆるメディアを駆使したブランディング方法とかマーケティングテクニックといったものをレクチャーしたわけではなく、

もっと視点の高い話をやりました。どうやってSNSを使っていくか、その本来の役割は何か、ソーシャル上でどう振る舞い、そこで人々とどう関わっていくか?などです。


まずは大澤さんの活用例から入ります。


「打首獄門同好会」は、かなりインパクトの強いコンセプトのバンドです。クレイジーさ、おもしろさ、ポップさ、ハチャメチャ感のようなものが全面に出ていますね。

そのようなイメージのバンドなので、SNSを使ってアピールする際も、自分たちのイメージに合った文脈での情報発信を行っているそうです。


イメージ的に、割とファンとの関係が近くなるタイプのバンドなので、近寄りがたいアーティスティックな雰囲気を作りこんだり、壁を作ったりはあまりしないという方針があるようです。


具体的にどのようなソーシャル発信を行っていくかは、そのような自分たちの気質から自然と導かれていくものなので、あまりテクニカルにSNS戦略を練っているわけではなく、

自分たちのイメージに沿った使い方をしているそうです。


たとえば

・意識しているのは「距離感」。あとは発信する「目的」。それを考えて発信している

・音楽活動だけのことや告知だけでは当然相手にされないから、外からは見えにくいほかの部分もからめて発信してあげる

・メインはツイッターとブログとYoutubeでの距離感近めな発信。ファンと直接メッセージのやりとりもする

・Facebookは使わない。「距離感」がつかみにくいことと、ツイッターに集中したいから。実名登録、広告など、バンドマンやアーティスト活動的な流れには余計な要素が多いく、活用しにくいから

・身近さや親しみやすさを感じさせてもいいと思っているので、「ラーメン食いました」系の発信も気にせずにやる

・Youtubeを使ってバラエティ番組的なノリのおもしろいこともやっている。「好き勝手やる」が信条。https://www.youtube.com/watch?v=0m2BKrmDFsU


とくに珍しいのがYoutubeチャンネルの動画。完全に深夜番組っぽいバラエティで笑えます。おもしろいです。

おもしろいことをやってくれる人たち、というイメージを自分たちもファンたちも認めているから、こういうぶっとんだことができるわけですね。イメージに沿っているからいいんです。

海保さんのバンドSONALIOさんたちがこのようなノリの企画をやられても困りますよね。獄門さんだから有効なことなわけです。

ただ露出すればいいというわけではなく、自分たちがどんなイメージを放っているのか、あるいは作っていきたいのかという方向性によって、おのおのやることは異なるわけです。


大澤さんはSNSを活用して存在感を高めているバンドとしてのリアルな例を提供してくださいました。


ここから発展して、高野さんはより高い視点から、プロデューサー的な考察と戦略思考を交えて、われわれがどうソーシャルと付き合っていくのがよいか、講義してくださいます。


で、つづく

『アナと雪の女王』がバズる仕組み

Frekul Talk Live Vol.9 公開中です。

前回は打首獄門同好会の大澤敦史さんが、SNSを活用して活動のアピールをしている具体例を紹介してくださいました。

それを受けて、株式会社トライバルメディアハウスの高野修平さんが、より高い視点からSNSの役割と賢い使い方について解説します。


高野さんは音楽活動に特化したソーシャルマーケティングの専門として著書も3冊出版されます。

最新著書は『始まりを告げる世界標準音楽マーケティング』
http://takanoshuhei.com/

しかし所属するトライバルメディアハウスは音楽とは関係のない分野でメディアつくりをする会社です。

ソーシャルマーケティングを音楽に応用するのは高野さん個人の活動。もともと音楽が好きだったので、自分のお仕事を音楽活動に流用してこの業界を活性化させたいとの思いから、

当時誰もやっていなかった「音楽×メディアマーケティング」というテーマでブログを半年書き続けた結果、初の著書出版が決まり、音楽マーケティングの専門として認知されるようになったようです。

それで現在は The Novembers のマーケティングプロデュースも担当。幅広く活躍されています。


では本題。バンドマンやミュージシャンなどの音楽活動を行っている人が影響力を高めていくためのSNSの効果的な使い方について。

まず基本は

・SNSはそもそも宣伝ツールではない

あくまで交流のツール。そこを勘違いしない。

・広告とPRの違いをおさえる

広告は金を払えば自由にばらまける。「商取引」である。広告主がある程度自分でコントロールすることができるが、信頼度はない。

対してPRは金を払えばできるわけではない。「情報取引」である。自分ではコントロ―ルできないが、信頼度が増す。


ということです。

SNSを使って行うのは「広告」ではなく

「戦略的PR」とのこと。

誰もが広告や宣伝のつもりでソーシャルをやってますが、それじゃだめなんですね。

多くの人が「こんなにすごいことをやったー!すごいものができたー!」と宣伝すれば、一気に広がって人気者になるという幻想を抱いているが、

高野さんにしてみれば「そんなんで広まるわけないじゃん・・・」という感じ。

「いいものをつくっていれば勝手に広まるはずだ・・・」的な精神というのはクリエイター系には誰にもあると思いますが、

これは間違いなく妄想にすぎず、広まるにはきちんと広めさせるための設計が仕組まれているんです。

その仕組みが「戦略的PR」なのです。広告・宣伝はひろまるかどうかはギャンブルですが、PRはプロがきちんと戦略的に広めるわけです。


ではその「戦略的PR」とは何か。短い時間だったのでエッセンスだけしかお聞きすることはできませんでしたが、考え方はこうです。

・活動情報をデザインし、「カジュアル世論」を形成するようなイメージの情報発信を仕掛ける

「カジュアル世論」とは、「公・バッタリ・お墨付き」の3つの性質があるトレンドのことです。

「公」を表す媒体は各種メディア、「バッタリ」とはつまり口コミで、「お墨付き」は権威性のことです。


Webニュースやブログでも毎日みかけ、会う友達がみんな口にして、有名な人まで話題にしている。そういうのが広まるニュースの要素です。

バンドのマーケティングプロデュースをする際も、ひとつの活動でどれだけニュースを量産できるかがカギとなります。


ひとつのコンテンツでできるだけ多く(最低5つ)、息が続く限り無限にニュースを連鎖させるというのは、メディア人がコンテンツをプロデュースする際、ソーシャルで影響力を拡大させるためになくてはならない要素であり、これをバンド活動に適用させたのが高野さんです。


例としては、これは映画の話ですが、「アナと雪の女王」などは今どこにいっても耳に入ってきます。目に飛び込んできます。

Facebookで友達が、ブログやニュースで感動の感想が、キャストの情報、音楽の情報、髪を切りにいった先で美容師さんが・・・行く先々で、みーんな話題にしています。

これらはみんな戦略的PRとして仕掛けられているカジュアル世論なわけです。

映画がすばらしいのはもちろんですが、素晴らしい映画はつねにいつだって上映されています。

その映画をどれだけ多くの人に届けるか、というPRの設計は、映画の制作とはまた別でプロが戦略的に練っていて、それでこれほど爆発的に広まっているわけです。

ディズニーの恐ろしさがリアルに体験できるのがアナ雪です。まるで見ていないのが異常みたいに思われるほどそこらじゅうにニュースがあふれています。

ディズニーは歴史上なんどとなくこれを繰り返してきてるわけですから、もはや映画業界とか超えて最強のメディアになっているわけです。


ここまでいかなくとも、高野さんも本質的にはこれと同じことをバンドでも仕掛けるわけです。



バンドの活動情報やコンセプトを、カジュアル世論を形成させる3つの性質を含むニュースに設計して発信するのが、戦略的PRのひとつの重要な要素です。


では、高野さんがじっさいにどのように戦略的PRを組んでバンドをプロデュースしているのか。高野さんが組んでいるThe Novembers を例に解説します。


つづく

ありそうでなかった?「シェアCD」というコンセプト

Vol.9「SNSの活用方法」いよいよ音楽マーケティングプロデューサー高野修平さんのプロデュース実例暴露です。

前回解説した「戦略的PR」という基本軸をもとに、実際に高野さんがどのようにバンドを売っているか。


直近の例が、2014.5.14に発表のThe Novembers のNew Single『今日も生きたね』です。

これは「シェアCD」というコンセプトとして売り出されています。

http://ro69.jp/news/detail/101819


「シェアCD仕様は、購入者本人用のディスクとシェア用の紙ジャケットが同封される。
シェア用の紙ジャケットには歌詞カードと、宛名と贈り主を記入する欄が設けられたディスクが封入される」

とあるとおり、つまり同じCDが二つ入っていて、ひとつは自分用、もうひとつは大切な人にプレゼント(シェア)する用、というコンセプトです。

シェア用のCDには宛名と送り主を記載する欄(to~,from~)があるというのが粋です。ただ余りものをばらまいて、というのではなく、きちんと思いを込めて大事な人にシェアしてね、というメッセージなわけです。

また、この曲のPVは「ワンシーンワンカットのみ」でつくるというコンセプトもだしており、ここでも他と差別化をはかっています。

ほかにも3時間限定でフリーダウンロードを実施したり、話題を重ねています。

https://www.youtube.com/watch?v=vngPMNcse6k


「新曲発表」というところからはじまり、

「ワンシーンワンカット」のPVでまた記事ができ、

次に「シェアCD」とは何ぞ?というところでまた記事ができ、

3時間フリーダウンロードで
http://natalie.mu/music/news/117223

メンバーのインタビューで
http://music.emtg.jp/special/201405038351c66f4

高野さんのインタビューで
http://takanoshuhei.com/2014/05/sharecd/

と、ひとつのシングルでどんどん話題が派生するように仕組まれています。

「シェアCD」というコンセプトも「デジタル依存時代だからこそ、手渡しでシェアという共有の原点に立ち返ろう」というメッセージが時代性にあっていて響きます。


ただ「新曲できましたー!」などという発表は素人。プロはひとつのシングルを売るためにあらゆる手を尽くして広めるわけです。


高野さんは1シングルにつき6はニュースをつくるのだとか。それくらいは最低やらないと今の時代は売れません。


もうひとつこれがはやった理由。

「同じCDを2枚同梱して誰かにあげる」という試みのCDは別に新しいアイデアではなく、これまでにも似たようなやり方はあったのですが、

「シェアCD」というネーミングが新しかったのですね。新しいアイデアそのものを発明したのではなく、すでにあったアイデアを再デザインして利用しただけなのです。

ソーシャルの発展によって「シェア」という言葉が市民権を得た時代なので、イメージとしてすぐに浸透することができたわけです。

このネーミングによって「前にも似たようなんあったな」ではなく「シェアCDって何?新しい!」というフレームで認知されるわけです。

「ありそうでなかった感(ほんとうは前にもあったが)」「そんなのあるといいよね感」のような潜在ニーズに見事にはまったコンセプトです。


すごい仕掛け。これが高野さんの手腕です。


で、ここでのソーシャルの活用方法ですが、

こういった戦略的PRでは、FacebookやらTwitterやらYoutubeやらをそれぞれ個別に具体的にどう使っていくかという考え方はないということがおわかりいただけると思います。

特定のSNSをどう使うかとかという話ではなく、まず「シェアCD」という切り口でバズらせるという大きな絵を描いたうえで、

そのPRのためにはどのソーシャルがどういう機能を果たすのかを吟味して用途を決める。この例ならばYoutubeは「ワンシーンワンカットの動画で」などとあらかじめ戦略の中に組み込んで回すというやり方なのです。

Twitterを日々効果的に使うにはどうすれば・・・などというゲリラ的な考え方は最初からしてないわけです。

それくらい、練られたPRは発信される情報があらかじめ決められているということ。完全に仕組みが仕掛けられるようになっている。

逆に言うと、個人活動的な人々よりはライヴ感覚というか臨場感というのが薄まるかもしれませんが、もともと大きなニュースが広まる波に乗っているので大丈夫なわけです。

ある程度有名なバンドだとメンバーがそれほどがんばって個人で情報発信したりしなくていいという理由はそこにあるわけですね。


これはトップの技ですが、これくらいまでいかなくとも、今の時代バンドが自分たちを大々的に売っていくに同じくらいの工夫が必要だよということです。少なくともプロはこれだけやってる。

高野さんのようなプロを味方につけることは難しいと思いますが、こういうマーケティングの思考を持っている人間が、バンドには必ず必要だとのことです。

メンバーにいなければ、そういう考え方をもっているヤツを探して組むしかない。

そしてもちろん「自分たちの音楽活動を多くの人に届けたい」という精神を持っていることが大前提。

The Novembersもそのマインドを強く持っているから高野さんは協力しているわけです。

彼らも独立したバンドだし、高野さんも本業は音楽プロデューサーというよりは音楽に関係ない会社員。大メディア資本に頼ってやっているわけではないのですから、誰にも十分可能性があるのです。

誰かに言われて組んでいるのではなく、お互い共鳴して「やりたい」から組んでいる。そこが大事なんですね。

お互いを信頼し、やりたいことを好きにやっているからこその結果だと思います。


「戦略的PR」がどのようにして仕掛けられるかを垣間見れたのではないでしょうか。

Frekul Talk Live Vol.9 まとめ

「(バンドマンの)SNSの活用方法」というテーマで行われたFrekul Talk Live Vol.9総括とラストメッセージです。

登壇者はFrekul代表海保けんたろーさん、jMatsuzakiさんと、ゲストの


バンド「打首獄門同好会」リーダー大澤敦史さん。

http://www.uchikubi.com/pc/

株式会社トライバルメディアハウス、音楽系ソーシャルプロデューサーの高野修平さん。

https://tribalmedia.co.jp/recruit/interview_takano.html

でした。

ディスカッション1「バンドマンのSNSの使い方」

打首獄門同好会のリーダー大澤さんが、活動アピールのためにどのようにソーシャルを使っているかを具体的に話されました。

ポイントは以下です。

・意識しているのは「距離感」。あとは発信する「目的」。それを考えて発信している

・音楽活動だけのことや告知だけでは当然相手にされないから、外からは見えにくいほかの部分もからめて発信してあげる

・メインはツイッターとブログとYoutubeでの距離感近めな発信。ファンと直接メッセージのやりとりもする

・Facebookは使わない。「距離感」がつかみにくいことと、ツイッターに集中したいから。実名登録、広告など、バンドマンやアーティスト活動的な流れには余計な要素が多いく、活用しにくいから

・身近さや親しみやすさを感じさせてもいいと思っているので、「ラーメン食いました」系の発信も気にせずにやる

・Youtubeを使ってバラエティ番組的なノリのおもしろいこともやっている。「好き勝手やる」が信条。https://www.youtube.com/watch?v=0m2BKrmDFsU

ただやみくもに発信しているわけではなく、「打首獄門同好会」というイメージに沿った情報を発信しているのですね。

とくにYoutube番組がほかにないおもしろさを出しています。自由でいいですね。


ディスカッション2「戦略的PR」

高野修平さんがマーケッターの視点からソーシャル戦略を解説します。

業界に存在する「戦略的PR」という概念をおおまかに話してくださいました。

これはディズニーなどにも例外なく当てはまるロジックであり、業界の外側にいるわれわれにはとても知りえない「仕掛け人たちの思考」を知ることができたので、大変貴重な情報でした。

「公・バッタリ・お墨付き」の3つの性質があるトレンド「カジュアル世論」を形成するために、あの手この手で情報発信を仕掛けるのが戦略的PRポイントです。


ディスカッション3「シェアCD」

高野さんが行った戦略的PRの具体例として、The Novembers のシングルを「シェアCD」仕様として売っていったエピソード、その詳細をお話してくださいました。

「同じCDを2枚入れて片方を誰かにあげましょう」というアイデア自体は新しくないものの、「シェアCD」という見せ方をすることによってトレンドを発生させ広めていきました。

ソーシャルメディアを個別具体的にどう活用するかという考え方ではなく、どういう情報の見せ方をするかという全体的な流れの中にあらかじめソーシャルが組み込まれているという、

軍師の世界の思考をみせつけていただきました。


大澤さんはリアルなバンドのソーシャル活用具体例を教えてくださいましたが、高野さんの視点でまとめあげると、

ソーシャルは届けるための手段でしかなく、ツイッターはこう使ったからどうのこうのうんぬん・・・というノウハウなどはないということなのですね。

結果的にどれかがうまく機能したとしてもそれはあくまで結果であって、そのメディアが絶対必要だということではない。

核となるコンテンツと戦略がきちんとできているからうまく使えるだけだというわけです。SNSは有効な選択肢の一部でしかない。

打首獄門同好会さんも、自分たちがどうやりたいかというコンセプトとイメージが定まっていて、すでにコンテンツがよくできているから自然とうまい使い方ができるわけですね。


では登壇者からのメッセージ。

海保さん「自分たちのイメージつくりを意識してやって」

大澤さん「バンドマンは不器用。もっと器用にできる」

高野さん「何より先にしっかりよいコンテンツをつくって。で、それを届ける力のある人、つまりマーケッターを探して。あるいは自分らがそうなって。コンテンツがあれば勝手に広まるなどという幻想はないです」



というわけで、総括すると「うまいSNSの使い方などはない」でした。

でもそれじゃあちょっと真面目すぎるので、一応役に立つこと代わりに言うと「コンテンツ制作と、それを届けるのは別の仕事である」ということ。

「ソーシャルをうまく使えばのし上がれるかも」という幻想をまず捨てて、

きちんと良いコンテンツをつくるのに専念。これは当たり前。

そのうえで、ではそれをどうやって人に届けようかというのは、それ自体専門ができるくらい大きな仕事なのです。片手間じゃできません。そこをしっかり理解する。

それをバンド自らやっていくのか、専門の人と組むかの選択は必ずしなければなりません。

そして何より戒めなければならないのは「いいものをつくっていれば勝手に広まるはずだ・・・」的なクリエイターの妄想。そんなのは、ない。

わかってるつもりでも、心のどっかでは意外に根深く残ってるのがこれです。

ですが良いモノやコトってのは、広まるよりはつぶされるほうのがじっさいでしょう。

バッハモーツァルトベートーヴェンしかり、大きく広まったのはたいてい死んでからであって、彼らクラスの天才ですら莫大な時間が過ぎてやっと良さに気付くのが人間というもの、

それを「良いものだから必ず広まるんだ」と勘違いするのはバカです。そう思うのは勝手だが、広まるのは100年後ですよ、というわけ。

そして核心は、あなたのそれは100年後に残る作品か?たいていは「うーん」です。

だったら、弱いわたしたちは、素直に自分の力量を認めて、一生懸命今を生きて、その結果をその都度叫んでいく、それしかないわけです。幸運なことに今はそれができる。

モーツァルトはネットを使えなかったけど、わたしたちは使えるわけですから。やらない理由はないですね。

Frekul Talk Live Vol.10 2014.5.26

Frekul Talk Live Vol.10 概要

Talk Live Vol.10、いきます。

5.26「インディーズアーティストがさっさとアルバイトをやめて音楽活動に集中するためにできること」

■ 登壇者プロフィール


●海保けんたろー(SONALIO、Frekul)
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。 「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。


●津倉悠槙 (音楽プロデューサー)
1975年生まれ。
独立系音楽プロデューサーとしてバンド「蟲ふるう夜に」をプロデュースする傍ら、戦略系コンサルタントとしても活動。合同会社ノンターミナスFounder/CEO。
大学卒業後、エイベックスにて販売戦略の立案/遂行を担当。「ブリトニー・スピアーズ」のデビューや「バックストリート・ボーイズ」の日本市場での成功に寄与。
邦楽では「サスケ」、「ジャンヌ・ダルク」、「タッキー&翼」などを担当。
その後、アマゾン、米国M.B.A.留学、ボストン・コンサルティング・グループ、ギルト・シティ等で経験を積み、2012年より現職。慶応義塾大学学士号。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールM.B.A.


●モデレーター:jMatsuzaki(Frekul、ブロガー)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報としてFrekulに参画。



いつもはゲスト講師は2人ですが、津倉さんはご覧のとおり多彩な経歴で多用な語り口を持っているため、今回は津倉さんの単独トークという形でした。

トークライヴ10回記念にふさわしくものすごく濃い内容でしたので、まとめるのが大変ですが、かなり重要なことがいくつもでてきました。

元avex、Amazon、アメリカでMBA取得後コンサルティング会社勤務のち、独立してコンサルタントをやりながら音楽プロデューサーでもあるという、一線を画した知識と経験。

明らかに見えている世界が違うわけです。あまりに次元の高い講義だったため、会場は終始静まりかえっていました。圧倒的すぎました。

ただ、内容は具体的でわかりやすく、わたしたちが今の活動を考え直すのにすぐできることでしたので、きっと役に立つはずです。


テーマは「インディーズアーティストがさっさとアルバイトをやめて音楽活動に集中するためにできること」というなんともあからさまなタイトルでしたが、

だいたいセミナーのタイトルというのはわざと次元の低い切り口にしているわけで、津倉さんの口から語られるのは超シリアスで本質的な話でした。

ですので実際の内容は「自分の音楽活動を改善し、より成長していくためには何ができるか」ということでした。

こんなタイトルじゃ人が集まりませんwので、わざとキャッチ―なタイトルにしているわけですね。でも内容は本気。

本とかと同じで、こういう良い内容ものと、本当に次元の低いFxxxckingなものが、タイトルだけ見て同列に扱われるのはすごく歯がゆいことですが、そういう世の中です・・・


では前置きは終わり。今回は概要と結論だけおさらいしておきます。


・自分の生活にとってどれくらいの音楽収入があるのが良いのか、その基準を明確にし、実現していくことを考える
・いわゆる「プロのアーティスト」という呼び名の矛盾に気づく。「プロ」であることとアーティストをやっていくことは違う。自分はどちらになりたい?
・自分の音楽のマーケットを知る
・音楽収入の構成の構成と性質を明らかにする
・Amazonのビジネスモデルをバンドに応用する

という感じです。本当に、まるでグループコンサルティングでした。運営やら収支の管理やらにゆるいミュージシャンにとってはやや知恵熱オーバーヒート気味だったと思います。

しかし、知らないのと知っているのとでは将来致命的な差がでてくるでしょう。

MBAのプロコンサルタントが教えてくれてるんですからね。それもインディーズのミュージシャンなんぞに、受講料1000円で。ビジネスの現場だったらこんな額じゃすみません。

まことにこの場がどれだけ貴重であったか、計り知れません。会場の人数が少なかったことが非常にもったいなく思われます。


今回の内容を活動に導入すると、かなりスペシフィックに現実のデータを見ていくことになりますが、

「そんなつまんねえこといちいち気にしてられっか」と思うか「生き残るために、一度真剣に考えてみよう」と思って活用するかは、あなた次第です。

音楽活動費>生活費=死


それではTalk Live Vol.10、スーパー音楽プロデューサー&コンサルタント津倉悠槙さんの講義を明かしていきます。

一応「アルバイトをやめて音楽活動に集中する方法」という切り口なので、まずはお金の話からウォーミングアップという感じで始まります。


「バイトやめたい人挙手!ノノノノノ・・・ふーん。じゃあ、いくらお金があればいいんですか?」

という質問で始まりました。


だいたいみなさん「20-30万くらい」という方が多かったです。控えめですね。ほんとはもっとほしいのではn(ry

しかし、「なぜそのくらいの額なのか」その根拠を明確に示せるか?というと、みなさん「うーん」でした。

ここで津倉さんが示したのは、

「生活費とは別に」自分が月に音楽活動にいくらあるのが理想なのか、はっきり言える人はけっこう少ない、ということ。

つまり収入について真剣に考えていないということです。

まずはこういう金に対する無頓着マインドから変えていかないとダメだということです。


「どれくらいの音楽収入があればいいのかはっきりさせ、目指す額を知る」というのが最初の一歩。

自分のやりたいことによってどれくらいお金が必要なのかは変わってきますが、

駆け出しのインディーズミュージシャンの一般的な例として、たとえばバイト代と音楽収入含む全体の月の収入が20万だとします。

そのうち、家賃・食費などの生活費で12万、音楽活動に4万かけるとします。あと4万はなんだかんだで消えるか(w)へそくりするかで残します。


この「全体の支出のうち、音楽活動に使うお金はいくらあればよいのか」を明確にすることをはじめにやります。

ポイントは「今これくらいかけてるからこれくらい必要」ではなく「やりたいようにやるためにこれくらいあったら理想な額」を書くということです。

現在過去ではなく未来の基準で考えるわけです。今使っている額でやっていけてるなら、それでOKなはずなのでこのワークをやる意味がありません。


で、次に音楽収入で目指すレベルを決める。

音楽収入のレベルは3段階あります。

Lv.1 音楽収入=音楽活動費

Lv.2 音楽収入=音楽活動費+生活費

Lv.3 音楽収入=音楽活動費+生活費+フリーマネー(欲しいだけの額)


Lv.3まで目指すのは各自の自由な選択になりますが、Lv.1は間違いなく全員が目指すことになります。

月の音楽活動費は音楽活動で稼いだ金でまかなえて、給料を圧迫しないようになるところまで成長するのです。

そこから音楽収入で生活費までまかなえるようになってはじめて、バイトをやめるという選択が現実的になってきます。


おそらく多くのインディーズの人が、音楽活動費>生活費に近い状態になっていて、瀕死状態になっていると思います。

それを解決するのが、まずはLv.1の状態を実現すること。だから、まずはここを目指せというのが、最初の提案になります。

ここまでが基本の話。次からは「音楽で稼ぐとはどういうことなのか」「具体的にどう収入を上げていくのか」という話に発展していきます。


今回は以上ですが、少し補足します。


一応タイトルどおり、「みんなバイトをやめたいと思っている」ことを前提に話されましたが、本質的にはそれは重要なことではないのはおわかりですよね。

われわれはあくまで音楽活動を続けていきたいのです。有名になりたいとか売れたいとかはまったく別のカテゴリの話であって、別の戦略が必要ですが、その前の大前提として、

インディーズのミュージシャンはとにかく音楽がやりたくてたまらないから、続けるためのリソース(時間とお金)をなんとか確保したい、そこが重要なのです。


じっさいは満足に音楽活動さえできれば仕事をしながらでもよいという方も多いわけで、何も生活費含むすべての費用を音楽収入でなんとかしたいとは思わないの場合もありますよね。

というか、じっさいはそういう人の方が多いのです。

それなら「給料は減ってもやりたい仕事をしながら」とか「バイトを自分のペースに合わせて減らしたい」というようにそれぞれ願望は変わってきますから、それに合わせて、

ほしいだけの額の音楽活動費を洗い出し、そこを目指せばいいわけです。

一番いけないのが、漠然と「金は多ければ多いほどいいから、稼げるだけ」という思考。これじゃいろいろムリです、音楽活動というより人生が(w)。

なぜならそれではカネを稼ぐことが目的になってしまっているからです。カネは目的でなく手段です。

カネがモチベーションではエネルギーは出ません。カネは必要なだけあればよくて、そもそも必要な額以上ムリに稼いでも苦しくなるだけです。


いずれにせよ、ほかに財源があるなら別ですが、真剣に音楽を続けていきたいのであれば、

まずは最低限音楽活動費だけは音楽収入でまかなえるようになりませんか、というのが津倉さんの最初の提案です。

で、ここからコンサルタントのコンサルティングがさく裂していきます。

プロのアーティストにはなれない

Vol.10の2話目やります。

前回は、まず基本事項として

「どれくらいの音楽収入があればいいのかはっきりさせ、目指す額を知る」ことを最初にやれやということでした。

で、ここからが問題です。

どうやって音楽活動で収入を得るのか?


・・・・


それを考えるには、まず、音楽活動で収入を得るとはそもそもどういうことか?ということを明らかにしなくてはならない、という話をします。


津倉さんは会場のみなさんに「この中でプロのアーティストになりたい、目指しているという人はいらっしゃいますか?」という質問をしました。


とうぜん、ほとんどの人が手をあげました。


津倉さん「なるほど」という感じ。まあそうですよね。当然みなさん、音楽活動で収入を得ていきたい、つまりプロのアーティストになりたいと思っている。


が、わたし自身はこのとき手をあげませんでした。


自信がなかったからじゃありません。この質問の「裏」に気付いていたからです。


この質問にはある矛盾が含まれているのです。そこに気付いていれば、ここで手をあげることはできないのです。


音楽活動で収入を得るとはどういうことか?という問題も、その矛盾に気づくことからはじまります。


その矛盾とは「プロのアーティスト」などは存在しないということです。


プロとはProfessionつまり何らかのスペシャリティを持ち、顧客のために付加価値を提供することで対価をもらう職業のことです。

対して、アーティストとは、自分の世界観を提示してメッセージを伝えていく存在であって、付加価値の提供はその存在の定義にふくまれていません。


日本にはなぜか「プロのアーティスト」という不思議な概念があります。

アーティストという存在が職業のように定着しているというイメージです。

きっとメディアとか雑誌が呼びやすいから使いまくっているせいですね。

世間にとっては、たぶん浜崎あゆみとかMr.Childrenとかサザンオールスターズとかスピッツとかを「プロのアーティスト」のように呼ぶのだと思いますが、

本質的には、彼らは純粋に「プロ」です。

お客さんを楽しませることで収入を得ているからです。

楽しませるとはどういうことか?

つまり彼らがほしがるもの、期待するもの、喜ぶものを提供するということ。

よってある程度予定調和、型通りのものを形を変えて生産していく作業が求められているのです。


アーティストは、そこを超えていかなければなりません。

既成概念を破壊し、新たな創造をする。だから、見る者は楽しみよりもむしろ不安、疑問、衝撃などの感情のゆさぶりを受けます。

そこに価値を見出してお金を出す人が現れるのは結果であって、それは目的ではないのです。対価はつかなくても、誰もができるのがアートです。

だからお金のためのアートというのは、話が複雑になりすぎるわけです。それはエンターテイメントであって、本質的には商業の範疇であり、アートにはなりきれません。


アートは、最初は自己表現。おさえきれない頭の中のイメージを具現化するためのやむにやまれぬ行為です。そうして生まれた作品は、役に立たない。自分しか楽しめないからです。

インディーズアーティストも最初はそういう個人的なものしかつくれないから、お金が入ってはこないのです。

しかし、そこから成長すると、あるとき自己から他者、さらには社会・世界全体の共通点を見出して表現することができるようになる。

人々や社会全体が無意識に感じ取っていることを知覚し、虚構という形で提示することで、この世界の真実のひとつの形を目に見える形で届けてくれるのです。

そうなると結果的に人のためになる作品ができるわけだから、いやでもお金がついてくる。

そこにが目を付けて、ビジネスにしちゃった人がいたんですね。

ビジネスが入り込むことで、「プロのアーティスト」という不思議な概念が生まれてしまった。

しかし、ほんらいアーティストは人の役に立つためやお金のために作品をつくる存在ではないのです。

自分と向きあうため、世界と向き合って真実を発見するためにアートするのです。

が、プロになってしまったらお客さんのため、お金のために「役に立つ」商品をつくらないといけない。

そこの葛藤に苦しんで、多くのミュージシャンがメジャーをやめていくわけですね。


この矛盾を整理するには、まず「プロ」と「アーティスト」は相反する存在であるということを理解すること。

そして、選択することが必要なのです。自分はどちらになりたいのか?またはどちらで在りたいのか?



収入とは「お客さんからもらうものである」

プロならばお客さんが必要である。

音楽で収入を得たいならば、「プロ」になることが必要なのです。


対して、純粋にアーティストであり続けたいなら、

自分のアート活動に対してお金をもらうことを考えではならない。

よって、収入は別に確保する必要があるということです。音楽とは別のプロフェッショナルをやって収入を得ろや、ということ。

だから津倉さんは「アーティストとしてやっていきたいんで、バイトはやりたくない」という人に対して

「アーティストになりたいなら、就職しろ」と言うそうです。

この時点で、すでにこのセミナーのテーマ「アルバイトをやめて音楽活動に集中する」が崩壊してしまいました(w)。

「音楽活動続けていきたい?じゃあバイトするかほかの仕事で金もらえ」ですからね。

え、それって矛盾してるんじゃないの?となりますが、ここまでの話で分かる通り、「プロのアーティストとして収入を得たい」ということの方が矛盾なのです。


意外な結論かもしれませんが、

「プロとして音楽収入を得たいなら、アーティストにはならない」
「アーティストとしてやっていきたいなら、収入が得られる期待はできないから、別の仕事またはサービスを行う」

というのが、津倉さんの提案です。というかこれは動かない現実の姿です。

それで、ここから先は「プロとして収入を得ていく」方向で話が進んでいきます。でないと話が終わっちゃうので。

もちろん、「音楽活動」のプロとして収入を得ていく話です。

「アーティストしながら別の仕事やサービスを開発して収入を得る」という話ではありません。それはわたしの専門です。



つづく


今回の話は深いです。

人間は子どものころはみなアーティストです。

成長すると、社会のルールにしたがって、人のために働くプロフェッショナルになります。

アーティストの自分はどこかに封印したまま・・・

そうではなく、あくまでアーティストの自分を通していきたいとしても、

その先には必ず、プロになるか、アーティストのままでいるのかという選択が待っています。

プロになるのなら、自分のアートを介入させてはいけないよ。

もしアーティストのままであり続けたいのなら、

収入は別にあった方がいいよというのが、津倉さんのメッセージ。

みんな、アーティストとしての自分とプロとしての自分が揺れ動いているといいます。

サザンの桑田さんは、自分がやりたい曲と、求められている曲をバランスよく交互に出していくことで、うまくやっているそうです。

自分が好き放題やった曲はあまり売れないが」、人が喜ぶ曲は大ヒットするのでお金が入る。そういう天才的なバランス感覚を持った人も存在しますが・・・多くの人はそこまでうまくやれません。

まるでメトロノームのように、プロか、アートか、どちらかに振り切れないまま、その間でもがいているのです。

しかし、本人にとってもちろん一番大切なのは、お金ではく、エンターテイメントでもなく、人のためのアートでもなく、自分のアートのはずです。そこを忘れてはいけない。

どうかお金のために音楽はやめることだけはしないでほしい。

だから、本当に大切な自分のアート活動を守るために、一緒に考えませんか。

そんな津倉さんの思いが感じられる話です。

音楽収入構築コンサルティング

Vol.10の3話めいきます。

いよいよスーパー音楽プロデューサー&MBAコンサルタントの津倉悠槙さんの音楽収入構築コンサルティングがはじまります。

前回は「プロ」と「アーティスト」の違いを理解したうえで、みなさんがプロの音楽活動家として収入を得ることを選択したと仮定します。

お金はお客さんからもらうものであり、お客さんからお金をもらうのがプロであり、プロならばお客さんが必要であるという定義をしっかり理解したら、次は

インディーズミュージシャンが具体的にどうやって収入を増やしていくのか?ここです。


結論は単純。「必要としてくれるお客さんを増やすこと」です。

そのためにどうすればよいか?解説がはじまります。

語られたのは次の2点。


・自分の音楽のマーケットを知る
・音楽収入の構成と性質を知り、アプローチするターゲットを決める


です。


自分の音楽のマーケットを知るとは、自分に注目してくれるお客さんがどういう人間かを知るということです。

自分が提供しているコンテンツやメッセージに反応する人はどんな人なのか。それを徹底的に知るのです。


例として、津倉さんはSONALIOさんの場合を、SONALIOのドラムである海保さんにたずねました。

津倉「SONALIOさんのお客さんは主にどんな人が多いですか」

海保「うーん。女性が多いかな」

津倉「年齢層は?」

海保「30くらいかな」

津倉「ほかにわかることは?性格とかノリとかは」

海保「わりとサポーター主義的な人というか、支えがほしい人たち、という感じ。あまり自分を強く主張していきたいというよりは、応援したいという感じかな」

津倉「その子たちは、ライブにはひとりで来ますか。友だちときてますか」

海保「えーと、たぶんひとりできてるんだけど、だいたいファンの間で知り合いになっているから、会場で会ったらまとまるという感じ、だと思う」

津倉「その人たちはSONALIOというバンドの存在を、知らない人にも教えてあげようとしますか。友だちにすすめたり、ライブに誘ったりしますか」

「ファン全体で、お金を払って応援してくれるのはどれくらいですか」

「年齢層が30くらいというのは、依然からファンだった人が年をとって30歳になったのですか。それとも、常に30くらいの人が定期的にファンとして新しくついてきているのですか。
つまり、30を超えても飽きずについてきてくれる人たちがファンなのか、そうでないのか」

・・・・

という感じで、どんどん深堀していくわけです。


ファンとこまめな交流をして観察していれば、こういうことはある程度わかるようになる。それがかなり重要だということです。


ファンの中には、このバンドをもっと応援したい、もっと世の中に広めたい、と思う人と、

このバンドはわたしだけのもの、独り占めしたい、あまり有名になってほしくない、と思う人がいます。

前者は積極的にともだちを誘ったり、新しいファンを紹介して連れてきてくれたりしますが、

後者はいつも一人でライヴにきて、あまり交流もしたがらなかったりするわけです。


このようなファンの行動を観察することにより、自分がどういう人たちに支持されているのかということを学ぶ。

そして、彼らが自分たちに何を求めているのか、どういう存在であってほしいのか、どんな曲が聴きたいのか、ということを知るのです。


そういったファンとの関係性を知ることで、ニーズを発見し、自分のマーケットを広げていくことができるといいます。

これが「自分のマーケットを知る」です。


次に「音楽収入の構成と性質を知る」。

これはけっこうテクニカルな話なのでさらっと紹介されました。

音楽活動の収入とは、たいていは次のようなものしかありません。

・音源販売
・ライヴ
・グッズ販売
・ファンクラブなどのコミュニティ
・広告(ある程度メディアで影響力がある場合)
・演奏提供(サポート)、レッスン
・作詞、作曲

これが主な構成です。

人数×単価=売り上げですから、それぞれの項目においてそれぞれの数字を伸ばしていけばいいわけです。

ここでポイントとなるのが、これら音楽収入の性質。

音源販売~広告までは、かなり大人数を満足させなければ収入は増えないどころか、購入さえされません。

しかし、演奏提供(サポート)、レッスン、作詞・作曲というのは、それを必要としているキーパーソンだけ納得させれば、収入が確定します。


つまり、この2つの収入源がクリティカルポイントです。

ここを強固なものにしていくことが、音楽収入を確保し増加させていく秘密なのです。

ここでしっかり収入を得ていれば、ほかの部分で稼ぎが少なくても余裕ができ、クオリティの高いものが提供できる。

すると結果的により多くの人に信頼され、さらに収入が底上げされていくというわけです。

いきなり主将をとりに行くということですね。

木村カエラさんに楽曲提供してブレイクしたSUEMITSU&the SUEMITHの末光篤さんが例として名前があがりました。

http://www.suemitsu-s.com/


確かな作曲能力で、プロデューサーというキーパーソンを納得させることができたから、いきなりブレイクすることができたわけです。

ここまでできるのはかなり難易度が高いと思いますが、

たとえば演奏のレッスンだけだったら、敏腕プロでジューサーを納得させなくとも、一般の生徒さん一人を納得させることができればよいので、

楽器プレイヤーを専門でやってるなら必ずできるはずです。そこで生徒を集めていけば収入も増え、実績にもなる。信頼も増える。

いきなり多勢を相手に奮闘しては最初から四面楚歌。だから、まずは少人数のキーパーソンを納得させていくところから突き抜けていくわけです。


これが、インディーズミュージシャンが収入を増やすために具体的にできること。津倉さんの提案です。


こんな風に、適切なやり方があるわけですね。盲点となっている必要な情報を教えてくれる、まさにコンサルティングでした。

Amazonのビジネスモデルをバンドに応用

Vol.10、さいごは「Amazonのビジネスモデルをバンドに応用」です。

Amazon Japanに勤務していたこともある音楽プロデューサー津倉悠槙さんが、トークライヴを締めくくるコンサルティングです。

こんな話はどこでも聞けないので本当にとっておき情報です。


まず、Amazonというビジネスがどういう仕組みになっているのかを解説されました。

説明は図で行われました。メモを添付ファイルにしたのでご覧ください。



まあ、とうぜんAmazon本家の情報なので英語です。説明しますね。


これは、Growthつまり「成長」を核においたモデルだといいます。

この事業の成長は、あるサイクルによって成長する。

そのサイクルとは

Selection「品揃えを豊富に」



Customer Experience「顧客体験を提供」



Traffic「お客さんがやってくる、増える」



Sellers「出店者が増える」



Selection「さらに品揃えが増える」→ループ

という流れです。

このサイクルが事業を大きくしていき、成長させる。

そしてそのGrowth「成長」から今度は

Lower Cost Structure「コストを下げることができる」



Lower Prices「価格を下げられる」



Customer Experience「さらなる顧客体験」

につながっていくという新しい流れも生まれる。

これがGrowth 型のビジネスモデルです。

CEOのジェフ・ベゾスが起業前に、レストランのペーパーナプキンに書いてプレゼンしたというアイデアです。ここからAmazonのすべてがはじまりました。

これが、Amazonに入社して最初に教え込まれるビジネスモデルです。Amazonの仕組みはこうなっているんだ。


ここまで講義を見てきた方で、さすがに「これとミュージシャンと何の関係が?」などとほざく人はいませんね。

津倉さんは、このモデルがバンドやミュージシャンにも共通するといいます。

Selection「品揃え」は「楽曲のバリエーション」です。激しめ、楽しい、速い、ゆっくり、ロック的、バラード、悲しい、などいろいろなタイプの曲を持っているということ。

Customer Experience「顧客体験」はもちろん体験価値「ライヴ」のこと。そのほかファンクラブやコミュニティでの交流など提供できるファンサービスもすべて体験価値です。

Trafficはこの二つを充実することによって新たなファンがやってくること。

Sellersは新たなメンバーや外部からの協力者やスタッフ、プロデューサー的な人物の支援などがつく、ということができます。


ポイントは、ジェフ・ベゾスがAmazonをこのビジネスモデルで構築するときに、このサイクルのどこから始めたか、です。


それは、Selection「品揃え」です。

まず商品が豊富にあることが重要なのです。



ご存知の通りAmazonは、はじめは今のように総合ショッピングモールでなく、本のみを扱うネット書店でした。

ジェフは最初に、赤字をしてまでいきなり1000万点の本の仕入れに投資したそうです。

100万点じゃだめなんだ、1000万点なんだと。それくらい圧倒的な品揃えがあることから、多くの顧客体験が生まれるのだ。

だから、このサイクルをSelection「品揃え」からはじめたといいます。


このサイクルに自信があったため、そこまで思い切った投資に踏み切ることができた。そして見事にうまく回っていった。これが天才ジェフ・ベゾス。


ここで津倉さんは「投資ファーストの考え方」を強調されました。

バンドマンは「投資」という概念を知らないといけない、と言います。「知ってるよ!株とFX!」だって?違います!


ここでいう「投資」とは、リターンを考えたお金の使い方、つまり「使ったお金をきちんと回収するという意識を持つ」ということです。

スタジオ練習は、ライヴのクオリティをあげて、お客さんの動員を増やし、収益を増加させるため。

機材の購入は、新しい曲のアイデアを実現するのに必要な音素材を調達するため。

ライヴスペースの確保は、お客さんに最高の体験価値を提供して、またライヴにきてもらうため。

というように、必ず「次の成長につなげる」という意識をもってお金を使うということです。


せっかくのスタジオ練に遅れてきたり、やることも決めてなかったり、やたらめったらほしいままに機材を買ったりでは、ただの浪費。

払った瞬間にお金のことを忘れるというのは、ダメなバンドの典型だといいます。

お金だけでなく、何より大切なみなの時間というものも、確実に使っているのです。その重さを理解できなければ、成長などはできない、ということです。


成長したいと思ったら、投資をしろ


これが津倉さんのさいごの提案です。


「提案」といっているのは、これはあくまでプロデューサー/コンサルタントとしての津倉さん個人の意見でしかないからです。もちろん行動を決めるのはわれわれ自身なわけです。やるもやらないも自由です。

ただ、こうすれば成長できるよ、というどこよりも貴重な情報を与えてくれていることは確かです。

その意味とメッセージをきちんと受け取って、明日からの活動を考えましょう。


具体的に考えてほしいことは、まとめる以下の3つ。

「お客」→ファンを増やすこと。体験価値提供の充実とトラフィック増のイメージを持つ。

「商品」→持ち曲のバリエーションを増やすこと。いろいろなパフォーマンスができるように。

「投資」→ライヴ、音源制作、サービス、スタジオ練、メディアつくりなど、かならず収益増加やファンの増加など、次の成長につなげるための目的を意識して活動資金を投入すること。


以上です。おつかれさま。じつに重要な情報を大量に伝えたので、みなさんオーバーヒート気味なのはわかりますが、きちんと整理して自分の活動に落とし込んでくださいね。


さいごに登壇者からのメッセージ

海保「(今日はあまり話せなかっ・・・)お金の出から考えてみよう。支出ベースでやってみて、まず何に金を使っていくのかを考えて」

津倉「音楽はいいものです。音楽を続けていくために、こういうことをきちんと考えてみてください」


Frekul Talk Live Vol.10 おわり!


津倉悠槙さん、圧倒的でした!ありがとうございました!


内容が濃かったのでこれまで書けませんでしたが、津倉さんには以下のようなストーリーがあります。

どんな思いでこの講義を届けてくれたか、わかるはずです。ぜひ読んでくださいね。本人の発言からわたしがまとめたものなので微妙に創作はいってますけど・・・出来事にウソ偽りはないです。


・・・

細かいこと、小難しいことを言っているようだけど、こういうことをやっていくから、成長していくことができる。それが成長する人のロジックなんです。運とか才能は別の話。

強い人は、みんなやってる。

あなたはどうですか。そのままの思考パターンで、この先音楽を続けていくことができると本当に思いますか?

本当に、真剣に考えてほしい。

ぼく(津倉さん)自身も音楽をやって生きていきたかった。で、高校のとき、生徒会長やってたにもかかわらず、1学期間ぜんぶサポって東京に出てきた(単位おとしたw)が、

才能のなさに愕然とし、残念ながらあきらめてしまった。だから、ほかの才能ある人たちを世に出す役割をやることに決めた。

大学でマーケティング理論を学び、avexに入ってアーティストを売り、アメリカでMBAを学び、Amazonでも学んできた。

そして、音楽をやっている人を支援していく力を持った。だからプロデューサーになった。

今はバンドに投資したお金がもどってきてないから本業だとは言えないけど、コンサルタントをやりながらも副業でやってる。

いや、本業で音楽プロデューサーをやっていると言わなけれならない。なぜなら、本気でやっているからだ。

「蟲ふるう夜」というバンドと出会って感銘をうけ、本格的にプロデュースをしている。

彼らにも、できればアルバイトをやめて音楽に集中してもらいたいと思っている。

そのためには、こういうことをやることが必要。ぜひ真剣に考えてほしい。

Frekul Talk Live Vol.10 まとめ

Vol.10をまとめます。

5.26「インディーズアーティストがさっさとアルバイトをやめて音楽活動に集中するためにできること」

■ 登壇者プロフィール


●海保けんたろー(SONALIO、Frekul)
1981年生まれ東京出身。
バンド「SONALIO」ドラマーで、株式会社ワールドスケープ代表取締役。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。 「キマグレン」など数々のアーティストのサポートドラマーとしての活動の傍ら、2008年にはメジャーデビューを経験する。
しかし音楽業界の構造に疑問を持ち2010年に独立。翌年起業し、株式会社ワールドスケープ代表取締役に就任。音楽活動プラットフォーム「Frekul(フリクル)」 を公開した。


●津倉悠槙 (音楽プロデューサー)
1975年生まれ。
独立系音楽プロデューサーとしてバンド「蟲ふるう夜に」をプロデュースする傍ら、戦略系コンサルタントとしても活動。合同会社ノンターミナスFounder/CEO。
大学卒業後、エイベックスにて販売戦略の立案/遂行を担当。「ブリトニー・スピアーズ」のデビューや「バックストリート・ボーイズ」の日本市場での成功に寄与。
邦楽では「サスケ」、「ジャンヌ・ダルク」、「タッキー&翼」などを担当。
その後、アマゾン、米国M.B.A.留学、ボストン・コンサルティング・グループ、ギルト・シティ等で経験を積み、2012年より現職。慶応義塾大学学士号。ペンシルバニア大学ウォートン・スクールM.B.A.


●モデレーター:jMatsuzaki(Frekul、ブロガー)
システム屋として6年半の会社員生活を経て独立。ブログ「jMatsuzaki」を軸に各種メディアでの執筆やセミナー講師として登壇。その独特の文体と講演スタイルには定評がある。
小学生の頃からの夢であった音楽家へ至るまでの全プロセスをブログを通じて公開することで、仕事と遊びを一致させるための知識と技を伝えている。
独立直後、Frekulの活動や考えに共鳴して、開発兼広報としてFrekulに参画。


ディスカッション1「音楽活動費>生活費=死」

「全体の支出のうち、音楽活動に使うお金はいくらあればよいのか」を明確にすることをはじめにやれという提案です。

そのうえで、月の音楽活動費は音楽活動で稼いだ金でまかなえて、給料を圧迫しないようになるところまで成長することを目指します。


ディスカッション2「プロのアーティストにはなれない」

「プロ」と「アーティスト」の相反する性質を理解したうえで

「プロとして音楽収入を得たいなら、アーティストにはならない」
「アーティストとしてやっていきたいなら、収入が得られる期待はできないから、別の仕事またはサービスを行う」

という選択でどちらを選ぶのかを考えなければならない、ということでした。

ここでは「プロ」として活動していくことを選択したと仮定し話が進みます。


ディスカッション3「音楽収入構築コンサルティング」

・自分の音楽の市場(Marcket)を知る
・音楽収入の構成と性質を知り、アプローチするターゲットを決める

ということが音楽収入を増やしていくためにできることとして提案されました。

とくに、はじめは大きな収入のカギを握る少数のキーパーソンを納得させることに集中した方がよい、ということでした。


ディスカッション4「Amazonのビジネスモデルをバンドに応用」

Amazonのビジネスの仕組みを理解し、それをバンドに応用するという津倉さんならではの提案。

考えるべきポイントは、「お客」「商品」「トウシ」の3つを充実させ、回していくこと。

「お客」→ファンを増やすこと。体験価値提供の充実とトラフィック増のイメージを持つ。

「商品」→持ち曲のバリエーションを増やすこと。いろいろなパフォーマンスができるように。

「トウシ」→ライヴ、音源制作、サービス、スタジオ練、メディアつくりなど、かならず収益増加やファンの増加など、次の成長につなげるための目的を意識して活動資金を投入すること。

この3つがそろうことで成長のサイクルが生まれ、バンドは大きくなっていくのだというロジックを明らかにしました。


以上です。登壇者からのメッセージは前回書きましたが、もう一度言うと、

海保「(今日はあまり話せなかっ・・・)お金の出から考えてみよう。支出ベースでやってみて、まず何に金を使っていくのかを考えて」

津倉「音楽はいいものです。音楽を続けていくために、こういうことをきちんと考えてみてください」

です。おわり。


Frekul Talk Liveレポートシリーズもいったん完結とします。

現代の音楽活動の仕方はまったく過去とは違っているということ、どう動いけばいいのか、マインドと方法論・・・いつも目からウロコ情報ばかりで毎回非常に勉強になりましたね。

半年間ありがとうございました。

みなさんも機会があえば来月以降、ぜひご来場ください。


これからはブログを中心に書いていくと思います。あとは意外にnoteという新しいSNSでも新たな交流があったりします。

ブログ
Blog:http://otoya-guide.jp/

note
https://note.mu/nakamuu

よろしくお願いします。

音楽コラム

メールマガジンで配信したちいさな音楽コラムをまとめました。

自分大学をつくる

今回は「自分大学をつくろう」というトピックで話してみます。

わたしは音楽関連の教養やレッスンなどを、ほぼ全て海外サイトから仕入れています。

無料のものも有料のサービスも試しています。

その中から特に有用なものを選んで紹介しているわけですが、

まだまだ面白くて良質なコンテンツは山ほどあります。

わたしはおとやガイドなので、音楽に関する情報のみ紹介しているわけですが、

実際は、他のさまざまな分野の学習ポータル、レッスンサービスや情報サイトにも遭遇しています。

そこで思ったのですが、ある分野の学習や情報を求めている人に、対症療法的にこのサイト良いよーと紹介することを続けていも、本質的には解決になってはいない。

その瞬間は役に立つので、全然無駄ではないですが、

本当は、一人一人が自分で情報源を探して、自分で自分に必要な知識にアクセスできるようになるのが一番です。

だから、試しに自分の興味のあることを英語でgoogle検索してみましょう。

きっと凄く充実したサイトがでてくるはずです。

と言っても、Googleという検索サイトだけでは、やはり媒体が大きすぎるので、途方に暮れてしまう方も多いと思います。

そこで、あらゆる種類の学習に便利なポータル系のサイトをいくつか紹介しますので、

まずはそこから、自分の興味のある分野を探して、何か講座をはじめて見てください。

ひとつの大きなポータルサイトを拠点とすれば、他のサイトを探す際の軸ができます。

無料のサービスも有料のサービスもあります。必要に応じて使い分けましょう。

教育の在り方を変えてしまった革命的なオンラインサービスです。これだけは知っておいた方がいいと思います。

検索の罠

今回は吉松隆さんを紹介しようと思います。
http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/~data/BOOKS/12keiwords.html

このインタビューはかなりおもしろいです。

一応クラシック界の人ですが、プログレッシブロックの影響を受けていて、
異色の作風を書くことで有名。

からだの中にデフォルトで変拍子が流れているタイプの人です。

大河ドラマ「清盛」で伝説のプログレバンドELPの名曲「タルカス」をアレンジしたことが記憶に新しい。
この起用はびっくりしましたね。スタッフロールにキース・エマーソンてでてるんだから「ええ!なんで」
となりましたね、当時は。

わたしがレッスンサイトや情報リソースを提示するとき、トピックよりも「人」に注目しているのは、

「テクニックトラップ」や「検索の罠」にハマってほしくないからです。

「テクニックトラップ」「検索の罠」とは、例をあげると・・・

作曲でも何でも、勉強の初期衝動から年月が過ぎ、基礎知識を一通り習得したあたりで、

あるとき成長が頭打ちになって、次の段階にいくために何をしたらいいかわからなくなります。

どの作曲の本を読んでも、だいたいの基礎のことはわかるようになってしまった。
応用に行くにはどこからはじめたらいいのか。ここで迷う。

たいてい、基礎理論というのはやることが決まっているので、学習するのは簡単です。
大事な部分をやればいいだけだから。
しかし、応用とか発展となると、一人一人の目指すスタイルによってまるで方向性がカオスだから、
理論など作りようがない。
すると、目指すスタイルが確立できていないうちは、まだ知らないことはないか、勉強していないことはないかと、

枝葉のテクニックやスキル情報に惑わされて、本屋やネットで必要なスキルの情報を探してまわることになります。
これがテクニックトラップ&検索症候群です。

たしかに、応用やアレンジを学ぶには、基礎となる理論というものがない(個別のジャンルに踏み入ればあるが、「応用」そのものの理論というものは事実上不可)ので、自分で迷いながら闇の中から選ぶしかないです。

しかし、「効率よい学び方」のセオリーはあります。

それは、分野情報よりも人にフォーカスすることです。

発展技法やスタイルなどは似たようなスタイルがいくらでも考案されているので、
どれかひとつやっても、これでいいのか、あれでいいのかと不安になる。

しかし、同じ人は二人いないので、自分が憧れる人の作風を徹底的に学ぶには迷うことがない。

要は、テクニックトラップにはまる段階にきてしまったら、師匠を見つけたほうがいいというわけです。

ただ、師匠も人間であるし、欠陥がある。教え方が間違っているなんてのもざら。流派によってはまったく基礎理論からはずれていることもある。

だからどうしても、不安になった時は、手っ取り早いスキル情報とか権威化されたセオリーに目が向きがち。

しかし、どんな人間にも重大な欠陥があるわけで、そういった定番技法にも欠陥はあるわけです。

完璧を求めようとすることが、
一番痛い失敗であるとも言えると思います。

本を買うよりも、師をもつというのは、すごく覚悟がいることです。しかし、

知識トラップにはまって止まっているよりは、ずっといいでしょう。

学ぶのは「スタイル」という情報でなく、人の魂そのものです。

だから場合によっては、自分の専門外のことをやっている人が師匠になることもあるかもしれませんね。

ちなみに、吉松さんの音楽の師匠は「鳥」だそうです。

「人」でないじゃないか、と早速つっこまれそうですが、しょうがない。鳥なんです。

「鳥」です。空に飛んでるヤツ、森にいるヤツです。

「その教えの一は〈鳥メロディ〉。彼らは地上最高のメロディ・メイカーである。そして、その〈さえずり〉という音の連結こそ、彼らの存在そのものであり美しき思想である。
 そして、教えの二は〈鳥リズム〉。翼や羽根の流体力学的な動き、そして地面に下り立ち、首を回し、走り、立ち止まる…律動としての動き。それらは生を謳歌する聖なるリズムである。
 さらなる教えの三は〈鳥モード〉。自由に空を羽ばたくその流儀(モード)は、大地と空との調和の中に生きる〈鳥〉の様式(モード)であり、歌の基調をなす旋法(モード)である。
 それら3つの教えに導かれて、人は大いなる物語を語り始める。」

誰を師匠にしてもいいのです。それは意外にもすぐ近くにいるかもしれませんよ。

世界に失望することはあっても、音楽に絶望することは決してない

「さあ、最高の音楽を作っておくれ。
 でも、お金にはならないから、一円だってあげないよ。
 そして、いい曲が書けたら、とっとと死んでおくれ。
 早く著作権が切れるようにね!」

これは、以前も紹介した現代音楽作曲家、吉松隆さんが作曲家に対する業界の本音を表現したブラックユーモアです。

この方はとにかく異端です。

正規の教育を受けず、一度も賞やコンクールに通ったこともなく、
独学あがりで業界にもケンカを売っている、いわばブラックジャックのようなタイプなので、

そのロック的な精神はわれわれゲリラミュージシャンやおとやが多く見習えることがあります。

音楽は数学の別バージョンのようなものなので、毎日の研究と貯金の積み重ねが大事なのですが、

勉強と同じくらい大事なのが作曲家の話を聞くことです。彼らのマインドを吸収することが、

自分の音楽人としての成長にクリティカルに関わってきます。

吉松さんのこの記事は特に学ぶことが多いので、少し長いですがご覧ください。

http://homepage3.nifty.com/t-yoshimatsu/~data/I,composer/03.toCompose.html

ユーモアたっぷりに、作曲家という仕事のリアルを語ってくれています。



印象的な部分を引用しておきます。

・意味不明な著作権料の振込(笑)

崩壊する前のソヴィエトで音楽祭が開かれて、そこで私のオーケストラ曲が演奏されて。その著作権使用料が、確か3-4年たってから振り込まれてきたんですが、その金額が「7円」(笑)。

・著作権という概念が登場した後の、大衆音楽と純音楽の地位逆転現象

「バッハやモーツァルト以前の貴族社会の時代には、宮廷で少人数の特権階級にのみ聴かれる音楽が、
膨大な報酬を伴って作曲され、例えば一般大衆の何百万人が鼻歌で歌い唱和するような俗謡は、
誰が作ったのかすら知られず、当然その代価なんか一円だって入らなかった。
 ところが、著作権の発生以降はまったく立場が逆転した。
つまり、何百万人の大衆が鼻歌で歌う音楽こそが莫大な報酬を生み、
少人数の特権階級にのみ聴かれる純音楽の類いは、まったく報酬を生まなくなった。
これは、哺乳類が「小さくて数が多い」ゆえに地球上に繁殖し、恐竜が「巨大で数が少ない」ゆえに絶滅してしまったような、歴史的大逆転劇と言えるかも知れません。」

時間がない人のために、一番最後のこのメッセージだけは紹介しておきたい。心にきます。

「いや。確かに、失望が大きく希望の小さい世界ですけど、音楽を生み出す喜びはすべてを超越します。だから、

世界に失望することはあっても、音楽に絶望することは決してない。

私たちは別に、生きるために音楽をやっているのではない。音楽をやるために生きているんですから。
 それに、音楽をやりたかったのに若くして亡くなったり、
戦争や災害のような絶望的な時代に生まれ合わせてしまって志を果たせなかった人たちのことを考えれば、
交響曲を書いても演奏してくれないとかお金にならない…なんて、悩むことでも何でもありません。
好きな音楽を書いてなおかつ生きていられるというのは、それだけで限りない幸運に恵まれたということですからね。」

バンドを始める前に

毎度のことですが、海外の便利な音楽サイトを紹介しています。

音楽関連のラーニングはトピックがあまりにも多いので、「検索し尽くした!」と思っても、

まだまだおもしろいサイトや情報発信者が出てきます。

とりえあえず、バンドを始めたいと思っている方、バンドをやっているという方には、

バンドマンにおすすめのものだけまとめておきますので、役に立ててください。

コンテンツの量と講師の存在感、あとはわかりやすい動画を使っているか否かなどの基準で良質なものを選んでます。

楽器関係の疑問はだいたい解決、または技術向上に役立ちます。しかもほとんどフリー。

ギター
http://justinguitar.com/

ベース
http://www.scottsbasslessons.com/

ピアノ
http://howtoplaypiano.ca/

ドラム
http://www.justindrums.com/
http://www.virtualdrumming.com/drums/free-online-drum-lessons.html

ヴォーカル
http://www.bbc.co.uk/sing/learning/

英語で読み聞きができるようになるには、慣れです・・・
http://matome.naver.jp/odai/2135823015691541901

レッスンは動画を見ればだいたい何を言っているかはわかると思います。

どうしても、英語は大嫌いで見るのも使うのも嫌だけど、何か音楽系でみつけて欲しいカテゴリやキーワードなどがある場合は、ご相談ください。ちょちょっと調べてみます。

きっと良い情報がみつかったらお教えします。もちろん日本語でね。

モーツァルト属とベートーベン属

今回は、Frekul Talk Live Vol.2 に参加しているときに発見した、少し抽象的なアイデアです。

長いので、疲れたら最後のまとめだけを読んでください。

Frekul を運営しているSONALIOというバンドには、斉藤涼さんという、全ての曲を作り続けるソングメーカーと、海保けんたろーさん(ドラム)というマネジメントリーダーがいます。

ギターとベースの方は、バンドでは演奏に特化。デザイナーでもある。マネジメント関係はしない。

そして、このトークライブに登壇されている方は、海保さんはじめ、みなさん音楽活動を事業と結びつけ、マネジメントもされています。

純粋に音楽表現に特化している人と、

音楽をやることに特化している人の、2つのタイプがいるわけです。

で、後者の方が、このような場に呼ばれやすい。

この状況を踏まえた上で、この「純粋に音楽表現を追求する人」と「音楽を通して人生を彩る人」の違いを見ていきたいと思います。



わたしの見解では、音楽をやっている人は、大きく2つのタイプにわかれます。

純粋に音楽表現を追求し続けるものと、

音楽をやることで自己の人生を探求するものです。

前者は、ひたすら自分の思い描くイメージとか思想とか宇宙世界を音楽という手段を用いて表現する。

後者は、音楽をやることで、自己の人生を全力で活かしきろうとする。または、前者と同じように自分のイメージを音楽で表現しようとするが、それに長い時間をかけており、その過程の人生経験を冒険している。

前者は、天才といっても良いかもしれません。天才という言葉には色々な議論があると思いますが、その話は主眼ではないので、便宜上この言葉を使います。

このタイプは、音楽をつくる以外のことはお構いなし。次から次へ楽想が出てきて、それを記述するので大忙し。だから多作で、ユニークで、評価も高い。

モーツァルトなどが良い例かもしれません。

一方、後者のタイプは、宇宙よりも人生と向き合うタイプ。天上界よりも地上界を描こうとするタイプです。だから、人生経験と音楽表現をリンクさせる。

時に実利的、功利的、俗物的とも思える振る舞いや活動もいとわず、あらゆる感情的体験を賭して、全身全霊をかけて人生を悩み、苦しみ、楽しみ、生き抜く。そのエッセンスとして、作品が生まれる。



「音楽的に天才」という言葉に対しては、「人生的に能才」という言葉が合っているかもしれません。「能才」とは「何かを成し遂げる能力」のことです。

これは、ベートーベンかもしれません。

これは、文学や絵画など他の分野にも言えるのではないかと思います。

文学なら
モーツァルト系→オスカーワイルド、バルザック、芥川龍之介
ベートーベン系→サマセット・モーム、トルストイ、ポール・オースター

絵画なら
モーツァルト系→ピカソ、ゴッホ
ベートーベン系→ゴーギャン、岡本太郎

こんな感じでしょうか。

特徴としては、モーツァルト側の人たちは、あの世を表現することに注目するあまり、快楽主義だったり、人生の罠にはまって破滅したり、早死にしたりしているような気がします。
ベートーベン側の人たちは、表現に悩みはすれ人生にもきちんと向き合っているので、挫折回数が異常に多く、評価されるのも遅かったりしますが、意外と長生きしていたりします。

どちらが優れているとか劣っているとかはなく、こういうパターンがあるよ、ということです。人によって魂が違うのです。当然のことですがね。

とはいえ人類の成長も予測不能で、色々なパターンがあると思うので、モーツァルト属トルストイ科岡本太郎目とか、ベートーベン属バルザック科筒井康隆目とか、

レオナルドダヴィンチ属モナリザ科荒木飛呂彦とかあると思いますが、そこまで考えると複雑すぎるので、やめときましょう。



現代にもどってみてみると、

SONALIOにおいては、斉藤さんというモーツァルトと、海保さんというベートーベンがいらっしゃるので、

魅力的なバンドサウンドを実現しつつ、Frekulでマネジメントも事業も順調にできるという、理想的なバランスを保っているのだといえます。

他の例をあげると、わたしの好きなゲーム音楽作曲家の方々は、モーツァルト側の人が多いような気がします。

植松伸夫さん、すぎやまこういちさん、光田康典さん、下村陽子さん、伊藤賢治さん(ほとんどスクウエアとエニックスですが)などは、

本当に音楽をつくるのが好きで好きでしょうがない。多作で、自分の音楽のために何ができるか、いつも純粋に考え続けているのだと思います。

発言もどこか楽天的で、言葉使いや文章も音楽のように流動的な感じ。どこかふわっと、いつも宇宙にいるような感じがするんです。

対して、菊田裕樹さんという方は、ベートーベンの方かな、と思います。

この方も元スクウエアで、伝説のスクウエア黄金期を支えた尊敬する作曲家なのですが、

他の独立したスクウエア出身の作曲家の方とは、少し変わった人生の歩み方をしています。

もともと漫画家として出発しましたが、作曲家に転向。スクウエアに入社して、二年間狂人のようにスタジオに泊まり込んで作り続けたという『聖剣伝説2』の音楽で有名になり、注目されます。

その後、『聖剣伝説3』『双界儀』で音楽を担当したのち退職。次は起業して、今度は音楽だけでなく、シナリオやゲームデザインやディレクションまで総合的にリードして、

『クーデルカ』という非常に神秘的な雰囲気の作品を作ります。しかし、これはヒットしませんでした。

それから後の活動はよくわからなくて、絵やシナリオの仕事をしたり、地味に作曲の仕事をしていたりしたみたいなのですが、

数年の空白の後に、ブログで作曲家としての本格復帰を宣言。ファンを喜ばせます。

そして現在まで積極的に活動し、コ生などのメディアに出たり、『シャイニング・ハーツ』や『聖剣伝説2』の現代アレンジ、コミックマーケットへの出場などで活躍されています。

近況はブログと、最近は主にTwitterを中心に報告しています。

知的で示唆に富み、含蓄のある発言は、他の作曲家の方とは違ってシャープな魅力があります。強靭な知識のバックボーンに裏付けられる音楽考察、理論的見解、

わりと「好きなことやってるだけだよ!」的な発言の多いわたしの好きな作曲家の方々の中では、特に異彩をはなっており、わたしとしてはこちらのタイプに惹かれてしまいます。

作品も少なめ。それも万人受けというよりは、大胆な理論分解を試みた挑戦的な作風が多い。ですので、少し前衛的な風に見られがちですが、これがハマる人にはたまらなくハマるのです。
「なんか変だけどカッコイイ」不思議な魅力で、いつまでも頭にリフレインする素敵な楽曲を提供してくれています。

マンガ、シナリオ作り、ゲームデザインなど、多様な分野にまたがってさまざな経験を積み、人生と深く向き合ってきたからこそ生まれる不思議な魅力が、

楽曲からもご本人からも溢れ出ているんですね。

植松伸夫さんやすぎやまこういちさんも大好きなんですが、やはり「陰」がなさすぎるというか、少し軽いというか、ちょっと物足りない気がしちゃいます。

ですので、他のゲーム作曲家にくらべてあまり売れてはいないし、好みもマニアックだけど、わたしは菊田裕樹さんが好きです。

独自の作曲理論は伝統的な作曲のセオリーから大きく逸脱しており、なんとかその秘密を解き明かそうと研究しています。

一番有名なのは「子午線の祀り」『聖剣伝説2』のラスボス戦で流れる曲です。
http://www.youtube.com/watch?v=qKJgaSng-qc
当時プレイしていた子どものたちの頭に焼き付いて離れない、今でも人気のあるロングセラー曲です。

曲名は木下順二作の戯曲『子午線の祀り』から。このように、曲名に本の題名を借りるというのが菊田さんの特徴です。FFに多い「ラストバトル」などより、断然世界が広がりますよね。

さて、長々とすみませんでした。

このように、音楽人ひいては表現人には大きく2つのパターンがあることが考えられます。

モーツァルト属は

・いわゆる天才タイプ
・多作
・作品つくり以外は無頓着
・人に受けやすい、認められやすい
・素直で明るい。光を放つ。

ベートーベン属は

・一生懸命なんでもやる
・作品以外のことも真剣にやる
・少ない作品に命を賭ける
・大衆受けしない。認められにくい。(が、コアなファンを持つ)
・少しひねくれ。陰のある感じ

このような場合分けにどんな意味があるのか、そもそも正しいなんて言えないではないか、ということを突っ込まれると、

わたしはこういう人間分析が好きなだけです、としか言えません。

でも、意味はなくはないと思います。正しいかどうかが重要なのでなく、人を見ること、考えることが重要なのです。

それに、タイプによって適切な役割があるので、おとやとしてのアイデンティティを確立するには、

自分がどちらなのかを知る必要があると思います。こういう場合は、自分じゃわからんもんです。友人やバンドメンバーに尋ねてみましょう。

きっと、バンド内には、この両者が同等の割合で存在した方がバランスが良いと思います。

SONALIOにおける、斉藤さんと海保さんのように。

私見の強い解釈ですが、こういう人間観って、大事だと思います。

あなたはどちらだと思いますか?

宇宙のリズムに燃えよ!

曲をつくりました。

なぜって、TF Chen Cultural Center というオンラインストアで絵を買ったんです。

TF Chen( 陳錦芳)は台湾の画家、哲学者。国際文化交流、グローバルに新しいルネッサンス活動を展開するため、TF Cultural Center を開いています。

77歳を越えて現役。すごい。あまり詳しくありませんが、いきなり買ってみました。実物を輸入。操作ミスで2つ。


題名と、付記された詩が印象的です。自由の女神、人類の創造力についてうたっているよう。"Cradle of Civilization"は「文明の発祥地」のような意味。


雰囲気を想像して(創造して)翻訳してみるんです。言葉と音楽で、翻訳してみる。

販売ページから引用です。
www.tfchen.org/Merchant2

Burning with Cosmic Rhythm

In the vast darkness
Turn the constellations in a symphony of cosmic rhythm
Only Beethoven can hear
With his deaf yet deft ear;
In the deep night
Burn the constellation celebrating the burst of Creation
Only van Gogh can catch
With his color and brush
Liberty, Mother of Creation
Hoist high her holy fire
Through time and space
Penetrating the Soul of Humankind
The Cradle of civilization!
(by T. F. Chen)



宇宙のリズムに燃えよ

深い深い闇の中

宇宙の星々が奏でるシンフォニーとリズム

聞こえぬだろう、わたしたちには。聴こえるだろう、ベートーヴェンなら

くらいくらい闇の中

煌めく星々に祝され、燃え滾つ創造力

その色彩には宿っていた、ゴッホの筆には降りていた

自由、創造力の母

時と空に、その聖なる炎を

貫け 人類の魂を

文明の揺籃を 高く掲げよ!


Burning with Cosmic Rhythm - Feel 1
https://www.youtube.com/watch?v=EXA6CKYggiw

Cosmic Rhythm、宇宙のリズムは変化し続けるし一定でない。ということで今はFeel 1。2日でできた。

ableton という即興向きソフトで作っているので変化は自在。そう、自由なのだ。創造力の母は、自由。

Let's Burning !

with Cosmic Rhythm...

バトル曲の作り方

今回MuseScoreで打ち込んだのはBelieving My Justice という曲(ドラムはなし)。
http://musescore.com/user/139965/scores/158859

作曲:伊藤賢治
ゲーム:『Romancing SaGa Minstrel Song』

この曲はイトケンさんの戦闘曲の定番スタイルともいえる、コテコテのバトルサウンドです。

原曲はものすごく派手ですが、エッセンスを抽出すると、ほとんどわずか4パートのみ。シンプルな弦楽四重奏とメロディにブラスがあって、シンセとハープがアクセントでたまに入るだけです。

打ち込んだ譜面を聴くとわかりますが、ドラムがなくてもグルーブを感じることができると思います。

ベースと内声のアルペジオが、がんばってリズムを刻み続けているから、グイグイと前へひっぱるグルーヴが出ているのです。

この、「スケールを動きまくるベース」と「内声でひたすらコードトーンを刻むアルペジオ」というのが、もとよりゲーム楽曲のリズムセクションでは多用されるスタイルであり、とくにイトケンさんのバトル曲は笑っちゃうくらいそれのゴリ押しなのです。

この曲はそれがよくわかる。また、コード使いも非常にシンプルで、転調もなく終始ダイアとニック上のコードで循環している。飽きないループ感です。

イントロの仰々しさやブリッジのユニゾンリフなども定番の手法。とにかくこれぞゲーム音楽というようなお手本のような曲です。

コードの基礎と、このスタイルを知っていれば、お手持ちのDAWまたはノーテーションソフトでバトル曲っぽいものがつくれるとおもいます。

MuseScoreのストリングスセクションで抽象化しただけでもこれだけ雰囲気でるのです。スケッチならこれで充分です。
http://musescore.com/user/139965/scores/158859

本当はコードネームも記載したのですが、ちょっとしたバグにより消えました。(MuseScoreは基本使いやすいのですが、慣れてくると細かい不親切設計が多い。グリッサンド実音で打ち込んだので表記変です)
これをお手本に作曲を解説する動画か何かつくろうと思っているので、その時に説明しようと思います。

バトル曲の手法というのはいくつもありますが、この曲では以下の手法が使われています。

・わかりやすくもりあがるイントロ
・スケール上を行き交うロック的なリフでステイするブリッジ
・ベース(スラップ音色)がリフを刻む
・内声部のストリングスが16分で高速アルペジオ
・展開が早いがサビがない。Intro後、Bridge-A-B-A-B-Bridge-A-B-A-B...を繰り返す

どれも定番中の定番です。

譜面上に抽象化すると非常にシンプルなつくりであることがわかりますね。
音楽は一見カオスですが、料理や建築と同じで、実は非常に論理的に秩序立って作られていることが多いのです。
いいゲーム音楽は特にすばらしく均整がとれていて、美しい。そこに魅力を感じるのですね。

ゲーム音楽と作曲好きな人はぜひ。ダウンロードもできます。
http://musescore.com/user/139965/scores/158859

ヴィデオスコア。
http://musescore.com/node/158867

原曲
http://www.youtube.com/watch?v=wXHSyqbo5ic

Create Your World!

音楽で笑いを起こす

今回は少し変化球です。

コメディアン/ミュージシャンの
Rob Paravonian
さんのパフォーマンス「パッヘルベル・ラント」です。

Pachelbel Rant
http://www.youtube.com/watch?v=JdxkVQy7QLM

日本にもよくいる、「ギターと歌を使うコメディアン」スタイルです。
これは彼の一番有名なネタで、ご存知クラシックの名曲、ヨハン・パッヘルベルのカノンをパロディにしたものです。

英語ですが、音楽は言葉を超えます。見ているだけでなんとなく内容はわかるし、笑えてきます。
何を笑いのポイントにしているかというと、このカノンという曲の和音の進行についてです。

D - A - Bm - F#m - G - D - Em/G - A

この曲の有名な「カノン進行」というヤツで、これは現代のポップスでも数えきれないくらい流用されている王道の進行です。

とにかく万人受けのする定番の響きなのです。そのため使い古されていて、少々退屈でもある。そこをネタにしているのですね。

アンサンブルにおけるチェロの気持ちを代弁しているところで笑いが起きます(1:20)。

「バイオリンやヴィオラはとてもきれいなメロディを弾くけど、チェロはずっと同じ8つの四分音符を繰り返すだけなんだ。54回さ、数えたんだ。それ以外にすることなんてないんだ」

まとめるとこんな意味ですが、見た方が面白さは伝わります。

後半は、現代の名曲をとりあげて、それがカノンの進行にそれてしまうという展開。アブリル・ラヴィーンやエアロスミスの曲がいつのまにか「ラーラララー」につながってしまって、笑ってしまいます。

最後はビートルズの「Let it be」の歌詞を変えて、パッヘルベルを呪います。

五分たらずのショーですが、すごく笑えます。音楽は人間の意思によって笑いにも使えるのです。

美しい名曲たちが一気に滑稽な舞台装置に変わってしまいました。
たまにはこういうのもいいでしょう。

著者情報

Daisuke Nakamura

おとやガイド。ちいさなおんがく活動リファレンスとしてご利用ください。海外リソースを中心におんがくを楽しむための知恵を紹介。ゲーム音楽、個人が気軽に運用可能な作曲の方法論についても研究しています。作品発表,デコボーイ制作も。
ブログ
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http://ccoform.jp/Blp/fr/OtoO/xuYt8n

おとやガイド通信2014 Vol.2 Frekul Talk Live 総集編

2014年6月16日 発行 初版

著  者:Daisuke Nakamura
発  行:おとやガイド出版

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