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jacket

例えば、印刷された写真が在るとする。それを拡大していくと現れるD.O.T(ドット)は網点そのものであり、肖像権と単なる網点の境目は何処か。それはウェブ宇宙に輝くノイズや浮遊孤立点に等しいのではないのか。
Dead or Transformation.
網点の神様にお供物を……。陰やネガティヴを意識した意味不明本。
初出=issuu by mori_______。

Google+ Hangoutにて眼鏡攻撃を受ける著者。

名 称 未 設 定
vol.3 D.O.T.____________________Dead or Transformation.

布団内夢遊研究会の紋章。

布団内夢遊研究会

ふとんから考える、布団内夢遊研究会。
わが会では、恋人と夜を過ごすとき、眠りに着く瞬間こそが重要だと断定している。その相対する寝顔の方向、所謂(俯せ、仰向け、涅槃仏型……と体位は様々だが)顔面座位の研究である。健全な男女は、真っすぐ仰向けに寝る事(相互仰向け)が、視線を交差せず、天に向かって平行である事から、未知へと向かう共生を意味している。
また、視線交錯型(向き合い型)は内面的に不安定な状態(共依存状態)を意味する。しかし、交際初期の男女や、それぞれ体調によっては簡単に断定できない。
上記二点の体位は、喧嘩状態では意味合いが異なる。つまり、相互仰向けが健全・正常と記したが、喧嘩状態の場合、それは棚上げ型相互関係に変化し、視線交錯型が仲直り促進となるため、一時的に正常型となる例がある。
また、両方涅槃仏型(反向き合い型・片方後頭部見つめ型)、片方仰向け片方涅槃仏型など、片方にバランスが傾倒している現象は、片思い状態、もしくは戦略的無関心が働いていると言っても過言ではない。片方に傾倒し、均衡を保つ方法は、場合として存在するが、健全認定の範囲には入らない。
そして、その男女の間にひとつの生命が現れるとき、枕の多様性も去ることながら、この考察並びに顔面座位は複雑化する。わが布団内夢遊研究会は、あなたの夢見る方向が、あなたのパートナーと同じ方向である事を願ってやまない。

浴室

カミキリムシ曰く、その蛇口を斬ったほうが良いのではないか、と暖簾から覘く。

……とても寒い、猛吹雪のなか、家に向かって国産軽自動車を転がす。冷えた身体を湯船に埋めて、一息つきたい一心に、ハンドルにチカラがこもる。玄関のドアーを開き、暗闇のリヴィングルームに灯りをつける。
青白い光が冷たい空気を映しているかのようだ。
携帯電話と眼鏡を机に置いて、パジャマと下着を持ちながら、浴室へと向かう。
冷えた浴室前、裸になると一層、冬の厳しさを肌身に感じる。
つま先立ちで、いそいそと入浴へ……。

……ここで私は思い詰める。果たして私とは一体、何者であろうか、と。
欲望先行型の快楽主義者なのではなかろうか、と。
確信にも似た自分への疑い。諦観に身を任せ、哲学的に開き直る、そんなわけでは決してない。

……私には、微かな「尿意」があった。しかも昨夜もこの場でそんな事を思っていたのだった。
早くお風呂に入りたい……そういう思いで浴槽に入ってから尿意がある事に気がつくのだ。
悔やみきれないその思いは、身体を洗ったり温まったりした後、すぐにトイレに向かうという、いわゆる衛生的プラマイゼロ感。同時に、この悔やみが「毎夜」訪れている事。
一昨日、その前日、その前の前の日も、そうなのである。
排尿行為が汚いという意味ではなく、目先の欲にしがみつく、非合理性が優先される事、そしてそれが繰り返されている事、そういう現実を振り返る今だ。

今、私は私に、公開と後悔の区別もつかないまま、冷たい警告を放つ。このように文書化し掲示する、情けなくもどうでもいい、矜持のために。躾のために。

煙草

依存と目眩の図。

俺はコンビニエンスストアーのドアーを開く。
一歩踏み出すと来客音が鳴る。
その音を聞くと無性に悲しくなる。
マニュアル通りのいらっしゃいませを店員は発するからだ。

「いらっしゃいませ」

俺はその発言を無視し、煙草の銘柄を発する。
店員は画面の年齢確証ボタンを押すようにと発する。
俺はその発言を無視し、携帯番号を取出し、
画面に「7」を表示させ、店員にみせた。
マイルドセブンライトだからだ。左利きだが。
マニュアルにはない、異常な行動を、静寂を、反社会性を、時を、もしくは不条理を、
店内の監視カメラは的確に映していた。

ドリームキャッチャーに九索(屎)を絡ませた、落下物と運の無関係図。

今朝、ゴミを捨てにゴミ捨て場に行ったのです。そうしたら、近所のお婆ちゃんがいて、カラスに荒らされ散らかったゴミ捨て場を掃除していたのでした。僕も、朝の挨拶をしてから、それを手伝い、また、荒らされないように、頑丈に、ゴミのネットを固定したのでした。
頭上の電線では、カラスが数羽、僕たちを見つめていたのでした。掃除やゴミ捨ても終わり、会社へ向かおうとした、その時、頭の上に何か液体らしいものが落ちました。雪の塊かなと思ったのですが、それはカラスのUでした。

僕は、屈辱と憤りを感じながらも、家へと戻り、髪を洗いました。当然、会社へは遅刻をしました。会社で、遅刻の理由を訊かれたのですが、僕は、正直に応える事ができませんでした。この年齢になっても、この事実を述べて、憐れみや同情を受けたくはなかったのです。

今日一日、カラスの事だけを考える日になりました。ビートルズの「ブラックバード」は、カラスの事ではなく「クロウタドリ」という黒い鳥だという事も知りました。落ち込む事もあるけれど、僕は、この街が好きです。皆様も、頭上に気をつけて、どうか元気でいてください。紙面も無くなりますので、突然ですが終わります。

黒電話

ダイヤルを回し、指を離すともとに戻る、あの感覚を憶えているか。

「電話」って苦手で好きなんです(?)。
幼少の頃は家に固定電話が一台しかなくて、友達から電話がくると母親が取ったりして、
「○○くん居ますか?」
「はい、ちょっと待ってね」
受話器をそのままに(当時は保留メロディなど無い)
「○○〜〜〜〜、○○くんから
僕はその声に溜息し、受話器を取ると友達は決まって、
「お前、母親からちゃんづけ・・・・・されているのか!?」っていう展開が過り……。

母親の上流家庭を意識した偽りの口調と、
その後友達からカテゴライズされる絶望感と、
いいところのお坊ちゃん設定、所謂、家庭幸せ演出の虚無感が重なって、黒電話の黒歴史、電話がなぜ苦手かという話は涙なくして語る事ができない……といっても過言ではありません。

その家庭環境下で育った僕は、そのトラウマ的なものを引きずって電話恐怖症になった……とは過言ですが……。「今、この電話をしたら、向こうの相手が何か運動的なものに勤しんでおられたらどうしよう、その運動的なものを途中で遮断する事になる」だとか、「人が生きていく道に必要のない、強行な他者からの厚かましい横入り感覚ではないのか」など、現代のネット電話をしていると、そういった記憶が浮かんだりするのです。

よって読む、読まないの選択ができる手紙や、
留守番電話が得意だったりします。

半分冗談で半分本当です。つまりハーフ&ハーフです。

名称未設定 vol.3

2014年2月28日 発行 初版

著  者:蟹川森子
発  行:物書商工会議所

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蟹川森子

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