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この本はタチヨミ版です。
APPLIED RUDIMENTS FOR DRUMMING
“Funky Drummer” James Brown, 1969
“Foolish Fool” Dee Dee Warwick, 1969
“Rock Steady” Aretha Franklin, 1971
ズレとピッタリ
規則正しいズレ
人文科学と自然科学
図のすごさ
筋肉と重力とグルーブ
【本書の図を集めたPDF、紙本版購入の方向けのデータ本を提供しております。詳しくは下記ブログをご参照ください。必要なパスワードは本書、巻末(謝辞の次項)に記載されております。】
http://neralt.blogspot.jp/2014/04/rhythm-and-finger-drumming-neraltmusic.html
本書の第一の目的は、伝統的なパッド付きサンプラーであるAKAI社のMPCシリーズ及びその派生系をリアルタイムに叩くパフォーマンス、通称「フィンガードラム」に関する基本的な情報を提供することです。
AKAI社のパッド付きハードウェアサンプラー「MPCシリーズ」は、HIP HOPを中心にクラブミュージックのリズムセクションを担う重要な制作機器として浸透しました。同時に、制作だけではなく「パフォーマンス」のツールとしても使用され、特にリアルタイムにパッドを叩くアートフォームである通称「フィンガードラム」と呼ばれるスタイルは、本物のドラム演奏とは異なった独自の発展をみせています。
しかし「フィンガードラム」はギター演奏やピアノ演奏といった伝統的なフォームに比べると、まだまだ情報が不足しているといえるかもしれません。「フィンガードラム」に関するTipsは多くあるものの、体系だった情報は少なく、新たに始めたいと思っている人が参考にできる資料はほとんどありません。
これは「フィンガードラム」が比較的歴史の浅い文化であるということが第一の原因ですが、同時に本物のドラム演奏の延長と考えられ、「指ドラム」のオリジナリティがまだまだ認識されていないからなのかもしれません。
もちろん「フィンガードラム」はドラムである以上本物との類似性はありますが、「フィンガードラム」には「フィンガードラム」だけの特徴があり、この点に注目することでもっと楽しくプレイできるはずなのです。
本書ではこの「フィンガードラム」を独自性のある新たな演奏様式ととらえ、基本的な考え方と具体的な練習内容を提供します。
皆さんのフィンガードラム生活がより一層楽しくなりますように。
「指ドラム」の多くの利点は全て「本物のドラムを叩かなくても良い」という特徴から生まれます。
第一に「指ドラム」は演奏する場所が制限されません。本物のドラムの場合を考えてみると、運搬することが非常に難しくまた音量も大きいので、基本的にドラムが設置されていてしかも大音量が出せるライブハウスなどに演奏の場が限られてしまいます。しかし「指ドラム」の機材は運搬ができますし、また音量も電気的にコントロールすることができるので、自宅やカフェといった様々なシチュエーションで演奏が可能です。
これは現代日本においては大きな利点だと思われます。何故なら皆さんもご存知のように日本の住宅事情は欧米諸国に比べると非常に厳しく、本物のドラムを演奏する機会をえることはほとんど不可能に近いのですが、このような状況下でも「指ドラム」のおかげでドラムのサウンドにふれることができるからです。
第二に「指ドラム」はどんな音色もプレイすることができます。本物のドラムは当然本物のドラムの音しかでませんが、「指ドラム」の場合、マイクで録音できる音であればどんなサウンドも使用することができます。例えば手を叩く「クラップ」と呼ばれるディスコやソウルに特徴的な音色を本物のドラムで演奏することはできませんが、「指ドラム」であればサンプラーの機能でサウンドを取り込み、演奏することができます。他にもローズの演奏を取り込めば、メロディやコードのあるサウンドをプレイすることも可能です。
この音色の多様性は「指ドラム」の大きな特徴といえるでしょう。
どこでも演奏ができて、どんな音色でも出せる。これが「指ドラム」の大きなメリットです。
「指ドラム」には利点が多くあるとのべましたが、当然欠点もあります。これは主に演奏に関する問題です。本物のドラム演奏においては、両手に持った「スティック」と「左右の足」を使用しますが、「指ドラム」においては「スティック」のかわりに「指」を使いますし、「足」は基本的に使用しません。演奏スタイルの違いが大きくサウンドに影響してくるのです。
指ドラムの第一の欠点として、スティックだからこそ可能な表現、例えば「フラム」や「ロール」といった表現が非常に難しいということがあげられます。本物のドラムを「スティック」で叩いた場合、大きな跳ね返りが生じますが、この跳ね返りを積極的に利用して「フラム」や「ロール」といった奏法を実現させています。しかし「指」にはこの跳ね返りがほとんどないため、指ドラムで本物のドラムに特徴的な奏法を演奏するのが非常に難しいのです。
第二の欠点は、本物のドラムにおいて左右の足を使う奏法を、「指ドラム」で再現するのが難しいという点です。本物のドラム演奏においては左足を、ハイハットのオープンとクローズのコントロール、加えてクローズハイハットの演奏のために使います。さらに右足は、バスドラムの演奏のために使います。しかし「指ドラム」においては「足を使用しない」ので、左右の足の機能を「指」がかわりに負担しなければいけません。つまり指は左右のスティックの機能と同時に、左右の足の機能も担当しなければならないのです。幸い、多くの人は10本の指があるので、トレーニング次第でこれはクリアーすることができます。
2つの欠点をまとめると以下のようになります。
・スティック特有の表現が難しい。
・本物のドラム演奏における左右の足の機能を、指が負担しなくてはいけないため、多少技術的に難しい場合がある。
以上のような問題に対する原理的な解決法を説明することは非常に難しいのですが、基礎的な演奏技術を修めることで、経験的に対応できるようになります。
指ドラム特有の技術的な問題はあるのですが、あまり難しく考えずに基本的な練習をすることで必ずクリアーすることができます。
伝統的なMPCスタイルのパッドに、どのような楽器配置をするかは非常に大事な問題です。
本書では、右記のような配置を採用しました。
様々なスタイルがありますがどのようなスタイルをとるにせよ、一度決めたスタイルは固定したほうがいいでしょう。
何故なら演奏に関する情報は運動を司る小脳に蓄積されますが、小脳はフレキシブルに変化することがあまり得意ではなく固定された様式を好むからです。
一度スタイルを決めたのなら、よほどのことがないかぎり変更しないほうがよい結果につながります。
まずは左右の指を使って基礎的なパターンに取り組んでみましょう。この段階ではまだドラムキットのことは考えずに、純粋に「リズム」と「左右の手」に集中します。大抵の場合、物事はシンプルな状態から始めた方がうまくいくからです。
この基礎的なパターンに習熟することが後のドラムキットを使用した演奏に必ず役に立ってきます。しかし、あまりにこのセクションが抽象的だと感じる人は、最初から「PRACTICAL FINGER DRUMMING PATTERN…44」に挑戦してもかまいません。
まずはシンプルに片手から始めてみましょう。
BPM120のクリックと完全に一致するように叩きます。
ポイントはリラックスすることです。
必要な力を必要なだけを入れましょう。
今度は左手で。
左手が右手と同じレベルで動かせるように、右手の動きと比べながら練習するとよいでしょう。特に肘・手首がスムーズに動いているか右手と比較してみましょう。
両手を使ってみましょう。
交互に叩く手を切り替えます。
大事なのは、手を上げるタイミングです。
上げるタイミングが遅れてしまうと、つられて振り下ろしも遅れるため、タイミングを逃してしまいます。
叩くと同時に、反対の手を上げるイメージです。
それから左右の強さが同じになるように注意しましょう。
最初は誰しも利き手のほうが強くなってしまいますが、目指すのはどちらの手も同じように使える状態です。
同じ手で、続けて2回叩きます。
肘を動かすのは1回目だけで、2回目のストロークは手首で行います。
下向きに入れる力を最小限にして肘を始点にストロークし、叩くと同時に手首すぐに上げます。そして手首を始点に2打目をストロークします。こうすることで素早く連続で2打することができます。
ドラムスティックを使って練習すると感覚が掴めるかもしれません。何故なら「スティック」と「打面」の間に生まれる跳ね返り「リバウンド」をうまく拾うことがダブルストロークの肝だからです。「指」と「パッド」の間には「リバウンド」がほとんど生じないため、最初はこの感覚を育むことが難しいでしょう。ドラム練習パッドとスティックをつかって「リバウンド」の感覚をつかむ練習をしてみましょう。
練習のポイントは3つあります。
・「SWITCH」する瞬間を意識すること。
・(1)と(2)を続けて練習し「頭」を意識すること。
・(1)と(3)を続けて練習し「裏」を意識すること。
「SWITCH」と「DOUBLE STROKE」の技術を組み合わせたパターンです。
これは指ドラムにおける最初の壁といえるでしょう。
ギターにおけるバレーコード「F」のような存在です。
できなくても焦らず練習しましょう。
「SWITCH」が多くでてきますし、慣れるまではタイミング的に難しい場所にあります。まずはテンポをかなり落として、「SWITCH」するタイミングを確認しましょう。
「ACCENT」は、始点を高くすることによって作り出します。手首だけではなく肘を使って手を上げることによって、始点を高くしましょう。「ACCENT」以外の「STROKE」は主に手首を使用します。
最初の4つの「STROKE」と次の4つの「STROKE」は、完全に左右対称になっています。右手から始めたパターンを、鏡のように左右反転させ、左手から始めた形です。このとき、左右のバランスが同じになるように注意しましょう。どちらか一方が強くてはいけません。
また、この二つの左右対称の関係を「MIRROR」と呼ぶことにします。M1という記号と「-」でつながれた1かたまりは、後半の「M1」と「-」でつながれた1かたまりと「MIRROR」の関係にあります。Arnold SchoenbergのTwelve-tone techniqueにおける「INVERSION」を、リズムに適用させたものともいえるかもしれません。
詳しくは次の項目で取り上げます。
この項目は非常に抽象的な項目であるため飛ばしてもかまいません。またこの後に頻出する「MIRROR」、「RETROGRADE」といった概念や記号は、演奏上さほど重要ではないので、わからなければ無視してもかまいません。
さて、近代を代表する作曲家であるOlivier Messiaenはリズムに大きな関心を抱いており、様々な手法を考案しました。彼は対位法における音高に対する操作であった「RETROGRADE」を、音価に適用させました。つまり通常左から右へと読んでいくリズムを、後ろから読むことで新たなリズムを作り出しました。
例えば図の(2)の手順のうち最初の4打は、右手から始まるSINGLE PARADIDDLEのパターンですが、これに対して「RETROGRADE」の操作を行う=つまりリズムを後ろから読むと、(2)の後半の4打になります。
これがMessiaenがおこなったリズムに対する「RETROGRADE」という技法です。
次に本書独自の概念である「MIRROR」について説明します。これは演奏にも少し関係がある概念なので、できれば理解してほしいところです。
図の(1)の最初の4打は、右手から始まる「SINGLE PARADIDDLE」ですが、これに対して「MIRROR」の操作を行うと、(1)の後半4打になります。
何をしているかというと、「左手」で叩く箇所を「左右反転」させて「右手」に、「右手」で叩く箇所を「左右反転」させて「左手」にしています。
これによってパターンが「手順的」に「左右対象」=「左右が反対」になっています。
この操作を本書では「MIRROR」と呼び、また短縮記号「M」で表します。なぜ「MIRROR」の概念が演奏上必要になるかというと、練習をする際に「左右の手順を逆にする」というアイデアが有効になることが多いからです。
また何故わざわざ分かりにくい自前の概念を導入したかというと、「手順」に関する概念が今のところ少ないからです。
例えばMessiaenは非常にリズムに注目した作曲家ですが、しかし演奏手順についてはほとんど考えませんでした。作曲家であるMessiaenにとって演奏手順はさほど重要ではなく演奏家に預けられた領域であったからです。これは他の多くの作曲家にもあてはまります。
しかし我々演奏家にとって「手順」は最も重要な項目です。手順こそがリズムを決定さえすると私は考えています。
どうやら多くのドラマーは手順の組み合わせでビートを構築しているようなのです。代表的な手順は、40 Essential Rudimentsとして整備され学習されています。
繰り返しになりますが「MIRROR」という「手順に関する新たな概念」を導入したのは、「手順」は演奏上最も重要な項目であるにもかかわらず、ほとんど考察の対象となっていないために、独立した概念がつくられていないからです。練習する上で重要になってくる「左右の対称性」については特別に自前の概念を用意する必要があると考えました。
さてもう少し、「MIRROR」と「RETROGRADE」の違いについて説明します。
同じ「SINGLE PARADIDDLE」に対して「MIRROR」の操作を行った(1)と「RETROGRADE」の操作を行った(2)を比べてみると、その違いがよくわかります。「MIRROR」は、あくまでリズムに変化をおこさず、左手と右手を逆さまにする操作であり関係ですが、「RETROGRADE」ではリズムそのものが変わっています。
また正確にいうと、(2)で行った「RETROGRADE」は、Messiaenのものとは異なります。
なぜならMessiaenの「RETROGRADE」はあくまでリズムに対する操作であり、演奏手順—つまり右手で演奏するのか左手で演奏するのか、ということに関しては指定をしていませんし、考慮もしていないからです。
本書で使用する「MIRROR」や「RETROGRADE」といった操作/関係性は、主に手順に関する定義であり、この点がMessiaenとは異なっています。
余談ですが、ドラマーが40 Essential Rudimentsを自分のビートに取り込むように、Messiaenはインドのリズム体系であるTalaから多くを学びました。Talaはリズム集のようなもので、さまざまなパターンが載っています。我々も余裕があれば研究する価値があると思います。
さて、(3)は「RETROGRADE」の操作をし、それに加えて「MIRROR」の操作をしたもので、対位法における「RETROGRADE INVERSION」に対応します。
(4)はMessiaenの「NON-RETROGRADABLE RYTHMES」に対応します。つまり、「RETROGRADE」の操作をしても元のパターンと全く同じになってしまう状態です。PALINDROME=回文と呼ぶこともできます。
以上のような操作/関係性に着目しながら手順を分析することができます。
(1)、(2)を練習しましょう。
(1)は、「SINGLE PARADIDDLE」と似ていますが少し違います。どちらも最初の4つの手順と後の4つの手順が「MIRROR」になっている点が特徴です。
(1)の最初の4つの手順は、「SINGLE PARADIDDLE」を「RETROGRADE」したものです。[図(1.1)参照]つまりこの二つには、構造上の類似性があるということです。
(2)も「SINGLE PARADIDDLE」と似ていますが少し違います。また(1)とも異なります。
(2.1)と(2.2)をみるとわかるように、最初の2つの手順と後の2つの手順が「RETROGRADE」「MIRROR」の関係にもあります。
今まで解説した手順のまとめです。[次頁参照]
(2)〜(6)の手順は、最後の部分が冒頭にスムーズにつながります。ですから手を止めることなく、永続的にパターンを練習していくことができます。
これらの手順全体に「MIRROR」の操作を加え練習しましょう。つまり「左」と「右」の手を左右反対にして練習するということです。いつも右手から始めてしまうと、左右の偏りが生まれてしまいます。
また「MIRROR」の関係になっている箇所は、アクセントも左右対象になるようにしましょう。いつも右手ばかりにアクセントがついてはいけません。
4つのブロックのうち、最初にアクセントをつけると決めたなら、右手から始まる場合も左手から始まる場合も同じように最初にアクセントをつける必要があります。
例えば(4)の手順であれば、最初の4つのブロックは冒頭の右手にアクセントがありますから、これと「MIRROR」の関係にある後半の4つのブロックも、冒頭の左手にアクセントをつけ、常に左右対称的になるよう気をつけます。
練習は地味です。すぐに効果が出ることもありません。
しかし続けましょう。他に方法はありません。
よく知られた事実ですが、リズムに特徴のあるキーボーディストは、ドラムがかなりうまい人が多いのです。代表的なところでいうとチック・コリアやキース・ジャレット、それからSouliveのオルガンのニール・エヴァンス。ビル・エヴァンスもドラムが演奏できると伝記に書いてあった気がします。キーボーディストはなぜかドラムに対して思い入れの強い人が多い気がしますね。かくいう私も本業はキーボード。それなのにでしゃばってフィンガードラムの本を書いてしまうくらい、ドラムが大好きなんです。なぜなんでしょうか。よくわかりません。それから、ドラムの人もキーボードが好きな人が多い気がします。ライブ終了後に「よかったです〜」と声をかけてくれるのは圧倒的にドラムの人が多いですね。不思議です。話を戻して、チック・コリアのドラムプレイをYOUTUBEで見ることができるのですが、正直、引きます。引くほどうまいです。自信がなくなります…ピアノがあんなにうまくて、ドラムまでうまいなんて…かなわない…(当然なんですけど笑)。それから、キース・ジャレット。彼はソロ作品の中でドラムを自分で演奏してます。相当の腕前です。Souliveのオルガン、ニール・エヴァンスはもともとドラムをやっていたとインタビューで言っていました。デトロイトのDJであるMoodymannもキーボードとドラムを演奏するそうです。それから彼もデトロイトのDJですが、ジェフ・ミルズ。元々はインドストリアルバンドのドラマーとしてキャリアをスタートさせています。意外な人がドラムを叩けるんですね。そしてそのことが音楽性にいい影響を与えているのだと思います。ドラムが専門でもなくとも少しかじる、オススメです。
これら全ての手順は、(1)〜(5)のBasicパターンに何らかの操作を加え組み合わせたもので構成されています。
例えば(6)の手順は、(1)→(4)→(1)M→(4)Mの組み合わせであり、含まれているパターンは全て(1)〜(5)、およびその「MIRROR」形だけで構成されていることがわかります。同様に(7)以降も全てBasicな手順の派生形だけで構成されています。
Basicパターンの応用/組み合わせで、かなりのドラミングパターンをカバーできることがわかります。あとはBasicパターンをどのようにつなげていくのか、組み合わせていくかが問題になります。
(6)〜(17)の手順は全て、最初の8つと後半の8つがMIRRORの関係になっています。MIRRORを意識したパターンを練習することは左右の偏りをなくすために効果的です。
自然にまかせたままの練習を続けると、大抵の場合、利き手が使いやすいパターンだけを練習しがちですが、前半と後半が「MIRROR」の関係になったパターンを無理矢理練習することで、左右のバランスを取っていくことができます。
次にBasicパターンのうち「SWITCH」と併記された(3)〜(5)の手順は、「最初に叩き始めた手とは『逆の手』で、次のパターンを始めることが示唆される」パターンです。
例えば(3)の手順は、「RLRR」と叩いた後には「L」と続くのが自然です。何故なら「R」がこの後に続いてしまうと、「RRR」と3連続で「R」を使用することになり、テクニック的に難しく、Lに切り替えた方が優しいからです。
「SWITCH」に注目するのは、この瞬間に演奏上の困難を感じるからです。例えば(6)を演奏してみると、「⇄(SWITCH)マーク」の所に引っかかりを感じます。この瞬間は演奏がうまくできるかできないかの、ターニングポイントなのです。
なぜ「SWITCH」する瞬間が難しいかというと、意識の中心を「右手中心」から「左手中心」に「シフト」させなければいけない瞬間だからです。
(6)をもう一度例にあげると、最初の一打目は「右手」です。「右手」に意識を集中しスタートします。そして次の1かたまり、つまり5打目も「右手」ですので、最初の1かたまりと同じ意識を持ったまま演奏することができます。
しかし、3つ目のかたまり、つまり9打目は「左手」のため、意識の中心を「右手中心」から「左手中心」に「シフト」させようとしている自分がいるのがわかります。この瞬間が演奏上の重要な箇所であるといえるでしょう。
もちろん、演奏感覚は人それぞれでしょう。しかし、誰にとっても演奏上で重要になるポイントがあるはずです。そのポイントを「意識すること」が練習する上で重要だ、ということがいいたいのです。いくつかある重要なポイントの一つとして、「SWITCH」を意識してみましょう、ということです。
さて「SWITCH」が演奏上重要なポイントであることを説明しましたが、(6)〜(11)の手順は全て、「SWITCH」が8打目と9打目の間にあります。対して、(12)〜(17)の手順は、「SWITCH」が4打目と5打目の間にあります。
「SWITCH」が8打目と9打目の間にあるパターンと、4打目と5打目の間にあるパターンでは、演奏感が全く異なることがわかると思います。どちらも同じBasicパターンの組み合わせにも関わらず、全体としては全く違うパターンに感じることでしょう。
例えば(6)と(12)は組み合わせとしては非常に似た手順で、(6)の5打目からスタートすると(12)の手順になります。しかし演奏感は全く異なります。何故なら演奏上重要なポイントである「SWITCH」が異なるタイミングにあるからなのです。
逆に(12)と(13)の手順は、異なるBasicパターンの組み合わせにも関わらず、演奏感が非常に似ていることがわかります。なぜならば、「SWITCH」する瞬間が同じであるからです。
以上をまとめると以下のようになります。
・様々なパターンをBasicな手順の組み合わせと
考えることで整理できる。
・「MIRROR」を意識して練習することで、
左右の偏りをなくすことができる。
・「SWITCH」する場所によって演奏感が異なる。
さて、いままでは抽象的なリズム全体について考察してきましたが、ここからは実際のドラムパターンついて考えることにします。
伝統的なMPCスタイルのパッドに、どのような楽器配置をするかは非常に大事な問題ですが、本書では、上記のような配置を採用することとします。ちなみに「Snare Drum」、「Close Hi-Hat」など同じ楽器が複数のパッドにアサインされているのは、同じ「Snare Drum」でも複数の音色を用意することが多いためです。
さあ、実際に図をみて演奏してみましょう。ここまで本書を読んできたあなたなら、あまり説明はいらないはずです。
念のため説明しておくと、「Rのライン」は「右手」で演奏することを示しています。同様に「Lのライン」は「左手」で演奏をすることを示しています。また「R1」というのは右手の「1番の指」ということを意味します。Lのラインでは「L1」と「L2」が登場しますね。つまり、左手の2本の別の「L1」と「L2」の指を使用するということです。「BD」と「SD」を1本の指で演奏することも可能ですが、別の指で演奏する方が一般的には簡単といえるでしょう。
人によって演奏に使いやすい指は異なるでしょう。ですから具体的には指定しません。2本の別の指を使うことをおすすめするだけにします。ちなみに私は、以下のような組み合わせを想定しています。
タチヨミ版はここまでとなります。
2014年4月26日 発行 第3版
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Black Musicのキーボーディストとして都内各地で活動。またアイドルのバックバンド、音楽理論のレクチャー、Detroit Techno,Black MusicのDJとしても勢力的に活動。
渋谷OTO
(http://www.shibuya-oto.com)にて毎月「Culture Milk」を開催。同イベント内にて日本初クラブでの音楽理論講義「Music Theory Work Shop」を不定期で開催中。
古典和声から印象派、12音技法までどんとこい!
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