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詩集「聖地巡礼」

八桑 柊二

八桑 柊二出版



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  この本はタチヨミ版です。

目 次
 
 シナイ山登攀 
 エイラート水族館 
 マサダ   
 カペルナウム
 クムラン   
 死海    
 カイサリア  
 円形劇場  
 カルメル山  
 エルサレム遠景  
 ローマ時代の牢屋  
 最後の晩餐の間  
 ペテロの坂   
 VIA DOLORASA   
 聖ヒエロムニムスの居所  
 エルサレムの本屋  
 アラビア風の昼食  
 ペテロの家   
 カルワリオと聖廟教会
 聖カタリナ修道院  
 レオナルド・ダヴィンチ空港  
 バチカン宮殿  
 カタコンベ    
 カイロ博物館   
 クレオパトラ   
 ベドウィンの村で  
 シナイ半島のオアシスにて
 ナザレトの町  
 バスの運転手   
 オリーブ園   
 夜会気分   
 ギザのピラミッド   
 ゲストハウス   





詩集『聖地巡礼』

         八桑 柊二

シナイ山登攀

  見渡す限り 草木一本生えていない岩また岩、
  そそりたち、倒れかかりそうな巨大な岩壁
  岩に腰掛け、聖書を黙読している外国の青年が目に留まる
  岩に白く十字架の印。
  ハッシュという灌木だけが生えている
  不思議なことに甘ったるい芳香が漂う
  荒れた土地はこの植物だけだ 
  
  僕は遠くを眺めた 
  大きく緩やかにカ―ブした道を巡礼団の一行が
  のろのろと歩くのが見えた
  その時 僕の意識が一瞬切れた
  僕は触れれば触れられる 親密な何ものかに包まれていた
  平穏で安堵しきった気分、それを感じていた
  山と空、僕を取り巻く宇宙の空気と一体になったような 
  悦ばしい気分になった 
  束の間の至福だ。
  
  山頂間近、急な石段を登る
  修道士が切り開いた道だ
  途中 日本から来た婦人に出会った
  プロテスタントのひとだ
  僕は山頂に一番乗り。
  二十畳位の広さで 小さな聖堂が建っていた
  強風が耐えまなく吹き 帽子が飛ばされそうだ
  赤茶化た岩の連なりの彼方 カテリナ山が小さく見えた
  一晩中歩いてやっと着いたのだが 興奮していて疲労を感じない
  女のガイドが一人岩にもたれて、少し寂し気だ
  神父を囲んで祈りを捧げた
  疲れているのがわかる、集中出来ない。
  
  山頂は晴れわたり 
  陽に照らしだされた赤茶色の岩肌、黒の岩影のコントラスト。
  僕は登るのに夢中で、モ―ゼの故事を忘れていた
  しかし、周囲の山々を見てるいと
  モ―ゼが見えない方に遭遇したのが本当らしく思える
  
  荒涼の土地にいると
  唯一の見えない方を思う気持ちは分かろうというもの。

エイラート水族館

ホテルはアメリカン・スタイル
避寒地で名高く、紅海に望むエイラ―ト
空は晴れ、爽やかな午後
バスに揺られて水族館見物へ
海にかかる長い橋を渡り 海の中の水族館に降りる
円形のガラス窓を透かし
極彩色の熱帯魚が回遊する
四方海に囲まれ、いっとき、浦島太郎気分
おと姫様はいなかったが 見たことのない化粧した魚
僕は海の散歩と洒落こむ



マサダ

 
死海の辺 クムランの近く 岩山の頂上、 
夏の宮殿は建っていた
部下を信用しなかったヘロデが居拠した廃墟
今はケ―ブルカ―で登れる
イスラエルの生徒達とすれ違い、 ”シャロ―ム”
砦と宮殿を兼ねた豪華な住居。
古代ロ―マ風の風呂まである
柱に唐草文様の装飾、
水の少ない砂漠のなか 巨大な石で囲った水槽、
宮殿の東側に死海が白く光っている
宮殿に吹きつける 冷たい風に吹かれ
眼下、ロ―マ軍の露営跡を見た
イスラエル人の抵抗はロ―マ軍を手こずらした
マサダでの抵抗は歴史に刻まれた悲劇。
ロ―マ軍の兵糧攻めに抗し 自殺は許されなかったので 
お互いに刺し交えて全滅した
ロ―マ軍が攻め登った時 残余の食料も焼却されていた
奇跡的に生き残った婦人の証言がヨセフスの歴史に記された
今は宮殿のテラスから 往時のロ―マ軍の露営跡が見えるだけ・・


 ”マサダを忘れるな!”を合言葉に
イスラエル軍が忠誠を誓う神聖な場所である

栄華の宮殿址は観光客でごったがえす











 

カペルナウム



 ガリラヤ湖畔のカペルナウム
 イエスが生活した土地
 ガリラヤ地方は自然が豊かだ
 草花も油絵の色彩に色づく
 濃い黄色に辺り一面 匂いたつ灌木の路
 黒の制服を着 散歩するシスタ―二人
 
 「ペトロの魚」と言われる魚が棲む
 ガリラヤ湖の遊覧船、私達は乗り込む
 この湖は天候が変わりやすい
 茶黒い透明度のない湖上が波立つ
 頭上にカモメが飛来、つきず離れず羽ばたく
 向かいの湖畔の丘とおく 白い線の羊の群が・・
 目の覚める、。鮮やかなピンク色のド―ム屋根、
 瀟洒な小聖堂が向かいの湖畔に建ち、
 場違いに見える
 案内役のひとりの著名な作家が甲板で物思い。
目の不自由な人が案内を聞き、見回している
 彼女は何を観じているのか?
 
 船着き場に座る 娘のブロンズ像。
 
 ヤシの大きな木に囲まれた
 古代ロ―マ風の建築はエキゾチック
 私の胸は高鳴る、異国にいるのだ!








 

クムラン跡



 死海文書の出土した土色の洞窟
 清い生活に仕えた修道者の集団。
食堂、集会所、飼育所
 クムラン跡は壁のかけらとしきり岩が残るだけ。
死海そばの砂漠で厳しい戒律を守った
 沐浴の部屋、階段のほぼ真ん中に
 蛇ののたくったような石のしきりが残る
 清められて出るひと 汚れて入る人を隔てる
案内板に略図と説明のあるだけ
 言われなければ 気づかない遺跡。

 

死海


死海に入ってみよう
 ホテルの庭先はもう死海
 水は青黒く 沖に塩の柱。
 日本人の神父が本を持って 浮かんでいる
私も浮かぼうと仰向けになった
 しくじり、塩辛い海水をなめた
 おなかを空に向け ぷかりぷかり。
 沖まで行き 塩柱を土産にもぐ
 
 風が吹き 寒い 夕暮れ
O氏がセ―タ―を貸してくれた
 シャワ―は背中が痛い位のジェツト水流
 塩を洗い落とすためだ
 ホテルに戻り 塩柱をシスタ―にあげる
 話の種が出来るというもの。

カイサリア


 
 蒼緑の地中海に臨むカイサリア
 遠くロ―マへの郷愁を抱いた 
 ポンシオ・ビラトの館があった港湾都市
 ロ―マ風の石畳の街道、ロ―マの女神の首の欠けた彫像 
 屋外の円形劇場の階段を歩き回る
 星空の下 どんな劇が上演されたのか?
 
 ピラトの館があったと刻す大理石の石碑が出土した
 彼は辺境の地に赴任し、ロ―マへの郷愁を
 海辺に住み 募らせていた
 
わたしは 海辺の岩の上を歩いた
 海の色は蒼緑。
軍事都市でもあるので
 往時の港の本通りはL字に曲がる



  タチヨミ版はここまでとなります。


詩集「聖地巡礼」

2014年6月9日 発行 初版

著  者:八桑 柊二
発  行:大湊 出版

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八桑 柊二

1946年、生まれ。明治大学文学部卒、業界紙・誌に勤める。今は無職。

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