さよなら くらり
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今でも夕立があったりすると、あ、くらりを家に入れてあげなくちゃ、と思う。
今年一番の暑さ、なんてテレビで聴くと、あ、くらりは廊下でひっくり返ってるかな、
なんて思う。
ふさふさの、金の毛をした彼女は不治の病でしたが、とても元気に病院へ通いました。
どんなに検査の数値が悪くても、微笑みかけるとへへっ、と笑いました。
冬には、元気に退院していたときもあったんですよ。
一緒にカフェにお散歩に行ったり
東京に四六年ぶりに大雪が降ったときは
庭に足跡をつけて遊んだりしました。
冬の柔らかい光で、日向ぼっこもしました。
けれども周囲が生命に満ちあふれる春になると、
彼女は顔を上げるのも億劫になっていました。
もうあまりへへっ、と笑ってくれなくなりました。
今でもそのドアを器用に鼻で押して、とことこと入ってくる気がします。
でも、もう彼女はいません。そっといなくなってしまいました。
でも。大丈夫。
「星の王子様」できつねが言っていたように、僕は風になびく金の麦の穂を見るたび
彼女のことを思い出します。会えなくても、大丈夫。
さよなら くらり。
2014年6月29日 発行 初版
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冬に冬だなあと思ったり、朝に朝だなあと思ったり、夕暮れに夕暮だなあと思ったりする受け身な性格を何とかしたいのですが、いかんせん時間だけが過ぎてゆきます。 Qullarisは、愛すべき我が家の犬の名前です。 高橋克彦、恒川光太郎あたりが好きです。