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この本はタチヨミ版です。
「すべてダイナミック」
「センス」
「コンセントレーション・キャンプ」
「完璧ヨーロピアン」
「ドイツとスペインの祭り」
「ノーチェ・デ・サンファン」
「お祭り大好きエスパーニャ」
「人の出会い」
「インターネットブラインドデート」
「殺人犯と会った」
「おかしな日本人」
「ちょっと変な」
「エブリバディニーズサムバディ」
「HOW TO DIE」
「南米ドラマが熱い!」
「南米ドラマ中毒」
「意外性」
「フラメンコドレス」
「ディスコの中の孤独」
「勘違い人間」
「シングルのメリット・デメリット」
「欧米男性から見た日本女性」
「この親にして」
「ビックリ紳士に老レディ!」
「トライアングル」
「スキャンダル」
「巷の商売」
「ビーチ模様」
「犯罪海岸」
「人の顔と中身」
「日本語の語彙」
「スパニッシュ・ウェディング」
「徒然」
海外での生活-何がこれほどまで私を魅了するのだろうか?
子供の頃からの夢を実現させるべくスペインに来て現在アン
ダルシア地方の小都市で暮らしている。日本を脱出したくて
こちらに来る前の10年間は、安住の地を求めて様々な国を
訪れ旅して来た。特にヨーロッパに魅せられたのは、単に
歴史や文化の違いというだけでなく、人々の人生に対しての
根本的なとらえ方と言えるかもしれない。
日本にいれば仕事も生活も、ある意味では安定した生活が
送れていたけれど、私はあえてその生活を捨ててここスペ
インまでやって来た。海外に出るといつも一体日本と何が
違うのだろうかと思う。それは人々の人生の楽しみ方、人生
の中の時間のとらえ方、感じていることの表現の仕方等、
どちらが良いとか悪いとかではなくたまたま私は海外にいる
方が居心地よく、又より自分らしく生きられると感じるから
日本を出たのだ。
たとえどこにいても私は紛れもなく日本人だし、日本の歴史
や文化で世界に誇れるものは決して少なくないと私は思う。
こちらでの生活や、訪れた他の国で見たこと、感じたこと、
日本にいたら見えなかったものや気がつかなかったことなど
書き記した文章を選びエッセイにしたものの第一弾である。
2014年8月28日 幸多 魅瑠
海外にいて普通のレストランで食事をしていつも感じる事、とにかく量が多い。まずはスターター、スープ又は前菜から始まりメイン料理にパン、私など少食のほうなのでスープとパンあるいはサラダで、メイン料理が来る前にお腹いっぱいになってしまうことがある。食事だけに限らずこちらではすべてがダイナミックだ。
女性のバストも豊満だし男性も女性も中年を過ぎると大きなお腹で太っている人もかなり多い。こちらに来てしばらくは道行く女性や、ビーチでトップレスになっている女性たちのバストに目がいってしまい、何度自分の貧弱なバストにため息をついたことか。またヨーロッパのどの国にもある古い教会を訪れるたびに、そのスケールの大きさに圧倒されてしまう。必ずしも大きいことが良いことだとは思わないけれど、ヨーロッパは長い間の侵略と攻防の繰り返し国境が地続きである点、やはり考え方もどちらかというと大陸的な気がする。
以前湾岸戦争の時日本の反応の遅さについて書かれたコラムを思い出した。人々の反応は農耕民族と狩猟民族によって違ってくるという。農耕民族は、畑に種を蒔いてそのまま収穫の時を待てばよく、狩猟民族のようにその場で判断を下さなければ命に関わるというようなことはない。だからYES・NOの判断も、その場ですぐ何かを即決することも苦手なのだ。狩猟民族の場合は即決判断して行動しなければ獲物に逃げられてしまうことを考えると、根本的に持っている両者の民族性の違いは明らかだ。人間は皆同じと言っても国柄・土地柄・歴史的文化の違いから、それぞれの国によって国民性の違いはあると思う。そんな観点で自分の国を違った角度から見るのも面白いのではないだろうか。
ドイツから車でパリに向かう途中ストラスブルグに立ち寄った。その時はまだハンガリーから南のヨーロッパへは一度も訪れたことがなかった私は、何とかブルグと付く地名はドイツだとばかり思っていた。EU統合後ヨーロッパに国境がなくなって、気が付くと道路標識はいつのまにかフランス語になっていた。ストラスブルグはフランスの田舎とは言えウィンドーディスプレイは明らかにドイツとは趣きが異なっていた。現地の道行く人々も、さすがフランス人と納得させられるような小粋なセンスで服を着こなしている。
センスというものは着こなしにしろユーモアにしろある意味では持って生まれたものだと私は思っている。センスのない人はどんなに良い服を着てもどこかしっくりこない。以前ある日曜日の午後東京の新宿南口を歩いていてびっくりしたことがある。何より若い人が多かったこと、歩いている若い子たちの着こなしのチグハグさに思わず私はため息をついた。びっくりするような色の組合わせや思い切りシックなスカートにスニーカーだったり、ジーンズに白のソックスに黒のハイヒールだったり、(そんなのが流行とは言ってほしくないな)そういう格好をしている若い子たちを見るとセンスという言葉知っているんだろうかと思ってしまう。
どんなに高価な物やブランド品を身につけても洗練さやエレガントさはお金では買えない。その人が持っているセンスは人生の生き方すべてに通用すると思う。ドイツでは思わず見とれてしまうような着こなしの人には残念ながら会わなかったけれど、フランスではたとえ年配のご婦人にしてもスカーフの巻き方ひとつからどこか違っていた。若い人から年配者まで基本的に服を楽しんで着こなしているように思う。
今私が住んでいるスペインはまたちょっと一味ちがったセンスになるのだけれど、さすがフラメンコと情熱の国、女性はめいっぱい男性を挑発するような刺激的で、よりセクシーに見せるような服を好んで着ている。そして町を歩いていてもテレビを見ても本当に見とれてしまうような美男美女がいるのだ。友人のスコティッシュ男性によると色々な国を見てきたけれどスペインはどの国より美人が多いと感心していた。おそらく長い歴史のなかで侵略と攻防が繰り返され、特に中近東アラブとジプシーそして純粋なスペイン人の血が混じり合って美形が造られていったのだろう。イスラムやトルコに侵略されたルーマニアやハンガリーもやはり美形が多い。
そう考えると日本を初め他国から侵略されずにきた単一民族の場合美の形態が違うのも納得できる。でもオリエンタルの美しさはやはり独特なものだと思う。それにしても日本の若い人にはセンスもう少し磨いてほしいな。
それはドイツハイデルベルグから車でパリに向かう途中だった。フランスの小都市ストラスブール近郊のホテルに行く前にドイツ人の彼が案内してくれたところだ。単に観光で見る為の何かの施設だろうぐらいにしか思っていなかった私は、彼が言ったコンセントレーションキャンプという言葉の意味がすぐにはわからなかった。そこはゆるやかな山の頂きに位置していて数棟の建物がある以外周囲には何もない、フランスにもあったナチスの強制収容所で、当時の状況そのままで残されていた。中に入ってみると当時収容されていた人々がどれ程苛酷な状況にあったか写真と文章で説明されていた。
アウシュビッツやダッハウを私は訪れたことはないけれど、そこはそのまま規模を小さくしたものといえるだろう。そのフランスの収容所にはユダヤ人よりもフランス人レジスタンスやジプシー達が多く収容されていたようだ。説明は英文ではなかったので詳しい内容はわからなくても、残されていた道具や写真を見るだけで、どのような残酷なことが行われ人々を悲惨な状態に追い込んでいたかは容易に想像でき、私たちはただただ無言で一通り施設を見てまわった。見終わったあとドイツ人の彼が突然泣き出した。一瞬私はそれが彼の笑い声かと思ったほどの激しい慟哭だった。収容されていた人々に残酷な仕打ちをしたのが、同じドイツ人としてつらかったのだろう。同じ人間がなぜこんな酷いことが出来るのかと言って彼は声をあげて泣いた。
山の頂きから建物全体を見渡すとそこは本当に閑静なところで、そのような悲惨な目的で使われていなければとても美しいところだった。でも周囲には何もなく冬の寒さや厳しさまた寂しさを想像し当時の人々を思うと心が痛んだ。人間はずっと昔から同じ過ちを繰り返してきている。残酷なことができるのはドイツ人に限ったことではなく、世界中で人間は同じ人間に対し酷い行為を繰り返してきた。一体いつになったら私たち人間はもう少し利口になるのだろうか?いつになったら争いのない地球ですべての人々が平和に生活できるようになるのだろうか?
こちらのスペイン語学校に置いてあったパンフレット、そこには「完璧なヨーロッパ人になるには」というタイトルで、以下の文が書いてあった。
*ポルトガル人のように器用で
*スペイン人のように謙虚で
*イギリス人のように料理上手で
*ベルギ-人のように役に立って
*イタリア人のように抑制がきき
*オランダ人のように気前良く
*ギリシャ人のように能率良く
*オーストリア人のように忍耐強く
*ルクセンブルク人のように有名で
*アイルランド人のようにしらふで
*フィンランド人のように話好きで
*デンマ-ク人のように品行方正で
*スウェーデン人のように融通が利いて
*フランス人のように運転マナ-が良く
*ドイツ人のようにユ-モアのセンスがあり
(上記すべて反対の意味で皮肉ってある)
世界中、どこの国の人間も基本的には同じだけれどでもお国柄というか、国民性の違いはあると思う。特にコスタ・デル・ソルは、ヨ-ロッパ近隣諸国からの観光客や入植者が多いので上記のような国民性の特徴は、普通に街中で日常垣間見ることができる。その特質をすべて逆手にとって、そうしたら完璧なヨ-ロッパ人になるという発想が何とも面白い。
タチヨミ版はここまでとなります。
2014年8月28日 発行 初版
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サルサとラテンダンスが大好きな本職は指圧マッサージ師でレイキヒーラーです。スペインアンダルシアでの日常生活や人間模様をエッセイシリーズとして書きはじめました。