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ポカモトさんは冷え性でした。
でも今は、一年中ポカポカしています。
カブドウさんは歩いていました。
あてどもないただの散歩です。
「あぁあー、
どっかにホットなニュースは転がっていないかしらん。」
ちなみにカブトウさんは
かれこれ2年以上ほっつき歩いているのですが、
これまで一度もホットなニュースに出くわした事がありません。
てくてくてくてく
「おかしいわー。手と足そろってる。」
・・・ふしぎ。
「あらあらあらあらーなにコレなにコレー」
これまでに無いホットな出来事に
興奮気味のカブトウさん。
「湯気が出ている・・・ピンクの・・お湯。
・・・・・・・・・・・か、
・・・・・熱い、・・・ぶどうの汁。」
勇気凛々のカブトウさんは飲んでみることにしました。
両手にすくって、ゴクリ。
「お!温泉!!ぶどう味。」
飲んで瞬時に温泉とわかったカブトウさん。
なぜかは知らない。
多分ぶどう味は雰囲気。
「トウッ」
ダイブするカブトウさん。
この2年、歩き続けたカブトウさんの疲れは、
この程ピークをむかえていました。
本人は全く気付いていませんが。
「いい湯だー。すげー・・・・・
いい湯だー。ぼえー。ぼえー。
おー、エクトプラズムがでてゆくー。ぼえー。ぼえー。」
妙なものがでてゆくカブトウさん。
「家庭では出せない温度ねぇ。」
へぇー。
この上なく露天風呂を満喫中のカブトウさん。
「あれ?背中がムズムズする。
・・・・・・・・・・・・うおおおおおお!」
パタパタというのは羽が羽ばたいている音。
つまり今、カブトウさんは空を飛んでいるのでした。
「えー、飛んでるー。
おー、飛んでる飛んでるー。
なんでなんでー?」
実は、
どちらかというと
蝶々というよりは
カブトムシなカブトウさんの、
お花畑の空をヒラヒラと舞う
エレガントな蝶々に対する憧れは人一倍だったのです。
でもカブトウさんは誰にも言えませんでした。
なぜなら、
カブトウさんはカブトムシ。
っぽいから。
それはさておき、
背中がバリバリと音を立てて割れたときには
何ともグロくてビビりましたが
なんということでしょう。
ひっそりと心の中で願っていた夢が叶ったので、
それはもう、
とてつもなく嬉しいカブトウさんなのでした。
「この温泉、もしや・・・そうに違いない!」
パタパタパタ
「おや、ポカモトさんだ。
おーい、ポカモトさーん。」
「うわっ、カブトウさん?え?蝶々?カブトムシ?」
「蝶々。
元々カブトムシでもないです。
どうです? 素敵で蝶。」
「あ、うん・・・素敵でちょう。」
カ「ここでホットなニュースをあなたに。
先ほど、随分あっちのほぉーで、
すごい色の温泉を見つけたんです。
ポカモトさんも温泉好きで蝶?」
ポ「語尾はそうなっちゃうの?」
カ「わざと。」
ポ「そっか。好きだよ、温泉。」
カ「で、で、何か叶えたいお願いごとある?」
ポ「うーん・・・、ある!」
カ「そうか!
じゃあ、それを誰にも言わずに入ると、
叶うかもしれないよ。
という温泉を見つけたんですっ!
入ってみ入ってみ入ってみっ!!」
普段のカブトウさんからは感じられない圧力。
疑念がよぎるポカモトさん。
ポ「・・・む、虫になる温泉なのでは・・・?」
カ「断じて違います。」
しれっと思いっ切り断言してしまう
好奇心に勝てないカブトウさん。
ポ「どこにあるの?」
するっと納得した素直なポカモトさん。
カ「えっと、そこを曲がって、
かくかくしかじかの杉林を越えて、
口笛を吹きつつ丘を越えて行くとあります。」
ポ「じゃあ、一度帰ってタオル持っていこー。」
カ「うん、行ってらっしゃい!気を付けて!!」
カブトウさんは、
『絶対に虫になりませんように。』
と、ポカモトさんに手を振りながら祈りました。
アーメン。
タオルを肩に引っ掛けて、温泉に向かうポカモトさん。
足取りも軽く、サッサカサッサカ歩きます。
「お、湯気が出ている。あれかな?
カブトウさんオススメの温泉、虫の湯は。」
自らうすら寒い名前をつけてしまったポカモトさん。
「でも、断じて虫にはならない温泉。虫の湯。」
そう信じたいポカモトさん。
「それにしても、すごい色だな。地獄谷かな。」
勇気を出して足の先を湯につけてみると、
「アチチチチチチチッ」
『チ』が多いポカモトさんは、冷え性なのでお風呂のときにはいつもこうなってしまうので我慢です。
「ええい、ポチャン。」
ポカモトさんのお願いごとは
冷え性の奥さん達が
普通の温泉に湯治に行く理由と同じでした。
「くーっ五臓六腑に染み渡るぜー。」
なぜかしら飲んでみたポカモトさん。
「はぁーいい湯だー。いい湯だー。
ぼえーぼえー、エクトプラズムがでてゆくー。」
どうしてもエクトプラズムが出てゆく温泉。虫の湯。
「家庭では出せない温度ねぇー」
はたして何度なのか。
ポカモトさんは、心ゆくまで温泉を堪能しました。
しかし、
背中から羽が生えてくることも、
額から触覚が生えてくることもなく、
無事に四肢末端型冷え性は完治し、
一年中四肢末端がポカポカしている
名実ともにたがわぬポカモトさんになったのでした。
一方、
この温泉の効能を確かめたかったカブトウさん。
お願い事が叶うお湯なのか、
はたまた虫に変身カフカなるお湯なのか・・・。
気になって
遠くからポカモトさんを見守っていましたが、
ここから見る限り、
ポカモトさんに何かが生えてきた!
という様子はないのでホッと胸をなでおろします。
「良かった~。
ポカモトさんが虫にならずにすんで、本当に良かった。」
パタパタパタ~
と、カブトウさんはどっかへ飛んで行ってしまいました。
温泉の効能についてはもうどうでもいいようです。
蝶々だけに、移り気なカブトウさん。
2014年10月6日 発行 初版
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