この本はタチヨミ版です。
── セルフパブリッシング作家から商業デビュー!〈ゲスト寄稿読み切り・ビジネス〉
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── 見たくなければ……方法は一つ……。〈既刊サンプル・小説〉
── 惨劇を止めろ!超能力カメラマンの名推理。〈新作読み切り・小説〉
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── アイドルから一変、修羅の道と化す 〈既刊サンプル・小説〉
── 月が奇麗ですね……うっキャッチコピー難しい。〈新作描き下ろし・イラスト〉
── セルフパブリッシング作家から商業デビュー!
〈ゲスト寄稿読み切り・ビジネス〉
私は出版業界に詳しくもなければ、電子書籍業界に詳しいわけでもありません。統計的な市場の話も、技術的な話もできません。ただの駆け出し小説家です。ですから、ごくごく当たり前の話を、私と皆さんで思い出すための話をしましょう。
ローファーの気ままな音だけ。かび臭い空気を胸に吸い込み、浮ついた気持ちでふらふら歩く。夕焼けは分厚いカーテンで隠されている。いや、外は雷雨だったかな。どちらでもいいか。
話題のコーナーを脇目も振らず通り過ぎ、乾いた靴音を引き連れて、建物の隅にある螺旋階段を素敵なパーティ会場に向かう足取りで丁寧に降りていき目指すは地下二階。ひとけのない一階よりも更にずっと孤独な本の集まり、眠れる本のベッド、ここは地下書庫だ。頻繁に借りられるような話題作、誰もが知っている名作なんてものはなく、本の保存にかけては常に最善を尽くすはずの司書さん達ですら諦めかけている(そしてそれが許される)、そんな選ばれなかった(あるいは選ばれた)本達がただ沈黙している。
私はそのなかから、うっすらと埃を被った一冊を取り出す。目次を読むよりもまず、巻末の貸出スタンプを確認する。やっぱり、と私は独りごちる。入庫日以外は一切記されていない紙が貼り付けられている。今まで誰もこの本を借りたことがない。心がざわついてくる。
そもそも誰がこの本を入庫したのだろう。リクエストがあったとは思えない。それならばその人がまず借りているからだ。だったら司書さんが自分の趣味で入手して、暇なときに読み進めていたのかもしれない。しかし持って帰るにはさすがに自分で貸出の処理をするだろう。書棚の隙間を埋めるために他の本のついでに購入したのかもしれない。親切な誰かが寄贈したのかもしれない。いずれにしても、この本は新雪なのだ。古いのに、新しい。一体この本は何のためにここに置かれていたのだろう。誰にも読まれない本に、どんな意味があるというのだろう。内容も碌々確認せず、私は知らない詩人の本を胸に抱え、にんまりと笑う。
そうだ、私だ!
私がこの本に意味を与えるのだ!
そんなうすら暗い幼少時代を過ごしてきました、吉野茉莉と申します。
まず、多くの方にはそもそも私が何者なのか、について説明しなければならないと思います。
私はインターネット上でのみ活動する同人作家でしたが、このたび、パブーで二〇一〇年から、Kindleストアで二〇一二年から掲載している小説に出版社から声がかかり、紙での出版が決まりました。この『月刊群雛』が出版される頃には私の作品も出版されているかと思います。
かねてより懇意にさせていただいている鷹野さんのご依頼もありまして、また私自身も何かしらお礼をしなければと思い、これ幸いと筆を執らせていただきました。
タチヨミ版はここまでとなります。
2014年9月30日 発行 第2版
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