魔女は自らの美しさを保つために
若くて麗しい女性の魂を食べるという伝説がある
これはNote.muで作成した二毛作小説の公開編
Note.muでは有料版に真相編があります。
https://note.mu/otspace0715/m/mb267b9a38423
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この本はタチヨミ版です。
僕は宏美(ひろみ)。
そして僕は俺になった。
二十歳の冬。全てはここから始まっていたんだ。
臆病で人見知りの僕を、強気な俺に変えてくれた。
貴女(あなた)が僕の全てを奪って行った。
そして僕の全てを変えたんだ。
この事件が起きてから2週間が過ぎ、今回で5人目の犠牲者だ。
若くて美しい女性がベッドに寝た状態で、両手は胸の前で合わさり横たわって死んでいた。
大きな外傷がなく、合わさった手の上にバラの花が一輪置かれていた。
自殺か他殺か事故死なのか誰もがわからなかった。
誰が名づけたか不明だがこの事件は「魔女喰い事件」と言う名目で内々に捜査が進んでいた。
ただ、明らかにわかっていることが一つだけあった。
この事件が発生した死亡推定時刻には、必ず同一人物が接触しているという事実である。
どの事件においても、マンションの防犯カメラからに一緒にマンションへ入っていく一人の人物がいる。
長髪のその女性は、死亡推定時刻が過ぎた後に一人でマンションから出て行くことを全ての防犯カメラで確認が取れていた。
その女性を重要参考人として人物の特定に急いでいるが、健闘むなしく特定することが出来ずにいた。
この事件はこれで終わりではないのだろう。これが始まりなのかもしれない・・・
「魔女喰い事件」が最初に発生してから1ヶ月が過ぎ、新たな同一事件もないまま、捜査の進展もなく時間だけが無意味に過ぎていくように感じられた。
最初に亡くなっていた3人は、亡くなる直前に電話をしていたことがわかっていた。
そして、ようやくその電話の内容を入手することができた。
これにより、捜査も新たな進展が見られると思われた。
3人とも強張っていた顔でどこへ電話を掛けていたかというと、その当時付き合っていた彼氏への並々ならない苦情の電話だった。
聞くに耐え難きその発言にゾッとする思いがした。
あの美しい見た目からはわからない裏の顔を見た。そんな印象だ。性格と見た目は反比例するのだろうか?
見た目とも地味目な女性と一緒にいたのは、この女性なら暇でもしているだろうと呼び出したのだろうか?
ただ、わかることはこのような攻撃的な女性が自らの命を捧げるという「自殺」という行為はありえないだろうということ。
あの電話の内容では、相手の男性がいつ殺されてもおかしくない。そんな印象すら受け取れる。
彼氏いわく「彼女は攻撃的でいつもオレは彼女の尻に惹かれていた。ツンデレの典型で、とても甘え上手でオレにしてみたら彼女の方が魔女だ」
「魔女喰い事件」がメディアより流されて半月。新たな事件が発生した。
それは初めに起きた5人の事件を模倣した殺人事件だ。
どこがどのように違うかというと、まず殺害現場・・・
初めの5人は自室の自分のベッドに眠っているかのように亡くなっていたのにもかかわらず、今回の新たな事件は、公園のそれも人気のない夜に犯行が行われた。
首には明らかに手で首を絞められたであろう絞殺痕がくっきりと浮かんでいた。指の跡からわかるように殺人者は女性。おそらく、30代前半、身長は163cmから167cm。体重はおよそ60kgと言った感じだろう。
これだけ情報が揃っていれば、犯人はすぐに捕まえられる。
殺された女性の交友関係を洗い出し、犯人を突き止めることは容易い事だった。
また、他にも地味目の女性を狙った「魔女狩り」と称するイジメ事件が発生したり、模倣殺人が後を絶たず増え続けていた。
どの事件にしても被害者や加害者は女性だった。
男たちは改めて女の恐ろしさを感じたに違いない。
そんな事件に紛れ、6人目となる被害者が現れた。
模倣犯やイジメ問題で世間が混乱している中、警視庁殺人課では「魔女喰い事件」に対する新たな進展があった。
死因の判明である。
外傷が全くないまま、魂を抜き取られた如く亡くなっていた美しい死体の死因は「急性心筋梗塞」である。
病死としてこの「魔女喰い事件」は終止符を討つこととなったのだ。
ただ、防犯カメラに写っていたあの影の薄い地味目な女性は一体何者だったのか?警視庁殺人課ではこの一点だけがこの問題を複雑に混乱させた原因でありながらも、誰もこの事について追求するものは出てこず、事件の捜査が打ち切られることで決定した。
何故、3ヶ月もの長い時間が掛かって死因が判明したのかについても誰も口を開くことはなかったのだという。
事件は闇に葬られたかのようにまた数ヶ月が経過することとなる。
「魔女喰い事件」についての新しい騒動が起きたのは、事件に終止符が打たれて1ヶ月が過ぎてからだ。
その騒動の発端は、とあるラブホテルにあるエレベータの防犯カメラだった。
そこに映る女性は4人。
しかし、ラブホテルには3人しか入店がなかったと店員が言ったことをきっかけに騒ぎが大きくなった。
エレベータに映る1人は「幽霊」であるとインターネットで騒がれた。
しかも、その入店した3人は共にラブホテル内で心臓発作で死亡していたのだ。
そのラブホテルは騒動を皮切りに閉店することとなった。
一部では「呪いの映像」としてチェーンメールのように出回った。
同様に6人の女性が死亡した時のマンション入り口の映像が出回った。
誰もが不思議に思うことだが、その6人は共に一緒にいる女性を意識していないという衝撃の事実と直面したのだ。
この騒動に対してメディア側が火消しの如く沈黙を保っていることで、余計にインターネット上での炎上が噂を大きくすることとなったのだ。
そして、一体誰が死亡した6人の女性のマンション入り口での映像をばらまいたのか、警視庁殺人課の中で大きな騒動となったことは言うまでもないことだった。
インターネットでの情報漏えい対策に力を入れている警視庁内で不祥事が起きたとなると大問題である。警視庁もメディアも口を閉ざして平静を装っていられる時間は限られているように感じられた。
インターネットの炎上は事件が発生してから半年余りで徐々に沈静化していった。
噂は闇に葬られ、映像はホラー映画の加工が施されたなどという情報も出回り、世間的な干渉は次第に薄らいでいった。
この話は真夏の夜噺という一瞬の華々しいデビューを飾ったに過ぎなかったのだ。
そう、今もあなたの傍にいるかもしれない「魔女」の手によって、美しくも若い麗しい女性たちは魂を吸い取られているのかもしれません。
魔女にお気をつけ下さい・・・・
to be continue...
昨日未明、神奈川県警殺人課課長の妻が心臓発作により無くなられました。
新しい伝染病の可能性もあり、自宅周辺を取り囲み調査が進められております。
夏頃から多発している一連の事件も含め、WHOなども現場に駆け込み
感染率拡大を喰い止めるべく、原因の解明が急がれております。
恋したものが負ける。
タチヨミ版はここまでとなります。
2014年11月1日 発行 初版
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