── その朝、少年は突然グレた。
ベルモンテでアントーニオがシャイロックの借金を巧いこと踏み倒してから400年余り。そしてオルガニゼイションが地球と修好通商条約を結んでから100年と少し。ある日、大宇宙を旅する恒星間貿易船の船長キャプテン・ハックは、銀河系辺境にある田舎惑星の小さな交易都市ヴェニスンの情報商店から緊急の注文を受けて、出航を15分も遅らせた。どうやら留学中の王星テンピリア第三王子の身に何か起こったらしい。これは金の匂いがする。しかも代金は200グラムもの生体片という大盤振る舞いだ。急がねばなるまい。船長ハックの燃える商人魂が今、銀河を駆ける。裏銀河の中心都市「ヴェニスン」を舞台に繰り広げられる、スラップスティック系SFコメディがひっそり開幕。
少年はパジャマ姿のままで、階下の洗面所に向かった。その前にトイレに立ち寄り、少々歩きにくいのを解消した。ちゃっちゃと軽く水で顔をゆすいで、タオルを取り、ダイニングルームに入った。彼の「母」はすでに朝食の準備を始めていて、キッチンでリビングに背を向けて調理をしていた。少年はリビングのソファに腰掛けながら、母親に語りかけた。
「おいババァ! 今朝は何食わすつもりなんだクソ不味かったらブッ殺すゾバカヤロウ」
少年は言い放ってから、ハッとしたように口をつぐんだ。母親はギョッとして振り返り、「今なんと?」と聞き返した。少年は、ネックレス状のアクセサリーに小さなランプが点いているのを確認してから、トントンと頭の横を叩いて、首をコキコキと曲げ伸ばししてから、おそるおそる口を開いた。
「ハァ? 聞こえなかったのかクソババァ! ブッ殺すぞクソバカヤロウ!」
言い放ってから、あちゃーという顔をして黙り込んだ。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
姓は波野。名は發作。「ナミノハッサク」といいます。兼業作家です。ハツの字は旧字体です。新字体だと「発作」なので旧字体にしました。もちろんペンネームです。ナミノは長年ネットで使ってきたハンドルネームです。ハッサクは坂本龍馬(さかもと・りょうま)の『船中八策』に由来します。昨年11月のインディーズ作家デビューですが、今後はちょいSF寄りのミステリーもどきを主に書いていくと思います。
昨年、第1巻をリリースした小説『ストラタジェム;ニードレスリーフ』からのスピンオフ企画で、スラップスティックSFの短編をどこかに書こうかなと思っていたのと、『群雛』に参加したいと思い立ったタイミングが偶然にも一致したことから、この企画が始まりました。
作家としては、椎名誠(しいな・まこと)、筒井康隆(つつい・やすたか)、清水義範(しみず・よしのり)、ダグラス・アダムス、トマス・ピンチョン。作品としては『ファウンデーション・シリーズ』、『メン・イン・ブラック』、『銀河ヒッチハイク・ガイド』が無関係といえばウソになるでしょう。あと『ヴェニスの商人』は全然参考にしてないです。
無駄に深読みしてくれる人。SF読み慣れているけどスレてない人。『ストラタジェム;ニードレスリーフ』を読んだ人。あと、読んだ後この続きが気になる人。
構想のんびり15日。試行錯誤キリキリ5日。執筆実質合計3日。
自前のWebサイト、アプリで紹介、SNSでモゴモゴ言うなど。
集中できる執筆スペースがなかなかない。自宅も事務所もなかなか集中できないですね。いっそノマドか。あるいは誰か私を監禁してください。
ロビン・スローン『ペナンブラ氏の24時間書店』(東京創元社刊)
うっ(笑)。それは実は『マガジン航』での短期集中連載のタイトルです。とあるセルフパブリッシング小説のメイキングレポートなので、興味のある方はぜひ読んでみてください。波野名義ではなく、本名の方でレポートしています。
http://www.dotbook.jp/magazine-k/if_mr_penumbra_were_a_japanese_01/
まずは『ヴェニスンの商店』を短編シリーズ化したいですね。あと、乗ってくれる人がいたらいつかこの『オルガニゼイション』の世界観をみんなで共有して書き合っていけたら楽しいかなと思います。本作以外では、小説『ストラタジェム;ニードレスリーフ』を夏前には完結まで書き上げたいと思っています。
見苦しい言い訳になりますが本作は2万字ぐらいの内容を1万字以内に無理矢理圧縮しちゃっています。なので説明を全くしていない用語がたくさんあります。そこは自由に(勝手に)想像して補ってください。彼らの冒険は始まったばかりだ! 波野發作の次回作にご期待ください。
日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
http://www.allianceindependentauthors.jp/
2015年1月22日 発行 初版
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