── 世界は誰かのウソでできている。
地球に留学中のテンピリア星第三王子アントがいつものようにバイト先の紅葉商店に出勤すると、店長の代わりに同僚のジェシカがいた。客はいつものように少なく、ありふれた日常のはずだったが、何かがおかしい。違和感の原因を探りはじめたアントは店内で宇宙中を転々としてきた謎の物体「ガッデンの箱」を発見するが、この箱の正体についてはわからなかった。戻ってきた店長の秋葉先生も違和感の正体を探るべく必死に記憶をたどり、ついにひとつの仮説を導きだした。たまたま居合わせた宇宙人客を実験台にして、こっそり箱の効力を確かめようとするのだが……。ヴェニスンの狭い店舗で全銀河の運命を左右しかねない実験がひっそり繰り広げられる、スラップスティック系SFコメディ第2幕。
この世界は、誰かのウソで、できている。
by ユーソン・ジンイ・カンダライア(次元考古学者)
その日、アント店員が17時に「紅葉商店」に着くと、店には珍しく数人の客がいた。嗅いだところ彼らは地球人のようだ。彼は無駄に嗅覚が優れているので、地球人かどうかぐらいはすぐにわかる。SPは出身惑星ごとに食べ物やその調理法が異なるので、地球人の口臭にはありえない匂いが混ざっているからだ。ちなみにこの紅葉商店の店主である「秋葉先生」はシリコンウェハースが主食なので、消化時の雰囲気ガスに必要なアルゴンがわずかに呼気に混ざっている。極めて微かな成分であるため、地球上で嗅ぎ分けられる者はアントらテンピリア人以外にはいないだろう。訓練を受けたイヌ科生物でも無理だ。そもそもテンピリア星人と地球の脊椎動物では匂いを感じる仕組みが違う。どう違うか説明すると数万字になってしまうので割愛するが、地球生物は元の物質から飛散した分子の一部が鼻の中の嗅覚細胞に触れることで匂いを感じるのに対し、アントは原子の発する微弱な波動を感じ取る気管を両耳の後ろに合計三ヶ所持っており、三次元的にあらゆる匂いを捉えることができる。母星テンピリアは地球より大きく、重力が強く大気が薄い。二つの恒星から遠いので地表が常に薄暗い。そんな条件下で、正しくお互いの位置を知り、効率よく獲物を狩るためにこのような器官が発達したと考えられている。テンピリア人の生態や特徴についての文献は少ないが、ギャラペディアにだいたいのことは書いてあるので間違いはない。ちなみに、テンピリア人は草食性の生物である。テンピリア星の植物は高速で飛行するため狩猟が容易ではなく進化条件は異なるが、惑星生物学的にはセルロース様物質を主たる栄養源としている点で地球のバッファローやオオツノジカなどと同じ種に分類できる。野菜以外も摂取できるが消化効率がよくない。
アントが紅葉商店に着いたとき秋葉先生はおらず、ジェシカが店番をしていた。アントはジェシカを見つめながらしばらく動きを止めていたが、いくら考えても思い出せなかったので諦めて話しかけた。
「店長は?」
「お出かけしています」
ああ、そうなんだ。と返して奥へと歩き出すと、ジェシカがすっとレジを空けたので、アントは入れ替わりにレジに入り、カウンター下にバッグを置いてジェシカと同じエプロンを着用した。客たちはいつものように店内をうろついたあと、何も買わずに出て行く。そのタイミングで「ありがとうございました」と声をかけるのがアントたちの仕事だ。品物が売れないので品出しの必要はない。仕事らしい仕事といえば、閉店後に掃除をするぐらいだ。しかし、今日は何かがおかしい。この店に来てからずっと違和感はあるのだが、何がおかしいのか全くわからない。しばらく考えてみたが、結局わからなかったので気にするのをやめた。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
毎度あり。お初の方には、姓は波野。名は發作、前後合わせて「ナミノハッサク」といいます。ハツの字は旧字体です。新字体だと「発作」なので旧字体にしました。もちろんペンネームです。兼業作家です。ライターとか編集とか本名の方では長年いろいろやってます。昨年インディーズ作家デビューしましたが、今後も波野名義でちょいSF寄りのミステリーもどきを主に書いていきますです。
『月刊群雛』2015年02月号に掲載した『ヴェニスンの商店』の後日談として書きました。今後も出るだろう新キャラも投入しました。連載作品ではないのでお話は毎回完結しますが、世界観とキャラ設定はキャリーオーバーしてますので、ゼヒ前作も併せてご覧ください。
今回はストーリー的には参考にした作品はありません。安部公房(あべ・こうぼう)の『箱男』はタイトル的にちょっと拝借したかもしれません。内容的にはまったく無関係です。一部キャラ設定で、『スターウォーズ』の影響を受けている部分もあります。
ガッデンの箱の効力が気になる人。でもかなりわかりやすくしちゃった感はあるからなぁ。
書いたの自体はトータル丸2日間というところですが、サゲを定めるのに2週間ぐらいは考えてましたね。
いつものように自前のWebサイト、アプリで紹介、SNSでモゴモゴ言うなど。
集中できる執筆スペースがなかなかないのは今も同様。やっぱり自宅も事務所もなかなか集中できないですね。
西牟田靖(にしむた・やすし)『本で床は抜けるのか』(本の雑誌社刊)。本読みさんは必読ですよ!
隔月ペースか、季刊ペースぐらいではこの『オルガニゼイション』シリーズを続けていきたいですね。
次回は宇宙に出ます。
日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
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2015年3月28日 発行 初版
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