── 今の居場所は本物ですか
〈読み切り小説〉
今そこにいる自分が誰にも干渉を受けていない、本当に自分自身といえるのか? という疑問を短編という形で纏めています。
彼らは俺にこう言ってきた。いつ眠るのかと。
「そりゃぁ当然眠るさ。君達が見てないところでな」
狩人達の集まる酒場はいつも通り盛況に賑わっている。彼らはあまり酔わない癖にその気分だけでも味わおうと、まるで巨大な樽に汲んできた水でもぶちまけるかの如く胃の中へ古い蜂蜜酒やら麦酒を流し込んでいた。その豪快な様子は何度見ても呆れてしまう。ドン、と木造のテーブルが揺れるぐらいの勢いで叩き付けたコップは見ていて可哀想に思えるぐらいだ。彼らの気の強さは一体どこで身に付けてくるのか、こちらからすると頭が痛い。
俺はそこまでアルコールに強くないので、今夜もいつもと同じく控えめに済ませている。あまりに酔い過ぎて自分の武器を滑らせて怪我でもしてしまったらそれこそ明日から商売あがったりだ。怪物共を相手に狩りをして暮らしている側からすれば、そんな素人染みた失態など沽券に関わる。とはいえ蝋燭で灯りを確保している店内では染み着いた闇夜の暗さを吹き飛ばそうと騒ぐ連中の多い中、流されずに自分のペースを保つのはもちろん大変なことだった。ちびり、と喉を潤した後に豚の腸詰めを焼いたそれを口の中へと放り込む。塩と胡椒で味付けされた脂の塊みたいなそれを飲み込んで、俺はそいつに目を向けた。
先ほどの問いをしてきた冒険者は少し前からちょこちょこ見かけるようになった男だ。線が細く、とても狩人を生業にするような人間には思えなかったが、最近そういう若手が増えているのも知っている。どこぞの上流階級では『獲物を狩る』を題材に素敵な詩が流行しているのか、実際に本物の狩りを知らない連中が酒場のそこここにいたりするから困ったものだ。当然古株連中は如何にも筋骨隆々といった態で堂々としておりそういった若手連中へ偉そうに講釈を垂れては迷惑そうな顔をされている。これも一種の歓迎や洗礼の仕方なので敢えて放置しておいていいだろう。もしこれが耐えられないようなら明日からその新人面を見なくなるだけで、実際何の問題も無いからだ。
先ほどの若者はまだ周囲を見回しているようだ。
「お前さん、初心者?」
今度はこちらから質問を投げかけると、その青年は「はい」と素直に返事をしてくる。
「まだ狩人になったばかりで……ちょこちょこここには足を運んでいるんですが、狩り仲間にも出会えてないんですよ」
「で、俺に目を付けたってわけかい?」
俺達狩人はこの周辺に現れる怪物共を始末するか、追い払うことを生業としている。当然ながら連中の力は人間なんぞより遙かに上回っており、それこそまともに立ち向かうのは死にたがりの馬鹿がすることだろう。しかし人間の住処が広範囲になればなるほど今まで重なっていなかった境界線が曖昧になり、必然的に連中と人間の縄張りが重なってくる。そうなれば当然縄張りを荒らされた怪物は人間を排除しようと行動を起こすことになる。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
平乃ひら(ひらの・ひら)と申します。
現在就職活動中のシナリオライターです。
この度『月刊群雛』で初めて作品を書かせていただきました。数回前からずっと書きたいなーと思っていたのですが、運悪く募集告知を見るのが遅かったりして参加できずいたものの、ようやく願いが叶いました!
電子書籍として小説『死神少女・霧幻街探偵白書』や『三日目の黄金色』などを出していたり、またネット上で小説を無料公開していたりします。いつか紙での出版も夢見て書き続けておりますが、その夢が叶うのはいつのことやら……。
シナリオライターとしてはゲーム系を主にやらせてもらっています。
以前はコミックマーケットなどの即売会で小説を出していたりしたのですが、現在はやっておりません。だけど作品自体を埋もれさせるのは勿体ないなーと思っているのでいつか電子書籍で復活させるかも?
◆ブログ:『ひらのぶん』
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昔、この世界は全て神様みたいなものがプログラムしたものではないかみたいなネタを考えていたことがあり、それを元にして実際のオンラインゲームの中にいるキャラクター視点で世界を観たらどうだろう、というところから書き始めました。
ギリギリまで他に良いアイデアが無いかと考えていたこともあり、およそ二日です。
ブログやツイッター等のSNSですね。
今後も小説を書き続けていくと思います。小説家になろうやTaskeyといった投稿サイトでの掲載、あとできれば電子書籍で色々出したいと考えております。
日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
http://www.allianceindependentauthors.jp/
2015年4月27日 発行 初版
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