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富士宮「やきそば」もいいけど「しぐれ焼き」を食え!

根岸智幸

ずばぴたテック



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(以下は2009年のブログ記事を元にしたものです)

 我が家の昼食の定番は、「富士宮やきそば」。奥さんが生協で買っているシマダヤの蒸し麺とソースがセットになった「富士宮やきそば」なんだけど、これが意外にあなどれない。普通のソース焼きそばの倍くらいの値段で、3分の2くらいしか麺が入っていないので割高なのだが、食べると完全に納得。麺がシコシコ、鰹節の香りがふんわりしてて、昼の軽食としての満足度はかな〜り高い。
 で、「本物を地元で食べたら、どれだけ旨いんだろう?」と家族全員で長らく妄想を膨らませていたのだが、ついに! 行ってきましたよ、富士宮市。「富士サファリパーク」の帰りに寄って、本場オリジナルの味を確かめてきました。

富士宮やきそば学会は観光客向け。ならば…。

 最初は、メディアでも有名な「富士宮やきそば学会」のアンテナショップがある「お宮横町」を目指した。行ってみると、かの浅間大社の目の前にあって、雨なのにめちゃ混んでいる。だけど、入ってみると露天(いちおう屋根付き)にベンチとテーブルが並んでて、周囲のお店で買ってきて食べるという、ショッピングセンターのフードコートみたいな作り。しかも、周りには場所取りを待っている人が並んでいる。うーむ、いくら焼きそばがカジュアルな食い物だからといってこれはちょっと辛いと脱出。
 浅間大社と富士宮やきそば学会アンテナショップが面している大通りは整備されていて、通り沿いには富士宮やきそばのオレンジの幟を立てているキレイな店がいくつもある。なかには、駐車場付きの店や、新名物候補の「ニジマス」や「つけナポリタン」の幟をあげている店もある。富士宮市中心街は、駐車場やコインパーキングが極端に少ない。一番大きいのは、浅間大社裏の市営駐車場らしいのだが、なんとこの日は浅間大社の行事のため、封鎖されていて利用できない。そういうわけで駐車場付きのお店は便利なのだが、そんな基準で店を選ぶわけにはいかない。
 東京グルメ(ライブドアグルメ)の達人さんたちから習い覚えた、「旨いモノが食いたければ、大通り沿いのキレイな店は避ける」という教訓を思い出し、地元の人が通いそうなお店を探索したいと思う。とはいえ、子供たちもお腹をすかせている。しかも息子の直也はトイレに行きたがっている。残された時間は少ない!
 そこで、大通り沿いにあった、地元商店街が運営しているらしき案内所に飛び込んでみる。なによりトイレも借りられると書いてある!

地元商店街が運営しているらしき案内所。きれいで親切でした。

富士宮でお好み焼き?

 そこで、ここに来て感じていた疑問を口にしてみた。「お好み焼きも有名なんですか?」と。というのも、駐車場を探していると、やきそばとお好み焼きを看板にあげている古い店がいくつかあったし、なにより案内所でも「やきそば&お好み焼きマップ」を配布している。

「もともとは、お好み焼きなんですよ!」
「へー!」
「それでしたら、かわにしさんがいいんじゃないかな?」
「はあ」
「こっからそこの信号を渡って(以下道案内)」


というわけで、その「かわにし」に行ってみることにした。
 案内通りに行くと、大通りからちょっと小さな路地に入る。入口の表札に「大宮小路」とある。

大宮小路の入口

 いい感じに、ひなびかけた路地。道沿いには地味な地元っぽいお店がちょこちょこある。
 徒歩5分ほどで、目的の「かわにし」に到着した。

こちらが、富士宮やきそばの老舗?思われる「かわにし」

酔っ払ったジイさんの正体は!?

 店内は、狭い。店の中央右寄りに正方形の鉄板があって、そこでおかみさんがやきそばを作っていて、41歳だという子供を笑わせるのが上手な息子さんが手伝っている。
 左側にも一応4人掛けくらいのテーブルが2つ並んでいるが、そのテーブル席には、酔っぱらったジイさんが一人。
 「そんな、テーブルに座って食うヤツなんていない。鉄板の前に座って」と仕切られる。以下、標準語で再現するけど、実際は方言が強くて聞き取れないこともしばしば(でも、このお爺さん以外は、誰も方言使ってなかったけど)。

「あんたたち、良かったね。ここは本物だ」
「はぁ」
「本当に旨いのはやきそばじゃない。やきそばなんて誰でも焼ける」
「はぁ」
「お好み焼きは誰にでも焼けるもんじゃない」
「そうですか」
「でも本当に旨いのはしぐれだよ」
「しぐれ?」
「しぐれってのは広島みたいにお好み焼きに焼きそばをいれるんだ」
「なるほど」

 たしかに年季の入った壁のメニューに「しぐれ焼き」とある。

「かわにし」のメニュー
※注 撮影はお店のかたに許可をいただきました。

「だけど、広島のお好み焼きより、ぜんぜん旨い。おれはそう思う」
「はい」
「しぐれを食べるなら卵入りだよ」

 というわけで、「焼きそば(肉入り&大盛り)」と「しぐれ焼き(卵入り&大盛り)」を注文。
 このあともジイさんの勢いは止まらず、昔話をしたり、富士宮やきそばを褒め称え続けたり。お店の息子さんも、「いやー、このジイさんに会えるなんてラッキーですねー。なかなか会えませんよ」とお世辞なのか、冗談なのか。
 ところがそのうち、息子さんに「跡を継いで店を大きくしろ」としつこくけしかけたり、「この鉄板で焼きメシ作ると旨いんだよ。戦後は痛んだ米を持ち込んで、よく洗って作ってもらったんだよ。傷んでいたって、臭くないし旨いんだよ」とか、食べ物を出す店で話すにはヤバイ話をしたり、あとからきたお客さんが遠慮して道で待っていると、「あんなの面倒だから断っちまえよ!」と言い出したり、さすがにオカミさんも閉口。息子さんは、いつの間にか逃げ出していた。
 実はジイさんはテイクアウト待ちだったのだが、注文していたお好み焼き2人前+しぐれ焼き2人前ができても、「いやー、帰りたくなくなっちゃったよ」と、なかなか帰ろうとしない。
 と、そこへ、地元の人らしい別のおじさんが登場。

混んでいる?」
「ああ、大丈夫です、いつものですね。すぐ作ります」

とオカミさんも、こちらには愛想がよい。
 僕らの焼きそばができて、食べ始めると、ジイさんはようやくお金を払って帰っていった。

 「あの人って(このお店の)名物なんですか?」と聞いてみると、オカミさんがボソっと「いや、昔はよく来たみたいだけど、私はそんなによく知らないです・・・」
 あとからきた、おじさんこそ本物の常連で、あのジイさんは、常連なわけではなかったのだ。

手際よく作られる富士宮やきそば。旨そう!

本場の富士宮やきそばとは?

 で、ようやくできあがった本場の富士宮やきそばの感想はというと、「シマダヤの”富士宮やきそば”にかなり近い!」(爆)。
 正確に言うと、本場の方が柔らかく、水分も多めでユルイ感じ。僕はもっとアルデンテなほうが好きだな、と思って食べていると鉄板の熱でどんどん水分が抜けてシマってくる。なるほど、だから、最初はユルめなのね。それにしても、麺のシコシコ具合とか、あまり甘くないソースとか鰹節の香りとかは、シマダヤのほうもかなり正確に再現していることがわかってしまった。
 「やきそばは誰でも焼ける。(富士宮では)そこらの喫茶店でも出している」というジイさんの言葉は、それなりに真実をついている気がする。
 だからと言って、食べに来る価値がないわけではない。生協のは麺が太くて、それでコシを出している感じだが、かわにしのは、やや細くてやわらかい。それでいてコシを保っている。また、暖かいまま、じょじょに食感が変わるところも面白い。「鉄板の上から直接食わなきゃ」というジイさんの言うことも、またまた正しい。

「しぐれ焼き」は食べる価値あり!

 そして、いよいよ本命の「しぐれ焼き」。作り方はたしかに広島風お好み焼きに似ている。ただ、生地はクレープのように薄く、ソースは甘みが少ないので、全体的にライトな感じに仕上がっている。またまたジイさんによれば、美しいクレープ状の皮こそ、本当に技量の問われるところなのだと言う。
 大阪や広島の本場のお好み焼きを食べたことがないので、東京でやっている「広島風」に限定した話だが、どっちが好きかと言われれば、僕は富士宮の「しぐれ焼き」のほうが好きだ。
 このしぐれ焼き、しかもメニューにない卵入りを食べることができたのは、あのジイさんのおかげなので、本物の常連でなかったとしても、今回の出会いは本当にラッキーだった。

写真は大盛りなので、麺がひと玉入っていますが、並は半玉だそうです。

 やきそばも、しぐれ焼きも、見た目はボリュームがあるが、しょせんは麺とキャベツなので、けっこう食べられてしまう。正直可能ならば追加したかったのだが、あとからあとからお客さんが来るし、鉄板もひとつ、おかみさんもひとりで独占するわけにもいかないので、退散することにした。
 次回は、やきそば(いか入り)か、普通のお好み焼きを頼んでみたい、と思いつつ、僕らは富士宮をあとにした。

「かわにし」と周辺駐車場の情報

かわにし

住所:静岡県富士宮市大宮町25-8
- 電話:0544-27-5192
- 営業時間:11:30-14:30
- 休日:不定期
- 受け入れ人数:8人
- 駐車場:なし

周辺駐車場「富士宮中央パーキング」

- 住所:静岡県富士宮市中央町4-4
- 電話:0544-23-1162
- 収容台数:133台
- 営業時間:24時間
- 定休日:年中無休
- 料金:100円/30分

富士宮「やきそば」もいいけど「しぐれ焼き」を食え!

2015年5月14日 発行 初版

著  者:根岸智幸
発  行:ずばぴたテック

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根岸智幸

根岸智幸 1963年生まれ。 月刊アスキーでアップル、映画、CGを担当。1990年代後半のアップル崩壊の危機と創業者ジョブズ復帰による回復の現場を目撃 。 1998年 インターネットアスキー編集長 2001年 人気クチコミグルメサイト「東京グルメ」を企画し、自らプログラミング 2002年 月刊アスキーPCエクスプローラー編集長 2004年 東京グルメをライブドアに営業譲渡 2006年 書評ブロガーに出版社からの献本を届ける「本が好き!」を企画・制作 2010年 「Twitter 使いこなし術」(アスキー新書) 2011年 「facebook 使いこなし術」(アスキー新書)

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