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喫煙用のパイプ、作ってる人もいるのです。夜にひっそり、休みにまったり、急ぐことなく制作中。どのみちパイプを喫える人は少ないのだから。初めて買ったカメラを横に、古いラジオと音楽を友に、忘れた頃に撮影しながら4週弱。

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#0802:パイプ制作記

GOIGOI

GOIGOI出版

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手持ちのヤスリでゴリゴリと、紙ヤスリでシャリシャリと、平日の夜、休日の日中、少しずつ進めてゆきます。
「考えるより速く作業する道具」は極力避けます。想像以上の速さで作業できてしまう一部の電動工具が取りこぼしてしまうものを、金魚すくいのようにひょいひょいと掬い取ってゆくような作業です。
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はじめに

 時々、パイプを作ってます。人に知られずひっそりと、隠れ切支丹のように作ってます。
 少し突っ込んで一つコトに打ち込むと、周囲の人からは変な人扱いされます。そんな後ろめたさを持ちつつも6~7年ほど手がけてくることができ、いつの間にかこんなものを作れるようになりました。
 パイプを作る他の人からも「変なの作ってるなぁ」と言われることしばしば。でも、実際には皆が変なのを作ってます。知ってか知らずか。
 そんな「変な」パイプの制作記です。

今回は作る形があらかじめ決まっているので、ブライヤーに鉛筆でささっとデッサンしただけ。 photo| GOIGOI

切り出す

 いらない肉をバンドソーで切り出したところです。
「はじめに」で「考えるより速く作業する道具は~」と言った割りには一気に切ってます。まあこの後どうなるかわからないのですから、保険となる肉を残した上でザックリと切り出します。
 幸いキズは出ていませんが、この段階では仮にキズが出たとしても気にもなりません。逆に、出ていないからといって中までキズ無しとも言えません。モリモリいきましょう。

とある作家さんから聞いた話では、こういった穴のあけ方をするのは日本のパイプ作家だけだそうです。海外の作家さんがこのやり方を見てたまげていたそうな。 -

煙道・火皿を開ける

 予定通りの位置まで煙道をあけて念のため深さを確認したら、次は火皿の番です。
 左手にブライヤー、右手にドリルを持ってフリーハンドで火皿をあけてゆきます。
 煙道は必ずしも端面のど真ん中にあけるとは限りません。このケースではこの後に端面をさらに切り落とすのですから、内部では中央に寄ってくるというわけです。

少しずれるとびっくりするくらい斜めにドリルが入ってしまうので、方向を定めておきます。前方と側面から確かめておけば問題ないでしょう。
ボール盤の水平が完全に出ている状態でしたら、水準器を乗せるだけです。もっとも、それでも微調整はしなければなりませんが。
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ダボ穴をあける準備

 マウスピース接合部となるダボ穴をあける準備をします。端面を平らにしておき、ドリルが垂直におりるよう調整してゆきます。

 1・5㎜のドリルをくわえさせていますが、これはドリルとブライヤーの角度を調整するためのものであり、実際にあける時には使いません。

ブレを少なくするには、前もって旋盤で使用するセンタードリルで揉んでおくとガイドになります。 -

ダボ穴をあける

 今回は斜めに飾り材を入れるつもりなので、少し余裕を持って深くあけます。16㎜くらいだったかな?
 ドリルの太さは11㎜。ストレートではなく、チャックにくわえさせる部分が細くなっているタイプです。あまり太いとチャックに入りません。全長は短ければ短いほど左右へのブレが少なくなります。
 内部の煙道と中央ドンピシャで合わせるのが理想です。

まだまだ目標とする形をここから想像するのは難しい段階。 
あまり同じ形を作らないようにしているので、何年作っていても初めての形がほとんどです。「これ、ホントにパイプになるんだろか?」という気分で作っています。
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両脇を削ぐ

 狙ったところにダボ穴をあけることができたら、少しずつ整形作業に入ります。
 まずは一番細くなる部分、ダボ穴付近の肉をそぎ落とします。
 ここまでの作業、端面の荒削り(その後紙やすり)以外では鑢をつかっていません。

まだまだ目標とする形をここから想像するのは難しい段階。 
あまり同じ形を作らないようにしているので、何年作っていても初めての形がほとんどです。「これ、ホントにパイプになるんだろか?」という気分で作っています。
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両脇を研ぐ

いつになっても「これでいいんだよな、うん。いいんだよな」と自省することになる作業の一つ。切り落としたからには後戻りできません。 
夜間の電灯による撮影のため、ホワイトバランスが前の写真と違います。ご了承ください。
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斜め継ぎの準備

 飾り材を斜めに継ぐため、ダボ部分を思い切りよく切断します。油断するとずれてしまい、その後の調整の手間が増えるので慎重に。

 斜めに切り落とす時の細い側(写真では火皿があいている側)は少しでも本体部分にかかった状態で切り始めるほうが吉。端面側から刃を入れると、新たな端面が狭くなり、その後飾り材の太さを決めるときに選択肢が減ります。再度広げようと端面を平らに削るのはかなりの手間です。

やはり夜間のため少し黄色みがかかってしまいました。この段階で製作開始から6日が経過しています。一日に2~3時間、どこを削ろうかと手順を考えながら少しずつ削ってゆくのが一番合っていますね。初めての形状だと段取りを考える時間を多く取らないと失敗します。 -

ヤスリがけに入る

 ここからが本格的なヤスリがけの段階となります。気合いと根性で形を作ってゆきます。
 先ほどまでの写真とは違い、少しずつですが滑らかなカーブが出てきました。
 端面は紙やすりをかけ、平らにしておきます。この際、平らな面に置いた紙やすりに手で持ったブライヤーをあてるというかけかたです。

写真の通り、端面は平らになっているものの水平は出ていません。この段階で使っているヤスリは「鋸ヤスリ」と荒目の「甲丸ヤスリ」。 -

各面を整える

 前の写真を反対側から写したものです。

 左右にぶらせた形にするため、火皿周辺が対照的な形になりません。まだ火皿を広げていないものの、後々広げることを考えて肉厚を残しつつ形を整えてゆきます。

元々面取りをするつもりでいたため、接合部四隅が足りなくても気にならないの図。2段ダボやテーパー型を選ばない限り、たいていはこの問題にぶつかる。 
ここで継ぎ材とブライヤー端面を隙間無く合わせておく。どうしても端面周辺に隙間ができがちだが、広い面であわせてから周囲を削ればぴったりと合う。
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継ぎ材を準備する

 マウスピースを接合する箇所を斜めに見せる継ぎ材を準備します。今回はエボナイトを使います。手持ちで一番太い24㎜(ちょっと楕円)をあてていますが、ご覧の通り太さが足りてません。でもこれはいつものことなので気にしなくてもよいでしょう。全体を細くすればいいだけです。
 エボナイトの円周が1箇所つぶれてるため、削り込む予定の側面に向けている(写真手前側)。

小さな旋盤を使っていると、少し深く切り込んだだけで刃に乗り上げてしまったりワークが外れたりします。この点で「gミニ旋盤はダメだな」という方もいらっしゃいますが、手間ひとつで何の問題もなく働いてくれます。知恵の輪みたいな工具です。
もっとも、大きな素材を扱うことはできませんが。
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旋盤作業

 マウスピースを作るため、旋盤作業に入ります。実際のマウスピースの長さにダボ部分を足した長さに、さらに1~2㎜を加えて切ったエボナイトを用意します。
 写真はダボを切っているのではありません。円周がいびつなので、チャックにくわえさせる部分を先に削り、併せて端面も削っているところです。この後、削った部分を加えさせて本作業に入ります。ワーク先端がぶれますが気にしません。くわえている部分を綺麗に円、平面という基準点に仕上げてあるのですから。

ミニ旋盤だと、芯間が狭いため、深い穴あけができません。普通に考えればドリルチャック先端との間の半分の深さまでです。しかし、わずかに太いドリルで途中まであけ、その後細いドリルをあらかじめ中に入れてからチャックにくわえさせればロングドリル・長いエボナイトの組み合わせでも問題ありません。 -

煙道あけ~ダボ切り

 少し端折ってしまいましたが、煙道をあけてダボを切っているところです。
 煙道をあける手順は、
1.センタードリルでガイドを作り
2.ノーマルのドリル(Φ3.1mm)で途中まで
3.ロングドリル(Φ3.0mm)で14㎜残したところまで
4.ロングドリル(Φ1.5mm)で貫通
…という具合です。

最後にダボ先端の内側をセンタードリルで円形に整えます。センタードリルは角度が60度なので、ちょうどいいですね。そして忘れないように先端の外と内側に糸面を施します。 -

ダボ仕上げ

 前の写真でも登場していますが、ダボの仕上げにはよく研いだハイスバイトを使っています(実はこのパイプを仕上げた後、ダイヤモンドバイトを入手したので、そちらも使っています)。
 荒削りに使う超硬バイトではどうしても曇ってしまう表面が艶を得ます。
 このパイプではダボ穴を7・0㎜にしたので、ダボの太さは7・05㎜に設定。マイクロメーターで確認しながらの作業です。

まだ継ぎ材は接着していない。平行で継ぐ場合は回転するが、斜めで継ぐならそれほど動かないので、接着作業を後回しにできる。考えながら作るときには、サスペンドできる段取りは大切です。 -

ブライヤーに戻る

 ひとまずマウスピースを削る準備はできたので、ここでブライヤーに戻ります。全体の形がどうなるのか、どうしたいのか考えながら「あとはマウスピースをはめた状態で削る」というところまで削ってゆきます。
 この頃は各部で面取りの深さを変えることで変化をもたせようとしていたんですね。ブライヤーが深い角はマウスピースでは浅く、というつもりでしたが、火皿周囲がうるさくなるので没となりました。写真だとばっちり証拠が残ってしまいます。

削るときに出る粉は部屋中をうっすらと覆い尽くす。ヤスリで削っている間はそれでも被害が少ないが、紙やすりまで進むとCDプレーヤーだろうがパソコンだろうがお構いなしに入り込む。精密機械は部屋に置かないが吉。 -

削る削る・・・

 削るつもりになった箇所をガンガン削ります。必要なのは気合いと根性と別のことを考えられる頭です。削る部分に集中しつつも、全体のうちで削ってはいけないところを脳裏にマッピングしています。

 万力でくわえていられる間は楽なものです。いずれ手で押さえるハメになります。

ときにペットや家人による被害も出ます。ほぼ形が出来上がった段階で鋸ヤスリの上に落とされようものならがっくりです。ついてしまったキズは削って消すしかありません。ただし、へこんだだけなら当該箇所に水分を吸わせてあたためるだけで復活する場合もあります。木材なので、繊維が切断されていなければ膨らむのです。スチームを使ったアイロンがけみたいなものです。 -

継ぎ材の接着

 ブライヤー単体できる作業を終えた、と思ったら継ぎ材の接着に移ります。今回は欲を出して、パイプを立てたときに底面と同じ水平面を出すように接合部を調整しました。
 水準器を乗せて調べながら、底面を削っています。既に合わせている接合面はいじりません。誤ってヤスリをあててしまった日には涙目です。

エボナイト表面は鉛筆では下書きしづらいため、マジックや細いクレヨンなどを使うほうがラク。 バンドソーは思いのほか速く切れてゆくので、油断すると斜めにずれてゆく。全体の作業のうちでバンドソーが閉める割合が少ないのは、切れる速さに自分の頭が追いつかないため。一転、これができる人ならバンドソーだけで形を作ってゆける。 -

接合準備

 飾り材(継ぎ材)を接着したら、マウスピースの準備です。バンドソーで上下をスパッと切り落とします。先端につけているのは、切るときの保護とグリップのために端材で作ったもの。
 当然だが、ここでも接合面には注意を払う。

 今回は全面を削り込むので雑なまま繋ぐが、接合部の形状によっては旋盤作業の時点で接合部付近の形を作る。

「ホントにパイプになるのか?」 
やはりこの時点でも強く脳裏をよぎる。
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繋いでみた1

 …あまりに不恰好だが、削り込んでないエボナイトを繋いだときのバランスの悪さにもさすがにもう馴れた。

 せっかくなので、次のページにも別角度からの写真を載せておく。

接合部の四面ははみ出し、四隅は足りてない。
正直な話、この時点でも「全く別のパイプにしてしまう」という最後の道は残してある。が、ここは「いける」と判断。
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繋いでみた2

 

 反対側はこうなっている。いずれにせよ不恰好であることに変わりはない。

この時点で万力は使えなくなっている。削る素材をあてがう場所と化している。 -

エボも含めて削る

 エボナイトも繋ぎ、パイプに必要なパーツは全て組んだのだからあとは削るだけ。

 再び鋸ヤスリの登場。まずは上面・下面からならしてゆく。マウスピースのビット付近(実際にくわえるところ)は危ないのでほどほどの削りこみで済ませる。

エボナイトは肉厚の余裕を残して削ってゆく。無理して細くせずとも、面取りを施せば細く見えるものだ。
とある作家さんから聞いた話では、あまりがんばって削りすぎると最後のバフがけの熱で穴があく場合もあるらしい。幸いなことにマウスピースで煙道を掘り当てた経験は無い。
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左右のバランスも見る

 エボから接合部にかけて上下面を削った後は、左右に移る。触れ幅を持たせるために、マウスピース右側(写真手前)を煙道の位置を気にしつつできる限り削り込んでゆく。

 よく見るとわかるが、まだ接合部四隅にはエボナイトが足りていない部分が残っている。

右下に写っているのは小さなロウソク。ダボをねじ込む際につけておくと収まりがよい。気をつけておかないといけないのは、擦り付けたロウのうちで要らない分は綺麗に落とした上ではめること。ダボ部分につけるのが目的なのに端面に入り込むと、何かあった時に接合面の調整をするときに紙やすりを目詰まりさせる原因になる。800~1000番など細かい目になると顕著。 -

少しパイプらしくなる

 マウスピース部の厚さを削いでゆき、少しずつだがパイプらしくなってきた。この段階ではさすがに鋸ヤスリは使っていない。

 確か、ここらで気にしていたのは「面取りの深さ」と「ボウルトップの処理をどうするか」。
 以前鉛筆で書いていた、深さを変えた面取りをここまで引きずっていた。

縁から等距離で線を引くあ場合、鉛筆を机に置いて、モノを動かしたほうがラク。高さは下に何か敷けば調節できる。ここでも一部で使用。 -

  思い切りも大切

 鉛筆で色々と線を書き込むこと数時間。どうあがいてもどこかで形が崩れることがわかったため、比較的長いこと引きずっていた「深さを変えた面取り」を中止にする。
 それぞれの幅を揃えた状態でマウスピースまで通すことにし、再度鉛筆で下書きをする。

 接合部四隅の足りない部分が入る幅にする。

とはいえ、面取り部分もあくまでヤスリによる荒削り。幅を均一に保ったまま紙やすりで仕上げてゆくほうがはるかに手間をくう。特に凸部はいいが、画面右側のような凹部は表面が波打ちやすい。 -

安堵の瞬間

 長いこと気にしていた接合部の処理が終わったので一安心。ますますパイプらしくなってきた。この調子で仕上げますよ、ええ。

 まとめて見てるとあっという間ですが、制作開始から17日目の出来事です。

 反対側の写真も次のページに載せときます。

「お、初めから綺麗に線を出せたな」と思っても、鉛筆の線を消してみるとぶれまくり、というのはよくある話。鉛筆の線もなかなか侮れない幅を持っているものです。 -

安堵の裏側

 先ほどの反対側の写真です。

 この時点で底面周囲の面取りも施しているように見えますが、これは元々のブライヤー端です。ギリギリのサイズで作っています。

 ご覧の通り、どの面もまだまだ粗く、線も多少歪み気味です。

四角形の各辺を伸ばし、側面に達したところから側面側の辺へと線をまわすことで斜め部分も書き込みます。
角の削り落としは平面を削るのに比べれば簡単な作業です。やりすぎると平面を削って面取り部分の幅を狭めてゆくしかなくなります。
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底面周囲の面取り

 底面の面取りに移ります。幅は既にできている側面の幅を参考に決めるので、おのずと中心の四角形の大きさは決まってくる。

 これが済めば、ブライヤー部分は大まかな形が現れる・・・はず。

底面の平面さ加減もマウスピース接合部同様中央を頂点にゆるい山なりに削れるので、できるだけ大きく面を作り、周りを削ることでより正確に作れる。 -

面取り鋭角側

 鋭角側の写真です。どちらかといえばこういった鋭角側のほうが整形しやすいです。尖っていて触ると痛いのですが、後の紙やすり~バフがけで微妙に丸みを帯びるので、放っておいても問題ありません。

 写真の底面右上にて鉛筆の線より少し上の部分で削るのをやめているのは、外側の縁に平行になるように合わせたため。ここらは成り行きに任せないと逆にひどい目に遭います。

写真が小さいためよくわかりませんが、表面は粉をまぶしたような状態になっています。もちろん両手はさらさら。しかし休憩を挟んだり、翌日の作業になったりするとこの粉が付いていないため、手の油を吸ったり、木部はその間に自然と空気中の水分を吸い込むのか表面の色が少し濃くなります。水分は問題ありませんが、手の油は染料のノリに影響しかねませんので、たっぷりと削り粉を手にあまぶしてから作業に入るようにしてます。 -

面取り鈍角側

 前の写真の反対側。一般に写真の底面左下のような鈍角になっている角が出しにくいものです。
 鉛筆の線を削りこまないくらいでやめにしておき、あとは紙やすりの作業にまわします。

さて、次の写真はこの時点での全体像を見てみます。

もう少し大きな写真を載せたいのですが、このBCCKSのテンプレートだとこの大きさに固定されているようです。 -

現状その1

 この時点での全景です。マウスピースがまっすぐなため、まだまだ変な感じですが、素材としてのマウスピース(エボナイト)を繋いだだけの先ほどの写真に比べ、ずっとパイプらしくなりました。

 次頁で反対側も。

実はこのあたりでボウルトップ(火皿周囲)の装飾は必要ないと判断。縁を削ってもいいが、その分火皿の深さが犠牲になってしまう。もっと深くしていれば何らかのかたちでいじったかも。 -

現状その2

 反対側です。さすがにこの辺りまでくるとぞんざいな扱いをしなくなってきます。エッジを立てたものだとなおさらです。

ノギスで測る時に、実際に歯が当たる部分で測る必要があります。ビットにギリギリのところはもう少し厚くなっていても問題ありません。強度も気になる部分なので。 -

ビット部の厚さ

 くわえた時の感触に大きく影響する部分です。4・0~4・1㎜あたりで作っています。3・5㎜くらいまでは削り込んでゆけますが、あまり薄いと暫く使っているうちに噛み砕くことになるので注意せねばならない箇所。
 4・15㎜ほどにしておくと、紙やすり~バフがけを経た頃にちょうど良くなっています。

アルコールの炎で熱し、望む形になったらこれまたアルコールを塗りたくって冷却。熱いままほっとくと弾力で元に戻ってしまうので急げ急げ。
エッジ部は燃え易いので特に注意する箇所。一度焼けると内部まで気泡が入ってがっかりすることに。気長に遠火で熱します。 お湯を使わない理由は、化学変化のためか表面が茶色く変色するため(経験済み)。
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エボナイトを曲げる

 ゴムに硫黄を混ぜ込んだエボナイトは熱に弱い素材です。そのおかげで、厚さにもよりますが熱すれば比較的簡単に曲げられます。古い本を読むと電球やお湯を使うかたもいたみたいですが、アルコールランプが一番簡便と信じてます。
 やりすぎると中の煙道をつぶすので、私は掃除に使う太目のモール2本を束にして煙道に突っ込んだ上でこの作業に入ります。

 なかなかの臭気が出て家族には嫌われます。覚悟が要る作業。

反対側から写した写真はこのBCCKの表紙に使っているので、併せてどうぞ。 -

全体の形はできました

 マウスピースを曲げ終わった写真です。先ほどの曲がってない写真と比べると雰囲気がだいぶ変わりました。

 バンドソーの刃とマウスピースが重なって、見づらくなってしまいました。ごめんなさい。

マクロで撮影してみる。 -

面取り部整形1

 紙やすりを使い、エッジを立てつつ全体をならしてゆきます。綺麗なカーブを出す作業はほぼ最初の400番以前の番手で完了させておかないと、その後は調整しにくくなります。

 鈍角の角も綺麗に出せたので次の角も。

もう少しアップで撮影してみました。実は底面周囲の面よりも、ここからマウスピースに向かっている手前の面のほうが難しい作業です。木材の硬いところと軟らかいところの違いが、凹面を滑らかに仕上げる作業で顕著にあらわれます。凸面はやりやすいのに・・・。 -

面取り部整形2

 今度は鋭角部分の写真です。各エッジを綺麗に立たせることができ、表面も滑らかに仕上げることができています。
 細かい番手に移る前に、それ以前の番手の目を完全に消さないとひどい目に遭います。後戻りは避けたいのは誰でも同じ。

1000番で磨き終えたら、全体を「目詰まり1000番」で仕上げて終了です。
余談ですが、右上のものさしは初めてパイプを作り始めた時から今でも使っている数少ない道具の一つ。
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紙やすり/仕上げ

 紙やすりの仕上げには800番~1000番、そして意外と重宝する「目詰まりした1000番」を使ってます。このうち、800番は耐水ペーパーです。水で濡らしながら使うと目詰まりせずにすいすいと削れます(番手なりに)。
 水は敵でしかないので、アルコールで濡らして使っています。アルコールといえども無駄に濡らしたくないブライヤー部分には、乾いた状態で使ってます。

強く押し付けすぎると摩擦熱で焼けてしまうので、ほどほどが吉。
ビット部の先端面も忘れずに。
1500rpmくらいがいいと聞くのですが、一般に手に入るのは両頭グラインダー3000rpmのものがほとんどです。そこらも考えて軽く・気長に・位置を変えつつ磨くのがコツ。
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バフがけ

 マウスピースを磨きます。粗めの研磨剤をバフにつけた上でマウスピース全体を磨いてゆきます。「目詰まり1000番」の目もどんどん消えて行きます。コツは一方向にこだわることなく、右斜めの後は左斜め、という具合にクロスさせながら消してゆくこと。

エボナイト~エボナイトという具合に同じ素材で継ぎをしているときには頑張り過ぎないのが重要。無闇に押し付けるとマウスピース接合部がえぐれてきてしまい、同素材の継ぎの意味がなくなるくらいはっきりと接合部が視認できるようになってしまいます。 -

バフがけ第一段階

 研磨剤の粒度でどれくらい違うものか写真を載せてみます。

 まず最初に使った粗めの研磨剤。
 紙やすり跡が消え、少し艶が出てきた。

劇的に変わるわけではないが、木部を削り落とさない程度の粒度を用いてブライヤーまで磨き範囲を広げている。 -

バフがけ第二段階

 先ほどよりもう少し細かい研磨剤を使って磨いた写真です。この頃には尖りすぎていたエッジもちょうどいいくらいに滑らかになっています。

 第一段階よりも艶が出ています。…というより、曇りが少なくなったというほうがいいかもしれませんね。

 ブライヤー部にもかけてますよ。

普通はこの仕上げ作業の前に着色作業が入るが、今回は無着色で仕上げることにしたのでスキップ。あれはあれで大変なので。 -

バフがけ完了

 手持ちの一番細かい研磨剤を使って仕上げの磨きをおこないます。ご覧の通り、ツヤツヤです。

 これでバフ磨きは完了です。あと少し。

スウェーデン「エセルテ」社のはかり。写真の状態では100gまで測定可能。中央の錘をくるりと外側に振れば500gまで測定できて便利。500gまでのほうは原木の重量を測る際に使用。 -

重量測定

 重さを測っておきましょう。60gあたりを指しています(写真が小さくてごめんなさい)。このような大きさで60gに収められたなら十分でしょう。

 世の中には100g超えのパイプもたくさんあります。私はどちらかといえば小ぶりなパイプを作るので、60gでも大きなほうです。

すでにツヤツヤになってしまい、後戻りして撮影できなくなってしまっているの図。少しカメラの水平がずれてしまっていますがご了承ください。 -

忘れてた!

 バフがけから一気に仕上げたため、WAX磨きを撮影し忘れました。作業しながらだとつい夢中になり、タイミングを逃します。
 一応記しておくと、先ほどのバフがけの後、別のバフにカルナバ蝋を塗りこんで摩擦熱でブライヤー部に浸透させてゆきます。

 ここから数枚、(ほぼ)完成写真をご覧ください。

ボウルからビットに向けて、縦幅(この写真では手前と奥)では常に厚さが減じるように、横幅(左右ですね)は木部からエボナイトへと移る付近で最も細くなるように作っています。 -

古くからある形

 ホルンという形があります。クラシックシェイプと呼ばれるには新しく、新しいシェイプと呼ぶには古くからある形です。このパイプも、広く取ってそのホルンという形に含まれます。
 以前全く違う形のホルンを作りましたが、今回は後姿を重視してスケッチブックに描いていました。紙と脳の上で歪み方をあれこれといじっているうちにこの形に辿り着きました。
 紙と比べると、想像上で立体を回転させながら考えるのがもっとも有効です。難点はなかなか集中力が続かないこと。

マクロ撮影。もう少し被写界深度を深く取ったほうが良かったかもしれません。撮影技術はまだまだ身についていません。ご勘弁を。 -

角も出てます。が。

 紙やすりをかけていた頃のシャープさはなりを潜め、角を出しているのにやわらかさを持たせることができました。全体のカーブがこの効果を出しています。

「火皿保護剤」というのは慣例に従った呼称に過ぎません。これを塗っておけば火皿が焦げない、というような誤解を招くため不適切だとは思うのですが…。厳密に言えば「表面積を広げカーボンをつきやすくするための素材」というところでしょう。たった0.5mm程度の素材で800℃の熱を防げるのなら、消防庁が採用するはず。 -

まだあります

 先ほどの写真の後、二つの作業が残っています。火皿の保護剤を塗ること。そして制作者の刻印を捺すことです。
 火皿のサイズ、表面を紙やすりを用いて最終的に仕上げてから塗ってゆきます。これには水分を使います。10日ほど乾燥剤と一緒に箱詰めしておけば水分が抜けます。

 制作開始から乾燥箱に入れるところまでで25日が経過しています。仕事を終えてからチマチマと作っているにしてもちょっと長すぎたかな…。

普通の形も作ります。
しかし、いまだに全ての使い方を理解してないのだけれど、フォントって変えられないの?
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あとがき

 以上、長々とお付き合いいただき、ありがとうございます。制作直前にカメラを購入したため張り切って撮るつもりが、うっかりWAXがけの撮影をすっとばしたり、手が粉まみれなのに頑張りすぎてレンズの中に埃が入ったり、なかなか大変な作業でした(カメラはその後修理に…)。
 次にBCCKを作る時にはもう少し写真を大きく使えるフォーマットを選択してみるつもりです。簡単かと思いきや、BCCK一つに二日がかり。いやいや、たくさんBCCKを作ってる皆さんは偉すぎます。ではでは。

#0802:パイプ制作記

2011年8月2日 発行 converted from former BCCKS

著  者:GOIGOI
発  行:GOIGOI出版

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発行者 BCCKS
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東京都品川区上大崎 1-5-5 201
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