── 砂漠に眠る場違いな代物は荒ぶる神の名が。
〈読み切り小説〉
──ヘリコプターのパイロット、グローブナーは、乗客の二人とともに、中東の砂漠地帯に埋もれた紀元前の古代遺跡に不時着する。出口を求めて行き着いた先の地下深くには、紀元前の遺跡にもかかわらず場違いに高度な技術が使用され、そこにあった遺物は、現代の科学技術をはるかに凌駕した物体だった──
という、超古代文明とか、オーパーツとか、そういったトンデモ系の話です。
ちなみにこの話に出てくる人物と物は、既刊『憑依兵器 ti:ti: 2nd session #4 : interrupt』で、クロスオーバーエピソードとして登場しているのですが、物語そのものはまだ書いていない別の流れでして、その物語の序章に当たるものを、一つの話としてまとまるように構成したものです。
黄土色で出来た海原のうねりに似た砂丘の連なりを縫うように、一機の白いガゼルが、ローターが吹き下ろす風で舞う砂煙と、自機の影を間近に従えて飛んでいる。軍用ヘリコプターの超低空飛行さながらのその飛び方は、ただの民間パイロットの操縦ではないことを如実に語っていた。
──中東、ルブアルハーリー砂漠上空。二十一世紀初頭──。
『砂場のトンボ、応答してください。レーダーで位置を確認出来ません』
ガゼルの操縦桿を握るグローブナーの無線に、彼のコールサインに呼びかける管制官の緊張した声が聞こえた。
「こちら砂場のトンボ。大丈夫。まだ飛んでるぞ」グローブナーは素っ気なく答えた。
砂で出来た小高い丘陵の峰をかすめるように超えた時、彼の視界の隅で何かがきらめいた。コレクティブレバーを少し引き、高度を上げながら光がきらめいた方向を見ると、道路というよりも、砂漠上の地盤の硬いところをとりあえず繋いだだけのような細い帯に、開いたボンネットから白い湯気を上げたピックアップトラックが止まっている。
グローブナーは機体を降下させた。
路傍に立ち往生しているピックアップから十数メートル離れてガゼルを着陸させ、グローブナーは操縦席を降りると身を屈めて回っているローターの下をくぐり、ピックアップへと速足で向かった。
ピックアップから、ビジネススーツを着て口ひげを生やした大柄な男に付き添われ、スカーフの下から淡い栗色の髪をなびかせた若い女が降りて来た。隣の男と肩を並べる程の背の高さと、遠目にも判る華やかな顔立ちから来る印象のせいで、この地の気候と風俗に合わせ着ている簡素な服すら名門ブランドのコレクションの一つに錯覚させる。
「あんた達はGATの人?」
「そうだけど、何かご用?」
グローブナーの問いに、ビジネススーツの大柄な男を従えた彼女が訊き返した。強い日差しによって落ちる、長いまつ毛の影から、緑色にきらめく瞳が彼を見据えた。
「用も何も、立ち往生してるあんた達を試験場まで乗せてくように頼まれた。グローブナーだ」
彼はサングラスを外し、二人に告げた。
「そうだったの、ありがとう助かったわ。干からびるかと思った。私はタツキよ」
彼女、タツキは打って変わったように微笑んで手を差し出した。
「ああよろしく。さあ、乗って。あまり天気が良くない」
グローブナーは握手をするとサングラスを掛け、ヘリを示した。
「私はヘイルウッドです。安全運転で頼みますよ」
スーツの男、ヘイルウッドがにこやかに笑ってグローブナーに手を差し出した。
後席に二人を乗せて離陸したガゼルは、砂丘の峰々を縫うような飛び方はせず、安全な高度まで上昇すると進路を西に向けた。北西には、ゆっくりと回転する円柱のような暗雲が見える。
「運が良かったな。あのまま十五分もいれば、あれがやってきて砂に呑まれちまうところだ」
グローブナーは右に見える暗雲を一瞥して言った。
「あの嵐、試験場を横切ったみたいだけど、大丈夫なの?」
「大したことはなさそうだ。とは言ってもこの風向きだと、俺はあんた達と荷物を降ろしたらさっさと空港に戻らないと足止めを食らうかもな」
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
見星昌嶺(みほし・まさみね)
瀬戸内海を望む田舎住まい。
小規模音楽ライブのPA/SRエンジニア(音響さん)もやってたりしますが、本業は本人にも不明。
貧乏道怠惰流、なんてのがあれば、かなり良いとこ行くんじゃないかと思ってます。
他の作品は、『憑依兵器 ti:ti: 』シリーズと、別のユニットとして朗読パフォーマンス向けの脚本をいくつか書いています。
一人編集一人出版なので、刊行作品の表紙イラストも自分で描いてます。
当然ながら日本独立作家同盟会員。
日本独立作家同盟に参加した頃は、『憑依兵器ti:ti: 2nd session #4 : interrupt』を推敲していて、その巻末にあるスピンオフのエピソードを、先行して『月刊群雛』に掲載して頂いて、その号の発売直後に『2nd session #4~』を刊行するという、プロモーションめいた形を考えていたのですが、そのエピソードがどう削ってもレギュレーション五割超えのページ数だったので断念したんです。それからも憑依兵器シリーズの推敲に頭と時間を取られたりで、参加出来ませんでしたが、その間も『月刊群雛』には、ぜひ参加したいと思っていました。今回、憑依兵器シリーズの第二シリーズを刊行したタイミングで、ようやく規定に収まる形で、新しくこの作品を書き上げることが出来ました。
この二つの質問は合わせて。
昔からこういう超古代文明とか、オーパーツとかの(オカルト含む)トンデモネタ話が好きだったので。そういうのを書いてみたかったし、もう既に書いてますし。そういうのが好きな方に、「ないわー、ないわー」という呟きとともに楽しんで(笑)いただこうと。
思い立って一週間位です。といっても、昔から寝かせていたプロットを基に追いかけただけなので、筆が遅い私にしては早いほうです。それから入稿日までは推敲をずっとやってました。ひたすら読み返しつつ、気になる表現を変え、言葉を足したり引いたり。レギュレーションに収まる頁内にまとめてゆく過程で、表現力の至らなさを実感したりでいつもより疲れました。結果は具体的な数値で現れるわけではないので、残ったものは自己満足、なのですが(笑)
気まぐれに記事を『Tumblr』経由で『Facebook』と『Twitter』に投下、それに『Google+』への書き込みと刊行案内の告知だけです。リアルにもネット上にも、この分野での交友関係がほぼゼロでフォロワーも多分ゼロ、露出形の自己プロデュースなんてのにも慣れていないので、ほとんど拡散していないはず。なにしろストア配本設定にある埋め込みキーワードの選定にすら悩むので、SEO対策なんて小難しいことにも手を出していません。
ただ、マルチストア展開で、各電書ストアの割引セールや読み放題のサービスに組み込めるように、ストア配本申込みの時に設定しているので、それが少しは効いているかもしれません。
この時代、というよりも、そもそも私の書くものがロングセラーに、などというのは夢物語なのですが、じわじわと知名度が高まり息が長い作品になって、ついでに売れてくれればそれが何よりだと思っています。
自分の筆のノロさ。
一人校正一人校閲の危うさ。
ああ、それと登場人物や架空の物の名前とか、タイトルが決められないこと。
さらに、最初の刊行直前に姓名判断の画数だけで決めたペンネームが、直筆で書く時に思い出せなくて不便です(笑)
私の作品には過去に影響を受けたものや趣味がふんだんに織り込まれていて、読む人が読めば、「ああ、こいつ、アレが好きなんだな」と簡単にバレると思いますので、今ここでは、黙してあえて語らず、ということで。
まずは『憑依兵器 ti:ti:』シリーズをいくつか重ねて、完結させることです。これから第三シリーズの推敲と第四シリーズに着手の予定です。第三シリーズの刊行開始は夏から初秋を予定しています。
と言いながら、気まぐれでこの掲載作品の続きを含めた別の話を書き始めるかもしれません。
自分が読みたい話を自分が読みたい文体で書き連ねた上に、ろくに宣伝もせずに値札を付けている私の作品を見つけて、予備知識無しにお買い上げのうえ、読んでいただいた皆様、シリーズを通しての読者様、誠にありがとうございます。
この話もあの話も、「ないわー、ないわー」という呟きとともに楽しんでいただければ作者冥利に尽きるというものです。
日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
http://www.allianceindependentauthors.jp/
2015年5月23日 発行 初版
bb_B_00135469
bcck: http://bccks.jp/bcck/00135469/info
user: http://bccks.jp/user/121026
format:#002t
Powered by BCCKS
株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp