── 普通の、恋の、その前の……
〈読み切り小説〉
スマホ依存症の女の子がスマホを取り上げられてしまい、勢いで家出をしてしまいます。そこで出会った男の子は……?
誰にでもある普通の恋のお話です。
夏休みに、母と大喧嘩をしたの。
スマホは命よりも大切だってことがまだわからないなんてどうかしてるよね、ちょっとぐらい料金が高いからって禁止なんてマジありえない。
もうとっくみあいの大喧嘩よ。で、結局取り上げられちゃって、家中探したけど、どこに隠されたかわかんないの。
だから、こっそり家出をしたんだ。
こつこつ貯めたお小遣いと、スマホの次に大切なクマ助をリュックに詰めて……。
◇
家の鍵は駅前の神社公園に捨てた。もう戻らないって儀式。
ほんとはゴミ箱に捨てようと思ったけど、ちょっと鍵に悪い気がして、鳥居の脇の木に結んどいた。
よくおみくじでやるでしょ。嫌なおみくじを木に結んで、あれどうなるのか知らないけど、不運を置いていきますよっておまじない? 嫌な家の鍵だって不運のカタマリな気がするし、丁度それっぽいじゃん? みたいな感じで。
今までも家出は何度もしたけど、毎回連れ戻されちゃったんだ。今度こそ見つからないところへ行かなきゃ……。なんで、できるだけ遠くへ行けるこの汽車に飛び乗ったわけ。
小さな一両編成の一番後ろ側、向かい合わせのボックス席のすみっこをゲット。売店で買ったお弁当を窓枠のところに置いてから、ついクセでスマホのイヤホンを耳につけようと髪をかきあげて気がついた。そうか、ないんだスマホ……。
勢いで逃げ出してきたけど、あたし、これからどうなっちゃうんだろう。クマ助を抱えて途方に暮れる。
がたんごとん。
窓からの眺めをぼうっと見ながらうつらうつら、気がついたら向かいの席にひょろっとした男が座っていてぎょっとした。
濃い色のGパンに、薄青のこれまたジーンズ生地の長袖シャツに腕まくり。あたしよりちょっと年上? でもぜんぜんガキ、青白い不健康っぽい顔に前髪たらして目に掛かっているのが嫌だ。つんと尖った顎がキザっぽい。
混んできたのかなってこっそり周りを見回したけど、通路の向こうに大荷物を抱えた女の二人組がいるぐらい、席は他にもぜんぜんあいてるじゃない。なんでよりによってその席に座るわけ?
それとも、またやっちゃったかな、あたし。
突発性難聴。母や先生にガミガミいわれると、耳の奥がキーンってなってよく聞こえなくなるんだ。原因不明だけれど、すぐに治るから精神的なものだろうなんて医者には言われている。あたしにとっては別にどうだっていい。ぼうっとしているからだとか、集中力がないからだとか言われるけど、急に聞こえなくなるんだからしょうがない。自動車のクラクションや警報が聞こえなかったら危険だぞ。って、だから? 聞きたくないことを聞かなくてよくなるなんて、病気さまさまよ。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
── まず簡単に自己紹介をお願いします
名前:神楽坂らせん / (ふりがな)かぐらざか・らせん
https://plus.google.com/105106999084079383977/
Google+の『本が好き』コミュニティの管理人をしています。同コミュニティの紹介文を集めてKindleストアで販売しているほか、『月刊群雛』生まれの『ファンタジー世界構築のための質問リスト〈完全版〉』も好評発売中!
ようやく完成したアマチュア作家さん向けの創作ガイド『らせん式ドラマロジー入門』や、同書からのスピンアウトでyWriterという小説向けのエディタソフトのガイドブックもBCCKSで電子書籍として販売しております。ご興味ありましたら立ち読みでもどうぞ♪
自画像は仲良しのGoogle+ユーザ、樫津りんご(かしづ・りんご)さんに描いてもらいました。
ゴールデンウィークのはじめに風邪をひき寝込んでしまって、お布団の中で夢に出てきた風景をお話にしてみました。執筆の半分はお布団の中からです。スマホの音声認識機能ってすごいですね。もごもご声で話した言葉がちゃんと文章になっていて驚きです。
特に無いですが、強いてあげるなら晴海まどか(はるみ・まどか)先生と桜庭 一樹(さくらば・かずき)先生でしょうか。
あと、菊地成孔(きくち・なるよし)の『普通の恋』が脳内でぐるぐるかかっていました。
たまには普通のお話が読みたい人に。
お布団の中でのうわ言に2日、お話にまとめるのに4日ぐらいです。
主にGoogle+で告知しています。
お布団かぶった闇の中で見るスマホの画面が眩しくてつらかったです。輝度調節、もっと暗くできたらいいのに……。
晴海まどか(はるみ・まどか)先生
M☆A☆S☆H(まっしゅ)先生
小林不詳(こばやし・ふしょう)先生
『らせんの本棚』の三巻目をそろそろ刊行予定です。今度はブックカフェの特集号です♪
この『月刊群雛』6月号が出るころには出せてると良いなー♪
菊地成孔の『普通の恋』って曲、ご存じですか? こんなタイトルだけど、どう聞いても普通の恋じゃないんですよね。でも、本当に「どこにでもある普通の恋」なんてあるのかしら。誰だって自分の恋は特別だろうし、普通の恋ってなんなんだろ。って思いながら書いてみました。
私の持ちキャラ達だと自己主張の強い奇人変人や体力バカばっかりで、なかなか普通に恋してくれず、ほとほと困りましたケド、なんとかかんとか、恋の罹りはじめぐらいにはなったのではないかと。
皆様もどうか健康にはお気をつけください。
日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
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2015年5月24日 発行 初版
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