── 日ロ制作の『罪と罰』のドラマを比較。
〈既刊評論・再録〉
私、有坂汀がロシアで制作されたドストエフスキー原作のドラマ『罪と罰 ドストエフスキー原作』と、舞台を現代の日本に移して制作された連続ドラマW『罪と罰 A Falsified Romance』を観て、その時考えたことを綴ったエッセイと批評の中間あたりと考えている文章です。文章を書き終えてつくづく、
「ラスコーリニコフ的」
な気分が全世界に蔓延していると痛感した次第です。
※お断り
この論評には作品の冒頭から結末までの「ネタバレ」が含まれます。
「殺人を犯すことはいかなることか? 人は人を本当の意味で裁くことが果たして可能なのか?」
決して色褪せることのないテーマを扱ったドストエフスキーの『罪と罰』。先日、私は日本とロシア、2つの国で制作、放送されたドラマ版を観て、この作品が投げかけるテーマは21世紀を迎えた現在、改めて我々の前に突きつけられた様な気がしてならないのです。
まず最初に取り上げたいのは、本場ロシアで制作された大河ドラマ版の『罪と罰』についてです。
この作品は、原作に忠実なヴァージョンであり、ロシアではおそらく「時代劇」として制作されたのではないかと個人的には推察しています。ドラマでは物語の舞台である19世紀のロシア・ペテルブルグ(現在のサンクトペテルブルク)の重く暗い街並みが見事に表現されており、
「あの時代はああだったのか」
と思うこともあるでしょう。
あらすじを簡単に述べますと、カネもなく、仕事もなく、安下宿の屋根裏部屋で不遇をかこつ元学生のラスコーリニコフ。彼は独自の犯罪理論である「ナポレオン主義」の名の下に金貸しの老婆であるアリョーナを斧で殺してしまいます。しかし、金品を奪って、さぁ現場から立ち去ろうという時に出くわしてしまった彼女の妹であるリザヴェータも衝動的に殺害してしまったことで、彼の犯罪理論に矛盾が生じてしまいます。その日以来、ラスコーリニコフは凄まじい罪の意識に苛まれてしまいます。
一見、完全犯罪に思えた老婆殺害事件。それを追及する予審判事ポルフィーリイーが彼を心理的捜査法で徐々に追い詰めていきます。酒におぼれて働かない元役人のマルメラードフやその家族。闇をさまようラスコーリニコフの魂に一筋の光明をもたらすヒロイン、ソーニャの存在。ソーニャは家族を養うために「黄色の鑑札」を受け、娼婦となった女性です。ラスコーリニコフがソーニャと交流するうちに「人間性」を取り戻し、ソーニャが「仕事部屋兼自宅」として借りているアパートで、自身の罪の重さに耐え切れなくなり、ついにそれを告白する場面で、ソーニャはショックを受け、ラスコーリニコフに十字路に立ち、地面に跪いて口づけをしなさい、と詰め寄ります。
新約聖書の『ラザロの復活』の箇所をソーニャに読んでもらい、自らの「罪」を自覚したラスコーリニコフは自身が血で汚した大地に口づけをし、許しを請う……。これら一連のシーンが荘厳さと詳細なディテールで描かれており、私は文化的な意味でも彼の国に対して
「恐ロシア!」
とつくづく感じてしまいました。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
1983年北海道釧路市生。切れる14歳、17歳といわれた世代。思い出したくもないような陰陰滅滅とした高校生活を送り、1年の浪人を経て札幌市にある私大に入学するも、半年後に全ての授業を放擲し、中退・就職を機に上京。最初の会社を半年で馘首され、その後は職を転々とし、さまざまな浮き沈みを経て現在は自由業。
◆主な著作
・小説『遠浅の海』
・エッセイ集『生産性はなくても本は出せる』
◆オフィシャル・サイト『ARISAKAMigiwa.com』
http://arisakamigiwa.jimdo.com/
◆ブログ『誇りを失った豚は、喰われるしかない。』
http://ameblo.jp/magokorowo-bokuni/
◆Twitter
https://twitter.com/ARISAKAMigiwa/
◆Facebook
http://www.facebook.com/arisakamigiwa/
日本とロシアで制作されたドラマ版の『罪と罰』が互いにあまりにも鮮烈すぎたので。
・『罪と罰〈1〉~〈3〉(光文社古典新訳文庫)』 フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー著 亀山郁夫(かめやま・いくお)訳 光文社
・『すらすら読めるドストエフスキー』 桃井富範(ももい・とみのり)著 彩図社
・『ドストエフスキー父殺しの文学〈上〉〈下〉(NHKブックス)』 亀山郁夫著 日本放送出版協会
・『『罪と罰』ノート(平凡社新書 458)』 亀山郁夫著 平凡社
・『謎とき『罪と罰』(新潮選書)』江川卓(えがわ・すぐる)著 新潮社
・『罪と罰 1~10(アクションコミックス)』 落合尚之(おちあい・なおゆき)著 双葉社
ドストエフスキーの「五大長編」に興味を持っている方なら性別や年齢は問いません。
大体3日ほど。校正1カ月。
オフィシャル・サイト、ブログ、Twitterなどで行っております。
作品に集中する時間が限られていること。
佐藤優(さとう・まさる)、立花隆(たちばな・たかし)、國分功一郎(こくぶん・こういちろう)。
書評を中心に淡々と書き続けていきます。
これをきっかけにできれば映像をご覧になって下さると幸いです。ロシア版はキツいかもしれませんが……。
日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
http://www.allianceindependentauthors.jp/
2015年5月24日 発行 初版
bb_B_00135490
bcck: http://bccks.jp/bcck/00135490/info
user: http://bccks.jp/user/121026
format:#002t
Powered by BCCKS
株式会社BCCKS
〒141-0021
東京都品川区上大崎 1-5-5 201
contact@bccks.jp
http://bccks.jp