── 煌く宙と地球それぞれ君は何を見て呟くの?
〈連載小説・第5回〉
ごく普通の教師だった慧と瑞樹、二人は高校時代からの幼馴染で恋人同士でもある。瑞樹の転職がきっかけとなり慧は、都内、有明にある民間宇宙企業「グリッタースペース」という会社で宇宙飛行士候補生で採用される。瑞樹は広報部、ずっと一緒に生きてきた二人の歩んできた道が初めて分かれた。手探り状態で宇宙を目指していく慧、慧を支えながらも自分の心をなかなか器用に操れない瑞樹。挫折や喜びを経験しながらも二人は少しずつ目標である「宇宙」へと挑んでいく。
有人宇宙飛行の歴史は、まだ始まったばかりである。
最初の有人飛行に成功したのは一九六一年、ソ連のボストーク宇宙船だった。搭乗者の一人でもあるユーリイ・ガガーリンの『地球は青いヴェールをまとった花嫁のようだった』という言葉はあまりにも有名であり、やがて欲張りな人類は更なる計画を練っては宇宙へと着実に近くなってゆく。
一九六九年にはアメリカがアポロ11号によって月面着陸に成功している。
グリッタースペースでも十二人乗り宇宙船「スターシップ」を二〇一九年五月二日に打ち上げる事が決定している。
その出来事がきっかけで日本のみならず世界でも宇宙を取り巻く事情が大きく変わる事は、まだ誰も予測していなかった。
*
グリッタースペースのロケット打ち上げ場は沖縄県の本島からかなり離れた所にある南翡翠島に建てられた。元々は無人島だった島を買い取ったものである。
初めは建設に携わる社員や作業員しか居ない味気無い島だったが、本格的な打ち上げ場となってからは島も活性化し、社員や関係者だけではあるが毎日小さな島は賑わっていた。
ロケット打ち上げ時には希望者を募り、一般の見学も恒例行事となっているし、天候さえ良ければ本島からでも十分に打ち上げられているロケットを見る事は可能だった。
しかし、今回の打ち上げはゴールデンウィーク中という事もあり、島内はいつもの倍以上に人口密度が高くなっていた。
どこからともなく敷地内に舞い込んでいた桜の花弁達も、気が付けばその姿は消え去って、穏やかで長い島の春は、ゆっくりと過ぎていった。
山岳地帯の方では青々と、平地でもあちらこちらから、柔らかな色の新芽がまぶしい季節を過ごした。この爽やかに過ごせる期間は短く、沖縄地方は本州より一足先に梅雨の時期を間近に控えていた。
昼食時の社員社堂はいつもお腹を空かせた者達で混み合っている。
グリッタースペース本社の食堂は、社員なら朝昼夜全て無料で利用出来るし、時間帯によっては見学者にも開放している。コンビニを利用出来なくなる程だと言われる位、どのメニューも味には定評があった。和洋中は勿論、月に何度かは各国の料理、金曜日は特盛メニューも出る。それはこの島の食堂も本社と同じ様なシステムだった。島には海で過ごす以外、娯楽らしい施設は無いに等しいので、自然と食べる事が楽しみとなってくる。
島の食堂は壁を隔てて洋食と中華が右側、和食が左側と二つの部屋に分かれていた。右側で人気があるのはカレーやシチュー、コロッケやフライ定食、ハンバーグ定食だった。こんがりと焼けた肉はじゅわっと脂が弾けていて、それを見ると食欲が刺激されてしまう。仕入れている肉も上質で柔らかく、ナイフをすっと軽く通すだけで透明な肉汁が流れ出してくる。合わせて出てくるドレッシング控えめな生野菜のサラダを食べて口直しをしてから、再びハンバーグに戻ると肉の味がより一層引き立てられる。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
くみと申します。
オリジナル作品はこの『井の頭cherry blossom』シリーズが初めてになります。
『月刊群雛』2014年04月号は既刊を、2014年05月号では第二部にあたる新作を載せましたが、今月号では新作連載の第五話目を書きました。
現代詩フォーラム様、うたのわ様、うたの日様のサイトに春山久美(はるやま・くみ)名義で短編小説や短歌を投稿しています。
ツイッターでの短歌ネプリ企画などでは御劔瑞樹(みつるぎ・みずき)名義でも参加しています。
ゆるふわ短歌会に所属しています。
性別越境アンソロジー 「兼ネル」に『御伽噺のお姫様』という題名で寄稿しています。
史文庫発行の歴史アンソロジー『もっとあたらしい歴史教科書:世界史C』に『secret』というBL短編小説を寄稿しています。
Twitterの短歌ネプリ企画(主催者様 @spicadrop)『絶望短歌』に参加しました。
◆Twitter:
https://twitter.com/blackopal07
https://twitter.com/bllove801
◆pixiv:
http://www.pixiv.net/member.php?id=7615544
◆現代詩フォーラム:
http://po-m.com/forum/myframe.php?hid=10258
◆うたのわ:
http://utanowa.net/user/view/2562
◆うたの日:
http://utanohi.web.fc2.com/
◆ゆるふわ短歌会:
http://yurufuwatanka.hateblo.jp/
BL作品と言うと、まず思い浮かべられがちなのが、恋愛の縺れやアダルト要素の強いものというイメージです。恋愛だけではなく、ほんの少しだけ外の世界に目を向けた恋愛小説があってもよいのではないかと思い、宇宙をテーマにして書こうと思いました。
今月号ではとうとう宇宙へと飛び出した慧と地球に居て慧を見守る瑞樹のそれぞれの想いや行動を中心に書きました。二人はいつまでも一緒ですが、少しだけ独り立ちして歩いてみることを選択しています。
舞台は現代ですが、2015年には既に有人ロケット飛行を行っている、打ち上げ基地は沖縄近くの無人島である、など現実ではない架空の世界も交えた内容になっています。
・橋本紡(はしもと・つむぐ)さん『流れ星が消えないうちに』『九つの、物語』
・水野麻里(みずの・まり)さん『姉妹の旋律』
【音楽】
・Clarity(Zedd)
・Good Time(Owl City & Carly Rae Jepsen)
・Starships(Nicki Minaj)
・Don't Wake Me Up(Chris Brown)
・Feel This Moment ft. Christina Aguilera(Pitbull)
・Let it Go(Idina Menzel)
往来のBL作品に飽きてしまった方、BLって何だろう? どんな内容なのだろうと興味を少しでも持っている方に読んで欲しいです。
もともと宇宙の雰囲気が好き、宇宙飛行士はカッコいいなという浅い知識レベルでしたので、宇宙の簡単な知識から宇宙飛行士やロケットについてインターネットで調べたり、昨年行われた宇宙イベントなどに実際に足を運んだ時の資料や写真を見直したり、ゆっくりペースで今回は原稿の完成まで約1カ月かかりました。
◆有人宇宙飛行
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E4%BA%BA%E5%AE%87%E5%AE%99%E9%A3%9B%E8%A1%8C
◆アポロ11号
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9D%E3%83%AD11%E5%8F%B7
◆sorae.jp
http://www.sorae.jp/
◆KUSUMOTO 宇宙版:
http://www.geocities.jp/kusumotokeiji/indexuni.html
◆三菱電機 コラム 読む宇宙旅行:
http://www.mitsubishielectric.co.jp/me/dspace/column/index.html
この他、JAXA調布航空宇宙センターや筑波宇宙センターの一般公開、宇宙ミュージアム「TeNQ(テンキュー)」、2014年8月に幕張で行われた宇宙博の見学などで撮影した写真や資料なども参考にしています。
やはり、多くの人が使用しているTwitterやpixivなどで告知をしています。
宇宙関連の専門用語や、実際の宇宙飛行士の活動などを調べる事です。理系ではないので、難しい専門用語などが書いてある物を読むと混乱してしまいます。
橋本紡さん、江國香織(えくに・かおり)さん、藤本ひとみ(ふじもと・ひとみ)さん、高田郁(たかだ・かおる)さん。
その他、Twitter上で見つけたBL短歌や散文、ツイノベなども沢山お気に入り作品があります。
Twitterの短歌ネプリ企画『希望短歌』『くだもの短歌』(主催者様 @you_natskey)『月巡り』に参加中です。
連載も残すはあと一回となったので無事に終わらせる事。
目標は、今まで書き溜めてきた短編や短歌などを集めた作品を発表できればと思っています。
そして、次に連載を書くとしたら、今回が宇宙ですので次は地球に重点を置いた話になるのではないかと思います。
『LOVE DRIVER』というサークルでも活動しています。
二次創作なども含めてTwitterかpixivの方を見て頂けると情報が素早く分かるかと思います。
BLと聞くと人によっては読む前に少し躊躇してしまうジャンルかもしれませんが、この作品をきっかけに新しいBLの形が少しづつ認知されていければなと思います。
そしてこの話の登場人物でもある瑞樹と慧を少しでも可愛がって下さると嬉しいです。
日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
http://www.allianceindependentauthors.jp/
2015年5月25日 発行 初版
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