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── 伝説の古寺は本当に存在するのか

伝説の古寺

幸田玲

※サンプル版

〈既刊小説・再録〉

作品概要

 麻衣は健太との交際を母親に反対される。そのことを健太に話したことで、二人の間に溝ができてしまい、麻衣は二重に悩んでしまう。ふと、友人から東京に伝説の古寺があるという話を聞いたことを思い出す。その話は、友人が伝説の古寺で祈願し縁が結ばれたというものだった。麻衣は、友人が話題にした「縁結び」にご利益があることで有名な古寺に興味を持ち、藁にもすがる思いで健太にそのことを告げる。ふたりはゴールデンウィークが明けた土曜日の午後、新大阪駅から新幹線で東京に向かい、伝説の古寺を訪れることにした。

伝説の古寺

 日曜日の午後からドライブに出かけ、鳴尾浜臨海公園にたどり着いたのは午後四時ごろだった。
 麻衣と健太は芝生の公園を通り抜け、三十分ほど砂浜を歩いた。緩やかな潮風は肌に心地よく、見渡す景色も良かったが、麻衣の気分が晴れることはなかった。
 公園に戻ってベンチに座り、海の景色を見つめた。
 とつとつと語る健太の話に耳を傾けていた麻衣は、折りをみて、胸のつかえを切り出した。
 母とのやりとりをかいつまんで話しているうちに、麻衣は感情が高ぶってしまい、つい、涙声になってしまった。
 健太は麻衣の話に受け応えをしていたが、しばらくすると、唇を強く結び押し黙ってしまった。
 昨年の十月ごろ、健太とベンチに座り海を見ていた思い出が脳裏をかすめた。
 健太は屈託のない笑顔を向けて、仕事や好きな映画の話などを語った。
 けれど今は、健太と会話が途切れてから十分ほどが過ぎている。難しい顔つきで海を見つめる、健太の横顔があった。
 思案をめぐらす健太の表情に耐えられなくなって、麻衣は視線を外した。
 西空に目を転じると、茜色に染まった六甲山の峰が見える時刻になっていた。視線を戻した麻衣は、波立つ黒い海面を見つめた。
(もう、だめかもしれない)
 心の中でつぶやいた麻衣は、奥歯を噛みしめた。
 母に告げた日のことを思い出すと、悲しくてやるせない思いが心にのしかかってくる。母に理解されない悔しさで、鼻の奥に痛みが走った。
 押し黙ったまま、暗い表情で海を見つめる健太の気持ちがはかり知れなくて、麻衣は不安だった。
 潮風を受けて、肩まである黒髪が揺れた。麻衣は寒気がして、みだれる髪を押さえながら言った。
「風が強くなってきて寒いわ。そろそろ、戻ろう」
「そうだな」
 健太は、沈んだ声で応えた。
 ふたりは公園専用の駐車場に足を向けた。
 
 二週間ほど前の四月初旬、麻衣は一年半ほど付き合っている健太のことを両親に紹介したいと思い、母親に交際していることを告げた。
 健太の身の上を話すと、母親は難色を示した。学歴や仕事のことなど、あまり深く考えていなかった麻衣は、母親の反応にとまどった。
 眉間にしわを寄せた母は、健太が高校卒であること、より所のない仕事であることを指摘した。組織に属さない人のことを母は理解できないという。
 麻衣が反論できないことを見てとったのか、
「違う環境で育った人より、同じような環境で育った人のほうがいいんじゃないの」
 母はやんわり、お父さんも同じ考えよ、と釘を刺すように言い含めた。
 その日から、麻衣は母と必要な話以外はしなくなった。


※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。

幸田玲さんインタビュー

── まず簡単に自己紹介をお願いします

 はじめまして、幸田 玲(こうだ・れい)と申します。
 自営業の傍ら、小説を書いています。今年の秋から電子書籍の販売を開始して、生業とインディーズ作家の活動で、兼業を目指しています。
 ボイスドラマにも関心を寄せていますので、公開している掌編小説の中から取り上げた作品を、自ら脚本化し、業界の方の協力でボイスドラマとしてプロデュースしています。

◆寄稿先 :『小説家になろう』
http://mypage.syosetu.com/134346/

◆Twitter :(@bestplanning)
https://twitter.com/bestplanning

◆Google+ :
http://plus.google.com/115744212482287321693/

── この作品のターゲットはどんな人ですか

 色々な年齢層の男女の読者様に読んで頂きたいと思っていますので、ターゲットは限定していません。性別、年齢層によって、受け止め方は様々だと思いますが。

── 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか

 ツイッターで、定期的に宣伝しています。

── 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください

 松本清張(まつもと・せいちょう)氏、司馬遼太郎(しば・りょうたろう)氏、山崎豊子(やまざき・とよこ)氏、池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)氏、山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)氏、乃南アサ(のなみ・あさ)氏、宮部みゆき(みやべ・みゆき)氏、連城三紀彦(れんじょう・みきひこ)氏、桐野夏生(きりの・なつお)氏、唯川恵(ゆいかわ・けい)氏、その他の作家で、心躍る作品に注目します。

── 今後の活動予定や目標を教えてください

 今年の秋から電子書籍の販売を開始して、インディーズ作家の活動で兼業を目指す予定です。

── 最後に、読者へ向けて一言お願いします

 読者様の心を揺さぶることができるような、物語を描きたいと思っています。
 精進してまいりますので、よろしくお願い致します。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

日本独立作家同盟

 日本独立作家同盟は、インディーズ出版分野で活動する会員相互の協力により、伝統的手法では出版困難な作品の企画・編集・制作支援などを通じて品質向上を図り、著者の育成と知名度向上・作品の頒布を促進し、読者と著者のコミュニケーションを活性化することで、多種多様な出版文化の振興に貢献します。
http://www.allianceindependentauthors.jp/

伝説の古寺(サンプル版)

2015年5月25日 発行 初版

著  者:幸田玲
発  行:日本独立作家同盟

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