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── 安らぎよりも、素晴らしい試合

幸福すぎる90分間

和良 拓馬

NPO法人日本独立作家同盟

〈読切エッセイ〉

作品概要

 試合後、チームの公式ツイッターアカウントは誇り高くこう呟いた。「私たちが横河武蔵野FCです!」
 2012年に開催された、第92回天皇杯全日本サッカー選手権大会。波乱傾向が強かった今大会にて、JFLに所属する小さなアマチュアチームが突如表舞台に躍り出た。専守防衛を旗印に戦い、大きな相手へ臆すること無く対峙する。その姿に胸打たれた観衆たちは、次第に彼らへの声援を大きくさせていった。
 「ジャイアントキリング」という現象は、如何にして発生したのか。そして、我々に何を与えてくれたのか。チーム応援席から試合を眺め、いつの間にか旋風に巻き込まれていった筆者が、改めてその軌跡を振り返る。

幸福すぎる90分間

プロローグ

 JR三鷹駅南口からひたすら真っ直ぐ歩くこと20分。それは周囲の街路樹と一体化しているかのようだった。横河武蔵野FCのホームスタジアム、武蔵野陸上競技場(通称:ムサリク)。この日僕が訪ねた試合は、JFLファーストステージの第8節・横河武蔵野FC対流通経済大学ドラゴンズ龍ヶ崎というものである。ムサリクにはラグビーの試合でも何度か訪れた事があるとは言え、サッカーの試合では初めてだった。また、横河武蔵野FC自体も、2年前に野津田陸上競技場で行われたFC町田ゼルビア戦以来である。懐かしさと新鮮さが僕の中に同居していた。

 4月中旬の割には汗ばむ陽気だった。メインスタンドに腰掛けた時、ちょうどキックオフのホイッスルが響く。少しぬるくなったミネラルウォーターを口に流し込み、売店で買ったブラジル風コロッケを頬張る。スタンドの端には木々が生い茂っており、簡易的な屋根の役割を担っているようだった。強い日差しを防いでおり、かつ爽やかな風と木立の薫りが心地よい。試合前に貰ったメンバー表を確認する。ベンチも含め、知っている選手は半分にも満たなかった。スターティングメンバーの平均年齢は24・3歳。しばらく観ない間に、チームは変化し続けていたのだ。
 なお、試合は前半から主導権を握り、相手守備陣のミスをゴールに結びつけた横河武蔵野がリードを守りきって勝利した。スコアは3-2だった。

 ここからが本題だ。今日の試合を観に来た目的は、ある「チャント」を聴きにきたというものである。サッカーに詳しくない方に説明すると、「チャント」とは「かけ声」や「応援歌」を意味している。
 ムサリクは市役所や住宅に囲まれている立地場所の都合上、トランペットや太鼓などの「鳴りモノ」を使った応援を禁じている。この日も時折穏やかなテンションで、発声によるチャントを繰り返していた。
 僕が聴きたかったチャントは、この試合中に2回流れた。回数は少ないが、しっかり聴けてほっとしている。特に後半20分過ぎのシーンが印象的だったので、その詳細を記しておこう。
 
 敵陣で相手DFから奪ったボールが、横河武蔵野のMF永露大輔に渡る。ペナルティエリア付近で絶好のチャンスを作ったのだが、逡巡しているうちに数的有利の場面は解消されてしまった。結局消極的なパス回しに終始し、シュートを放つ事無く再び相手にボールを奪われてしまった。
 
 ため息がスタジアムを包む。
 次の瞬間、横河武蔵野サポーターたちが声を上げた。
 僕が聴きたかったメロディーが、スタジアム中に流れている──。

 そう、チャントとはどんな時も、「挑戦する勇気」を促すものでなければならないのだ。


※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。

和良拓馬さんインタビュー

── まず簡単に自己紹介をお願いします

 こんにちは。和良拓馬(わら・たくま)です。『月刊群雛』は4回目の出場となります。
 最近の馬券ですが、ダービーウィークは日本ダービーも東京ダービーも見事単勝的中という運びとなりました。多分、群雛ポータル上でこのインタビューが公開されるのは宝塚記念前後ですので、こちらもしっかり当てて良い上半期の締めくくりとしたいものです。
 ……えーっ、話がそれてすいません。普段からそんなノリでスポーツエッセイを記したり、インディーズ作家の本を中心にブクログにて書評も行ったりしています。これからも「書く」と「読む」のバランスをしっかり保った、楽しいセルフパブリッシング生活(?)を目指していきたいところです。

◆ブログ:『ラグビー選手になりたかった』
http://will-be-rugby.blogspot.jp/
◆Twitter:
https://twitter.com/Waratas
◆ブクログ:『こんなの読んでしまいました』
http://booklog.jp/users/waratas

 また、『月刊群雛』2015年4月号のインタビューでぼそっと答えたセルフパブリッシングの新作ですが、4月7日に『スタジアムの言い訳』というタイトルで発売しました。「この人の作品ってどんな感じですか?」とか「既存メディアとは違うスポーツものを!」と思った皆様向けのエッセイ集です。常時無料配信中ですので、お気軽にダウンロードして下さい!

◆スタジアムの言い訳
http://execuseinstadium.tumblr.com/

── この作品を制作したきっかけを教えてください

 2012年の9月と12月に、拙ブログに掲載した記事を元に再構築したものになります。詳しくは下記リンクをご参照下さい。

・横河武蔵野FCの幸福すぎる90分間
http://blog.livedoor.jp/will_be_rugby/archives/51871542.html
・続・横河武蔵野FCの幸福すぎる90分間
http://blog.livedoor.jp/will_be_rugby/archives/51889510.html

 書き直した理由ですが、次のエッセイ集のテーマを「弱いチームの奮闘」と決めたのがきっかけです。このエピソードはテーマともマッチしていますし、この話をもっと広く伝えたい! という思いも抱いていました。

── この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください

 ゴダイゴの『銀河鉄道999』をひたすら聴いて、作品のイメージを膨らませていきました。というか、このインタビュー書いている時も聴いています!

――この作品のターゲットはどんな人ですか

 横河武蔵野FCって? という方でも入り込みやすいように手直ししましたけれど、やはりあの試合を観ていた人たち、あわよくば選手やチーム関係者の皆様とより一層共有できれば、これに勝る喜びはございません。

── この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか

 記事を群雛向けに再構築した期間は2週間ほどでしょうか。

── 作品を制作する上で困っていることは何ですか

 集中力を維持する方法を身に付けたいものです。自分の部屋だとすぐ集中力が切れてしまい、ネットサーフィンや昼寝にうつつを抜かしてしまいます。喫茶店や自習室では執筆の集中力が保てるので、お金が貯まったらポメラか小型ノートPCを買おうかなあ。

── 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください

 せっかくなのでジャイアントキリングに関する1冊を。河治良幸(かわじ・よしゆき)さんの『サッカー番狂わせ完全読本』は、サッカーの試合における古今東西の「ジャイアントキリング」について分析しています。横河武蔵野FCは取り上げられていませんが、他のケースと共通点は多いと思いました。

── 今後の活動予定や目標を教えてください

 この業界に入って初めて「公募」というシステムを知った(!?)のですが、チャレンジしてみたい賞があるのでちょっと投稿してみようと思います。原稿自体はほぼ出来上がっているので、〆切ギリギリまで細部の推敲をこれから続けます。あと、先に述べた新作エッセイ集も夏には販売にこぎつけたいですね。

── 最後に、読者へ向けて一言お願いします

 Jクラブ対アマチュアクラブの構図になる本大会1~2回戦はもちろん、天皇杯は都道府県予選も面白いですよ。例年ですと6月末から全国各地で予選が始まります。日時・開催場所はお近くのサッカー協会HPからご確認下さい。もしかしたら、ジャイアントキリングの萌芽があるかも? ぜひ皆様もサッカー場へ!

NPO法人日本独立作家同盟とは

 NPO法人日本独立作家同盟は、、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。

 当法人の活動目的は、誰もが情報発信者になれる時代における、作家や作品の知名度向上(Promotion)、作品の品質向上(Quality)、作家と読者のコミュニケーション活性化(Communication)などを促進することにより、多種多様な出版文化の振興に貢献することです。情報交換や交流などを目的としたコミュニティの運営、インディーズ作家を応援するマガジン『月刊群雛』の発行、ウェブメディア『群雛ポータル』によるセルフパブリッシング関連の情報発信、勉強会やセミナーの運営などの事業を行っています。詳細は、公式サイトの[法人概要]をご覧ください。

◆NPO法人日本独立作家同盟公式サイト:
http://www.allianceindependentauthors.jp/

幸福すぎる90分間(サンプル版)

2015年6月22日 発行 初版

著  者:和良拓馬
発  行:NPO法人日本独立作家同盟

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