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── 遭難した宇宙船。商人たちに救助は来ない。

オルガニゼイション3
十五商人漂流記

波野發作

NPO法人日本独立作家同盟

〈連載小説・第1回〉

作品概要

 恒星間貿易商社組合の慰安旅行で温泉惑星ゲローにむけて、レンタル宇宙旅客船「スラウギ号」で大宇宙を航行していた十五人の商人たちは、スーパードライブの最中に突然通常空間に飛び出して遭難してしまった。通信機は壊れており、救助は呼べそうにない。食糧は一年分あるが、その分配を巡って意見がわかれ、船内は険悪なムードに包まれていた。商人たちは独裁者に委ねるべきという集団と、すべて合議で決めるべきだという集団、そしてそのどちらでもいいという集団に分かれて、勢力争いを繰り広げるのだった。果たして、十五人の銀河商人たちの運命は? 銀河平均株価も左右しかねない、未曾有の遭難事件で何が起こったのか。スラップスティック系SFコメディ連載開始!

十五商人漂流記


  堕天使のうち、これほどさもしい根性の持ち主もなかった。
       by ジョン・ミルトン(イギリスの詩人)

「ダメだ。通信機はイカれてしまって、もう動かない。救援は呼べない」
 通信室の様子を見てきた男の淡々とした返事に、カムンゼ星系の豪商スカルポン・ラタラーンは絶望的な気分になった。恒星間超高速通信が可能な装置がどこにでもあるわけがない。こうなるともうオルガニゼイションと連絡を取るのは不可能だ。現在の座標さえ伝えることができれば数日で助けが来る。しかし、恒星間スーパードライブの途中でワームホールから弾き出されてしまったのであれば、航路から逆算してこのスペースクルーザーを探し出すのに二年はかかるだろう。金に糸目をつけず、銀河最速の量子コンピューターをありったけ並列に処理させてもだ。くそ。二年もか。複利がどこまでかさむのか、想像もしたくない。それにこのブランクは商売人としては致命的だ。生きて戻ったところで店は他人の手に渡ってしまっているだろう。そうなるともう生きている意味などない。商売のできない商売人になんの価値があるだろう。残念だ。実に残念だ。スカルポンは、死にたい気分だった。だが、自ら命を絶とうとは思わない。命果てるその瞬間まで銀河商人として生を全うするべきだ。彼はこの迷える羊の群を導き、一日でも長く生きることを心に誓った。

「ウォタコンはどこに行った?」
 スカルポンは、自分らの集団のナンバー2であるウォタコン・ナーシェスの姿が見えないことに気づいた。遭難からすでに三日が経っていた。ウォタコンもまた銀河商人である。彼はカムンゼ星系人ではないが、今回のような恒星間貿易商社組合の慰安旅行でスカルポンとは何度か顔を合わせたことがあり、顔なじみということで遭難直後から行動を共にしていた。意見が合うことが多く、スカルポンは内心彼を頼りにしていたのだった。昨日あたりから、15人の乗客の間でなんとなく派閥のようなものができ始めていた。一つはスカルポンやウォタコンなどの、強力なリーダーに判断を委ね、迅速に危機への対応ができるような体制にするべきだという考えの者たちだ。彼らは「Aサイド」と呼ばれていた。もう一つはいかなるときも話し合いで解決するべきだという合議制を主張する者たちだった。彼らは「Bサイド」と呼ばれていた。Aサイドには、スカルポン、ウォタコンの他に巨漢で食糧商人のイアンマン・ティルアゲ、手乗りサイズの不動産商人ワックイル・ユーマジア、紅一点の奴隷商人ティオベラ・サイマーンの三名が同調していた。意見は合っているが、彼らはスカルポンをリーダーにと考えているのではなく、それぞれがリーダーになりたがっていた。いずれはこの中から真のリーダーが選ばれるだろう。そのためにも、ウォタコンの存在は重要だ。彼なら自分を支持してくれる、とスカルポンは確信していた。イアンマンは首を振って、ウォタコンの所在が明らかでないことをスカルポンに示した。

「Bの奴らにちょっかい出されているのではないだろうな」
 スカルポンは苛立ちを隠せなかった。


※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。

波野發作さんインタビュー

── まず簡単に自己紹介をお願いします

 毎度あり。お初の方には、姓は波野。名は發作、前後合わせて「ナミノハッサク」といいます。ハツの字は旧字体です。新字体だと「発作ほっさ」なので旧字体にしました。もちろんペンネームです。兼業作家です。ライターとか編集とか本名の方では長年いろいろやってます。昨年インディーズ作家デビューしましたが、今後も波野名義でちょいSF寄りのミステリーもどきを主に書いていきますです。ついに『月刊群雛』で連載できることになりましたので、兜とふんどしの紐をしめてがんばります。他の活動についてはホームページをご覧ください。

◆公式サイト:『NAMINO_WORKS』
http://naminow.com/

── この作品を制作したきっかけを教えてください

 『月刊群雛』2015年02月号掲載『ヴェニスンの商店』、04月号掲載『ガッデンの箱娘』が自分の中で好評だったので、思い切って連載での掲載を挙手しました。運良く飛び込めたので、半年間お付き合いのほどよろしくお願いいたします。連載タイトルは『オルガニゼイション』になりますが、毎回サブタイトルがありまして、そちらの方がメインぽく見えますが、ラノベとかってそういうの多いじゃないですかぁ。そんな感じですので、ご承知ください。連載ではありますが、基本的に1話完結方式になっております。キャラや設定の説明は毎度はしませんので、既刊の情報や想像力で補っていただきます。ゼヒ過去作もご覧ください。今回ズキューンが何をしたのかは、これまでのシリーズをご覧の方は、大方察しが付くようになっております。もちろんバックナンバーを買っていただくための姑息な手段であります! あしからずご勘弁ください。読まずに推測することももちろんOKですよ!

── この作品の制作にあたって影響を受けた作家や作品を教えてください

 今回は『二年間の休暇』または『十五少年漂流記』(ジュール・ヴェルヌ)、『蠅の王』(ウィリアム・ゴールディング)あたりですね。読んでから何十年か経っているので、だいぶ記憶は曖昧ではありますが。

── この作品のターゲットはどんな人ですか

 SFと落語が好きな人。『月刊群雛』を毎号読んでいる人。少なくとも2015年02月号と04月号は読んでいる人。

── この作品の制作にはどれくらい時間がかかりましたか

 タイトル決めるのに3日間。書いたのは2日間です。

── 作品の宣伝はどのような手段を用いていますか

 毎度のように自前のWebサイト、アプリで紹介、SNSでモゴモゴ言うなど。

── 作品を制作する上で困っていることは何ですか

 集中できる執筆スペースがなかなかないのは変わらず。やっぱり自宅も事務所もなかなか集中できないですね。暑いし。

── 注目している作家またはお気に入り作品を教えてください

 今はハインラインの『夏への扉』を持ち歩いています。ブックカバーは谷中の「旅するミシン店」で購入した雷鳥社オリジナルキャラプリントのいい感じのものを使っています。

── 今後の活動予定や目標を教えてください

 とりあえず、現時点ではこの連載の原稿はもう手離れしているので、六話掲載が無事終わるまでは毎月のインタビューをがんばります。あと、この勢いで他で書いている長編(江戸出版ネタのもの)を一気に仕上げてしまいたいですね。それが済んだら、このオルガニゼイションシリーズの長編ネタを考えてみたいです。連載終了のタイミングで何かお届けできたらいいですよね。

── 最後に、読者へ向けて一言お願いします

 次回は戦争です。

NPO法人日本独立作家同盟とは

 NPO法人日本独立作家同盟は、、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。

 当法人の活動目的は、誰もが情報発信者になれる時代における、作家や作品の知名度向上(Promotion)、作品の品質向上(Quality)、作家と読者のコミュニケーション活性化(Communication)などを促進することにより、多種多様な出版文化の振興に貢献することです。情報交換や交流などを目的としたコミュニティの運営、インディーズ作家を応援するマガジン『月刊群雛』の発行、ウェブメディア『群雛ポータル』によるセルフパブリッシング関連の情報発信、勉強会やセミナーの運営などの事業を行っています。詳細は、公式サイトの[法人概要]をご覧ください。

◆NPO法人日本独立作家同盟公式サイト:
http://www.allianceindependentauthors.jp/

オルガニゼイション(サンプル版)

2015年6月24日 発行 初版

著  者:波野發作
発  行:NPO法人日本独立作家同盟

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