── 受け継がれていく血と魂と
〈読切小説〉
内容は毎度のごとくギター小説『440Hz』シリーズと共通の世界観で、今回の舞台は一九三〇年代の北米です。
主人公は、アメリカ中を旅する日本人の若者と、インディアンの血を受け継ぐイギリス系アメリカ人のふたり。
西部開拓時代の入植によって、アメリカは大きく様変わりをしました。
時代が移り変わっても、その在り方は形を変えながら受け継がれていく、というのがテーマです。
今回は演奏シーンどころか、ギターという言葉や存在も出てきません。
ちなみに、三人称視点の作品を世に出すのは初めてです。
「倒れるぞ!」
切り株だらけになった原生林に声が響く。ゆっくり四拍数えると、それは周囲の空気を巻き込みながらズシン! と大地に倒れ込む。直径三メートルを超えるそのカエデの木は、枝を払われてから、近くの湖に浮かべられる。
北米にある、海のように広大なそれは、伐採した木材の貯木場としても活用されていた。
十九世紀末。貴重な原生林は入植者たちによって喰い尽くされる。無数の切り株と共に西部開拓の時代は終わりを告げた。
時代に放置された丸太の一部には、長い年月を経て水分を含み、深い湖底に沈んでしまうものもあった。
西部開拓時代の終わりから約四十年後の一九三五年、初夏。スペリオル湖から八十マイルほど南下したところにある街外れ。カウボーイ・ハットを目深にかぶった青年が、沼に釣り糸を垂らしている。その後ろには白煙を上げて停まっているトラックの姿があった。
青年の目的は商品の仕入れ。ウィスコンシン州の五大湖周辺には、良質なカエデが植えられている。市場へ流通する前に押さえることができれば、最高級のものを選べるはずだと目論んでいた。が、しかし、トラックが古い切り株に乗り上げ、そのはずみで街路樹に衝突。足止めをくらってしまった彼は、あきらめて釣りに興じることにした。
二時間ほど経った頃、まったく反応のない竿先を眺めながら、青年があくびをしていると、別の車のエンジン音が聞こえてきた。スタックしたトラックで道を阻まれ、通行ができない。運転手は青年に向けてクラクションを鳴らす。
青年がそちらに向かってカウボーイ・ハットを振ると、運転手は車から降りてトラックが動かない様子を確認しながら口を開く。
「災難のようだな。東洋人か?」
三十半ばくらいだろうか。漆黒の目が特徴的な運転手も、生粋の白人ではないようだ。
「ああ、日本人だよ。どうやら道路にはみ出た切り株に乗り上げちまったみたいだ」
首を竦める仕草をしながら答える。青年が切り株を軽く蹴ると、運転手は咎めるような視線を送った。
※サンプルはここまでです。続いてインタビューをご覧ください。
澤俊之(さわ・としゆき)と申します。主にギター音楽の表現を中心とした『440Hz』というシリーズ小説をKindle向けに配信しています。
ギターの素晴らしさを伝えるべく、いつでもどこでも楽しめる電子書籍を媒介しての表現活動をしており、音楽も、小説も、会話も、表現はすべて同一線上に存在する、というのが持論です。
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ちょうど一年前の2014年07月号に初めて群雛へ寄稿をさせていただいたのですが、一周年ということで、新たに描き起こしする運びとなりました。
掌編なら短いし3時間くらいかな、と高をくくっていましたが、結局10時間以上かかりました。
最近では、淡波亮作(あわなみ・りょうさく)さん、藤崎ほつま(ふじさき・ほつま)さん、ヤマダ・マコトさんの作品がとても良いです。
他にも気になっていながら、読めていない作家の方もいらっしゃいますが、必ず読みます。
あと、鷹野凌(たかの・りょう)さんの『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました(以下略)』は、個人クリエイターの方は読んでおいたほうがよいでしょう。
個人活動には権利的な盲点が数多くあるので、それに意識を向けるためにも役立つと思います。
前回も同じことを言っていたような気がしなくもありませんが、シリーズ関連の長編作を描いております。
今年いっぱいお待ち頂ければ幸いです。
半年に一回はなにかしら出すようにしますので、お忘れなきよう。
NPO法人日本独立作家同盟は、文筆や漫画などの作品を、自らの力で電子書籍などのパッケージにして世に送り出している、インディーズ作家の活動を応援する団体です。伝統的な出版手法である、出版社から取次を経て書店に書籍を並べる商業出版「以外」の手段、すなわち、セルフパブリッシング(自己出版)によって自らの作品を世に送り出す・送り出そうとしている方々をサポート対象としています。
当法人の活動目的は、誰もが情報発信者になれる時代における、作家や作品の知名度向上(Promotion)、作品の品質向上(Quality)、作家と読者のコミュニケーション活性化(Communication)などを促進することにより、多種多様な出版文化の振興に貢献することです。情報交換や交流などを目的としたコミュニティの運営、インディーズ作家を応援するマガジン『月刊群雛』の発行、ウェブメディア『群雛ポータル』によるセルフパブリッシング関連の情報発信、勉強会やセミナーの運営などの事業を行っています。詳細は、公式サイトの[法人概要]をご覧ください。
◆NPO法人日本独立作家同盟公式サイト:
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2015年6月27日 発行 初版
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