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拘縮を防ぐ 表情筋と顎関節
 アマン (顔面神経麻痺 治療とリハビリ徹底研究)




  この本はタチヨミ版です。


―― 目次 ――

はじめに読んで下さい


拘縮を自力で防ぐために

表情筋の拘縮を防ぐ


表情筋の「拘縮」と「こわばり感」について


表情筋の拘縮を防ぐストレッチ


表情筋のストレッチの手順


表情筋の拘縮を防ぐポイント・注意点

2 顎の拘縮を防ぐ


顎関節を左右均等に保つために


顎のストレッチ フルバージョン


顎のストレッチ フルバージョンの手順


顎のストレッチ 簡易バージョン


顎の簡易ストレッチ 1の手順


顎の簡易ストレッチ 2の手順


顎の拘縮を防ぐ ポイントと注意点



   付録・顎関節症について



   はじめに読んでください


 筆者は手術損傷による重度の顔面神経麻痺でした。
 長年に亙る亜急性麻痺の期間に、病院や治療院をはしごして気づいたのは、分でできる日常的なリハビリやケアについて、こまやかなところを丁寧に教えてくれる病院や治療院が以外と少ない、ということでした。
 この本で紹介しているのは、こういう日常的なケアまで詳しくサポートしてくれる大学病院のリハビリ科と、口腔外科クリニックの医師にラッキーにも教えて貰えた「表情筋のストレッチ」と「顎関節のストレッチ」の手順です。

 ただ、私は医師でも治療師でもないため、ここで書いているやり方は、あくまで「私には効果があった」手順である、ということをご留意下さい。
 顔面神経麻痺は、人それぞれ重度や麻痺している箇所も微妙に違いますから、拘縮の度合い、顎関節のずれ具合にもきっと個人差があるはずです。
 少しハードな動きも含みますから、少し試してみて自分には合わない、と思ったら、ただちに止めるようにして下さい。
 合わないものをそうと知らずに無理して続けることほど恐ろしいことはないので、どうぞ自己責任で行って下さい(__)。

 ともあれ、私には、これらのストレッチが抜群に効きました。
 特に顎のストレッチは有り難かったです。
 表情筋の拘縮と顎関節の拘縮は、麻痺している期間が長くなればなるほど顕在化してくる症状です。
 そしてとくに表情筋の拘縮が起きていることを知らずに長期間放置していると手遅れになり元にもどらなくなってしまいます。
 また顎関節のずれは、容貌のバランスに大きく影響します。
 この「拘縮」や「ズレ」を定着させないで日々リセットすることが肝心で、毎日のストレッチを積み重ねるか否かが、未来の機能や表情に大きく影響してきます。
 これらのストレッチは、手順を守って丁寧に行うことがキモ、なのですが、最初のうちはなかなか覚えられないかもしれません。
 慣れるまでは手元におくアンチョコが必要かも、と思い、ブログの一部を加筆して電子ブックにしました。
 スマホやタブレットに入れて、いつでも必要な時に見るようにするといいと思います。
 皆さんのリハビリの一助になれれば幸いです。


 拘縮を自力で防ぐために


 顔面麻痺になると顔が固まったように感じる「こわばり」を感じます。
 こわばり感は自覚できるものですが、もっとやっかいなのが、表情筋の拘縮です。
 麻痺に慣れてきてこわばり感をさほど感じなくなっても、放っておくと拘縮は少しずつ進んでしまうから始末に悪いのです。
 麻痺が長くなればなるほど知らぬ間に進んでしまう、この拘縮という問題をどうしていくか、ということについて、しかし、そこまで指導してくれる病院は少ないような気がします。
 定期的に治療院や病院に通って施術してもらい、柔らかく保てばいいのでしょうが、特に麻痺が長くなる場合、諸事情からそう頻繁に通うわけにもいきません。
 日々のストレッチで表情筋をリセットし、自力で拘縮を進ませないようにしたいものです。

 口の内外や周囲に、左右均等に力を入れられない顔面麻痺に於いては、顎関節にも同じ事が言えます。
 これは金属疲労のようなもので、片顎にばかり力が入ったりして長期間部分的に負荷をかけているため、知らないうちに癖がついて顎を歪ませまてしまいます。
 ここでは、顎関節の歪みや異常を予防・リセットするためのストレッチも紹介します。
 なお、この顎のストレッチについては、進行した顎関節症を治療するためのものではない、ということにご留意下さい。。(顎関節症予備軍、またはごく軽い不具合はリセットできると思います)
 顔面麻痺のありなしにかかわらず、近年、顎関節症ににかかる人が増えている(特に若い女性が多いようです)と言われます。
 顎関節症は、噛み癖、姿勢、噛み合わせの不具合、他の疾病による顎の炎症など、さまざまな要因で起こります。
 顎の痛み、口を開閉した時にカクカクという音がする、こめかみを押さえると痛い、など明らかな自覚症状がある場合は、顎関節症が疑われますから、まずは歯科(できれば口腔外科が望ましいと思います。)に行って原因をつきとめ治療してもらいましょう。
 顎関節症は一度治療しても、体の癖などから再発しやすい症状です。
顔面麻痺がある場合は、常時、このような癖をとろうにもとれない状態にあります
 ここで紹介しているストレッチは、予防と同時に一度発症した顎関節症の再発を防ぐためのストレッチでもあります。
 顔面麻痺のあるなしに関わらず行えますが、顎関節症と診断された人は、治療を終えた後、セルフケアの時期に入ってから行うようにして下さい。
 なお顎関節症については、巻末の 付録・顎関節症について を参照して下さい。

 1 表情筋の拘縮を防ぐ

 表情筋の「拘縮」と「こわばり感」について


 特に寒冷な時期や季節の変わり目には、ブログの表情筋や顎の拘縮の頁を読んで下さる人が急に増える傾向にあります。
 確かにこの時期は、顔の強ばり感を普段より強く感じがちです。
 けれど、この「強ばり」(体感)と実際の表情筋の拘縮(現象)は区別して考えたほうがいいと思います。
 ここで書いている表情筋の拘縮とは、長期間使わないでいることから生じる筋肉の縮み、硬化のことです。
 表情筋が短縮して固まったような状態です。
 筋肉はよく動かしていれば柔らかく保たれ伸縮も自在ですが、動かさずにいると、そのままの形で固まってしまいます。
 一年~一年半、動かさずに放置していると、筋膜(臓器・筋肉などを包みこんでいる膜)も癒着を起こし、筋肉はもうもとの柔らかさには戻らないとまで言われています。
 ですから、こわばって動かせない、固まったような感じになる、ということとはちょっと意味が違います。

 少しわかりにくいかもしれませんが・・・
 例えば私の場合について書いてみます。
 回復期初期、動き始めたばかりの頃、顔は異常にこわばっていました。
 この感じは疲れたり寒かったりするとより強く感じられました。
 けれどこの時点で筋肉の拘縮自体はまだそれほど始まってはいません。
 なぜなら、筋肉が動かなくなってからあまり時間がたっていないからです。
 筋肉は以前と同じように柔らかいままなのに、固まっているようなこわばりは強く感じていたわけです。
 けれど、これが、回復期に入って数ヶ月たった頃になると、(私は重度だったので亜急性麻痺の時期が長かったです)こわばり感にもすっかり慣れてしまい、最初の頃のように酷くは感じなくなっていましたが、実際には筋肉の拘縮は以前より進んでいました。
 長期間、筋肉を動かさないでいることによる拘縮が知らないうちに始まっていたのです。
 慌ててストレッチを始めたわけですが、逆にいうと、回復期が長くなって、動かないことに慣れ、こわばりもさほど気にならなくなった時期こそ拘縮を意識したほうがいい、ということです。

 ストレッチをすると、もちろん一時的にはこわばり自体も緩和されますが、寒冷期にストレッチをするのは、血行を促すのと、寒さで動きが悪くなっている筋肉の癖を残さないため、という意味もあります。

 ストレッチは回復期初期から初めますが、むしろ亜急性麻痺の期間が長くなればなるほどかかせいものになってきます。
 陳旧期に入ってしまったら、なおさら、毎日の習慣として身につけたほうがいいと個人的にはは思います。



 表情筋の拘縮を防ぐストレッチ


 顔面麻痺になると表情筋を自由に動かせるようになるまでにかなり時間がかかります。
 亜急性の麻痺が出ている期間は2~3カ月から、希に数年間、という例もあるようです。
 (発症から1~1年半経過しても麻痺が残っている場合は陳旧期、陳旧性麻痺、と呼ばれ、これ以上よくなる見込みはないは少ない、と言われますが、人によっては陳旧期に入ったとしてもゆっくり緩解していく場合もあるそうです。)

 顔の表情筋も筋肉ですから長期間動かさずにいると拘縮して堅くなってしまい、1年~1年半放置すると表情筋が拘縮して貼り突いたようなようになり、もうもとには戻らないとまで言われています。
 ただ、手足などの筋肉と違い表情筋は関節にくっついているわけではないので、他の筋肉に比べると比較的簡単に拘縮を防ぐことができます。
 神経が修復され育つまでの間、表情筋を麻痺になる前と同じように、柔らかく保ちましょう。
 このためには表情筋のマッサージだけではなく、正しい方向へのストレッチが必要になります。

 ストレッチはその日の調子に関係無く毎日朝夕続けますが、マッサージ同様、一回につき5分以内に留めるようにします。
 やり過ぎたり、極端に引っ張ったり強く押さえすぎないように。
 がむしゃらに引っ張っぱると筋肉を傷つけたりして逆効果ですから、正しい方向に丁寧に引っ張るようにします。
 できれば温めるなどして血流をよくしてから行うのが理想的です。
 特に寒冷期は寒い洗面所ではなく、温かい部屋の中や入浴中に行う習慣をつけるといいでしょう。
 また、横に引っ張る動作の時は肘を真横に上げて引っ張るのがコツです。
 横に引っ張る動作で、首をねじってしまいがちですが、首は動かさないように、揺らさないようにします。
 首筋や顎の下、デコルテ(首の下の部分)の筋肉も一緒に引っ張られていることを意識してやります。

 ここで書いているのは大学病院のリハビリ科で教わったストレッチです。
 4パターンの動きがありますが、1パターンにつき5回ずつ引っ張ります。
 ストレッチをすると、目のストレッチの時は口が、口のストレッチの時は目が動いてしまいがちですが、なるべく動かないように意識してやります。
 姿勢をよくして遠くを見つめながらやるとうまくいきます。


  表情筋のストレッチの手順

続けて5分以上はしないこと

・マッサージはジェルなどで滑りをよくしてからしてもいいのですが、ストレッチは塗り物を塗るとまったく効をそうしません。つるつる滑って引っ張れなくなるので使わないようにします。

・口角・頬・目元・額にアプローチする、手順1~4の4つの動き、があります。4つの動き各々5回ずつ行ってワンセットとします。

  中指の腹を皮膚の上をスライドさせて、麻痺側の口角を耳たぶの前に向けて引っ張ります。
 この時口はイーという形を作るように意識します。
 歯を食いしばってそれを起点に引っ張る人がいますが、そうすると効果はありません。
 上下の歯は軽く触れる程度にしておき、あくまで顔の筋肉を使ってバランスをとるようにします。(片方の口角がまったく動かない時期はイーッをする必要なし)
 5回でワンセット。


  参照画像 ↓↓↓

表情筋ストレッチ 手順 1
表情筋ストレッチ 手順 1 
 口角に指をひっかけ、耳の付け根の下脇(耳たぶの辺り)に向けて指を滑らしてひっぱる



  タチヨミ版はここまでとなります。


拘縮を防ぐ 表情筋と顎関節のストレッチ

2015年10月10日 発行 初版

著  者:アマン (顔面神経麻痺 治療とリハビリ徹底研究)
発  行:SiriusA2

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(顔面神経麻痺 治療とリハビリ徹底研究
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